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2009年12月31日木曜日

【HAM】One hour Transmitters

一時間でできる送信機
 実際にはシャシ加工だけでも1時間では終わりそうにありません。 まあ、「One hour」とは「簡単にできる」と言った意味でしょう。 暮れの大掃除や年越しの準備も終わった大晦日、新春早々の自作プランなど如何でしょうか?(笑)

 この送信機の部品数は僅か50個に満たないのです。「One hour」と言うだけあって、とてもシンプルです。

 この程度の送信機でも日本国内局との交信するのは容易です。 Euでは真空管:ECL82(6BM8)を1本で作ったシンプルなQRP-TXの2-way QSOでG、PA、LA、DLやVEとできたとか楽しんでいるそうです。 これを扱うサイトはたくさんあって、こちらはその一例です。Euは遥かに遠いのですが、もしもJAから仲間入りできたら楽しそうですね。

 真空管には3極5極複合管を1本だけ使っています。 使えそうな候補は幾らでもあって、殆ど回路変更なしに製作できます。 ピン接続が同じ真空管を選んでおけば様々に差し替えて楽しむことができます。 アウトプット・パワーは使用する真空管により違ってきます。

 上記回路図は英RSGBの機関誌:RadComから転載しています。その関係で真空管の名称は欧州系になっています。 ECL80は米国名称では6AB8、ECL82が6BM8、ECL86が6GW8です。 このうちECL86/6GW8がもっともパワフルで5〜6Wは出せます。ECL80/6AB8は非力なので2〜3Wでしょう。しかしヒーターパワーが小さいのでQRP向きです。 一番ポピュラーなECL82/6BM8はその中間の3〜4W程度と言う所ですね。 TV用の6AB8を除きオーディオでよく使う球なので価格高騰気味ですがまだ驚くほどでもありません。

 なお、各バンドに最適化しプレート電圧をより高くすれば5割増しのパワーも可能そうです。 しかし、それくらいなら複合管はやめて終段にはEL84/6BQ5やEL86/6CW5、或は小型送信管の5763あたりを使う方が良いです。mt管ながら10W+が得られます。 UY-807、6L6、6JS6AなどではQRPの範疇を遥かに越えてしまい25〜50Wも出ますからDXingさえ可能です。 しかし、パワーの増大で電源を含めて一気に本格的な送信機になってしまうので、とても「One hour」とは行かないでしょう。QRPな範囲がお薦めです。

 回路構成はCrystal-Oscillator+Power Amplifier・・通称COPA(コッパ)と言われる最もシンプルな2ステージ形式です。 すこし改造したいところもあるのですが、まずはこのままやってみてはどうでしょう。 クリスタル(水晶発振子)は必ず基本波用を使います。 図の記述では14MHzのパワーは1W少々とありますが、7MHzの水晶を使いファイナル・ダブラー(終段2逓倍)しているからでしょう。 記事の時代には14MHzの基本波水晶発振子はポピュラーでなかったのです。 現在は問題なく14MHz帯の基本波が手に入ります。 従ってパワーもずっと出てくれます。(すこし改造したいところ:発振段の負荷を抵抗器ではなくRFCにしたい)

ECL80/6AB8】(写真)
 部品について説明しておきましょう。 

 まず真空管ですが、同じ電気的特性でヒータ電圧違いのトランスレス用を使うと安価です。トランスレス用の真空管をトランス付きで使ってもまったく構いません。

 例えば6BM8/ECL82(ヒータは6.3V/780mA)の代わりに8B8/XCL82(同8.2V/600mA)や16A8/PCL82(同16.0V/300mA)があります。これら3種類はヒーターの電圧電流が違うだけで、互換性がある訳です。以下の球も同様です。

 6GW8/ECL86(ヒータは6.3V/660mA)も14GW8/PCL86(同13.3V/300mA)があってだいぶ安価でしょう。何れにしてもそれぞれのヒータ電圧にトランスの電圧を合わせてやれば大丈夫です。トランスの電圧は±10%くらいに合わせて下さい。

 回路図にある他に3極5極複合管では6AW8A/6LF8/6JV8系やECL85/6GV8もお薦めできます。カラーTVにたくさん使ってあったPCL84/15DQ8(ヒータは15.0V/300mA)やPCL85/18GV8(同17.5V/300mA)も使ってみたいところです。

 しかし、オンエアにて使用Rigの交換の際にはポピュラーな球の方が通りが良いでしょう。結局のところJAでも6BM8あたりが無難だと思います。 9ピンmt管用ソケットも忘れずに手に入れておきます。

 次にバリコンですがプレートに近い側の200pFはある程度耐電圧が必要です。エヤーバリコンが良くて、1kV耐圧の送信機用が理想でしょう。 しかし300pF程度の受信機用単バリコン(並三用など)も使えます。昔はタイト絶縁の立派なバリコンが買えなかったのでそのようなバリコンで代用していました。

 アンテナ側のロードバリコン:1000pFは5球スーパ用2連VCをパラ(並列)にして使うのが常套手段でした。 いまは入手難でやむを得ないため大きめのポリバリコンで試したらどうでしょう? 50〜75Ωのフィーダーを専門に給電するなら耐電圧はまず問題ないはずです。 あとはRF電流が流せるかどうかなので物を見て判断します。 試してみる価値はあるでしょう。

 HT+用(米国式ならB+用)の電源トランスには100V対220Vのアイソレーショントランス(60VA程度のもの)を利用すると安価です。 ブリッジ整流で使うことになります。 あるいは100V:100Vのアイソレーショントランスを使って両波倍電圧整流します。 ヒータトランスは使用する真空管のヒータ電圧に合わせた小形トランスを使います。ACアダプタで代用する工夫をすると経済的でしょう。 秋葉原では五球スーパ用電源トランスがリバイバルしているのでそれも良さそうです。ただし結構なお値段なのが問題かも知れませんね。

 すこし厄介そうなのはブロッキング・バイアスの-150Vをどうするかです。これは-100Vくらいでも十分です。 整流回路の工夫でHT+のトランスから作ることもできるので研究して下さい。 電流は数mAしか必要としません。 トランス式ACアダプタを分解してトランスを逆向きに流用すると言う手もあります。リサイクルショップで探してみましょう。
 キーイングはエレキー向きに簡単に改造する方法があるので、それは(将来あるかもしれない)『製作編』の際にでも書きましょう。それまで感電に注意しつつ「ハンド・キーイング」で。(笑)

 他に難しい部品は無いと思います。真空管回路なのでコンデンサの耐圧と抵抗器のワット数に気を付けます。 回路図の「1n」とあるコンデンサは、1ナノ・ファラドのことで、0.001μFあるいは1000pFのことです。 0.003μFはポピュラーでないので0.0033μFあるいは0.0047μFで良いです。(=3,300pFおよび4,700pF)

 2.5mHのRFCも昔は分割ハネカム巻きを使ったのですが、形状が大きめのTr回路用2.2mHで代替できます。テスタで計って巻線の直流抵抗が10Ω以下なら問題なく使えます。
 終段タンクコイル:L1は先日のBlogのようなエヤーダックス・コイルでも、アミドンのトロイダルコアに巻いても良いです。 パワーから見てT-68-#2やT-68-#6などが適当でしょう。もっと大きなものならなお良いでしょう。 適宜タップを設けておきミノムシクリップで切り替えればマルチバンドにオンエアできます。 もちろん、水晶発振子は各バンドとも基本波のものを使います。

# 昨今は不要輻射に厳しくなっています。出力とANTの間にLPFもお忘れなく!

追記
 JAでは未だ包括免許制は実現していないので、新造送信機はTSSあるいはJARDの保証認定を受けてからのオンエアになります。 保証認定基準では単球で「発振段=終段」の送信機は認められていません。 この送信機は2ステージ構成であって純粋に終段電力増幅管のキーイングです。
 しかし見た目が単球ではたとえ複合管でもダメなようでしたら、例えば工事設計書は発振段:6C4+終段電力増幅:6AQ5,etcの2ステージ送信機にするのが良いでしょう。 いずれそのうち指定事項の変更を伴わない「軽微な設備の変更」が発生するでしょうから、それを楽しみながらオンエアすれば良いのです。 もちろん、最初から2球式で製作しても良いのですが・・・。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年12月20日日曜日

【HAM】4Tr-Regenny

4石再生式受信機】(実用的)
 前のBlogでは、2石式のごく簡単な再生式受信機(←リンク)を扱ってみました。

 流石に2石では心もとない所もあって、交信に使える最低限の受信機なのはやむを得なかったでしょう。 むしろ、2石再生式受信機で実際に交信したのなら、大したものと言えるくらいです。(笑)

 もう少し実用的な例を紹介しておくことにしました。 これは英国のHAM、Des Vance / GI3XZMが『少ない部品で使い物になる受信機』として考えたもので"blooper"の愛称で呼ばれているものです。*1 

 アンテナ同調回路は、左図(a)の様なLoop形式にすると便利が良いのですが、やや感度が低いのでBCL用(短波放送の受信用)になるようです。同じくBCL用でも比較的ハイバンド(9〜16MHz)の受信には(b)が向いています。 BCLの入門者が長さ10mくらいの適当なワイヤーアンテナでそこそこ楽しめるだけの感度があるそうです。(*1RSGBの機関誌RadComより)

 3.5MHz〜7MHzのHAMバンド受信用(SWL用)には外付けアンテナ形式の(c)が良いでしょう。アンテナと直列の30pFのトリマコンデンサは是非とも付けておくべきです。

 検波に適するレベルに加減できないと最高性能を発揮できないのは2石の例と同じです。 HAM用・SWL用なら(d)のようなローパス・フィルタ、あるいは(e)ようなCW用バンドパス・フィルタを図(a)の中央部分にある4.7μFと交換に入れると一段と実用的になります。(88mHの電話回線装荷用コイルはJAに於いては入手しにくいでしょう。しかしQの低いCoilで代用はNGです。フェライトのPot Coreに巻いて自作する手があります)

 なお、前のBlogの再生式受信機では、SSBの受信にかなり難点がありましたが、この回路形式はSSBに幾らか有利なようです。 これは、再生回路・・・と言うよりもQマルチのような正帰還(発振)回路を同調回路と別に置いて緩めに結合しているからでしょう。 もちろん、強い到来信号による引き込み(Pull-in)現象がありますが、検波も発振も同じトランジスタで行なう形式よりも幾らか緩和されます。 引き込まれるほど強い信号に遭遇したときは30pFのアンテナ結合度調整トリマで加減する訳です。

 この検波回路はJ-FETを使った「無限インピーダンス検波」(an infinite impedance detector)と言う形式です。 真空管時代にも稀に使われていました。(参考:だいぶ前に24Vで真空管12AT7/12AU7を使い、独立した再生管を設けたラジオの製作を紹介したことがありました。件のラジオでは「グリッド検波」を使ったのでこれとは異なった物でした)

検波用J-FETの例:2SK19GR
 使用デバイスのうち、検波回路のJ-FET:2N3819は、2SK19、2SK192A、2SK41、2SK241、BF256などの高周波小信号用なら大抵のものが使えます。

 回路を見るとソース抵抗:Rsが大きく選んであります。 カットオフ近くの動作点で使っているのでIdssランクはどれでも良いでしょう。

  もちろん昔懐かしいMK-10や2SK11などでも大丈夫です。 図(a)・J-FETの左下あたりに有って再生&発振に使っているNPNトランジスタ:BC109は2SC1815Yか同GRで十分ですが、高波用Trが使いたいのなら2SC1923Yや2SC2668Yあたりを推奨しておきます。

 回路図(a)右側2石の低周波増幅:BC109は2SC1815Y又は同GRで十分な性能を発揮します。 2SC183、2SC372、2SC458、2SC536、2SC828、2SC945や2SC2458でも良いでしょう。 小信号用NPN型シリコン・トランジスタなら何でも使えると思って良いです。

 図(a)の左上にある再生調整用:100kΩの可変抵抗器は10回転のヘリカル・ポテンショメータを使うように原著には書いてあります。 もちろんそれがあればベストですが、良質な可変抵抗器に大きめのツマミを付ける程度でも十分なはずです。調整容易な方が扱い易いのですが10回転のVRが必要なほどクリチカルではありません。(テスト済み)

 出力のトランスは、500Ω:8Ωのトランジスタ用アウトプット・トランスを使います。橋本電気(山水トランス)のST-82などが候補でしょう。 手持ちにあればポピュラーなST-32でも良いと思います。低周波回路をパワーアンプICのLM386にして強化するなどのバージョンアップは各自で研究されて下さい。

 あまり注意喚起されていないようですが、こうした形式の受信機は受信中に電波を発射する可能性があります。 CWやSSBの受信では間違いなく発射しているでしょう。 従って、可能であれば検波回路の前に高周波増幅を設けるべきです。 その場合、あまりゲインはいりませんからでFETのGG-Ampや、ICならμPC1651Gのような入・出力間のアイソレーションが良いものが適当です。

◎拙BlogのCW用BPFなど付けるとなかなか使える受信機になるように思います。お正月の遊びにでも如何ですか? de JA9TTT/1

参考:アンテナ・コイルにバーアンテナを使った例が、7M3WVM箕輪さんのサイトに紹介されています。

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年12月13日日曜日

【HAM】Gennyちゃん

2石再生式受信機:0-T-1
 0-T-1(ゼロ・ティー・ワン)とは、高周波増幅ナシ(ゼロ)、トランジスタで検波(T)、そして低周波増幅1段と言う、受信機の形式を示しています。

 たったの2石でも上手に作ればかなり良く聞こえる短波受信機になります。 もちろん、最低限の構成なので0-T-2にしてスピーカを鳴らすとか、高周波増幅を追加して1-T-2にするなど、発展も楽しめるでしょう。

 中波帯の入門ラジオではレフレックス方式にして2石でスピーカを鳴らす形式も多いのですが、こうした再生式受信機とはまた異なるものでしょう。 HAM用再生式受信機では常に再生度を調整しながら受信します。 発振寸前の状態でAMを受信し、軽い発振状態まで再生を強めればCWのビートが聞こえます。 再生作用による選択度と利得の上昇が体感できる受信機なのです。

 受信にあたって、再生度の加減は言うまでもありませんが、アンテナとの結合具合の加減もとても大切です。 良好に受信するためには操作に感性やスキルが必要なので相応の訓練を要します。 簡単な回路なので、お子様向きのように見えますが、良く聞こえる所まで常に加減しつつ受信するのは難しいものです。 製作にあたっても回路図の裏まで見透かせないと本領を発揮し得ないですから、何とも「おとな」のRadioなのです。 尤も今どきの子供はラジオなんかに興味は示さないでしょうけれど。 ラジオなんか弄ってみたいのは大昔ラジオ少年だった爺さんだけでしょう。(笑)

 この「再生気味」、「発振気味」と言うのはアナログ回路をいじる者にはとても役立つ感性だと思います。 一度は体験して感性を磨いておくと大いに役立つのですが・・・アナログ回路そのものが衰退してしまいましたね。

 回路はJA1FG梶井OM(故人)によるものです。 作り易いよう原典に注釈などを加えておきました。 1960年代の設計ですからゲルマニウム・トランジスタが使われています。 もちろん現代的にシリコン・トランジスタ化しても良いのですがバイアス抵抗の加減を要するかもしれません。 ゲルトラを溜め込んでいるお方もあるようですから、こんな受信機でノスタルジックな製作を楽しまれては如何でしょうか?

参考:回路定数を検討してみましたが、そのままシリコンTrに置き換えても概ね大丈夫なようです。 Q1,Q2ともに少々古典的ですが2SA495や汎用品の2SA1015Yあたりでも良いかもしれません。もう少し高周波(RF)向きのトランジスタを探すのも面白いと思います。 あるいは電源とC7,C8,C10の極性を変更してSi-NPN-Trに置き換えるのも良いでしょう。Q1には2SC1923Yや2SC2668Yがお勧めです。Q2は2SC1815Yや2SC2458Yが良いでしょう。ゲルマニウム・トランジスタに比べてバラツキが少ないので製作の再現性は向上します。

 受信周波数範囲ですが、回路図通りのコイル(L=約3.8μH)で概略4.5MHz〜13MHzがカバーできます。 HAMバンドとしては7MHz帯と10MHz帯の受信が可能です。 BCL用としては6MHz帯、9MHz帯、11MHz帯の各放送バンドが受信できます。 もし受信範囲が広過ぎるようでしたら主バリコンをもっと小容量にし、固定コンデンサと組み合わせ受信範囲を狭めて下さい。

 短波帯の受信機にはバーニヤ・ダイヤルや糸掛け式のような減速ダイヤルメカが是非とも必要です。 そのうえで小容量のスプレッド・バリコンも設けます。 減速ダイヤルなしでは同調がシビア過ぎて、マトモな受信はできないでしょう。 回路は良く似ていても中波帯のラジオとは大きく異なる部分です。(どんな短波帯受信機でもダイヤル機構の部分には十分な手間を掛けるべきです。それがオモチャか実用品かの分かれ目になります)

【2SA70と2SA156】
 どちらも短波帯に使える代表的なゲルマニウム・トランジスタです。 再生検波のQ1のところに使うものですが、他にも同様に使えるものはたくさん存在します。

 トランジスタ規格表のfabまたはftの項目を見て30MHz以上あれば十分使える可能性があると思って良いでしょう。 少々低いと思っても試してみる価値はあります。 古いトランジスタは同じ型番でもバラツキが大きいからです。

 もちろん、もっと高い周波数まで使えるトランジスタでも良いのですが、再生検波には向き・不向きがあるので差し替えてみると面白いでしょう。 最大コレクタ電流が小さくコレクタ損失も小さめのもの・・即ち、トランジスタ・チップのサイズが小さいものが良好と言う傾向があります。 良いものは再生の掛かり方がスムースです。 向かないものは、いきなり強い発振状態に移行してしまい再生の加減がしにくいのです。

 写真の2SA70は4本足です。これはメタル缶をGNDにアースするための「シールド」の引き出し線があるからです。 通常は回路のアースに接続して使用します。 多くのメタル缶入り高周波用トランジスタがシールド付きでした。 但しメタル缶トランジスタの「缶」は個別の引き出し線があるもののほかに、コレクタ、ベース、エミッタの何れかのリード線に接続されたもの、或はまったく無接続のものなど様々なので注意を要します。 シリコン・トランジスタに比べてゲルマニウム・トランジスタは電気的にも熱的にも遥かに脆弱ですから、製作時の扱いには注意を要します。

