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2015年2月19日木曜日

【部品】DBM Chip with NFB, MC-1451

【NFBの掛かったDBMチップ:MC-1451】

SSB復調用DBM-IC:MC-1451
 けして嫌いではないのだが、いわゆる『レアもの』を無理に探し出してまで使おうとは思わない。 珍品はネタとして人目を引くかも知れないが、珍しさだけでは直ちにユニークで意味のあるテーマとは思えないからだ。 だから、ただ単に珍しいものをBlogの題材にして・・・と言うは考えは持っていない。

 しかし、それが珍しいパーツであっても実際に目の前に置かれてしまうと、これは「何とか旨く使ってみたい」とか「では試してみよう!」と思ってしまう。 以下、少々珍しい部品を扱うが「レアものお奨めBlog」でないことは予めご理解頂きたい。 電子部品を扱うなら、できるだけ誰でも手に入る普遍的なものを主体にしたいと思っている。(笑)

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 写真のMC-1451と言うICはアナログ時代の通信関係機器に使われていた特定用途専用部品だ。MC-と付いているがMotorola Semiconductor社の製品ではない。 N社は混成集積回路(ハイブリッドIC)をMicrocircuitと呼び、MC-の型番を付けていたようだ。 写真・上側の黒いものが新型で下側の白い方は旧型だ。 このMC-1451はSSB波を復調するDBM部と低周波アンプ部が集積さている。 フィルタを通ったキャリヤ周波数128kHzのUSB波(Upper Side Band:上側帯波)が入力信号である。 それに128kHzのキャリヤ信号を加えてプロダクト検波を行なう。出力信号は低周波の音声帯域である。

 ギルバートセルを基本としたDBM部と、OPアンプ形式の低周波増幅部が内部で直結されており切り離して使うことはできない。 また電源電圧も21Vに最適化されていて融通が利かない。 要するに他の用途には使いにくいから何となく敬遠気味のICであった。 ところがたまたま等価回路を眺めていて、面白そうな回路構成だと感じたのであった。

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 すでに過去のデバイスである。一般市販されたことも無いから入手の見込みはほぼ無いと思う。 従ってこれは自家用の情報として纏める意味からBlogで扱っている。 以下の評価はごくわずかのお方にはかなり有用かも知れないが、その他ほとんどのお方には無意味だろう。 ここらで深入りせずお帰りもお勧めだ。 まあ、お暇なら「世の中にはこういう石(デバイス)もあるんだ」と言うことで、お付き合い頂くのも宜しいかも知れない・・・。(笑) なお、このチップが搭載されたジャンクをHAMフェアで見かけたこともあったから、取り外し中古品として入手できる可能性も皆無とは言えない?

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MC-1451の中身
 電源電圧が固定されていて融通性が無い、あるいは使用回路も限定されているなど、面白味のないチップだと思って見過ごしてきた。 そのような特徴は見直したところで変わる訳でもないのだが、興味深いことに気付いた。

 左図は内部等価回路である。 MC-1451はハイブリッド構造のICである。 シリコンのチップ、すなわちシリコン小片上に作られたモノリシック(単結晶的な)なICを中核にしている。 さらに使用目的の回路に必要な周辺の部品をセラッミック基板上に搭載して集積したハイブリッド構造のICになっている。 近ごろではあまり見られない形式のICである。

 図中の1点鎖線で囲まれた範囲がシリコンのチップである。この中の回路がシリコンの小片の上に載っている。 その外側にある部品がセラミック基板に載った部品でいずれも印刷された抵抗器だ。 シリコンのチップは同じセラミック基板上に接着され、引出し配線はセラミック基板にワイヤボンディングされている。 現在なら完全モノリシック化も可能だと思う。 開発当時、精度の良い抵抗器は印刷抵抗を使ってトリミングする必要があったのだろう。そうした理由でハイブリッドIC化したものと思う。

 図の左側の部分がギルバートセルをコアにしたDBM回路である。 このDBMはもっぱらSSB信号を復調し音声を取り出すのが目的だ。 キャリヤ信号のレベルシフトやバイアス回路が付いており、さらにNFB(負帰還)を掛けるための回路も集積されているのでだいぶ複雑になっている。

