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2017年12月4日月曜日

【回路】AD603 IF-Amp. Design

回路:AD603を使った高性能IFアンプの設計
 【AD603とは?
 AD603は表面実装型の8ピンICです。ピン・ピッチは1.27mmですからハンダ付けは難しくありません。

 このICをご存知なら一度は高性能な受信機の自作を志したことがあるのでしょう。 低歪みでローノイズ、しかも利得の可変範囲が広く、通信型受信機の中間周波増幅回路(IF-Amp,)にピッタリなICチップだからです。

 写真の上段は15年以上前のもので、下段は最近になって中華経由で入手されたものです。 比較してみましたが、どちらも同じように使えました。

 2002〜3年頃だった思います。 AD603がAnalog Devices社から発表されると、いち早く入手されたお方がありました。(たしかJA2EQP鈴木さんでしたか・・) カタログの検討から高性能な受信機に使えるとお考えになったのでしょう。同好者の試用をご期待されたらしく数名のお方に分配されたようです。それで私にも3つほど届いたようでした。
 面白そうなチップとは思ったのですが、当時は正規のサンプル入手しか方法はなく、而も結構高価らしいとあって、さして興味を持てませんでした。(他の方法もある訳ですし) 幾らFBなチップでも入手が難しければ多くの人にとって絵に描いた餅です。製作・実験レポートを書いても単なる自慢話で終わってしまうかも知れません。活用のための情報が不足していたこともあって、すっかり忘れてしまったのでした。いま頃なにですが申し訳なかったです。(笑)

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       (あんなこと、こんなこと、色々あってこの間15年以上)

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 ところが、最近になって中華系の通販ショップに格安なお値段で出回っているとの話しが飛び込んできました。 それで纏めて購入されたと言う自作好きの仲間から再びサンプルを頂く機会があったのです。写真下段がそれです。(VY-TNX ! JA6IRK 岩永さん) AD603と言う型番に記憶があったので、パーツボックスを掻き回したら写真上段の物も見つかりました。 コストや入手性と言った課題が改善されたのであれば試用してみる価値も生まれてきます。 旨くすれば自作用の標準パーツにできるかも知れません。 いま頃になって検討してみたのがこのBlogと言う訳です。

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 最初に纏め(感想)を書いてしまいます。 このICは、初めから高性能を目指した受信機にこそ採用すべきです。 ごく簡易に使うことも可能ではありますが真価を発揮しないでしょう。 非常に高性能なAGC特性を持ったIF-Amp.が作れますが、それは同時にハイゲインと言う事でもあるため、うかつに扱えば発振などのトラブルで手がつけられません。 特性上クリチカルな所もあるので初心者向きとも言いかねます。

 ある程度の自作経験をお持ちでしたら、以下の試作結果は通信型受信機製作のヒントくらいにはなるかも知れません。 例によって自身の備忘目的のためわかり易さは意識していませんが、もし興味があればどうぞ。

 【AD603の内部構造
 メーカーの資料によるとAD603の内部は左図のようになっています。 入力部分に可変型の減衰器(アッテネータ:ATT)が置かれ、そのあとに利得固定のアンプが置かれています。 このアッテネータは6dB刻みで7段に切り替えられます。(計42.14dB) 切換えはAGC入力端子の電圧によりステップ状に行なわれます。 なお、利得固定のアンプは外付け抵抗でゲイン(増幅度)をプリセットすることができます。ゲインの設定範囲は約31〜51dBです。

 入力と出力端子間の増幅度は入力部のアッテネータによってのみ可変することができます。アンプ部分のゲインは半固定されており変わりません。 いまアンプ部のゲインを40dBにセットしたとすると、AD603一つで-2.14dB〜+40dBのゲインに可変することができる訳です。

 アッテネータもアンプも広帯域であるため、AD603自体も広帯域です。 カタログによれば低周波帯から90MHzまでカバーするとのことです。 広帯域な可変利得アンプとして使うことも可能ですが、通信機への応用では狭帯域なアンプとして使うのが普通でしょう。 また、このIC一つでは50dB程度(300倍くらい)のゲインしか得られません。高性能な受信機のためには2段増幅する(2個使う)必要があります。なお、1段当たりのゲインを落として3個使う方法もありますが、その必要性は低いと思います。

 回路はアンプの前に置いた可変アッテネータでゲインを変える形式です。アンプ回路部分の動作状態を変えてゲインを可変するものではないため多信号特性は有利です。 アンプは広帯域のOP-Amp.と同じような負帰還増幅器になっているようですから歪み特性は優れます。 アッテネータ部分は拡散抵抗ではなく薄膜抵抗で作られているようなので歪みに対して有利です。 このようなことから歪みの少ない可変利得のIF-Amp.が実現できます。特に入力信号が大きくなった時に有利です。

 R-2R抵抗網を使ったアッテネータを入力部に置く形式なのでゲインを絞った状態でのS/Nは悪くなる筈です。 しかしIF-Amp.として使う時は元々狭帯域ですし、対象の入力信号が大きいからゲインを絞るのですからS/Nが問題になることは稀でしょう。 実際に2段カスケードのIF-Amp.で観測してみてもこの種のハイゲインアンプとしてはローノイズです。

# 平たく言えば、AD603は入力の所にボリウムが付いたアンプ用のICと言う訳です。その入力部のボリウムは電圧で加減できる訳ですね。hi

 【AD603の使い方
 メーカーの資料に出ている2段アンプの例です。 広帯域アンプの設計で、AGC回路も付いているためこの回路から実験を始めるのが普通でしょう。

 示唆に富んでいるのはAGCの掛け方にあります。 多段アンプを使い広範な入力信号の大きさに応じて、自動利得調整:AGCを行なう場合、全部の増幅段を同じように利得制御するのは得策ではありません。

 増幅回路のNF(ノイズフィギャ)を最小にし、S/Nを良くするには、信号が小さい部分の増幅度を大きくすべきです。 例えば、2段アンプで60dBのゲインを得る場合、前段30dB+後段30dBとするのではなく、40dB+20dBのようにすると有利なのです。

 低ノイズのアンプでもゲインを絞るとNFは劣化します。従って多段アンプの場合は前段の利得はなるべく絞らないのが設計上のコツなのです。

 この回路例は2段増幅になっており全体で約80dBのゲインになっています。 信号が大きくなって行くと、まずは後段からゲインを絞って出力が一定になるように制御されます。 入力がどんどん大きくなると、後段はややマイナスゲインの所に落ち着きます。
 さらに入力が大きくなると今度は前段のゲインが40dBから絞られて行くようになります。 非常に大きな信号が加わると、最終的に全体で0dB(1倍)を下回るゲインに近付くよう動作して広範囲の入力電圧変化に対して出力電圧が一定になるように制御されます。もちろん自ずと限界はあって、試作例によればおよそ120dBμV(アンプ入力では0.5Vrmsあたり)を超えた所に限界がありました。(さらりと書きましたが、これはすごいダイナミック・レンジです)

 このように、シーケンシャルにゲインが制御される仕組みは実際の受信機でも有効ですから実用のIF-Amp.でも採用すべきでしょう。 その効能などメーカーのデータシートに詳しく書かれていました。

 なお、この回路図にはたいへんシンプルなAGC回路が記載されていますが、データーシートにあるように旨く動作させるのは難しいようでした。それに、あまり調整のしようがないのです。 受信機におけるAGC回路は非常に重要であり、立ち上がり特性、レリーズ時間、またAGC回路自身の制御ゲインなど任意に加減できる必要があります。 そのため、例示されたような簡易なAGC回路では不十分と考え、独自の設計で行くことにしました。

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目標性能
 何も目標や方針がなければただの駄文になってしまいます。最終的にHAM局用の受信機として纏めるため、大まかですが以下を方針に実験しましょう。

(1)ゲイン:高感度な受信機として必要な80〜100dBを得る。
(2)AGC特性:入力の変化80dB(1万倍)に対して、出力の変化は6dB(2倍)以下。
(3)低ノイズ:IFアンプ単体として、NF=10dB以下が目標。
(4)IF周波数は、455kHz〜15MHzの範囲で任意に選べること。
(5)一目盛りが約6dBになるようなSメータ回路。
(6)電源電圧は12V以下。単電源で動作。消費電流は少ないほど良い。
・・・などです。

想定する受信機の一例
 このBlogでは受信機全体を扱う訳ではありません。 従って目的や用途が少々イメージし難いかもしれません。 想定する受信機の一例をブロック図にしておきましょう。 

 Blogでは主に色塗りされた回路部分について書かれています。青色の部分がAD603を使った中間周波増幅:IF-Amp.の部分で、AGC回路とともにこのBlogのメインテーマです。 緑色の部分はSSB/CWの復調と低周波アンプで、ここはオマケ程度の内容です。もちろん、オマケではあっても十分実用になります。(笑)

 この例ではシングルスーパの回路構成になっています。 中間周波は12.8MHzで、選択度を決めるフィルタとしては過去のBlogで扱った「8素子のラダー型クリスタル・フィルタ」を想定します。  中間周波が高いので、十分なイメージ信号除去比が得られますから50MHz帯以下の受信機であればダブルスーパの必要性はありません。 PBTなどアクセサリを付加する目的でもあれば別ですが、このままの回路構成で十分な性能を発揮できるでしょう。

 もちろん他の回路構成も考えられますので目的に応じて変更すべきです。 ことにフィルタより前の部分は色々考えられます。 例えば選択度を決めるメインフィルタが5MHz以下の場合はダブルスーパ構成にした方が良い筈です。 特に50MHzの受信機など、受信周波数が高い場合は必ずそうすべきでしょう。 このブロック図は説明用ですから、これにとらわれる必要はなく設計の自由度は高いと思います。

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 【AD630 IF-Amp.の試作
 例によってブレッド・ボード(BB)で試作しています。 100dB近いゲインの高周波回路の実験には向いていないのは重々承知の上です。 しかし逆に言えばBBで安定に動作させることができたなら、基板化した時にも十分安定に働くでしょう。(参考:100dBは電圧比で言えば10万倍)

 初めて使うデバイスでしたから、最初は「発振」などの不安定な動作に悩まされました。 しかし、現在はこの状態でたいへん安定して動作しています。安定動作のための秘訣などを交えながら話しを進めたいと思います。

 このBBの状態で以下に示す回路図の全ての部分を含んでいます。 受信機として完成させるには、この回路の前にIFフィルタやミキサー回路、高周波増幅などが必要です。

 またSSB/CW用受信機を想定しているので、この後ろにSSB検波器や低周波増幅回路も必要です。その部分については後ほど簡単な一例があります。

# 受信機全体は、前出の「通信型受信機のブロックダイヤグラム例」も参考にどうぞ。

AD603 IF-Amp.回路図
 AD603を2つ使い、約90dBのゲインを持つIF-Amp.の設計例です。 電源電圧は10Vの単電源で設計しました。 高性能なAGC回路を構成しています。 後ほど実測データで示しますが、入力信号が100dB(10万倍)変化しても、出力はわずか4.3dB(1.65倍)しか変化しません。

 AGCはFastとSlowの時定数に切換えできます。 Slowはやや短めの時定数になっていますが、C21: 4.7μFを大きくすれば長くできます。 立ち上がり時間は早めの設定ですが、こちらはAGC制御系の安定性が関係するため現状が良いところです。 併せてRFアンプにもAGCを掛ける際には、全般的な見直しが必要になる可能性も有ります。

 お薦めなのは、せいぜい20dB程度のゲインにとどめた・・・但し少々では歪まない強力なRFアンプと、低損失なミキサーを前置し、IFフィルタも良くインピーダンスマッチングを行なってロスが多くならないようにすることです。 このIFアンプは十分なゲインを持っていますから、少なくともローバンドでは感度不足を感じることはないでしょう。

 回路にはSメータ駆動回路も含まれます。 Sメータは上手に設定すれば概ねLogリニヤな指示をします。S一つあたり、約6dB刻みが実現できます。250〜500μA程度の電流計を使います。 ラジケータでも良いですが振れ方がリニヤでないので振れに合わせた目盛板を製作する必要があります。

 基板化する際は、GNDパターンを広く取り・・・できたら片面は全部GNDにするとか・・・RF回路の配慮を行ないます。 また理想を言えばAD603は各段がGNDで囲まれるようにすればベストでしょう。 Pin4、Pin8番の回りに接続されているバイパス・コンデンサは各ピンに最短距離で実装し十分な面を持ったGNDに最短距離で接続します。

使用デバイス情報:AD603ARZ・・・Aliexpressで検索して下さい。 LMC6484AIN・・・LMC6482AINを2個で代替可。 1N270・・・Ge-Diです。1N60等で代替可。 1S2076A・・・SW用Si-Di。1SS270Aまたは1N4148で代替可。 AN8005・・・3端子レギュレータ、78L05で代替可。 以上はAD603を除き秋月電子通商にあります。

 【AD603の初期テスト状態
  最初はAGCのことは考えないで2段の電圧可変ゲイン型のアンプとして実験を始めました。 左上のVR(青い角形)でAGC端子の電圧を変え、ゲインを可変するわけです。

 この状態では安定な増幅は困難でした。 2段増幅で最大ゲインは80dB以上得られるようでした。 しかしプローブであたって観測しようとすれば発振が起こります。 いろいろ工夫してみたのですが、このままではほとんど使い物になりません。

 もちろん、ブレッドボードなのも宜しくないのですが、安定でないのは本質的な問題と言えます。 基板化してもレイアウトに多少の不備があったら発振に至る危険性は常にあるでしょう。従って実用にするには何らかの手だてが必要なのは間違いありません。

 【AD603のバイパス・コンデンサ
 基板化して各足ピンの直近にバイパス・コンデンサが付けられればこのような実装は必要ありません。 但し、バイパス・コンデンサの入れ方はかなり重要であることがわかりました。

 上記のようなブレッドボードの実験でも、もちろんなるべく最短距離で電源端子などがバイパスされるように考慮しています。 しかし変換基板内のパターン長やブレッドボードにおける配線の取り回しでは、バイパス・コンデンサが効果的に働かないのです。 ブレッドボード上で回路的に同じになるようにコンデンサを入れても安定しません。 結局、変換基板上に直接バイパス・コンデンサを搭載しました。 特にピン4番(Common)とピン8番(VPos)間のパイパス・コンデンサが効くようです。

 これで安定動作の50%は確保できたような感じでした。 AD603を単体で使っている限り発振も起こらず安定して増幅しくれます。しかし2段増幅ともなればこれだけの対策では済まないのです。

AGC回路
 AGCについて、詳しく始めるとキリがないのでざっと説明しておきます。 実はこの種のSSB/CW用受信機では最も奥深い部分です。その良し悪しによって受信フィーリングは全く異なるほどです。

 AM受信機のように、入力信号に搬送波(キャリヤ)が存在する場合は「平均値AGC」が使われます。 これは、キャリヤの強さに比例したAGC電圧を得て、平準化してAGC信号とすれば良いので回路はごく簡単です。 AMラジオや昔の高1中2のようなAM時代の受信機でお馴染みの方式です。

 しかし、SSBやCWで良く効くAGCを考えると、断続するキャリヤあるいはそもそもキャリヤの無い信号でAGCを効かせなくてはならず簡単には済みません。 一般に、入力信号の最大値(尖頭値)を検出し、その信号電圧を元にAGCを効かせた上で、一定時間だけ保持するような動作が必要です。

 ここでは、ダイオード検波した信号を30倍くらい増幅し、さらに一種の整流回路でピーク値を検出します。 その電圧で速やかにコンデンサをチャージし、そのチャージをゆっくり放電することで必要な戻り特性を得ています。 さらに、AD603のAGC特性に合わせて、電圧変化の方向を合わせるとともに、電圧最適化のためオフセットを掛けています。

 使用しているOP-Amp.:LMC6484AIN(写真)はC-MOS構造の4回路入りOP-Amp.です。レールトゥレールの入出力特性を持っており、片電源のDCアンプ回路には最適なものです。 他のC-MOS OP-Amp.でも良いのですが、容量性負荷に対する安定性など必ず検討した上で代替するようにします。 使用している抵抗器の大きさや、電荷の保持容量などの関係でバイポーラ入力のOP-Amp.、例えばLM324などでは大幅な回路定数の見直しや回路そのものの再検討が必要になるでしょう。回路図どおりのLMC6484または2回路入りのLMC6482を2つ使うと間違いありません。

段間にフィルタを入れる
 安定動作の話しの続きです。 AD603の2段アンプを安定に動作させるもう一つの秘訣は、段間にフィルタを入れることにあります。 要するに広帯域な2段アンプではなくするのです。
 1段ごと独立ならまったく安定に動作することから、広帯域のままカスケードに接続するのが宜しくないと結論づけられました。 頭を冷やして考えればゲインが80〜100dBにもなる高周波広帯域アンプを安定に働かせるのが難しいのはすぐわかるでしょう。

 フィルタの周波数はある程度任意に選べるはずですが、最初は10.7MHzのFMラジオ用セラフィルを段間に入れて実験していました。それでとても安定して動作するようになったのですが、当然ながら10.7MHzのアンプになってしまいました。10.695MHzのSSB用クリスタル・フィルタをお持ちならそのまま行けますけれど・・・。

 そこでセラフィルに代わり、2素子のラダー型クリスタル・フィルタに置き換えることにしました。IF-Amp.の入力部に置く本格的なメインフィルタは製作済みの12.8MHzのSSB用ラダー型フィルタ(←リンク)を使うと想定し、途中のフィルタをそれに合わせる訳です。もちろん、他の周波数のフィルタを使いたいならそれに合わせれば良い訳です。

 図は、AD603の段間用に12.8MHzの水晶を2素子で作る簡単なラダー型フィルタを設計している様子です。 Dishalの論文に基づく簡易設計ソフト(←リンク)を使います。 このBlogでは既にお馴染みのものですが、こうした検討にはかなり重宝です。 素子数を少なくしているのは、途中のロスを少なくすると言う意味もありますが、中間のフィルタによる信号遅延を小さくするのが目的です。ここで遅延が大きくなるとAGCの時定数設定に影響が及びます。 応答性に優れ、深いAGCを掛けることが難しくなるのです。 途中のフィルタはせいぜい2〜3素子くらいのごく簡易なものにすべきです。 旨く設計すればLCフィルタでも行けるでしょう。

 【12.8MHz ラダーフィルタ
 写真は実際の段間フィルタの様子です。 インピーダンス・マッチングは抵抗器で行ないます。 AD603の出力インピーダンスは非常に低くて数Ωしかありません。 また、入力インピーダンスは約100Ωです。

 フィルタの帯域幅などを旨く選んで、なるべくAD603の入出力インピーダンスに近いように設計するのがコツでしょう。もちろん、メインフィルタよりも帯域幅は広くなくては旨くありません。 この12.8MHzのフィルタでは、帯域幅3kHzの設計で入出力インピーダンスは約120Ωになりました。 従って、フィルタの入力側・・・即ち、前段のAD603の側に120Ωを入れ、フィルタの出力側・・・後段のAD603の側には22Ωの抵抗器を直列に入れてマッチングを取っています。 このようにして旨くインピーダンス・マッチングするとともに数dBの通過損失に収まっています。

 直列容量や結合容量(C28〜C30)は水晶の数が少なく、目的とするフィルタ特性がシビアではないため、簡易設計ソフトで得られた値をそのままを使って大丈夫です。 2素子でしたらMesh-Tuneもまったく不要です。(必要ありません) また、コンデンサは近似の標準値に丸めても支障無いことが多い筈です。

 なるべく同じ特性の水晶を2つ選ぶのが秘訣です。 またメインフィルタとの中心周波数合わせも行なう必要があるでしょう。 まずは仮組みして、中心周波数がどのくらいずれているかを見てから、旨く合うように水晶を交換して周波数を合わせます。 参考ですが、私の製作例では段間フィルタの方が約350Hzほど中心周波数が低かったので、350Hzくらいfsが高い水晶に(2つとも)入れ替える必要がありました。

 【AD603 IF-Ampの特性
 AD603を2つ使ったIF-Amp.の入出力特性を示します。 約10dBμVからAGCが効き始めます。 10dBμVは約3μVですが、これはEMFですから、アンプに実際に加わるのはその半分です。 1.5μVあたりからAGCが効き始める訳です。 その後は、110dBμVまでほぼ直線的にAGCが掛かるのがわかります。

 アンプ自身のノイズフロアは測定していませんが、なかなか低ノイズです。 グラフからわかるように-20dBμV・EMF(0.05μV)の入力でもノイズによる盛り上がりは見えません。AGCの掛からない小信号領域では90dB超のゲインがあることから考えても低ノイズと言えます。 途中にフィルタが有ることは広帯域なノイズを抑えるのに効果的なのでしょう。

 例えば、標準的な設計の受信機を想定すれば7MHz帯のようなローバンドでは、アンテナから来る受信信号自体のノイズフロアが10μVあたりにあるのでアンテナを繋げば常にAGCが効いた領域で動作することになります。(もちろん、これは送信にも使えるようなマトモなアンテナを繋いだ場合です) フロントエンド部分が旨く設計されていれば、十分な感度とS/Nが得られます。

 青のラインは、Sメータ用出力の特性で、直線的に変化する部分を旨く使ってやれば良い感触のメーターの振れ方が実現できます。設定次第ですが1Sユニット=約6dBにできそうです。

 同時に、出力電圧は入力電圧が大幅に変化しても、約300mVpp程度にAGCで制御されていることがわかるでしょう。 このIF-Amp.の後ろにはSSB/CW検波回路が続きますが、おおよそこの程度の電圧が得られることを前提に回路設計します。 次項にTA7310Pを使った検波回路の一例を示しますが、TA7310Pにはそのままではやや大きすぎるので1/3から半分くらいに絞ってやれば丁度良くなります。

# 概ね目標とした性能は実現できていると思います。

SSB/CW検波回路の例
 この回路に限った訳ではないので、お好みの検波回路を使えば良いです。 AD603の出力インピーダンスは低いので、直列抵抗などでインピーダンス合わせを行なった上で、ダイオード・リング検波などを使っても良いでしょう。

 左図の回路は、BFO兼用で検波も行なえるTA7310Pを使ったSSB/CW検波器と、それに続く簡単な低周波アンプの例です。 TA7310Pの入力部にある抵抗器、R8:2.2kΩで信号の大きさを加減します。 十分な検波出力が得られる範囲で、検波器への信号は小さめに留めるのが良い受信感触を得るコツです。大きな音が出れば良い訳ではありません。(笑)

コラム;受信サイドバンドについて
上記回路図ではBFOの発振周波数はフィルタの通過帯域から見て下側になっています。従ってUSB側を復調することになります。 7MHzの受信の場合、受信機の局発周波数を上側(19.8000MHz〜)に取ればヘテロダイン時にサイドバンドの反転が起こります。従ってLSBモードの運用局はUSBに変換されて正常に復調できます。3.5MHz帯も同様です。 また14MHz帯以上の受信では局発を下側に取ればそのままUSB受信となります。 局発はDDSを想定するため、このような自由度があってBFOの周波数を変更することなくUSBあるいはLSBの受信が可能になります。(追記:2017.12.10) 

 TA7310Pの手持ちがあったので使いましたがお店では入手困難になっているようです。 けっこう出回ったICなので、自作好きのお友達なら幾つか持っているかもしれないので聞いてみるのも良いでしょう。 もし手に入らなければ類似機能のICを使えば同じように作れます。工夫してみて下さい。 LM386の方は普通に手に入ります。

 高級な受信機にはもっと凝った回路が良いのかも知れませんが、この程度の回路でも実用上の大きな不満はないのも事実です。 低周波ばかり凝っても仕方ありませんが、必要に応じてグレードアップしたら良いでしょう。

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 重要なことを少しだけ補足します。 AD603のAGC特性ですがゲインを下げる方向・・・即ちAGC電圧を下げて行くと、ある電圧から減衰特性が反転するようになります。 要するに、信号が大きくなったのでゲインを絞ろうとしているのに逆に大きくなってしまう現象が起こるのです。 これは入力信号がたいへん大きくなってAGCが深く掛かったところでしか起こりません。 しかし、一旦そうなると信号がなくならない限り膠着状態に陥ってしまいます。 それを防ぐ目的でクランプ回路が設けてあります。