【Airdux Coil】
 いまならAmidonのトロイダルコアでも使う方が良いかも知れません。 オリジナルの回路では200816と言うエヤーダックス・コイルが使われていました。

 直径が20mmで、巻線径は0.8mm、そしてピッチが1.6mmと言うものです。 拙宅にも幾つか昔買ったものが残っていましたが、残念ながらオリジナルで指定のものはありませんでした。 ボビンに巻いたコイルでも十分なので、20mmの樹脂製のパイプに巻き線すれば代替できます。

 Airdux Coilというのは米国のBarker & Williamson社がオリジナルでしょう。 初期の頃は輸入品もあったようですが、高価だったので間もなく国産化されました。
 HAM用品の販売店:トヨムラが生産委託し永い間販売していたのですが、1970年代の終わりに生産中止になりました。 製造委託先は個人の会社だったそうで、ご高齢のために仕事をやめたと言うように聞いています。 エヤーダックス・コイルは真空管時代のコイルでした。大きくてトランジスタ時代にはマッチしなかったので需要も暫減していたのでしょう。 しかし生産中止はアンテナ関係やリニヤアンプの自作家にとってはかなり痛手でした。過去の多くの製作記事がそれを使う前提で書かれていたのですから。

Scout Regen Receiver
 海外では再生(Regeneration)式の受信機が(今でも)入門用として推奨されています。 写真はJG1EAD仙波さんが最近キットを輸入されたものです。(今年の忘年会@新宿で撮影:TNX! JG1EAD)

 コイル・ボビンはステアタイト製のように見えますが樹脂製だそうです。 フィードバック・コイルとの結合度の関係から、トロイダルコアよりも空芯コイルの方が向いているようです。 再生度の加減はVCによる方法です。 きちんとしたアンテナを付けるとHAMバンドも結構聞こえるそうです。

 ところで、標題の「Gennyちゃん」ですが、再生式受信機の愛称だそうです。 再生式受信機は米国でも古くからポピュラーで「ジェニーちゃん」の愛称で親しまれていたとか。 なお超再生受信機は「スーパー・ リゼ」と言います。「スーパー・ジェニーちゃん」じゃないのですね。hi hi (再生式、超再生式を区別せずにRegennyとかGenny Receiverと言うようです)

もう少し高級だが案外作り易い4石式再生式受信機のBlogは:=>こちらから。

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年12月1日火曜日

【部品】2SB54

ゲルマニウム・トランジスタ:2SB54
 東芝の低周波・小信号増幅用トランジスタです。
 その昔よく使ったトランジスタの一つです。ラジオの低周波(AF)アンプはもちろん、マイクアンプやサイドトーン発振器とかいろいろの使い道がありました。

 規格を調べると、2SB54を電流増幅率:hfeで選別しpush-pull回路用に揃えたのが2SB56のようです。従って下記の回路のように単独で使うならどちらも同じように使えます。

2SB54の実測静特性】(転載不可)
 規格表によれば、2SB54の最大コレクタ電流は-150mAと大きいのですが、小信号増幅回路ではせいぜい数mAのところで使います。

 製造から既に40年をゆうに経過していますが未だ正常そうに見えます。 測定したこの個体のhfeは200くらいあってゲルマニウム・トランジスタとしては大きいほうでしょう。その分だけコレクタ遮断電流:Icboは大きめでしょうか?

 今でもごく普通のトランジスタとして使えますが・・・あえてこれを使うこともなくシリコントランジスタの2SA1015や2SC1815で十分でしょう。

2SB54で1石ラジオを
 『これ1石で何かを』と真顔で問われても困ってしまいます。 しかしゲルトラらしく使ってみましょう。

 これがラジオとして最少の部品点数でしょう。 2SA1015のようなシリコントランジスタで代用するなら抵抗器を1つ追加してベースにバイアスを掛ける必要があります。 2SB54のようなゲルマニウム・トランジスタは、Icboが流れるお陰でバイアス抵抗を省いてもそれなりに増幅してくれるのです。

 2SB54は低周波用なのでトランジスタ検波には適さないのでゲルマニウム・ダイオード(1N60,1K60,1N34A,SD46,OA70,1S188,など)で検波しています。 もちろん順方向電圧:Vfの低いショットキー・ダイオード:SBDでも大丈夫でしょう。 半導体は2つなので、ある意味2石ラジオと言うべきでしょうか?

 “ゲルマ・ラジオが旨く鳴ったら来週はトランジスタを買いに行こう!” こんなラジオで初めてトランジスタに触れた少年も多かった筈です。

 コイルはバーアンテナでも良くて、タップはアース側から1/5くらいのところから引き出すしま。 バリコンはポリバリコンで十分です。 ローカル局が(ゲルマラジオよりも)ずいぶん大きな音で聞こえます。

# 何だか『初歩のラジオ』どころか『子供の科学』の世界に帰ってしまいましたね。

de JA9TTT/1

(おしまい)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年11月23日月曜日

【旅】冬桜@2009

冬桜:

冬の桜を見てきた。「旅」と言うほど遠方でもない。
春の桜とはまた違った趣がある。花のかたちも少し違うようだ。

「寂しい感じ」だろうと思っていたが、なかなか賑やかな咲きっぷりだ。 満開を過ぎてもサクラ吹雪のようにはならないようである。 春の桜よりずいぶん長く楽しめるとか。

冬桜風景:

松の緑、紅葉の赤、桜の薄紅がいっぺんに見られる。
ちょっと不思議な景色だ。

樹による個体差が大きいようで、咲き具合は「ちらほら」〜「満開!」までいろいろだった。






紅葉も:

ちょうど紅葉も見頃だった。 11月も末になり遅いだろうと思っていたら良い頃合いだった。 山は赤や黄色に濃く彩られていた。

ここは彩り豊かな「彩の国」ですから。(笑)





場所はこちら: 城峯公園

大きな地図で見る

# 冬桜はそろそろ盛りを過ぎて来たが紅葉は来週も楽しめそうだった。

2009年11月14日土曜日

【部品】7PLAコイルの巻き方

参考:一般的な『FCZコイルの巻き方』に関しては、こちら(←リンク)を参考に。

7PLAコイルについて
 「世羅多フィルタとLA1600」との関連で、フィルタのインピーダンス・マッチング用IFTの設計と製作をテーマにします。

 7PLAと言うのは、東光製コイルの一形式のことで、HAMにお馴染みの10Kとか7Kなどと同じような「巻枠+シールドケース」の形式を示す型番です。

 透磁率:μ(ミュー)の大きなコアが使われていて、巻線もたくさん巻けるので、大きなインダクタンスが必要な低い周波数向きにできています。(コア材も数種あるようですが、何れも中波どまりでHF帯には向かないようです)

 大きく分けると3つに分かれる構造になっています。 実際には写真右上側の外ネジの切ってあるカップ型(壷型)のコアは写真中央のシールドケースと一体になって外れます。従って二つに分かれる訳ですが、ここでは説明のためにカップ型のコアを外しています。

 左側の足ピンのはえた台座の上部に鼓(ツヅミ)型のコアが接着されています。 コアを芯にして直接巻き線してあります。 このように台座が外れ、ツヅミの回りには障害物が無い状態で取り外せるため巻き換えは比較的容易にできます。

7PLAの分解方法
 シールドケースの底面側にツメがあって、台座を押さえています。 このツメを起こせば簡単に台座を取外すことができます。

 シールドケースは真鍮の薄板をニッケルメッキしたものです。 数回の開閉なら大丈夫ですが、何回もできるようにはなっていません。 このツメが折れてしまうと使い物にならなくなるので注意しょうましょう。

 入手したコイルによっては底面にコンデンサが内蔵されている場合があります。 容量によっては再利用できるので、上手に外して測定しておくと良でしょう。 コンデンサは円筒型のチタコンで容量値は書かれてないためCメータで測定して確認します。

台座と巻線
 台座は容易に外れます。 巻線部分はこのように防湿のためワックスで処理してあることが多ようです。 巻き換える時にワックスは取れてしまいます。

 自分で巻き替えたあと、防湿処理はしないで済ませるのか、改めて何かを塗布するのかを考えておきましょう。

 非常に悪い環境で使う場合や或は長期間の性能を維持するためには防湿処理すべきです。 しかし過去の製作では特に何もしていませんが問題が起こった経験はありません。 メーカーと同じワックスが入手できればぜひ処理しておきたいと思います。 少量の入手が可能な方法があれば教えて頂ければと思っています。 巻線が固着しても良ければ高周波ワニスを塗布しても良いでしょう。高周波ワニスなら小ビンに入った物が手に入ります。

巻線除去
 ボビンだけの未組み立て品が手に入れば分解する必要はありません。しかし大抵はジャンク品を再利用して改造することになるでしょう。 この例では250kHzあたりで使う目的で作られたジャンク品を改造しています。(あとで頒布する予定のものと同じです)

