2013年10月15日火曜日

【HAM】 On the Air JT65A, Part 1

【JT65Aでオンエア・様子見編】
最初はWSJT9で
 SSBやCWと言った、人間と無線機、そしてマイクと電鍵があればOKと言うモードしかオンエアしない訳ではない。ただ、昨今はそちらに偏りがちだったかも。

 JT65と言うパソコンと一緒に遊ぶモードは面白そうだ。JT65は微弱信号通信方式とのこと。 定番のPC用ソフトが幾つかあるようだ。 まずは「WSJT9」から試してみた。 写真の様にマルチ・ウインドウ形式で開く。HF帯用のJT65AだけでなくVUHF帯用の設定もある。ダウンロードは作成者であるK1JTのWSJT Home Page (←リンク)から。

 もともとはHF用ではなく流星痕反射通信から発展しV/UHF帯のEME用だったそうだ。 非常にS/Nの悪い微弱な信号でも受信できるのが特徴だ。リアルタイムに文字が表示されるものでは無い。約50秒間の受信信号を解析して結果を表示する。1分おきの交互通信になるので手短な交信と言うものは有り得ないようだ。 PCの時計をUTCに良く同期させておかなくてはタイミングが合わず復調できない。

 JT65そのものと次項で扱うJT65-HFの扱いについては、各局の努力により作成されたPDF版の詳しい日本語の解説書が上がっている。(→リンク) 2011年頃のCQ誌に解説記事があったようだが、わからない部分はネットの散策でも何とかなる。インストールしたPCソフトの扱いと具体的な交信方法がまずはポイントであろう。暫くワッチしてみたい。

 WSJT9を起動したら取りあえず動いてくれたが少しバグっぽい感じ。 使っているPCとの相性によるものだろう。 このまま暫く動かして様子を見ようか。使い方を良く理解しないうちに何とも言えないが、まあ何とかなるだろう。 マニュアル片手に使いながらと言うのが理解も早いということ・・・。 こういうものは座学よりもやって見るのが一番だ。

次はJT65-HFで
 ソフトを渡り歩いてばかりでは使い方も身に付かないが、最近はこちら「JT65-HF」がHF帯でオンエアする局にはポピュラーとのこと。 さっそくこちらもPCにインストールしてみる。 結論から言えば、HF帯ならこちらが良さそう。

 シングル・ウインドウでHF帯のオンエアに特化しているので設定も簡単だ。 交信形態を考えた便利機能が搭載されているから実際にオンエアするならこちらが本命の模様だ。あとからできただけのことはあると思う。JT65-HFを妙な所を経由せずにダウンロードするにはIZ4CZLのサイト(←リンク)からのリンク先が良さそうだった。(検索すると見つかるダウンロード先はクレジットカード番号など無闇に個人情報を要求するのが心外なので・笑)

 写真はメイン・ストリートの14,076.00kHzをワッチしている状態。他に21,076.00kHzでも国内局を中心に良く聞こえていた。 トランシーバの受信モードはUSBである。受信周波数が不安定なモノは宜しくないのでシンセサイザVFOのリグが良い。古いアナログVFO式のリグでも良くウオームアップすれば大丈夫かも。

 実は非常に横着な状態でテストしている。 PCへはリグの低周波出力を送り込めば良い。 一般的にはPCのマイク端子へリグから低周波を入れるためのケーブルを使う。 ちょっと時間がなくて、たまたまPCに繋がっていたイヤフォン・マイクをリグのスピーカー直近に持って行って試してみた。 イヤフォン・マイクはSkype用に買った100均のもの。(なんと横着な・爆) 要するに送信のことはまったく考えない。まずは様子見のテストそのものである。

 それでも旨く復調するのですよ、これが。hi hi もちろん付近で大きな物音があると低周波帯で「QRM」とか「QRN」になってS/Nが劣化する。 どうぞ受信中はお静かに願いま〜す。

 強い局ならピポパポがスピーカーから聞こえる。しかしシャーシャー言うバックグラウンド・ノイズの奥から旨く復調するのでとても興味深い。明らかにS/N=0dB以下!