 120dBμV(1Vrms)を超えるような信号がIF-Amp.に加わる可能性はたいへん小さいと言えます。しかし間違って強力なノイズのようなものが加わる可能性が絶対に無いとも言い切れません。 誤動作を防ぐため最初はダイオードを使ったクランプを入れたのですが、幾らか温度特性が悪くなるのとAGCの直線性も損なわれるため現在のバージョンに変更しました。しかしダイオード式だったVer.1.0.3でも実用上の差はありませんでしたからそのままでも良かったのかも知れません。

 上記グラフの右方にこの2段IF-Amp.の限界が見えます。VSMや出力電圧が急上昇するところです。この領域はAD603のAGC範囲を超えている部分です。入力部アッテネータの減衰範囲を使い果たしたのです。もうこれ以上入力信号を絞れません。ゲインは固定されるため入力の変化がそのまま現れてしまう訳です。 しかし通常の受信状態ではまず起こりえない領域ですから支障はありません。 これを回避するには、フロントエンド部分に独立して掛かる「RF-AGC」のような仕組みを設けなくてはなりません。 近接して強力な電波を発射される危険性のあるプロ用受信機ではそのような対策がなされているのを見ます。

コラム:AD603はなぜ流行らなかったのか?
このICを試用していて、過去の用例を探したのですが中途半端なものしか見つけられませんでした。むしろ参考になるような情報はほとんど無いくらいです。 何故でしょうねと言うご質問も頂きました。 端的に言って「使う為の情報不足」だと思います。 CQ誌の2004年頃の記事を思い出したので見たのですがメーカーのテスト回路を試しただけの内容でした。具体的なAGC回路には話しが及んでおらず実用設計には至りません。事情はわかりませんが、リソース枯渇で至れなかったのでしょう。期待した読者は多かった筈ですが、理念だけが空転した企画でしたから仕方ないでしょうね。 その後はチャレンジされるお方もわずかで、本当に使いこなしておられるのは「良くわかっているごく少数の人」にとどまったように見えました。従って実用になっている例もごく稀です。 このBlogを切っ掛けに少しずつでも状況が変わることを期待したいと思います。

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 でき上がった回路を見たら「な〜んだ、こんなものなんだ」と思うでしょうね。でも、その「な〜んだ」の回路が浮かばないから一向に活用が進まないんだと思います。 拙い作例とは思いますが、まずは真似てみることからでも始めて頂き、貴方のオリジナルへと発展させて頂けたらVY-FBだと思っています。

 AD603を使ったIF-Amp.は設計の自由度があって面白いのですが、どうしても本格化する傾向に陥ります。 高性能な受信機を指向するなら当然進むべき方向なのかも知れませんが、他のIF-Amp.でも同様の成果は十分に期待できます。例えばMC1350P/MC1490Pを使い上手に設計したIF-amp.ならさしたる違いはありません。 概略評価の段階ですがフォワードAGCトランジスタを使ったIF-Amp.もかなり有望そうでした。まだまだ他の形式もあります。 通信機に必要なIFアンプのトータルゲインやAGC特性は凡そ決まっており、いずれのデバイスでも達成可能だからです。 従って、AD603が最優先でお奨めできるデバイスとは言い切れないでしょう。 それでも、IC化の威力で高性能なIF-Amp.がかなり確実に作れるメリットはあります。受信機やトランシーバを構想中でしたら試してみる価値はありそうです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)

追記;高性能受信機のIF-Amp.ともなれば結構大掛かりなテーマです。書くべき話しが網羅できているか自信はありません。書き忘れたこともずいぶんあるでしょう。 ご質問や疑問などありましたらコメントを頂ければと思います。内容は何でも結構ですがBlog記事の範囲内でお願いします。 主義主張のようなコメントも結構ですが、ここは個人のBlogであってパブリックなものではないので節度を持ってお願いです。(笑)

2017年11月18日土曜日

【回路】Design of 8 Transistor Radio

【回路デザイン:8石ラジオの設計】
8石ラジオ
 中波帯(BCバンド)のラジオなんて、自作HAMにはいま一つ興味が湧かないかも知れません。 このBlogは8石ラジオを作ることが主目的ではありません。ですからBlogのタイトルは少々不適切だったかも知れませんね。 トランジスタ・ラジオあるいは受信機に必要な自作の中間周波トランス:IFTを作り易いよう再検討するのが第一の目的です。その再設計の検証のために8石ラジオを作ります。

 このBlogテーマの元、対象となるトランジスタ・ラジオの回路やIFTの具体的な製作方法についてはトランジスタ技術誌:2015年10月号(p66〜p82)に詳しい記事があります。 以下の内容は、同誌の記事を参照されていることが前提なのですが、もしお手持ちでなくても何とかなるくらいの内容にはなっています。ご心配なく(笑) 参考:出版社及びamazonにバックナンバーあり。

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 局発コイルやIFTをすべて自作して、トランジスタ・ラジオを製作すると言った記事は珍しかったらしく、私が思っていたよりもたくさん読んで頂けたようです。どうも有り難うございます。 トラ技編集部が用意した記事連動の「製作部品キット」を求めるお方も結構あったんだそうです。

 実際にどれくらいのお方がIFTを巻いたのかはわかりませんが、小さなコアと細い巻き線で格闘されたであろう様子が思い浮かびます。 少し大変だったかも知れませんね。 巻線にはφ0.08mmのポリウレタン電線(UEW電線、ウレメット電線とも言う)を使います。もう少し細い方が良いのですが、切れ易いのと入手性の問題から手作りの材料としてはこの程度が限界だろうと思っています。

 巻き芯(フェライトのツヅミ型コア)の大きさから考えて、ギリギリ巻ききれる程度の巻き数になっていますが、特に検波段のIFT3は2次側の巻き数が多いため巻き難かったと思われます。 巻き芯のサイズに収まらず、やや山盛りの状態になってしまったかも知れません。調整用コアの内径にゆとりがあるので幾らか山盛りでも支障はないのですが、もう少し何とかしたいと思っていました。

 同調容量を大きくして巻き数を減じれば良さそうなものですがそう単純でもありません。 基本的にIFTの再設計が必要になります。使用デバイスの入出力インピーダンス、コイルの共振特性、利得配分、選択度などの条件から各IFTの巻き数を決定する訳です。 再設計は難しくはありませんが、意外に手間がかかるので先送りして来ました。しかし、記事の登場後はずっと気になっていたので改めて設計・検証を行なうことにしたのです。 そう言う意味では、記事のフォローBlogとも言えます。

8石ラジオの回路図
 回路図がないのは寂しいので、まずは検証のために製作したラジオの回路図です。 トラ技の記事では6石ラジオでした。 基本的に同じなのですが、そのまま転載したのでは能がないので低周波回路を再設計しています。

 標準的な6石ラジオと言えば、低周波増幅部はトランス結合になっています。 昔々、トランジスタが高価だった時代にはトランス結合のアンプは合理的でした。 小型トランスの方がトランジスタよりも安価だったからです。トランス結合の低周波アンプならトランジスタの使用数も最小限(3つ)で済みました。実用十分な音量も得られます。それでトランス結合の低周波アンプが標準として定着したのでしょう。当時はOTL形式がまだ完全には確立していなかったと言う事情もありそうです。

 しかし、今ではまったく逆転しています。 ラジオに使うようなトランジスタなら数円〜数10円で買えますが、トランスは結構なお値段なのです。 従って、トランジスタの数は少々増えてもなるべくトランスを使わない設計の方が合理的(経済的)になりました。 コンプリメンタリ・ペア(相補対)のPNP/NPNトランジスタも普通に売っていますからITL-OTL回路も簡単に実現できます。(ITL-OTL :Input Transformer Less & Output Transformer Less)

 そのような状況から、本来の原点である6石ラジオの設計にあまり縛られずに行くことにしました。 2石増えた分はいずれも低周波回路に割り当てています。 従って、周波数変換(コンバータ)回路、中間周波増幅(IF-Amp)の高周波部分は6石ラジオとまったく同じです。そのため感度や選択度に大きな違いはありません。 それに高周波部分を変えてしまったらIFTの検証になりませんからね。 受信周波数は520kHz〜1620kHz、中間周波数は455kHzの標準的な設計です。

コラム:6石ラジオに拘ったのはなぜ?
電波が強い都会地から、放送局から遠い山間僻地まで実用になるトランジスタ・ラジオと言えば6石スーパーでした。それが最小限のトランジスタ数です。1石でも削れば何がしかの性能が大きく後退します。逆に7石や8石になれば一段と有利ですが石数が多くなるほど高額でした。 そのような意味で日本全国ほとんどの地域で実用になる「6石ラジオ」はどれほどの性能だったのか知る意味もあって「6石」に拘った訳です。 今のように電子部品が安価で豊富な時代にあっては、性能本意で言えば7〜8石使う方が「ゆとり」が生まれます。さらには専用のICを使えば一段と高性能なラジオになります。

                    ☆

使用トランジスタについて
 例によって2SC1815Y、2SA1015Yと言ったポピュラーなトランジスタを使います。但し、低周波アンプの出力部分には電流容量が足りません。このため、一回り大きなトランジスタ:2SC735Y(2SC1959Yが同等)と2SA562Y(2SA562TMYが同等)を使います。これらのトランジスタが入手し難いようでしたら、2SC735Yの部分は2SC1815Yを2本並列にし、2SA562Yの部分は2SA1015Yを2本並列にして代用することも充分可能です。 コレクタ電流が500mAあたりまで流せるトランジスタなら、他のPNP/NPNのペアでも大丈夫です。なるべくhFEが大きなランクのものを選びます。

 2SC1815Yや2SA1015Yの部分は、他の汎用トランジスタに置き換えることも可能でしょう。 試作では主に2SC372Yと2SA495Yを使いました。 中波帯のラジオですから交換しても変化は感じられません。 もちろん、トランジスタ個々に直流電流増幅率:hFEは異なるので、コレクタ電流の流れ方に違いが出ますから適宜調整します。回路図に記入してある各段のコレクタ電流値と±30%以上異なるようなら、付きの抵抗器(R1、R11、R20)の値を加減して電流を調整します。何れも抵抗値を大きくすると各コレクタ電流は減少する方向です。

 【IFTの巻数一覧表
 これが主題のIFTの製作データです。 新たに3種類の設計例を示します。 最上段が実際にこの8石ラジオの試作で使ったものです。 中段は幾らかゲインが大きめで、選択度も良くなるよう設計した例ですが、上段とあまり差はないでしょう。 下段は、秋葉原などで一般に市販されているトランジスタ用IFTと概ね同じ仕様の物を作るための参考データです。

 IFTの共振周波数はいずれも455kHzで設計してあります。また、同調容量はいずれも330pFを使います。IFTの1番と3番の端子間に取り付けます。 一般的なトランジスタ用IFTでは100〜200pFあたりが使われています。 必要な共振インピーダンスを得るためにたくさん巻き線する必要があるからです。これは、使ってあるフェライト・コア材の特性によるもので、無負荷Qが低いのをインダクタンスの大きさでカバーすると言った考え方です。また、市販のIFTでは同調容量を内蔵する都合からサイズの制限があってコンデンサの容量をあまり大きくできないのも理由なのでしょう。

 しかし、ここで使っているaitendoの「IFTきっと」(←リンク)のコア材は高いQが得られます。従って、やや少ない巻き数でも(=少なめのインダクタンスでも)充分な共振インピーダンスが得られます。 そのため330pFと言った大きめの容量でも支障無く設計できる訳です。 それにコンデンサは外付けしますから物理的なサイズの制限もありません。 同調容量を大きくした結果、AGCが掛かる段のIFT同調ズレが軽減されると言った副次的なメリットもあります。

 全体に巻き数が少なくなったので作り易くなったと思います。2次側巻き数が多いIFT3も巻き枠から溢れることなく巻き切れるようになりました。

 巻線の端子接続も変更しています。 これは巻き易さの点で、4番ピンと6番ピンの接続を入れ替えた方が合理的な様に思えたためです。 もしトラ技誌の記事と互換にしたいなら、巻始めと巻き終わりの接続を変えて下さい。IFTとしての性能は違いません。

 巻線はφ0.08mmのポリウレタン電線です。全般に巻き数は減っていますが太さφ0.1mmでは必要な回数だけ巻けません。(80回弱しか巻けない) これ以上同調容量を大きくするのもあまり適当でないので、設計どおりのφ0.08mmを使うようにします。

