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2018年7月13日金曜日

【回路】Making a DVM with Green LEDs

【回路:緑色LED表示のDVMを作る】
 【高輝度Green LED
 緑の数字表示器といえば蛍光表示管がポピュラーです。明るくて目に優しい色合いなので長く使われてきました。

 しかし蛍光表示管はやっぱり真空管なのです。 フィラメントの加熱が必要ですし十分な輝度を得るには高い電圧を加えなくてはなりません。 あの緑色に未練は残りますがそろそろ交代を考えても良いのではないでしょうか。

  ずいぶん前から発光ダイオード:LEDにもGreenはありましたが、何となく寝ぼけた色合いですし、輝度もだいぶ低かったのでした。 刺激的で目に優しくないと言われつつも赤色のLED表示器が多かったのも仕方ないでしょう。 少しマシなオレンジ色も使われましたが今ひとつでした。

 最近はLEDを使った信号機が増えてきました。 いつも通過するたびに思うのですが、何とも魅力的な「青信号」だと感心していたのです。 あんな色合いの数字表示器があればいいのに・・・と。 それがありました!

                   ☆

 最近手に入れた緑色の数字表示器を使ってみたいと思ったのが出発点です。 周波数カウンタでも良かったのですが、今回はデジタル電圧計を作ることにします。
 単純に数字表示器を光らせるだけでは面白くないでしょう? 4桁の数字表示器ですから時計でもと思ったのですがデジタル電圧計にしました。 その方が実験っぽいでですからね。(笑) 例によってお暇ならお付き合いを。

デジタル電圧計のパーツ
 電圧計の製作に使ったICです。 メインのICはMP7138というDVM用のチップです。

 MP7138の入手は困難でしょうから詳しくは書きません。 2重積分型のA/D変換回路とデジタル表示のための回路を内蔵した専用のICです。よく覚えていませんが試作品を頂いたものだったと思います。 類似のICとしてはインターシル(現・Renesas Electronics社)のICL7137があります。 それとだいたい同じような機能を持っていると考えたら良いです。

 表示はダイナミックドライブ形式で外付けのデコーダ・ドライバが必要です。ここではC-MOSのTC4511BPを使っています。 桁ドライブが正論理なのでLEDはカソード・コモン型を使うと簡略になります。 ここで使った4桁のLED表示器:OSL40391-LG(←秋月電子通商にリンク)はGreenのものですが、同じ形状でRedとBlueもあります。 桁ドライブにはTD62003AP(←秋月にリンク)という東芝製を使ってみました。前のBlogでカウンタ用LSIと一緒に使ったNECのμPA81Cとピン接続を含めてほぼ同等です。 もちろん、デジトラを4個使っても同じようにできます。

 MP7138は基準電圧源を内蔵しないため別途用意する必要があります。 メーカーのアプリでは1.2Vのバンドギャップ・リファレンスが使ってあります。 あいにく、1.2Vの基準発生用素子に良い物がなかったのでここではTL431を使うことにしました。 TL431系のICは少々温度係数が大きくて、こうした電圧計の基準には不適当ではないかと思ってきました。 そこで性能を確認した上で使うことにしたのです。詳しくはこのあと試してみます。

 MP7138はプラス5Vの他にマイナスの電源も必要です。 マイナス電源の消費電流はわずかで電圧も安定化しなくて大丈夫ですが必ず用意する必要があります。 メーカーの回路例ではC-MOSインバータを使った負電圧発生回路になっています。ここでは専用のIC:ICL7660CPAを使うことにします。(写真にはありませんが)

 【MP7138 を使ったDVM
 CADを使った図面の話ですが、今まで使ったこともないデバイスで回路図で書こうとするとデバイスエディタを起動して新規登録しなくてはなりません。 そうなると回路図を書き起こすのも面倒くさいのと、同じデバイスはどうせ手に入りませんから新規登録しても意味がありません。 手間を省いてメーカーのアプリケーション・ノートに書き込みした回路図で済ませます。 ここではどんな物かわかれば十分なので参考程度に見てください。

 MP7138自体かなり古いICなので応用例には見たことも聞いたこともないようなICが使われています。 DS8857というのはナショセミ社の7セグメント・デコーダ・ドライバでTTL構造のICです。ただし一般的なSN7447と違ってカソード・コモンのLED用なのです。 持っていませんし手にも入りませんから類似機能のC-MOSの4511BPで代替します。 桁ドライブには同じくナショセミ社のDS75492が使われていますが、こちらはNPN-Trのダーリントン接続が6回路分集積されただけのチップです。ここではTD62003APで代替しました。機能は類似ですがピン接続はもちろん異なります。

