【あなたもできるWSPR受信機】
WSPR受信機は、簡単に言ってしまえばSSB受信機そのものです。 例えば、7MHz帯のWSPR局は、キャリヤ周波数が(リグのダイヤル表示周波数が)7038.6kHzのUSBモードでオンエアしています。 受信機はその同じ周波数をUSBモードで受信すればOKです。 また、WSPRの変調周波数は1500Hz±100Hzのあいだに限られます。 そのため、受信機はできるだけその周波数幅のみ通過するように設計します。
上図は、これから作る「シンプルなWSPR受信機」のブロック図です。 SSB/CW受信用のダイレクト・コンバージョン受信機にそっくりです。 その違いはフィルタにあります。 音声や電信の受信用ではないので、WSPRの復調に必要な1500Hz±100Hzだけを通過させます。 その1500Hz±100Hzの受信信号をパソコンのマイク端子に導いてやればWSPR受信機の役割は終了です。 復調はパソコンのアプリで行ないます。 受信状態とデコードしたデータはネット経由でサーバーにアップされます。 これで自局で聞こえたWSPR各局の受信状況が世界のHAM局と共有できるわけです。
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受信周波数は固定ですしWSPRの受信に特化した受信機です。 ところが、低周波フィルタとVXO部分をちょっと変更してやれば直ちにSSBやCWの受信機に変身します。 具体的には、受信周波数の変更はVXO部分を必要な受信範囲をカバーするように変えます。セラロックを使った”VXO”など最適でしょう。CW受信機にはフィルタを700Hzくらいにします。 そうやって実際に受信してみると思った以上によく聞こえました。 ポート間のアイソレーションが良いDi-DBMを使ったので周波数の引き込み現象もなく安定かつ快適な復調ができます。 WSPRに興味がないようならSSB/CW用ダイレクト・コンバージョン受信機に転用するアイディアはどうでしょうか?
参考:最後の部分にこの受信機の「プロモーション・ビデオ」(のようなもの?)があります。先に動画の方を見てから以下に目を通すのも良いと思います。
【簡単WSPR受信機・回路図その1】
これは「簡単WSPR受信機」の初期バーションです。 ただし、最終バージョンではむしろ簡略化しました。
復調用の7038.6kHzの発振器は予定通りVXO形式です。この部分の詳細については前のBlog(←リンク)に書きました。 ただし、周波数安定度の問題などから更に検討を加えています。詳しくはこの後にも説明があります。
アンテナからの受信信号は、2SK544Eで高周波増幅されます。2SK544Eは2SK241Yと互換の高周波増幅用MOS-FETです。 当初は前回のBlog(←リンク)で扱ったDual-Gate MOS-FETあるいはGaAs MES-FETのRFアンプを使う予定でした。(それも目的の一つとして実験していましたので) しかし、最小部品数で済むように2SK544Eを使う設計に変更しました。これは、あらかじめ受信機全体の回路規模が読めなかったからです。 高周波増幅部にたくさん面積を割いてボードに乗せきれなくなっても困ります。最小面積で済む方を優先したのです。 なお、最終的にボードにかなりの「ゆとり」が生じましたからRFアンプにもっと面積を割いても支障はなかったようです。この回路にとらわれずお好みのRFアンプが使えます。
検波にはダイオードDBMを使いました。 コンパクトさと手間を省く意味から市販品のDBMモジュールを使いました。Mini Circuits Lab社のADE-1です。 HF帯ですし復調用ですから他社のDBMでも、あるいは伝送線路型トランスとショットキ・ダイオードで自作したDBMでも大丈夫です。 RF信号のロスが少なく、なるべく各端子が50Ωに終端されるように使います。 回路図では幾らか不整合ですが受信復調用ですから特に問題になりません。 VXO発振部から7038.6kHzは7dBmくらい注入されています。
DBMで復調されたWSPR信号は、ゲイン約26dBの低周波プリアンプで増幅されます。その後、中心周波数が1500Hzのバンドパス・フィルタで選択されます。 この1500Hzのフィルタはシミュレーテッド・インダクタを使った共振器が3段シリーズになった形式です。 どちらかと言うとブロードな選択度で良いため、あまりHigh-Qな設計ではありません。 後ほど周波数特性の実測結果があります。フィルタ自身にも約27dBのゲインがあります。プリアンプと合計で50dBくらいのゲインがあるため、後続のアンプはゲインをあまり必要としません。
フィルタの後、ボリウム・コントロールがあって全体のゲインが加減できます。 その後、この初期バージョンでは低周波パワー・アンプ:LM386Nがあり、スピーカーを十分鳴らせるパワーが出ます。 後ほどのテストでわかったのですが、WSPR用の受信機としてはゲイン過剰かつ、スピーカを鳴らすパワーは不要でした。そのため、最終バージョン(後述)ではLM386Nのアンプは省いています。
もし、WSPR以外のモード・・・例えばCWの受信機にするのでしたら低周波パワー・アンプ付きのままが良いです。 その場合、フィルタの中心周波数を約700Hzに変更します。 フィルタの設計方法(変更方法)は以前のBlog(←リンク)にあります。 リンク先と回路は同じで抵抗値のみの小変更で簡単にCW受信機へと変身できます。 抵抗値がクイズ形式になってますが、XXおよびYYともに1.5kΩでやってみてください。
【BPF用にコンデンサを選別】
写真は1500HzのBPF用に、コンデンサを選別している様子です。 0.039μFのコンデンサがたくさんあったので、選別してみました。使うのは6個です。
結論から言うと、選別は不要なようです。 もちろん、選別したコンデンサを使って作ると、設計と実際の差は小さくなります。設計の再現性が良くなるわけです。 シビアな切れ味を求めるフィルタなら、部品合わせの選別は必須でしょう。
しかし、ここで作るフィルタはブロードですから無選別でも大丈夫そうでした。
選別を行なうにしても入念さは必要なく気休め程度で十分です。 選別にはLCRメータ:DE-5000を使いました。 こうした作業には手軽で便利です。
【もやし配線で様子を見る】
1500HzのBPFを試作している様子です。 初めてブレッド・ボード上に作る回路は部品配置を決めるのが難しいものです。なるべく合理的な配線ができ、性能も維持できるような部品配置を目指します。それがなかなか難しいのです。
4回路入のOP-Amp:TL-074CNを使ったので、コンパクトに作れますが、反面、部品が密集するので配置は少し難しく感じました。
そこで、まずはジャンバー線が多くなっても気にせず配置・配線してみます。 だいたい写真のような規模になるのがわかったので、様子を見ながら徐々に合理的な配置に変えて行くわけです。 検討の成果は次の写真を見てもらえばわかります。(笑)
【フィルタ完成版+低周波アンプ】
左半分が低周波プリアンプ+1500HzのBPFです。 上記の写真と同じだけ部品が載ってますがスッキリしました。 配線の見通しも良くなり、チェックも容易です。
プリント基板の設計と同じで、ブレッドボードも2回目の方が格段に上手く作れるものです。(笑)
右側にLM386N(NJM386BD)の低周波アンプがあります。 こうするとトータルの低周波ゲインが大きくなる関係で、発振し易くなりますから対策は必須になります。 CW受信機に転用されるなら十分な対策をしておきます。
まずは、この状態でパソコンのマイク端子に接続してテストしました。WSPRの受信は可能でしたが、低周波部分がオーバーゲインなのと、GND系のアイソレーションがとれていないためパソコンからのノイズ混入が気になりました。
【低周波部の周波数特性】
低周波系の周波数特性とゲインを評価しておきます。回路図のTP-1とTP-2の間の特性を測定したものです。 50Ω系の測定器を接続する都合で、ゲインは6dBほど低く測定されています。 従って、実測のゲインは44dBですから予定のゲイン、50dBが得られていることがわかりました。
フィルタの「切れ」にやや物足りなさを感じますが、通過帯域に平坦部のない形式なのでこの程度の特性が妥当でしょう。 もっと本格的なフィルタを作れば改善できますが「シンプル」と言う趣旨にそぐいません。 実用的な範囲で済ませることにしました。
後ほどのテスト運用によれば、WSPR用受信機として高性能とは言えぬまでも実用性能にあると思います。 パソコン側のソフトの助けもあるようで、マズマズの選択度でした。 なお、50dBの低周波ゲインではかなり過剰です。だいぶボリウムを絞って使うことになります。 いわんやLM386Nのアンプ(ゲイン)など必要としません。 接続先のパソコンの入力端子が感度の高いマイク入力端子だからです。
【課題あったVXO・初期版】
VXOの周波数安定度について考えるとき、もう一度WSPR局のデータ送信について考える必要があるでしょう。 WSPRでは発信局のコールサイン、グリッドロケーション、パワーレベルが50ビットのデジタルデータとして送られてきます。
1400Hzから1600Hzの間のどこかに設定(送信局のオーナーが設定)された副搬送波は、4値のFSK信号として周波数変調されます。 その4値のそれぞれはわずかに1.4648Hzしか離れていないのです。従って、占有周波数帯域幅は約6Hzしかありません。 また低速のボーレートなので一回あたりの送信時間は110.6秒間もあって、少なくともその間だけ周波数は安定でなくてはなりません。(多少は許容量があるがレポートの数値に現れるのでみっともない・笑)
長期的な変動は取りあえず考えないとしても温度補償のない水晶発振器の周波数安定度はせいぜい±1ppm/℃くらいのものでしょう。 これはかなり良い方向に見積もっています。 従って7MHzの発振器なら1℃あたり7Hzくらいの変動は存在するわけです。 急激な変化さえなければWSPRのデータ一周期ごとの復調は可能でしょう。 しかし出来の悪い発振器ではこれさえも難しいのです。無造作に作れば水晶発振器と言えども安定度はずっと悪くなります。
一日の気温変化は10℃くらい存在します。 何の温度補償もない水晶発振器ならそれだけで10ppmくらいは変動するでしょう。 良い方に見積もっても70Hzの周波数変化ですから、WSPRを安定に運用するにはどうやら十分とは言えないようです。
CWやSSBの受信でも周波数変動は問題になります。 ただし交信のあいだ安定で了解に支障がなければ良いのであって、オペレータがズレを修正することも可能ですからそれほどシビアではありません。 普通の水晶発振器や上手に作ったVXOならほとんど問題になりません。 しかしWSPRではそうも行かないのです。手を煩わせずに連続運転が基本ですからね。
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写真の初期状態では周波数安定度が不十分でした。原因はいくつかありました。使った部品の温度安定性が悪かったのです。考えてみれば当たり前のことばかりですけれど・・。
まず、数pF〜10pFあたりの小容量セラミック・コンデンサはNP0特性であろうと考えたのが勘違いでした。 水晶発振子とパラの5pFと、周波数設定のトリマ・コンデンサにパラになった10pFのセラコンが問題でした。 実際には温度特性がかなり悪かったのです。 多分、普通の用途ならそれほど気にはならなかったでしょう。しかしシビアな用途では不十分な性能でした。
もう一つはVXOコイルです。使用した47μHのマイクロインダクタは温度特性が良くないのです。aitendoで買った中国製のRFCセット(←関連のBlogにリンク)に入っていた47μHを使いました。初めからわかっていたことですが、VXOコイルのようなシビアな用途には使うべきでなかったのは間違いないです。 小さくて扱い易いのですが、おそらくμ(透磁率:ミュー)が大きな・・・ただし温度特性の良くない・・・コア材が使ってあるのでしょう。 指で少し触れた程度でも体温の影響が強く現れました。マイクロインダクタの用途は共振回路ではありませんからやむを得ないでしょう。実験的には良いとしても実用には温度特性の良いコイルに替えなくてはなりません。これは反省点です。(笑)
# このようなことから、WSPRを安定して受信するには不十分な周波数安定度です。
【こちらが改善版VXO】
問題点が明確になれば対策は可能です。 温度補償型の発振器ではないと言う本質的な問題はありますが対処療法は可能です。
まずは、問題のコンデンサを温度係数がはっきりしているNP0のセラミックコンデンサあるいはディップド・マイカコンデンサに交換してみました。 セラミック・トリマコンデンサもいくらかマシそうな物に替えます。
VXOコイルは空芯もしくは温度係数の小さなコアに自分で巻いた方が良いのでしょうが、いくつか交換したらだいぶマシなものが見つかったのでそれで済ませました。
このような対策で短時間の漂動(ドリフト)なら、数十ミリHzに抑えることができるようになりました。 環境の変動に強くする意味で、回路部分に直接風が当たらぬように箱で覆うと効果的です。 ブレッドボードなのでやりずらいのですが、覆って外気の流れを防ぐのは必須とも言えます。きちんと作って箱に入れればかなり効果的です。
アンテナとパソコンを繋いで実験すると、ここまでの対策を施した初期バージョンでも旨く受信できました。 しかし、初期バージョンでわかってきた問題点はできるだけ改善しましょう。
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【簡単WSPR受信機・回路図その2】
改良版の回路図です。 VXO部分の周波数安定度は部品の交換でまずまずになったのですが、長期的な連続運転にはまだ不足するように感じます。 いずれ本格的な対策を行ないたいと思いますが、一旦ここまでにしました。
VXO周りの部品定数など変化はありませんが、温度特性の良いコンデンサやコイルを使うことで対策しました。 シビアなことを言うと、やはりセラミック・トリマでは不安があります。 エア・トリマコンデンサを使うことにしました。
プリアンプ+1500HzのBPF部の低周波ゲインは約50dBあります。 この時点で、すでにオーバーゲイン気味なので、ボリウムでだいぶしぼる必要がありました。 特に低周波アンプにゲインのあるLM386N(NJM386BD)を使ったため、その部分はまったくの過剰ゲインです。 スピーカを鳴らす意味はないので、思い切って簡単な1石のアンプにしました。アンプ無しでも行けそうでしたが、ゲイン調整の便など考えてアンプは設けておきました。
初期バージョンでは、PCとの接続はレベルを合わせただけでC結合で直結しました。 回路のGND回路はパソコンのそれと共通になります。 しかし、そのようにするとパソコンで発生したノイズの混入が見られました。 試しにトランスでアイソレーションするとノイズの混入はかなり軽減されます。 改良にあたり、出力アンプのアウトプットはトランスで分離する形式にしました。 トランスの二次側は回路のGNDに接続せず、浮かせたままパソコンのマイク入力端子へ接続します。
# 以上のような対策を行なって、概ね使えそうな性能のWSPR受信機が出来ました。
【試作完成・外観全景】
初期バージョンと比べてあまり変わり映えはしませんが、改良版の受信機全景です。 低周波パワー・アンプ(LM386N)を取ってしまったので、その部分がずいぶんスッキリしました。
高周波増幅、検波器、プリアンプ、1500HzのBPF部分に変更はありません。 WSPR受信機としてかなり簡単に実現できることがわかります。
もちろん、よくご存知のお方なら単純なダイレクトコンバージョン受信機では逆サイドの混信があって、性能に影響しないか気になるでしょう。 原理通り逆サイドの受信はありますが、低周波で受信帯域を絞っているのでほとんど支障ないようでした。 ただし、受信のS/Nは6dBくらい犠牲になっているのでしょう。 従ってあまり高性能な受信機にはなりませんが、簡単で実用的な性能と思えばまずまずのようです。
【VXOは受信のかなめ】
WSPRの概要を検討した結果でもわかるように、周波数安定度は受信・送信の「かなめ」と言えます。
さらに改善する目的で、周波数調整のトリマコンデンサにシリンダー型のエア・トリマを使ってみました。 多回転型なのでシビアな調整には向いているようです。 もちろん一般的な羽を回すエアトリマでも十分です。 何ならエアバリコン(50pFくらい)にバーニヤ・ダイヤルでもつけてやればすこぶる調整し易くなります。 言うまでもありませんが、きちんとした箱に収納するのは安定した受信の大前提ですね。w
一連の対策を行なったことで、周期の早い変動は収まったのでまずまず安定に受信できるようになりました。 電源投入後は30分くらいの初期変動がありますが、その後はかなり安定します。 ただし変動の様子を観察すると、数時間あるいは一昼夜といったゆっくりした変動は未だに残存します。 だいたい±10Hzくらいはありそうです。 これくらいならWSPRの復調に支障はなさそうでした。 まずはワッチしてレポートをアップするのに十分使えます。
しかし、このままでは数ヶ月や1年間と言った長期的な安定度は維持できそうにありません。 できれば良質のTCXOあるいは可能ならOCXOを基準にした発振器に置き換えるのが理想でしょう。 週に一度くらい周波数をチェックして、もしずれていたら補正すると言う運用方法もありますがちょっと面倒です。できたら技術的に解決したいものです。 この後は送信の検討を始めますが、必要な周波数安定度は同じですから何か改善策も考えておきたいと思います。
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【簡単に済むRFアンプ+検波器】
回路をざっと見て行きます。
これはRFアンプと検波回路の部分です。
RFアンプには2SK544Eを使いました。 ゼロバイアス(Idssの状態)で使い、最小限の部品数で済ませています。 これでも20dB以上のゲインはあるので必要十分です。 なるべくロスなく検波器に導きます。
検波器は4ダイオード式のDBMです。既製品を使ってコンパクトに作りました。 復調用キャリヤ(BFO)の入力端子へは3dBのPADを挟んでインピーダンスマッチングを改善しています。 出力側も概ね50Ωに終端するように回路設計しています。 信号入力側は不整合ですが、用途が検波回路なので支障はないでしょう。 アンテナへのキャリヤ漏れも高周波アンプがあるのでほとんどありません。
いずれも簡単な回路ですが、7MHzのダイレクトコンバージョン受信機には十分なものです。 検波信号を耳で聞いてみると、近傍の周波数でオンエアしているロシアのレタービーコンが良く入感しました。 メインのトランシーバと比較しても同等であり、感度が悪いと言った印象はありませんでした。
【低周波アンプも簡潔に!】
パソコンとの接続部分にはFETを使った簡単な低周波アンプを置きました。 回路のGND系を分離する目的で、トランス結合式のアンプです。
低周波アンプにはFET:2SK19Y(GRでも良い)を使いました。これは回路が簡単に済むためです。 2SK19は高周波用のFETですが、こうした低周波アンプに使っても支障はありません。 トランジスタやICでも良いのですが、2SK19Yならゲートのバイアス用抵抗器が1本必要なだけです。 ただし、大きな信号を扱うとFET固有の「二乗特性」が現れるため、二次ひずみ(非対称歪み)が大きくなります。もちろん、パソコンとの接続はローレベルで済むので支障はありません。
ほとんどゲインのない低周波アンプですが、インピーダンス変換と信号およびGNDラインのアイソレーションの目的は十分に果たしてくれます。 アイソレーション用の小型トランスは山水のST-71などで代替できます。aitendoのチープな低周波トランスも十分役立ちます。
【受信始めました】
画面はパソコンでWSPRネットのサイトを開いて、自局のレポート状態を表示したものです。
受信した時刻が昼過ぎの午後なので国内のWSPR局しか見えていませんが、まずまずではないでしょうか。 1WでオンエアしているJA9MAT局、JA8XMC局もコンディションが悪いなか、旨く受信できています。 いつもFBな電波を送ってくるJA5NVN局はS/Nも良く強力に入感しています。(画面の時刻はUTCです)
気になる周波数変動ですが、例えばJA5NVN局の周波数をみると様子がわかります。 10〜20分間で1〜3Hzくらいの変動があるようです。 この表示周波数には空間状態による変動や送信局の周波数変動も含まれます。 レポートのいずれの局も連続運用されていて、いつも周波数は安定しているように思います。 したがって、現れる周波数変動は自局における変動であると推測できます。(周波数カウンタで見ていればわかりますが・笑)
Driftの項目に0あるいは±1の数字がありますが、これはデータ受信の110.6秒間の変動が十分小さいことを示しています。 支障のない周波数安定度ですです。 もし、ここが±1Hz以上の数字を示すなら短時間における周波数安定度はあまり良くないと思うべきでしょう。
以上、総合すると長期的な周波数安定度には多少の懸念はあるものの、WSPR受信機としてまずまずの性能があると思われます。
【海外WSPR局も見えた】
画面は23時(JST)ころキャプチャしたものです。 夜になって7MHzバンドがオーバーシーズへも開けてきました。
北米やオーストラリアのWSPR局も見えるようになっています。 このところサンスポットは連日ゼロで、MUFも数MHz台のところに低迷しています。 それでも何とか入感するのが7MHzの良いところでしょうね。 ノイズレベルの下がる冬場になればもう少し見えてくるはずです。
シンプルな受信機なので感度が心配でした。また逆サイドの混信もあって不利です。 しかし、実際に受信してみるとまずまずの性能が実感できます。 どうしてもダメならPSNを使ったシングルシグナル受信も考えました。 しかし一気に複雑化するのでシンプルと言う精神(?)に反します。 実際に作ってわかりましたが、単純な回路で使い物になりそうなのは良かったです。
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消費電力が少ないWSPR専用受信機を作りたいと言う目的は概ね達成できそうです。 簡単な回路構成ですが、少なくとも感度は大丈夫そうです。 周波数安定度はDDSやPLL化で簡単に解決できるものではありません。 それらの発振器も基準の発振器が十分な安定度を持っていなければ、ここで使ったVXOに及ばぬ可能性さえあるでしょう。
以前、キットのWSPRの送信専用機を検討したことがありました。 それにはオプションでGPSに同期させるAFC機能が付いていました。 Hzオーダーの誤差を自動修正する仕組みでした。(GPS-DOとは違います) 当たり前のようにオプションを付けた状態で検討したのですが、思えば簡単な回路構成の専用機にとって必須だったのでしょう。 そうでなければ安定性は確保できなかったはずです。
手持ちTCXOのSpecを見ると変動は1ppm/年以内とあります。 まあ、この程度の変動なら実用性は損なわれないでしょう。 7MHz帯ですから7Hz/年くらいの変動があるわけです。 WSPRでオンエアしている各局の周波数を観察していると、その程度ならマシな方にも感じます。 消費電力など考えてTCXOを基準にしたDDS発振器などが周波数対策の決め手になるでしょう。
【簡単WSPR受信機・プロモーション・ビデオ】
(再生すると音が出ます)
耳で聞く受信機と違って、こうした受信機の動的な紹介は難しいものです。 初めはVXOの周波数変動の様子を流しておしまいにしようと思っていました。 編集していて、だんだん各部のシーンを寄せ集めたプロモーション・ビデオのようになってしまいました。(笑) この1分半ほどの動画をご覧になって、もし興味が湧いた部分でもあれば本文に帰ってじっくりお読みください。 それでも解消しない疑問などは遠慮なくご質問いただけたらFBです。 あなたの「ひとこと」が何か解決の糸口になるかもしれません。ご感想・ご意見など歓迎いたします。
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受信機といっても耳で聞くものではありません。 パソコンのマイク入力端子に接続してスタンバイOKです。 あとはオンエアしているWSPR局がうまく復調できるか待つことになります。 インターネットとも関係するので、全体を見渡すと大掛かりな仕組みと言えるでしょう。 それだけに受信機が自作できるのか心配にもなります。 しかし、ポイントさえ押さえておけば案外簡単に作れるもののようです。 ポイントとはもちろん周波数安定度ですね。あとは意外にシンプルです。
周波数安定度の改善策は頭の隅に入れておくとして、次回は送信系の検討を始めたいと思います。 周波数安定度の課題は同様に存在しますが送信パワーは5W以下です。中には数10mWでオンエアされるお方もあります。 電波型式はF1D(FSK)ですからシングルトーンと等価です。従って効率の良いC級増幅でも支障はないはずです。 数ステージの送信部で何とかならないものでしょうか? ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm