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2015年7月31日金曜日

【回路】8MHz Ladder Filter Design , Plus+

【8MHzのラダー型クリスタル・フィルタを作る:プラス+】
 【ラダー型フィルタ設計ソフト
 既に見て来たような「素晴らしい特性」のラダー型フィルタを作るには、従来は面倒な手計算あるいはBASICなどで自作の補助ソフトを書かなくてはならなかった。

 それでも製作は不可能ではなかったのだがかなり面倒であり、間違いも起こり易いことから「設計+特性シミュレーション」の機能を併せ持ち、ビジュアルに結果を確かめることができる「決定版」とも言えるラダー型クリスタル・フィルタの設計用ソフトウエアが開発されている。このお陰で、高かった新ラダー型フィルタ設計製作のハードルは大きく下がったと言える。 そうでなければ大半の人は従来のCohn(コーン)型での設計に甘んじるしかなかったろう。画期的と言って良い。

 これはドイツ人のエンジニア・ハムであるDJ6EV:Horst Steder氏によるものでARRLの技術誌であるQEX誌の2009年冬号において「 Crystal Ladder Filters for All」とタイトルされた記事とともに紹介されたものである。 今でも自由にARRLのWeb siteからダウンロードすることができる。ソフトウエアはQEX誌のサポートファイルの場所にあって、2009年度のフォルダの中にあるので、左写真のものを見つけてダウンロードする。

使うのは簡単!
 ARRLのWeb siteに置いてあるものは、.zip形式で圧縮されたものだ。 ダウンロードしたら早速解凍しよう。

 解凍すると「11x09 Steder-Hardcastle」というフォルダが現れ、中に4つのファイルが入っている。 「DishalHelp」というpdf形式のファイルが使い方の説明書である。 平易な英文なので読むのは難しくない。一度はどんな内容が書いてあるのか目を通しておくべきだろう。 多彩な機能が簡潔に紹介されているのであとは使いながら参照して行けば良い。

 プログラム本体は左写真の「Dishal2026」と言うものだ。これをダブルクリックすれば起動する。 残念なことにWindows用のアプリケーションなのでMacでは使えない。 それほど高性能なPCは必要ないのでWindows XPの時代のマシンでも十分実行可能だ。 私はWindows7が平行して走っているMac-miniで起動しているが快適に動作している。

 フォルダ内には更新履歴やバージョン情報などのテキストファイルが入っているが特に見る必要は無いと思う。

参考:Warrington Amateur Radio Club(英国)のサイトに、Jack Hardcastle, G3JIRによって最新バージョンDishal2031がアップされている。あまり違いは無いようだが、Windows OSによっては新バージョンの方が良いこともあるのでリンクしておく。→ここから. (追記:2015.08.25)

 【テスト用データがなくては!
 起動したらさっそく確かめてみたいのが人情だろう。 しかし、幾ら優れたソフトウエアでも必要なデータを与えなければ何もアウトプットされない。

 必要なデータと言うのはこれから実際にフィルタ製作で使用する水晶振動子の「水晶定数」である。 「水晶定数」については前回のBlogでも出て来ているので、既におなじみかもしれない。 測定方法も紹介しているので既に求めている人もあるだろう。 しかし、まだ何も手をつけていない人が大半だと思うので、私が実測した水晶振動子の「水晶定数」を再度掲載しておく。プログラムを動かす「お試し用」に使って欲しい。 フィルタ仕様の一例も書いておいたのでさっそく設計して試すことができるはず。同じ結果が得られたならソフトウエアの確認はOKだ。

 【さっそく使ってみよう
 ビジュアルにわかり易くできているので、起動して一目見ただけでわかってしまうかもしれない。 ごく簡単に手順を追って説明してみよう。

①水晶定数をインプットする:このソフトが設計計算で必要とする「水晶定数」は(a)モーショナル・インダクタンス:Lmの値あるいはモーショナル・キャパシタンス:Cmのどちらかの値と(b)実測で求めた直列共振周波数:fsの値、そして(c)水晶振動子の並列キャパシタンス:Cpの値である。 この3つを上欄の入力窓にマウス・カーソルを合わせてクリックしてからインプットする。 Lm或はCmは水晶定数の測定用治具などを使って予め実測し算出しておくこと。 設計計算に必要な「水晶定数」はネットの検索で見つかるようなものではないので、実際に手元にある水晶振動子を調べる必要がある。また、並列容量:CpはLCRメータなどを使って精度良く実測しておく。 直列共振周波数:fsは無調整水晶発振回路における発振周波数で代用しても大丈夫だ。

②フィルタの仕様をインプットする:必要なフィルタの仕様項目は、(a)フィルタの-3dB帯域幅:B3dB(単位はkHz)、(b)通過帯域に許容するパスバンド・リプル:PB Ripple(単位はdB)のほかに、(c)使用する水晶振動子の数:# of xtals(単位は個)の3つである。 パスバンド・リプルはゼロをインプットすることもでき、その場合はバターワース特性で設計することになる。 ただしバターワース特性は通過帯域から減衰領域への肩の特性が丸くなり、減衰の傾斜が緩やかになる。 0.1dBなり0.5dBのパスバンド・リプルを認めたチェビシェフ特性で設計したほうが総合的に見て良いフィルタになると思う。 このあたりリプルの値を変えたり、水晶振動子の数を変えながら試してみたらビジュアルに変化がわかる。なお高度な特性ほど実際の製作が困難になるのは当然のこと。

③特性表示の設定:結果は表とグラフで表示される。グラフにするとわかり易いが、細かく見るのか大まかに見るのか、通過帯域の特性を詳細に見たいのか、帯域外の特性を見たいのか・・・など、ニーズは様々だ。 グラフ表示の周波数幅を変えられるので上覧の右端の窓にkHz単位でインプットしておく。 図の例では中心周波数から±5kHz・・全体で10kHzの範囲で表示している。

 以上、左の図にも説明を書いておいたので参照を。 これらの必要項目のインプットが済んだら、画面右上の隅にある「Calculate」(計算)ボタンをマウスでクリックすれば計算されて結果が直ちに表示される。 通過帯域幅を変えてみる、水晶振動子の個数を変えてみるなど部分的な変更をしたら再度計算させてみれば変化の様子が手に取るようにわかるだろう。

 もちろん、特性シミュレーションを幾らしたところで、現実のクリスタル・フィルタにしなくては「絵に描いた餅」の域をでない。 左の中段にラダー型フィルタを製作する際に必要なコンデンサの設計値が表示されるので、それに従って製作することになる。 値は0.1pFまで細かく表示されるが、たいていの場合、近似のE系列の数値から選んだコンデンサの単独あるいは、2個の並列で値を実現すれば十分だと思う。 テスト用データで示したフィルタの製作例ではそのようにして選定した実際に使用するコンデンサの値が記載してある。

 いろいろ試しながらあとはどんなフィルタに仕上げるのかそれぞれで試行錯誤してみたら面白い。 他に水晶定数を求めるための補助プログラムなども内蔵されているが省略した。補助機能の使い方はHELPファイルに書いてあるので参照を。

頒布基板の注意
 前のBllogで案内したが、フィルタ専用基板が完成したので既に頒布を開始している。 何名かのお方にはさっそく頒布しているが、使う時にすこし注意が必要なので写真説明しておく。(頒布に関しては前のBlogを参照下さい)←頒布終了しました。2015.08.11

 スルーホール付き両面基板で製作したが、表側のランドパターン少し大き過ぎるようだ。 水晶振動子を密着して基板にハンダ付けするとリード線のランドパターンがケース(GNDに接続する)と短絡状態になる危険がある。 水晶振動子を0.5〜1.0mmくらい浮かせてハンダ付けすれば間違いない。水晶振動子を手芸用のガラスビーズのような絶縁材で浮かせるのも良いだろう。 製作される際には注意して頂きたい。 コンパクトで扱い易いので市販のクリスタル・フィルタのように扱えるフィルタ・モジュールが製作できる。

                 ☆

 気の早い人はご自身で探索し、既に設計ソフトウエアを走らせているようだ。 真っ先にソフトウエアの在処をお知らせしても良かったのだが、水晶定数がなくては試すことすらできないし、製作事例がなくては具体的イメージも湧かないだろう。 逆に「完成品」の方から紹介して、どんなクリスタル・フィルタが作れたのか目で見てもらった方がインパクトもあるに違いない。

 そのような訳で、設計ソフトウエアの紹介が最後になってしまったが、走らせるのは誰でもできるし、ごく簡単なことである。しかしフィルタ特性に関して一切の造詣も持たないのではその意味も意義も理解してもらえないだろう。 そのような意図があったことをご理解頂けたらと思っている。 先回りされるのも結構だが、順を追ってご覧頂いた方が論点が明確になるよう心掛けているつもりだ。 性急に結果だけを求めているのでは、本質がどこにあるのかを見失いかねない。

                 ☆

 一連のBlogであるが、著明OMの執筆を理由に未だに古色蒼然たる記事を有り難がるような輩には関係ないお話しかもしれない。 しかし世の中は常に進歩しているのである。 ご紹介したような有益かつ実践的な研究成果がJA-HAMに広がらないのは実に悲しいことだと思っている。 アマチュア無線コードにもあるように、「アマチュアは、進歩的であること」を実践したいものだ。 結局、平易とは言え英文の記事しかないのが問題なのであろう・・・と言うことで、このBlogで簡単に紹介した内容に加えて、より詳しい内容で雑誌への掲載も予定されているのでもう少し具体化したらお知らせしたい。 ココまで書いて思い出したんだが、チューニングの話しが飛んでしまった。ww そちらも纏めて記事でやるしかないな。お楽しみに。(爆)de JA9TTT/1

(おわり)

続編あり→こちら

追記:フィルタ基板はまだ幾らか頒布可能なので希望のお方はお早めにどうぞ。(2015.08.10現在、あと1名で終了)←頒布終了しました。たくさんのご要望有り難うございました。ぜひとも有効活用されてください。2015.08.11