2009年11月23日月曜日

【旅】冬桜@2009

冬桜:

冬の桜を見てきた。「旅」と言うほど遠方でもない。
春の桜とはまた違った趣がある。花のかたちも少し違うようだ。

「寂しい感じ」だろうと思っていたが、なかなか賑やかな咲きっぷりだ。 満開を過ぎてもサクラ吹雪のようにはならないようである。 春の桜よりずいぶん長く楽しめるとか。

冬桜風景:

松の緑、紅葉の赤、桜の薄紅がいっぺんに見られる。
ちょっと不思議な景色だ。

樹による個体差が大きいようで、咲き具合は「ちらほら」〜「満開!」までいろいろだった。






紅葉も:

ちょうど紅葉も見頃だった。 11月も末になり遅いだろうと思っていたら良い頃合いだった。 山は赤や黄色に濃く彩られていた。

ここは彩り豊かな「彩の国」ですから。(笑)





場所はこちら: 城峯公園

大きな地図で見る

# 冬桜はそろそろ盛りを過ぎて来たが紅葉は来週も楽しめそうだった。

2009年11月14日土曜日

【部品】7PLAコイルの巻き方

参考:一般的な『FCZコイルの巻き方』に関しては、こちら(←リンク)を参考に。

7PLAコイルについて
 「世羅多フィルタとLA1600」との関連で、フィルタのインピーダンス・マッチング用IFTの設計と製作をテーマにします。

 7PLAと言うのは、東光製コイルの一形式のことで、HAMにお馴染みの10Kとか7Kなどと同じような「巻枠+シールドケース」の形式を示す型番です。

 透磁率:μ(ミュー)の大きなコアが使われていて、巻線もたくさん巻けるので、大きなインダクタンスが必要な低い周波数向きにできています。(コア材も数種あるようですが、何れも中波どまりでHF帯には向かないようです)

 大きく分けると3つに分かれる構造になっています。 実際には写真右上側の外ネジの切ってあるカップ型(壷型)のコアは写真中央のシールドケースと一体になって外れます。従って二つに分かれる訳ですが、ここでは説明のためにカップ型のコアを外しています。

 左側の足ピンのはえた台座の上部に鼓(ツヅミ)型のコアが接着されています。 コアを芯にして直接巻き線してあります。 このように台座が外れ、ツヅミの回りには障害物が無い状態で取り外せるため巻き換えは比較的容易にできます。

7PLAの分解方法
 シールドケースの底面側にツメがあって、台座を押さえています。 このツメを起こせば簡単に台座を取外すことができます。

 シールドケースは真鍮の薄板をニッケルメッキしたものです。 数回の開閉なら大丈夫ですが、何回もできるようにはなっていません。 このツメが折れてしまうと使い物にならなくなるので注意しょうましょう。

 入手したコイルによっては底面にコンデンサが内蔵されている場合があります。 容量によっては再利用できるので、上手に外して測定しておくと良でしょう。 コンデンサは円筒型のチタコンで容量値は書かれてないためCメータで測定して確認します。

台座と巻線
 台座は容易に外れます。 巻線部分はこのように防湿のためワックスで処理してあることが多ようです。 巻き換える時にワックスは取れてしまいます。

 自分で巻き替えたあと、防湿処理はしないで済ませるのか、改めて何かを塗布するのかを考えておきましょう。

 非常に悪い環境で使う場合や或は長期間の性能を維持するためには防湿処理すべきです。 しかし過去の製作では特に何もしていませんが問題が起こった経験はありません。 メーカーと同じワックスが入手できればぜひ処理しておきたいと思います。 少量の入手が可能な方法があれば教えて頂ければと思っています。 巻線が固着しても良ければ高周波ワニスを塗布しても良いでしょう。高周波ワニスなら小ビンに入った物が手に入ります。

巻線除去
 ボビンだけの未組み立て品が手に入れば分解する必要はありません。しかし大抵はジャンク品を再利用して改造することになるでしょう。 この例では250kHzあたりで使う目的で作られたジャンク品を改造しています。(あとで頒布する予定のものと同じです)

 もともと巻いてある線を上手に解き、それを巻き直してコイルを作ることにします。 足ピンにハンダコテを当てながら先の細いピンセットで巻線をそっと引き上げます。

 写真の位置が一次側巻線(同調側)の巻き終わりになっています。 巻き数の少ない側(リンクコイルなど)が内側に巻いてあるのが普通です。 反対側の2本ピンが出ている側に巻いてある巻線が2次側巻線なので、コアに近い内側に巻いてあります。

 巻線はφ0.05mmくらいのたいへん細いものが巻いてあります。 この改造では巻線も再利用するので切らないように上手に解いて行きます。 このコイルの場合は中点タップがあってそこで一旦切れています。 もともとの巻線はかなりたくさん巻いてあります。 新たに巻き直すのはずっと少ない回数で済むため、再利用する電線の長さには十分な余裕があります。

ハンダ付けを外す
 このようにハンダ付けを外したら、切ってしまわないように上手に巻き解いて行きます。

 なおワックス(パラフィン)は柔らかいものなので、事前の除去などが不要ですから気しないで解いて行きます。

 解いた巻線にワックスが付着してくるので、後でティシュ・ペーパーなどで軽くぬぐっておけば良いでしょう。 キンクが発生しないように注意して下さい。

2次側を巻線する
 最初に2次側(リンク側)を巻きます。 この例ではCW用なので4回巻きました。 線が細いので少しコツが必要で慎重さも必要ですが、巻き替えは難しいものではありません。

 巻線は再利用していますが、十分余るのでうまく行かないようならやり直しても足ります。失敗しても心配は要りません。
 
 万一、巻線を切ってしまったらφ0.1mmくらいの別の線を巻いても良いでしょう。あまり太い線だと予定の回数だけ巻けなくなります。従って線の太さはφ0.1mmまでが良いです。 巻線の径が異なればインダクタンスも変わる筈ですが、コアの調整で十分カバーできる範囲の違いなので心配いりません。

 もちろん表面が絶縁された電線を使うことになりますが、ごく細い線の絶縁被覆を機械的な方法で・・・例えばサンドペーパとかナイフなどで・・・除去するのは容易でありません。 ポリウレタン電線(記号UEW:ウレメット電線とも言う)を使うようにします。 UEW線ならハンダコテの熱で絶縁被覆を除去できるのでとても簡単に巻線することができます。

1次側を巻線する
 続いて1次側を巻きます。 前のBlogに於いてT1の場合は72回目でタップを引出し、合計で143回巻きます。 写真は巻き終わった状態です。 なお、T2は巻き始めから18回目でタップを引き出します。こちらも合計で143回巻きます。

 その他のコイルも製作の要領は同じなので、図面の指示に従って巻線します。 巻き終わったら必ず導通を確認しておきましょう。 また、インダクタンスメータがあればシールドケースを仮に被せ確認しておけばより確実です。(ツメは正しくできたことが確認できてから「かしめ」ます)

 コアの調整によるインダクタンスの調整範囲はかなり広いですから、巻数を大きく間違えなければ調整不能になるようなことはまず無いでしょう。難しいと思わず気軽に製作して大丈夫です。

シールドケースをかしめる
 確認が済んだらシールドケースをかしめて完成です。 さっそく名称を書いておき、どのコイルだったか識別できるようにしておきます。

# わからなくなったら、あとから調べるのは意外に厄介です。(笑)

 写真はLA1600に世羅多フィルタを付けるために作ったもので、図のT1です。

φ0.1mmのUEW電線
 巻いてあったものを再利用すれば良いので新たな巻線はいりません。 もちろん、再利用はせずに巻き易いφ0.1mmのUEWで新たに巻き直しても良いです。これはその確認に使ったものです。

 子供のころ近所にあった電子部品下請け工場に電線を分けてもらいに行ったらお土産に頂いたものだったと思います。拙宅には随分前からあるもので、なかなか使い切れません。たぶん、一生ものです。(笑)

 細い線は使っても僅かしか減らないので、購入するならもっと少量にしておいた方が良いです。 EIコアにアウトプット・トランスでも巻けば消費量も増えるかもしれませんが、トランジスタ回路用のIFTを巻く程度では一生掛かっても使い切れそうにありません。(笑) 必要なら所要量+αの分を差し上げます。 巻き直すのが面倒なので必要量+αでご勘弁を。

 φ0.1mmの次はφ0.16mm、その上はφ0.20、0.32、0.40、0.60、1.00mmなどを常備しています。 殆どの場合、φ0.16mmあるいはφ0.32mmを使うことが多いです。 トランス屋さんではないので、だいたいこの程度を用意しておけば困ることは無い筈です。

                  −・・・−

【FCZコイルを考えてみる】
 既に販売は終了していますが、あらためてFCZコイルを考えて(検討して)みました。

 その結果、前々から書いているようにFCZの10M455を使えばかなり良い線まで行くことがわかりました。 10mm角なので少し大きくなりますが、それが支障になるケースは稀でしょう。 従ってコイルの自作は面倒と感じるなら10M455を使うのが良いのです。 その場合、必ずFig.2のFETを使う方式を選択して下さい。 10M455は真空管の回路にも使うことができます。

【2011.6.2:追記】FCZコイルが製造中止になりました。 コイル巻きは難しい訳ではありませんが、どうも人気がありません。しかし、既製品がなければ自前で何とかするしかありません。 10M455が入手できなくても、このBlogのように自作で解決できます。 以下の頒布は今でも継続していますからご希望があれば問い合わせ下さい。

(おわり)



7PLAコイルの頒布案内
 小型化するために7mmm角のコイルで作りたい人に、ここで使った7PLAコイルを2個一組で差し上げます。 もちろん無償ですがSASEの送り先を返信しますから次のアドレスまでまずはメールを送って下さい。 メールは「ttt.hiroアットマークgmailドットcom」で届きます。(カタカナ部分は記号などに直す) それなりの数量を用意していますが、予定数になりしだい終了させていただきます。このBlogで頒布終了の追記があるまでは継続します。

SASEとは自分の住所氏名を書き必要な額の切手を貼った返信用封筒のことです。(Self‐Addressed Stamped Envelope) 破損しないよう緩衝材で入念に包装すため封筒の厚みが定形外になります。120円分の切手を貼った返信用封筒を送って下さい。


参考:一般的な『FCZコイルの巻き方』に関しては、こちら(←リンク)を参考に。



(Bloggerの新仕様対応済み。2017.04.02)

2009年11月8日日曜日

【映画】ゼロの焦点

小説:ゼロの焦点

 昨日は山崎豊子の「沈まぬ太陽」を見てきた。国民航空NALを舞台にした左遷人事と会社を食い物にする政治家と御用組合・・・昨今の某航空会社そのままをただちに連想させる内容である。確かに映画化には抗議が来てもおかしくない。 利用価値の無い地方の「政治家空港」への義務的な(赤字)就航を余儀なくされた航空会社にとってどんな経営戦略も意味を持たないだろう。そうした気の毒な面もあるが、一面ではうまい汁を吸っていそうな(正)社員の姿がだぶれば、税金投入になりかねない救済に納得できないのも当然な感覚だろうと感じつつ、完全なフィクションと言う映画を見終えた。

 来週から始まるのが標題の「ゼロの焦点」である。 何となくストーリーは知っていたが、読んだことは無かった。 映画の予告編を見て(一足先に・笑)展開を追うために階下の書店に寄ってしまった。 たぶん、先に読んだら面白くないだろうと思いつつも、写真の三女優がどのように演じるのか映画も見てみたいと思ったしだい。(笑)

 500ページ弱の中編を一気に読み終えたばかりだ。 金沢を中心に能登あたりの風景を描写するシーンが多々登場する。 津幡と言えばJA9CZJ松盛さんが・・・とか、羽咋海岸でキャンプしたなあ・・とか、和倉温泉は行ったことはあっても逗留した経験は無いなあ・・・とか、シーンごとに自分のイメージを重ねながら駆け足で読み終えた。
 舞台となった昭和30年代のはじめころは私の親の時代である。時代背景や生活の実感は湧かないが、敗戦の痕跡がまだ色濃く残っていた時代に違いない。 今の時代にはそぐわない古い時代の感性に基づくだけに映画がどれほど共感を得るかは未知数だろうと思う。 なので三女優に賭けたのかもしれない。(笑) まだ見てはいないが、一応お薦めしておこうか・・と。

追伸予定の1日遅れで「ゼロの焦点」を見てきた。二時間少々のTVドラマチックなのはやむを得ないが予想したよりかなり良かった。ストーリーの終わらせ方は小説の方がドラマチックと感じるので先に映画の人も読んでみるのをお薦めしたい。「おくりびと」の印象から難しそうに思った禎子役の広末涼子も悪くなかったと思う。(2009.11.15)

2009年11月7日土曜日

【回路】世羅多フィルタとLA1600

【回路:Cerladder Filter and a Radio chip LA1600】
AMラジオチップLA1600】(SANYO /現 ON semi.)
 LA1600と言うラジオ用のICは、思い切った発想から最少の外付け部品で実用的なAMラジオを実現したICです。 三洋セミコンダクタ社が開発したAMラジオ専用チップです。

 必要な機能に絞り、たった9ピンでRFアンプ付きスーパ・ヘテロダインを実現しています。 あとはお好みの低周波アンプを付ければAMラジオが完成してしまいます。しかもかなり高性能です。 スーパ・ヘテロダイン方式の発明者:E.H・アームストロングが見たらきっと目を回すにちがいありません。(笑)

 残念なことにこのLA1600もついに生産終了です。 今では小径になってしまった4インチ・ウエファの生産ラインが終息するためのようです。 採算性の良くない製品を整理する意味もあるのでしょう。
 AMラジオ単機能のICチップは自作アマチュアには有難くてもセットメーカーにとって好都合とは言えません。 今どきAMだけのラジオはオモチャのような扱いです。 付加価値を付けるためにFM付きラジオにするなら別のチップ(例えばTA2003Pなど)を選ぶ方が賢明でしょう。既にLA1600のニーズは減っていた筈です。

 AM放送は不滅だと思っていますが、シンプルな専用ICが消えるのも時代の流れでしょう。 ただ、このICの機能ならトランジスタ3〜4石で十分に実現可能なのであまり悲観的になる必要はないと思います。 トランジスタを使った設計なら部品数は増えますが設計の自由度が増えると言ったメリットがあります。 生産中止で僅か100円のICチップがあまりにも高騰するようなら違う手を考えるべきでしょう。安いからこそ意味があったICチップです。

 それでもまだ入手はできますしパーツボックスに眠ったままのLA1600もたくさんありそうです。 世羅多フィルタと組み合わせ、BFOも付加すれば立派なHAM用通信型受信機になるでしょう。もう暫く利用価値がありそうなので検討してみましょう。

世羅多フィルタ(せらだフィルタ)のマッチング回路】(LA1600)
 以前あったweb記事では既成のコイルで済ませる関係で回路形式は限られてしまいました。 コイルを自分で巻くつもりなら回路設計の幅が広がります。

 :CSB455E(村田製作所)を使う前提で設計しています。中国製CRB455Eの場合、厳密には設計変更が必要になります。但し、そのまま作っても極端にずれてはいないので十分に実用範囲でしょう。

 左図のFig.1は世羅多フィルタ(せらだフィルタ*1)に合わせたIFTを作って最適化をはかる方法です。 入力側:T1はLA1600のミキサー負荷の高インピーダンスを世羅多フィルタの低インピーダンスに変換します。 出力側:T2は世羅多フィルタの低インピーダンスをLA1600のIFインピーダンスに合わせるためのトランスです。 LA1600のIFアンプのインピーダンスは明確にはわかりませんが、2kΩくらいのようでした。T2はそれに合うよう設計しました。

【コラム: 世羅多フィルタとは?】  これは私の造語です。セラミック振動子を使ったラダーフィルタの愛称で「世羅多フィルタ」と名付けました。 セラミック振動子を数使っているフィルタと言う意味も掛けています。 更に世界中に、すなわち世羅に広がって欲しいと言う気持ちも込めています。「世羅多フィルタ」と愛称していただけたら嬉しいです。

 Fig.2は既におなじみの方法です。 FET:2SK241(Yが良いがGRも可です)が一つ増えますが出力側IFTの構造は簡単になります。  またFig.1よりもトランスによる「昇圧利得」が大きくなるで、通信型受信機としてゲインに余裕が増えます。 もともとはアイテック社製SR-7受信機の改造のために応急に考えた方法でしたが、悪くない方法だったと思います。

 この2SK241の部分ですが、FETはさして増幅していません。 FETの増幅作用によるゲインは僅か数倍くらいです。 大半の利得はT102の巻数比による昇圧利得によるものです。 FETはインピーダンス変換が主目的です。 ゲインはあまり稼がない方が安全です。 ドレイン負荷を単なる低抵抗にしているのはそのような意味からです。 FETは2SK19、2SK41、2SK192などでも大丈夫でしょう。(Idss=1〜5mAくらいのランクが良いです)
 ここを抵抗器ではなくIFTにすればゲインがアップしますが、発振気味になっては困ります。 IFTを離調させたり抵抗をパラに入れQダンプして発振を止めるくらいなら最初から抵抗器を使う方が賢明です。

 SR-7の例で言えばゲインが不足して相手の信号が聞こえないとは考えにくいでしょう。 聞こえないのはコンディションが悪いかアンテナが上手くないなのであって、そんな状況では自局の波も良く飛んで行きません。 受信機は必要以上にゲインを稼ぐ意味はなく、むしろ安定に動作することを優先すべきです。

7PLAコイル
 東光製のトランジスタ回路用7mm角コイルです。  HAMの自作でおなじみだった7Kタイプとは異なった内部構造です。 おもに中波帯以下の低い周波数で使うものでしょう。 巻溝付きのボビンではなく、鼓(ツヅミ)型のフェライト・コアに直接巻線します。

 可変コアは鼓を覆うようなカップ型をしており外周にネジが切ってあります。そのネジとシールドケースのネジが勘合してカップ型コアの上下でインダクタンスを加減します。 組み立て易く部品も少ないうまい構造だと思いました。 分解も容易なので改造目的にはマッチしています。

 小指の先ほどの小さなコイルですが、455kHzでQu=100以上が得られるのでSTARの大きな真空管用IFTと比べても遜色のない性能です。 但しこうしたトランジスタ用のボビン/コアは1次と2次の巻き線が構造上必ず密結合になります。 真空管用IFTのような復同調形式にするには2個使ってC結合で実現しなくてはなりません。(2個のコイル間をリンク結合する方法でも可能ですがそうそう単純に性能が出せません)

# 上記7PLAコイルの巻き方については次回のBlog(←リンク)で扱っています。

SR-7DXの回路】(おまけ)
 アイテック製のSR-7を世羅多フィルタ付きに改造する方法を示します。

 これは以前webに公開していたものと同じです。 LA1600を扱ったのに回路図がないと寂しいので「おまけ」で付けておきます。

 この回路の個人的な利用に制限はありません。もし拙Blogの記事や回路を参照して受信機の製作記をお書きなら引用元を明確にしておいてください。 オリジナルの情報がわかれば追試するときの参考になります。

 なお、少々部品定数を変えた程度でご自身のオリジナルであるとするご主張は認められません。まさかとは思いますが、商用的にご利用したいならお問い合わせをお願いします。

# 『世羅多フィルタの実装方法』を扱うBlogは:→→こちらから。

7PLAコイルの巻き方へ(つづく

(Bloggerの新仕様対応済み。2017.04.02)

2009年11月1日日曜日

【部品】STARのIFT(5)

部品:STARのIFT・その5
STARのIFTを世羅多フィルタに使う
 単にIFTそのものをテーマにするのは済んだのですが、一応今回までが「STARのIFT」で、その第5回目になります。

 真空管用IFTだから真空管式のラジオでも・・・とご期待されていたお方には少々申し訳ないかもしれません。 今まで世羅多フィルタを真空管機に取り込む検討は十分ではなかったようの思います。 ニーズは少ないように感じていたからでした。

 検討を始めて、真空管回路に使おうとすればIFTそのものを理解する必要に迫られます。それでSTARのIFTを調べ始めたような訳なのですが、目的に対して必ずしも適切なIFTではなかったようです。 手元のジャンクからピックアップしたのでやむを得ませんが、このIFTは廉価版なのでそれなりの工夫もしてあって、あまり改造向きとは言えない感じです。

 しかしハイゲイン指向のIFTなので上手に使えば高一中くらいでも交信に使える実用受信機ができるかも知れません。 もちろん家庭用ラジオとは違うので必要な感度を得るための配慮が必要でしょう。 例えばIFアンプにはややHigh-gmな6BA6クラスの球を登場させることになります。 コンバータ管も6BE6よりも変換コンダクタンス:gcが大きなものが良いでしょう。 ペンタグリッド管の自励コンバータで考えると選択肢が限られてしまいますからOSC+MIXerで考えると有利す。例えば6U8や6GH8Aなどいくらでも候補はあります。

# 受信機の設計となると他にも種々考慮する事項があります。ここでは世羅多フィルタの活用に絞った部分について考えています。

世羅多フィルタの真空管回路への応用
 世羅多フィルタの終端インピーダンスはCW用が約100Ω、SSB用が約300Ωになります。 それに対して真空管回路では、IFT部分のインピーダンスは低いもので50kΩくらい、高いものでは200kΩを越えることもあります。

 従って何らかのインピーダンス変換を行わないとまったく使い物になりません。 このあたりが、世羅多フィルタを使ってみたいと思っても真空管式受信機に利用されていない理由でしょう。 もちろん回路を良くお判りのお方が旨く工夫されている事例を拝見したことがあります。 回路のエキスパートには無用な情報かもしれませんが、真空管回路でも使って頂きたいので検討しておくことにしました。 既成受信機の改造にも役立つでしょう。

 左の回路図で、Fig.1は当初から考えた方法です。 真空管用IFTを改造してC分割によるインピーダンス変換を行う方法です。 コンデンサによる分割比を求めるためにはIFTの特性と回路の動作状態を知る必要がありました。 調べた結果から、STARのA4・IFTをC分割式で改造するには図のような容量になりました。 C分割すると容量比で信号振幅は小さくなってしまいます。 従ってフィルタの出力側にはインピーダンス・マッチングしながら昇圧機能を持っているトランス(IFT)を使うと有利です。 トランスT2がそのためのこので、製作については別途Blogで扱うつもりです。

 Fig.2は、IFTを改造しない方法です。 Fig.1のようにC分割でマッチングするには厳密に言うと事前にIFTの評価が必要になります。 部品数は増えてしまいますがIFT間の結合を加減できるようトリマコンデンサを入れておき、組み立て後に調整で追い込む方法があります。 結果が良ければOKと言う簡易手法と言えそうですが、アマチュア的にはこの方が楽でしょう。 T101はもとの真空管用IFT、この場合はSTARのIFTと言う事になります。T103が追加するIFTで、これは出力側T102と同様にトランジスタ回路用の小型IFTを使います。小さなIFTなのであまり場所は取らないでしょう。T103とT102の製作についても別途扱うつもりです。

C分割に使ったコンデンサ
 CW用世羅多フィルタの場合、インピーダンス変換比が大きかったので分割容量は4,300pFにもなりました。 ここのコンデンサもHigh-Qなものが良いので同じくスチロールコンデンサを使いました。

 4,300pFは1個で得られなかったので2,100pF2個と100pFを並列にしました。 なお、もともとの同調容量(100pF)も少し大きくすべきですが、追加すべき量は計算上約2pFなのでIFTのコアを微調整すれば済む範囲です。 インピーダンス整合にもわずかな影響しかないのでそのままで済ませることにします。 回路図中のFig.1におけるT1の部分がその部分です。

 IFTが異なれば、当然この4,300pFと言う値も異なります。 いつでも4,300pFにすればマッチングする訳ではありません。 同調容量、Qと共振インピーダンスなどから改めて適した値を求めることになる訳です。
 このSTARのIFT(A4・B4)でも、SSB用の世羅多フィルタ(インピーダンスは約300Ω)に使う際には約2,500pFに変更する必要があります。 少々インチキな方法ですが、3,500pF程度にして兼用すると言う方法もありそうです。(笑)

IFTの改造
 IFTの内部に追加したコンデンサを入れてしまいます。 コンデンサの接続点を引き出す必要があえいますが、このIFTには余分な脚がないのでリード線を絶縁して引き出しておきました。

 車載用など振動の多い環境でもなければ、このような宙ぶらりんな状態で使っても問題はないでしょう。

 なお、世羅多フィルタの必要がなくなったら、引き出したリードは遊ばせてしまい、もとの端子(GとFの端子)を使えば従来通りになります。 うまく作れば世羅多フィルタのON/OFFをスイッチで切換えできるでしょう。(帯域外減衰特性が劣化する可能性があるので、スイッチ切換式はあまりお薦めしません)

 これで「STARのIFT」と言うテーマは終わりです。 次回はこのテーマとの関連で定番のLA1600に適した世羅多フィルタ用IFTを検討する予定です。 従来は既成のFCZコイル:10M455で間に合わせていましたが、最適なものを検討したいと思います。
つづく

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