連日ディスコン部品の追悼Blogのようになっている。 そろそろ2SK241(東芝)の番が来たようだ。 だいぶ前に製造は中止になっていて、いよいよ流通在庫も底をついて来たようなのだ。 代替品(正しい日本語の「だいたいひん」と読んで下さい。教養がわかります)であった2SK439(日立)や2SK544(三洋)は一足先に入手難であり、他に同等品はないと思うので対策を検討すべき状況だ。
もちろん2SK241の表面実装型も存在し、同じ東芝から2SK302と2SK882が出ている。いずれも中身のシリコンチップは同じらしく、規格上の違いは最大ドレイン損失くらいだ。 各FETの最大ドレイン損失:Pd(max)は、2SK241=200mW、2SK302=150mW、そして2SK882=100mWである。これはパッケージサイズによるもの。表面実装してドレイン側に広めのランドを作れば2SK882でもPdを大きくすることは可能だ。但し、用途はもっぱら小信号増幅なのでPd=100mWであっても支障はない。従ってPd(max) の違いが問題になることはまずないだろう。いまのところ表面実装品の少量入手は目処が立っていないので、これが解決すべき第一の課題かもしれない。
重要:このBlog記事は2010年ころの状況に基づいて書かれたものです。部品の供給状況は時々刻々と変化しており年数の経過により現況を示してはいないと考えられます。内容を参照される際は必ず現在の状況も調べることをお奨め致します。(2017.12.01)
重要:このBlog記事は2010年ころの状況に基づいて書かれたものです。部品の供給状況は時々刻々と変化しており年数の経過により現況を示してはいないと考えられます。内容を参照される際は必ず現在の状況も調べることをお奨め致します。(2017.12.01)
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写真はRF用FETのディスコン・トリオである。 左から2SK439(日立)、2SK241(東芝)、そして2SK125(SONY)だ。参考のためにゲート・ドレイン・ソースのピン接続を記入しておいた。以下,それぞれの代替方法など気付いた所をメモしておく。(ディスコン:ディスコンティニュー=Discontinue=生産を継続しないの意味。要するに廃番製品)
【1】2SK125: 写真右の2SK125についてはU310あるいはJ310と言う、原型になったVishay-Siliconix製ほかが海外から入手できる。先祖に帰ってそれを代替品にすれば良い。むしろ、かつての6m ManたちはU310やJ310のプリアンプに憧れたほどだ。そのU310やJ310の憧れを国産で(安価に?)実現したのが2SK125だから、今となっては入手が容易な方を使えば同じと言う訳だ。なお、表面実装派には同じ中身のSST310もある。U310、J310、SST310の違いは外周器の違いだけであり、中身のFET本体はどれも同じである。もちろん何回も書いているように2SK19(ディスコンだが)あるいは2SK192AのIdssが大きいもの、具体的にはBLランク品で工夫しても問題なく行けることが多い。
何れで代替するにしても単に差し替えるだけではダメで、せめてドレイン電流くらい調整すべきだ。それもせずに単に差し替えただけでデバイスの良し悪しを議論しても無意味ではないか。NFやGainの数dBは動作点の適否やデバイス周辺の外部条件でも容易に変わってしまう。IIP3など同じデバイスであってもドレイン電流:Idの流し方でがらっと変わる。それぞれ最適と思われる状態に加減してもなお顕著な差があるようならまだ何かが旨くない証拠だ。同様に評価条件の異なる別個のカタログ・データを見比べても優劣の判断ができるものでもない。同一条件のもとで詳細に比較せねばならない。
2SK125やJ310をゲート接地以外の回路で使う例も見る。どちらのJ-FETも汎用品なので使える範囲は広い。様々な場所に使って問題は起きない。しかし、その場合これらである必然性は殆どないことになる。手持ち部品の消化目的か部品共通化のために使ったに過ぎない筈だ。むしろその回路に適した別のFETに換えた方が有利なことも多い。従って、大量に買い置きすると消化の為に適材適所ではない使い方を強いられることになって損である。
参考:例えば2SK125の代替品としてON Semiconductor社製のJ310G(鉛フリーの現行品)がMOUSERで購入できる。1個単位の72.4円から購入できるが、数量割引があって10個で単価42.5円、100個では単価20.1円、1000個だと単価15.4円になる。値上がり傾向ではあるがまだまだ安価と言うこともあり2SK125の代替にお薦めできる。お値段に関係なく性能は良いので今なら最初からJ310Gを使う設計が良いのだろう。(価格は2015年1月15日現在) 外観形状は写真の2SK125とほぼ同じだが、足の並びはまったく違う。リンク先にあるデータシートで確認して使う。ON Semiconductor社のリード線付きJ310Gも生産中止品の方向なので在庫限りになるようだ。これからは表面実装型の採用も視野に入れるべき時のようである。RSコンポーネンツ社では既に面実装型のMMBFJ310(Fairchild製)のみ扱っている。
追記・1:先般ON Semiconductor社製の代替品:J310Gが入手できたので2SK125と特性比較してみた。Idss=約35mA、カットオフ時のVgsすなわち、Vp=約-3.3Vであった。Idss付近に於ける相互コンダクタンス:gm=約18m℧(=18,000μ℧)である。あらゆる特性を比較した訳ではないが確認した範囲から見て互換品と考えて問題はないようだ。従って値上がりしつつある2SK125を入手するまでもなく安価なJ310を使えば十分だ。2SK125の時代は終わってしまったが、J310はこれからも継続し汎用の範囲まで用途を拡大しながら使われ続けるだろう。(注:J310Gの末尾文字「G」は鉛フリー品を示す記号であり、電気的な特性は従来品J310とまったく同じ。従ってそのまま置き換えできる)2010.6.27
追記・2:2SK125とJ310のIdssについて
まず、Idssとは何かと言えば、FETの ゲート:Gとソース:Sを短絡し、ドレインと(ソース+ゲート)の間に所定の電圧を加えたときにドレインに流れる電流を言う。(左図の「Idss測定方法」を参照)
Nチャネルの小信号用FETの場合、ドレイン:Dに正、ソース:S側を負として、その間に直流・・・この図の例では10Vを掛けてドレインに流れ込む電流を測定する。 規格表によれば2SK125もJ310も同じ条件・・すなわちVds=10VでIdssを測定し分類している。
2SK125のIdssはカタログ上でIdssによる4つの分類があって、それぞれ枝番を付けている。例示すれば、2SK125-2(Idss=40〜75mA)、2SK125-3(同40〜52mA)、2SK125-4(同48〜63mA)、2SK125-5(同57〜75mA)となっている。2SK125-2と言うのは一番分類の緩いものだろう。-3は小さめ、-4は中くらい、-5は大きめのIdssといった分類のようだ。
半導体はバラツキが有るので製造後に実測して分類し各ユーザーに販売していたのであろう。どれが優秀と言うことはなく、ユーザーの希望で納品していたに過ぎないはずだ。使う際にドレイン電流は加減できるので指定の物がなくても調整でカバーできる場合がほとんどなので神経質にならなくても良い。なんなら我々自身が実測して選別する手もある。
J310に Idssの分類はなくて、24〜60mAと言う規格があるだけだ。おおよそ2SK125-4に近いと言えるだろう。2SK125よりもバラツキは少ないのだ。なお、姉妹品にJ309と言うのが有って、こちらはIdss=12〜30mAとなっている。同じように製造してIdssの小さい物をJ309と言う型番にしているのであろう。
いずれのFETも、ユーザー自身がIdssを実測してペアを組むと言ったことはごく簡単にできる。バランス型のミキサのような用途や、複数個をパラで使うと言った目的には近似のIdssのものを見つけてやればベストである。 その場合でも±10%以内に合わせておけば十分だ。Idss以外にgmやVgs(off)といった項目も値は個々にばらつくので、Idssばかりやたら高精度に選別してもあまり意味がないからである。なおVgs(off)すなわち、ピンチオフ電圧:Vpの測定方法については別のBlog(←リンク)で扱っている。これらIdssとVpの実測によってJ-FETの静特性を把握することができる。正確なバイアス設計に必要な項目だ。(2015.3.18)
追記・2:2SK125とJ310のIdssについて
まず、Idssとは何かと言えば、FETの ゲート:Gとソース:Sを短絡し、ドレインと(ソース+ゲート)の間に所定の電圧を加えたときにドレインに流れる電流を言う。(左図の「Idss測定方法」を参照)
Nチャネルの小信号用FETの場合、ドレイン:Dに正、ソース:S側を負として、その間に直流・・・この図の例では10Vを掛けてドレインに流れ込む電流を測定する。 規格表によれば2SK125もJ310も同じ条件・・すなわちVds=10VでIdssを測定し分類している。
2SK125のIdssはカタログ上でIdssによる4つの分類があって、それぞれ枝番を付けている。例示すれば、2SK125-2(Idss=40〜75mA)、2SK125-3(同40〜52mA)、2SK125-4(同48〜63mA)、2SK125-5(同57〜75mA)となっている。2SK125-2と言うのは一番分類の緩いものだろう。-3は小さめ、-4は中くらい、-5は大きめのIdssといった分類のようだ。
半導体はバラツキが有るので製造後に実測して分類し各ユーザーに販売していたのであろう。どれが優秀と言うことはなく、ユーザーの希望で納品していたに過ぎないはずだ。使う際にドレイン電流は加減できるので指定の物がなくても調整でカバーできる場合がほとんどなので神経質にならなくても良い。なんなら我々自身が実測して選別する手もある。
J310に Idssの分類はなくて、24〜60mAと言う規格があるだけだ。おおよそ2SK125-4に近いと言えるだろう。2SK125よりもバラツキは少ないのだ。なお、姉妹品にJ309と言うのが有って、こちらはIdss=12〜30mAとなっている。同じように製造してIdssの小さい物をJ309と言う型番にしているのであろう。
いずれのFETも、ユーザー自身がIdssを実測してペアを組むと言ったことはごく簡単にできる。バランス型のミキサのような用途や、複数個をパラで使うと言った目的には近似のIdssのものを見つけてやればベストである。 その場合でも±10%以内に合わせておけば十分だ。Idss以外にgmやVgs(off)といった項目も値は個々にばらつくので、Idssばかりやたら高精度に選別してもあまり意味がないからである。なおVgs(off)すなわち、ピンチオフ電圧:Vpの測定方法については別のBlog(←リンク)で扱っている。これらIdssとVpの実測によってJ-FETの静特性を把握することができる。正確なバイアス設計に必要な項目だ。(2015.3.18)
【2】2SK241と2SK439: 2SK241と2SK439は多くの場合、相互に代替できる互換品だ。まともに設計されている回路に使うなら、どちらを使っても殆ど差は出ない。 内部はカスコード構造になった特殊なものであり、しかも「ディプレッション・モード」の小信号RF用MOS型なので海外製の同等品を具体的に目にしたことはない。日本オリジナルの模様で海外製に代わりはないのかもしれない。 *上記よりも入手難かもしれないが、三洋電機(現ONセミ社)の2SK544(-D、-E、-F)は東芝の2SK241(-O、-Y、-GR)と足ピン配列を含めて同等品である。纏めて手に入ったので拙宅の在庫品は2SK544に移行中だ。(2013.6.16)
どうしても入手難なら、少し特性は異なるがRF用J-FET、例えば2SK192Aのカスコード接続であらかた行けるので試す価値はある。同様にJ-FETで内部カスコード構造の2SK161(東芝)も代替に向くが、こちらもディスコンである。やや損な方法だがDual Gate MOS-FETの第2ゲートをソースに直接結んで代替する方法もある。
要点:これらのFETが意味をなす用途は「ソース接地型の高周波増幅」である。上記の代替案もそれが前提だ。他の用途、例えば水晶 or LC発振器(=VFO等)、VXO回路、MIXer回路、検波回路、ソースフォロワ等のバッファアンプでは普通のJ-FET:例えば2SK192Aで十分だ。要するにゲート・ドレイン間の帰還容量:Crssが特に小さい方が有利な回路を除けば、2SK241や2SK439のメリットはない。普通のRF用J-FETに置き換えできる。なお、ソースフォロワに2SK241、2SK544や2SK439のような内部カスコード構造のFETを使うと、むしろ周波数特性は悪くなる。ソースフォロワには2SK192Aのような普通のJ-FETが良い。 2SK241や2SK439のような高周波用のMOS-FETは低周波で使うと1/fノイズが大きい。Hi-Fi Audioのような低周波増幅の目的には不適当である。 オーディオ回路には1/fノイズが少ないJ-FETの方をつかうこと。 同様の理由でMOS-FETをVCO回路に使うのもあまり感心しない。
2SK439はアイテック電子のキットで使われたが他ではあまり見なかった。自作で使うのは稀なのでディスコンになってもさほど困らない。本に書いてあるほどの違いは感じられないので、私はIdssランクを合わせ2SK241で互換していた。もし顕著な違いが見られたなら何かがおかしいのだ。どちらかの手持ちがあれば相互に代替すれば済む。但し足の並びが裏表なので要注意だ。(写真参照) なお2SK359(TO-92)と2SK360(面実装型)はパッケージ違いの2SK439同等品である。(どれもディスコンだろう)
☆ 2SK125と2SK241の二つは高周波用のFETとしてたいへんポピュラーであった。頻繁に雑誌記事にも登場していた。それだけに過去の製作記事をそっくりそのまま真似ようとすれば入手に奔走することになろう。 結局、回路動作の片鱗すらも理解しないアマチュアは部品のディスコンに怯え右往左往することになる。 そして枯渇を見越し価格高騰を目論んで買い集める輩も登場する。 かくして増々の品薄となる。 やがてその部品の時代も終わって行く。
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どうしてもその部品でなければ実現できない性能と言うのも無いとは言えない。しかし殆どは別の部品や回路で十分な結果が得られるものだ。 むしろ古臭い部品を使うよりも近代的部品の採用で一段と優れた性能になるケースも多い。 こうしたRF用デバイスの例で言えば周波数特性に優れ一段とローノイズで低歪みに改善されることがある。
メーカー製品の補修ならやむを得ないかもしれない。しかしそれを除けば無理に探したりするよりも入手し易い部品で代替して同等以上を目指すのがCOOLと言うものだ。 エンジニアとして金力で解決するのは恥ずべき行為と自らへの戒めも含めてここは強調しておこう。高くなったら「もう買わない,もう使わない」の合い言葉で行こう。(笑)
# 少し前に2SK241のGRランクを使い切ったので買っておけば良かった。
==>; Blog読者のHOTな情報で2SK241GRを少しだけ補充しておいた。 (5/19/'10)
(だからと言って何百本も溜め込んだら使い切れなくて馬鹿みたいなことになる・笑)
追注:最近になって2SK241のGRランクばかり欲しがる人があるそうだが、それは馬鹿げている。 ここでGRを購入したのはYランクはまだ手持ちがあるからだ。GRの方が何か良いからではない。もともとYの方が多少便利そうに感じたので多めに持っていた。GRは少しの手持ちだったから先に使い切った。実際はどちらも幅広く使えるので問題はない。
追注:最近になって2SK241のGRランクばかり欲しがる人があるそうだが、それは馬鹿げている。 ここでGRを購入したのはYランクはまだ手持ちがあるからだ。GRの方が何か良いからではない。もともとYの方が多少便利そうに感じたので多めに持っていた。GRは少しの手持ちだったから先に使い切った。実際はどちらも幅広く使えるので問題はない。
ソース-Gnd間に抵抗Rsを入れ、自己バイアスを掛けてIdを調整して使うのが普通だろう。その場合Rsの値はYとGRでは違っては来るが、調整後に得られる性能はどちらも同じになる。もしもゼロバイアスで使いたいならIdssの小さなYランクの方が消費電流を少なくできる。
何かの理由でIdを大きくしたいなら、Yランクでも正のゲートバイアスを掛けてやればGRと同じにできるわけだ。MOS構造の2SK241ならゲートの正バイアスもまったく問題はない。
だからどちらかのランクがいつでも良い訳ではないのである。おわかりか?(上っ面だけ読んで勘違いする人がいるので念のためにしつこく書いておく。笑 2010.7.17+2010.10.9)
さらに追注:秋月電子通商の店頭を見ていたら、2SK241はいまでもごく普通に売っている。(5本入りで200円)(←残念ながら秋月電子通商の扱いも終了した模様:2015.10.1)入荷状況が少し悪くなってきたのは一部のお店(S電気だけ?)なのかも知れない。実は以前にも同じようなことがあったが、仕入れ先の関係なのだろう。まさか値上げの口実にした訳でもあるまい。 しばらくは心配なさそうに思う。なお、秋月で売っているのは最も汎用性のあるYランク品だ。他のショップでも順調な入荷が見られるので、慌てた買い急ぎは高値を掴まされ損である。買い置きするなら当面必要な最小限にするのが良さそう。(2010.7.28 + 2010.9.12)
さらに追注:
(おわり)