受信レポートして比べる
 JT65-HFの画面の右下にあるEnable RBとEnable PSKRにチェックを入れておくと、ネット経由で私が受信している状態が毎分集計サーバーに自動送信される。(PCは常時ネット接続が必要)

 各局から送られる受信レポートは毎分ごとに集計されて写真のような感じでバンド毎に表示される。 放っておけば1分ごとに画面が更新され、リアルタイムにオンエア局が受信各局でどう見えるのかがわかる仕組みだ。 どちらかと言えば自局の波が他局にどのように届いているのか確かめるのが主目的なのだろう。

 しかし皆さんと比べ実際に受信はどうなのか気になった。 いい加減なテストとは言え十分参考になった。 レポートにコールサインが見えて、どうやらレポーターの仲間に入れたみたい。まずまずのS/Nのようであった。(ホッ)

どこが受信できたか?
 こちらはPSKRの集計で自動的に作られるもの。 自局で受信できたものがマップにプロットされる。

 上記のいい加減な方法で動かし始めてから、しばらく放っておいた。(連続して受信していた訳では無い) 約1日くらいのワッチ結果がこれである。

 もちろん聞こえている局の全部と交信できる訳でもないとは思う。しかし聞こえないことには交信はできない道理なのでどのくらい受信できるのかは興味津々であった。 アンテナがビームなので偏りがあるようだ。概ね北向きの固定だったが意外にも全世界が聞こえてくる。HF帯のビームアンテナなんて結構ブロードだからねえ。(苦笑)

受信エンティティ
 これがウチで受信できたエンティティの一覧だ。わずか1日弱のいい加減実験でも40エンティティを越えたようだ。 中にはSSBやCWでは聞いたこともないような所も見える。w w

 ローカルさんとの会話が切っ掛けで突然実験を始めたがイケそうな感じのモードである。 こう言うのがいわゆる「交信」なのかと言うと疑問がない訳でもない。 だがコンピュータが完全自動的に手当たり次第勝手にデータ交換して「交信」している訳でもない。 キーボードの前にはたぶんオペレータが座って操作しているのだろうから、これも立派なQSOの一形態なのだろう。こりゃ時代ですな。(笑)

                  ☆

 意外かも知れないが特殊モードでのオンエアは昔々から興味を持っている。 CQ誌に連載のJA1DSI津田OMのRTTY特集を読んで、どうしてもやってみたくなり、テレタイプのModel 32ASRを買い込んだクチだ。(もちろん中古品・hi)1970年代の話しだ。大きくて重くてうるさくて専用の「通信小屋」でもなければ夜間はとても運用できない代物だった。 それなりのパワーで連続送信できるリグと良いアンテナが必要で、それ無しでは高品質の交信は難しいと悟ったものだった。 パソコン時代になり、AMTORはリンクするのが面白かった。どんなRigでも良い訳ではなく、条件があって初期には難しかったように思う。パケットはV/UHFオンリーでHFではやらなかった。SSTVは近所しか届かなそうだったからあまり興味を覚えなかった。NTTお下がりのmini FAXは面白かったが、やがてハードが枯渇して流行らなくなった。

 特殊モードはSSBやCWに比べて設備への要求が厳しいと感じた。それ以後あまり興味も無くなっていた。 しかしJT65Aは面白そう。 皆さん数Wからせいぜい2〜30Wらしい。 本質はパワーにはあらずとのことで、1Wに満たないQRPerも結構おられると聞く。ハイパワーやロケーションに恵まれずとも楽しめそうなのは良いことだ。耳の良さを競うようにも感じる。 秋の夜長を楽しむには面白そうだ。 新しいことは頭の体操にもなるし。(笑) さっそくきちんとしたインターフェースを製作したくなった。 たぶん近日デビューしますから。どうぞ初心者にお手柔らかで。 その前に宿題を済ませなくては。de JA9TTT/1

つづく)←この続きへリンク(インターフェース製作編)

2013年10月1日火曜日

【回路】Simple Function Generator

【簡単なファンクション・ジェネレータを作る】

ファンクション・ジェネレータとは?
 Blogでファンクション・ジェネレータ用のICを扱ったことがあった。(→リンク)しかし、ファンクション・ジェネレータ(以下、FGと略)その物についてはあまり扱っていない。アマチュア無線の世界ではポピュラーではないし、用途もあまり無いと思うからだ。(実際そうだろう)

 FGは一種の発振器である。まずはメーカー製のパネル面を眺めてもらえば何となく機能もわかる。 左の大きなツマミと、その右上に横に7つ並んだレンジボタンで周波数を決める。ほか、各ボタンの機能は絵入りでも書いてあるから難しくないと思う。かなり旧式のアナログ式FGだが、基本的な機能は最新型も同じである。

 発振周波数は下限が1Hz以下の超低周波から上限は数MHz程度が一般的だ。 一つのレンジで10倍以上の可変幅を持つものが多い。 この例では約1000倍である。 また、上下限の周波数を決めてその間を連続的に自動で可変することができる。周波数スイープと言う機能だ。これは被測定系の周波数特性を観測するのに役立つ。

 FGは様々な波形が得られるのが一番の特徴だろう。矩形波、三角波、サイン波のほか、それらをある程度加工変形した波形も可能である。 各波形は振幅が細かく加減できるほか、直流的なオフセット電圧を加えることもできるようになっている。

 これらの機能が詰まった「発振器」がFGと言う訳だ。 他に外部から各機能を制御できるほか、高級機では任意波形の発生機能を持つものも多い。ただし任意波形の用途は限定的だ。自動制御系に与える疑似信号を作るには有用であろう。

 以上のように、広い周波数で色々な波形を発生でき、時間変化を伴う波形も発生できるなど便利な発振器と言える。 しかしアマチュア無線機器の開発では殆ど使うことはない。 私は回路の実験に使っているがそれも時々だ。 従ってお薦めするような測定器とは言い難い。やはり出力信号が正弦波のごく普通の発振器の方を一番頻繁に使っている。

 そんな訳で無線家には縁遠いと思うから、何となくFGが欲しくなって来たらまずは簡単なものの自作をしてみるのがお薦めだ。いきなり市販品に手を出しても使わない(使えない)のでは勿体ない。何か他に投資した方が良い。 そのあたりがこのBlogの目的である。 なお作ってみればすぐ感じるだろうがオシロスコープは必要だ。もし持っていなければそこから揃えなくてはなるまい。

                     ☆

FG用のIC
 FGは機能が複雑なので、汎用の部品を寄せ集めて作ろうとすれば面倒なものである。 そこで古くから専用のICが開発されてきた。

 FG用ICの発展史でも書きたい所だが、実は最初に登場したインターシル社が開発したICL8038(写真で一番上)の完成度があまりに高かったため、その後はその焼き直し程度しか登場しなかった。(グレードアップ版にはMAXIM社のMAX-038がある) 唯一独自の開発がなされたのはEXAR社のXR2206くらいであろう。ICL8038にはなかった振幅変調(AM変調)機能が付加されている。 サイン・シェーパも独自形式になっている。

 もし本格的なFGを自作するのなら、これらのICを使うのが最も良いと思う。但し、ICL8038は既にディスコン(廃番部品)であり流通在庫品は有るもののかなり高騰しているのでお勧めしない。 数年前から秋月電子通商が売り始めたXR2206の方をお勧めしたい。 なお、秋月にはマイコン式のキットもあるが少し性格の違うFGのように思う。良く確認して購入されると良い。(参考:XR2206は秋月電子通商でも品切れになった。再開の見込みはないだろうと思う。現在はIC8038の中国版セカンドソースが安価に流通しています。トラ技Jr誌No.35など参照を)

(参考)ICL8038を使った製作記事:歴史の長いICなので過去に幾多の製作記事が存在する。お薦めを一つ挙げるとすれば「トラ技ORIGINAL」誌・No.3の記事が良いと思う。松井邦彦さんのわかり易い解説と詳しい製作・評価記事がある。(P57〜90)絶版と思うが出版社のコピーサービスで入手可能なはず。(→出版社へリンク
XR2206を使う製作記事:JE1UCI冨川さんがアイコム社提供のサイト・BEACONのエレクトロニクス工作室に公開された記事が丁寧でわかり易い。秋月電子のFGキットをアレンジして製作されている。(→リンク