 鎖線で囲まれた74C04を使った部分は負電圧の発生回路です。74HCU04で代用可能と思われますが、ここではICL7660CPAという負電圧発生用の専用チップを使います。動作が確実で性能もずっと良好です。 まあデジタル電圧計としての性能には影響はないのですが。

 MP7138は2Vフルスケールと0.2Vフルスケールが選択できます。ここでは2Vフルスケールで作ります。 その場合、必要な基準電圧は1.000Vです。必ず安定している1.000Vを与えなくてはなりません。 回路例では MPS5010という自社製のバンドギャップ・リファレンスを使っています。 もちろん入手難なので代替します。 購入するまでもないと思って手持ちを探したのですが適当なものが見つかりません。 そこですこし温度安定度に心配がありますがTL431を使ってみようと思います。 TL431は2.5Vを発生しますので、1Vになるよう分圧して与えればOKです。

メーカーの推奨回路では珍しいデバイスが使ってありますが、回路を見ても特に難しい部分はないと思います。

 【電圧基準:NJM431L
 1.2Vのバンドギャップ・リファレンスはポピュラーなのでですが手持ちに適当なものはないので新たに購入する必要がありました。

 探していたらTL431系のチップならたくさんあることがわかりました。 ツェナーダイオードなんかたくさん使わないのと同じで、TL431もそうそう使うものではありません。たくさんあっても少々持て余し気味でした。

 基準電圧源としては物足りないのですけれど、まあ実験用には良いかもと思ってデータシートを見ていたら面白いグラフが目にとまりました。

 【NJM431Lの温度特性
 この図はNJM431L(新日本無線製のセカンドソース品)のデータシートに載っていたものです。 横軸は温度、縦軸が電圧になっています。 従ってカーブが水平なものほど電圧が温度変化に対して安定していることになります。

 このグラフは開発評価の際に特定の製造ロットについて代表的な特性をとった結果ではないかと思われます。 従って、一般に流通している現品もまったく同じ傾向があると考えるのは早計ではないかと思うのです。

 しかし、デバイスとしての傾向はこの図の通りなのでしょう。 この図では、端子間のブレークダウン電圧:Vzが2.500V付近のものが最も温度係数が小さく周囲温度の変化に対して端子電圧が安定していることを示しています。

 そうそう旨い按配にVz=2.500VのNJM431Lが見つかるとも思えませんが、たくさんある中には近い電圧のものがあるかもしれません。 実測してみる価値はありそうです。

 【TL431Cがオリジナル
 431系のオリジナルはTI社のTL431です。 手持ちにオリジナルメーカの製品があるなら合わせて調べる必要があるでしょう。

 このTL431Cは許容電力が大きなタイプなのでパッケージは縦長で大きくできています。 ツェナー・ダイオードの代替品として使う際に大きめの電流が流せるようにできているのです。 外形こそ大きいですが内部の半導体チップはあまり違わないサイズと思われます。

 こちらも幾つか手持ちがあったので選別の対象になりそうです。

 【TL431Cの温度特性
 調べてみたらオリジナルメーカのデータ・シートにも同じようなグラフが掲載されていました。 この例でもほぼ2.500VのグラフをみるとNJM431Lと同じような傾向を示すようです。 製造プロセスの違いはあっても等価回路は同じですからね、シリコンであることに違いはありませんし。

 やはりVz=2.500V前後のTL431Cが見つかれば良い結果が期待できるのかもしれません。 探してみましょう。

 今まで見過ごしてきたようなグラフですが改めて見直すと面白いものです。 ただし、このTI社のグラフも特定の製造ロットを調べた例ではないかと思います。 実際に手持ち品が同じような特性を示すとは限りませんよね。 それにそんなに都合よく2.500Vに近いものなど見つかるものなのでしょうか?

 【端子電圧で選別する
 想像しているだけでは本当のことはわかりません。 現物は手元にあるわけですから、実際に測ってみるに限ります。さっそくやってみましょう。

 回路電圧は使用時を考えて+5Vにします。 グラフの特性例では流す電流をIz=10mA と大きめにとっています。 しかしここで使うには10mAは大きすぎるのでIz=1mAで行きたいと思います。 データシートにある幾つかの特性グラフから判断してIz=1mAなら10mAとさして違わないようです。 従ってドロッパ抵抗は2.2kΩを使いました。(写真)

 並列に入れるバイパス・コンデンサは3.3μFにしました。 TL431は0.01〜2.0μFあたりの容量が並列に入ると発振するおそれがあります。 これは特に気をつけなくてはなりません。 とりあえず3.3μFなら安全な範囲です。 使用時には10μFくらい入れておくことにします。

#このような回路で端子間電圧を実測してみることにしました。

 【Vz=2.5V付近が良い
 NJM431LとTL431Cを実測して見たところ、Vz=2.500V付近のものならそれほど苦労せずに見つけられることがわかりました。 5つも測定すれば2.500Vに非常に近いものが見つかります。たくさん探す必要もなく簡単に見つけられました。

 そうそう都合よくVz=2.500VのTL431やNJM431が見つかるとは思ってませんでしたが何でも試してみるものですね。 この例では4mVほど高めですが、2.500Vに十分近い電圧です。 これなら期待できるのではないでしょうか?

