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2015年2月19日木曜日

【部品】DBM Chip with NFB, MC-1451

【NFBの掛かったDBMチップ:MC-1451】

SSB復調用DBM-IC:MC-1451
 けして嫌いではないのですが、いわゆる『レアもの』を無理に探し出してまで使おうとは思いません。 珍品はネタとして人目を引くかも知れませんが、珍しさだけでは直ちにユニークで意味のあるテーマとは思えないからです。 ですから、ただ単に珍しいものをBlogの題材にして・・・と言うは考えは持っていません。

 ですが、それが珍しいパーツであっても実際に目の前に置かれてしまうと、これは「何とか旨く使ってみたい」とか「では試してみよう!」と思ってしまいます。 以下、少々珍しい部品を扱いますが「レアものお奨めBlog」でないことは予めご理解ください。 電子部品を扱うなら、できるだけ誰でも手に入る普遍的なものをテーマにしたいと思っています。(笑)

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 写真のMC-1451と言うICはアナログ時代の通信関係機器に使われていた特定用途専用部品です。MC-と付いていますがMotorola Semiconductor社の製品ではありません。 N社は混成集積回路(ハイブリッドIC)をMicrocircuitと呼び、MC-の型番を付けていました。 写真・上側の黒いものが新型で下側の白い方は旧型です。 このMC-1451はSSB波を復調するDBM部と低周波アンプ部が集積さています。 フィルタを通ったキャリヤ周波数128kHzのUSB波(Upper Side Band:上側帯波)が入力信号です。 そこに128kHzのキャリヤ信号を加えてプロダクト検波を行ないます。出力信号は低周波の音声帯域です。

 ギルバートセルを基本としたDBM部と、OPアンプ形式の低周波増幅部が内部で直結されていて切り離して使うことはできません。 また電源電圧も21Vに最適化されていて融通が利きません。 要するに他の用途には使いにくいので何となく敬遠気味のICでした。 ところがたまたま等価回路を眺めていて、面白そうな回路構成だと感じたのです。

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 すでに過去のデバイスです。一般市販されたことも無いので入手の見込みはほぼ無いでしょう。 従ってこれは自家用の情報として纏める意味からBlogで扱っています。 以下の評価はごくわずかのお方にはかなり有用かも知れませんが、その他ほとんどのお方には無意味でしょう。 ここらで深入りせずお帰りもお勧めです。 まあ、お暇でしたら「世の中にはこういう石(デバイス)もあるんだ」と言うことで、お付き合い頂くのも宜しいかも知れない・・・。(笑) なお、このチップが搭載されたジャンクをHAMフェアで見かけたこともありますから、取り外し中古品として入手できる可能性も皆無とは言えない?

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MC-1451の中身
 電源電圧が固定されていて融通性が無い、あるいは使用回路も限定されているなど、面白味のないチップだと思って見過ごしてきました。 そのような特徴は見直したところで変わる訳でもないのですが、興味深いことに気付きました。

 左図は内部等価回路です。 MC-1451はハイブリッド構造のICです。 シリコンのチップ、すなわちシリコン小片上に作られたモノリシック(単結晶的な)なICを中核にしています。 さらに使用目的の回路に必要な周辺の部品をセラッミック基板上に搭載して集積したハイブリッド構造のICです。 近ごろではあまり見られない形式のICです。

 図中の1点鎖線で囲まれた範囲がシリコンのチップです。この中の回路がシリコンの小片の上に載っています。 その外側にある部品がセラミック基板に載った部品でいずれも印刷された抵抗器です。 シリコンのチップは同じセラミック基板上に接着され、引出し配線はセラミック基板にワイヤボンディングされています。 現在なら完全モノリシック化も可能だと思います。 開発当時、精度の良い抵抗器は印刷抵抗を使ってトリミングする必要があったのでしょう。そうした理由でハイブリッドIC化したものと思います。

 図の左側の部分がギルバートセルをコアにしたDBM回路です。 このDBMはもっぱらSSB信号を復調し音声を取り出すのが目的です。 キャリヤ信号のレベルシフトやバイアス回路が付いており、さらにNFB(負帰還)を掛けるための回路も集積されているのでだいぶ複雑になっています。

 図の右側の部分はμPC157A(=LM301A)に類似のOPアンプのような回路になっています。ただし差動入力・差動出力の完全平衡型になっているのが珍しいです。 これは、出力負荷が低周波トランスなので差動出力にすると同じ電源電圧で2倍の振幅が取れて有利だからです。 Push-Pull動作は歪みにも有利でしょう。

 そして珍しいのはOPアンプの部分だけなくDBMの部分を含んだオーバーオールなNFBが掛かっている点です。 周波数特性の平坦化、ゲインの均質化のほかに復調歪みの改善が目的でしょう。 解析していて、この「NFBの掛かったSSB復調器」にたいへん興味を覚えたのです。 使いにくいし用途も限定されているので見過ごしていたICでしたが、このNFBの掛かった・・・と言う部分に興味を惹かれてしまいました。

MC-1451の評価回路
 図は評価回路であるとともに実用の際に使用する回路でもあります。 電源電圧は21Vであって少々特殊です。 オリジナルでは+接地の-21Vを電源とした回路で使われていましたが、使いにくいのでマイナス接地の回路に改めています。

 キャリヤ(復調用搬送波)は-10dBm、0dBm、+7dBm(75Ω系)に切り替えて特性をとってみました。 キャリヤ及び信号の入力端子は50Ωや75Ωではないので不整合ですがDi-DBMとは違って整合していなくても支障ありません。 ちなみに各端子のインピーダンスですが、キャリヤ入力端子は10kΩ(差動で20kΩ)以上、信号入力端子は3.7kΩ(差動で7kΩ)くらいです。 信号出力のインピーダンスは75Ω(差動で150Ω)になっています。

 電源電圧は標準+21Vですが、下げて行ってどこまで正常動作するか調べてみました。 徐々に最大出力が小さくなりますが、+18Vくらいまで正常に動作します。 当たり前ですが総合的に見て+21Vで使うのがベストでした。従って評価も+21Vで行ないます。

 IC内部にツェナーDiで電圧を作っている部分があって、その関係で最低電圧が決まるようです。 せめて+12〜15Vで使えたら良かったのですがちょっと残念です。

テスト回路の様子
 例によってブレッド・ボードでテストします。
 このMC-1451は128kHzで使うことを前提にしているので、回路構成上あまり高い周波数は無理があります。 性能低下しない周波数として1MHzあたりが実用上限と考えられます。(周波数を変えて調べました)

 1MHzと言うこともあって、ブレッドボードでテストしています。特に支障ないようでした。 復調回路なので、キャリヤ漏れはあまり気になりませんからDBMのバランス調整は省略しています。 必要に応じて付けようと思いましたが、キャリヤ周波数が復調周波数とかけ離れているならなくて大丈夫です。

 漏れてくるキャリヤと上側へ変換される信号の除去の為に、インダクタ:2.2mHとコンデンサ:1,000pFを使った簡単な低域フィルタ(LPF)を出力部に入れてあります。(2.2mHは右上の青い筒状部品) このLPF部分は少々問題があるので本式に使うときには再設計のつもりです。

MC-1451の様子
 最初の写真にあるように、MC-1451には新旧2つのタイプがあります。 こちらが旧型のようです。 新型は樹脂でモールドされているのに対し、こちらはセラミック基板を覆うカバーが爪で止められているだけの構造です。

 従って、簡単に中の様子をうかがうことができるのですが、殆どの場合、黒色の樹脂製カバーを外す際に爪が折れてしまいます。 従って無理に中を見ようとしない方が良いでしょう。 なお内部回路は新旧どちらも同じのようです。 差し替えてみても差は感じられません。 文字の印刷面から見た時、1番ピンの位置が新旧では左右反対なので注意します。 この写真のものでは左から「10,9,8,・・・2,1」の並びです。右端の赤い丸印が1番ピンを示すマークです。黒い新型は型番印刷面から見ると逆の順です。

復調波形
 キャリヤ信号fc:1,000kHz、0dBm/75Ωを与えています。 信号の方はfs:1,001kHz、-10dBm/50Ωです。 従って、復調出力はfs-fcですから、1kHzです。

 オシロスコープの波形からは奇麗な正弦波にしか見えませんので、歪み特性を調べてみることにしました。 同時に、キャリヤ信号の注入量をパラメーターとし、入出力電圧の関係も調べました。実際に使う時のためにキャリヤ信号の最適レベルを探っておきます。

 テストしていての感想ですが、NFBが掛かっている為でしょうか広い入力範囲で奇麗な正弦波が保たれるようでした。 過大入力で飽和傾向になっても・・・当然歪み率は悪くなって行くのですが・・・極端に波形が崩れないはその効果かも知れません。

MC-1451の復調特性
 最適なキャリヤ信号の大きさと言うものがあるように思えたので、-10dBm、0dBm、-7dBmの3種類で評価しました。 いずれも75ΩのSGで整合終端はしていないので概ね開放端電圧に近いと思います。

 信号の方は、Pin4の手前で50Ωに終端して信号を加えています。 周波数は1,001kHzです。 999kHzでも同じだったので上側と下側の違いはないようです。 なお、実際に使われていた時も信号はUSB側でした。

 キャリヤレベルが-10dBmのとき、復調歪みは最少でした。(青い塗りつぶしドットのライン) ただし、復調のゲインが低下して同じ入力に対する出力電圧は小さくなります。 また飽和傾向が早くから現れるのでこの歪み特性を見ただけで-10dBmが良いとは結論できません。 +7dBm(黒の塗りつぶしドット)にしても0dBmと比べ変化の度合いは少ないようです。概ね-5〜0dBmあたりのキャリヤを与えるのが良さそうです。

 通信機においては1%未満の歪み率と言うのはなかなか良好だと思います。単純なアンプ回路ならまだしも、非線形な動作を伴う復調回路ですから良い性能と言えそうです。 なお、455kHzではどうか調べてみましたが、概ね同様だったので1MHzの例で代表します。

 グラフで信号レベルが下がると歪み率が悪化するのはノイズの影響が出てくるからです。アンプを必要な帯域幅に絞り回路も良くシールドすればだいぶ改善されます。 信号の歪みが大きくなってくる訳ではありません。 加える信号を最大でも0dBmを超えぬ程度に留めておけば音の良いSSB復調(受信)ができるのではないでしょうか。

復調周波数特性
 DBM回路そのものは高周波回路のミキサーにも使える性能を持っています。原理的に周波数特性は良好で広帯域です。 従って復調回路に使った時も復調出力は広帯域にわたり平坦です。(DBM部に続くアンプ部分が周波数上限を制限しています)

 ここでは簡易なテストの意味から漏れてくるRF(=キャリヤの漏れと和の周波数の信号)をカットできれば良いとして簡単なLCのLPFで済ませました。そのために、数10kHzのところに盛り上がりができました。

 本格的に使う時は、インピーダンスを考え、整合したLPFを入れれば良いでしょう。そうすれば盛り上がりのない平坦な周波数特性が得られますから、そのつもりでご覧頂ければと思います。 MC-1451の復調周波数特性ではなく外付けLPFの周波数特性が見えてしまっている訳です。

 以上、MC-1451の復調特性を評価してみました。実用するための情報が得られました。

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 電源電圧が21Vと言うことから用途は限定されてしまうかも知れません。 AC電源の受信機(RX)なら電源整流回路を少し工夫して21Vを作るのは難しくありません。 12V電源の機械の場合、DC/DCコンバータで昇圧する手もありますが、そこまでして使う価値はないでしょう。

 早速思いつく用途としてはR-390AやR-392と言った455kHz:IF出力を持ったRXの外付けSSB受信アダプタがあります。これらRXはSSB向きの検波器を内蔵しておらず、いま一つ復調音が悪いのです。 RF/IFゲインを絞って受信すれば何とかなるのですが、今風RXのようにSSB受信でもばっちりAGCを効かせて受信したいものです。 前々から外付けで『良い音』のSSBアプタが欲しいと思っていました。有望な活用候補にしておきます。 消費電流は10mA未満なので他の真空管機に内蔵するのも良さそうです。 ただし復調回路そのものがゲインを持つので信号レベルを見直す必要があるでしょう。 最初からMC-1451を使う前提で半導体式の受信機を設計するのも面白そうです。

 いろいろ妄想が膨らんできたところでおしまいにします。 もしもこのICをお持ちなら面白い受信機なりアダプタが作れそうですからぜひともお試しを。 20世紀に置いてきた技術遺産にも優れモノがあったことを実感できるでしょう。 de JA9TTT/1

#ブラジルのネットショップでMC-1451Eを見つけました。システムの補修用に輸出されたパーツの流出品でしょうか。ポルトガル語なので良くわかりませんが未使用品が手に入る可能性もある?

#次は私なりにソ連製のDBMでも扱おうかな? それってレアものだなあ・・・(爆)

(おわり)

2015年2月4日水曜日

【部品】Small Signal J-FET

【小信号用ジャンクションFETの特性】

小信号用J-FETの幾つか
 買い込んだ部品は使ってこそ活きます。 地味なテーマも下地となってデバイスの活用に繋がります。以下は暇つぶしにもならない内容でしょう。
          −・・・−

 このBlogのメインテーマは『無線通信』なので来訪者はHAMやラジオに興味を持つ人です。 写真の『小信号用接合型電界効果トランジスタ:Small Signal J-FET』も高周波(RF)用を選びました。 オーディオ用のFETもテストしましたが省略します。 以下RF用J-FETを例にしますが、差動形式のアンプを多用するAudio系で有用性があるでしょう。 RF用FET限定ではありません。Audioに興味をお持ちのお方も良かったらご覧ください。

 例によって自作に興味のない人には退屈でしょう。 ラグチュー用のネタにもならないと思いますが、ちゃんとわかっていない「受け売り」はすぐ馬脚が現れます。お空の話題も気をつけないとね。(笑)

参考:RF用J-FETの互換と入手の情報:
(1)2SK19及び2SK19TMは廃止品で、代替品は2SK192Aです。Idssランクを合わせればそのまま代替できます。2SK192AはIdssランクYが秋月電子通商にて1個40円です。GRランクは販売終了したようです。(2015.12.20現在)他にも通販しているお店があります。(例:e-エレとか)なお、用途如何ですが2SK241→2SK192Aの代替は適当ではありません。逆に2SK192A→2SK241は代替可能なケースが殆どです。ただしMOS構造の2SK241を低周波回路に使うのはノイズ特性から見て不適当です。低周波回路にはJ-FETが向いています。

(2)J310(=J310Gも同)は、2SK125の代替品です。逆も可能なのでJ310は2SK125で代替できます。ただし2SK125とJ310の足の並びは違います。 回路によっては2SK19、2SK19TM及び2SK192AのIdssランクBLで置き換えできます。窮余の策として覚えておくと役立ちます。 J310(G)は秋葉原や日本橋では見ないので通販で買います。纏め買いならRSオンラインDigi-KeyMOUSERなどの国際通販業者が良いでしょう。(時々品切れあり)ほかに購入経験はありませんがAmazonで小口販売している個人もあるようです。

 いずれも表面実装型の互換品(←一例のリンク;MMBF J310)が登場しています。基板設計まで行なう人はそちらを使うのもこれからの行き方でしょう。

備考:関連のBlog記事:RF-FETs(←リンク)

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FETの伝達特性とは
 静特性の基本は左図の伝達特性です。 ゲート電圧とドレイン電流の関係図です。 図はここで扱っているディプレッション型FETの例です。エンハンスメント型でもカーブの形は同じです。ただし第1象限になります。

 参考ですが、エンハンスメント型はVgs=0Vではカットオフするのでドレイン電流はゼロであり、Idssの概念はすこし違います。スイッチング用のパワーMOSに多くて、小信号用のMOS-FETにも幾つか存在します。たとえば2N7000がそうです。

☆ここでは、小信号用の接合型FETであって、ディプレッション型を対象にします。

 図から、ピンチオフ電圧:Vpゼロバイアス・ドレイン電流:Idssがわかれば、任意のドレイン電流に於けるゲートバイアス電圧がわかります。バイアス回路の設計ができる訳です。 Idssは過去のBlog(←リンク)にあるように、ごく簡単な実測から求めることができます。

 ピンチオフ電圧:Vpは可変電圧電源と高感度電流計で実測できます。ただし次項の測定回路:Vpチェッカを使うほうがずっと容易です。 このようにIdssもVpも簡単に求まるので自作回路の設計には測定して求めておくと便利です。(参考:1μAが読める高感度電流計はたいへんデリケートで扱いが難しいため、Vpチェッカを使うのがお奨め)

ピンチオフ電圧測定治具:Vpチェッカ
 ピンチオフ電圧:Vpと言うのはドレイン・ソース間に所定の電圧(一般に10Vが多い)を掛けた状態でドレイン電流が流れなくなった時のゲート・ソース間電圧:Vgsです。 

 ただし、この「流れなくなったとき」と言うのが問題です。 ドレイン電流が完全にゼロになるポイントを見いだすのが難しいからです。 電流計が高感度なら、どこがId=ゼロなのか判定困難です。

 従って、半導体メーカーはId=1μAとか、10μAになったときの・・・と言うような条件を付けてVpを規定しています。ここではId=1μAになる時のVgsをVpとしました。実用上はこれで十分です。

【応用測定】
 Id=1μAのときだけでなく、R1の値を変えれば、任意のドレイン電流に於けるゲート電圧:Vgsが実測できます。 抵抗値はR1=15/Id(Ω)です。 Id=1mAとすれば、R1=15kΩになります。 Id=5mAなら3kΩです。 そのようにすれば任意のIdにおけるVgeが求まります。 なお、Idss以上の電流はゲートが正にバイアスされるのでJ-FETの場合は旨くありません。 Id<Idssの範囲にします。
 ドレイン・ソース間電圧;Vdsの影響もあるので、必要なら電源電圧Vcc+15Vを変更します。特別低い電圧にしたい時は、OP-Ampの電源とは別にVds用電源を用意します。 ここでは、Vds=15Vに於ける値を測定していることになります。
(参考資料:「精選アナログ実用回路集」稲葉保著・CQ出版社ISBN4-7898-3142-6、1991)

Vpチェッカの様子
 十分な実用性がありそうなら恒久的な治具として纏めるつもりです。取りあえずブレッドボードで試作しました。

 ごく簡単なので、すぐに作れるます。 上記の説明のように、任意のドレイン電流に於けるVgを実測するにはR1を可変あるいは切換えできた方が良さそうです。
 また、ドレイン電圧:Vdsも独立に与えられるようにしておくべきだと思いました。 恒久的な治具に作る際には考慮しましょう。

OPアンプはFET入力型を使う
 一般的なOPアンプで十分ですが、Vpの測定状態に於けるFETのドレイン電流:Idは1μAといった小さな電流ですから、入力バイアス電流:Ibが小さなOPアンプを使います。

 バイポーラトランジスタ入力形式の358系や4558系のOPアンプはワーストケースではIb=0.1μAとか0.5μAです。 -50〜-10%と言った大きな誤差を生じる可能性があって適当ではありません。

 FET入力型のOPアンプならバイアス電流は数nA(ナノアンペア:0.001μA)以下、普通はpA(ピコアンペア:0.001nA)なので十分な性能です。ここではBi-MOS型のCA082E/RCAを使いました。25℃に於けるバイアス電流は40pA(max)なので十分小さいです。回路図通りBi-FET型のTL082CPで良くて他にTL062CP、TL072CP、LF353Nなども適しています。

:OPアンプのオフセット電圧:VosがVpの誤差になります。Vosはわずかに数mVですが気になるならオフセット調整を付けます。 VosはCA082Eでは標準で3mV、最大6mV(いずれも@25℃)です。普通は被測定対象のFETにバラツキや温度による変化が存在するので精密さは要求されません。従ってオフセット調整はいらないでしょう。 補正するなら実測しておき数値で差し引いても良いです。

2SK192A(GR)を測定中
 2SK192A(東芝)は高周波用のJ-FETとし非常にポピュラーです。 2SK19あるいは2SK19TMの直接的な代替品です。

 型番の末尾の「A」は改良型を意味します。 ソース接地型RFアンプでは中和不要の内部カスコード型FET、例えば2SK241に主役の座を譲った感じです。 しかし、ソースフォロワやLCあるいは水晶発振回路には支障ないので、幅広く活用できます。

 今はまだ多くのお店で入手できますがリード線付き部品は廃止方向です。将来にわたって入手可能とは言えません。 しかし2SK19、2SK19TM、2SK192Aを代替できるJ-FETは国産はもとより海外製も多数あって特に困らないと思います。

J310の測定も
 以下、代表としてJ310(G)を選んでみました。同様の活用は他のRF用FETでも可能です。 J310に限ったものではありません。実際、メーカー製無線機でも2SK19をマイクアンプに使った例があって、どのJ-FETも汎用に使えます。

 J310は同じRF用でも2SK19シリーズとは少し毛色の違ったJ-FETです。 本来の開発目的であるゲート接地型RFアンプに使われるのが殆どです。しかしソース接地型のRFアンプやソースフォロワとして使うこともできます。

 ゲート接地増幅回路(GGアンプ)への使用例が多いのは、そのように使うと入力が75Ωにマッチングするよう作られているからです。 概略値ですが入力インピーダンス:Zi=1/gmなので、2SK19などよりもgmが大きく作られています。 マッチング回路なしに75Ωに直結するには高いgmが必要なのです。それは同時にドレイン電流がたくさん流れる特性なのでIdssも大きくなっています。 50Ωにマッチングさせるには、選別してgmが大きいもの(=Idssが大きいもの)を選ぶか、2個並列にしてドレイン電流:Idを加減します。

 将来対応として少し纏めて買っておいたので、ゲート接地以外の活用も考えておきたいと思います。 深いバイアスを掛けてドレイン電流を小さくした使い方も検討しておきましょう。上手に使えば汎用のRF向きFETとして活用の幅が広がります。

J310のAFアンプ
 なんの変哲のない低周波(AF)アンプです。FETを使った増幅回路の基本です。 実測Idssが約40mAのJ310GをId=1mAで使っています。 従って深いバイアスを掛ける必要があり、ソース抵抗:R2は大きな値になります。

参考:回路に於いてドレイン電流:Idを決めたら、R2の値は実測により求めておいたVpとIdssから、以下の式で計算することができます。ただし、概略値なので調整を要します。

   Rs=-Vgs/Id=(-Vp/Id)・(1-√(Id/Idss))・・・・(式1)

 このように、深めのバイアスを掛ればIdssが大きいJ-FETを汎用に使うことができます。 深いバイアスを掛けた副作用でそのまま電源電圧が下がるとすぐカットオフするのが弱点です。Vds=3Vくらいの低い電圧で使うには再設計を要します。(作ってからソース抵抗を加減するアマチュア的手法も可・笑)

 VHF帯でノイズが小さいことは保証されていますが、低周波でもローノイズなのかは検討を要します。 しかし一般的にJ-FETのノイズは少なくて音色もBJTよりソフトなので低周波回路への適性はあります。 ドレイン耐圧が低いので本格的なオーディオアンプには不向きですが、HAMのRig用なら支障ありません。マイクアンプなど幅広く使えます。

J310のAFアンプ:実装状態
 見ても仕方が無いでしょうが、一応こんな感じに製作しました。 ゲインは20倍(=26dB)くらいです。 計算からJ310のgmはId=1mAの時:gm=3500μ℧くらいです。

 この設計ではドレインの抵抗:R1が高めなので高周波特性は望めませんが低周波増幅には十分です。 このほかFET検波に使うことも可能で、もう少し深めのバイアスを掛けてゲート検波します。 gmはあまり低下しないので再生も良く掛かるでしょう。 GGアンプ用に作られたJ310にも汎用性があって、各種発振回路や再生検波のような目的にも使えます。

参考:はじめからマイクアンプのような低周波増幅を行ないたいなら、2SK30ATMなどの低周波増幅用J-FETが良いです。 ここでは手持ちの活用の意味でRF用J-FETで検討しています。新たに購入するならその用途に向いたデバイスの方が有利です。

出力波形
 例によって見ても楽しくない正弦波でしょう。(笑)

 低周波発振器から信号を与え、ドレイン側の出力を観測しています。実験なのでアンプの負荷インピーダンスは高いと言う想定です。 J-FETの伝達特性は二乗特性なので、偶数次の歪みは多いでしょうか?

 写真では顕著にわかりませんが、動作点あるいは、FETの品種によっては上下非対称な波形が見られることがあります。 FETアンプは無帰還で大振幅を扱うと2次歪みが目立つので注意が必要です。 バイポーラトランジスタの伝達特性は指数関数的なのでもっと歪みっぽいと言う意見もありますが、ベース電流:Ibに対するコレクタ電流:Icのリニヤリティは優れている物が多いので要は使い方なのでしょう。

【スペクトラム観測】
 せっかくなので、上記波形のスペクトラムを観測してみました。 無帰還アンプですが2次高調波は-46dBですから、歪み率で言えば0.5%程度です。 なるほど、オシロの波形観測では正弦波に見えた訳です。

 やはり、3次高調波よりも2次高調波がずっと大きいのは理屈通りです。 理想的には奇数次高調波は出ない筈ですが、現実は完全な二乗特性ではないのため奇数次高調波も僅かに生じます。 それでも奇数次は少ないのでRFアンプにFETを採用すると混変調特性が向上します。 FETはこれからもRF用のデバイスとして有用で有り続けるでしょう。

                  ☆

 J-FETの動作点を机上の設計で厳密に決めるのは難しいのです。 Idssがばらつくし、伴ってVpもバラツキが多いからです。同じソース抵抗値でもドレイン電流は2倍くらい違ってしまうのはざらです。 そのような時は実測すれば確実です。 機器の量産メーカーではそんな馬鹿なマネはできませんが、手作りの一品料理なら何でもアリです。設計精度を向上させる意味からもデバイスの実測使用は推奨されるでしょう。 J-FETはIdssとVpを「実測してから使う」と言うのを今後の方向にでもしておきます。

 寒波襲来でなかなか本当の春にはなりそうもありませんが、今日、2月4日から暦の上では「春」です。 ぼちぼち梅の便りとか水仙の見頃と言う観光案内が賑やかになってきました。 昨年のような2月の大雪は勘弁してもらいたいと思います。 関東地方は積もらないのが前提で積雪には脆弱なことが実証されてしまいました。たった15cmの積雪でも覚束ないのに昨冬は一晩で70cmも積もって、なんだかんだ1週間以上も不自由が残ってしまいました。 de JA9TTT/1

(おわり)