 図の右側の部分はμPC157A(=LM301A)に類似のOPアンプ回路になっている。ただし差動入力・差動出力の完全平衡型になっているのが珍しい。 これは、出力負荷が低周波トランスなので差動出力にすると同じ電源電圧で2倍の振幅が取れて有利だからだ。 Push-Pull動作は歪みにも有利であろう。

 そして珍しいのはOPアンプの部分だけなくDBMの部分を含んだオーバーオールなNFBが掛かっている点だ。 周波数特性の平坦化、ゲインの均質化のほかに復調歪みの改善が目的だろう。 解析していて、この「NFBの掛かったSSB復調器」にたいへん興味を覚えたのである。 使いにくいし用途も限定されているので見過ごしていたICだったのだが、このNFBの掛かった・・・と言う部分に興味を惹かれてしまった。

MC-1451の評価回路
 図は評価回路であるとともに実用の際にも使用する回路である。 電源電圧は21Vであって少々特殊である。 オリジナルでは+接地の-21Vを電源とした回路で使われていたが、使いにくいのでマイナス接地の回路に改めている。

 キャリヤ(復調用搬送波)は-10dBm、0dBm、+7dBm(75Ω系)に切り替えて特性をとってみた。 キャリヤ及び信号の入力端子は50Ωや75Ωではないので不整合であるがDi-DBMとは違って整合していなくても支障はない。 ちなみに各端子のインピーダンスであるが、キャリヤ入力端子は10kΩ(差動で20kΩ)以上、信号入力端子は3.7kΩ(差動で7kΩ)くらいである。 信号出力のインピーダンスは75Ω(差動で150Ω)になっている。

 電源電圧は標準+21Vだが、下げて行ってどこまで正常動作するか調べてみた。 徐々に最大出力が小さくなるが、+18Vくらいまで正常に動作するようだ。 当たり前ではあるが総合的に見て+21Vで使うのがベストであった。従って評価も+21Vで行なう。

 IC内部にツェナーDiで電圧を作っている部分があって、その関係で最低電圧が決まるようだ。 せめて+12〜15Vで使えたら良かったのだがちょっと残念である。

テスト回路の様子
 例によってブレッド・ボードでテストした。
 このMC-1451は128kHzで使うことを前提にしているので、回路構成上あまり高い周波数は無理がある。 性能低下しない周波数として1MHzあたりを実用上限とすべきようだ。(周波数を変えて調べた)

 1MHzと言うこともあって、ブレッドボードでテストしている。特に支障ないようであった。 復調回路なので、キャリヤ漏れはあまり気にならないのでDBMのバランス調整は省略している。 必要に応じて付けようと思ったが、キャリヤ周波数が復調周波数とかけ離れているならなくて大丈夫だ。

 漏れてくるキャリヤと上側へ変換される信号の除去の為に、インダクタ:2.2mHとコンデンサ:1,000pFを使った簡単な低域フィルタ(LPF)を出力部に入れてある。(2.2mHは右上の青い筒状部品) このLPF部分は少々問題があるので本式に使うときには再設計のつもりだ。

MC-1451の様子
 最初の写真にあるように、MC-1451には新旧2つのタイプがある。 こちらが旧型のようである。 新型は樹脂でモールドされているのに対し、こちらはセラミック基板を覆うカバーが爪で止められているだけの構造だ。

 従って、簡単に中の様子をうかがうことができるのだが、殆どの場合、黒色の樹脂製カバーを外す際に爪が折れてしまう。 従って無理に中を見ようとしない方が良い。 なお内部回路は新旧どちらも同じのようである。 差し替えてみても差は感じられなかった。 文字の印刷面から見た時、1番ピンの位置が新旧では左右反対なので注意を。 この写真のものは左から「10,9,8,・・・2,1」の並びだ。右端の赤い丸印が1番ピンを示すマークである。黒い新型は逆の順になる。

