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2018年5月29日火曜日

【回路】Frequency Counter Design, Part 3

【回路設計:周波数カウンタの設計・Part 3】
 【入力アンプと波形整形
 カウンタ用LSIを使ってみる第3回です。
前回(←リンク)は6種類のカウンタ用LSIを周波数カウンタとして使ってみました。 使い方はわかったのですが、実用の周波数カウンタにするには欠けているものがあります。 Part 3ではそれを補って完結させます。

 カウンタ用LSIはC-MOSのデジタルICです。従って扱える信号の波形は決まっています。 ここでは5V電源で使っていますから、カウンタ用LSIにはLowレベルが0V(=GND)で、Highレベルは約5Vの矩形波(くけいは)で与えます。 しかし、測定対象の信号は振幅はまちまちですし、波形も矩形であることはむしろ稀です。 周波数カウンタの入力アンプ部分は小さすぎる信号を増幅し入力信号の波形を矩形波に整形する役割を持っています。 測定範囲となる周波数帯域で十分なゲインを持ったアンプが必要です。またきちんと矩形波に波形整形できないとミスカウントが起こり測定誤差の原因になります。

 前回のBlog、Part 2(←リンク)で扱ったカウンタ用LSIのカウント上限周波数は高いもの(TC5032P)でも17MHzくらいでした。 多くは5MHzにさえ届きません。これではアマチュア無線局のニーズばかりでなく高周波の実験・研究には不十分です。 上限周波数はプリスケーラの付加で伸ばすこともできます。しかし測定分解能や使い勝手を考えるとカウンタ本体だけでなるべく高い周波数まで測定できるようにしておくべきです。 したがってカウンタ用LSIだけで周波数カウンタを構成したのではだめです。 カウンタ用LSIの前に高い周波数までカウントできる補助のカウンタ回路を設けて目的を達成します。 回路は難しくなく、ここでは1段と2段の例を紹介します。

                   ☆

 単にカウンタ用LSIを使ってみたいという興味からスタートしました。 それは済んだのですが、せっかくなので実用になる周波数カウンタにまとめます。 残念ながら主役のカウンタ用LSIはどれも生産中止(ディスコン)です。 新たに部品を集めて製作するには向きません。しかし手持ちがあれば活かせるでしょう。 またこのPart 3で扱うプリアンプ部分はマイコン式の周波数カウンタでも必要になるものです。 マイコンの採用でカウント部分は作り易くなっても、プリアンプと波形整形部が良くないと使いやすい周波数カウンタにはなりません。ここは今でも研究テーマとして面白いところです。

 以下、この特集の最終回になります。 ここだけを単独でご覧いただいても用をなさないでしょう。 もし初見で興味を覚えたらPart 1(←リンク)に戻ってご覧ください。

 参考として、末尾にPart 1で扱った周波数カウンタ用の制御回路の最新改良版・・・現時点ではこちらを推奨・・・を紹介しています。 それでこのBlogテーマ:「カウンタ用LSIを使ってみる」はオシマイにしたいと思います。(質問・意見などあれば続きを出すかも知れません。→つづきができました)

入力アンプ・波形整形ブロック
 入力アンプと波形整形回路です。 測定対象の周波数範囲で十分なゲイン(増幅度)を持ち、小さな信号でも周波数測定できるようにします。

 しかし、誤動作との兼ね合いからむやみに増幅するわけにも行きません。 ゲインは数10倍〜100倍くらいが適当なようです。 この程度のゲインは1MHz以下の低周波なら簡単です。しかし数10MHzまで平坦に増幅するのはけっこう難しいものです。 はじめはfTの高い個別トランジスタを使った広帯域アンプを作ってみました。 その結果、まずまず使えそうなものができましたが周波数特性がビジュアルにわかる測定器・・・例えばTG付きスペアナやネットアナ・・・がないと調整は難しそうです。 部品のレイアウトや構造も微妙に効いてくるので再現性の点で今ひとつだと感じました。

 そこで広帯域増幅用のICを使ってみました。 回路図のμA733はたいへんポピュラーな広帯域増幅用ICです。 周波数特性はフラットとは言えませんが、ほぼ無調整で周波数カウンタ向きの広帯域アンプが作れます。 特別な測定器ナシでも大丈夫ですからこうしたICを使うのがアマチュア向きです。 それにしてもμA733はあまりにも古めかしいので初めはもっと新しいアンプを試していました。 ところが比較的新しいICの方がむしろ入手難とわかり、古臭いのは承知の上でμA733を使うことにしました。 μA733を+5V電源だけで使うのはメーカーの推奨範囲外(少し低すぎる)ですが周波数カウンタのプリアンプ用には十分使えます。性能は多少悪くなりますが低い分には壊れるようなこともありません。

 μA733は1970年代のデバイスです。アナログICの黎明期の製品です。 セカンドソースもたくさん存在しました。従って古い在庫もたくさん残っているでしょう。 しかも今でも生産しているメーカーがあってDig-Keyのような部品通販で簡単に手に入るのです。単価は200〜300円くらいです。入手困難なレトロなICではありません。

 試してみて採用候補だったMMICよりもμA733の方が入力インピーダンスが高いので使い易いです。フル差動増幅回路なのも良いところです。 調べたらもう少し新しい類似チップにNE592があって、これも733と同じように使えます。(後述)

 低周波帯から増幅できるようアンプ部は途中が直結回路になっています。その関係で波形整形との間にレベルシフトが必要でした。 レベルシフトにはLEDを使っており、ここは順方向電圧:Vfの関係から普通輝度の赤色か緑色のLEDにします。 (青色や白色はVfが大き過ぎてうまくありません)なお、LEDはあまり光りません。

 この回路例はどちらかと言えば高周波に向いています。 低周波の測定では信号レベルによって誤動作することがあります。 低周波〜1MHzが主要な用途ならそれに特化したアンプを作ると安定に測定できます。目的によりアンプ部分を最適化すると良いです。

 波形整形には初めからシュミット・トリガ形式になっているIC、例えば74HC14などを使う方法もあります。 ここではゲート回路に使って余っている74HC00を使って作りました。 回路定数の加減は多少クリチカルでしたが良いところを見つけるとうまく波形整形してくれます。 ノイズで誤動作せず感度も適当な位置にVR101を調整します。 製作時に一度調整すれば十分で頻繁に行なう必要はありません。

アンプ部拡大
 周波数カウンタは高い入力インピーダンスが好まれるようです。 個人的には数kΩでも良いと思うのですが、FETを使ったバッファアンプを前置しておきました。 FETは2SK19(GR)あるいは2SK192A(GR)を使います。Yランクでも良いです。 ソース・フォロワですから2SK241、2SK439、2SK544などの内部カスコード型MOS-FETは向いていません。 ごく一般的な高周波用J-FETが良くて、例えば秋月で安価に(@20円)販売されているBF256Bなども適当です。

 広帯域アンプのμA733は手持ちから14ピンのDIPタイプを使いました。 10ピンのCANタイプでもOKですがピン番号が異なるのでデータシートを参照します。 また8ピンの面実装型もあってこちらもピン接続に注意が必要です。 いずれを使っても十分な性能が得られますが基板化して面実装部品で作るとより高性能化できるでしょう。

  写真では入っていませんが回路図のようにFETのゲート部分にはダイオード(2個)を入れて過大入力から保護します。 それでもパワーが数100mW以上の送信機の出力をいきなり繋げばアンプが焼けてしまいます。 必ず絞ってから測定しましょう。

 さるお方(OMさん?)から周波数カウンタの修理を頼まれたことがあります。 送信機とカウンタを同軸ケーブルで直結して周波数測定したのだそうです。その送信機は100Wだったらしく、みごとにカウンタのアンプ部が燃えてました。これ笑い話ではなくホントにあったことです。 10Wや100Wのパワーともなればダイオードで保護する程度では守りきれません。

 送信周波数を測定したいのでしたら、同軸ケーブルの先に50mm径くらいのワンターン・ループ式ピックアップ・コイルを付けたもの作っておくと便利です。 ピップアップ・コイルを無線機やアンテナの近くに持って行けば安全に周波数測定できます。

広帯域アンプ用IC
 μA733はアナログICの教科書にも載るほどポピュラーな広帯域増幅用ICです。 ただしHAMの自作で使う機会はほとんどありません。 幾つか持ってはいたものの長いことパーツボックスに眠っていました。 年月の経過で足ピンに少々サビが出ていましたが支障なく使えました。(笑)

 このICのオリジナルはフェアチャイルド社のμA733Cです。 良い設計だったのでしょう。セカンドソースがたくさん登場して、例えばナショセミのLM733Cなども同じように使えます。 セカンドソースは各社とも型番の一部が「733」になっています。

 733系の広帯域アンプは現在でも生産されています。さすがに面実装型が主流でしょう。 もちろん写真のような14pin DIPや10pin CANタイプと同様に使えます。 ただしピン配置はパッケージによって違います。 データシートはネットで探せます。

NE592でも
 μA733系よりもう少し新しい広帯域増幅用ICとして旧・シグネティックス社のNE592があります。 シグネティックス社はなくなってしまいましたが、ONセミコンダクター社で継続生産されているようです。 他のメーカーでもセカンドソースを作っていたと思います。 NE592はいまでもMouserのような部品通販で購入できます。

 上記写真のものは面実装型8pinですがデータシートによれば14pin DIP型もあります。  内部等価回路を見るとゲイン設定の部分を除けばμA733とほとんど同じですから互換品と考えて良いでしょう。ゲインは外付け抵抗で変えられるので支障はないのです。

 確か頂き物ですが、SOPパッケージ 8pinのものがあったので変換基板に載せて比較してみました。(左写真) ピンピッチは1.27mmですからハンダ付けは容易でした。  広帯域増幅のICは自己発振しやすいものです。 写真のように変換基板上でVccとVeeピンの間にバイパス・コンデンサを付けておきます。これで安定に増幅してくれるようになります。
  8pinのものはゲイン調整端子のG2AとBが引き出されていませんが、G1AとBを使えば同じようにできます。 その違いでゲイン調整抵抗:R103=47Ωはいくらか加減した方が良いかもしれません。47Ωではゲイン過剰気味なので100Ωくらいが適当でしょう。 比較して見ると調整の感触もμA733と違わず同じように扱えました。 周波数特性も同じようでした。

 733型よりも新しいチップなのですが秋葉原では入手しにくいかもしれません。 頂いたものがあるのでお裾分けします。ご希望があればご連絡でもどうぞ。

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高速カウンタブロック
 カウント可能な上限周波数をアップするには、カウンタ用LSIの前に高速なカウンタICを追加します。 ゲートを通った後に追加すれば、測定分解能を犠牲にすることなく上限周波数をアップできます。

 回路図のFig.1は1段追加するものです。 上限周波数が高いTC5032PやμPD851Cに良いでしょう。 上手に作れば50MHzあたりまで楽々測定できるようになります。 この部分には10進カウンタの74HC390もしくは74AC390を使います。 74AC390の方が上限周波数を伸ばせるのですが、低い周波数で誤動作の可能性もあるので74HC390の方が扱い易いようでした。

 TC5001Pほか、上限周波数が低いカウンタ用LSIにはFig.2のような2段構成のカウンタを追加すると効果的です。 これでTC5032Pをしのぐカウント上限周波数が得られます。 同時に、表示桁数も2桁増えるので便利になります。

 74HC390や74AC390はまだ普通に手に入ります。 ほかにLS-TTLの74LS390も使えます。 ただし出力信号の論理レベルが不足するためプルアップ抵抗を付加する必要があります。 具体的には1段のものではピン7番とVdd=+5Vの間に4.7kΩを、2段のものでは9番ピンとVdd=+5Vの間に4.7kΩを入れます。 このようにすればLS-TTLとC-MOSが混在できます。(LS390を使うのならデコーダ・ドライバの4511Bとの間でもプルアップ抵抗が有ったほうが良く、様子を見て追加します)

 デコードと表示器ドライバには4511Bを使います。 4511Bは表示器ドライバの機能だけでなく、ラッチも内蔵しているので便利です。 昔のカウンタ回路では1桁あたり、SN7490→SN7475→SN7447と言う3つのICが必要でした。 4511Bは7475+7447と同等の機能を内蔵するため一つ少なく済みます。 4511BとLED表示器の間の抵抗器は必ず調整が必要です。 これはダイナミックドライブで点灯する上位の桁とでは輝度に差が出るからです。 使用するLEDの種類や色によっても最適な抵抗値は異なるため実際に輝度を見て合わせます。 少し面倒ですが集合抵抗器を使いソケットに載せて交換できるようにしておくと良いです。220Ω〜1kΩの範囲で数種類あればちょうど良いところが見つかります。 なお、LED表示器は一桁分が独立したカソード・コモン型を使います。

 補助カウンタはメインカウンタの回路図にあるAーA'の部分を切り離して間に入るように追加します。 この部分は表示全体の最下位の桁、もしくは下2桁になります。 カウンタ用LSIで表示する方が上位の桁です。 間違えないようにLED表示器を並べてください。

 言うまでもないと思いますが、こうしたカウンタ回路を必要な段数だけ重ねれば、カウンタ用LSIがなくても周波数カウンタが作れます。部品数は増えますが専用のICは要りません。

高速カウンタの一例
 74HC390は手持ちが切れていたので写真に撮れませんでした。 写真下の74AC390の方が高い周波数まで動作します。最高カウント周波数を伸ばすには最適です。

 ただし加える波形が綺麗な矩形波でないと誤動作します。 74HC390の方が使い易いのでお勧めです。  そのほか、中央の74LS390も同じように使えますが、C-MOSに信号を渡すには既に書いたようにプルアップ抵抗が必要です。 それさえ注意すれば同じように使えるのでLS-TTLも十分に活用できます。 HC390やAC390が入手しにくいなら74LS390が代替候補になります。

 最上段はLED表示器用のデコーダ・ドライバ:4511Bです。 なお、前回のBlogで簡単に紹介したTC5022PあるいはTC5002Pにはラッチの機能がないのでご注意を。 代用できません。 74HC390との間に74HC75などを使ったラッチ回路を挟む必要があります。 従ってあまりお勧めしません。

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最新改良版・カウンタ制御回路
 制御回路を小改良したので紹介しておきます。 カウンタ用LSIのテストでは、周波数カウンタの機能を司る「制御回路」としてBlogのPart 1(←リンク)で製作したものを使いました。 機能だけでなく、性能的にも支障はないのですが、1秒ゲートを作る部分が少し気になっていたのです。

 実験していて74HC161でプログラマブル・カウンタを試したことを思い出しました。 完全同期式で追加するゲートICも少なかったことを思い出したのです。  そこで、実験ノートを参照したところ任意の進数のカウンタが簡単に作れることがわかりました。もちろん11進や101進も作れます。 さっそく101進で試したところたいへん旨く動作しました。 しかもクロックパルス(10mS)に同期して動作しますから、Part 1の回路のように74HC161のリセット・パルスがゲートタイムに食い込むこともありません。

 Part 1で紹介の回路でも実用上の支障はありませんが、原理的にこちらの方がいくらか高性能です。これから作るならこちらをお勧めしたいと思います。 追加の部品は74HC161とデジタル・トランジスタ:DTC114Eが各一つです。74HC10は不要になりました。

完全同期型101進カウンタ部
 同期型の101進カウンタです。 10mSのパルスを101カウントします。 そのうち100カウント分を1秒ゲートに割り当てます。 残った1の分、10mSをラッチとリセットに割り当てることになります。

 Part 1(←リンク)の回路では1秒ゲートのサンプリング周期は1.1秒でしたがこの回路では1.01秒に短縮されました。 まあ、0.09秒の短縮ではほとんど感じませんが・・・。

 簡単な説明です。 74HC161は同期式のプリセット付き16進カウンタで、2段カスケードにすると256進カウンタになります。 カウントが255を超えるとオーバーフロしてキャリーが発生します。 そのキャリーが発生したタイミングで256-101=155をプリセット・・・これはクロックに同期してロードされる・・・してやります。プリセット値はもちろん純2進で与えます。(155=&B1001 1011)
 カウントは155から始まり、パルスが100個入るとキャリーが発生し、101個目でプリセット値がロードされます。この動作を繰り返して101進カウンタとして動作します。 そのキャリーの発生からロードまでのパルス幅はちょうど1クロック分の10mSです。それを反転したものが1秒ゲートになります。
   プリセット値さえ変えてやれば何進にもできます。 余談ではありますがマイコンで欲しい数の差数を計算し出力ポート経由でプリセットすればプログラマブル・カウンタとして使うことができます。しばらく前にそのような検討をしたことがあったのでした。

 原理的には74HC161をもう一つ足して、1001進カウント式にすることもできます。ただし伴ってラッチやリセットのパルスも狭くする必要があります。 そうなると回路変更が大幅になるうえ実用上のメリットは希薄ですから101進でやめておきました。(笑)

 この写真では右に74HC04が写っています。 実験途中のものです。 インバータひとつ追加のためにICを一個足すのも勿体無いので上記回路図のようにやりくりして済ませました。 ゲート開閉モニタのLEDは必ずしも必要としません。デジタル・トランジスタ:Q1 (=DTC114E)でLEDを点灯している部分はお好みで付けて下さい。

 74HC161のリセット動作がどうなっているのか、高速オシロでパルス幅を見るまでもなく、こちらの回路の方が確実です。 精神衛生(?)の上からもお勧めできると思います。もう「リセットパルスの幅が20nSで・・」と深夜にうなされる心配はありません。(爆)

10MHzで検証
 実際のゲート開閉時間を見るのが一番なのですが、ちょっと面倒なのでカウンタ動作の比較で検証しておきました。

 カウンタ回路の表示が10.000000MHzになるときの入力周波数を読んでいます。 4.4Hzほど高く必要でした。 これは、時間基準にしているSPG8651Bの周波数誤差がそのままそっくり現れています。 Part 1の11進式だったものと比較して、10MHzでは1〜2Hzの違いが現れる可能性があります。 SPG8661Bの周波数変動もあるので厳密な比較は難しいのですが、改造直前は10.0000062あたりだったので10.0000044なら概ね計算の範囲でしょう。もともと実用上支障のない精度と言えますが気持ち程度に改善されています。これ以上を求めるなら基準周波数の発生にTCXOやOCXOを採用すべきでしょうね。基準周波数の精度を上げただけ測定精度が向上します。

 この周波数カウンタ用の「制御回路」はカウンタ用LSI専用という訳ではありません。 LS-TTLやHC-MOSを並べて構成したような周波数カウンタにも使えるのはもちろんです。

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 きちんとした測定器にまとめるには電源部を製作する必要があります。 すべての回路が+5Vだけで動作します。 電流容量は300mAもあれば十分すぎるくらいです。 AC電源を内蔵するなら電源部は8V0.5A程度の電源トランスと+5Vの3端子レギュレータで簡単に作れます。 ACアダプタを利用する方法もあります。出力電圧が9VくらいのACアダプタを使い+5Vのレギュレータ部分以降を作ります。 周波数カウンタの自作で一番の難関は収納ケースの板金加工かもしれませんね。

 カウンタ用LSIを試用すると言う目的から周波数カウンタの設計に深く踏み込んでしまいました。 過去に何台か作っていますので目新しくもないのですが、制御回路や入力プリアンプの部分は面白かったです。 各種カウンタ用LSIもこの機会に使い方をまとめておくことができました。 単独の測定器として「周波数カウンタ」を作る機会はもうないと思いますが、何かの発振器とか周波数表示を伴う機器の一部として製作する可能性が無いとも言えません。 そんな時にまとめた結果が役立ってくれるでしょう。

