【JA9TTTの新アンテナ】
【アンテナ全景】
アマチュア無線局(HAM局)にとって何が一番大切かと問われれば「アンテナ」という答えが圧倒的ではないだろうか。 或はV-UHF manなら「ロケーション」と答えるかもしれないが、そのFBなロケーションにFBなアンテナを上げればベストであるにちがいない。 無線局にとってアンテナは一番大切だと思っている。オンエア経験を持つお方なら皆さん同じではないだろうか。
ここで紹介するのは最近リニューアルした当局のアンテナ系である。 世間にはFBなロケーションに広大な土地を持ち、何本ものタワーを建設して楽しんでおられる方もあまたおられる。 だから、こんな例は参考にもならないとは思うが、限られた条件で努力した結果だと思っていご覧いただければ幸いだ。
目標:少ない数のアンテナで可能な限り多くのHAMバンドをカバーし、それぞれローパワーでも実用になる程度の輻射効率・性能を持つアンテナであること。
【リニューアルしたアンテナ】
今回リニューアルしたアンテナは、14MHz以上をカバーするものだ。 従来の4エレ・トライバンダ(14、21、28MHz)、またエレメントが脱落していた50 MHzの4エレ、そしてロスが多くなっていた144/430MHz-2バンドGPの全てを撤去し、いずれも新しいアンテナに交換した。
10MHz以下のHF帯ローバンドについては、既設アンテナの成績が良かったのでそのままの形式を継承することにした。 但し長年の風雪でトラップコイルの劣化が見られるようなので、折りをみて交換・保守を行なう方針だ。 10MHzについては、ロータリーDPの選択肢もあったのだが、今回は見送ってタワーから傾斜型に降ろしたDPで行くことにする。これも国内局相手なら特に悪くないと感じたからだ。
以上、14MHz以上のアンテナを交換したことになる。 なお、従来は24MHz帯のアンテナはなかった。今回は5バンド八木にしたので18MHzがビーム化されたとともに、新たに24MHzバンドが追加された。
【HF帯と50MHzの八木】
各バンドともにフルサイズのビームアンテナが理想であろう。しかし、限られた敷地と1本のタワーではいかんともしがたい。
どこかのバンドに特化すると言う選択肢もあるだろう。 前のソーラー・サイクルのピーク時に28MHzの8エレだったか(フルサイズのロングブーム型)でばんばん楽しんでいた友人もいた。 しかし、ピークを迎えている今回のソーラー・サイクル(サイクル24)は少々微妙なようで、まんべんなく各バンドに出られる方が良さそうな感じだ。
この際、14MHzの3エレ程度のフルサイズにでもしようかと思ったのだが、5バンドのトラップ式八木になった。エレメントは9本もあるが、各バンドとも動作するのは4エレで、しかも帯域幅を得るために中心部の2本は位相給電している。 実質的にはナロースペースの3エレ短縮八木に相当すると思えば間違いないようだ。 従って、ばんばんDXを撃ち落とすようなことは無理で、コンディションの良い時に雑魚と遊ぶ程度と思えば落胆もなかろう。ナガラのT-59GXと言うもの。
50MHzはフルサイズながらも5エレの小振りな物にした。 一応,ロングブームタイプなのでそれなりにビームは鋭い。 今の季節、6mバンドのコンディションは良くないし出ている局も少ないが、聞いて見た感じはまずまずなようだ。地上高もそこそこなので見える範囲には飛ぶのではないだろうか。クリエートのCL-6Aと言うもの。
【V-UHFのアンテナ】
基本的に、V-UHFは連絡用と割り切っているのでビームにはしなかった。 それでも多少はゲインがある方が良かろうと言うことで、全長が5mも有る多段コリーニヤアレー式GPにしてみた。 第一電波工業:DiamondのX-7000と言うもの。
最初は、同じメーカーのX-5000で行こうかと思ったが、X-7000の方が「絶対に良い」あるいは「下手なビームアンテナなど要らない」・・・とか言う、強いサジェスチョンがあったので採用した。
なにせ、長いので冬の強風や台風が心配で、夏場の雷も恐いのだが、まあ様子を見たいと思う。 タワーの天辺に付けると同軸が長くなって不利なのだが、もちろん見通しは一番だろう。 今日は風があったので写真の様にだいぶたなびいている。
【HF帯Low-Bandのアンテナ】
次回リニューアルする予定のアンテナだが、紹介しておく。 1.9、3.5、7MHzをカバーする逆Vアンテナである。 7MHzはフルサイズである。給電点も1/2λに近いのでなかなか良く飛んでくれるようだ。 なお、ワイヤーアンテナは写真に写り難いので「見える化処理」をしている。hi hi
少なめのインダクタンスを持ったトラップコイル(自作)を使っているので、3.5MHzや1.9MHzもあまり短縮されておらず、エレメント部分はかなり長くなっている。 3.5MHzはタワーの高さが有るのでエレメントの引き下ろしに問題はない。
しかし1.9MHzはエレメントが更に長くなるのでそうも行かない。 狭い敷地ではいかんともしがたい所だ。 選択肢は幾つか有るがローディングコイルで短縮する形式はQが高くなりすぎてバンド幅が取れない。それは過去に作って経験済みだ。 そのためエレメントを折り返えすことによって、言わばキャパシティ・ハットのような形式で行くことにした。 幸い、この形式は成功したようでバンド幅も取れているしQも上がらないので良い方法だった。 逆VやDPは左右エレメントが概略対称形で何となくバランスするからローカル・ノイズには接地系より明らかに有利だ。
(注:アンテナのQは低いほどバンド幅が取れる。もちろん、抵抗:Rを入れてQを下げるのはナンセンスだ。抵抗の高いステンレス・ワイヤで作るとそうなるのだが・・・笑)
参考:2016年6月、HF帯のアンテナをリニューアルした。 同じくトラップ形式の逆Vアンテナである。 新しいアンテナは1.9MHz、3.5MHz、7MHz、10MHzの4バンド形式で製作した。詳細は以下のリンクでご覧を、→Quad-Band_IV-Antenna
【10MHzは課題ありか?】
10MHzは給電点が約10mの傾斜型ダイポールになっている。 ゲインはないし、やや低いので高性能ではない。 しかし、SWRも低く、ノイズの拾い込みも昔使ったGP系よりも少ない感じだ。
もっと高く上げたいところだが、当面はこれでやってみたい。 希望を言えば短縮でも良いから2エレくらいのビームアンテナが・・・と言ったところ。 10MHzは考えているよりずっとDX向きのバンドなので、良いアンテナさえ上げればとても面白いと思う。今回はやや冷遇した感じだ。
取りあえず、国内向きに前と同じこれを上げておいた。 そこそこ飛ぶのでJCCサービスのリクエストくらいには十分お応えできるだろう。(笑)
【アンテナ・ローテータとケーブル引下し】
アンテナ・ローテータは(株)エモテーターで整備済みの1105-MXを再利用している。 分解オーバーホール済みなので快調だ。 ユニバーサル・カップリングを入れて捩じれによる影響を軽減してある。 なお、タワーにはアンテナ・エレベータが付いているのでローテータはその台車に載っている。
この部分のオーバーホールではマストベアリングの固着が問題であった。アンテナを上げる直前に発覚したので、急遽分解して清掃を行ない、グリースアップをして何とか間に合わせた。 C社のプラスチック・ボールのマストベアリングが良さそうだが、残念ながら間に合わなかった。
エレベーター部分からのケーブル引下しには以前から何となく自信が持てなかったのであるが、JE1SLP吉田さんが旨く処理してくれた。こんな感じにバインド線など使って補強して吊り下げておけば大丈夫だそうだ。VY-TNX!
【ケーブル接続】
ケーブルは途中で接続するものではなく、つなぎの無いものを使うべきだろう。 販売店に聞いたらサポート金具のような物を作ればFBケーブルをローテータ部分(回転部分)に使っても大丈夫だと言う。 実績もあるようなので詳しく聞きたかったが、今回は「つなぎ式」で行くことにした。
写真のループ部分でアンテナから来た10D-2Vとシャックに引き込む10D-FBを繋いでいる。このケーブルはV・UHFのGP用なので1200MHzを含むからコネクタはいずれもN型である。
N型コネクタの良くない点はスッポ抜けが起こることだ。 引っぱり力が掛からないようにループ式にしてみた。 この部分、前のGPでも問題になった部分であり、アンテナ系の中では寿命の短かった部分であった。 アンテナの上げ下げは滅多にしないので繰り返しの屈曲に弱いFBケーブルでも大丈夫だろうと言う判断である。
【逆Vアンテナの給電部】
今回のリニューアル対象にはならなかったが、3バンド逆Vの給電部分である。 自作の「強制バラン」が入っていたと思う。 ベーク板の上にコネクタ付きで作った。
なお、今のところ使えているが、ハンダ付け部分のハンダ痩せが見られた。 おそらく、酸性雨あるいは濡れた時の異金属による電食などで溶け出すのであろう。
ハンダ付けした上にペイントを塗るとか、そもそもハンダ付けを使わず圧着で組立てるなどの対策をすべきなようだ。 屋外に曝される構造物は耐候性を考えないと長くは使えない。
【ケーブルを引き込む】
ビーム系とVUのGP、そしてローテータケーブルは一緒に上げおろしされる関係から束ねておく。 また、逆Vと10MHzのDPは引き込み部分の手前で束ねるようにした。
束線には「束線バンド」を使っているが、補助的にはアルミ線をも併用して万一、バラバラにならないようにしておいた。
【アンテナ工事の補助材料】
アンテナの工事には様々な物が必要になるが、今回使った目新しい物を紹介する。
束線バンドは従来から存在して来たが、耐候性が無いのが泣き所であった。 最近の例では、工事業者が耐候性のない束線バンドを使って工事をしたら、何ヶ月か経って電線が垂れ下がってしまい電車を止めると言う事故があったほどだ。
従って束線バンドは屋外使用では信頼性が低いので、使わぬ方が良いのかもしれない。 しかし、屋外用として「耐候性」をうたう製品も出て来ているので今回は積極的に採用してみた。それでも心配はあるので、補助的にアルミ線でも補強しておいた。
右の二硫化モリブデン・グリース・スプレーは、アンテナエレベータのワイヤー巻き取り部分に噴射して錆び止めを狙ってみた。(下の写真) 浸透して行く感じなので、単純にグリースを塗り付けるよりも良さそう。 引き出された部分にも普通のグリースタイプを塗布してもらった。
【気休め・笑】
アンテナ・エレベータのワイヤー巻き取り部分である。 メンテナンスを怠っていたら、ワイヤーが真っ赤に錆び付いてしまっていた。 今回はワイヤーの交換も行なったほか、防錆のためにグリースの塗布を行なっている。
巻き取り部分でワイヤーが盛大(?)に錆びたので今回は上の写真のグリースをたっぷり塗布し「気やすめ」にコンビニ袋で被っておいた。 袋に耐候性はないので、すぐに交換は必要だろうと思う。 プラスチック類は紫外線劣化するので選択が難しいと思う。
【別のアングルから】
最後に、今回リニューアルした当局のアンテナ系を別のアングルから撮影してオシマイにする。
ナロースペースなので、エレメント数の割には周囲を威圧する感じが少なくて良かった。 まあ、その分だけ飛びはそこそこであろうが、目的に対して十分そうなので満足している。 簡単なスイッチ切換えで多バンドに出られるのはなかなか便利だ。昨今のリグからは、バンドデータが出ているので自動切換器の製作も可能だと思う。そうなれば増々便利だ。
☆ ☆ ☆
暮れの休日、風は強かったが出掛ける予定もキャンセルになったので「今日しかない」という意気込みで、最後に残っていた作業を済ませて完成まで漕ぎ着けた。風はあったものの、地上の作業がメインだったので助かった。また、思ったより寒くなかったので作業も捗った。なかなかこれで完璧と言う所までは行かない物だが、取りあえず一段落と言った所だ。 これで目標のように少ない(5本)アンテナで多くのバンド(13バンド)をカバーすることができた。それぞれ、QRPでもまずまず実用になるだろう。
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たくさんのバンドに出たいのなら。数条のワイヤーにオート・アンテナ・チューナーがベストではないか?と言われそうだ。 確かに、条件次第ではそれが良いこともある。 しかし、オンエアする周波数に共振したエレメントに乗せるのと、共振していないワイヤーにチューナーで(無理矢理?)乗せるのとでは、聞こえも飛びも全然違ってくる。これはやって見ればすぐわかる。 従って、やむを得ない時の非常手段にオート・アンテナ・チューナーは良いのかもしれないが、固定局の常設アンテナは各バンドに共振したものがベストだと思う。そのうえで、アンテナ・チューナはリグとのマッチング改善に使う程度が良い。
これでまたたくさんのバンドに出られるようになった。メンテナンスしながら維持して行きたい。 これから少しアクティブにオンエアしてみよう。 春先のHF帯ハイ・バンドも楽しみだ。 そう言えば、V・UHFのリグを新調しなくてはいけないのだった。どれが良いかなあ。(笑) de JA9TTT/1
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末尾ながら、アンテナのリニューアルに当たって、旧アンテナの撤去から複雑なアンテナの組立て、そして建設まで多大なご援助を頂いたJE1SLP吉田さん、JA1CTZ三昌さんに感謝いたします。 またアンテナの選定に当たって、有益なご助言いただいたJA1COU村田さん有難うございました。
(おわり)