2009年12月20日日曜日

【HAM】4Tr-Regenny

4石再生式受信機】(実用的)
 前のBlogでは、2石式のごく簡単な再生式受信機(←リンク)を扱ってみました。

 流石に2石では心もとない所もあって、交信に使える最低限の受信機なのはやむを得なかったでしょう。 むしろ、2石再生式受信機で実際に交信したのなら、大したものと言えるくらいです。(笑)

 もう少し実用的な例を紹介しておくことにしました。 これは英国のHAM、Des Vance / GI3XZMが『少ない部品で使い物になる受信機』として考えたもので"blooper"の愛称で呼ばれているものです。*1 

 アンテナ同調回路は、左図(a)の様なLoop形式にすると便利が良いのですが、やや感度が低いのでBCL用(短波放送の受信用)になるようです。同じくBCL用でも比較的ハイバンド(9〜16MHz)の受信には(b)が向いています。 BCLの入門者が長さ10mくらいの適当なワイヤーアンテナでそこそこ楽しめるだけの感度があるそうです。(*1RSGBの機関誌RadComより)

 3.5MHz〜7MHzのHAMバンド受信用(SWL用)には外付けアンテナ形式の(c)が良いでしょう。アンテナと直列の30pFのトリマコンデンサは是非とも付けておくべきです。

 検波に適するレベルに加減できないと最高性能を発揮できないのは2石の例と同じです。 HAM用・SWL用なら(d)のようなローパス・フィルタ、あるいは(e)ようなCW用バンドパス・フィルタを図(a)の中央部分にある4.7μFと交換に入れると一段と実用的になります。(88mHの電話回線装荷用コイルはJAに於いては入手しにくいでしょう。しかしQの低いCoilで代用はNGです。フェライトのPot Coreに巻いて自作する手があります)

 なお、前のBlogの再生式受信機では、SSBの受信にかなり難点がありましたが、この回路形式はSSBに幾らか有利なようです。 これは、再生回路・・・と言うよりもQマルチのような正帰還(発振)回路を同調回路と別に置いて緩めに結合しているからでしょう。 もちろん、強い到来信号による引き込み(Pull-in)現象がありますが、検波も発振も同じトランジスタで行なう形式よりも幾らか緩和されます。 引き込まれるほど強い信号に遭遇したときは30pFのアンテナ結合度調整トリマで加減する訳です。

 この検波回路はJ-FETを使った「無限インピーダンス検波」(an infinite impedance detector)と言う形式です。 真空管時代にも稀に使われていました。(参考:だいぶ前に24Vで真空管12AT7/12AU7を使い、独立した再生管を設けたラジオの製作を紹介したことがありました。件のラジオでは「グリッド検波」を使ったのでこれとは異なった物でした)

検波用J-FETの例:2SK19GR
 使用デバイスのうち、検波回路のJ-FET:2N3819は、2SK19、2SK192A、2SK41、2SK241、BF256などの高周波小信号用なら大抵のものが使えます。

 回路を見るとソース抵抗:Rsが大きく選んであります。 カットオフ近くの動作点で使っているのでIdssランクはどれでも良いでしょう。

  もちろん昔懐かしいMK-10や2SK11などでも大丈夫です。 図(a)・J-FETの左下あたりに有って再生&発振に使っているNPNトランジスタ:BC109は2SC1815Yか同GRで十分ですが、高波用Trが使いたいのなら2SC1923Yや2SC2668Yあたりを推奨しておきます。

 回路図(a)右側2石の低周波増幅:BC109は2SC1815Y又は同GRで十分な性能を発揮します。 2SC183、2SC372、2SC458、2SC536、2SC828、2SC945や2SC2458でも良いでしょう。 小信号用NPN型シリコン・トランジスタなら何でも使えると思って良いです。

 図(a)の左上にある再生調整用:100kΩの可変抵抗器は10回転のヘリカル・ポテンショメータを使うように原著には書いてあります。 もちろんそれがあればベストですが、良質な可変抵抗器に大きめのツマミを付ける程度でも十分なはずです。調整容易な方が扱い易いのですが10回転のVRが必要なほどクリチカルではありません。(テスト済み)

 出力のトランスは、500Ω:8Ωのトランジスタ用アウトプット・トランスを使います。橋本電気(山水トランス)のST-82などが候補でしょう。 手持ちにあればポピュラーなST-32でも良いと思います。低周波回路をパワーアンプICのLM386にして強化するなどのバージョンアップは各自で研究されて下さい。

 あまり注意喚起されていないようですが、こうした形式の受信機は受信中に電波を発射する可能性があります。 CWやSSBの受信では間違いなく発射しているでしょう。 従って、可能であれば検波回路の前に高周波増幅を設けるべきです。 その場合、あまりゲインはいりませんからでFETのGG-Ampや、ICならμPC1651Gのような入・出力間のアイソレーションが良いものが適当です。

◎拙BlogのCW用BPFなど付けるとなかなか使える受信機になるように思います。お正月の遊びにでも如何ですか? de JA9TTT/1

あらためて再生式受信機を扱った特集があります。第一回のBlogは:=>こちらから。 

参考:アンテナ・コイルにバーアンテナを使った例が、7M3WVM箕輪さんのサイトに紹介されています。

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

12 件のコメント:

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

こんばんは。

4石にグレードアップですね。
ループアンテナをアンテナ件コイルに使う方法は海外の製作記事ではよく見かけます。

Qマルチのような回路を発信させて、アンテナトリマで調整するあたりは9R-59と同じでしょうか。

こういうシンプルな短波受信機を作るのは楽しそうなのですが、Poorなアンテナしか張れない上にノイズが多くて楽しめないのが残念です。
子供の頃に作った短波ラジオは夜蛍光灯を消したら北京放送などがよく聞こえたのですが。Hi

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE 高橋さん、こんばんは。

さっそくのコメント有難うございます。
> 4石にグレードアップですね。
真空管の時代なら、安価にするために少ないデバイスで構成する意味も有ったのですが、半導体式では費用も大して違いませんね。 少し足すだけで、ずいぶん良くなるのでトランジスタを増やすのは効果が大きいです。

> 9R-59と同じでしょうか。
9R-59ではIFTにQマルチを掛けて選択度の向上を図っていましたね。 ケチった設計なので、QマルチをBFOに兼用したため、選択度が必要なCWの時に十分効果的ではないと言うアホな状態になっていました。(笑)

> ノイズが多くて楽しめないのが残念です。
そうですねえ。 拙宅でも同じです。 最近は何でもSWモードで動作する電気製品ばかりなのでノイジーでダメですね。 特にロングワイヤーのような単なる長い線で受信しようとするとノイズピックアップになってしまいます。発生源近傍ではノイズは垂直偏波成分が多いのでロングワイヤー系アンテナは特に宜しくないんです。

> 夜蛍光灯を消したら北京放送などがよく聞こえた・・
昔の夜は蛍光灯のノイズと、時々通る単車のイグニッションノイズくらいのものでしたねえ。 静まった夜ともなれば世界の電波が沢山飛び込んで来たのが懐かしく思い出されます。 今でも都会地を離れるとだいぶマシになるのですけれど・・・。

tani さんのコメント...

JR2ATU 澤村です。
Cタップを使っていますね。コイルにタップを取るよりコイルは簡単になりますが、錫めっき線で巻いたコイルより帰還量の調整は面倒ですね。1石で検波再生を行う場合と違ってタップ位置はシビアに調整する必要が無いのでこうしたのかもしれませんね。私の場合は元々がテストオシレータのコイルを使うという前提があったので再生を別の石にやらせるというのはある意味必然でした。
私は少しでもコイルの負荷を小さくしようと再生にFETを使ったのですが、これははっきり言って失敗でした。今回の記事でも、みのわOMの記事でもバイポーラトランジスタを使っているのはそれなりの理由があったんだとは作ってみてわかりました。発振寸前の状態に持っていくのがFETでは非常にシビアです。初めは加藤OMの真空管の記事のようにB電圧をVRで分割して与えていたのですが、それこそ10回転のヘリカルポテンショが欲しい感じでした。結局C電源を作ってゲート電圧を調整することになったのですが、それでももう一つといったところです。こういったFETはまあシャープカットオフの5極管に近い特性ですからむいていないのでしょうね。DUALGATEのFETのゲート電圧を可変というのはどうでしょうね。低周波用なら3極管特性のものもあるようですが。半年間も楽しめ(苦しめ)たので、次は軟弱なスーパーにしようかと。(笑)
>ノイズが多くて
引越し先は今より繁華街を離れ市内でも小高いところなのでロケーションは良いのですが、ノイズはどうなんでしょうか。身の回りの家電品の方が気をつける必要がありそうですね。ISDNから光回線に変わって少し良くなった気はするのですが。
>北京放送などが
北京放送やモスクワ放送はテストオシレータすら持っていなかった頃はありがたかったです。(笑)今は3.5Mのど真ん中に居座っている例の局など邪魔なばかりですが。

TTT/hiro さんのコメント...

JR2ATU 澤村さん、こんばんは。

コメント有難うございます。
> Cタップを使っていますね。
変形クラップ発振回路が元になっているからでしょうね。検波が独立した回路ですから検波感度最高の場所を求めなくても良いので、帰還タップの調整はあまり必要としないですね。

> FETでは非常にシビアです。
FETでも方法が無い訳でもないのですが、トランジスタの方がスムースに加減できるように思います。 あと、ホンモノの三極管もスムースですね。hi

> DUALGATEのFETのゲート電圧を可変というのは・・
結果を書いてしまうと楽しみがなくなるでしょうから、是非お試しになって下さい。(笑)

> 3.5Mのど真ん中に居座っている例の局・・・
たしか微妙に3560.000kHzからずれているのですよねえ。(笑)

exJE1UNX 田村 さんのコメント...

加藤さん こんばんは

FBな記事ありがとうございます。
GENNYちゃんの名前は、先週のブログで初めて知りました。

今回は古の互換品トランジスタまで紹介していただき実感がわきます。

さて、ノイズですがいつも思い出すのが
都会に出てきて、しばらくぶりに50MHzのリグ
RJX-601を出してきてダイヤルをまわすといたる所でピー、ピー聞こえるのです。

すわ発振と思い蓋を開けIFTをぐりぐりしましたが、一向に変わりません。
有線放送やら、いろいろなノイズだったのです。

今ではきっと何倍にも増えているのですが、かのフィルターで短波信号を浮き上がらせることができれば楽しいでしょうね。

TTT/hiro さんのコメント...

ex JE1UNX 田村さん、こんばんは。

コメント有難うございます。
> 互換品トランジスタまで紹介していただき実感が・・
BC109とか言われても・・・。hi hi 一応、FETも含めて規格を確認しておきました。 周波数も低く単純な回路ですから、大抵の石が使えますね。 もちろん個性があるのでソケットにしておき交換すると面白いかも知れません。

> 有線放送やら、いろいろなノイズだったのです。
市街地でも繁華街は本当にノイズが酷いですね。 拙宅も周囲が都市化するたびに増えて行くように感じています。 ただし、回りの大半がISDNやASDLから光回線に置き換わったのは良かったです。

短波BCLも復興の兆しがありますので、簡単なラジオで遊んでみようかと思います。田村さんも如何?

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

こんにちは。

>特にロングワイヤーのような単なる長い線で受信しようとすると・・
受信用のアンテナはまさに単なる長いロングワイヤーです。^^;
しかもバルコニーに建物と平行に張っているので
まさにノイズピックアップアンテナになっているようです。
かといってデジタル機器を使わないわけにもいかないですし・・

>短波BCLも復興の兆しがありますので・・
最近FRG-7を使ってBCLをやっています。
聞こえても昔のような感動は少ないのですが。Hi

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE 高橋さん、こんばんは。 寒いですねえ!

コメント有難うございます。
> まさにノイズピックアップアンテナになっている・・・
指向性が出るのが嫌らしいところですが、Loop系のアンテナは明らかに有利なようです。 場合によってはノイズ源をNullに持って行くことも出来てS/Nがアップできますね。 シングル・ループを使っていたこともあるのですが、高橋さんの環境だと架設が難しいかも知れません。

> 最近FRG-7を使ってBCLをやっています。
むかしスカイセンサーやクーガーでBCLだった少年達の憧れの受信機ですね。 HAM用にはイマイチですが面白い受信機ですよね。hi hi

> 昔のような感動は少ないのですが。Hi
やはり、ネットで直接情報が入ってくる時代ですから、すっかりBCLの目新しさが無くなってしまいましたね。こればかりは時代ですから仕方がありません。

珍局を狙うにも電波環境次第ですし・・・。(難しい)

松下 透 さんのコメント...

こんばんは。
TTT/加藤さんが再生受信機の不要輻射の注意喚起をされていることは全く同感です。 この点を述べた記事は少ないですよね。 60年以上も前に並四などが製造禁止になった事情を知らない方も多いのでしょう。 アンテナ回路と再生回路のアイソレーションを必須と考えると余り初心者向けとは言えないと思うのは私だけ?

TTT/hiro さんのコメント...

松下さん、こんばんは。 ご無沙汰でしたね。

コメント有難うございます。
> 注意喚起をされていることは全く同感です。
 どうも有難うございます。 実際、こうした再生式あるいはDC受信機の一部にもかなり電波を輻射している物があります。 送信機と違って測定することもないので気にもならないのでしょうね。 扱いが稚拙だと近所迷惑なくらい強い電波が出ます。(笑)

> 余り初心者向けとは言えないと思う・・・
 同調形式のRFアンプを付けると発振し易くて敷居が高いです。それにゲインもあり過ぎます。 実際には非同調形式の(低ゲインな)RFアンプを前置するだけで良いので、難しくないと思います。 2SK19のGG-Ampでも十分でしょう。 ドレイン側は抵抗器負荷でも良いです。

 同時にアンテナ系へのボディエフェクトも軽減できるのでRFアンプは始めから付けておくべきかも知れませんね。

JG1EAD 仙波 さんのコメント...

加藤さん、皆さん、こんにちは。
大きなアンテナだとワッチしている相手からQRZ?をもらうかも。hi

TTT/hiro さんのコメント...

JG1EAD 仙波さん、こんにちは。

コメント有難うございます。
> 相手からQRZ?をもらうかも。hi
 昔50MHz/AMでローカル・ラグチューしていたら変なノイズがあったのでQSYしたら『どこまでも付いてくるノイズ』というのがありました。 あとで近所の中学生が超再生RXでワッチしていたのがわかって爆笑。 真空管式の超再生だそうで、輻射電力はずいぶんと大きかったようです。 VHFの超再生は受信しているだけで、TVIが出ると言うのもありましたっけ。hi

図の再生式では連続キャリヤ状の電波が出ますので近くのHAM局は誰かがビート妨害を掛けている・・・と思うかも知れませんね。hi hi