 【冷やしてみる
 指先でつまんでみたのですが、体温で温める程度では電圧の変化は見られません。 今の季節ですから、これ以上室温を上げるのは勘弁してほしいところです。

 想像や印象だけで議論していても答えは見つかるものではありません。可能なことなら何でも試してみるべきです。 そこで保冷材を冷凍庫から調達してきました。 出してきた直後なら氷点下20度くらいでしょう。 少し経つと温度も上がると思いますがTL431の熱容量から見たら十分な冷却能力があります。

#保冷材を少々当てた程度では電圧の変化は認められません。当てたままで暫く放置しましょう。

 【冷却後の端子電圧
 保冷材を当てたまま5分くらい経過したら変化が現れました。 100μVほど電圧の降下が認められます。(数字の変化はこのDMMの量子化誤差ではないようです。室温に戻れば電圧も戻りますので)

 電圧を測定したあとで触ってみた感触ですが少なく見ても10度以上の温度低下が生じています。ずいぶん冷たくなっています。 控えめに見て仮に10℃の低下と考えると、-100μVの変化は-40ppmの低下ということになります。従って温度係数は+4ppm/℃くらいと言うことでしょうか。
 これは思っていた以上に良い数字です。 3・1/2桁で2VフルスケールのDVMの最小桁は1mVです。 これは500ppmに相当しますから+4ppm/℃など無視しても良いくらいです。周囲温度が±30℃くらい変化しても変動は目に見えないでしょう。 +4ppm/℃が問題になるのはずっと桁数の多い電圧計です。

 TL431の温度変化に対する端子電圧は300K(=27℃)付近を頂点とした上に凸の二次関数になっています。 従って傾斜は直線的ではありませんので何ppm/℃というのは不適当です。 しかし思いのほか安定しています。 これくらいの性能があるなら3・1/2桁のデジタル電圧計の回路には十分な性能でしょう。 いささか定性的な評価ではありますが、使えるのか使えないのかという判定に於いては「使える」と考えて良いでしょう。

  TL431はツェナ・ダイオードの代用品であって、それほど温度係数は小さく(良く)ないに違いないと思ってきました。もっぱらラフな用途向けだと思ってきたわけです。 しかし先入観に囚われず試してみるものですね。 電圧で選別すれば良いものがあります。 メーカーは保証しないでしょうけど中には「イイもの」があるんですから。(笑)

参考:では、2.500Vから外れた物はどうかと言う疑問もあるでしょう。簡単に実験しています。 2.500Vの物よりも幾分変動は大きいようですが意外に悪くありませんでした。 2.500Vから大幅に外れたような物ではなかったからでしょう。 定性的な評価なので数字は省きますが選別の効果はそれなりにあったと思います。

 【電圧計を作る
 部品の選定が済んだのでさっそくデジタル電圧計を作ってみましょう。 こんな感じになりました。

 面倒なのは表示器まわりの配線です。 ここでは初めからダイナミックドライブ用に作られたLED表示器を使ったので配線はすいぶん簡単にできました。 その副作用で極性表示の回路に決め手がなく、現状ではやむなく別途外付けのLEDで対応しています。 MP7138の極性表示のピンはダイナミックドライブ型の表示器向きにできていないのです。 下3桁は良いとして、極性表示の部分には専用のLED表示器を使うのが前提なのでしょう。 工夫してみたのですがどうもうまく行きません。 まあこのあたりは仕方がない感じです。バラのLED表示器を並べて作ればそれほど苦労もないでしょう。

 グリーンのLED表示器は順方向電圧が高いため電流制限抵抗は小さめにします。 ここでは表示が暗いことを恐れてやや大きめの電流を流すように設計しました。 約20mA/セグメントにしています。 ダイナミックドライブですので、6〜7mAくらいのDC電流で使うのと同じ程度の輝度になるでしょう。

 実際にはこれでは電流が大きすぎたように思います。 周波数カウンタの時と違って桁数が少ないため、LED一つあたりに割り当てられる時間が長いのも原因です。 眩しいくらいの輝度になりました。 実用品にするときは半分以下の電流に減らすべきだと思います。 なにせ現状では直射日光下でも楽々見えるくらい明るいんですから。 緑のLEDは暗いと言うのは昔の話なんですね。