復調波形
 キャリヤ信号fc:1,000kHz、0dBm/75Ωを与えている。 信号の方はfs:1,001kHz、-10dBm/50Ωである。 従って、復調出力はfs-fcであるから、1kHzと言うことになる。

 オシロスコープの波形からは奇麗な正弦波にしか見えないので、歪み特性を調べてみることにした。 同時に、キャリヤ信号の注入量をパラメーターとし、入出力電圧の関係も調べる。実際に使う時のためにキャリヤ信号の最適レベルを探っておこう。

 テストしていての感想だが、NFBが掛かっている為だろうか広い入力範囲で奇麗な正弦波が保たれるようであった。 過大入力で飽和傾向になっても・・・当然歪み率は悪くなって行くのだが・・・極端に波形が崩れないはその効果なのかも知れない。

MC-1451の復調特性
 最適なキャリヤ信号の大きさと言うものがあるように思えたので、-10dBm、0dBm、-7dBmの3種類で評価した。 いずれも75ΩのSGで整合終端はしていないので概ね開放端電圧に近いと思う。

 信号の方は、Pin4の手前で50Ωに終端して信号を加えている。 周波数は1,001kHzである。 999kHzでも同じだったので上側と下側の違いはないようである。 なお、実際に使われていた時も信号はUSB側であった。

 キャリヤレベルが-10dBmのとき、復調歪みが最も少なかった。(青い塗りつぶしドットのライン) ただし、復調のゲインが低下して同じ入力に対する出力電圧は小さくなる。 また飽和傾向が早くから現れるのでこの歪み特性を見ただけで-10dBmが良いとは結論できない。 +7dBm(黒の塗りつぶしドット)にしても0dBmと比べ変化の度合いは少ない。概ね-5〜0dBmあたりのキャリヤを与えるのが良さそうだ。

 通信機においては1%未満の歪み率と言うのはなかなか良好だと思う。単純なアンプ回路ならまだしも、非線形な動作を伴う復調回路なのだから良い性能と言えそうだ。 なお、455kHzではどうか調べてみたが、概ね同様であったので1MHzの例で代表する。

 グラフで信号レベルが下がると歪み率が悪化するのはノイズの影響が出てくるからだ。アンプを必要な帯域幅に絞り回路も良くシールドすればだいぶ改善される。 信号の歪みが大きくなってくる訳ではないようだ。 加える信号は最大でも0dBmを超えぬ程度に留めておけば音の良いSSB復調(受信)ができるのではないだろうか。

復調周波数特性
 DBM回路そのものは高周波回路のミキサーにも使える性能を持っている。原理的に周波数特性は良好で広帯域である。 従って復調回路に使った時も復調出力は広帯域にわたり平坦である。(DBM部に続くアンプ部分が周波数上限を制限している)

 ここでは簡易なテストの意味から漏れてくるRF(=キャリヤの漏れと和の周波数の信号)をカットできれば良いとして簡単なLCのLPFで済ませてしまった。そのために、数10kHzのところに盛り上がりができてしまった。

 本格的に使う時は、インピーダンスを考え、整合したLPFを入れれば良い。そうすれば盛り上がりのない平坦な周波数特性が得られるから、そのつもりでご覧頂ければと思う。 MC-1451の復調周波数特性ではなく外付けLPFの周波数特性が見えてしまっている訳だ。

 以上、MC-1451の復調特性を評価してみた。 実用にするための情報が得られた。

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 電源電圧が21Vと言うことから用途は限定されてしまうかも知れない。 AC電源の受信機(RX)なら電源整流回路を少し工夫して21Vを作るのは難しくない。 12V電源の機械の場合、DC/DCコンバータで昇圧する手もあるが、そこまでして使う価値はないだろう。