 もともと巻いてある線を上手に解き、それを巻き直してコイルを作ることにします。 足ピンにハンダコテを当てながら先の細いピンセットで巻線をそっと引き上げます。

 写真の位置が一次側巻線(同調側)の巻き終わりになっています。 巻き数の少ない側(リンクコイルなど)が内側に巻いてあるのが普通です。 反対側の2本ピンが出ている側に巻いてある巻線が2次側巻線なので、コアに近い内側に巻いてあります。

 巻線はφ0.05mmくらいのたいへん細いものが巻いてあります。 この改造では巻線も再利用するので切らないように上手に解いて行きます。 このコイルの場合は中点タップがあってそこで一旦切れています。 もともとの巻線はかなりたくさん巻いてあります。 新たに巻き直すのはずっと少ない回数で済むため、再利用する電線の長さには十分な余裕があります。

ハンダ付けを外す
 このようにハンダ付けを外したら、切ってしまわないように上手に巻き解いて行きます。

 なおワックス(パラフィン)は柔らかいものなので、事前の除去などが不要ですから気しないで解いて行きます。

 解いた巻線にワックスが付着してくるので、後でティシュ・ペーパーなどで軽くぬぐっておけば良いでしょう。 キンクが発生しないように注意して下さい。

2次側を巻線する
 最初に2次側(リンク側)を巻きます。 この例ではCW用なので4回巻きました。 線が細いので少しコツが必要で慎重さも必要ですが、巻き替えは難しいものではありません。

 巻線は再利用していますが、十分余るのでうまく行かないようならやり直しても足ります。失敗しても心配は要りません。
 
 万一、巻線を切ってしまったらφ0.1mmくらいの別の線を巻いても良いでしょう。あまり太い線だと予定の回数だけ巻けなくなります。従って線の太さはφ0.1mmまでが良いです。 巻線の径が異なればインダクタンスも変わる筈ですが、コアの調整で十分カバーできる範囲の違いなので心配いりません。

 おちろん表面が絶縁された電線を使うことになりますが、ごく細い線の絶縁被覆を機械的な方法で・・・例えばサンドペーパとかナイフなどで・・・除去するのは容易でありません。 ポリウレタン電線(記号UEW:ウレメット電線とも言う)を使うようにします。 UEW線ならハンダコテの熱で絶縁被覆を除去できるのでとても簡単に巻線することができます。

1次側を巻線する
 続いて1次側を巻きます。 前のBlogに於いてT1の場合は72回目でタップを引出し、合計で143回巻きます。 写真は巻き終わった状態です。 なお、T2は巻き始めから18回目でタップを引き出します。こちらも合計で143回巻きます。

 その他のコイルも製作の要領は同じなので、図面の指示に従って巻線します。 巻き終わったら必ず導通を確認しておきましょう。 また、インダクタンスメータがあればシールドケースを仮に被せ確認しておけばより確実です。(ツメは正しくできたことが確認できてから「かしめ」ます)

 コアの調整によるインダクタンスの調整範囲はかなり広いですから、巻数を大きく間違えなければ調整不能になるようなことはまず無いでしょう。難しいと思わず気軽に製作して大丈夫です。

シールドケースをかしめる
 確認が済んだらシールドケースをかしめて完成です。 さっそく名称を書いておき、どのコイルだったか識別できるようにしておきます。

# わからなくなったら、あとから調べるのは意外に厄介です。(笑)

 写真はLA1600に世羅多フィルタを付けるために作ったもので、図のT1です。

φ0.1mmのUEW電線
 巻いてあったものを再利用すれば良いので新たな巻線はいりません。 もちろん、再利用はせずに巻き易いφ0.1mmのUEWで新たに巻き直しても良いです。これはその確認に使ったものです。

 子供のころ近所にあった電子部品下請け工場に電線を分けてもらいに行ったらお土産に頂いたものだったと思います。拙宅には随分前からあるもので、なかなか使い切れません。たぶん、一生ものです。(笑)

 細い線は使っても僅かしか減らないので、購入するならもっと少量にしておいた方が良いです。 EIコアにアウトプット・トランスでも巻けば消費量も増えるかもしれませんが、トランジスタ回路用のIFTを巻く程度では一生掛かっても使い切れそうにありません。(笑) 必要なら所要量+αの分を差し上げます。 巻き直すのが面倒なので必要量+αでご勘弁を。

 φ0.1mmの次はφ0.16mm、その上はφ0.20、0.32、0.40、0.60、1.00mmなどを常備しています。 殆どの場合、φ0.16mmあるいはφ0.32mmを使うことが多いです。 トランス屋さんではないので、だいたいこの程度を用意しておけば困ることは無い筈です。

                  −・・・−

【FCZコイルを考えてみる】
 既に販売は終了していますが、あらためてFCZコイルを考えて(検討して)みました。

 その結果、前々から書いているようにFCZの10M455を使えばかなり良い線まで行くことがわかりました。 10mm角なので少し大きくなりますが、それが支障になるケースは稀でしょう。 従ってコイルの自作は面倒と感じるなら10M455を使うのが良いのです。 その場合、必ずFig.2のFETを使う方式を選択して下さい。 10M455は真空管の回路にも使うことができます。

【2011.6.2:追記】FCZコイルが製造中止になりました。 コイル巻きは難しい訳ではありませんが、どうも人気がありません。しかし、既製品がなければ自前で何とかするしかなありません。 10M455が入手できなくても、このBlogのように自作で解決できます。 以下の頒布は今でも継続していますからご希望があれば問い合わせ下さい。

(おわり)



7PLAコイルの頒布案内
 小型化するために7mmm角のコイルで作りたい人に、ここで使った7PLAコイルを2個一組で差し上げます。 もちろん無償ですがSASEの送り先を返信しますから次のアドレスまでまずはメールを送って下さい。 メールは「ttt.hiroアットマークgmailドットcom」で届きます。(カタカナ部分は記号などに直す) それなりの数量を用意していますが、予定数になりしだい終了させていただきます。このBlogで頒布終了の追記があるまでは継続します。

SASEとは自分の住所氏名を書き必要な額の切手を貼った返信用封筒のことです。(Self‐Addressed Stamped Envelope) 破損しないよう緩衝材で入念に包装すため封筒の厚みが定形外になります。120円分の切手を貼った返信用封筒を送って下さい。


参考:一般的な『FCZコイルの巻き方』に関しては、こちら(←リンク)を参考に。



(Bloggerの新仕様対応済み。2017.04.02)

2009年11月8日日曜日

【映画】ゼロの焦点

小説:ゼロの焦点

 昨日は山崎豊子の「沈まぬ太陽」を見てきた。国民航空NALを舞台にした左遷人事と会社を食い物にする政治家と御用組合・・・昨今の某航空会社そのままをただちに連想させる内容である。確かに映画化には抗議が来てもおかしくない。 利用価値の無い地方の「政治家空港」への義務的な(赤字)就航を余儀なくされた航空会社にとってどんな経営戦略も意味を持たないだろう。そうした気の毒な面もあるが、一面ではうまい汁を吸っていそうな(正)社員の姿がだぶれば、税金投入になりかねない救済に納得できないのも当然な感覚だろうと感じつつ、完全なフィクションと言う映画を見終えた。

 来週から始まるのが標題の「ゼロの焦点」である。 何となくストーリーは知っていたが、読んだことは無かった。 映画の予告編を見て(一足先に・笑)展開を追うために階下の書店に寄ってしまった。 たぶん、先に読んだら面白くないだろうと思いつつも、写真の三女優がどのように演じるのか映画も見てみたいと思ったしだい。(笑)

 500ページ弱の中編を一気に読み終えたばかりだ。 金沢を中心に能登あたりの風景を描写するシーンが多々登場する。 津幡と言えばJA9CZJ松盛さんが・・・とか、羽咋海岸でキャンプしたなあ・・とか、和倉温泉は行ったことはあっても逗留した経験は無いなあ・・・とか、シーンごとに自分のイメージを重ねながら駆け足で読み終えた。
 舞台となった昭和30年代のはじめころは私の親の時代である。時代背景や生活の実感は湧かないが、敗戦の痕跡がまだ色濃く残っていた時代に違いない。 今の時代にはそぐわない古い時代の感性に基づくだけに映画がどれほど共感を得るかは未知数だろうと思う。 なので三女優に賭けたのかもしれない。(笑) まだ見てはいないが、一応お薦めしておこうか・・と。

追伸予定の1日遅れで「ゼロの焦点」を見てきた。二時間少々のTVドラマチックなのはやむを得ないが予想したよりかなり良かった。ストーリーの終わらせ方は小説の方がドラマチックと感じるので先に映画の人も読んでみるのをお薦めしたい。「おくりびと」の印象から難しそうに思った禎子役の広末涼子も悪くなかったと思う。(2009.11.15)

2009年11月7日土曜日

【回路】世羅多フィルタとLA1600

【回路:Cerladder Filter and a Radio chip LA1600】
AMラジオチップLA1600】(SANYO /現 ON semi.)
 LA1600と言うラジオ用のICは、思い切った発想から最少の外付け部品で実用的なAMラジオを実現したICです。 三洋セミコンダクタ社が開発したAMラジオ専用チップです。

 必要な機能に絞り、たった9ピンでRFアンプ付きスーパ・ヘテロダインを実現しています。 あとはお好みの低周波アンプを付ければAMラジオが完成してしまいます。しかもかなり高性能です。 スーパ・ヘテロダイン方式の発明者:E.H・アームストロングが見たらきっと目を回すにちがいありません。(笑)

