誠文堂新光社にはず〜っと昔から『子供の科学』、『初歩のラジオ』、『無線と実験』、『電子展望』の各誌でお世話になったものだ。
無線と実験誌(現・MJ誌)は現存するラジオや電気系の雑誌としては日本最古だろう。 同レベルのオーディオ以外を扱う雑誌としては、『電子展望』も出ていた。紙質が良く、広告が少なくて薄いので好きな雑誌であった。 トラ技とは筆者層がだいぶ違うので独自の記事も多く、しばらく継続購読していた時代もあった。それも既に廃刊になっている。
誠文堂の特徴と言うか、CQ出版社と違うのは、回路集をこまめに出すことだろう。 CQ出版にも類似書はあるが、1ページに2回路ずつ掲載するといった形式の回路図が主体のものはなかったように思う。写真は誠文堂の501回路集と、復刻版の401回路集である。
こうした回路集の価値はどこにあるのか・・・であるが、製作本としては情報が少なすぎるだろう。 ある程度自身で設計できるくらいのベテランなら回路図と簡素な説明でそれを製作できるかもしれない。 しかし初心者にはまったく内容不十分だと思う。
私はもっぱらアイディアを練るのに使っている。そのままで使える記事はほとんどない。しかし、簡単な回路や説明でも何がしかヒントが得られることはあるものだ。もっとも、この401や501は古過ぎてしまい「先人の足跡を楽しむ」くらいの意味しか無いのだが。(笑)
ところで、この501回路集と401回路集であるが、持っている人はすぐ気付くだろう。 すこし見ただけで、ミスがたくさん見つかる。 回路図の接続違いはもちろん、回路定数の間違いなどあちこちにある。 また現在は回路手法として廃れたテクノロジーも多いがそれは仕方ないだろう。
もし参考にするなら『必ずミスがあるもの』と思って回路図と定数を十分に吟味してからが良い。さらに、同じことを実現するにも異なった手法が主流になっているケースも多いから、改めて情報収集した方が良い。何しろ当時の最先端と言っても半世紀も前である。地デジどころか、(アナログの)カラーTVでさえ黎明期だったころのものだ。陳腐化どころの話しはですまない。そうした意味から全般的に見て初心者向きではないようだ。
どちらの回路集も古すぎてあまり実用的に役立たないが、昔のラジオをレストアする人たちには有用な情報源になるかもしれない。どちらもそんな程度である。 50年も前だからやむを得まい。ラジオ回路の発展史は面白かったが、機器の写真や図があればもっと面白いのだが・・・回路集だから仕方ないだろう。 私は歴史書や古文書を紐解くような面白さを感じた。(笑)
401回路集に続き、501回路集も何れ復刻されるだろう。 そうしないと出版後50年の著作権切れを良いことに、スキャナで取り込んで『Webオンライン回路集』が作られてしまうのは目に見えている。 自ら復刻してしまえば阻止できるし、あわよくば過去の遺産でもう一稼ぎできる? 考えたものである。(笑)
401回路集は1970年ころ、出版社に問い合わせたら既に絶版だった。 そのとき501回路集だけあった。 それから40年近くたって、復刻版が登場するとは思いもよらなかった。(笑)
追記:予想通り501回路集も復刻されました。(笑)