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2014年12月1日月曜日

【測定】Rubidium atomic clock

【測定:ルビジウム原子クロック/10MHz周波数基準器】

仮設から脱却
 ルビジウム原子周波数基準器:LPRO-101をきちんとしたケースに収めた。 従来のテスト運転・・・言わば仮設状態からやっと脱却して本格的に使える状態になった。

 周波数基準器は恐ろしく精度の良い10MHz得るために使う物だが、同種の基準としてはGPS周波数基準が稼働中なので必要度は高くなかった。 しかし測定器の置き場が2ヶ所に分散したことから別途周波数基準が欲しくなった。 GPS基準器の分配を増やしても良いのだが、配線を長く延ばす必要があるので少々面倒である。 そこで10MHz:ルビジウム原子周波数基準器:Rb-OSCの活用で行くことにした。

 Rb-OSCユニットを収納したケースはハム用の100Wくらいの外付けリニヤアンプ用だと思う。 もう10年以上前にローカルのOMさんに頂いた物である。 構造から他への応用には使いにくいのでそのままになっていた。 Rb-OSCの本格稼働を目的に適当なヒートシンクを探していてこれが見つかった。 ユニットの取り付け方法を工夫することでうまく収納できた。

 ケース内部に4分配用のアンプも収納した。 出力はパネル面に1つ、背面に3つである。各出力ともGND側および信号側共にアーソレーション(絶縁分離)される形式になっている。 接続する機器間のシャシ電位差や各装置のグラウンド引き回しの影響を受けない。

 電源は24Vで、 起動直後5分間くらいが約1.6A、平常運転時が約0.6Aの容量を必要とする。 AC電源も内蔵すると使い勝手は良くなる。しかし磁気フラックスが漏れる電源トランスや、大きなノイズ源になり得るスイッチング電源が同居していたら信号純度の点で不利になる。 大きな箱に入れ厳重にシールドすれば対策可能かもしれないが、あっさり別置きにして解決した。電源部は本体と並べずに1mくらい離しておけば良い。 稼働には写真にない外付けの電源を要する。

仮評価
 数年前になるが、仮設状態で評価した際に入念に周波数調整を行なってあった。

 写真は10MHzを10秒ゲートで測定している状態だ。桁数の関係で最上桁の「1」が表示オーバーフローしている。 最小桁は100ミリHzで、これでは10ppb(1億分の1=0.01ppm)の精度までしか測定できていないが取りあえず製作直後の動作チェックとしては問題なさそうだ。

 このあと、十分な連続運転を行なって安定してきたところでGPS周波数基準器と周波数合わせを行なうことにする。

 この10MHz-Rb-OSCは1ppb(10億分の1、10E-9、絶対値で10ミリHz)の精度まで普通に得られるが小さな温度係数があるようで10ppt(1兆分の10、10×10E-12、絶対値で10マイクロHz)オーダーの僅かな漂動が認められる。 通常まったく問題にはならないのだが完全に静止した不動の基準ではない。 また経年変化もある模様で数年に1度くらいの周波数合わせは必要ではないかと思っている。もちろん、校正頻度は要求精度にもよるが。 要するにRb-OSCは校正しながら使うべき『2次基準器』なのである。(参考:放電セルのガス・クリーンナップ現象による圧力変化に伴う周波数シフト量の経年変化のようだ) GPS衛星にもRb-OSCが搭載されているが、あれは地上局から常に監視され、随時補正されて高い絶対精度が維持されている。 非常にゆっくりした変化なので監視して補正を続ければGPSナビゲーションに必要な精度を維持することができるわけだ。

きれいな10MHz
 もう一つ気になるのは得られる10MHz信号の奇麗さであろう。 写真は横軸:10MHz中心に10kHz幅にとって信号近傍のスペクトラムを詳細に見ている状態だ。 LPRO-101のあとに分配用アンプを付加した状態の信号を見ている。実際の出力信号と言うことになる。

  50Ω負荷に信号レベルは8.54dBmである。 信号純度は良くできた水晶発振器と同じレベルにある。ジッターはもちろんサイドバンド・ノイズも特に認められない。良い信号が得られている。

 LPRO-101内部には20MHzのVCXO(電圧可変型水晶発振器)があり、その周波数をRb放電管セルの光吸収スペクトルが起こる励起周波数:6,834,682,612.8Hz*1にロックしている。回路としては周波数ロック・ループ:FLL方式である。

参考*1:原子時計・発振器にも幾つかの方式があり、直接周波数を取り出す形式・・メーザー形式の物もある。ここで使ったRb-OSCでは実現の容易さからガスセル式の吸収スペクトルを利用する間接的な方式を採用している。NIST(米国国立標準技術研究所)によるRb原子時計の理論的な周波数は6,834,682,612.8Hzであるが、LPRO-101では6,834,687,500Hzとなっている。この周波数差+4887.2HzはRb放電セルに混合された緩衝ガスによるシフトだ。端数の少ない奇麗な周波数になっていて、LPRO-101はそのように設計されたRb-OSCであると言うこともできる。これは緩衝ガスによる周波数シフトを逆手に取った上手いやり方であり方式特許として出願されている。もちろん2次標準器だからこそ可能な方法だ。

 その20MHzを1/2分周して得ている10MHzの本質は水晶発振器のそれである。Rb発振器とは言ってもこの間接方式の場合「Rb放電管の発振周波数」のような直接得られる「何か特別」の周波数がある訳ではない。得られる10MHzのモトは水晶発振器である。こうして見ると内蔵の20MHz発振器もまずまずなようだ。

 この10MHz発振器を元に携帯電話の中継網を構成していたのだから信号の品質は言うまでもない。 基準信号が汚ければ中継機からの信号もすべて汚れてしまう。 周波数の絶対精度および安定度は勿論だが純度の良い信号を必要としていたはずだ。

#この製作では電源を外付けにし、10MHz分配用アンプをローノイズに作ったのも意味があったように思う。高速OPアンプを使うと製作は容易だが、ノイズフロアの上昇は面白くない。ディスクリートで作った。

 このくらいの基準信号ならV/U/SHF帯の通信用周波数基準としても十分だろう。 マイクロ波帯のPLLや多段の周波数逓倍にも耐えられる筈だ。 測定器の周波数基準やオーディオ再生装置のマスター・クロックのみならず利用範囲の広い周波数基準器になる。 起動から高精度までの待ち時間が短くGPS周波数基準のようにヒモ付きでないのも便利だ。

#もちろん、いくら良い周波数基準があってもその後が劣ればそれなりになる。Rb-OSCさえ繋げば・・・と妄信したら間違いだろう。

                   ☆

 12月のBlogは更新しないはずだったが、それも寂しいので近況報告した。 内部写真は撮り忘れた。 簡単な製作なので詳細な製作情報は省いたが、もしもニーズでもあればいずれ機会を見てと思っている。 これで今年はおしまい。どうぞ良いお年をお迎えください。de JA9TTT/1

(おわり)

参考:ルビジウム発振器関連の過去Blogなどの情報
(1)Rb-OSC今が旬か? (2009年2月1日)→ここ
(2)あなたも今日から高精度病 (2010年9月5日)→ここ
(3)GPS周波数基準器の製作(2016年1月10日)については→ここ
(4)肝心のRb-OSCだが、LPRO-101は旬を過ぎており代わって現在はFE-5680Aと言うユニットが出回っている。おおよそ、$200〜$300でe-Bayに登場している。→該当へリンク

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