2014年5月1日木曜日

【測定】TRIO LPF LF-30 : Part 1

TRIOのLow Pass Filter : LF-30 その1

LF-30の外観
 何時ころからシャックにあるのでしょう? ずいぶん昔ですがローカルクラブのオークションで手に入れたように思います。

 写真はTRIO:今のKenwood社製のローパスフィルタ:LF-30です。 30MHzまでのHF帯用送信機とアンテナの間に挿入します。 送信機で発生する高調波を除去し、TVIを防止するのが目的でした。 シャックの必需品として売られていたアクセサリの一つです。

 今のメーカー製送信機では高調波対策が十分なされています。そうでないと技適が通りません。 しかしLF-30が使われていたころはまだそのあたりが不十分でした。 取説に書かれている送信機はTS-500やTX-40Sと言ったかなりの年代物です。 こうした時代の送信機は真空管式でπ型のタンク回路になっていました。 π型タンク回路にも高調波抑止効果はありますが不十分だったので運が悪いとTV放送に高調波が飛び込みました。 ですからこうした低域濾波器:LPFのニーズがあったのでしょう。TVIフィルタの専門メーカーからも各種販売されていました。 何かと問題が多かったVHF帯のTVが地デジ化でUHF帯へ移行してくれたのはHF帯にオンエアするHAMにはとても有難いです。

 シャックの整理で出て来ましたがどんな特性か興味があったので調べてみます。単なる興味本意ですが、せっかく有るので再利用を考えましょう。 半導体式のパワーアンプを実験していると臨時に外付けのLPFが欲しくなることがあります。30MHzのLPFだけでは済まないことも多いのですが、整備しておけば実験用器材として活用できるでしょう。

LF-30の内部
 どんなフィルタ形式になっているのか取扱い説明書からはわかりませんでした。 掲載の特性図からは無極の単純な特性のように見えます。 さっそく開けて調べました。

 四隅の取付け穴に入っていた鳩目を抜いて開けます。 外観は汚れていて程度は良くありませんが中はまずまず奇麗です。

 思った通り単純な無極のLCフィルタでした。コイル5個、コンデンサ4個でT型LPFを重ねた形式です。 一つセクションが遊んでいるのはLF-60と共通の箱を使った関係でしょうか。 コイルはLossを減らす目的で銀メッキ線が使ってあります。線径は実測でφ1mmでした。 割と雑な作りでハンダ付けで組立ててから伸縮させて特性を加減していた模様です。 他に調整可能なところはありません。
 コンデンサは誘電体フィルムを銅の円盤で挟んでネジ止めする形式で作られています。 普通のコンデンサを使った場合リードインダクタンスと自己共振してVHF帯で良い特性が得られなのかも知れません。

 このような方法で作れば自己共振の心配は少ないしフィルム厚があれば耐電力も十分得られます。おまけに電力用コンデンサよりもローコストでしょう。 構造から放熱にも優れるので1kWを許容しています。誘電体フィルムはテフロンではないでしょううか。仕切り板を折り曲げで一体式に作るなど、手間がかからず作り易い構造にできています。

取扱い説明書
 仕様と代表的な特性グラフが載った取扱説明書(一部分)を載せておきます。

 このLPFシリーズには60MHz以上をカットするLF-60と言うのもあって、50MHz帯を含むTX-88D、TX-88A、TR-1000、TX-26にはそちらを使うようにとあります。(それにしても想定機種が古いです・笑) 実際、TVIに悩まされたのは6 m局が一番多かった筈でLF-60の方がポピュラーだったかも知れません。

 仕様を見ると入出力インピーダンスが75Ωなのはちょっと問題で、いまの50Ωの機械には不適当と言うことになります。ですから遊休品になっていた訳なのですが・・・。 一応75Ω±40%までが使用範囲となっています。50Ωはその範囲内にあるので使えることになりますがどうも気持ちが悪いのです。それに±40%と言う数字そのものの根拠がわかりません。根拠は無くても使っても大丈夫だったと言うセールス上の話しかも知れませんね。(笑)

 送信終段が真空管だった時代の送信機は標準が75Ωでしたからフィルタもそれに合わせてあります。半導体時代に発売されたLF-30A、LF-60Aは50Ω用に変更されました。 中古市場を見てもA付きの50Ωモデルはそこそこのお値段ですが、75Ωのこらの方はジャンクの扱いです。(いじって遊ぶにはそう言うジャンク品が狙い目なのですが・・・)

実測特性
 規定のインピーダンス、75Ωで特性をとってみました。 遮断領域への傾斜がやや緩やかな印象もありますが、無極のフィルタなのでこの程度のものでしょう。

 上記特性図よりもカットオフ周波数は高くなっていて、-3dBは40MHzあたりです。 高調波は28MHzの2倍が40dBくらい、3倍が90dBくらい落ちるのでそこそこ効果的が期待できます。 通過損失は14MHzで見て0.13dBくらいです。これだけのLCが連なっていて3%ほどのLossなら優秀です。

 なお50Ωのインピーダンスでも測定しましたが、通過損失及び遮断特性ともに75Ωの時とと大差ありません。何となく気持ち良くないのですが、そのまま50Ω系でも使えそうです。たぶん50Ωのリグにそのまま使って問題はないでしょう。インターフェア対策に試して効果があったならそのまま使って支障はない筈です。

                 ☆

 50Ωで使うとまるで乱れてしまい使いモノにならないかと思っていました。その点は意外でしたが、やはり気持ちが悪いのです。ここはちゃんと50Ω用に改造してみようと思いました。 今では十分な評価手段があるので改造も難しくありません。

 遮断周波数とインピーダンスによるざっとした机上の検討ではコンデンサの追加が必要です。ハイパワーで使う予定はありませんから、ディップド・マイカや電力用セラコンで行けるでしょう。 50Ωに変更するとコイルはカットする方向なるので元のものが利用できます。 テフロン薄板を入手し銅板を切り抜いて任意容量のコンデンサを自作しても良いですが面倒です。 さらに箱だけ流用して任意特性のフィルタを作ってしまうのも面白いかも知れません・・・。

 この先、LF-30のLC値を実測しその結果を使った回路シミュレーション、さらには幾つかの改造指針について考えてみます。de JA9TTT/1

つづく)←Part-2へリンク

6 件のコメント:

JA6IRK@岩永 さんのコメント...

TTT 加藤さん、おはようございます。
懐かしいLPFですね! 当局の6の実家にもあったはずなんですが、もう40年ほど見ておりません(笑)
測定された特性を見たのは初めてです。
当時は、TVIを出さないためにと入れていたと思いますが、効いているのか、いないのかおまじない的な雰囲気で使ってました。
入れる前に、まずアンテナのマッチングが取れている必要があるということを理解して使っていたかは?です(爆)

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

加藤さん、こんにちは。
今日から5月、あっという間ですね。

開局当時、TVIに悩まされていたのでフィルターはよく使いました。
当時、入手しやすかったSINWAのフィルターでしたがTVIにはほとんど効果無かった記憶があります。

今と違ってコモンモードの考えが普及していなかったのかインターフェア対策といえば送信側のフィルターとTV側のHPFだけでした。Hi

送信用LPFの作り方、改造方法は興味津々なので続きを楽しみにしています。
昔使っていたSINWAのフィルターまだ手元にあるので性能次第では改造してみたいです。

TTT/hiro さんのコメント...

JN3XBY/1 岩永さん、こんばんは。 こちら午後は雷雨がありましたが、今は上がって清々しいお天気です。

早速のコメント有難うございます。
> もう40年ほど見ておりません(笑)
私もずいぶん久しぶりです。ガラクタの中から発掘しました。(笑)

> 測定された特性を見たのは初めてです。
取説に特性図が載っていたので確かめてみたくなった訳です。昔はそれを鵜呑みにするしかなかったのですが・・・。

> おまじない的な雰囲気で使ってました。
高調波の飛び込みには効果があったのかもしれませんが、直接波が飛び込んでTVのチューナー部が飽和するようなTVIには意味は無かったですね。

> マッチングが取れている必要があると・・・
実は、こうしたフィルタの特性図はかなり「インチキ」があります。 フィルタの先のアンテナがあらゆる周波数で50Ωなり75Ωになっている筈はないので、図のような性能になるのかはまったく保証できないのですけれどね。(爆)

まあ、オマジナイ的に使っていた人が多かったように感じます。hi hi

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE/3 高橋さん、こんばんは。 5月になってしまいましたねえ。hihi

いつもコメント有難うございます。
> ・・のフィルターでしたがTVIにはほとんど効果無かった・・・
上にも書きましたけれど、HF局の場合は直接波の飛び込みによるTVIの方が多かったんじゃないかと思います。6mの局は高調波が原因もかなりあったでしょうけれど・・・。 TX-88Aで6mに出たら酷かったです。hi hi

> TV側のHPFだけでした。Hi
自宅のTVはそれで対策したんですが、よそのお宅は付けさせてもらえないこともあって厄介でした。

> 性能次第では改造してみたいです。
単純な形式のフィルタですので、十分性能は出ると思いますよ。 部品を買って来て試したいと思っています。 SINWAほどの性能は出ないかもしれませんが、ご期待下さい。(笑)

Kenji Rikitake さんのコメント...

75ΩのLPFってすごいですね.

昔Array Solutionsの14MHz用BPFを使っていたことがありました.結構効きました.

送信側のRFI対策はもっぱらコモンモードフィルタですが,基本波カットのために70MHz HPFを受信側に使うことは結構あります.FMチューナや地デジの受信アンテナのF端子に付けるとよく効きますね.

73 de Kenji Rikitake JJ1BDX(/3)

TTT/hiro さんのコメント...

JJ1BDX/3 力武さん、こんばんは。

コメント有難うございます。
> 結構効きました.
本当はバンドごとのBPFの方が良いのですが、それも大変なのでLPFで済ませることが多いですね。

> 70MHz HPFを受信側に使うことは結構あります.
ご近所のすべてでそのくらい受信側の対策をしてもらえると良いのですが・・・・(笑)

インターフェアも以前より減って来ましたが、まったくの無対策では済まないのが悩ましいところです。hi