 早速思いつく用途としてはR-390AやR-392と言った455kHz:IF出力を持ったRXの外付けSSB受信アダプタがある。これらRXはSSB向きの検波器を内蔵しておらず、いま一つ復調音が悪い。 RF/IFゲインを絞って受信すれば何とかなるのだが、今風RXのようにSSB受信でもばっちりAGCを効かせて受信したいものだ。 前々から外付けで『良い音』のSSBアプタが欲しいと思っていた。 有力な活用候補としておこう。 消費電流は10mA未満なので他の真空管機に内蔵するのも良さそうだ。 ただし復調回路そのものがゲインを持つので信号レベルを見直す必要があるだろう。 最初からMC-1451を使う前提で半導体式の受信機を設計するのも面白そうだ。

 いろいろ妄想が膨らんできたところでおしまいにする。 もしもこのICをお持ちなら面白い受信機なりアダプタが作れそうだからぜひとも活用を。 20世紀に置いてきた技術遺産にも優れモノがあったことを実感できるだろう。 de JA9TTT/1

#ブラジルのネットショップでMC-1451Eを見つけた。システムの補修用に輸出されたパーツの流出品だろうか。ポルトガル語なので良くわからなかったが未使用品が手に入る可能性はある?

#次は私なりにソ連製のDBMでも扱おうかな? それってレアものだなあ・・・(爆)

(おわり)

2015年2月4日水曜日

【部品】Small Signal J-FET

【小信号用ジャンクションFETの特性】

小信号用J-FETの幾つか
 買い込んだ部品も使われてこそ活きてくる。 こんな地味なテーマも下地となって何時かデバイスの活用に繋がってくるものだ。以下は暇つぶしにもならぬ内容なのであらかじめ書いておく。
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 このBlogのメインテーマは『無線通信』だから来訪者はHAMとかラジオに興味を持つ人だろう。 写真の『小信号用接合型電界効果トランジスタ:Small Signal J-FET』も高周波(RF)用を選んでみた。 オーディオ用のFETも同時にテストしたのだが省略しておく。 以下RF用J-FETを例にとった話だが、差動形式のアンプを多用するAudio系で有用性は高いと思う。 RF用FET限定ではない。Audioに興味をお持ちのお方もお暇ならお目通しを。

 例によって自作に興味を持たない人には退屈なのはいつも通りだ。 ラグチュー用のネタにもならんテーマだろうが、ちゃんとわかっていない「受け売り」はすぐ馬脚が現れるからお空の話題も気をつけないとね。(笑)

参考:RF用J-FETの互換と入手の情報:
(1)2SK19及び2SK19TMは廃止品で、代替品は2SK192Aである。Idssランクを合わせてやれば置き換えが可能だ。2SK192AはIdssランクYが秋月電子通商にて1個40円で売っている。GRランクは販売終了したようだ。(2015.12.20現在)他にも販売しているお店はあるので検索してみると良い。(例:e-エレとか)なお、用途如何ではあるが2SK241→2SK192Aの代替は適当でないので注意を。逆に2SK192A→2SK241は代替可能なケースも多い。ただしMOS構造の2SK241を低周波回路に使うのは適当でない。低周波回路にはJ-FETを使うべきだ。

(2)J310(=J310Gも同)は、2SK125の代替品に向いている。逆も可能なのでJ310のところに2SK125でも良い。ただし2SK125とJ310の足の並びは異なるので注意を。 回路によっては2SK19、2SK19TM及び2SK192AのIdssランクBLで置き換えできることも多いので窮余の策として覚えておこう。 J310(G)は秋葉原や日本橋での入手は難しいので通販を利用する。纏めて買うならRSオンラインDigi-KeyMOUSERなどの国際通販業者をお薦めしたいと思う。(時々品切れあり)ほかに購入経験は無いがAmazonで小口販売している個人もあるようだ。

 いずれのデバイスも表面実装型の互換品が登場しており、むしろ主流になってきている。自分で基板設計まで行なうような人はそちらを積極的に使うのもこれからの一つの行き方だろう。

備考:関連のBlog記事:RF-FETs(←リンク)

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FETの伝達特性とは
 静特性の基本は図の伝達特性であろう。 ゲート電圧とドレイン電流の関係が示されている。 図はディプレッション型のFETの例であるが、エンハンスメント型でも基本的なカーブの形は同じである。ただし現れる象限は異なる。

 エンハンスメント型はVgs=0Vではカットオフしてしまうのでドレイン電流はゼロであり、Idssの概念はすこし違うので注意を。スイッチング用のパワーMOSに多いが小信号用のMOS-FETも幾つか存在し、たとえば2N7000がそうだ。

☆ここでは、小信号用の接合型FETであって、ディプレッション型を対象としている。

 図から、ピンチオフ電圧:Vpゼロバイアス・ドレイン電流:Idssがわかれば、任意のドレイン電流に於けるゲートバイアス電圧がわかることになる。バイアス回路の設計ができる訳だ。 Idssは過去のBlog(←リンク)にも書いてあるように、ごく簡単に実測できる。

 ピンチオフ電圧:Vpも可変電圧電源と高感度電流計があれば実測も難しくない。ただし、少し面倒なので次項の測定回路:Vpチェッカを使うと便利だ。 このようにIdssもVpも容易に求まるから気の利いた設計には実測しておくと案配が良い。(参考:1μAが読めるような電流計はデリケートで扱いが難しいのでVpチェッカがお奨め)

ピンチオフ電圧測定治具:Vpチェッカ
 ピンチオフ電圧:Vpと言うのはドレイン・ソース間に所定の電圧(一般に10Vが多い)を掛けておき、ドレイン電流が流れなくなった時のゲート・ソース間電圧:Vgsのことを言う。

ただし、この「流れなくなったとき」と言うのが問題だ。 ドレイン電流が完全にゼロになるポイントを見いだすのはそれなりに難しい。 電流計が高感度なら、いっそうどこにId=ゼロがあるのか判定に困ることになる。

 従って、半導体メーカーはId=1μAとか、10μAになったときの・・・と言うような条件を付けてVpを規定している。そうでないとキリがない話になってしまうのだろう。 ここではId=1μAになる時のVgsをVpとすることにした。実用上はこれで支障ない。

 なお、R1の値を変えてやれば、任意のドレイン電流に対するゲート電圧:Vgsを実測することができる。 抵抗値はR1=15/Id(Ω)で計算できる。 Id=1mAとすれば、R1=15kΩとなる。 Id=5mAなら3kΩだ。 なお、Idss以上の電流はゲートが正にバイアスされてしまうのでJ-FETの場合は旨くない。 Id<Idssの範囲のこと。
 ドレイン・ソース間電圧;Vdsの影響もあるので、その場合は電源電圧Vcc+15Vを変更する。特別低い電圧にしたい時は、OP-Ampの電源とは別にVds用電源を用意する。 ここでは、Vds=15Vに於ける値を測定していることになる。
(参考資料:「精選アナログ実用回路集」稲葉保著・CQ出版社ISBN4-7898-3142-6、1991)

Vpチェッカの様子
 十分な実用性がありそうなら恒久的な治具として纏めるつもりだが、取りあえずブレッドボードで試作した。

 ごく簡単なので、すぐに作れると思う。 上記の説明のように、任意のドレイン電流Idに於けるVgを実測するにはR1を可変あるいは交換できた方が良さそうだ。
 また、ドレイン電圧:Vdsも独立に与えられるようにしておく方が良いと思った。 恒久的な治具に作る際にはそのようにしておこう。

OPアンプはFET入力型を使う
 一般的なOPアンプで十分だが、Vpを測定する時のドレイン電流:Idは1μAといった小さな電流なので、入力バイアス電流:Ibが大きなOPアンプを使うと誤差を生じる。 バイポーラトランジスタ入力形式の358系や4558系のOPアンプはワーストケースではIb=0.1μAとか0.5μAである。-50〜-10%と言った大きな誤差を生じる可能性があるので適当でない。

 FET入力型のOPアンプのバイアス電流は数nA(ナノアンペア:0.001μA)以下、普通はpA(ピコアンペア:0.001nA)のオーダーなので十分な性能だ。 ここではやや珍しいBi-MOS型のCA082E/RCAを使った。25℃に於けるバイアス電流は40pA(max)なので誤差は0.004%(最大)と十分な性能だ。 これはたまたま手持ちが出てきたから使ったまでで、それ以上の意味は無い。 もちろん回路図通りBi-FET型のTL082CPで良くて他にTL062CP、TL072CP、LF353Nなども適している。

:OPアンプのオフセット電圧:VosがVpの誤差になる。Vosはわずかに数mVだがもし気になるようならオフセット調整を付ける。 VosはCA082Eでは標準で3mV、最大6mV(いずれも@25℃)である。普通は被測定対象FETのバラツキや温度による変化も存在するので精密さは要求されないからオフセット調整はいらないと思う。 補正するなら実測しておいて差し引く程度で十分だろう。

2SK192A(GR)を測定中
 2SK192A(東芝)は高周波用のJ-FETとし非常にポピュラーだ。 2SK19あるいは2SK19TMの直接的な代替品でもある。
 型番の末尾に改良型を意味する「A」が付いているので2SK192の改良品の筈だが、Aなしを見かけたことがない。 データブックにも記載が無いので、192の登場からすぐに改良A型になり、そのままA付きが主流になったのだろう。

  ソース接地型RFアンプの用途は中和の要らない内部カスコード構造のFET:例えば2SK241に主役の座を譲った感じだ。 しかし、ソースフォロワ形式のバッファアンプやLCあるいは水晶発振回路にはまったく支障ないから幅広く活用できるFETだ。

 まだ今は多くのお店で入手できるが例によってリード線付き部品は淘汰される方向にある。将来にわたって安泰とは言えないだろう。 しかし2SK19、2SK19TM、2SK192Aを代替できるJ-FETは国産はもとより海外製も多数あって特に困らないと思っている。

J310の測定も
 以下、代表としてJ310(G)を選んでみた。同様の活用は他のRF用FETでも可能な訳で、J310に限ったことではない。実際、メーカー機でも2SK19をマイクアンプに使った例もあって、どのJ-FETもかなり汎用に使える。

 J310は同じRF用でも2SK19シリーズとは少し毛色の違ったJ-FETである。 本来の開発目的であるゲート接地型のRFアンプとして使われるのが大半だが、ソース接地型のRFアンプやソースフォロワとして使うこともできる。

 ゲート接地増幅回路(GGアンプ)への使用例が多いのは、そのように使うと入力が75Ωにマッチングし易いよう設計されたデバイスだからだ。 概略値だが入力インピーダンス:Zi=1/gmなので、2SK19シリーズよりもgmは大きく作られている。 マッチング回路なしに75Ωに直結して使うためには高いgmが必要だ。それは同時にドレイン電流がたくさん流れる特性なのでIdssは大きくなっている。 なお、50Ωにマッチングさせるには、gmが大きめのもの(=Idssが大きめのもの)を選ぶか、2個並列に使ってドレイン電流:Idを調整すれば達成できる。

 将来対応として少し纏めて買っておいた関係で、ゲート接地RFアンプ以外への活用も考えておきたいと思っている。 深いバイアスを掛けて、ドレイン電流をあまりたくさん流さない使い方も検討しておこう。上手に使えば汎用のRF向きFETとして活用の幅が広がる。

J310のAFアンプ
 なんの変哲も無い低周波(AF)アンプの回路だ。FETを使った増幅回路の基本である。 実測Idssが約40mAのJ310GをId=1mAで使っている。 当然ながら深いバイアスを掛ける必要があって、ソース抵抗:R2は大きな値を選ぶ。

参考:回路に於いてドレイン電流:Idを決めたら、R2の値は実測により求めておいたVpとIdssから、以下の式で計算することができる。ただし、概略値なので厳密には調整を要する。

   Rs=-Vgs/Id=(-Vp/Id)・(1-√(Id/Idss))・・・・(式1)

 このように、深めのバイアスを掛けて使えばJ310のようなIdssが大きいJ-FETでも汎用の増幅回路に使うことができる。 深いバイアスを掛けた副作用でそのまま電源電圧が下がるとすぐカットオフしてしまうのが弱点である。Vds=3Vくらいの低い電圧で使うには再設計を要する。(作ってからソース抵抗を加減するアマチュア的手法も可・笑)

 VHF帯でノイズが小さいことは保証されているが、低周波でもローノイズかは検討を要する。 しかし一般的にJ-FETのノイズは少なめで音色もBJTよりソフトなので低周波回路への適性もあると思う。 ドレイン耐圧は高くないので本格的なオーディオ用には向いていないが、HAMのRig用なら支障ない。マイクアンプとか幅広く使えるだろう。

J310のAFアンプ:実装状態
 見ても仕方が無いとは思うが、一応こんな感じに製作してみた。 ゲインは20倍(=26dB)くらいであった。 計算からJ310のgmはId=1mAの時:gm=3500μ℧くらいになるようだ。

 この設計ではドレインの抵抗:R1が高めなので高周波特性は良くないが低周波一般用には支障ない。 このほかFET検波に使うことも可能な訳で、もう少し深めのバイアスを掛けてやれば旨くゲート検波ができる。 gmもそれほど低下しないので再生も良く掛かるだろう。 GGアンプ用に作られたJ310にも汎用性はあって、各種発振回路や再生検波のような用途にも使える。

参考:はじめからマイクアンプのような低周波増幅を行ないたいなら、2SK30ATMなどの低周波増幅用J-FETを入手すべきだ。 ここでは手持ちの活用範囲を広げる意味でRF用J-FETで検討している。新たに購入するならその用途に向いたデバイスの方が有利だ。

出力波形
 例によって見ても楽しくない正弦波の波形だ。(笑)

 低周波発振器から信号を与え、ドレイン側の出力を観測している。ここは実験なのでアンプの負荷インピーダンスは高いと言う想定だ。 J-FETの伝達特性は二乗特性なので、偶数次の歪みが多いだろうか?

 写真の例ではあまり顕著にわからないが、動作点あるいは、FETの品種によっては明らかに上下非対称な波形が見られることもある。 FETのアンプは無帰還でしかも大振幅で使うと歪みっぽいので注意が必要だ。 バイポーラトランジスタの伝達特性は指数関数的なのでもっと歪みっぽいと言う意見もあるが、ベース電流:Ibに対するコレクタ電流:Icのリニヤリティは優れている物が多いので要は使い方なのであろう。

【スペクトラム観測】
 せっかくなので、上記波形のスペクトラムを観測してみた。 無帰還のアンプだが2次高調波は-46dBなので、0.5%程度のものだ。 なるほど、オシロの波形観測では正弦波に見えた訳だ。

 やはり、3次高調波よりも2次高調波がずっと大きいのは理屈通りだ。 理想的には奇数次高調波は出ないのだが、現実は完全な二乗特性ではないから奇数次高調波も僅かに生じる。 それでも奇数次は少ないのでRFアンプにFETを採用すると混変調特性が向上するのだ。 FETはこれからもRF用のデバイスとして有用で有り続けるだろう。

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 J-FETの動作点を机上の設計で決めるのは難しい面がある。 Idssがばらつくし、伴ってVpもバラツキが多い。同じソース抵抗を入れてもドレイン電流は2倍くらい違ってしまうことはざらだ。 そのような時は、思い切って実測してしまうと確実だ。 機器の量産メーカーではそんな馬鹿なマネはできないが、手作りの一品料理なら何でもアリだから設計精度を向上させる意味からもデバイスの実測使用は推奨されると思う。 J-FETはIdssとVpを「実測してから使う」と言うのを今後の方向にでもしておこう。hi

 寒波襲来でなかなか本当の春にはなりそうもないが、今日・2月4日から暦の上では「春」である。 ぼちぼち梅の便りとか水仙の見頃と言う観光案内が賑やかになってきた。 昨年のような2月の大雪は勘弁してもらいたいと思っている。 関東地方は積もらないのが前提で積雪には脆弱なことが実証されてしまった。たった15cmの積雪でも覚束ないのに昨冬は一晩で70cmも積もって、なんだかんだ1週間以上も不自由が残ってしまった。 de JA9TTT/1

(おわり)