FGのブロック図】(ICL8038の例)
 FGは正弦波発振器とはずいぶん異なった原理で波形を作っている。 コンデンサに電流を流すと電荷が溜まって端子電圧が上昇して行く。 その端子電圧を監視し、ある上限値を越えたところで、溜まった電荷を今度は放電して行く。 下限電圧も監視していて、コンデンサの端子電圧が下限に達したら今度は最初のように充電して行く。 この動作を繰り返すことで波形を発生する。

 コンデンサには一定した電流を流すようにするので、その端子電圧は直線的に上昇する。 放電も一定した電流で行なうので同じように直線的に下降する。 このコンデンサ両端の電圧を取り出すと奇麗な三角波が得られる。 また、端子電圧を監視している電圧比較器の出力はデジタル的に上下するから、この変化を取り出せば矩形波となる。

 正弦波は三角波から作る。 折れ線で近似する方法で振幅が正弦波状に変化するように加工する。 従って最初から歪みのない正弦波を発生させる発振器とは違い、どうしても歪み率は悪くなってしまう。(折れ線の段数にも限度があるので)

 こうして作られた、三角波、矩形波、正弦波は一定の振幅なので振幅を変えるには外付けのアンプやアッテネータが必要だ。 8038には発振周波数を外から電気的に制御する機能もあるのでスイープ発振器にすることも可能だが、それ用の外付けが必要だ。 しかしファンクションジェネレータの発振機能をワンチップに集積しているのでFGの製作はずいぶん容易になる。

参考:ICL8038では充放電を繰り返すのでは無く、充電は継続したまま充電の2倍の電流をを放電することで等価的に上記説明と同じ動作を繰り返している。

ICL8038の等価回路
 上記の発振原理をこれだけの回路で実現する。 開発されたのは1970年代も初頭だった筈で、こんな簡単そうな回路でも当時としては集積度の高いICだったように思う。モノリシックICの特性を活かし、非常に旨く考えられた回路である。 すべてバイポーラ・トランジスタで実現しているのも時代を物語っている。(参考:ICL8038の登場は1973年の夏ごろ。当時の単価は2,500円であった)

 こうした等価回路をディスクリート部品で構成しても良い性能はまず得られない。 アナログ集積回路の設計はそこに使ってあるトランジスタは限りなく相似になることを前提にしているからだ。 VbeやhFEが一致するのは当然で、たくさん並んだ部品は全て同じように動くことを前提にしている。 これはIC化したDBM、例えばMC1496などが周囲温度は変わっても良好なキャリヤ・サプレッションが維持できる理由にもなっている。

 ICL8038はレアパーツになってきたが、まさか2SC1815や2SA1015を並べる人もいないだろう。それをするくらいなら別の手を考えた方が建設的だ。無くなったICを個別Trで模しても労多くして・・・のクチになるだけだろう。これからは、マイコン+高性能D/Aコンバータで作るのが主流になって行くはず。

                   ☆ ☆

 ICL8038やXR2206を持っているなら、それを使うのが良い。 しかし8038は既に高騰しているし、XR2206も何時まで供給されるか安心はできない。

そこで、どこでも売っていそうなICで原始的なFGを作って遊ぶのは如何だろうか? 部品代は1,000円以下、組込むための箱も100均で調達すればちょうど良い。

74HCU04でFGを?!
 写真はごくありきたりの74HCシリーズのC-MOSロジックICだ。 HCUと言うのは内部のコンプリメンタリFETのアンプが1段だけのインバータだ。(HCとHCUの詳しいことはC-MOSの解説書など参照を)

 この50円にも満たない安価でポピュラーなIC一つでFGが作れるのだと言う。 古いトランジスタ技術誌を整理していて目に止まったので実験してみた。 1999年8月号のトランジスタ技術:225ページである。黒田 徹さんの執筆記事だ。 もしお手元にあればぜひご覧を。

74HCU04を使ったFG
 基本的にトラ技に掲載されていた回路そのままである。 多少実用的にしてみたつもりだが本格的に実用にするならサイン波と三角波の出力にはバッファアンプを付けたい。

 いまは性能の良い高速OPアンプが手に入るので、そうした物を使うのが一番確実だろう。 10倍くらい増幅して10Vpp以上得られるようにしておくと便利が良い。 DCオフセットを掛ける必要性は殆ど無いから、AC結合のままで良いだろう。

 振幅はAカーブのVRを使うと幅広く可変し易い。 本格的にはアッテネータとVRの組み合わせにしても良い。 但し本格的なFGなら、やはり専用のICを使う方が良いのでなるべく簡易な線で行くのがこの場合は適当だろう。

部品実装状況
 例によってブレッドボードで試作している。 これくらいの部品数の試作には適している。

 高くても数100kHz止まりなので、レイアウトや配線はあまりクリチカルでない。 信号の流れを考えつつスムースに行くようレイアウトすれば誰でも成功する。

 サイン波の波形調整はVR2で行なうが、ここは一旦調整すれば再調整の必要は無いので半固定VRを使う。 周波数可変のVRはCカーブが手に入ればベストだが、Bカーブでも使い物になる。その時は直列抵抗を1kΩ→10kΩにしてレンジ分けを細かくすると使い易くなる。Aカーブを逆向きに使うと言う手もある。

 サイン・シェーパの入口にあるコンデンサ:C2は無極性型の電解コンデンサだ。手に入らない時は倍容量のコンデンサを逆向き直列にしたものでも間に合う。 但しこの方法を製品に使うのは感心しないので、アマチュアの実験用と思った方が良い。 ちゃんとした製品には無極性型(両極性型)電解コンデンサの採用を。

矩形波
 市販のFGで発生する矩形波は、ゼロボルトを挟んでプラス・マイナスに上下する波形になっている。 このFGでは、0〜5Vの矩形波である。 ロジック回路に供給するならこの方が便利なのでそのまま加工しなくて良いと思う。 3V系のロジックで使うには電源電圧をそのまま3Vまで下げるだけで良かった。

 なお、ちょっと見ただけでDuty比が50%でないことがわかる。これは使った74HCU04の特性に起因するようだ。 トラ技の記事の試作例ではもっと50%に近い。 記事では東芝製の74HCU04を使っているので交換してみたら面白いと思う。 アナログな回路に使っている関係で、内部デバイスの微妙な違いが性能に現れる可能性がある。

三角波
 三角波は別名ランプ波とも言う。 直線性も良く、なかなか奇麗な三角波なのだがDutyが50%でないため、上りの傾斜と下りの傾斜が少々異なっている。

 この原因は、74HCU04の中点電圧(ロジック的に言えば閾値)が電源電圧のジャスト半分になっていないためのようである。 これは内部デバイスの特性で決まってしまうから如何ともし難い。複雑な回路の外付けもしたくはないし・・。

 74HCU04のバラツキかと思い、交換してみたが同じメーカーの同じロット品では顕著な差は見られなかった。 上にも書いたように記事と同じ東芝製でもやってみたい感じだ。

正弦波
 あまり奇麗とは言えない正弦波だが、ダイオードの順方向特性で一段の折れ線近似をしただけなのでやむを得ないだろう。 これでも5〜6%くらいの歪み率には収まっているから大したものである。(笑)

 はなから正弦波を目的とするなら、先のBlog(←リンク)のようにウイーン・ブリッジ発振器を作った方が良い。遥かに低歪みな正弦波が苦労なしに得られる。 このFGの正弦波はオマケだと思って使うのならまずまずだろう。 なお矩形波のDutyが50%になれば三角波の波形も良くなり、正弦波の二次高調波も減って2〜3%の歪率にできそうだ。

                ☆ ☆ ☆

 以上、簡単に実験してみた。部品さえ間違いなければ誰がやっても旨く行くだろう。 特殊な部品は一切ないので入手に困ることは無いと思う。 きちんとした基板にハンダ付けで組立て、箱にも入れてやればけっこう重宝するのではないだろうか。 消費電流も僅かなので、006P乾電池を使い三端子レギュレータで5Vを供給する。 超簡易型と言うことで、外付けアンプも省略で良いかも知れない。 週末の工作にでも如何だろうか?


ほかのインバータではどうか?
 74HCU04は入手し難いICではないが、誰でも手持ちがある訳でもないだろう。 より一般的な74HC04で行けるなら一層有難い。
 もちろん内部構造がまるで違うのでTTLの7404や74LS04ではぜんぜんダメである。念のため。

 そう思って手持ちにあった同じピン配置の各種C-MOSで実験してみた。 メーカーはバラバラで一貫性がない。(笑) TC40H004Pはやや珍しいかも知れないが、他はごく一般的なC-MOS ICである。さて如何なものであろうか?

74HC04の三角波
 内部が三段バッファ・タイプのインバータはゲイン過剰のために高い周波数の発振を伴って旨くなかった。それらしい動作はしていても、これでは使い物にならない。

 そのほか4069UBなら良さそうに思ったのだが、矩形波の過渡部分でインバータの閾値が跳躍する現象があって三角波と正弦波は旨くなかった。矩形波だけなら良さそうであった。

 試した中では40H004Pが多少マシだったが、やはり74HCU04がベストと言うのが結論である。 同じ74HCU04でもメーカーによる違いがありそうなので何社か試してみるとさらに面白そうだ。ほかにMM74C04と言うナショセミだけが作ったC-MOSファミリがあってこの用途に適しているそうだが入手は困難だろう。手持ちが有れば別だが、無理に探すほどの価値は無いはず。もしお持ちならお試しを。

                ー・・・ー

 発振器繋がりで、ウイーンブリッジ発振器の次はファンクション・ジェネレータを試してみた。 こちらも費用が掛からず手軽にできる発振器だが、性能は程々のようだ。しかし、目的・用途によっては意外に役立つこともあるので、何かの時には急場しのぎで製作してみると助かるだろう。 正弦波はオマケではあるが矩形波をそのまま使うよりもきれいな音がするので可変周波数の発振器として十分使い物になる。 ロジック回路のテストには矩形波出力は便利で、それを主に使う目的でインバータのパラで電流容量を倍化してあるようだ。この発振器はこのあたりに主目的があるのかも知れない。

                  ☆

 ファンクション・ジェネレータをテーマにしたのにはちょっとした訳がある。 暫く前になるが、最初の写真に登場したメーカー製:岩通FG-350が故障したからだ。しかも二台とも。 連携して使うケースがあるので同じFGを2台持っていた。それが時を経ずしてまったく同じように故障した。発振しないと言う現象であった。 同一症状なので片方を直せば両方直ったも同然だと思い修理を始めたのである。 しかしどうやっても故障箇所の切り分けができない。暫くつついて半ば諦めてしまった。 だが、有ったものが急に無くなると不便なもので、これは新しく買わなくてはと思った次第。

 しかし、誰しも欲が出るもので機能に目移りすると結構高額であった。 頻繁に使うものでもないので勿体ない。 いよいよの時には自作もやむなしか?と思い実験してみたのである。 まあ急場しのぎなら結構使えるのでは無いかと言うのがここでの結論だ。 ICL8038やXR2206も良いと思うが、これを使い始めるといささか本格化してしまうので簡易型とは行かない危険がある。何時までも完成しなくなるに違いないからだ。(笑)

 FGの修理記を書いても一般性はないから中身を書くのはやめておこう。結果として故障した2台とも同じように修理できた。 原因分離をしていたとき奇妙な現象に気付いていた。 湯船につかっていたとき思い返して、連想でアイディアが浮かんだのだ。「現象から推測し部分的に分離する実験」を試みたら旨く息を吹返したのである。 回路図どころかブロック図さえも無いので、本質的な不具合箇所の特定には至っていない。 しかし症状的に見て迂回できそうな患部をパスして辻褄が合うよう部分改造を施して復活させた。要するに普通の修理では無い。キツネにつままれたような話しで何が何だかわからないとは思うが一件落着して古いFGに舞い戻ってしまった。お風呂のアイディアで直ったのだ。 古い物でも十分とは言え、この際もっと新しいのが欲しかったよなあ。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)