 残念なことにこのLA1600もついに生産終了です。 今では小径になってしまった4インチ・ウエファの生産ラインが終息するためのようです。 採算性の良くない製品を整理する意味もあるのでしょう。
 AMラジオ単機能のICチップは自作アマチュアには有難くてもセットメーカーにとって好都合とは言えません。 今どきAMだけのラジオはオモチャのような扱いです。 付加価値を付けるためにFM付きラジオにするなら別のチップ(例えばTA2003Pなど)を選ぶ方が賢明でしょう。既にLA1600のニーズは減っていた筈です。

 AM放送は不滅だと思っていますが、シンプルな専用ICが消えるのも時代の流れでしょう。 ただ、このICの機能ならトランジスタ3〜4石で十分に実現可能なのであまり悲観的になる必要はないと思います。 トランジスタを使った設計なら部品数は増えますが設計の自由度が増えると言ったメリットがあります。 生産中止で僅か100円のICチップがあまりにも高騰するようなら違う手を考えるべきでしょう。安いからこそ意味があったICチップです。

 それでもまだ入手はできますしパーツボックスに眠ったままのLA1600もたくさんありそうです。 世羅多フィルタと組み合わせ、BFOも付加すれば立派なHAM用通信型受信機になるでしょう。もう暫く利用価値がありそうなので検討してみましょう。

世羅多フィルタ(せらだフィルタ)のマッチング回路】(LA1600)
 以前あったweb記事では既成のコイルで済ませる関係で回路形式は限られてしまいました。 コイルを自分で巻くつもりなら回路設計の幅が広がります。

 :CSB455E(村田製作所)を使う前提で設計しています。中国製CRB455Eの場合、厳密には設計変更が必要になります。但し、そのまま作っても極端にずれてはいないので十分に実用範囲でしょう。

 左図のFig.1は世羅多フィルタ(せらだフィルタ*1)に合わせたIFTを作って最適化をはかる方法です。 入力側:T1はLA1600のミキサー負荷の高インピーダンスを世羅多フィルタの低インピーダンスに変換します。 出力側:T2は世羅多フィルタの低インピーダンスをLA1600のIFインピーダンスに合わせるためのトランスです。 LA1600のIFアンプのインピーダンスは明確にはわかりませんが、2kΩくらいのようでした。T2はそれに合うよう設計しました。

【コラム: 世羅多フィルタとは?】  これは私の造語です。セラミック振動子を使ったラダーフィルタの愛称で「世羅多フィルタ」と名付けました。 セラミック振動子を数使っているフィルタと言う意味も掛けています。 更に世界中に、すなわち世羅に広がって欲しいと言う気持ちも込めています。「世羅多フィルタ」と愛称していただけたら嬉しいです。

 Fig.2は既におなじみの方法です。 FET:2SK241(Yが良いがGRも可です)が一つ増えますが出力側IFTの構造は簡単になります。  またFig.1よりもトランスによる「昇圧利得」が大きくなるで、通信型受信機としてゲインに余裕が増えます。 もともとはアイテック社製SR-7受信機の改造のために応急に考えた方法でしたが、悪くない方法だったと思います。

 この2SK241の部分ですが、FETはさして増幅していません。 FETの増幅作用によるゲインは僅か数倍くらいです。 大半の利得はT102の巻数比による昇圧利得によるものです。 FETはインピーダンス変換が主目的です。 ゲインはあまり稼がない方が安全です。 ドレイン負荷を単なる低抵抗にしているのはそのような意味からです。 FETは2SK19、2SK41、2SK192などでも大丈夫でしょう。(Idss=1〜5mAくらいのランクが良いです)
 ここを抵抗器ではなくIFTにすればゲインがアップしますが、発振気味になっては困ります。 IFTを離調させたり抵抗をパラに入れQダンプして発振を止めるくらいなら最初から抵抗器を使う方が賢明です。

 SR-7の例で言えばゲインが不足して相手の信号が聞こえないとは考えにくいでしょう。 聞こえないのはコンディションが悪いかアンテナが上手くないなのであって、そんな状況では自局の波も良く飛んで行きません。 受信機は必要以上にゲインを稼ぐ意味はなく、むしろ安定に動作することを優先すべきです。

7PLAコイル
 東光製のトランジスタ回路用7mm角コイルです。  HAMの自作でおなじみだった7Kタイプとは異なった内部構造です。 おもに中波帯以下の低い周波数で使うものでしょう。 巻溝付きのボビンではなく、鼓(ツヅミ)型のフェライト・コアに直接巻線します。

 可変コアは鼓を覆うようなカップ型をしており外周にネジが切ってあります。そのネジとシールドケースのネジが勘合してカップ型コアの上下でインダクタンスを加減します。 組み立て易く部品も少ないうまい構造だと思いました。 分解も容易なので改造目的にはマッチしています。

 小指の先ほどの小さなコイルですが、455kHzでQu=100以上が得られるのでSTARの大きな真空管用IFTと比べても遜色のない性能です。 但しこうしたトランジスタ用のボビン/コアは1次と2次の巻き線が構造上必ず密結合になります。 真空管用IFTのような復同調形式にするには2個使ってC結合で実現しなくてはなりません。(2個のコイル間をリンク結合する方法でも可能ですがそうそう単純に性能が出せません)

# 上記7PLAコイルの巻き方については次回のBlog(←リンク)で扱っています。

SR-7DXの回路】(おまけ)
 アイテック製のSR-7を世羅多フィルタ付きに改造する方法を示します。

 これは以前webに公開していたものと同じです。 LA1600を扱ったのに回路図がないと寂しいので「おまけ」で付けておきます。

 この回路の個人的な利用に制限はありません。もし拙Blogの記事や回路を参照して受信機の製作記をお書きなら引用元を明確にしておいてください。 オリジナルの情報がわかれば追試するときの参考になります。

 なお、少々部品定数を変えた程度でご自身のオリジナルであるとするご主張は認められません。まさかとは思いますが、商用的にご利用したいならお問い合わせをお願いします。

# 『世羅多フィルタの実装方法』を扱うBlogは:→→こちらから。

7PLAコイルの巻き方へ(つづく

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2009年11月1日日曜日

【部品】STARのIFT(5)

部品:STARのIFT・その5
STARのIFTを世羅多フィルタに使う
 単にIFTそのものをテーマにするのは済んだのですが、一応今回までが「STARのIFT」で、その第5回目になります。

 真空管用IFTだから真空管式のラジオでも・・・とご期待されていたお方には少々申し訳ないかもしれません。 今まで世羅多フィルタを真空管機に取り込む検討は十分ではなかったようの思います。 ニーズは少ないように感じていたからでした。

 検討を始めて、真空管回路に使おうとすればIFTそのものを理解する必要に迫られます。それでSTARのIFTを調べ始めたような訳なのですが、目的に対して必ずしも適切なIFTではなかったようです。 手元のジャンクからピックアップしたのでやむを得ませんが、このIFTは廉価版なのでそれなりの工夫もしてあって、あまり改造向きとは言えない感じです。

 しかしハイゲイン指向のIFTなので上手に使えば高一中くらいでも交信に使える実用受信機ができるかも知れません。 もちろん家庭用ラジオとは違うので必要な感度を得るための配慮が必要でしょう。 例えばIFアンプにはややHigh-gmな6BA6クラスの球を登場させることになります。 コンバータ管も6BE6よりも変換コンダクタンス:gcが大きなものが良いでしょう。 ペンタグリッド管の自励コンバータで考えると選択肢が限られてしまいますからOSC+MIXerで考えると有利す。例えば6U8や6GH8Aなどいくらでも候補はあります。

# 受信機の設計となると他にも種々考慮する事項があります。ここでは世羅多フィルタの活用に絞った部分について考えています。

世羅多フィルタの真空管回路への応用
 世羅多フィルタの終端インピーダンスはCW用が約100Ω、SSB用が約300Ωになります。 それに対して真空管回路では、IFT部分のインピーダンスは低いもので50kΩくらい、高いものでは200kΩを越えることもあります。

 従って何らかのインピーダンス変換を行わないとまったく使い物になりません。 このあたりが、世羅多フィルタを使ってみたいと思っても真空管式受信機に利用されていない理由でしょう。 もちろん回路を良くお判りのお方が旨く工夫されている事例を拝見したことがあります。 回路のエキスパートには無用な情報かもしれませんが、真空管回路でも使って頂きたいので検討しておくことにしました。 既成受信機の改造にも役立つでしょう。

 左の回路図で、Fig.1は当初から考えた方法です。 真空管用IFTを改造してC分割によるインピーダンス変換を行う方法です。 コンデンサによる分割比を求めるためにはIFTの特性と回路の動作状態を知る必要がありました。 調べた結果から、STARのA4・IFTをC分割式で改造するには図のような容量になりました。 C分割すると容量比で信号振幅は小さくなってしまいます。 従ってフィルタの出力側にはインピーダンス・マッチングしながら昇圧機能を持っているトランス(IFT)を使うと有利です。 トランスT2がそのためのこので、製作については別途Blogで扱うつもりです。

