2016年5月22日日曜日

【測定】NEO-6M Battery replacement

【GPS Module NEO-6Mのバッテリ交換】
電池不良のNEO-6M対策
  NEO-6MモジュールはGPS周波数基準器だけでなく、様々な用途に使える便利なGPS受信機です。 ところが、残念なことに毎回初期状態で起動すると言う不具合のある物が出回っているようなのです。今年になって私が再度購入した物にも問題がありました。

 起動の都度コールドスタートの初期状態になってしまい、衛星の捕捉まで長い時間が掛かるほか、例えばタイムパルス出力の周波数(周期)などユーザー設定しても記憶されないと言う不具合が発生するのです。

 この件に関して数個続けて購入したがどれも同じ症状だったと言うお話がありました。 雑誌の通りに動作しないのでは「オマエの記事は出鱈目だ!」なんて言われかねませんからね。まったく困ったものです。(笑)

 対策については既にニュースとして流していますが、ここでは不具合対策について私が実施した方法を具体的に説明したいと思います。 以下、このモジュールの活用を目的としていてトラブルに遭遇しているお方に向けた内容です。一般性はありませんがあしからず。

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NEO-6Mモジュールの回路図
 毎回初期状態で起動すると言うトラブルの原因の一つとして、基板に搭載のバッテリの不良が考えられます。 あるいは、バッテリの搭載状態の方に問題があって旨く充電されていないのかもしれません。

 いずれにしても、このバックアップ用のリチウム2次電池が働かないと、通電の度に初期状態からの起動になります。 最後に電源がオフされた位置情報などが記憶されず、必ずコールドスタートになるため衛星の捕捉までに長い時間が掛かるようになるのです。 また、タイムパルスの出力も初期状態の1Hzで20%デューティ比に戻るのです。いくら設定しても電源を切ったら元に戻ってしまいます。

 図は、市販されているu-blox社のNEO-6Mが搭載されたGPS受信機モジュールの回路図です。 この回路図には多少現物とは違うところがあります。 例えばLEDの搭載個数のほかバッテリの種類も違っているのですが、実際に交換してみるまで電池の違いについては気付きませんでした。 回路図によればバックアップ用のバッテリはMS621FEと言う充電可能なリチウム2次電池のようです。

MS621FE:交換用電池
 MS621FEと言うのは公称電圧が3Vで5.5mA/Hの容量を持ったマンガン・シリコン型のリチウム2次電池です。

 昔はNiCd電池などが使われていた用途に使われているようです。 NiCd電池よりも自己放電が少ないため、データ保存状態で放電し切ってしまうと言うトラブルは少ないようです。液漏れしにくいのも特徴のようです。

 基板にハンダ付けするようにタブが溶接された形で販売されているようでした。 しかし、かなり特殊な電池ですから普通の電気屋さんやホームセンターで入手するのは難しいでしょう。

 【秋月電子通商で入手
 電池の不具合と言うことはわかっても、交換用の電池が手に入らなくては対策は厄介になります。 比較的短期間のバックアップで良いなら電気2重層コンデンサで代替するアイデアがあるでしょう。

 あるいは、データ保持状態での消費電流は僅かなので、リチウム1次電池で間に合わせると言う手もありそうです。 その場合は間違って1次電池に充電してしまわぬための対策が必要です。バックアップ回路の変更が必要になります。

 対策を考えていて試しにネットで検索したところ回路図に書いてある番号の電池が秋月電子通商で販売されていることがわかりました。単価は120円とお手頃です。 これなら購入して交換するのがいちばん手っ取り早いですね。 これで問題解決と思ったのですが・・・。

 【電池交換の実際
 ネットでサーチしてみるとNEO-6Mモジュールには幾つか種類があるようです。 いま秋葉原で手に入る物は電池のサイズが小型化された物が多いようでした。

 そのため、MS621FEでは大きすぎるのです。 ハンダ付けランドのパターンも合っていません。 従ってそのまま単純に乗せ換えはできないのです。

 ハンダ付けランドのハンダを奇麗に除去し、基板パターンとショートしないように絶縁フィルムで不要部分を覆うように対策しておきます。 写真で電池の下に黄色く見えるフィルムはそのためのものです。 その上でMS621FEの端子を少し曲げて旨くランドに合わせてハンダ付けすれば交換完了です。

 写真のように電池が基板からはみ出るのですが機能上の支障はありません。 写真では隣のUSBインターフェース基板と干渉しているように見えますがやや浮いているので支障はありませんでした。  実装してから端子電圧を測定してみたらちゃんと3Vあたりを示したのでこれで電池交換は成功です。交換前の端子間電圧は0.1Vくらいしかありませんでした。 さて、うまく直ったでしょうか?

Sky View
 写真はNEO-6Mを窓際で暫く運転していた状態です。 Sky Viewがちゃんと表示されるのは勿論ですが、電源の再投入から衛星を捕捉するまでの時間は正常な迅速さになりました。今度は再通電から数秒くらいで捕捉します。

 肝心のユーザー設定の保持ですが、こちらも正常になっています。 タイムパルスの出力を10kHzに設定するなど「GPS周波数基準器の製作」に必要な設定もきちんと保持されます。

 短時間の電源ON/OFF繰り返しだけでなく、10日間ほど放置してから再度通電してみました。 今度は設定を「忘れてしまう」ことはありません。 電池電圧も前後で違いはなく正常に維持されていましたから、どこかに電流リークしていて電池容量を無駄に消耗しているようなこともないようです。

 摘出した電池は直径4.8mmくらいの小さな物です。 特に意味のありそうな型番などの表示はありませんので正体不明です。 間違って1次電池を実装してしまった可能性がありますし、不良の2次電池を搭載してしまった可能性もあるでしょう、 見たところは同じでも正常動作するGPS受信モジュールもあるのですから、電池その物に原因があるとすれば特定の時期に生産したモジュールの電池に集中して不良があったのではないでしょうか?

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 その後、外した電池を単独で充電してみたら電圧が復帰する傾向が見られたので基板実装に問題があった可能性もありそうです。 基板パターンが適切でないため、電池の両端をショートもしくは電流リークするようなハンダ付け状態になっていたのかも知れませんね。

 安価だったNEO-6Mも品薄になるほどの人気のためか値上げされてコストパフォーマンスは少々落ちたように見えます。 しかし性能は悪くないので有用性は相変わらず高いでしょう。 ちゃんと使えれば悪くないGPSモジュールです。
 後継のNEO-7やNEO-M8Tにも同じ機能がありますし、受信感度のような衛星の捕捉性能は改良されています。 そろそろこのモジュールだけに目を向けず他のユニットも検討してみる必要がありそうです。

 ここでは再購入したNEO-6Mが不良だったことからその対策方法をご紹介してみました。もしも類似の症状が現れるようでしたら電池交換を検討してみては如何でしょうか? 旨く直るかもしれません。(もちろん、直ることを保証するものではありません。自己責任でやって下さい)

 そもそも不具合のあるような物品を販売することこそ根本的な問題なのですが、中華クオリティが横行している現状では安く手に入る物を旨く使って行くと言うユーザー側の工夫も必要かも知れません。 製品品質は格段に向上したがお値段の方も鰻登りと言うのでは詰まりませんからね。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

参考:このBlogに関連のもと記事は以下になります。(各記事へリンク)
(1)GPS周波数基準器の製作記事紹介→Making GPS Frequency Standard
(2)GPS受信機NEO-6Mの紹介→GPS-RX NEO-6M


追記:前回予告のTCA440のCW受信機は開発継続中のため少々お待ちを。

10 件のコメント:

JK1LSE/本田 さんのコメント...

おはようございます。

私的には、実にタイムリーなネタです。
今週ちょうど、ローカルさんとこの電池の0Vになっているけどなんでだろう?、ってな話題をしていたところです。
手持ちのモジュールは電池電圧が0Vであったり、1Vちょっとであったりと、色々でした。やっぱり、中華クォリティーだなぁと話していたところでした。
対応方法まで記載されていて、very good!です。

TTT/hiro さんのコメント...

JK1LSE 本田さん、おはようございます。 今朝も初夏のようなお天気ですね。

さっそくのコメント有り難うございます。
> 実にタイムリーなネタです。
それは良かったです。 たいしたネタでもないと思ったのですが、自分も遭遇したので書いておいたと言うのが実情です。(笑)

> ・・・けどなんでだろう?
やっぱり、全般的に中華クオリティなんでしょうね。 取りあえず大丈夫なものでも、そのうち症状が出てきそうです。困ったものですね。ww

> very good!です。
めったにもらえないご感想有り難うございます。(爆)

エフ さんのコメント...

JA1CVF 岡田です。
加藤さん はじめまして。加藤さんのblogや記事、時々拝見しております。このたびは縁あってトラ技の記事を参考に近所にお住いの本田さんの助けを借りてNEO6Mで遊んでいます。バックアップ電池の件は異常に気付きながら実験を進めておりましたが、私の場合は取り付けスペースに問題ありのように思え基板外に取り付けを検討しております。もう一息で完成できるかと思います。バッテリの件は大変参考になりました。今後ともお世話になります。宜しく!

JA6IRK@岩永 さんのコメント...

TTT 加藤さん、こんにちは。
問題になっていたNEO-6Mのバックアップ用電池の原因と対策ですね!
使用されていた電池の仕様は調べていなかったのですが、5.5mA/Hの容量だったんですね!
使い方間違えるとすぐに枯れてしまいそうです(笑)

今回は交換で無事解決されたようで良かったです。
参考にしていただける方も多いのではないかと思います。

しかし、元々付いていた電池も使えそうだということで、実装の問題だったのかも?!だったんですね!
まだまだ色々と隠れているものがあるかもしれませんね! それも中華製を使う醍醐味かもしれません。

TTT/hiro さんのコメント...

JA1CVf 岡田さん、こんにちは。 初めてのコメント有り難うございます。

> NEO6Mで遊んでいます。
LSE本田さんがお書きのローカルさんは岡田さんでしたか。 NEO-6Mは感度も良く、10kHz出力も取出せるので遊んでみるのにはFBだと思います。 ぜひご活用されて下さい。

> 異常に気付きながら実験を進めておりました・・・
お手持ちにもやはりバックアップ電池の問題があったのですね。 昨年の下旬に購入したものには異常はなかったように思います。その後お店が仕入れたものが良くなかったのでしょうか・・・。 不良品がかなり多いようですね。

> バッテリの件は大変参考になりました。
たいした内容でもないので、いま一つなBlogだと思っていたんですが、お役に立ったようで良かったような・・・。(冷汗)

こちらこそ宜しくお願いします。

TTT/hiro さんのコメント...

JN3XBY/1 岩永さん、こんにちは。 先ほどまで出掛けておりました。 外気温31℃でもう夏と同じですね。

コメント有り難うございます。
> 5.5mA/Hの容量だったんですね!
5.5mA/Hと言うのは交換に使った方ですから、付いていた方の容量はもっと小さかったでしょうね。 バックアップ中はほとんど電流消費しないのだろうと思います。

> 交換で無事解決されたようで良かったです。
取りあえず電池交換で何とかなりましたが、他にも何かトラブルがあるモノもあるかも知れませんね。 変なのに当たったお方は気の毒です。

> 実装の問題だったのかも?!だったんですね!
USB-IF経由で3Vに充電される回路になっています。 実際の基板パターンを見てもそうなっていました。 でも、電池の端子電圧はほとんどゼロに近い状態でしたのでショートに近い状態だったのかも知れません。 取り外しにくいのですが、うまく付け替えできればなおる可能性も有りそうです。

> それも中華製を使う醍醐味かもしれません。
あんまり満喫したくない醍醐味ですが、激安品揃いですから中華グッズはやめられませんね。(笑)

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

加藤さん、こんにちは

NEO-6Mの不具合?対応お疲れ様でした^^

元々のNEO-6MはMS621FEがちゃんと搭載できる基板だったようですが、
コストダウンで中華製バッテリー用に基板も作り替えたみたいですね^^;

http://www.electrodragon.com/w/Ublox_NEO-6_GPS_Module_w/Active_Antenna,_EERPOM,_Battery

せっかく安価で高性能なGPSモジュールなのに小さな中華パーツ一つで足を引っ張られるのは残念です。まあ中華製品全般に言えることですがw

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、こんばんは。 今日は暑かったですよ。ほとんど真夏の状態です。ww

コメント有り難うございます。
> 中華製バッテリー用に基板も作り替えた・・・
そのようですね。 理由はわかりませんが取り付け用の穴が2つ追加されています。そのしわ寄せが電池に及んだように見えますね。電池を小さくしないと載らなくなったんでしょう。 リンク先の基板と比較するとその辺りの違いのようですね。

> 中華パーツ一つで足を引っ張られる・・・
DDSの時もそうでしたね。 質の悪いオシレータ一つのお陰で残念なことになりましたから・・・。 良く評価して置き換えるのなら良いのでしょうが、形だけで置き換えた挙げ句の問題のようですね。 アマチュアの自作品みたいです。(笑)

中華製品もこれから少しずつ良くなって行くのだと思います。 昔のMade in Japanにも相当酷いものがあったそうですから。(爆)

Kenji Rikitake さんのコメント...

電源周りは大変ですね。まあ手抜きはどの国でもどの地域でもあることですし、低コストのものにはそれなりの覚悟をせざるを得ないのでしょう。私もGoldPower印の6F22が箱ごと全滅していて、結局日本ブランドの6LF22の電池を買わざるを得なくなったということがありました。
EDLCで代用するというのは正解だと思います。

Kenji Rikitake, JJ1BDX(/3)

TTT/hiro さんのコメント...

JJ1BDX/3 力武さん、こんばんは。 

コメント有り難うございます。
> 低コストのものにはそれなりの覚悟を・・・
動作確認なんかほとんどしていないような感じです。 電源が入って起動すればOKくらいの確認かと・・・。安価なのである程度やむを得ないでしょうね。きちんとやればそれなりにコストアップしますから。

> 買わざるを得なくなったということがありました。
積層(集合)電池は事故率が高いです。構造上、信頼性が低くいのはやむを得ないのでしょう 放置すれば液漏れするし・・・。電池はあまり良いことがないです。ある意味「生もの」ですから。ww

> EDLCで代用するというのは正解だと思います。
電池よりも信頼性は高いように思っています。 今回は大きさなどの関係からやめましたが基板外付けでの利用も考えておりました。 待機状態での消費電流は十分少なそうなので行けそうです。