 【コンバータ部分
 周波数変換回路のアップ写真です。 トランジスタは2SC372Yになっていますが、もちろん2SC1815YでもOKです。 赤いコアは局発コイルです。 これは最大容量が275pFの等容量2連ポリバリコン用に巻いた自作品です。巻線仕様はトラ技の記事(p71、b図)の通りです。 使用するポリバリコンに合わせた物を使います。

 IFTは上表の上段のデータに従って巻きました。 実際のラジオ回路にて性能を確認しましたが、同調容量に220pFを使ったタイプと違いはありません。もちろん、これは同じようなゲインや選択度になるよう再設計しているからです。

 ブレッドボードにIFTを搭載するための変換基板は、JR2FKN/1鶴田さんが製作されたものを使ってみました。 最近ではaitendoでも類似の変換基板が手に入りますが、HAMが作っただけあって、鶴田さんの基板の方が高周波的に有利なようです。 まあ、ここでは455kHzと周波数が低いので顕著な違いは感じられないかも知れませんが。(笑)
 トラ技記事の写真のような、端子を片側に引き出す変換基板(aitemdo)よりもボード上のレイアウトがわかり易いと言ったメリットもあります。 IFTの同調容量:330pFはすべて変換基板の端子部分(上面)にハンダ付けしてあります。(写真ではIFTの金属缶の陰で見えませんが)

 【従来型の低周波アンプ
 この写真は別にテストした「6石ラジオ」の低周波アンプの様子です。使っているトランジスタは合計3石です。 回路は教科書どおりのシンプルなものです。

 この例では全て2SC1815Yを使っておりバイアスの温度補償には小信号用シリコンダイオードを使っています。 回路図は示しませんが、トラ技2015年10月号(p72)の記事そのままです。 少ないトランジスタ数で済むのは良いのですが、意外にトランスが場所をとります。それほどコンパクトには組めません。 また、こうした小型トランスではインダクタンスが小さいので数100Hz以下の低い周波数が延びないため低音が出てくれず、いわゆる「トランジスタラジオ」らしい音がします。低音域で無理にドライブしてもトランスが磁気飽和して歪むのがオチです。(笑)

 ディスクリート構成(個別半導体による回路構成)に拘らないのなら、 LM386のような低周波アンプ用のICを使うと簡単でしょう。 コンパクトな回路が組めますし周波数特性もずっと良いので大きめのスピーカを使うと意外に良い音が楽しめます。 あるいはディスクリート構成でやるなら、SEPP-OTLアンプを構成すると良いです。(SEPP-OTL : Single-ended Push-Pull - Output Transformer Less・・・ITL-OTL回路の一形式)

SEPP-OTLの例
 最大出力Po(max)=250mW程度のパワーアンプをSEPP-OTL形式で構成した例です。(上記8石ラジオの回路) トランスは必要なくなりましたが、比較的容量の大きな電解コンデンサが増えました。 それでも上手にレイアウトすればずいぶんコンパクトに作れます。

 トランス結合のアンプよりも周波数特性はずっと優れていて大きめのスピーカを使ってやれば音楽も楽しめるでしょう。 SEPP-OTL形式はトランスのコストが削減できるだけでなく、音質も向上することからお薦めです。 2石増えて6石トランジスタ・ラジオではなくなってしまいましたが・・・。

参考:低周波アンプ出力段のバイアス回路にトランジスタを使うのは好みの問題です。私はバイアスの調整範囲が広いので好んで使っています。回路例では手持ちのPNPトランジスタを消費する目的で2SA1015Yを使っていますが、NPNの2SC1815Yを使う設計も可能です。 もちろんSi小信号用ダイオード2本と可変抵抗器一つに置き換えることもできます。性能も違いません。そうすれば1石減って7石トランジスタ・ラジオになりますね。(笑)

 以上、IFTの再設計がテーマなのでラジオの作り方や調整についてはだいぶ省きました。雑誌記事や他のBlog記事を参照してもらえば大丈夫だと思っています。 試作した8石ラジオは感度も良く音質もマズマズなことから実用品として纏めるのも面白いです。 大きめのバーアンテナを搭載すれば高感度で受信できるでしょう。 さらに短波ラジオの設計(←リンク)を取り入れて2バンド8石スーパーに挑戦するのも楽しそうです。

                  ☆ ☆ ☆

 製作してみた感じではIFTの再設計で幾らかですが作り易くなっているようです。 入手容易な素材でオリジナルなラジオ用パーツが作れるのは有難いと思っています。 有効に活用したいものです。 コイル巻きは好まれませんが、RF回路ではある程度やむを得ないでしょう。 送信機を作ったらLPFが必要でトロイダルコアに巻いて自作する必要があります。自作HAMにとってコイル巻きは避けられません。

 ラジオ受信機ではなるべくコイルレスの設計が進んでいて、たとえばこのBlogでも紹介したことがあるTA2003P(←リンク)のようにIFTを一つも使わないICラジオもあります。 但し、単なる普通のラジオならコイルレスも可能かも知れませんがHAMが使うような「通信型受信機」では数個のコイルはどうしても必要でしょう。

 書き出しのように、8石ラジオなんて・・と思うかも知れませんが、作ってみると意外に遊べます。 ラジオはありふれていますから、電子回路としては目新しくもないでしょう。 でもトランジスタ・ラジオを作ったのはずいぶん昔だったのではありませんか? もしスーパー形式で作ったことがなければ、8石スーパーは大人が十分楽しめる製作だと思います。IFTから手巻きすればなおさらでしょう。あまりなめて掛かると完成しません。(笑)

 コイル巻きも適切な材料と製作に必要な情報が手に入ればそれほど難しくありません。 トランジスタ回路用のコイルはごく小さいので、最初は悪戦苦闘かも知れませんが少し慣れれば要領を得て手早く作れるようになります。 コイルが巻ければ自作RF回路の幅がずいぶん広がります。ぜひ習得したい自作の技術です。 オリジナリティを活かしたような製作も可能になるでしょう。 たまたま手に入ったFBなSSB用フィルタを自作回路に活かしたいと言ったニーズにも対応できるようになります。

 JARL主催の自作品コンテスト出品作品を拝見する機会があったのですが、最適なコイルを自分で工夫して巻くと言ったワザも重要な製作ノウハウの一つであるように感じました。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)

2017年11月4日土曜日

【測定】Repair the TR5821 universal counter

測定器修理:TR-5821型ユニバーサル・カウンタ
 【TR5821
 年代物のユニバーサル・カウンタを修理する話しです。

 TR5821はAdvantest社製のユニバーサル・カウンタで1980年代の製品です。 既に30年以上経過していますから、だいぶ古い測定器と言えるでしょう。
 しかし、カウンタとしての機能や性能は今のものとほとんど変わりありません。 1980年代にはユニバーサル・カウンタは十分完成された測定器になっていたからです。

 ユニバーサル・カウンタは単純な周波数カウンタとは違います。周波数が測定できるのはもちろんですが、その他に入力信号の周期や2つの周波数の比を求めたり、パルス信号の時間差などの計測が可能です。 しかし、アマチュア無線の用途では殆どの場合「周波数の測定」のみが使われるようです。 様々な機能があっても使わないのではちょっと勿体ないかも知れませんね。(笑)

 TR5821は廉価版ではありますが、もともとプロ用ですからそれなりのお値段(¥128k)でした。しかし、長い年月を経ているので、中古品の価格は十分にこなれており、もし機能・性能に支障さえなければお買い得だと思います。 ここでは、15年ほど愛用したTR5821のメンテナンスの様子をレポートします。もう使っている人は少ないでしょうね。

 【プッシュ・スイッチが弱点
  底部にある4本の長ネジを外すと中身を見ることができます。 TR5821は専用IC化が進んでおり、しかもマイコン採用とあって意外なほどあっさりしています。

 機内は隙間のない構造です。従って、年数は経過していても奇麗な状態でしょう。使ってある半導体に問題がなければまだまだ十分使える筈です。 稼働時間はそれほど長くない物が多いでしょうから劣化は進んでいない物が多いでしょう。

 しかし、プッシュ・スイッチだけは別です。 この時代のAdvantest社製の測定器に使ってあるプッシュ・スイッチは甚だ品質が悪く、途中で交換修理してないなら100%へたっている筈です。 押した感触がないばかりか、切換えもスムースにできないでしょう。

 私が持っているこれも、ご多分に漏れずプッシュ・スイッチは全滅でした。 交換用のスイッチ(対策済みの部品)が入手できたので取り替えることにしました。 Advantest製品のサービス関係会社から入手できるほか、他にも流通ルートがあるようです。

 操作パネルは筐体下部と嵌め込み式になっており手前側に外すことができます。 写真は操作パネルの裏側にあるプリント基板です。 この基板にプッシュ・スイッチが付いています。 左側の2個を外したところで撮影しました。ちょっと面倒臭かったのですが、全部交換したら快調そのものです。もっと早く交換すれば良かったと思いました。

                    ☆

以下、せっかくの機会なので簡単にTR5821の特徴的なところを書いてみましょう。

A入力で1kHzを観測
 TR5821にはA入力とB入力があります。

 A入力はごく普通の周波数カウンタです。1kHzを入力し、1秒ゲートで測定すると写真のように「1.002kHz」のように表示されます。分解能は1Hzと言う訳です。

 なお、A入力の上限周波数はSpecでは120MHzとなっています。 標準信号発生器:SSGを使って試したところ、120MHzを超えると幾らか感度は悪くなる傾向が見えましたが180MHzまで測定できました。 測定精度も問題ないようです。 アマチュア局の場合、144MHz帯まで測定できれば活用範囲が広がるのでFBだと思います。 個々にバラツキはあると思いますが、故障さえなければ150MHz以上測定できるのではないでしょうか。

 【B入力で1kHzを観測
 TR5821の特徴はB入力ではないかと思います。

 写真は、上記と同じ1kHzをB入力に加え、同じ1秒ゲートの設定で周波数を測定している様子です。

 B入力は「レシプロカル・カウンタ」になっていて、入力信号の周期から逆算して周波数を計算する形式です。 従って、比較的低い周波数を短時間で高精度に読み取ることが可能になっています。 この例では、1mHz(ミリヘルツ:1/1000Hz)まで1秒ごとのサンプリングで読み取ることができます。 もしも上記と同じように、普通のカウンタでこれだけの桁数を読もうとすれば。1回毎の測定に1,000秒(17分近く)掛かることになります。

 このように、TR5821は比較的低い周波数の信号を高精度に測定するときに威力を発揮しますが、自作のプリスケーラを前置して測定する場合にも非常に効果的です。 なお、B入力の最高周波数は、Specでは50MHzですが実測では約88MHzまで可能でした。

 レシプロカル・カウンタの測定原理や固有の測定精度の問題に関しては、取扱説明書(ネットで入手可能)に書かれています。詳細はそちらを参照して下さい。


B入力で10Hzを観測
 「レシプロカル・カウンタ」の効果は上記の例で既に明らかですが、10Hzと言った低い周波数ではより顕著になります。

 もしA入力で測定すれば「10」としか表示されません。 左写真のように読もうとすれば「10万秒」が必要です。 それだけ掛かったら測定しているうちに被測定物の周波数がずいぶん変動してしまうかも知れませんね。(笑)

 TR5821の中古品を求めるなら、ぜひともB入力に着目したいと思います。 もしレシプロカル・カウンタの機能が使えないなら価値は半減以下ではないでしょうか? 目的次第かも知れませんが、ぜひとも押さえておきたいポイントの一つです。 TR5821の姉妹機には1.3GHzまでのプリスケーラが内蔵された機種(TR5823)やOCXO付き(TR5823H)もあって狙い目かも知れません。なお、TR5822はGP-IB付きです。但しいずれも機能的に同じですからTR5821で十分でしょう。精度や測定範囲は外付けで補えますから。 これらの上位シリーズにはTR5824/5825もありましたが、レシプロカル・カウンタの機能はなかったかも知れません。(要確認です)

 なお、内蔵の基準発振器が普通の水晶発振器の機種では良く校正しておけば誤差1ppm程度の精度になるようです。常温の環境で通電してから1時間後の精度です。 また、校正次第ですが基準発振器がOCXOならもう1〜2桁精度は良くなります。もちろんOCXOは常時通電されていなくてはダメですけれど。
 どれも外部基準入力端子(10MHz)が付いているので、写真のようにルビジウム原子周波数基準器なり、GPS周波数基準器から10MHzを与えれば測定精度の画期的な向上が図れます。 外部基準器としては、通電から30分程度で必要充分な精度に達するルビジウム原子周波数基準器がお薦めできると思います。

                   ☆ ☆

 アマチュア無線家にとって周波数の高精度な測定手段を持つことは夢の一つでした。 ラフな測定なら吸収型周波数計やディップメータが役立ちますが、精度1kHz以下ともなればヘテロダイン周波数計くらいしかありませんでした。 ヘテロダイン周波数計は扱いに技量を要するうえ、周波数カウンタのような手っ取り早い測定は無理でした。 1960〜70年代のお話しです。

 1970年代に入って、高速なTTL-ICやECL-ICが入手できるようになると周波数カウンタの自作が流行しました。 私もさっそく自作し、上限周波数は50MHzくらいではありましたが、無線機の自作にたいへん活躍してくれたことを思い出します。 初代のTTL+ニキシー管を使った5桁表示の周波数カウンタは既に引退していますが、C-MOS LSIと高輝度LEDで作った2代目はいつでも使える状態です。

 かつて高性能な周波数カウンタを作ることは自作テーマの一つだったのですが、既に興味も薄れました。 組み込み用マイコン式カウンタには未だにニーズもありますが、独立した測定器としてのカウンタは別です。 流石にメーカーの製品は良くできています。まあ、これは当たり前ですが、中古品ならリーズナブルに入手できるのですから自作する面白みは何だか失われてしまった感じですね。 良かったら、貴局の周波数カウンタの思い出など教えて下さい。 ではまた。de JA9TTT/1

(おわり)

参考:最近の中華製ユニバーサル・カウンタにはレシプロカル・カウンタの機能が搭載されているものがあります。使用経験はないので使い勝手の良し悪しは不明ですが、新品が欲しい場合は検討対象にするのも良さそうです。

2017年10月20日金曜日

【AVR】 ATmega 8X Board

【AVRマイコン:ATmega 8X用ボードを活用する】
 【Arduino互換基板
 AVRマイコンを使ったコントローラ基板を製作する話しです。

 写真は秋月電子通商で手に入るAVRマイコン用の基板です。 今では有名になった『Arduino』と機能的に互換のマイコン基板が作れるようになっています。

 この基板を汎用(はんよう)のマイコン基板とみなして、活用しましょう。

 基板上に搭載する部品をセットにした「製作キット」(←リンク)も売られていますが、ここではプリント基板だけを使います。(基板のみ単品販売されている)

 計画中の製作で、AVRマイコンを使ったコントローラ基板が必要になりました。 回路はごく単純ですが、周辺回路の制御や表示器のドライブのために各I/Oポートを引き出す必要があります。 そのほか、ISP書き込み端子や5Vの電源も載せなくてはなりません。

 もはや作る面白味は殆どない定型のマイコン回路です。 配線もちょっと面倒なことから、この基板の活用を思いつきました。 配線の手間が幾らかでも省けるなら有難いです。 さっそく旨く使えるか検討してみました。

ポートの割り付け
 もともとがArduino互換の回路ですから、 コネクタのピン・アサインなどは其れ用に書かれています。 私の目的に使うには、そのままだと間違い易いので、自分が使い易いように注釈を入れておきます。(左図の文字)

 なお、これで作るコントローラ基板が取りあえず想定しているのはDDS発振器で、こちら(←リンク)のBlogのAD9834を使うものです。もちろんAD9850やAD9851と言ったDDSもコントロールできますが、+5V電源の消費電流に注意を要します。

 この基板はシリアルインターフェースが別基板で搭載できるようになっています。それを使えば後々USB経由でデータの交換が可能かも知れません。しかし、ここではその部分(赤で囲った部分)は不使用にしました。
 また、電源部分も簡易なACアダプタでも間に合う回路構成になっていますが、独立してこの基板だけを使う訳ではないため簡略化しています。 要するに+9〜10Vの主電源を別に設けてそこから供給します。 さらに、AVRマイコンは内部クロックで使いますから水晶発振子は不要です。水晶発振子の代わりに、基板にコネクタを付けておいたので追加の2ポートとして利用できます。

 主にI/Oポートの引出しとISP端子の部分だけを使うことになりますが、ずいぶん配線の手間は省けそうです。 例えばDDSのコントローラとして完結する為には、この基板だけでは少し無理があります。補助のインターフェース基板が必要になりますがごく簡単なもので済みそうです。 本来とは違った目的ではありますが、「Arduino互換基板」を利用する意味は十分あるでしょう。基板コストも含め、まずまず利用価値はあると思います。

参考:5Vの3端子電源にAN8005を使ったのは頂き物があったからです。レギュレータ自身の消費電流は1mA未満なので省電流になります。 同様の3端子レギュレータはたくさん市販されておりAN8005に限りません。低消費電流に拘らなければ一般的な+5Vのレギュレータ:μA7805ACなどでもOKです。 なお、AN8005の場合、+5V電源の全負荷電流は50mAまでに収めなくてはなりません。

LCDを装着してテスト
 さっそく、必要な部品を実装してみました。 このタイプのLCD表示器を前提に作られていないので、コネクタのピン配置は必ずしも合理的とは言えません。しかしそれほど無理せずに配線接続できました。

 I2Cインターフェース付きLCDの活用も考えられますが、I/Oポートの使い方から考え直す必要があるでしょう。プログラムほか既存の設計をなるべく活かすのが前提のため、ここでは検討していません。

 LCD表示器にはバックライトが白色LEDで白抜き文字の物にします。以前の検討によれば、この形式のLCD表示器が最も消費電流が少ないからです。 この状態で全消費電流は20mAくらいでした。(外部から+10Vを与えています)

 一つの想定としてDDS部分にAD9834を使って省エネ設計にすれば20mA以下の消費電流にできるでしょう。 マイコン基板+LCD表示器+DDS発振器のトータルで40mA以下にできそうです。この中にはLCDのバックライト分も含まれます。

 写真では、LCDのバックライト電流は10mA以下に設定しています。これでも十分な視認性が得られています。

                     ☆

 他の目的に作られた物を流用するので合理的ではない所もありますが、まあまあだと思っています。 それなら、そのまま「Arduinoもどき」を作ってしまい、DDSコントロールのスケッチを実行させたらいかが?・・・と言う声も聞こえてきそうですね。

 それも一案なのですが、ここでは既存の制御プログラムと、ハード設計を活かすことを重点にしました。 Arduinoとして作った所で、外付け基板や追加部品ナシとは行かないでしょう。 単純なDDSコントローラなら別ですが、無線機用にするなら独自の機能を実現するためのプログラムも不可欠です。 少々ムダなスペースがあるのは気なりましたが、基板が活用できるだけでも十分意味はあります。 何ならもっとコンパクトな既成のArduino基板でもそっくり流用してしまう手があるのかもしれません。hi hi

 基板製作と併せて久しぶりにAVRマイコンのプログラミングをしたのですが、ずいぶん忘れていました。 最初はたくさんコンパイルエラーが出てしまい暫くデバッグ作業です。 もともと完結していたプログラムからスタートしていますが、一部のルーチンを合理化する目的で他のバージョンから移植したのが厄介が発生したモトです。(笑)
 ATmega8やATmega168用に書いてあったプログラムだったので、ATmega328用にマッチさせる作業もあって、意外に手間取ってしまいました。 まだまだ完成版ではなくて、機器に組み込んでから機能の追加や調整、更なるデバッグが必要になるでしょう。

 マイコン基板ができたところで、何に使うの?・・・と言う部分は次回のお楽しみにでもしておきましょう。 マイコン基板そのものはプログラムにより変幻自在なので汎用品と言えます。幾つかのプロジェクトに適用可能なはずです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)

2017年9月6日水曜日

Sunset

Sunset 2017.8.27 18:00  @ Setonaikai Sea

2017年8月8日火曜日

Green


Photo : 2017.07.14  09:25 JST

2017年7月9日日曜日

Cloud


Photo : 2017.06.04  10:17 JST

2017年6月24日土曜日

【部品】Transition Frequency : fT

【トランジスタのfT
トランジスタのfT測定
 トランジスタのfT値はそのトランジスタの高周波特性を示す重要な数字の一つです。 使ってみたらわかりますが、大雑把に言ってfTの1/8の周波数までと思えばゲインは十分得られます。1/4までならまあまあ何とか、と言った所でしょうか。fTの半分まで使うのは良い石が無かった昔々のお話しです。

 fTについてエミッタ電流:Ieとの関係を調べてみました。なお、Ieはコレクタ電流:Icと同等と考えても良いでしょう。
 トランジション周波数:fTは各トランジスタ固有の一定した値のように思いがちです。しかし同じトランジスタであっても動作電流によって大きく変化します。 従ってその使い方によって高周波特性も大きく違ってきます。

測定したトランジスタ
2SA70、2SA101、2SA495Y(旧型)、2SC372Y(旧型)、2SC1815Y、2SC1855(フォワードAGC用)、2SC2668Y(2SC1923Y同等)、S9018H(中華石)

 測定した中から代表的なものをグラフにしました。旧型と言うのはいわゆる「袴(はかま)」付きシルクハット型パッケージです。

測定条件
 コレクタ・エミッタ間電圧:VCE=10V(DC)です。 測定周波数は仮測定して適宜選択します。グラフ中に記載してあります。 エミッタ電流を変化させながらfTを測定します。 空調の効いた25℃の環境で測定しました。 比較によれば精度は±20%くらいのようです。  研究のため、一部は規格をオーバーする条件で測定しています。

                   ☆

 2SC372Yの代替は2SC1815Yが定番ですが、HF帯では意図した性能が得られないことがありました。特に小さい電流で使うと芳しくありません。 グラフを見ると2SC372Yの方がRF向きだったようです。
 中華トランジスタ:S9018Hは、以前の予想(←リンク)とは違いました。実測してみたら使い易い所にfTのピークが来ています。これは好都合な結果でした。
 2SA70と2SA101はRF用のゲルマニウム・トランジスタです。高周波用とは言ってもせいぜいこの程度でした。周波数特性が良くなかったゲルマの石で四苦八苦した当時が思い出されますね。

                  ☆ ☆

 トランジスタの高周波性能はfTだけでは決まりません。Cob や rbb' が小さいことも重要です。 しかし多くの場合fTの高いトランジスタが有利なのは間違いないでしょう。 目的に合ったトランジスタを選び最適な動作条件で使うことがRF回路成功の秘訣でしょうか?  トランジスタのfTなんて規格表に載っているデバイスの基本的な項目です。どちらかと言えば地味なテーマでしょう。しかしこうして実際に求めてみると色々なことが見えてくるものです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2017年5月29日月曜日

Moon


2017.05.29 18:54 JST

2017年4月26日水曜日

【回路】RC Phase Shift Oscillator

【回路:RC位相シフト型正弦波発振器】
2石のRC位相シフト型発振器
 簡単に作れる正弦波発振器として、RC位相シフト型発振回路があります。 左の回路は意外に人気があるようで、Web上では良く見掛ける低周波の『正弦波発振器』です。だいたい数10Hzから20kHzのような可聴周波数域の発振に使います。

 左図は「定本:続トランジスタ回路の設計」(CQ出版社)の回路をアレンジしたものです。この本を参考にした回路はネットでも良く見掛けます。理論的な解析は検索で容易に発見できますし教科書にも載っているポピュラーな回路です。「Phase shift oscillator」(←リンク) ここでは実験結果に基づきRC移相シフト型発振器を製作する際の要点などを自家用の資料として纏めます。 トランジスタ2石の回路と、OP-Ampを使った回路の2種類についてテストします。

 『確実に起動でき歪みの少ない低周波の正弦波発振器』を作ることは一つのテーマのようになっているので過去のBlogで何回も扱っています。 低周波の正弦波発振器にあまり興味を覚えないようでしたら退屈で面白くないと思いますので・・・。以下略。