 何でも安価な既製品が溢れている昨今です。 買ってしまえばお手軽かもしれませんが、原理もわからず使うのも何となく癪です。 手間も費用もかかりますが自作が可能なものなら作ってみるのも悪くないと思っています。 「作る」ことから新たな発見もあるでしょう。 実際、何か作ることで得られるものは多いものです。 これはお金では買えません。 ではまた。 de JA9TTT/1

このBlogのPart 1はこちら(←リンク)
さらに、Part 2はこちら(←リンク) 
そして続きのPlus Oneはこちら(←リンク) ラジオカウンタ用LSIを扱っています。

(おわり)fm

2018年5月15日火曜日

【回路】Frequency Counter Design, Part 2

回路設計:周波数カウンタの設計・Part 2
カウンタ用LSIのテスト
 カウンタ用のLSIを使ってみる第2回です。
前回(←リンク)は周波数カウンタの心臓部とも言える制御回路の設計と試作を行ないました。 周波数カウンタ用の標準的な制御回路として考えておいたのでどのカウンタ用LSIでもうまく動作するはずです。 もし何らかの問題が見つかればその都度対策しましょう。

 では、さっそく本命の「カウンタ用LSI」を実際に動作させてみたいと思います。

☆以下のような順で全部で6種類についてテストしました。

(1)TC5032P(東芝)・・・これで6桁の周波数カウンタが作れるので便利です。
(2)TC5001P(東芝)・・・東芝の5000シリーズで最初に登場した4桁のカウンタ。
(3)MSM5502(沖)・・・16ピンの小型パッケージで4桁のカウンタを実現。
(4)TC5037P(東芝)・・・MSM5502と類似ですがオーバーフローがないのが欠点。
(5)LC7961(三洋)・・・デコーダとLEDドライバを内蔵している4桁のカウンタ。
(6)μPD851C(日電)・・・4・1/2桁の多目的指向のカウンタIC。

・・・・以上、前回のBlog冒頭に登場したカウンタ用LSIです。それぞれ具体的な回路として製作し、使用する上での注意や使ってみた感想など交えてまとめました。

                   ☆

 すでに専用ICが周波数カウンタの製作にもてはやされる時代は終わっています。 ですから今さらの感もあるのですが、手持ちのICを試してみたいという興味から始めました。 ただし本格的に製作する意図はないのですべてブレッドボードで作ります。 制御回路やLED表示回路の部分は共通して使います。従って6種類とは言っても手早く試すことができるでしょう。

 こうしたICの時代も過ぎ去ったからでしょうか? ネットで検索しても設計に使える情報が見つけられないICもありました。 いずれICチップは持っていても情報がないので使えなくなる時がやって来るかも知れません。 手持ちの資料と合わせて新たに得た情報を繋ぎ合わせることで何とか実用回路にまとめることができました。この機会に全てのLSIについて具体的な回路を示して使い方を紹介しておくことにしました。大げさかも知れませんがある種の「技術遺産」になるかも知れません。ここに公開しておけばいずれarchive.org(リンク)が拾いにくるでしょう。

重要各カウンタ用LSIの評価はすべて同じ条件で行ないました。 制御回路は前回のBlogで紹介の回路を共通して使います。 また、電源電圧はすべて:Vdd=5.0Vとしています。 電源電圧アップでカウント上限周波数の多少のアップも見込めますが行ないませんでした。 現在ではより高い周波数まで確実に動作する高速C-MOS ICが容易に入手できます。  電源電圧アップを試すよりも、もともと上限周波数の高い高速カウンタを付加する方法が良いでしょう。(高速カウンタ:74HC390や74AC390など多数あり)

以下、かなり長いので適当に「つまみ食い」されてください。


その1:TC5032Pを使う
 TC5032P(東芝製)は28ピンの大きめのICです。 このICで6桁の周波数カウンタが作れます。 写真は同じ東芝のデコーダ・ドライバ用IC:TC5022BPを使ってLEDを点灯させている様子です。 TC5022BPは6と7と9の字体が写真のようになっています。それがわかるような周波数を与えて表示させています。(679.000kHzという訳です)

 後ほどTC5022BPではなく、より一般的な(入手し易い)デコーダ・ドライバである4511Bを使った例を示します。 比較して見るとこうした字体の方が日本人には馴染むように感じます。 もしTC5022BPの手持ちがあれば使ってみたら良いでしょう。 ただし、後ほど書いてあるようにリーディング・ゼロサプレス機能(不要な上位のゼロを表示しない機能。以下ゼロサプレスと略)が必要ならデコーダ・ドライバは4511Bに限ります。 TC5022BPではゼロサプレスがうまく機能しないのです。(TC5022Pと4511Bは同じピン数ですが差し替え可能な訳ではありません。配線の変更を要します)

TC5032Pを使ったカウンタ回路
 TC5032Pをメインにして、デコーダ・ドライバのICとしてTC4511Bを使った周波数カウンタの回路例です。 TC5032Pの桁ドライブ信号は負論理で出ています。どちらかと言えばアノード・コモンのLED表示器向きにできています。 しかし、ここではカソード・コモンのLED表示器をすべてのカウンタ用LSIで共通に使います。 従ってそれに合わせて桁ドライブ信号を反転する必要があります。信号の反転に4049Bを使っています。

 ダイナミック・ドライブ方式で数字表示器を駆動している関係で「小数点」の点灯は意外に厄介です。 表示器の小数点の引き出しピンを単純にVccなどへ接続してしまうと全部の小数点が点灯してしまいます。 正しくは図のようにします。 まず、点灯させたい小数点がある桁の桁ドライブ信号でトランジスタ:Q1をドライブします。 そのトランジスタで小数点のLEDを点灯すれば旨く行きます。ダイナミック・ドライブの配線になっていても大丈夫です。 小数点の輝度は直列抵抗:R1で加減できます。この例では他のセグメントに比べて暗かったのでR1=47Ωにして電流を増やしました。
 以下参考ですが、アノード・コモンの表示器を使う設計も可能です。その時はデコーダ・ドライバにLS-TTL ICのSN74LS47を使います。 さらに桁ドライバもμPA81Cではなくて、PNPトランジスタをハイサイド側(Vcc +5V側)に入れる形式にします。 なお、74LS47を使った場合もゼロサプレスは旨く動作しないのでご注意を。←訂正:ゼロサプレスできます。
TC5032Pはフル6桁表示です。 またカウント上限周波数も実測で17MHz以上と高いため、他のカウンタ用LSIよりもだいぶ高性能です。 したがって高速C-MOSで構成した前置のカウンタを1段設ければ上限周波数が100MHzを超えるような周波数カウンタも作れます。 実際に7桁の周波数カウンタとして自作したことがあり、これは十分実用になっています。  上限周波数を伸ばすために「プリスケーラ」を使うことも可能なのですが信号を分周した分だけ測定分解能も悪くなります。

端子接続について:
 各接続端子の番号は前回のBlog(←リンク)で製作した「制御回路」と合わせてあります。 回路のJ1とJ6は電源端子です。J1に+5V、J6はGND側(電源のマイナス側)です。 P2、P3、P4、P7、P9は制御回路のJ2、J3、J4、J7、J9へ同じ番号どうしを接続します。 J8とJ10はプリアンプ回路と波形整形回路・・・次回のBlogで予定・・・のP8とP10へ接続します。 ゲート回路部分にあるA-A'という部分は、補助の高速カウンタを追加するための箇所です。補助の高速カウンタについても次回のBlogで予定します。

部品について:
U1:メインになるカウンタ用LSIです。TC5032Pは言うまでもないので説明は省きます。
U2:μPA81CはNPNのダーリントン・トランジスタが7回路分入ったようなICです。  NPN型のデジタル・トランジスタ(一例←リンク)を必要な数(この回路では6個)使って代替できます。入手できないときは代替すればOKです。
U3:TC4511B(東芝)は4500シリーズの標準C-MOS ICです。オリジナルはモトローラのMC14511Bで、他社のセカンドソースでも同じように使えます。ほかに74HC4511も使えます。
U4:4049Bは6回路入りのインバータです。4000シリーズC-MOS ICの標準的なものです。 4069Bも同じように使えますがピン接続が違うので注意します。
U5:74HC00はHC-MOSのNANDゲートICです。各社から販売されています。ここは高速信号を扱うので4000シリーズのNANDゲート:4011Bは不適当です。必ず高速C-MOSの74HC00を使います。回路図には余ったゲートの処理が書かれていませんが、使用していない入力ピンはGNDするなりVddにつなぐなり適切な処理を行なっておきます。
DS1〜DS6:LED表示器は7セグメントでカソード・コモン型を使います。ここでは赤の表示器(参考←リンク)を使いました。 点灯方式はダイナミックドライブ式なので、できるだけ高輝度のものを選びます。R9〜R15(100Ω)を変えることで明るさを加減できますが100Ω以下にするのはあまりお薦めしません。緑色や青色のLED表示器も使えます。

デコーダは4511Bで
 上に書いたように、ゼロサプレス機能を活かすためには、デコーダ・ドライバのICに4511Bを使う必要があります。

 4511Bを使うと、6と7と9の字体は写真のようになります。 慣れの問題なので使っているうちに違和感もなくなりますがこのような字体です。

  7セグメント表示の字体について気になったので身の回りのデジタル表示の機器を観察したところ、7はこの写真のような文字が大半のようです。6と9はTC5022Pの字体が一般的になっているようでした。

 ところで、なぜTC5022BPではうまくゼロサプレスができないかというと、TC5032Pのゼロサプレス機能は 4511Bの機能を利用しているからです。 4511BへBCD入力として、9以上の値を加えると表示はすべて消灯になります。 しかしTC5022BPはBCD入力が10のとき0、11のとき1・・・15の時には5の文字を表示するのです。9以上の値を加えてもLEDは消灯しません。
 調べたところTC5032Pは不要なゼロの桁には「15」(16進で言えば "F")を出力しているようです。 したがってTC5022BPを使うとゼロサプレスではなく不要なゼロの代わりとして「5」が表示されてしまうのです。知らなかったのでこれにはビックリしました! TC5022BPの姉妹品にTC5002BPというデコーダ・ドライバがあります。こちらは4511Bと同じ字体で表示しますが表示機能はTC5022BPと同じなのでゼロサプレスは正常に働きません。 知らずに使うと悩むことになります。 TC5032PとおなじTC5000シリーズのICなので良さそうだと思ったのですが・・・。

ゼロサプレス
 ゼロサプレス機能はTC5032Pの22番ピン(BC端子)をどのように接続するかによって変化します。 単純にLow(=GND)に接続すると全ての桁がゼロサプレスされますから、無入力でカウント値がゼロだと全桁が消灯してしまいます。

 写真では 22番ピン(BC端子)を桁ドライブ端子の/T6(6番ピン)に接続しています。 このようにすると最下位桁はゼロサプレスされずにゼロの数字が残ります。 完全に消灯してしまうと故障と間違えるので、このようにするのが良いでしょう。 なお、22番ピン(BC端子)を/T5(5番ピン)に接続するとこんどは下2桁のゼロがサプレスされなくなります。 また、ゼロサプレスが不要な時は 22番ピン(BC端子)をHigh(=Vdd)に接続します。

 ゼロサプレス機能は必須ではありませんが、表示が減る分だけ消費電流も減るので電池動作の場合には効果的です。 好みの問題かも知れませんが、周波数カウンタの用途ではゼロサプレスはナシでも良いと思っています。



その2:TC5001Pを使う
 TC5001はカウンタ用のLSIとして古くからありました。初期のころは金メッキの足で白いセラミック・パッケージに入っていたと思います。かなり高価だった記憶があります。 24ピンの大きめのパッケージです。 古くからあっただけに応用例もよく見かけます。 私も過去に使ったことがあります。

 4桁のカウンタが作れます。 桁ドライブ信号はHighアクティブです。したがってTC5032Pのように信号を反転する必要はありません。具体的には4049Bの部分は不要になります。 そのほかの機能はTC5032Pとよく似ていますが、ゼロサプレスの動作は異なるようです。 単にゼロサプレスするか、しないかだけの選択しかできないようでした。

 ここでもデコーダ・ドライバは4511Bを使っています。

TC5001Pを使ったカウンタ回路
 TC5001Pを使った周波数カウンタの回路です。 表示は4桁です。

 ゲートタイムが1秒のときは9.999kHzを超えるとオーバーフローします。 ゲートタイムが1mSのときは表示的には9.999MHzまで可能なのですが、実際にカウント可能な上限周波数は約4.2MHzです。 これではHAM用には上限周波数が低すぎます。 TC5001Pの前に高速カウンタを1〜2段付加する必要があるでしょう。 1段で30MHz程度、2段付ければで上限周波数が100MHzを超えるような周波数カウンタも作れます。 さらにプリスケーラも併用すればGHz帯まで幾らでもお好みで。(笑)

回路図の各端子の接続、および使用部品に関してはTC5032Pの項と同じです。 そちらを参照してください。

最高カウント周波数は?
 写真はカウント上限周波数の信号を加えている状態です。 上限付近はやや不安定なので実用上はこれよりもやや低い・・・10%くらい低い周波数までと考えた方が良さそうでした。これは他のLSIでも同様です。

 電源電圧を高くするとカウント上限周波数をアップすることができますが、どの程度までアップできるかは個体差があるようです。 なお、TC5001Pの電源電圧だけをアップしてもだめで、リセットやラッチ回路も合わせて電圧アップする必要があります。 仮にTC5001Pだけ電圧アップさせて試すことも可能と思われますが、リセット信号などの振幅が足りないので正しい使い方ではありません。

 TC5001Pは高性能とは言えませんが、機能がすっきりしていて使いやすいカウンタ用LSIだと思います。 いくつかICを補ってカウント上限周波数をアップすれば実用的な周波数カウンタが作れそうです。 過去にこのICをメインに使った周波数カウンタの製作記事をよく見かけたものです。 それだけに持っているお方も多いのでは?

#思い出したのですが、TC5001Pで貨車の通過両数を数えるカウンタを作ったことがあります。 操車場で使う機器の一部だったようでした。 アルバイトで請け負ったもので最終的に国鉄(JR)に納品されたようでした。



その3:MSM5502を使う
 MSM5502は沖電気のカウンタ用C-MOS LSIです。写真のように16ピンパッケージに入っており、デコーダ・ドライバの4511Bと同じサイズです。 コンパクトさにどれほどの意味があるのかはわかりませんが、ピン数が少ないので配線が簡単と言うメリットはあるでしょう。

 MSM5502で4桁の周波数カウンタが作れます。 桁ドライブ信号はHIghアクティブです。したがってインバータICで反転することなく桁ドライブ用のIC:μPA81Cを駆動できます。これはTC5001Pと同じです。

 沖電気の500シリーズC-MOS ICの一つです。 このICは自作品での使用例がほとんどなくてネット上でも情報の収集は困難でした。 沖の500シリーズC-MOSが盛んに使われた時期もあったのですが、RCAの4000シリーズと完全互換とは言えないため廃れたのでしょう。沖電気自身も完全なセカンドソース路線の方が得策と見てか一般的な4000シリーズのC-MOSへシフトしたようでした。 そうした関係で資料もあまり残らなかったのかもしれません。手元に古いデータブックがあったと思うので探したのですが発見できませんでした。もう使うこともないと思って廃棄してしまったのかもしれません。 やむなくわずかな使用回路例などから推測し、とりあえずの使い方はわかりましたが未だに正規のデータシートは手に入っていません。 (使い方はわかったのでもう必要はないのですが・笑)

MSM5502を使ったカウンタ回路
 MSM5502を使った周波数カウンタの回路です。 表示は4桁です。 内蔵のダイナミックドライブ用のスキャンオシレータはCRの外付けが不要なので非常にすっきりしています。

 4桁の表示なのでゲートタイムが1秒のときは9.999kHzを超えるとオーバーフローします。 オーバーフローは発生しますがもちろんカウント上限周波数までカウント動作します。オーバーフローで溢れた桁が表示されないだけです。溢れた分はゲートタイムを1mSに切り替えれば読めます。 ゲートタイムが1mSのときは表示的には9.999MHzまで可能なのですが、実際にカウント可能な上限周波数は約2.0MHzでした。 従ってHAM用にはカウント可能な上限周波数が低すぎます。(次項参照) 実用にするならMSM5502の前に高速なカウンタを1〜2段付加する必要があるでしょう。 1段で20MHz程度、2段付ければで上限周波数が100MHzを超えるような周波数カウンタも作れます。 このあたりは上限カウント周波数が低い他のカウンタ用LSIと同じです。

 このLSI単独でゼロサプレスの機能はありません。MSM561という同じ500シリーズのICと数個のゲートを補うと実現可能なようです。ただしMSM561(デコーダ・ドライバ用のIC)は入手難で詳細な資料も見つけられないため代替方法の検討はできませんでした。

 回路図の各端子の接続、および使用部品に関してはTC5032Pの項と同じです。 そちらを参照してください。

最高カウント周波数は?
 カウント可能な最高周波数は約2MHzでした。 今回試したカウンタ用LSIでは最も低い値です。

 おそらく、製造プロセスが古いC-MOSなのでしょう。 初段のカウンタ部分に特別な配慮も行なっていない設計だったのでしょう。 そのため上限周波数が低めなのはやむを得ないと言えそうです。 ただ、当時の技術ではかなり頑張ってもせいぜい5MHzくらいが上限だったはずです。

 当時のC-MOSロジックは「低速ではあるが非常に低消費電力である」というのが最大の売りでした。 早い必要がある部分はTTLやECLに任せれば良いという考えだったと思います。 従ってMSM5502のようなIC単独で周波数カウンタを構成することは現実的ではなく、高速部分には他のロジックファミリを補えば良いと割り切っていたはずです。 既にTTLやECLも廃れているので実用的な周波数カウンタにするのでしたらHC-MOSなどを補うのが現実的でしょう。

 コンパクトかつシンプルで使いやすいため悪くないICなのですが、おそらく入手困難になっているでしょう。あえて探すようなものではなく、手持ちにあるなら活用する程度になっていると思います。



その4:TC5037Pを使う
 TC5037PはMSM5502とよく似た感じの4桁カウンタです。 ただし欠点があるのでいま一つ人気はありません。

 パッケージは16ピンですからデコーダ・ドライバの4511Bと同じサイズです。 MSM5502はスキャンオシレータを完全に内蔵したため外付けのCRは不要でした。 しかしTC5037Pは外付けCRが必要なのでこれだけで足ピン3本を消費します。 そのためでしょうか? カウンタのオーバーフローを知らせるピンが削られてしまったようです。 困ったことに周波数カウンタに使うとカウントがオーバーフローしているのがわからないといった致命的な欠点があるのです。 これがHAMの自作でもまったくと言えるほど使われない理由だと思います。

 写真はカウント上限周波数です。 約3.7MHzまでカウントできました。 TC5001Pと同じくらいまで使えますので、これでオーバーフローさえあれば・・・と言った感じでしょうか。
 
TC5037Pを使ったカウンタ回路
 オーバーフロー(オーバレンジ)しているのがわからないのでは実用上たいへん不便なので使われないのもわかる気がします。ここでは試用にあたりその対策を考えてみました。

 結果から言ってしまうと、要するにオーバーフロー検知のために補助のカウンタを外付けするのです。 もっと知的な方法も考えられるかも知れません。 例えばマルチプレックスされて出力されるデータをデコードしてオーバーフローしそうになる条件を見つけて状態の遷移を監視する・・・というロジックも考えられなくはないでしょう。 しかしそうそう単純ではないうえ、少々の外付けのICを補う程度では完全なオーバーフローの検知は難しそうです。 それをするくらいなら「インチキ」な手だと誹りをうけるかも知れませんが補助のカウンタを補う方がずっとスッキリします。

 4桁のカウンタに4桁分+αのカウンタを足すのですから屋上屋を重ねるようなものです。しかしTC5037Pの機能が無駄になったわけではありません。内蔵の表示器ドライブ機能は完全に活用していますからあんがい悪くない手だと思うのです。 安価なC-MOS ICを3つ足すだけでイマイチ人気のないTC5037Pの欠陥が解消できるのですから・・・。

 その他の回路はMSM5502などと同じです。 また、回路図の各端子の接続、および使用部品に関してはTC5032Pの項に準じます。 そちらを参照してください。

オーバーフロー対策
 たかがオーバーフロー検知のためだけにカウンタを足すのは馬鹿げたことかもしれません。 しかしこれが最も簡単な手段と思いました。 C-MOSの4518Bを2つ補います。4518Bは高価なものではなく、一つ数十円で手に入ります。

 写真には74HC73が写っていませんが途中段階で撮影したためです。 確実なオーバーフロー検知という意味では上記回路図通りに74HC73の追加が必要でした。 外付けで付け加えたカウンタICもリセットする必要があるのでそのような配線になっています。 また74HC73はリセットの論理が逆なので逆方向のリセットパルス(制御回路のJ5の方)を使ってリセットします。

 10進カウンタが2つ入っている4518Bはこれまで何気なく使ってきましたが、カスケードに接続する時は注意が必要でした。 入力パルスの前縁でカウントされるのか、後縁でカウントされるのかという違いがあります。その使い分けに注意が必要でした。 一般的に後縁(ネガティブエッジ)でカウントするカウンタICが多くて、TC5037Pもそのようになっています。 従って4518Bも同じように動くよう配線する必要があります。 外付けのカウンタに4518Bではなく74HC390を使えば余計なことを考えずに済むのでベターかもしれません。(足ピンの接続は異なります)

 TC5037Pですが、オーバーフローの問題から使い道のないチップだと思ってきました。 その状況は今でも変わりないのかもしれませんが、工夫(?)することで前途がいくらか開けたように思います。 これでTC5001Pと同じように使えますから。



その5:LC7961を使う
 あらかじめお断りしておきますが、LC7961は入手の可能性はほとんどゼロでしょう。 ずいぶん前にS社の友人にもらったものです。 ポピュラーではなかったですし活用例もまったく見たことがありません。当然ディスコンでしょう。 秋葉原では見かけませんけれど三洋電機系の半導体商社のどこかに眠っている可能性もないとは言えません。しかし望み薄でしょうね。

 LC7961を使うのは初めてでした。 あまり特徴のないLSIだと思ったのですが、デコーダ・ドライバまで内蔵しているため非常にスッキリしたカウンタ回路が実現できました。 デコーダ・ドライバまで内蔵ですから数字の字体が気になります。 実際には6、7、9の数字は写真のようになりました。

 他のLSIも同じですが、表示はダイナミック・ドライブ形式です。 そのためデータシートには「表示が暗いので・・・云々」と書いてあります。 1980年代のチップでしょう。その当時のLED表示器はダイナミック・ドライブで使うとかなり暗かった印象があります。そのため注意書きが添えられていたものと思います。

 現在ではLEDの高輝度化、超高輝度化が進んでいるので表示が暗いという不満はあまり感じないのではないでしょうか。 ここで使用している中華LED表示器もまずまずの輝度でした。3桁のダイナミック・ドライブ用で、PARA LIGHT社のC-533SR(←リンク)を使っています。秋月電子通商にて単価200円で購入しました。

 これから新規に購入されるのでしたら4桁の超高輝度タイプがお薦めです。必ずカソードコモン型を買ってください。 購入する際は同じシリーズの単体の(1桁の)表示器も数個買っておくと後々活用できます。

LC7961を使ったカウンタ回路
 LC7961は20ピンのやや大きめの4桁カウンタ用のLSIです。 特徴はデコーダ・ドライバを内蔵していることでしょう。他のLSIのように4511Bを必要としません。

 回路図のように他に必要なのは桁ドライブのICだけなので非常にスッキリしています。 桁ドライブの方も4桁分しか使っていないので、μPA81Cではなくデジタル・トランジスタ(一例←リンク)を四つ使えばICはLC7961一つだけになります。 その方が部品の入手性も良くなります。

 ゼロサプレス機能があって、ONするとカウンタの内容がゼロの時には最小桁のゼロだけが表示されます。 このLSIは複数個重ねて使うことも考慮されていて上位桁のチップは全桁ゼロサプレスすることもできるようになっています。 ここでは単独で使用する想定の配線になっています。

  制御回路との接続は他のカウンタ用LSIと同じです。 TC5032Pの項に準じますのでそちらを参照してください。 オーバーフローがギリギリ発生する状態を検出するためには74HC73を追加すると効果的でした。部品は増えますが最初からそのように設計しておく方が良いかも知れません。(74HC73の追加に関してはTC5037Pの項を参照)

最高カウント周波数は?
 カウント上限周波数は約3.6MHzでした。 データシートによればVdd=5Vで使うと500kHzまでとなっています。 あまり期待していなかったのですが意外に伸びてくれました。

 もちろん、HAM用の周波数カウンタには低すぎますので補助のカウンタを補うべきでしょう。 LC7961は外付け部品が少なくて回路が簡単なのでそれを活かすべきです。 1桁分の補助カウンタを追加する程度で済ませるのも良いかもしれません。 カウント上限周波数は30MHzくらいになると思いますがそれでほとんどの用途で不自由しないはずです。

 回路が「簡単」という意味では一番なカウンタ用LSIです。 手に入れば注目しても良いLSIかも知れません。 ちょっと残念ですが手に入らないのは仕方ありませんね。



その6:μPD851Cを使う
μPD851Cはデジタル・ボルトメータやデジタル・パネルメータを目的に作られたICではないでしょうか。 2重積分型のA/Dコンバータを作るのに適しているようです。 だからと言って周波数カウンタが作れない訳ではありません。 ほかにセラミック・パッケージのμPD851Dというのもありました。基本的なスペックは同じです。

 最大19999表示・・・すなわち4・1/2桁のカウンタ回路が作れます。 28ピンのパッケージに入っています。 計数途中の状態を出力する端子が複数あるほか、それぞれの出力端子がどのような条件で出力されるのかをコントロールできるようになっています。 ただし、それらの機能は周波数カウンタとして使う際にはほとんど必要としません。 それにマイコンではありませんからあまり自由度はありません。

 桁ドライブはTC5032Pと同じくLowアクティブなのでインバータICで反転してやる必要があります。 また、4・1/2桁というのはいかにも中途半端なので最上桁の表示は使わないで4桁表示だと思う方が使い易いようでした。 オーバーフローの出力は、9999を超えると出力されるものと、19999を超えると出力されるものの2種類があります。 9999で使うか、19999で使うのかで選択します。(回路図のP9-1またはP9-2で選択)

μPD851Cを使ったカウンタ回路
 μPD851Cを使った4・1/2桁の周波数カウンタ回路です。 最上位の桁は0と1の表示しかされません。 19999を超えると20000にはならず、再び00000から始まります。 もちろんこの時にはオーバフローが出力されます。

 しかしわかりにくいので9999までのフル4桁のカウンタだと思って使う方が使い易いと思います。 その場合は/T5(ピン17)への配線を省略します。当然ですがLED表示器DS1も不要です。 最初から4桁表示用のLEDを使えば良いと思います。 なお、μPD851CのリセットはLowアクティブです。ほかのLSIとは逆なので制御回路のJ5端子に接続します。

  その他の制御回路との接続は他のカウンタ用LSIと同じです。 TC5032Pの項に準じますのでそちらを参照してください。 使用部品の説明も同じです。

最高カウント周波数は?
 データシートによれば10MHzまで動作しそうですが9MHzあたりがカウント上限周波数でした。 データシートの回路例では、電源ピン:Vdd(14番ピン)のバイパスに特別な配慮が必要そうに見えます。

 もちろん、最短距離でバイパス・コンデンサを入れる必要があるのは他のカウンタ用LSIでも同じです。 しかしμPD851Cも同様であって他のLSIよりも特別にクリチカルという訳ではないようでした。 電源のバイパスを強化してもカウント上限周波数が改善すると言った効果はありませんでした。 10MHzというのは保証値ではないようですからこんなものでしょう。

 カウント上限周波数はTC5032Pに次いで高いのですが、HAMの用途にはやはり不満でしょう。 前置のカウンタを1〜2段付加する必要があります。

 ブランキング・インプット(BI)端子:ピン13を制御するとゼロサプレスが可能です。 セロサプレスするかしないかだけの選択のようなのであまり使いやすくない感じでした。

 μPD851Cも既に入手性は悪いようです。あえて探して使うほどのチップとも思えませんので、手持ちがあれば使うと言ったところではないでしょうか。



タイムベースの精度は?
 周波数カウンタの測定精度は基準となるタイムベースの周波数精度に依存します。 ここで使った制御回路では周波数の基準にプログラマブル・水晶発振器:SPG8651Bを使っており、その1kHz出力を基準にしています。 SBP8651Bは100kHzの水晶発振子を内蔵しそれを分周して1kHzを得ています。

 写真はこの1kHzをpHz(ピコヘルツ)のオーダーまで読んでみたものです。 実測によれば約0.58ppmほど高いことがわかりました。 SPG8651Bのスペックは±5ppmとなっていますが実際はそれよりもかなり良い精度でした。 もちろんこれは常温付近での測定ですから仕様書の温度範囲全体ではもっと誤差は大きくなるでしょう。 しかしなかなか優秀だということがわかりました。しばらく観測していましたが状態はずっと安定していました。

 SPG8651Bは表面の銘板(ふた)を剥がすとトリマコンデンサが見えるそうです。その調整で周波数を合わせられるようです。精度の良い測定手段をお持ちならやってみるのも面白そうです。 TCXOではありませんから限度はあると思いますが精度の向上が期待できるでしょう。

 タイムベースの周波数誤差がプラス方向だと周波数カウンタとしては同じだけマイナスの測定誤差が現れることになります。 実際にもTC5032Pのカウンタ回路に正確な10MHzを加えて測定したところ6Hz前後低く表示されました。  まったくの無調整で10MHzにて-6Hzの誤差ならたいへん良い精度と言えます。 基準発振器にSPG8651Bを使った周波数カウンタも悪くないと思いました。 タイムベースとカウンタの制御回路についての詳細は前回のBlog(←前回のBlogへリンク)を参照してください。

                   ☆

 以上6種類のカウンタ用LSIについて、実際に回路を組んで試してみました。 周波数カウンタは単純な測定回路ですからどのLSIでもたいした違いはありません。 しかし使う上では多少の注意は必要そうでした。 それぞれ幾らか個性もあるのですべてを回路図に纏めておくことにしました。 ご覧になってご質問や気づいた点などあればお知らせください。更新に反映したいと思います。

                  ☆ ☆

 あまり使うアテのないLSIを試すなんて意味はないなんて言われそうです。 それは否定しませんが、いつか使おうと思いつつパーツボックスに眠ってきた部品でたっぷり楽しむことができました。 同時に現時点で得られた情報を整理することにも繋がりました。

 古くから自作を楽しんで居られるのでしたらカウンタ用LSIを一つや二つくらいお持ちではありませんか? もしお気に入りの周波数カウンタをお持ちでなければこの機会に製作されてはいかがでしょう。 無線機の自作にもたいへん役立つ基本測定器が自ら手作りできます。 一連の情報でカウンタ用LSIが部品箱から救われ自作の役に立ってくれたら嬉しいです。

 それでお薦めのカウンタ用LSIはどれかと問われれば、TC5032Pの一択になってしまうのですが他のチップでも大差はありません。 いずれにしても補助のカウンタを前置する必要があって、結局どれでも同じになってしまうのです。 手持ちがあるならソレを存分に活用するのがベストですね。 あえて手に入れるならもっとも安価なもので十分でしょう。

 最後になりますが、前回のBlog(←リンク)で製作した周波数カウンタ用の「制御回路」はいずれのカウンタ用LSIでも支障なく使えました。 共通して使用できることを確認していますのでお奨めできると思います。 使用感もなかなか良好でした。

 次回のPart 3(←リンク)では入力アンプと波形整形回路を扱います。カウント上限周波数を伸ばすために付加する補助カウンタも実例があります。 これらは実用的な周波数カウンタに纏めるために必要な部分です。 周波数カウンタの回路研究や製作に興味がわいたようでしたら続けてご覧ください。 入力アンプと波形整形回路はマイコン式の周波数カウンタの製作でも活用できるでしょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

つづく)←リンクnm