 Fig.2は、IFTを改造しない方法です。 Fig.1のようにC分割でマッチングするには厳密に言うと事前にIFTの評価が必要になります。 部品数は増えてしまいますがIFT間の結合を加減できるようトリマコンデンサを入れておき、組み立て後に調整で追い込む方法があります。 結果が良ければOKと言う簡易手法と言えそうですが、アマチュア的にはこの方が楽でしょう。 T101はもとの真空管用IFT、この場合はSTARのIFTと言う事になります。T103が追加するIFTで、これは出力側T102と同様にトランジスタ回路用の小型IFTを使います。小さなIFTなのであまり場所は取らないでしょう。T103とT102の製作についても別途扱うつもりです。

C分割に使ったコンデンサ
 CW用世羅多フィルタの場合、インピーダンス変換比が大きかったので分割容量は4,300pFにもなりました。 ここのコンデンサもHigh-Qなものが良いので同じくスチロールコンデンサを使いました。

 4,300pFは1個で得られなかったので2,100pF2個と100pFを並列にしました。 なお、もともとの同調容量(100pF)も少し大きくすべきですが、追加すべき量は計算上約2pFなのでIFTのコアを微調整すれば済む範囲です。 インピーダンス整合にもわずかな影響しかないのでそのままで済ませることにします。 回路図中のFig.1におけるT1の部分がその部分です。

 IFTが異なれば、当然この4,300pFと言う値も異なります。 いつでも4,300pFにすればマッチングする訳ではありません。 同調容量、Qと共振インピーダンスなどから改めて適した値を求めることになる訳です。
 このSTARのIFT(A4・B4)でも、SSB用の世羅多フィルタ(インピーダンスは約300Ω)に使う際には約2,500pFに変更する必要があります。 少々インチキな方法ですが、3,500pF程度にして兼用すると言う方法もありそうです。(笑)

IFTの改造
 IFTの内部に追加したコンデンサを入れてしまいます。 コンデンサの接続点を引き出す必要があえいますが、このIFTには余分な脚がないのでリード線を絶縁して引き出しておきました。

 車載用など振動の多い環境でもなければ、このような宙ぶらりんな状態で使っても問題はないでしょう。

 なお、世羅多フィルタの必要がなくなったら、引き出したリードは遊ばせてしまい、もとの端子(GとFの端子)を使えば従来通りになります。 うまく作れば世羅多フィルタのON/OFFをスイッチで切換えできるでしょう。(帯域外減衰特性が劣化する可能性があるので、スイッチ切換式はあまりお薦めしません)

 これで「STARのIFT」と言うテーマは終わりです。 次回はこのテーマとの関連で定番のLA1600に適した世羅多フィルタ用IFTを検討する予定です。 従来は既成のFCZコイル:10M455で間に合わせていましたが、最適なものを検討したいと思います。
つづく

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2009年10月30日金曜日

【その他】80,000回

8万突破:

今日、11時10分過ぎに80,000ビジターになった。
いつもご覧頂き有難うございます。

 アクセス多めでも昨今はROMに甘えるビジターばかりゆえBlogなんかオシマイにして・・・twitterにでも移ろうかとか思いはじめた今日このごろ。 サイトやBlogと中身はまるで違って来るけど・・・まあ流行(ハヤリ)だからねえ。(笑)

 Bloggerは特定サーバに依存しないクラウドゆえ、ほっておけば此処のコンテンツは幾らでも残りそうだ。 あっちに行った所でこのままでも良かろう。 まあそれで何か弊害でも生まれてきたら意図的に廃棄するしかないんだけれど。

# ホントは8万overはお祝いなのに・・・ちょっとなんでしたか?(溜息)


紅葉(おまけ)







2009年10月25日日曜日

【書籍】ARRL Handbook 2010

夕方、ARRL Handbook 2010年版が届いた。

 予定では11月になってからの発送と聞いていたので、少し前倒しになったようだ。 これは佐川急便で届いた。(参考:¥5,271-で購入。2010年版は高い?:現在は入荷時期未定だが¥4,208-で予約できる模様。円高の影響か?)

 例によって分厚いのでこれから目を通すところだ。 内容の単純な紹介は他所でも有りそうなので、すこし違った視点で考えてみようかと思っている。
 なので、少し時間をもらいある程度目を通してからにするつもり。  さりとてOver 1,000ページの英文だから十分に目を通してから・・・などと言ってると2011年版が出てしまいそうだ。 よってかいつまんだ内容になるとは思う。 なるべくポイントを外さぬよう気をつけねば。(笑)

# 早々に発注された皆さんの所にも届きましたか? いまワクワクでページをめくってるところ? hi hi
de JA9TTT/1

2009年10月24日土曜日

【部品】STARのIFT(4)

IFTの評価
 STARのIFT(←リンク)の4回目、A4・B4の電気的評価の2回目です。

 無負荷Qの評価やインダクタンスの測定も前回終わったので、コンデンサを付け直し再度組み立ててIFTとしての特性を実測します。

 写真はIFTの単体特性評価に使う治具です。 治具前段のアンプは内部インピーダンスが十分高く、被測定IFTに影響を与えないよう作ってあります。 また負荷側もFETのソース・フォロワなので十分高いインピーダンスになっています。 なるべ治具がIFTの特性に影響を与えないようになっています。

 そのほか、実際に真空管を使い五球スーパと同じIF増幅回路を構成しているテストユニットもありますが今回は使いませんでした。 ラジオとしてのオーバーオールのIF特性が必要になったら使うつもりです。

IFTの単体特性
 STARの普及型IFT・A4の単体特性です。 上記の治具を使って測定しています。 縦軸の一目盛りは10dBではなく5dBなので注意してください。

 -6dB帯域幅は約12kHzです。 IFT2個のオーバーオール特性では概略8kHz/-6dB程度になります。 一般の家庭用ラジオに使うIFTとしてはこのくらいが適当なようです。

 通信機用IFTのように選択度ばかり上げると中波AMラジオの受信では高音がカットされて音が悪くなります。 そうは言っても帯域幅を無闇に広くするとIF増幅1段のラジオでは裾野がブロードなので夜間の混信が怖くなります。 従ってこの程度の特性が適当と言うことになるでしょう。 実際にラジオに使い幅広く受信してみた経験から到達した製品性能なのだと思います。 頂部に平坦部が見られますから1次2次間はおおむねk・Q=1の臨界結合になっているようです。

 上記写真の特性はIFT A4のものですが、B4の電気的特性もまったく同じでした。要するに、この写真とまったく同じと言うことです。即ちこのIFTは事実上AとBの区別はないのです。

# IFTの整備と性能の確認が終わったのでこれをテスト材料に使うことにします。 本当はそちらが目的だったのですが、材料を用意するためのお膳立てにずいぶん時間を要してしまいました。

え〜と・・・何やろうとしてたんだっけ? すっかり忘れてしまいそうです。(笑) de JA9TTT/1

(さらにつづくと思う・たぶん)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.16)

2009年10月19日月曜日

【書籍】ARRL Handbook

昨日Amazon.co.jpから届いた。

 以前はペリカン便だったが、最近はJPとか佐川急便でも届くようで複数の輸送業者を使っているようだ。 これはJPの扱いだった。

 ARRLのサイトにも行って来たが送料を考えると割高のようなのでAmazon.jpで買ってみた。1,500円以上は送料無料である。 他に米国の古書店も当たってみたが、2008年や2009年版は新品との価格差はあまりないようである。送料も掛かるので古書のメリットが活かせない感じだった。

2008年版、2009年版:

 2010年版の予約をしておいた。そちらは11月になってからの発送だそうだ。 もともと2010年版の注文が本命で2008、2009年版はついでに・・・。 連続して買っても代わり映えしない内容が多いので2007年版以降はやめていた。 しかし成り行きで購入してしまった。 各版で多少の違いはあるが同じ記事も多いので3〜5年に一回くらいにしておく方が新鮮味があって良いと思う。 2010年版は大幅に改訂されるそうなので楽しみにしている。

 アマチュア無線ハンドブックはJARL版もあったが、発行に至るまでの作業は膨大でおいそれと改訂も出来なかったそうである。 筆者の皆さんは手弁当のボランティアな作業で作っていたと聞く。 ARRLやRSGBのハンドブックなら世界共通の英語だから良いが、日本語ではローカルなマーケットしか期待できない。 それに最近のJA-HAMは本を殆ど読まないそうなので毎回買ってくれそうにない。 数年間色あせない記事を集めるのも難しいと思うので結局続かなかったのだろう。 今のJARLにはハンドブックを監修し発行するだけのパワーはもう残っていないのかもしれない。 JAらしい面白い記事もあったので残念だ。

 ARRL Handbookであるが、読む苦労はあるものの良い内容が詰まっていると思う。 電気・電子・通信・半導体の専門単語を多少知っておけばあとは高校生レベルでも何とかなる。 どこぞの怪しげな雑誌(?)を買うより、運用に必要な情報はあるしリグ自作に欲しいデーターも概ね揃っているので一冊あっても悪くない。 最近の版はそのままを収録したCD-ROMも付録するのでパソコンで読むにも便利だ。 おそらくAmazonの電子ブックリーダーkindleでも読めるはず。 なので今度はkindleが欲しいなあと思っている。(笑)

2009年10月18日日曜日

【部品】STARのIFT(3)

IFTの評価
  STARのIFT(←リンク)その3回目です。 QメータでIFTを評価しています。 

 正しく言うと「IFTのコイル」の評価です。 Qメータは測定器内部のHigh-Qなバリコンと、被測定コイルを直列共振させて測定します。 従って、IFTの内蔵コンデンサは一時的に除去するか、配線を外さなくてはなりません。 黄色い軸で青い握りの棒は「調整用ドライバー」です。 先端に金属小片が付いているものでラジオ調整には必携でしょうか。昔から売っているものです。

最初、うっかりシールド缶を付け忘れて測定してしまいました。 こうしたシールド缶入りのコイルは必ず使用状態にして評価する必要があります。 シールド缶の有無でインダクタンスもQもかなり違ってくるからです。 特に磁性体の缶の場合は影響が強く出ます。(鉄製の缶が使えない訳ではない)

 このシールド缶の場合、缶の有無でQの値は10%ほど変わってきました。裸の場合は120弱のQが、有りでは105くらいになります。僅かですが上段のコイルの方がQは高いようでした。インダクタンスは概略1.22mHくらいです。

無負荷Q:Qu
 無負荷Qは100くらいです:@455kHz

 IFT A4とB4の違いであすが、Qもインダクタンスもまったくと言うほど同じでした。 前回のBlogで構造は寸分も違わぬと書きましたが、電気的な特性もまったく同じでした。

 コイルのインダクタンスは同じでも、IFTの場合は1次側と2次側の巻き線の間隔がAとBとで変えてあれば意味があります。 しかしそれもまったく同じなので違いは外箱(アルミ製シールド缶の押出文字)の違いだけと言うことになります。

 カタログ上はA4とB4は異なるモノのような書き方がしてあります。 結局、その違いは使う際に2次側に付ける負荷が異なるからなのでしょう。 もしA4とB4を入れ替えて使ったとしても結果はまったく同じになると思います。 なお、もとがジャンクのIFTだから入手するまでに他の組のAとBの中身が混じって入れ代わった可能性も否定は出来ませんが・・・(笑)

 インピーダンス表示ではなくゲイン表示なので、増幅管のgmを幾つに想定するかでも数字は変わってきます。 IFアンプ段はgm=2000μ℧の球(例えば、6D6)で規定していたと思いますが、コンバータ段は幾つを想定していたのでしょう? たぶん、当時の標準コンバータ管は6W-C5の筈ですから変換コンダクタンス:gc=450μ℧の想定でしょう。

【雑談:モーと言う単位】
「℧」・・・モー:mhoと書きます。導電度(コンダクタンス)の単位で、オーム:Ωの逆数とした単位・・・即ち1/Ωのことです。℧は既に「いにしえ」の単位であって、ジーメンス:Sと言う単位を使うのが現代電気屋の常識です。コンダクタンスの記号は一般に「g」の文字を使います。添字の「m」は「相互」を意味する「mutual」から来ています。すなわちgmとは「相互コンダクタンス」を意味する記号です。昔のラジオ少年(=ラジオ爺い・笑)にとって真空管の相互コンダクタンス:gmの単位は℧:モーの方がお馴染みだと思います。(笑)

 このIFTですが、典型的なLow-C、High-L型です。 廉価版のためリッツ線を使わなかった関係でQはやや低めです。その関係でゲインに関係する共振インピーダンスを上げるためにインダクタンスを大きくする設計になっています。
 1次と2次の結合状態は「臨界結合」です。従って、真空管に対する負荷インピーダンスはコンバータ段で180kΩくらいになります。IF段では二極管検波のインピーダンスが効いて来て約40kΩくらいのようです。 コイルの実測から求めた計算値とカタログの数字も概ね合っています。 部品ユーザーは完成したラジオの感度でIFTの優劣を評価する可能性があるので十分なゲインがあるように作ってある訳です。 もう一つ重要なこと、実測評価から判断して初期特性から殆ど劣化していないことがわりました。

 ST管当時の標準的なラジオ用真空管のgmは低いのでIFTでゲインを稼ぐ必要があるのはわかります。 それにしてもハイゲイン過ぎる(ハイ・インピーダンス過ぎる)のではないでしょうか? うっかりgm=4,200μ℧の6BA6クラスを使うと発振しそうです。 gm=2,000μ℧の6D6、6K7や6BD6が丁度良いIFTです。IFT-Aには6D6用として上部にグリッド配線が引き出されていましたからそう言う想定なのでしょう。 このあたり、IFTの設計と製作の話題に発展して面白いのですが程々にしておきます。 もしIFTの自作についてご興味があるようでしたらエレキジャック誌・第4号の拙記事「トロイダルコアを使った中間周波トランスの製作」(P103〜107)でも参照されて下さい。たったの5ページなので舌っ足らずな内容だと思いますが五球スーパー用と高一中二用を扱いました。トランジスタ・ラジオのIFT流用より高性能なIFTが作れます。(→参考)もうバックナンバーは買えないと思いますので古書を入手されるか出版社のコピーサービスをご利用下さい。

# シールドを良くし、アースポイントも選んで上手に組み立てると感度の高いラジオが作れると思います。もちろん6BA6で挑戦すべきです。 生半可なウデじゃ6BZ6や6GM6は無謀に過ぎるんでしょうねえ。(笑)de JA9TTT/1

つづく

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.16)

2009年10月17日土曜日

【測定】古城は住み難い?

こちら、会津若松の「鶴ヶ城」である。

 1960年代に再建されたので内部は「近代的」なのである。外観も奇麗に整備されており美しい姿を見せてくれる。 今年の夏に出掛けた時のスナップから。


 ところで、6月27日のBlogで扱った古城(=古いオシロスコープ):Tektronix 2440だが結局返品になってしまった。住んでみたら満足に暮らせないので契約を解除して・・・と言ったところだろうか。

 オークションではなくて、「中国地方」の老舗中古業者から購入したものである。オークションあるいは無保証の業者よりやや割高だったが半年間の保証が付いていた。
 ジャン測をどう考えるかだが、予め判っている不具合を自身で整備するつもりなら安価な方が良い。 しかしすぐ使うことを優先した「実用品」なら一応の確認済み、保証付きが良いと思う。中古業者によっては無条件に返品できる試用期間を設けているところもある。

「かたまる」

 そのオシロだが、動作しているときは機能も正常で精度も悪くなさそうであった。しかし、通電して短い時で15分、長い時でも1時間くらいで「固まって」しまうのである。 そうなると管面には何も出ないしスイッチ操作も受け付けない。
 マイコン搭載計測器の特徴と言った症状だろうか。 電源を切って30分ほど放置すると正常に復帰する。 何度やっても現象は再現するのでこれは明らかに不具合である。発生頻度も高く、とても実用にならないので原因特定の上で修理してもらうか、あるいは同等以上のものと交換をお願いすることにしたわけだ。

 ざっと症状を書いたメモなどを添付し厳重に梱包してお返えしした。 返却して約1週間、結局古城が帰って来ることはなかった。 症状が再現されたそうで、しかも修理は難しいようであった。なにぶん古いから止むを得ないだろう。更に適当な代替品もなさそうだったので、やむなく返金してもらうことにした。なくなるとちょっと不便だが仕方ない。 今度買うならLCD画面になるのだろうか?

「仮入城」

 応急の代替品である。 先代の少し校正がズレてきたTek2445を整備(再調整)するのがベストなのはわかっている。 しかし、いまは整備の暇がないから応急としてTek466に登場してもらった。波形観測の目的ならこれでも十分すぎる。一応アナログストレージ()もできることだし・・・。Tek 466もなかなかの古城(銘城?)である。これは以前自分で修理したもの。マイコンは載ってないので安心だ。(笑)


 その購入業者のことだが、応対は好感が持てるものであった。流石に古くから中古計測器を扱っているお店らしい。信用を重んじているのだろう。 スムースに対応していただけたと言うのが印象である。 保証があったので故障が見つかった時も安心感があった。 これがオークションのN/C、N/R品だったらいきなり粗大ゴミだったかも知れない。オシロなんて部品取りにもならないんだから・・・。

 ジャン測も目的如何で購入先を選ぶべきだと実感された。 いじってからダメだったと言って返す訳にも行かないので、自分では一切手をつけなかった。 故障原因に関して私の所見であるが温度が上がるとRAMの読出しエラーでも出るのではないだろうか? 揚句はマイコンが暴走し・・・。古いメモリICには結構あった劣化のように思う。暖まってくるとダメというやつだ。 同じ部品を入手して交換したら面白そうだ。直る確率も高いと思うが、まったくの見当はずれかもしれない。(爆)

# Tek 2440だが、なかなか良いオシロだったのでちょっと残念である。 では良い出物があればまた買うかと問われれば、それはやや微妙なところだ。 見かけは一見普通のアナログ風でも古いデジものはやっぱり・・・。

2009年10月16日金曜日

【部品】すっちーとマイカどん

STAR製IFTの構造
 妙なタイトルですが「STARのIFT」の続きです。

 STARのA4・B4はこのように絹巻き線で3段バンク巻きになっており、μ(ミュー)同調形式です。 コアの上下で455kHzに同調するよう調整します。 写真はA4の内部ですが、左のB4の中身もまったく同じ構造なのです。 寸分違わないと言って良いでしょう。 2つともまったく同じと言う件は次回の評価編ででも触れたいと思います。

 写真は整備済みのものです。 コイルは交換する訳にも行かないので、コンデンサだけでもと思い良いものに交換しておきました。 目視確認のレベルではありますが、巻き線の防湿処理もまだ効いているようで劣化も感じられませんでした。 中古品だった訳ですが、このIFTが使われていたラジオは用済みになってから雨ざらしにされたようなこともなかったようで、コイルの状態は悪くありませんでした。

マイカドン
 こちらが「マイカドン」です。

 使ってあった同調コンデンサは、100pFのマイカ・コンデンサでした。 いまでは死語になっていますが、「MICADON」と表示されたものが使ってありました。 それだけでもこのIFTの年代を感じさせます。 もう少し後のIFTでは安価でしかもQの高い円筒型「チタコン」が使われるようになります。

 マイカドンと言うのは、マイカ・コンデンサの一商品名であり、米Dubillier社(いまはCornell Dubilier Inc.)が1920年代に発売した製品の名称でした。 高周波用コンデンサは他に良いものがない時代だったのですぐさまその用途を独占してしまったと言います。 そのため「マイカドン」がマイカ・コンデンサを意味する一般名称になったのでした。 昔のラジオ本を読むと「・・・グリッドリークと並列に250μμFのマイカドンを・・云々」と言う記述を目にしました。 一般化していたことが良くわかります。(なおマイクロ・マイクロ・ファラド:μμFと言うのはpFのことで、昔はピコ(p)と言う単位は殆ど使わなかったようです)

 過去にも度々書いて来きましたが、この形式のマイカ・コンデンサは「鋳込みマイカ」(モールド・マイカ)と言うもので、リード線の引出し部分から湿気が侵入しやすい問題部品なのです。 長年の間に絶縁低下するもの多数でした。 或は引き出し部で断線するらしく、容量が失われることもあります。 ランダムなノイズの発生源になることもあります。従ってなるべくなら使わぬ方が良いでしょう。(いや、使用禁止にしたいくらいです) マイカ(雲母)は鉱物なので湿気くらいで劣化しませんが電極金属がイオン化して移行するのが原因のようです。 もしマイカ・コンデンサに交換するなら是非とも「ディップド・マイカ」と言う新形式の物を使うべきです。 構造上、鋳込みマイカよりずっと耐湿性に優れています。

 マイカドンのことを酷く書きましたが、使ってあった物は取りあえず大丈夫そうでした。 密閉された部品箱の中にあったので保存環境が良かったのでしょう。 測定してみたら101pF〜106pFの範囲にあったから目立って劣化していないようでした。 ただ、過去のレストアでは次々に壊れるマイカ・コンデンサに手を焼いたので古いマイカは交換するのが方針です。どうしても再利用したいなら「絶縁試験」くらいは済ませてからが良でしょう。

スチロール・コンデンサ
 こちらが貴方もお好きな「すっちー」だ。(笑)

 交換に使ったスチロール・コンデンサです。 100pF/125V耐圧のごく普通のものです。 IFTは共振特性が鋭いとは言っても、125Vppもの電圧がコイル両端に発生することは考え難いので十分な耐電圧でしょう。
 誤差記号はKで±10%精度だったので容量計で確認してから使いました。 最大5%以内の誤差だったので、そのまま使っても大丈夫だったようです。きちんと保存されていたがそれなりに古いので念のために確認してから使いました。

 スチロールと言うのはドイツ語で、英語では(ポリ)スチレンだそうです。 たいへん優秀な誘電体材料なのでQの高いコンデンサが作れます。 しかし昨今はあまり使われなくなりました。 スチロール樹脂は耐熱性に劣り面実装にはまったく適さないからです。 まして高温になる鉛フリー実装ともなればどうにもならないでしょう。 高性能なLCフィルタなどには是非とも使いたいコンデンサですが、上手に手付けする必要があって量産品への採用は難しいと思います。 もっともアナログでフィルタを作るのは無くなっていますから、プロフェッショナルな電気の世界では重要度も下がったように思います。昔の高性能アナログ回路では多用されたのですが・・・。

 なお、縮めて「スチコン」と呼ばれることはあっても「すっちー」とは言わないのでご用心を。 このBlogの外じゃ通用しませんから。(^_^;;

 今でもスチコンは入手できると思いますが、難しいようならNP0(=CH)特性のセラミック・コンデンサでも良いでしょう。 温度補償系ではないセラコン(=高誘電率系セラコン)は温度特性が悪いだけでなく、中にはQが極端に低いものがあるので共振回路に使うべきではありません。 セラコンを使うなら必ず温度補償系の物を使って下さい。

 IFTのレストアと言ってもアルミの外箱を磨いて済ませる訳にも行きません。内部の点検と怪しくなってきた部品を交換してリニューアルしておきました。 あとは性能の確認をしておけば、取りあえずIFTとしての整備は終了です。安心して再利用できるでしょう。de JA9TTT/1

つづく

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.16)

2009年10月12日月曜日

【部品】STARのIFT(1)

スターのIFT
(IFT:Intermediate Frequency Transformer 中間周波トランス)

 スターはTRIOや松下電器産業と共にラジオや通信機の自作用ラジオ部品を供給する部品販売の大手でした。 富士製作所と言って戦前からあった部品メーカーで戦後も逸早く生産を再開しました。ラジオ部品としては特にRFコイルと中間周波トランス:IFTは有名で、五球スーパから高1中2通信型受信機の製作まで幅広く愛用されていました。 IFTはスーパ・ヘテロダイン型ラジオの選択度を決める重要な部品の一つです。
 なおTRIO方が早くからアマチュア無線用通信機を発売していた関係でHAM仲間には馴染みがありました。無線雑誌では TRIOのSシーズ・RFコイルやTシリーズ・IFTが幅を利かせていた感じでしたね。

 はっきりした記憶はありませんがこのIFTは自作ラジオか受信機に使う目的で40年くらい前に手に入れたと思います。ハンダ付けされていましたが使った記憶はありませんから最初から中古品を頂いた物のようです。 当時は部品を再利用するのはごく当たり前のことでした。使えそうなら有難く頂戴するのが普通だったのです。
 既にゲルマ・ラジオ〜五球スーパまで一通りは作ってしまっていたと思います。ですから単なるラジオは目標で無くて本格的な受信機を考えていたのではないでしょうか。 既に選択度をIFTで稼ぐ時代ではなくてメカフィルが登場していましたのでIFTは段間にでも使うつもりだったのだでしょうか。 或はプレート同調型のBFO発振用に改造するつもりだったのかも知れません。

 この写真は既に整備が済んだ後のものです。放置されていた中古品なので歳月の経過でくすんで薄汚れたものでした。 内部の点検整備と性能確認のついでに磨いたのでだいぶ奇麗になりました。 汚いままのジャンクでは食指も動きませんが、こうなれば別物でしょうか。性能も確認済みだが売り物ではありません。(笑)

STARのIFT規格表
 型番はA4・B4型と言うIFTだとわかったので概略の規格も判明しました。 表の赤く囲った所がこのIFTの規格です。 説明によると廉価版のポピュラーな品だったようで、ごく普通の家庭用ラジオに多数使われていたIFTのようです。

 ミキサー段の負荷に使うIFT-Aには次段のIFアンプの・・たぶん6D6の・・グリッドへ行くリード線が出ていました。ST管でラジオを作っていた自作全盛期の定番IFTなのでしょう。

 規格がわかったお陰で点検整備の助けになりました。 整備の結果が初期性能に近いものなら安心できます。この時代の一般的なIFTは類似特性だと思えば良いでしょう。ジャンクの性能を推測する手助けにもなりそうです。

 STARと言っても今のHAMには馴染みはないでしょう。 HAMの関係で言えば1960年代初めはTRIO(現・Kenwood)と共に人気を二分していた無線機メーカでした。 受信機SR-500/550とAM・CW送信機ST-333のコンビは人気がありました。お空のシャック紹介では良く耳にしたコンビでした。 またSR-600型はアマチュア用として国産で初めて1kHz直読を実現した高級受信機でした。 後年登場したSTAR-700 LineはDrake 2B Lineをお手本にし、完成された高級セパレート機として海外(米国、欧州)でも好評を得ていたようでした。

 しかし初級無線従事者免許の講習会制度が始まりアマチュア無線ブーム到来の好機に廉価版のSSB機・・特にSSBトランシーバ・・の開発では後手に回ってしまったようでした。 最後の頃の思い出と言えば、SR-200型がコンパクトで安価な受信機として興味を持ちました。 ただトランシーブ可能なペアの送信機がないと言う欠点があったのです。(後になって合併後の八重洲無線が出したST-200はFL-50の箱を換えただけのまやかしでしたね) 結局HAM用機器はジリ貧となり1969年には八重洲無線に事業譲渡されてしまいました。その後の八重洲無線のリグにはSTARの技術が引き継がれているに違いありません。

 ところで、IFTの整備をして今やブーム(?)の五球スーパを自作する・・・つもりはぜんぜんないのです。 おいおい何をするのか経緯も明らかになって行きますが、まずはIFTをジャンク箱(御宝箱?)からピックアップしてきたと言うところでおしまいです。 これで三連休も終わってしまいましたねえ・・・。(悲) de JA9TTT/1

つづく

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.16)