                   ☆

 まずはトランジスタ2石で作ってみます。発振周波数は1kHzで設計しましょう。 この発振器は1石で作ることもできまが、2石使うことで発振が容易で、発振周波数の誤差が少なく、歪みも小さくできます。同じ2石でも幾つかのバリエーションがありますが、図の回路は最も合理的なものだと思います。 今ではトランジスタは抵抗器:Rやコンデンサ:Cと言ったRC部品並みのお値段なので倹約せずに2石使うと有利です。 但し、図の回路はトランジスタ・アンプ固有の非直線性が現れるので、入念に調整してもあまり低歪みは期待できません。

 バルクハウゼンの発振条件(←リンク)には「振幅条件」と「位相条件」の2つがあります。両方が満たされる周波数で発振します。これは必要条件です。 図の発振回路は3段のRC移相回路を使い、そこで位相が180度が回る(進む)周波数にて発振させようとするものです。RC回路を3段通過する信号はその周波数に於いて1/29に減衰するのでアンプは29倍以上増幅しなくてはなりません。反転型アンプを使うと位相は-180度回わるので、合計の移相は0度となって位相条件も満足されます。(ループを一巡した位相の回りが、0度あるいは360度の整数倍が位相条件です)

 アンプは反転型で利得(ゲイン)が29倍以上あるものを使います。ゲイン過剰だと飽和して歪みますが、29倍ちょうどでは他の何らかの原因によって発振しないことがあります。従って具体的には作ってからQ1のエミッタにある可変抵抗で波形を見ながら丁度良い所に調整します。 RC移相回路は図のようなハイパス型(進み移相型)と後述のOP-Ampを使う例のようなローパス型(遅れ移相型)があります。

 発振周波数は図中の式の通りなのですが、計算と完全には一致しません。アンプの入力インピーダンスは無限大ではない、エミッタ・フォロワの出力インピーダンスはゼロではないなどの誤差要因が存在します。 またRC部品には誤差が付き物です。何らかの調整箇所を設けないとジャスト目的の発振周波数にはなりません。発振周波数は図のように位相シフト回路の一部を加減して調整することができます。この方法は大きく周波数を変えるのには向かないので微調整専用でしょう。

 発振の振幅と歪みには密接な関係があり、Q1のゲインを調整して小さめの振幅で発振させればトランジスタの非直線性から逃れられ(緩和され)ます。 しかし発振条件ギリギリに合わせれば周囲温度や電源変動などの影響を受けやすくなります。電源のON/OFFで発振が再起動しなかったり振幅が不安定になりがちです。従って確実に発振が起動でき、発振振幅も安定する状態に調整します。その結果、歪み率は幾らか悪くなりますがやむを得ません。調整如何ですが、歪み率は悪くても5%以下にはできるでしょう。

 実際に製作して感触を確かめてみました。トランジスタは電流増幅率:hFEの大きなものを使うと発振が容易です。 2SC1815で言えばYよりGRランクの方が良さそうです。hFEが非常に大きなSuper-βトランジスタ:2SC3112、2SC3113も良好でした。内部ダーリントン構造の2SC982でも旨く行きます。 良い性能を得るためにはバイアス調整が大切です。図中に青字で記入されたDC電圧よりも大きく違うようなら、R4を加減して調整します。

                   ☆

 意外に使い物になりそうな感触を得ました。 シンプルさが取り柄ですから、さらなる発振振幅の安定性や低歪みを追求するなら他の回路にすべきでしょう。 しかし数%の歪みを許容できるなら良い回路です。それに人が耳で聞くだけの用途ならその程度で十分な性能です。当然ですが弛張発振器よりも遥かにきれいな澄んだ音がします。

                  ☆ ☆

【 OP-Ampを使った位相シフト型発振器
 RC回路を使った正弦波発振器としては、Wien Bridge発振器(←リンク)がポピュラーです。市販の多くの低周波発振器でも使われています。
 しかし、RC位相シフト型で作ることも可能で、左図の回路で歪みが0.01%以下のたいへん奇麗な正弦波が得られます。

 ひと言で言えば上記の回路をOP-Amp化したものです。但しOP-Ampは2石のアンプと比べれば遥かに高性能ですから発振周波数の再現性が良く、直線性も良いので歪みは小さくなります。 テスト回路の発振周波数は同じく1kHzに設計しました。

 OP-Ampは1回路でも作れます。 その場合はダイオード・クリッパ式で振幅安定することが多いようです。 ここでは歪みの増加を嫌って豆電球による「振幅安定回路」を使いました。 その都合でOP-Ampを2回路使いますが安価なOP-Ampなのでコスト・パフォーマンスは悪くありません。これで発振の起動が確実で振幅の安定化と低歪みが両立できます。

 2石の回路では振幅とゲイン(増幅度)が負の関係・・・発振振幅が大きくなると増幅度が下がる特性・・・を利用して発振振幅を保っていました。しかし、その方法では低歪みになりません。要するにアンプの非線形性を利用して発振振幅を保っている訳です。発振振幅はトランジスタの動作状態の影響も受けて変動します。
 ここでは豆電球に加わる電圧と抵抗値の特性を利用して振幅を安定化します。 以前テストしたWien Bridge発振器と同じ豆電球を使っています。 何かの原因で発振振幅が大きくなると、電球に加わる電圧も大きくなります。 その結果、電球の抵抗値が増加してアンプの増幅度が下がります。 逆の場合は電球の抵抗値が減少するので増幅度が上がって振幅が増えるように作用します。電球の働きで発振振幅の変動が抑えられほぼ一定の発振振幅が維持できます。

 このような目的に適した電球が手に入れば製作・調整は容易です。歪み率は難しいこと抜きで0.01%くらいにできます。こうした豆電球は特殊に思えますが、インターネット時代の今となってはそれほどでもありません。見付け方と入手方法については後ほど触れます。

 発振周波数はR1(=39kΩ)で微調整できます。 R1として33kΩの固定抵抗器と10kΩの可変抵抗器を直列にします。 この方法は大幅な周波数可変には向きませんが微調整なら支障ありません。 回路としての発振周波数の再現性は良好なのですが、RCの誤差が影響します。ピッタリ合わせるには調整を要します。

参考:OP-Amp自身の位相回転があって発振周波数に誤差を生じます。但し、1kHzあたりなら影響は大きくありません。

 発振振幅を約7Vrms(=19.8Vpp)に調整すれば歪み率は0.01%あたりになるので、2石発振器の1/100以下です。高調波は-80dB以下ですからHAM局の2トーン発振器にも最適です。 汎用の発振器としても使い易いです。

試作の様子
 OP-AmpにNE5532Pを使います。 振幅安定化に豆電球を使ったので、低い負荷抵抗を十分ドライブできるOP-Ampを選びます。NE5532Pは2回路入りなのでワン・パッケージです。

 5532型はオーディオ用の設計で、負荷ドライブ能力のほか歪みやノイズも良好なのでこの回路に向いています。Signetics社が開発した傑作OP-Ampの一つです。 今では5532型も高くありませんが手持ちがあるなら4558型でも良いでしょう。但し幾らか歪みは大きくなります。なお、OP-Ampを換えても回路定数の変更は不要です。

 部品数が少ないので容易に作れます。 豆電球は端子間抵抗が約200Ωの状態で動作しています。その状態のとき振幅の制御が旨く効くように設計してあります。振幅が大き過ぎるとクリップ歪みが現れます。小さすぎると制御範囲が狭くなって安定性が悪くなります。また、振幅が落ち着くまでの過渡応答時間が長くなります。 従って設計条件の付近に調整すべきです。VR1で発振振幅を6〜8V(rms)にします。4558型OP-Ampの時は5〜7V(rms)が良いです。 なお、OP-Ampによる性能の違いを纏めた一覧表を後ろの方に掲載しています。

 観測・評価や調整にはオシロスコープや歪率計を使いました。 そのような測定器がなくても、発振電圧の調整はマルチメータ:テスター(アナログ、デジタルを問わず)だけで十分可能です。メータの表示は実効値(rms)ですから、その読みが6〜8VになるようVR1を調整すればOKです。 詳細な評価や検討にはそれなりの測定器が必要ですが、評価が済んだ回路はごく一般的な測定器だけで調整できます。手近の道具だけで十分作れるのです。


位相シフト部
 RCによる三段の位相シフト回路です。 1段当たり60度位相が遅れます。 四段や五段の移相回路も考えられますが、複雑さや信号の減衰度を考慮して三段が最もポピュラーなのでしょう。

 コンデンサ:C及び抵抗器:Rの誤差で発振周波数に誤差を生じます。また周波数安定度も影響されます。

 写真ではマイラー・コンデンサ(緑色)を使っています。 低周波回路では一般的ですが温度特性はまあまあの所です。 フィルム系コンデンサならスチロール型やポリカーボネート型が最適です。 ほかにNP0特性のセラコンやマイカコンデンサも良くて、周波数安定度は向上します。間違ってもバイパスコンデンサ用のセラコンを使ってはダメです。発振はしますが・・・まあ、やってみればわかります。 抵抗器もカーボン型ではなく金属皮膜型にします。

発振振幅安定化回路
 豆電球の特性を使って発振振幅を一定に保つ回路です。 ここで使った電球は加わる電圧が2Vの時、約200Ωの抵抗値を示します。 

 電源が投入されたとき、まだ電球は冷えているので抵抗値は50Ωくらいです。 従って、U2の部分のゲインは、G2=620/50=12.4倍です。 U1の部分のゲイン:G1は設計上では約9倍です。 従って起動時には全体でG1×G2=9×12.4=111.6倍くらいのゲインになっています。 発振の持続に必要なゲインの29倍を大きく上回るので発振は容易にスタートします。(注:ゲインは絶対値で考えています)

 発振が始まると電球に加わる電圧は急上昇します。 その結果、電球の抵抗値は200Ω前後に上昇してU2部分のゲインが約3.2倍になって、全体のゲインが29倍付近になるところで安定します。 電球の抵抗値が200Ωになるのは、加わる電圧が約2V(rms)のときです。U2の出力はその約3.2倍となり、発振器としての出力電圧は約7V(rms)になる筈です。

                   ☆
コラム:電球の入手方法】
 ここで使ったような豆電球も今ではMouserJapanの通販で入手できます。 例えば低周波発振回路によく使われる電球として#327(←リンク)と言う28V/40mAの電球が売られています。ほかにも#1869(←リンク)も使えます。 なおLED化された代用品も売られていますが、光らせるのが目的ではないためここでは使えません。ご注意を。

振幅安定に向いた豆電球の探し方
 手持ちから使えそうな豆電球を探すには12V加えた時の抵抗値に着目します。400〜600Ωになるような電球を見付けます。12V加えたとき20〜30mA流れる豆電球です。そのような豆電球なら2V加えた時200Ω前後の抵抗値を示すでしょう。

 24V用の電球にも適したものがあって、24Vで40mAくらい流れる電球が良さそうです。こうした電球の特性を評価した例がこちら(←リンク)にあります。

 なお、3V程度で点灯させる懐中電灯用の豆球には適したものはありません。 回路中では『2〜3Vの電圧が加わった状態で使う』と書いてあるため、そのような豆電球が良いと思うのかも知れません。 しかし、光らせるのが目的ではないので3V用の豆電球では抵抗値が低すぎるのです。OP-Ampに電流ブースタを追加して無理矢理使う手もない訳ではありませんが、たぶん電気のムダです。(笑)

 どうしても電球を使いたくないのなら回路は複雑化しますが、発振振幅の安定に整流回路+FETを使う方法や、LED+CDSを使う光を介した利得制御方法もあります。 しかし豆電球を使う方法が最もシンプルです。

発振波形】 
 発振波形です。この状態で歪み率は約0.01%です。 オシロスコープでの観測では歪みを見分けることはできません。また、デジタル・オシロにはFFT機能が付いていることも多いのですが、オシロのA/D変換器は8bitかせいぜい10bitなので分解能不足のため正しく評価できません。最近では12bit分解能の高性能デジタルオシロも登場していますが、それでも不足です。0.01%と言う歪み率はそれくらい小さいのです。

 この写真のように、19〜20Vppになるように調整します。それだけで0.01%の歪み率になります。 OP-Ampに4558を使った時はやや小さめの16〜18Vppにします。4558型ではやや歪みが増えて0.015%くらいになるでしょう。

 豆電球の種類が異なる場合は、R6(=620Ω)を加減します。 具体的には電球にDC2Vを加えて電流を測定しその電流値から抵抗値を求めます。(テスタで抵抗値を測ったのではダメです) その計算値の約3倍になるようR6の抵抗値を決めれば良いです。 電球の抵抗値が大きいならR6も大きく、小さい時にはR6を小さくしますが、OP-Ampでドライブできなくなるため限度があります。現状の620Ωあたりが下限です。 従って、なるべくなら抵抗値が大きめの豆電球が良いことになります。 しかしAC100V用のナツメ電球は旨くありませんでした。抵抗値が高いのは良いのですが、加わる電圧が2V(rms)程度ではフィラメントの温度が十分上がらないのです。

 類似の方法にはビード型サーミスタを使う方法があります。但しサーミスタの特性は電球とは逆なので位置を入れ替えます。 豆電球のところを普通の抵抗器に置き換え、R6の部分をサーミスタにします。 なお、トランジスタ・ラジオに使うディスク型サーミスタ(例:D-22Aなど)は使えません。 周囲温度の影響を受けて発振状態が変動する発振器になってしまいます。

発振周波数と歪み
 移相回路は抵抗器:R1〜R3は39kΩ(±1%)で、コンデンサ:C1〜C3は0.01μF(±20%)で設計しました。 計算上の発振周波数は1kHzになるのですが、実測では2%くらい低くなりました。これは主にコンデンサの容量にプラスの誤差があったためです。

 コンデンサの容量を加減するのは容易でないので、抵抗値を調整して周波数を合わせます。 具体的には、R1を33kΩ+10kΩの可変抵抗器に変更します。これで1,000Hzちょうどに調整できます。

 SSB送信機テスト用のツートーン発振器は、1kHzと1.575kHzの2周波数を使うのが標準的です。 1.575kHzの発振器を作るには、R1〜R3を24kΩで設計して微調整します。コンデンサ:C1〜C3は0.01μFのままで良いです。 写真は1,000Hz、7V(rms)の実測状況です。 周波数はVR2によって1,000Hzちょうどに合わせています。 表示の歪み率は出力が6.8V(rms)の状態です。

OP-Amp比較まとめ
 一覧表は各種OP-Ampについて歪み率の実測結果を示しています。 発振周波数は1,000Hzです。 発振振幅は回路図のVR1で幅広く調整できます。

 表は発振振幅を3V(rms)から1V(rms)刻みに大きくしたときの歪み率です。 また、オシロスコープの管面で見て明確な歪みが現れる寸前の出力電圧を最大出力電圧としました。その時の歪み率も参考に記載しています。もちろん、その最大出力電圧で使うものではなくて、実用上は必ず内輪の出力電圧までで使います。 OP-Ampの負荷ドライブ能力と固有の直線性が歪みの違いとなって現れています。

 なお、電球を使った振幅安定化回路は回路固有の限界があって歪みはある値以下にはなりません。これは熱的な「慣性」を時定数として使っているためです。 もし、その時定数が無限大なら電球そのものは歪みの原因にはなりません。しかし、それでは振幅安定化もできません。相反する効果のバランスの上に成り立っているため完璧ではないのです。だから歪みが残留するのです。 それでもOP-Ampを選べば0.01%以下の歪み率が得られます。 それに、0.01%以下の歪み率と言うのはかなり良い数字です。 何がしか対策しなければ、1%以下の歪み率を得るのは簡単ではありません。これは実際に発振器を作ってみれば実感できます。

 確実に0.01%以下の歪みを得たいなら、NE5532P、LM4562NA、NJM4580D、NJM2068DDが良さそうです。その上で、発振振幅を5〜7V(rms)にセットすれば良いでしょう。

 この表は特定の回路、特定の部品を使ったケースに於ける性能比較です。従ってまったく別の回路への適用には慎重さが必要です。

                 ☆ ☆ ☆

 超々低歪みとは言えないので少々中途半端かも知れません。 ほぼ同等の歪み:0.01%ならWien Bridge発振器でも可能なので特徴が見いだせない気がします。 ここでは豆電球を使った位相シフト型発振器の振幅安定方法を試してみました。この試みは、なかなか旨く行ったと思います。OP-Ampによる違いも明らかになりました。 OP-Ampと豆電球で作った場合、全般的に見てWien Bridge発振器よりも調整は容易な印象を受けました。 移相シフト回路はブリッジ回路ほどシビアではないからでしょう。そのあたりが特徴と言えそうです。

 振幅安定に豆電球を使った回路はシンプルで調整もいたって容易で、発振の起動も確実です。容易に低歪みが得られますから、歪みの評価手段を持たないときには有利かも知れません。

 悪くない回路なのですが、ネット上でポピュラーな2石の発振回路はトランジスタの選び方によっては発振が旨く起動しないことがありました。簡単そうに見えても意外に手強いこともあるようでした。 OP-Ampを使う方が難しそうに見えますが、発振回路としてはむしろ容易です。配線を間違えなければ一発で0.01〜0.02%くらいの低歪み発振器が作れます。 自身の定番として登録(記憶)しておくことにしました。(笑)

 ところで、この Blogはセカンドバージョンなのです。 OP-Ampを使った部分は完全に入れ替えています。 最初、タカをくくって(今になって思えば性能が悪すぎる)μA741CHを2つで試作してみたのです。一旦はその結果でBlogを纏めました。 しかし結果を振り返えればドライブ能力が低いのは歴然で、3V(rms)で0.1%の歪みがやっとと言う有様でした。 それでも2石の回路から見れば1/10なのですが、いま一つ釈然としません。μA741CHの選択は『失敗』と言えるでしょう。 しかし旨くなければやり直せば良い訳です。 そこで選択肢の多いDualタイプのOP-Ampで再試行したのです。 その結果OP-Ampを選ぶことで大きめの出力が得られ歪みも更に一桁減らすことに成功しました。 もはや部分修正では済まずセカンドバージョンに書き換えることにしたのです。 きちんとした性能を出すには回路と素材の吟味が大切だと言うアナログの基本を再認識した思いです。簡単で程よい性能が得られる「正弦波発振器」として纏めることができました。

 やるべきテーマは他にも沢山あるのですが、あまりにも特殊な実験は一般性がありませんし、また要素的すぎる実験では目的不明で面白くもないでしょう。 従ってシンプルでわかり易いテーマが主体になってしまいます。 まあ、これもやむを得ませんね。 今回も作る人は稀だろう思いますが、正弦波発振器を作りたくなったとき思い出してもらえたらと思っています。de JA9TTT/1

# 手持ちの豆電球にゆとりがあるので必要な方に差し上げます。作りたくなったらメールでもどうぞ。

(おわり)nm

2017年4月11日火曜日

【測定】Repair an oscilloscope CO-1303G

【測定器修理:オシロスコープ CO-1303G】
 【TRIO CO-1303Gとは
 おもにSSBでオンエアするアマチュア無線局のオンエアモニタ用として作られたオシロスコープです。AM局にもたいへん有益だった筈ですが、時代は既にSSB全盛になっていました。  CO-1303Gは1970年代半ばに販売された製品で、定価38,500円だったようです。(TRIOは現在のKENWOOD社)

 何がアマチュア無線局向きだったかと言えば、低周波の2トーン発振器を内蔵しており、さらに送信中の電波をピックアップする回路が付いているからです。 オンエアしながら自局電波をモニタするのにはたいへん便利です。

 当時、一般用として販売されていたCO-1303Dと言うオシロスコープに上記の発振器とRFのピックアップを追加したのがCO-1303Gなのです。 その後はデザインを無線機に合わせた「ステーションモニタ」と称する機器も販売されましたが、それらの前身となる測定器でしょう。

 現在では広帯域なオシロスコープがあるのでありがた味はありません。 しかしその当時数MHzが上限のオシロが普通だったので、CRT(←リンク)の偏向板にRFを引き込む「直接軸による観測」が一般的なRF波形の観測方法でした。 当時CRTの偏向板が引き出されたオシロスコープはたくさんありましたが、RFのピックアップ回路を作るのが面倒でした。CO-1303Gはその部分を内蔵しています。

 そろそろSSBが全盛になり観測には2トーン発振器が必須だったので合わせて内蔵したのでしょう。 スペアナのようにIMD特性まではわかりませんが、少なくともアンプが飽和してフラット・トップになっているとか、バイアス不適切でクロスオーバー歪が酷いなど、SSB波の品質は十分判断できました。

 オンエア中のSSB波をビジュアルに監視する目的には今でも有効でしょう。 交信中の相手局に「当局の音はどうですか?」なんて聞くよりも遥かに頼りになります。 お世辞抜きで電波の状態がわかりますからね。

                   ☆

 ほとんど記憶にありませんが20年以上前に中古品を手に入れたものでしょう。 高級なオシロを常時モニタに使うのは勿体ないですし消費電力も大きすぎます。それに冷却ファンがうるさいです。 CO-1303Gのような簡易なオシロは今どき「オシロとしての使い道」はあまり考えられません。しかしオンエアモニタ用なら十分活躍できそうです。

 購入当時はきちんと使えたと思います。 最近になってシャックの整理中に「発掘」したのですが久しぶりに灯を入れたら不調のようです。 今さら直しても仕方ないとは思ったのですが、半ば興味本位で修理してみました。 結論を言うと、オイルコンの全滅が原因でした。以下はその修理記録です。 たいして役立つとも思えませんが。(笑)

CO-1303Gの回路図
 姉妹機のCO-1303Dの回路図ならネット上で幾つも発見できました。 しかしCO-1303GはHAM用だったので販売台数が少なかったのでしょう。回路図は見付けられませんでした。 幸い手持ちの資料から回路図が見つかったので修理に役立ちました。但し殆どの部分はCO-1303Dと同じでした。

 このオシロは「強制同期式」のオシロスコープです。入力波形を管面に止めて見ることはできるのですが、時間軸(X軸)が校正されないため波形の周期や周波数を読み取ることはできません。それでも波形の良し悪しくらいなら十分良くわかります。 でも「強制同期式」のオシロなんていま一つですよね。(笑)

 ちなみに、今ある殆どのオシロスコープは「起動掃引式(トリガ・スイープ式)」のオシロスコープです。これは時間軸(X軸)が校正され、観測波形の時間周期や周波数を読み取ることが可能になるからです。 その昔、国産オシロのメジャーメーカーであった岩崎通信機は自社の「起動掃引式オシロスコープ」を「シンクロ・スコープ」と称していました。 そのため日本国内においては「シンクロ」の名が一般化していました。 ベテラン・エンジニアが「シンクロで波形を見ろ!」とか言ってましたね。 いまではオシロスコープと言えばすべて「起動掃引式」が常識です。 これはデジタル・オシロでも同様です。 オシロのことを「シンクロ」って言うのは年寄りだけでしょう。

 肝心の故障原因ですが、図の赤で囲ったコンデンサが劣化していました。 オイルコンが4つと電解コンデンサが一つです。 このオシロではオイルコンは図の電源回路部分に4つあるだけです。 従って、オイルコンは全滅と言う訳です。 ネット上にも同様の修理を試みる例が散見されますが、いずれもオイルコンの劣化(絶縁低下)によるものです。

 以前から喚起していますが、オイルコンは年数の経過で必ずと言って良いほど劣化するため使ってはいけない電子部品と言えます。 特殊なものを除けば、すでに生産されておらず、いま売られているのは怪しそうな長期在庫品だけです。そうしたオイルコンはすでに劣化済みか時間の問題です。

 話しは変わりますが、CO-1303Gの特徴は青矢印で示した部分です。図右上のRFピックアップ回路と、図下方のツートーン発振器です。 ツートーン発振器は低周波でありながら、LC共振回路を使った珍しい回路が使われています。GDMのようなコルピッツ型LC発振回路になっています。RF屋さんが設計されたんでしょうかね。(笑) CR回路よりもQが高いため簡単な割に発振波形は良いようです。 発振周波数は概略で1kHzと1.575kHzです。これはSSB送信機テスト用の標準的な周波数です。

 オシロスコープとしてのメイン回路はCO-1303Dとまったく同じで、プリント基板もそっくり流用しています。 垂直軸は入力にFET(2SK30-O)を使ったハイ・インピーダンスな差動形式の広帯域アンプで全段DC結合になっています。 また、水平軸(時間軸)はトランジスタを2石使ったノコギリ波発振器で作っています。 垂直軸アンプの最終段から信号を引き出してノコギリ波発振器に加えることで入力信号に同期が掛かるようになっています。たいへん旨く同期が掛かるので波形観測は容易です。 CRT(いわゆるブラウン管)は直径3インチ(75mm)でフラット管面の丸形です。75ARB31と言う静電偏向型のCRTが使われています。 安価なCRTなのでしょう。内面目盛りではないためスケールは少々読みにくいです。

 十分な輝度を得るためにCRTは1kV以上の高電圧が必要です。電源トランスの500V巻線を高圧整流用ダイオード2本で両波倍電圧整流しています。 偏向板へ直線性の良い十分な偏向電圧を与えるためにY軸の広帯域アンプ、及びX軸の掃引回路の出力部には約200Vの電源電圧を与えています。 このように半導体を使った測定器でありながら、かなりの高電圧を扱うため修理に当たっては感電に十分な注意が必要です。

警告:機器の修理は事故や怪我のリスクを伴います。自身の判断で十分気をつけて行なって下さい。修理の相談はご遠慮を。

 【音がして、やがて輝度低下
 故障確認中の様子です。 電源投入直後は輝線も見えて正常そうなのですが、やがてほとんど光らなくなるのです。

 直後の輝線が見えている状態でも、間欠的に「チッ」と言う放電のような音が聞こえます。やがてその放電音はしなくなりますが、輝線も消失するのです。

 このような症状から考えて、まちがいなく高圧電源部に放電現象などの不具合があるのだろうと当たりをつけました。 このオシロの高圧電源回路はごく単純な回路になっています。 従って部品数も限られるため全部を当たっても数は知れたものです。 放電音がしていたのはC124あるいはC125の0.1μFで耐圧1,000Vのオイルコンデンサらしいことを突き止めました。写真は故障箇所を分離するためにテストをしている様子です。一旦CRTを外さないと電源部分にアクセスできません。

C124とC125
 写真上方に見える2つの灰色の筒型が倍電圧整流回路に入っている0.1μF 1,000Vのオイルコンです。トランスの巻線電圧は500Vですから、 耐圧1,000Vなら十分な耐圧があります。

 しかし、オイルコンデンサは高耐圧品とは言っても劣化は免れず、年月が過ぎれば絶縁は低下します。 このオシロも製造されて40年くらい経過した筈ですから劣化してもやむを得ないでしょう。20年くらい前には使えていたのですから良く持った方かも知れません。

 少々耐圧不足なのですが、定格以上の実力(?)を見込んで実験的に630V耐圧のフィルム・コンデンサ(青色)に交換して様子を見ている様子です。(安全を見込めば750V以上の耐圧が必要) 直りそうでしたので、この部分のコンデンサを交換することにしました。 しかし修理に使えるような1kV耐圧のコンデンサは手持ちにありませんのでどうしましょうか・・・・

 【オイル漏れ発見
 いちばん怪しそうだったC125を撤去してみたら、べっとりとオイルが漏れていました。

 絶縁が低下して漏れ電流がかなり流れたのでしょう。だいぶ発熱したらしく、膨張してオイルを噴いたようでした。

 幸い、漏れたのは絶縁性のオイルですから腐食の心配はありません。良く拭き取っておけば大丈夫です。 なお、古い電気製品ではPCB含有のオイルコンが使われていることがあります。 このCO-1303Gが作られたころには使用禁止になっていましたからPCB入りではないでしょう。

 【セラコンで補修
 近所に売っているお店はないし適当な高圧部品も手持ちにはありません。

 あちこち探していて見つかったセラコンを使ってC124とC125を交換しました。 0.1μF/500Vがあったのでシリーズ・パラで0.1μF/1kVを合成しました。 AC500Vの整流ですから十分な耐圧マージンがあるでしょう。

 手前の方に0.1μFで2kV耐圧と1.6kV耐圧のオイルコンが見えます。 これらも怪しいとは思ったのですが、とりあえず使えそうに思えたのでそのままで行くことにしました。もちろん交換用の部品があるなら無条件で取り替えるのですが、すぐには思いつきません。

が、しかし・・・・

オイルコンは全滅
 2つだけの交換では済みませんでした。 暫く通電していたら再び輝度の低下が発生です。 残っていたオイルコンも絶縁劣化で電流がリークしており、特に0.1μF・2kVの方が酷かったようで発熱で触れぬほどの高温度になっていました。物理的な破裂さえありそうなたいへん危険な状態です。

 1kV耐圧のコンデンサでさえ手持ちがないので困ったのですが、630V耐圧の0.068μF(フィルム・コンデンサ)ならたくさんあったのでこれを使いシリーズ・パラで合成することにしました。 安くない部品を12個も使うのはなんですが、まあ使わずに死蔵している方が勿体ないですから。w

 耐圧は1.9kVくらいになるのでまずまずですが容量は約0.045μFなので半減です。しかし負荷電流も少なそうですから何とかなるでしょう。 どうしてもダメなら正規の容量が手に入るまでの応急処置としましょう。 ちょっと心配でしたが様子を見た範囲では十分行けそうでした。

 【1.4kVを確認
 部品交換したら電圧くらいは確認しておきたいものです。 しかし一般的なテスタでは1,000V以上は測れないことが多いと思います。 正常であれば間違いなく1,000V以上の電圧になっているので、1,000Vレンジしかなければスケールアウトしてしまいます。

 デジタル・マルチメータなら1.99kVまで測定できる可能性もありますが、1kV以上は許容していないことが殆どなので耐圧オーバーで壊してしまうリスクを伴います。仕様を良く確認してから測定する方が良いです。

 ここでは5kVレンジがある米軍用テスタ:USM-223で測定しました。ご覧のような目盛りですから細かくは読めませんが、約1,400Vであることがわかりました。 USM-223はごく普通のメーター式テスタです。電子電圧計(VTVM)ではありません。内部抵抗は20kΩ/Vですから5kVレンジは100MΩの内部抵抗になります。十分大きいため、テスタを当てたことで起こる電圧降下による誤差は僅かでしょう。

 500Vの2倍電圧整流ですから整流後の電圧はその約2.8倍になっていれば正常です。従って、約1,400Vなら合格ですね。(注:対シャシ電圧ではマイナス1,400Vです。CRTの電源回路は負の高電圧になっています) なお、取扱説明書には約-1,300Vと書いてありました。

 半分くらいしか電圧が出ないときは、高圧整流用ダイオードの故障が疑われます。HVT-22Z-3と言うダイオードが使われていますが入手困難でしょう。 秋月電子通商で売っている「ESJA57-04」(←リンク)と言うダイオードで代替できます。できたらD107とD108の2つとも交換します。 参考ですが、こうした高電圧用ダイオードは順方向電圧が高いため一般的なテスタのダイオードチェックでは良否判定できません。簡易的には電流計と可変電源を使って調べます。

 【電解コンデンサも怪しいが
 オイルコンよりマシだと思っていますが、電解コンデンサも怪しくなっています。

 200V電源の平滑に使ってある47μF250Vのケミコンでゴム封止部分に液漏れの跡が見つかりました。念のため交換しました。外して確認したらリーク電流は大丈夫そうでしたが液漏れした痕跡のあるコンデンサは信用できません。

 横型(チューブラ型)の手持ちがなかったので、縦型を寝かせて使っています。 振動の多い環境や頻繁な持ち運びには不適当な実装方法ですが、シャックで使うなら支障ないでしょう。面倒ですけれどホットメルト接着剤で止めてしまえば一段と安心でしょうね。

ダメだったコンデンサ
 写真のコンデンサがダメになっていました。 結局、オイルコンは全滅です。 この製品が製造されたころ安価な高圧コンデンサと言えばオイルコンだったのでしょう。 何十年もの製品寿命は考えていませんから合理的な部品選定だった筈です。

 オイルを含浸した紙を挟んでアルミ箔を巻いた構造です。 構造・材質上、幾らか吸湿性があってそれが絶縁劣化の原因だと思います。 それでも国産品はかなり優秀だったのだそうです。 輸入機器に使ってあるようなオイルコンは日本の梅雨時を超すだけで劣化してしまう物さえあったそうです。 なお、オイルコン(オイル・コンデンサ)はペーパー・コンデンサ:紙コンデンサとも言われます。 またMPコンデンサも同類です。(MPと言うのはメタライズド・ペーパーの略) すべて紙を絶縁材に使ったコンデンサは絶縁性が悪くなる問題を抱えていることになります。

 今となっては「当面は大丈夫」であってもあえてオイルコン使う時代ではないでしょう。耐圧が必要なら高圧用のセラミック・コンデンサやフィルム・コンデンサを使うべきですね。(笑)

 低圧部分のケミコンにも劣化はあるかも知れません。 今のところ大丈夫そうですが、次々に壊れるかも知れません。 基板を点検していたら半導体のリード線が銀メッキの硫化で黒くなっていました。こちらも劣化の心配があります。 内部はホコリの堆積もなく、奇麗でしたが40年前の製品ですからいつどこが壊れても不思議ではありません。

参考:実際には電源部のほかにもう1カ所だけオイルコンが使われています。垂直軸の入力端子にあって、アンプをAC結合に切り替える部分に0.1μF630Vがあります。(部品番号:C1)このオイルコンも劣化が疑われますが、今のところ実害が無いのでそのままです。機会を見てフィルムコンデンサあるいはセラミックコンデンサに交換するつもりです。

 【ツートーン発振器
 修理とは関係ありませんが、CO-1303Gの特徴部分を見ておきましょう。 パネル面から見て右側後方に実装された2トーン発振器の基板です。 緑色の円筒が発振回路のコイルです。

 裏面からマイナスドライバを調整穴に差し込んで、2トーンのバランスと出力レベルが調整できるようになっています。

 SSB送信機(トランシーバ)の健康診断に2トーン発振器は必須です。 オシロスコープをシャックにおくようなHAMなら持っていてしかるべきです。 しかし今なら2トーン発振器はOP-Ampを使って簡単に自作できます。 あえてこうした機器を探す必要はありません。 それにCO-1303Gの発振波形はオシロでの観測用としては十分そうでしたが、スペアナでの観測用には満足できないと思います。 歪率の調整もできないので簡易な観測用と割り切るべきです。

RFピックアップ回路
 電力の大きな送信機から安全にRF信号を引き出すのは意外に難しいものです。 このピックアップ部はCRTの直近に置くことでRF信号を長く配線で引き回さないことを前提にうまく作ってあります。

 (昔の)JARLやARRLのハンドブックなどを見るとM結合で取出す例が載っています。 使い物にはなりますが、あまりスマートな方法ではありませんでした。

 この回路ではC結合で直接ピックアップし、さらに直列容量(結合容量)をスイッチで切り替えることで適切な観測振幅になるよう考えてあります。 HF帯から50MHzあたりで使うのならアンテナ系のSWRにはあまり影響を与えません。

 この部分は自作でも真似できそうですが、ピックアップ部はオシロの近くに置かなくてはなりません。 写真下の部分に見える2つのM型コネクタに送信機とアンテナあるいはダミーロードを繋ぎます。 上の左方にあるRCAジャックは低周波2トーン信号の出力端子です。

                  ☆

 よく考えてあったとしても、普通に設計された電子機器が数10年を経て正常に働くとは考えにくいでしょう。 せいぜい10〜15年くらいが設計寿命だった筈です。 40年も前の機器を使ってみようなどと思う方が酔狂なんです。(笑)

 しかし、電子部品すべてが劣化する訳ではありません。 経年劣化し易い部品さえ交換してやれば意外に機能・性能を取り戻せます。 ただ、そのなおした機器が現代に通用するか否か・・と言う部分が大いに問題でしょうね。既に時代は終わってますから。 結局、直してみるのは面白いけれど実用性はありませんでしたと言うオチになりそうです。古い機械の修理なんて所詮そんなものです。

 このオシロはSSBのオンエア・モニタくらいならそこそこ実用になります。 あるいは、近ごろ流行のAM局の変調度モニタにも最適です。 深い変調でありながら、過変調にならぬよう直接見ながら管理できます。 SSBやAMなんて40年前から変わっていませんから役立つのも当然かも知れませんね。 ジャンク(危険ゴミ)になるハズだったんですから、保管などせずに積極的に使いましょう。ずっと使っていてCRTが焼けて来たところで惜しくもないでしょう。 de JA9TTT/1

(おわり)fm