#GreenのLED表示のデジタル電圧計と言うのも良さそうです。

 【MP7138の周辺
 積分コンデンサやオートゼロ用コンデンサ、電荷の保持用コンデンサなどすべて安価なマイラ・コンデンサを使っています。

 ポリプロピレン(PP)コンデンサほか、手持ちにあったフィルム系のコンデンサを色々試してみました。 PPが一番良さそうでしたが3・1/2桁程度のDVM回路なら写真のようなマイラ・コンデンサでも十分そうでした。 積層セラコンは端子間電圧によって容量変化があるのではうまくありませんがフィルム系のコンデンサなら大抵のものが使えそうです。

 変換クロックは10kHzで、内蔵のCR発振器を元に得ています。 無調整ではライン周波数と完全には同期していないようです。ACラインの誘導を除去する性能が幾分良くない感じです。 できたら調整式にしておくと良さそうでした。 理屈の上では2重積分型はAC電圧の誘導には強いのですが、変換サイクルがAC電圧の周波数とうまく合っていないと本来の性能が発揮できません。 表示がばらつく原因になります。 3,000カウントが一回の変換サイクルになります。クロックは10kHzですから、1サンプリングは0.3秒です。(3.3回毎秒)

いくらか改良すべき点もありますが測定値は安定しており十分実用になる性能です。

基準電圧と負電源
 写真のように基準電圧にはTI社のTL431Cを使いました。もちろんJRCのNJM431L(2.5V選別品)でも同じようでした。 どちらでも問題なく十分な性能が得られます。

 こうしたDVM回路ではあまり使用例を見ませんがTL431系のICがうまく使えることがわかりました。 これは今回の収穫です。もっと積極的に使いましょう。 並列のコンデンサを大きめにすることでバンドギャップ・リファレンス固有の広帯域ノイズもあまり気にならない程度にできます。 3・1/2桁のDVMにはまったく支障ありません。

 写真のように負電源:-5Vの発生にはインターシルのICL7660CPAを使いました。外付けの電解コンデンサ、10μFが2つ必要ですがプラス5Vから簡単にマイナス5Vを作ることができます。 秋月電子通商にはTJ7660というHTC製(中華民国:台湾)のセカンドソース品が売られています。同じようにに使えます。 コイルを使ったDC/DCコンバータと比べて電流容量は小さいのですが、こうした用途には十分です。ノイズも比較的小さいのでちょっとした負電圧が欲しい時には使いやすいデバイスです。

Greenは綺麗
  フルスケールの1.999Vを加えて表示しています。 1.999Vを越えると、最上桁の1が点灯するだけで、下3桁はブランキングされます。 正にオーバーレンジしたのか、負にオーバーレンジしているのかは極性表示のLEDを見れればわかります。

 実は見たままに写真撮影するのが難しかったです。 従って写真で表現するのは難しいのですが、このLEDの色は昔の緑色LEDと違って明るい青緑色です。LED式信号機の青を思い出してもらえば適切でしょうか。非常に美しいです。 蛍光表示管の色合いに近い感じもしますが、もう少し「固い感じ」のする緑色とでも言ったら良いでしょうか。 だいぶ輝度を下げてやり、グリーンのフィルタを掛ければ蛍光表示管に頼っていた用途を十分置き換えられます。 例えば置き時計などにはとても美しいのではないでしょうか? 蛍光表示管好きにもお薦めできると思います。  赤色も嫌いではありませんが緑はやっぱり綺麗ですね。

                  ☆

 緑のLED表示器を切り口にしてデジタル電圧計を扱いました。 こうした電圧計回路は専用LSI化されていますし、今ではパネルメータの完成品が安価に販売されています。 もはや作る機会はないのかも知れませんが作ればそれなりの面白さ(苦労も?)も味わえます。 多レンジのデジタル電圧計ともなれば校正手段が問題になるので自作する人も限られるとは思います。しかし一度は作ってみるのも良いかもしれません。1,000円で買えるくらいのマルチメータに10,000円以上掛かるかも知れませんけれど。(笑)

 オールイン・ワン形式でLED表示のDVMチップ(例えばLCL7107など)では消費電力の関係からチップ自体の温度上昇が大きくて内臓の基準電圧源では安定度が十分得られないことがあるそうです。 そんな時は外から基準電圧を与えれば精度の向上が期待できるでしょう。 3・1/2桁程度のDVMならTL431C・・・ただし要選別ですが・・・が十分使えますので試してみる価値があります。

 せっかくなのでデジタルパネルメータのような完成品に纏めたくなってきました。 コンパクトに作るには手間が掛かりますが、そのあたりをどうするのか旨いアイディアでも浮かんできたら考えてみましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm