その昔、仕事に使ったことがあるオシロだ。普通の波形観測に常用できるデジタル・オシロスコープとしては初期のものだと思う。 それ以前にもデジタルストレージ機能も合わせ持ったオシロスコープはあったが、サンプリングが低速なのでもっぱら低速の単発現象の観測用であった。従ってたいていは従来のアナログオシロとの複合機であった。扱いが難しい蓄積管式ストレージ・オシロスコープの代用だったのである。Tek 2440はストレージ機能を追加したものではない。常にデジタルモードで使うオシロスコープである。(いまのデジオシのご先祖)
こんな古くさいデジオシなど如何なものかと思う。懐かしさ半分で手に入れたのであってお薦めするようなものではない。ただ、古臭いとは言っても当時(1989年ころ)、225万円もしたので、それなりに高機能・高性能である。サンプルレートやメモリ長では今の物に太刀打ちできないが、トリガの安定性など本来オシロスコープが持つべき性能は十分なものだと思う。20〜30万円のデジオシとは違うクオリティを感じる部分は多い。まあ、それだけコストが掛かっているのだから当たり前だ。500MS/Sで200MHzまで。繰り返し波形に限られるが等価サンプリングで300MHzの帯域幅を持っている。メモリ長は1024ポイントである。
オシロとして普通に使える:
初めてだと管面に波形を出すだけで戸惑うかもしれない。アナログな昔のオシロしか知らぬとそんなものである。 実際、初めての時は何をどうしたら良いのか・・・だったように思う。パネル面にレンジの表示など一切無いからだ。 まあ、そんな時は『AUTO』ボタンである。取りあえず何らかの波形を表示してくれるはずだ。
当時の感想であるが、使ってすぐにデジタル・ストレージ・オシロスコープ(以下デジオシと略)の欠点を感じた。多機能だが整理されておらず旧来のオシロに馴染んだ直感では操作できなかった。おまけにトレースもあまり美しく感じられない。暫くアナログ機から転向できなかったのである。『高級で高機能だから煩雑な操作なのだ・・・』ではツールとして如何なものかと思ったものだ。年月を経て今のデジオシは常用機能を前面に出してずいぶん使い易くなっている。ツールとしては当たり前の進化だろう。
Tek 2440は扱い難かったからフタを閉められ棚に鎮座していることが多かった。当時のリベンジの気持ちを込めてその【古城】の主になってみたようなものだ。 人気がない難物は同時代に半値もしなかったアナログ機より安価なほどだ。わかって使えば優れモノでも無手勝流ではとても使いこなせない。要するに簡単ではないのだ。まあ、オシロの顔はしていてもこいつはA/D変換してデータ処理して表示する別物だと思うべきだろうか?(笑)
これは変調度40%のAM波だがデジオシで見る方法を知らないとこう見えない。 エンベロープ・モードを使う。そうすればそれらしく見ることができる。 もちろんSSBの2-Tone波形も同様である。デジオシ全盛だから既に常識の範囲であろう。今のデジオシにももちろん機能は備わっている。
しかし、アナログオシロのように奇麗に見えないのがちょっと不満だ。 変調歪みの判定が難しい感じだ。 改善されているが未だにアナログオシロを凌駕できていない部分だと思う。 こうした観測にデジオシは向いていないのである。 だからHAMにはCRT式のアナログ・オシロスコープが向いているなんて言うと、時代遅れと言われるだろうか? 拙宅には未だにアナログの古城がある理由なのだが・・・。
HELPボタンを押すと表示される。ロータリ・スイッチ式のレンジ切換えをやめたから此れが必要なのだろう。垂直軸感度も時間軸の刻みもすべてロータリ・エンコーダ式だ。ツマミに現在ポジションの表示は無い。
他の機能も同様でパネルを見ても現在の設定がどうなっているのかわからない。 管面周辺に垂直感度や掃引時間のような主要パラメータは常時表示される。しかしそれだけでは細かく表示しきれるものではない。HELPボタンを押すと現在の状態がこのように表示される。今のデジオシはもっと親切(?)で日本語表示のヘルプも選べるから良くわかったような気分になれる。
このオシロに限らず、マイコンを使いプッシュ・スイッチやロータリ・エンコーダで機能を設定する装置は再起動のとき困ることがある。毎回初期状態で立ち上がるのでは面倒だ。 旧来のロータリ・スイッチ式なら今朝の観測を夕べの状態から始められる。 こんなことは当たり前だと思うに違いない。 それでTek 2440は設定状態をメモリに保持し再投入で昨日と同じ所から立ち上がるようになっている。まあ設計者なら誰でもそうするだろう。(ただ、それが困ることもある。膠着状態に陥っても電源オフで強制リセットしないからだ。だからAUTOボタンがある訳なのだが)
入力波形を表示するだけでなく、このように周波数やP-P波高値を数字表示する機能がある。 波形を解析して数字で表示する機能であって、これは既存のアナログオシロではなかなか困難であろう。 パルスの立ち上がり時間計測や、オーバーシュートなど数値的に捉えて表示する機能がたくさんある。これだけ様々な機能をモトローラの8bitのマイコン:MC68B09でこなしているとは驚いた。
トリガ機能やメモリ機能などの関係で時々旨くない状態に設定して波形が更新表示されない状態に迷い込んでしまうことがある。そんな状態から取りあえず抜けるにはAUTOボタンだ。 良く解ったつもりで使っていても、無意識に膠着状態に陥ってしまうこともある。『AUTO』なんて初心者用だと馬鹿にしてはいけなかったようだ。(笑)
まだ道具に使われている感じがして良く手に馴染んだとは言い難いが、難物も使いこなせるようになってきた。初めて接した昔とは雲泥の差だ。『なるほど、これは便利だ!』などと今ごろ気付いても時既に遅過ぎだろうか。
改めて、普通は今風のLCD式デジオシを買うべきだろう。 小型・軽量でサンプリングも高速でメモリ長もはるかに長い。何よりも扱い易いのが良い。デジタル物は進歩が早く性能対価格比では雲泥なので中古品なんかより、ちょっと頑張って新製品にするのがベストだ。
扱い難い道具を使いこなすのは嫌いじゃないし、この古城もメインとして十分いけそうなので、入れ替えてみようと思う。
またまたレトロな機器の話で失礼した。(^^)
後日談:「古城は住み難い?」は・・・・こちらから。
TTT/加藤さん、ご無沙汰してます。
返信削除相変わらずバタバタしていてROMばっかしです。
今日はTektoronixの2440ということで、コメントしてみました。
何故かというと、当局がお世話になっていたVP-5512Aという松下のアナログオシロ(ヤフオクで\8000)が約5年間のお勤めを全うされてしまったものですから、先週、次に仕入れたのが、Tektronixの2445なんです。(番号が近い)
顔は、アナログオシロなんですが、これもデジタルオシロなんでしょうか?
これも、ヤフオクですが、良いのにあたったみたいで、結構使えそうです。
管焼けもありませんし。
自作で一度オシロを使うとオシロ無くしては何も出来ません(^^;
JN3XBY 岩永さん、こんばんは。
返信削除さっそくのコメントどうも有難うございます。
> これもデジタルオシロなんでしょうか?
2445は普通のアナログ・オシロです。番号は近いのですが、2440とは全く別物なんですよ。(笑)
2445は使い易いオシロです。拙宅でメインに使っているアナログ機も実は2445なんです。
> 一度オシロを使うとオシロ無くしては・・・
特にデジタル回路ではテスタは電源電圧の確認がせいぜいで、ほとんど役に立たないのでオシロなしではとても困りますよね。(笑)
exJA6NHD林ですこんばんは
返信削除当局もテクトロですがTDS320と時代は下り
廉価な製品です、直感的な測定にはやはり
アナログ(きっと頭がアナログなので)機器
がよくこのTDSを中古で入手したあとに
日立のアナログジャンクを5Kで入手して
メンテして使っています。
東京のTDSにはこんな便利はHELPは
ありませんがメーカのサイトからマニュアルを
DLできるのはさすがテクトロだと感じます。
では 73
すいません また投稿方法を間違えておりました。
返信削除ex JA6NHD 林さん、おはようございます。
返信削除コメント有難うございます。
> アナログジャンクを5Kで入手して・・・
デジタルオシロでも機能的には殆どの場合十分な筈ですが、プッシュボタン+階層メニュー式なので、暫く使わないと忘れるのが難点でしょうか。アナログな昔オシロは見れば思い出しますからね。(笑) TDS320も良くできたデジオシだと思いますので、活用されて下さい。
おはようございます。
返信削除> 2445は普通のアナログ・オシロです
情報ありがとうございます。良かったです。アナログを買ったつもりだったので(^^;
ストレージする機能がついていませんから、デジタルではないとは思っていましたが(^^;;
昔は、管の残光特性でストレージするアナログストレージもありましたが...。
P7でしたっけ管の残光特性を表現していた表示は?!
デジタルは、マイコンの制御でもロジアナが欲しくなりますね!
その点で、最近のデジタルオシロも気にはなったのですが、まだまだ高いです。
それで、ついでに同じテクトロのロジアナを¥1200で落としてしまったのですが、ついたらあまりの大きさに途方に暮れています(笑)
送料着払いで、送料の方が高かったです(爆)
おはようございます。
返信削除TDS1000シリーズを使っています。LCDデジオシの出始めのものだったと思います。LCDタイプは小型なので、机も広く使えます。私にはこれで充分です。
「古城」とは、Old Oscilloscopeのことだったのですね。
JN3XBY 岩永さん、おはようございます。
返信削除相変わらずお忙しいようですが、どうぞご健康に気をつけられて活躍されてください。
コメント有難うございます。
> 管の残光特性でストレージするアナログストレージ・・
蛍光体の残光特性を使ったものと、蓄積管と称する特殊CRTを使うものがありました。 拙宅にも蓄積管式がありますよ。プリトリガのような機能はないので、デジタルストレージにはまったく敵いませんね。あれは過去に戻れる機能ですから・・・。(笑)
> ロジアナが欲しくなりますね!
ロジアナですか・・・。 あると便利そうですが個人で所有するほどデジタルはやりませんねえ。最近のロジアナは非常に高機能なので、講習を受けないと使いこなせない感じです。逆に簡易な操作のものもあるようですが・・。1200円の巨大ロジアナですか。ぜひご活用されて下さい。(笑)
JJ3CMV 酒井さん、おはようございます。
返信削除コメント有難うございます。
> TDS1000シリーズを使っています。
昨今はオシロスコープと言えばデジタルですから、最初からデジオシを購入されるお方が殆どだと思います。 今のモデルは通常の観測が誰でもすぐできるよう旨くできていますね。コンパクトで奥行きが短いので机に置いても手前が広く使えて便利です。 昔のオシロは逆に奥行きが長いので、床に立てて置いて使うんですよ。メーカーは嫌がるようですけど。(^^)
> 「古城」とは・・・
はい。ふるいオシロのことです。(爆)
加藤さんこんにちは。
返信削除加藤さんのオシロのパネル写真を見まして懐かしさを感じています。テクトロのアナログオシロは前の職場でよく使いました。現在はLCDパネルのお化けとパソコンのようにOSが走る機械になってしまって、ちょっとさびしく感じています。家ではいつかテクトロの高速アナログオシロを中古で手に入れたいのですが、今のところは菊水の40MHzのオシロでなんとかこなしています。
関係ないのですが、MS WORDでオシロと変換するとお城となって困っています。
JS1XFN 青木さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 写真を見まして懐かしさを感じています。
20年も前の機種ですからねえ。懐かしい筈です。(笑)
> テクトロのアナログオシロは前の職場で・・・
私が就職したころ、某社ではテクトロは滅多に買ってくれず国産i社が大半でした。たいていは大差なくても、トリガの掛け方が難しい観測では差を感じたものです。買ってくれない理由はお値段でしたね。国産の同帯域幅機の2倍以上でしたから。
> テクトロの高速アナログオシロを・・・
製造中止からだいぶ年数が経過しており、良いものが少なくなっています。テクトロにこだわるより最後までアナログオシロを作っている岩通が良いかも知れませんね。新しい物が手に入りますし、どれも良くできていると思います。
> WORDでオシロと変換するとお城と・・・
拙宅のMacでは、第二候補が『お城』ですね。オシロと変換するよう躾けたからかも知れません。(笑)
こんばんわ。ご無沙汰しておりました。
返信削除我が家のお城は、テクトロのTDS210です。ディジタルでモノクロ液晶、テクトロ製と思えないほど安作り、おもちゃのようです。
数年前に、発電機の部分放電観測装置にセンサー変りに使用されていましたが、試験期間が終わって、捨てられまして、ダンプシュートのところで待ち伏せして、捨てられた直後に拾ってきました。
GPIBという古式騒然たるインタフェースユニット、ケーブル、カードはついいていましたが、プローブがなかったので、秋葉原の計測器ランドで2個(校正証書付き)を買い、結構な出費。そのあとすぐ秋月電子でテキサスのプローブ1個1500円を見つけて凄くショックでした。
それ以来、我が家でお城としてつかえてくれています。メモリーもできるし、周波数、最大値、実効値など表示してくれるので便利。むかし、三研のストレージオシロ(残光で記録するタイプ)と比べると、寸法、性能とも別世界。でも最近のカラー液晶のやつがほしいかも。物欲ははてなし。
exMCH 和田さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> テクトロ製と思えないほど安作り、おもちゃのよう・・
お値段がそれなりですから仕方ないですが、道具としては軽量小型でむしろ便利にできてますね。(笑)
> プローブ1個1500円を見つけて凄くショック・・・
プローブなしではオシロは役立たずですからね。でも正規品って凄く高いですよね、今でも。秋月プローブでも十分だと思います。(今は超安価なものは無いようです)
> 三研のストレージと比べると・・・別世界。
あのオシロは松下製でしたっけ? まだまだ貴重な測定器だった時代でしたね。今は数万円で立派なオシロやデジボルなんか数百円ですから良い時代です。自作やレストアを楽しみましょう。(笑)
こんばんは。
返信削除CRTのオシロにソフトメニューのスイッチが付いているのがデジタルらしいですね。
この頃のデジタルオシロは作りは良いですし、あまり使われなかったのか程度もよく、しかも人気がないので安価に手に入ることが多いようです。
もっとも癖が強そうで私は手を出す勇気がありませんでした。Hi
そういえば岩通からはすべてボタンのDSOがありましたがあれは使いにくかったそうです。
>エンベロープ・モードを使う。そうすればそれらしく見ることができる。
最近のDPOだとエンベロープなどが綺麗に表示されますが、DSOはいまいちです。
>普通は今風のLCD式デジオシを買うべきだろう。
2467Bも持っていますが最近は軽くてコンパクトなTDS2024Bばかり使っています。
ボタン一発でUSBメモリに画面のハードコピーも撮れるので便利です。
JE6LVE 高橋さん、おはようございます。
返信削除コメント有難うございます。
> もっとも癖が強そうで私は手を出す勇気が・・・
そうですね。確かに癖があって、使いにくい物が多いようです。2440よりももう少し後のモデルの方が良いのですが、多少なじみのあるこれに手が出ました。(笑)
> 軽くてコンパクトなTDS2024Bばかり・・・
何でもオシロで観測する時代ではないので、そこそこの表示で便利に使えるものが一番なのかもしれませんね。基本的な波形確認が済めば後はスペアナとか・・・これも時代ですね。 近頃はオシロなど殆ど使わないとSさんが言っておりました。(笑)
JR2ATU/澤村です。
返信削除皆さんのお話で物欲がふつふつと……
有名メーカーの新品はとても無理ですから某アジア大国製のやつなんかはどうなんでしょうか。
今は依然リードアウトも無い475AにOM設計のTTTプローブです。
当然中古で入手。一度あちこちが一度に壊れてあきらめかけてたのですが、WEBで適価で修理してくれるところを見つけ修理してもらいまだ現役です。
先日のM1とどっちが古いか。ちなみにM1はおっかさん、475Aはおとーさんと密かに呼んでおります。
JR2ATU 澤村さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 某アジア大国製のやつなんかは・・・
最近のものは結構使えるようですね。安く買える新品となると、有力な選択肢なのですが・・・。
初期不良はお店が交換してくれるので良いですが、数年後に故障した時が問題だと思います。たぶん修理は可能だとしても捨てた方が良いくらいだと思います。
Tek 475Aは70年代のオシロですが、修理・整備済みならまだまだ使えると思います。この頃のテクトロ製は長く使うことを前提に作られていました。面倒さえ見てやれば使い続けることができます。リード付き部品が使ってあるので交換も容易です。お持ちでないならサービスマニュアルを手に入れると良いでしょう。 おとーさんを大切にされて下さい。M1おかーさんもですね。(笑)