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2013年2月1日金曜日

【HAM】 Experiments memo

 【Low Band Antennaの整備
 HF帯のハイバンドからV/UHFまでのアンテナはリニューアルが済んだ。 しかし、架設から18年にもなってLow Bandアンテナも整備が必要だ。

 敷地を含めアンテナ架設用のタワーやポールなど、環境条件は変更が難しい。従って大きな不満が無ければ、既設のアンテナを同じ形式で整備する方向になるだろう。 但し、運用していて気になった幾つかは再架設に当たってできるだけ改善したい。

 写真は再掲載だが、Low Band用アンテナである。ワイヤーアンテナなのでよく見えないとは思うが、7MHzと3.5MHzのトラップ・コイルが入った3バンド用の逆Vアンテナだ。これで1.9MHz、3.5MHz、7MHzのHAMバンドをカバーする。

 原理はシンプルであるが、敷地や架設条件に合わせて作ってあるから建設当時の製作資料が無いと整備はたいへんだろう。 現状をリバース・エンジニアリングしてトラップ・コイルを同じように作ることも一計かもしれないが、ベストは設計・検討の結果がわかる資料の参照だ。 そうすれば同じ物が作れるばかりか、改良の目星も付け易い。(それに、自分で作った物をリーバース・エンジニアリングすると言うのも情けない話しだし・・)

 しかし、架設から年月が経過しており資料の発掘は難しそうであった。 メーカー製や雑誌記事を焼き直して作ったなら古い資料の入手もできそうだが、まったくのオリジナルとあっては他を頼ることはできない。 そこで過去の記録から探査を始めた。

Paper Documents
 いまでこそ、可能な限り電子化して資料を残そうとするが、かつては紙で記録を残すしか無かった。 手書きの文書やグラフ、スケッチ、回路図、そしてどうしても必要なら写真を撮影した。もちろん銀塩写真であった。

 左の写真は過去の実験ほか、様々なことを書込んだ紙のドキュメント(一部)である。 基本的に手書きのものであって、書籍や文書のコピーなどは別に保存している。このように1995年ころまでは紙の記録が主である。 但し、テキストファイル程度の電子データ化も徐々に始まっていた。

 この中にアンテナを作った当時の資料があれば良いのだがあまり自信は無かった。 資料を残したのかさえ、忘れていたくらいなのでどんな情報があるのか内容などサッパリ忘れていた。 ただ、苦労して建設した記憶もあったので何がしかは残っているのではないかと期待して捜索を始める。 

                  ☆ ☆ ☆

トラップの製作データ
 ワイヤー・アンテナである以上、ワーヤー部分の加減は何がしか必要である。架設環境の影響を受けるからだ。 しかし、最も重要なのはトラップの部分だ。

 7MHz帯はフルサイズの逆Vアンテナの動作になる。トラップ部分がエレメント長に及ぼす影響は小さい。しかし、その下のバンド、3.5MHzや1.9MHzのエレメント長は、トラップのL・C比によって大きく影響を受ける。 従って既設のアンテナとなるべく同じ寸法になるよう架設するには同じトラップを作る必要がある。

 幸いなことに詳しい製作データの一群を発見できた。 まずは、コイル:Lとその内部にあって共振させているコンデンサ:Cの製作表が一番重要だ。 仕様を決めるにあたっては、更にバックグラウンドがあった筈だが、取りあえずこれさえ有れば前と同じコイルが作れる。 なお両面プリント基板を使って共振用のコンデンサを作っているのは、適当な容量で高耐圧のコンデンサが入手できなかったからだ。

構造のメモ
 最終的には逆Vアンテナになったが、最初は3バンドのスローパー・アンテナからスタートしていた。資料を見直してわかった。 左図はスローパーだった時の構造を示したメモである。

 かなり煮詰まって来た段階のメモだと思う。概ねこの条件で一旦はスローパーとして架設したはずだ。

 スローパーの輻射エレメント長については種々の説があるようだ。 今でも確たる決め手はないものと思っている。当時様々な例を調べた記憶では、この例のように1/4・λを基本とするものは少数派らしかった。

 しかし類似の考えでトラップを入れ複数バンドで使う例もない訳ではなかった。 マルチバンド化にあたっては必要なバンドにアンテナが「旨く共振すること」、その「共振点インピーダンス」はどうかと言ったテーマを持って実用性を探った。

3.5MHzトラップの共振特性
 上表の通りに製作した3.5MHzトラップの共振特性である。まさかこんな特性まで実測していたとは、すっかり忘れていた。 作った当時、旨いことに詳細評価するチャンスがあったのだろうと思う。
 
 トラップは単純なLC並列共振器であって、実測の共振インピーダンスは18kΩである。 これが3.5MHzのエレメントの先に付いていて、その先の電線へ行こうとするRF電流を阻止することになる。 その阻止インピーダンスということになる。アンテナは該当の周波数帯ではトラップの先のエレメントはないとして振る舞うことになる。

 意外に低いインピーダンスであるが、この程度でもアンテナ用としてはまずまず使えるようであった。 3.5MHzの主バンド幅は75kHzで、バンド内で10kΩ以上のインピーダンスがあるので、まずまず使えたのだろう。もちろん共振点の上下ではトラップのリアクタンス分もVSWR特性に効いてくる。

7MHzトラップの共振特性
 上表の通りに製作した7MHzトラップの共振特性である。

 共振インピーダンスは約17kΩとなった。 これが7MHzのエレメントの先に付いていて、その先のエレメントへ行くRF電流を阻止するということになる。 今は7200kHzまでバンド幅が拡張されたから、共振周波数を7100kHzあたりに変更した方が良いだろう。 但し、そうすると下端のCWバンドでSWRが悪くなりそうだ。

 最初に両面基板で作ったコンデンサは付けずに、コイルだけ単独の評価を行った。その時の無負荷Q:Quは200くらいあってまずまず優秀であった。塩ビ管のボビンは悪くない材料のようだった。 それから計算される共振インピーダンスは70kΩ以上になる筈である。それにしては実測の共振インピーダンスは低過ぎる。

 コイルのQuとインダクタンスに基づいた計算値の1/4もないのは共振コンデンサに問題があったからだ。 要するに両面プリント基板を使ったコンデンサのQは低いのである。 銅箔の抵抗は僅かだからガラス・エポキシの誘電体損失が意外に大きいと言うことになる。 これは上の3.5MHzトラップでも同じようだ。 どうもガラエポ基板のコンデンサはHF帯で使うのは好ましくないようだった。 時々ガラエポ基板上にパターンでLCを形成する例を見るが、本来は好ましくないのだろう。もちろん、基板材が違えば別だ。

 このあたり、リニューアルに当たっては改善したいと思っている。

製作メモ
 上記の表や特性データは部品の製作方法や評価結果を直接的に示す資料であった。 主観は交えず事実の記述であって、だからどうしてどうなったのかと言う部分はわからない。

 それに対してノートに記された当時のメモには、考え方や予想、そしてその結果など感想を交えて書いてある。だから自分で読んでも面白かったりする。(笑) 誰しも忘れ易いのは同じだと思う。細部まで記憶に残ることはないだろうから、こうした記録は大切だと感じた。いろいろ製作経過がわかって再製作の助けになる。

 この記録によれば、トラップを作るにあたって両面プリント基板の面積あたりの静電容量を求めることから始めたことがわかる。 実際にはその前にトラップのLC比をどうするか、各種の実例などを見ながら考察していた筈だ。 その上でLとCの値を求めたのではないかと思う。しかしその辺は記録になかった。 ただ、こうしたトラップ・アンテナにはW3DZZ型のように有名なマルチバンド・アンテナがある。 そうした例も参考にしたとは思うが、この場合は純粋にトラップ式なので動作原理は違うだろう。

スローパーアンテナの評価メモ
 トラップを完成し、実際に架設した後の測定評価について書かれたメモだ。 汚い文字なので本人以外(本人も?)読みにくいとは思うが。

 最初に給電点に於けるインピーダンスを測定する為の「測定用ケーブル」を用意していることが書かれている。 その上で、自作のRXインピーダンス・ブリッジ(ノイズ・ブリッジ)を使って実測している。

 スローパーの状態でエレメント長の調整を済ませ、共振させた状態でのインピーダンス測定をしている。 その結果、ケーブル直結の給電は7MHzはまずまずで1.9MHzも良いが、3.5MHzはどうも旨くないことなどが書かれている。その後のテスト運用の状況も詳しいが、アンテナ製作物語でもないので割愛させてもらう。(笑)

実験コイル
 探していたら、テスト用に作ったコイルまで見つかった。 但し、これは最終版ではない。 実際に巻線したのはφ1.6mmのフォルマール線(PEW線)だと思う。 これは事前に同じボビンに巻線して簡単な評価をした程度だったのではないだろうか。

 アンテナ線の途中にあって宙吊りになる関係で、トラップはなるべく軽量なものが良い。 おまけに、耐環境性能も要求されるので向いた材料が必要だ。 塩ビ管は安価な材料としては悪くない耐環境性を持っている。 それでも写真のパイプは肉厚が薄いので機械的な強度はギリギリな感じだ。18年間の架設で損傷したものが見つかっている。 さりとて肉厚のあるものは重くなるのが難点だ。 実績で同じ材料を使おうと思っているが、何か補強策も考えたいと思う。

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 結局スローパー形式ではあまり長く使わなかった。一つは3.5MHzの給電点インピーダンスが思ったよりも高かったことにある。マルチバンド化するにはマッチングが厄介そうだったからだ。これはタワーの高さや載っているアンテナの分量にもよるだろう。 それでも各バンドごと個々にマッチングをとってやると、かなり良く飛ぶし耳も良い印象があった。どこか一つのバンドに決めるなら悪くなさそうだった。

 テスト運用を始めたころは近隣の主要道路も未開通で言わば畑のど真ん中だった。しかし、土地開発は急激に進んで商店などが増えて行った。そうなるとローカルノイズが激増しそれが運用の障害になった。 特にタチが悪かったのはISDNとADSLと言った架空された電話線からの輻射ノイズであった。 ほか自動販売機やエアコンなど各種電気機器のインバータもHF帯のノイズ源だ。しかし都市化では避けようが無い。(いまは光ファイバー化が進んで電話線ノイズは改善方向)

 スローパーは噂に違わずかなり良いアンテナだが、接地型アンテナの例に漏れず、都市部では受信ノイズに対して不利であった。 しかし、1/4・λの輻射エレメントから出発していたから、ノイズ源に対して有利なバランス型のアンテナ、すなわちダイポール系への転向はまったく容易であった。結局、もう一本同じエレメントを作って逆Vアンテナに転向した。

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 何かをしたら記憶が鮮明なうちに記録しておこう。それを強調しておきたい。 これは仕事でも趣味でも同じである。誰しも半年もすれば半分くらいは忘れるし、3年もすれば記憶そのものが他と混じり合って怪しくなる。 だから記録することにつきる。文字でも画像でも良い。もちろん画像には説明がないと片手落ちだ。いずれ意味不明の写真に成り下がる。 Blogに残すのも記録の一つだが、外向けの話ししか書けない(書かない)と言った欠点がある。それでも自身にとって有用な記録には違いない。少なくとも思い出す切っ掛けにはなってくれる。(しかしTwitterやFaceBookは不向きなようだ)

 リニューアルにあたり、良くないコンデンサを変更したい。 これは実際の運用でも欠点として感じた。 QRPなら支障ないが、固定局の方で運用すると大したパワーでもないのに連続Keyダウンで共振周波数がズレて行くのが観測される。 Lossのために発熱があるのだろう。 それでトラップコイルの共振コンデンサが容量変化し、SWRが変化するものと思う。 だからその問題だけは認識していたが、ほかのことは何となく曖昧であった。18年前ともなれば仕方あるまい。

 トラップの改善には損失の少ない、もっとQの高いコンデンサが必須のようだ。一つは同軸ケーブルそのものをCとして使う方法がある。 Qも高く太いものなら耐電圧も高い。 それを使うのか、なにか既成品のコンデンサを使うか思案中だ。 ほか降ろした時の目視点検によればエレメント接続部分の耐候性アップが必要そうだ。長く持たせるにはハンダ付けのあと塗装などで被うべきだ。 意外に長く持ったのは自己融着テープだ。表面はだいぶ風化が見られたが表層の下は奇麗だった。de JA9TTT/1

(おわり)

参考2016年6月、このアンテナを降ろして新しいアンテナと交換した。このアンテナは架設から約20年使用したが、アンテナ各部が屋外の環境でどのように劣化したのか調査している。 新しいアンテナは4バンドの逆Vアンテナとして製作し、1.9〜7MHzのほか、10MHz帯を含めた。バンドの追加のほか20年間の使用実績に基づいた改良を行なっている。 詳細は以下のリンクで参照を。→Quad-Band_IV-Antenna