写真は,これから順次紹介して行く「新しい」世代の高周波用ICだ。 新しいとは言っても、この分野は進歩著しいので、いわゆるHAMがこれまで自作に使って来たICよりも新しいと言う程度の新しさだ。(それでもずいぶん新しいのだが・笑)
先日:9月4日の「QRP懇親会@秋葉原・喫茶ルノアール」にJH9JBI/1山本さんが持参されたものである。 QRP懇親会は自作派の参加も多いので、有効活用されるお方に・・・とのご提供であった。 5種類のICを数セットご用意されていた。しかし殆ど馴染みも無いICでは、その場で手を挙げるお方は現れなかった。
せっかくなのにこれでは勿体ない。お預かりしてBlogにてご紹介+配布することにした。 調べてみればどれも興味深い高周波用ICだった。自作派なら是非ともチャレンジしたいものばかりだ。(このRF-ICセットは無償で配布予定。詳細は次回・Part 2で)
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まずは、NECのμPA101Gからである。 これはわかり易いICで、簡単に言えばMC1496G/Hの高性能版だ。 ピン・コンパチ品ではないが機能は同じである。
では、違いは何かと言えば「周波数特性」にある。 約1GHzまでのミキサーに使える。 MC1496G/Hはせいぜい50MHzまでで144MHzでは性能低下が著しかった。
SN76514NやSN16913Pと同じような平衡変調器(バラモジ)の目的にも使える。 用途によっては著しい性能向上が期待できるだろう。 SA612を含む旧世代デバイスより、今のギルバートセル型DBMは高性能化している。 こうした新世代のIC-DBMは種々登場しておりディスコンになった古いデバイスを探しまわる時代ではないようだ。
ネット上に詳しいデータが上がっている。実際使う際には参照すべきだが標準的な応用を抜粋してみた。
左図のような標準的「ギルバートセル型DBM」が構成し易いピン配置になっている。 内部のトランジスタはfT=9GHzの超高周波用であり、周波数特性は非常に良くなっている。 グラフの様に500MHz以上フラットな周波数特性が期待でき、1GHzあたりまで実用的に使えそうだ。 無線機のミキサーや検波回路のほかに高周波用測定器にも良い。
内部のトランジスタは超高周波用としては耐電圧が高いのも特徴に思う。12V電源で使えるので広いダイナミックレンジが期待できる。 面実装パッケージだが、ピン・ピッチは1.27mm(普通のICの半分)と比較的広いからハンダ付けも易しい。ハーフピッチのユニバーサル基板にもそのまま実装できそうだ。 あえて欠点と言えば、MC1496G/Hと同じで外付け部品が多いことだろう。その分、融通が利くので最適化設計も可能なのだが。
*このICは案外古くからあって、最初のころはセラミック・パッケージだった。秋月電子でも販売されていたことがある。現在でも高い周波数のDBMとして利用価値は高い。Intersil社のHFA3101は同等品である。
写真のμPC8104GRは、移動体通信端末機器用(携帯電話)のもので直交位相変調器と周波数変換用ミキサーが集積されたICである。 集積度が高い専用のICと言うイメージが強いが、アマチュア的な面白い応用がある。 ピン・ピッチは0.65mmとやや狭いがピッチ変換基板に実装すれば扱い易くなるから大丈夫だ。
直行位相変調は位相と振幅を組み合わせたデジタル向きの変調であるが動作はアナログな回路である。 信号の位相と振幅を変えて、多値のデジタルデータを送るのに使う。 詳細は専門書やWikipediaの直角位相振幅変調の参照を。
【μPC8104GRの機能】
もともとは図の下のように携帯電話・PHSの送信変調回路に使う物だったようだ。 もちろん、音声を直接変調するのではなく、A/D変換された後のデジタル信号を扱っている。
しかし、PSN方式のSSBジェネレータを作ったことがあれば機能ブロック図に良く似たところがあることに気付くかも知れない。
Lo1と言う端子にキャリヤ信号を与える。またIとQと言う端子に、90°位相の異なった音声信号を与えてやればPSN式のSSBジェネレータが作れそうなのである。
特筆すべきは位相が90°異なったキャリヤを作る回路が内蔵されていることだろう。 従って、発生させたい周波数のキャリヤを与えれば直接その周波数でSSBが得られる。
要するに、50MHzとか144MHzでいきなりSSBが作れるわけだ。もちろんPSN式だからSSB用のクリスタル・フィルタはいらない。
左図の左下に示した「実験して学ぶ高周波回路」に、直交位相変調用のICをPSN式SSBジェネレータに応用する実例が掲載されている。(左図書籍はいまでも普通に購入できる)
書籍では、一世代前のμPC8101GRを扱っているが、新しいμPC8104GRも同様の機能を持っている。おもな違いは周波数変換用のミキサー回路が追加されているところだ。 PSN-SSBに必要な直交位相変調回路はどちらも同じようだ。
注記(μPC8101GRとμPC8104GRの違いについて):上記書籍の記述ではμPC8101GRのSSB出力が入力キャリヤと同じ50.2MHzとなっている。これは誤りで半分の25.1MHzとなる。μPC8101GRは、μPC8104GRと違ってクロック逓倍器を内蔵していないためだ。μPC8104GRはブロック図のように入力キャリヤを2逓倍してデジタル移相器に加えているので入力キャリヤと同じ周波数のSSBが得られる。
SSBジェネレータを作るにはオーディオPSN回路の外付けが必要になる。 記事のようなPPSN式でもオールパス式でも好みのものを。あるいは懐かしいナガード型やJA7LKタイプも良さそうだ。
無調整でもキャリヤ・サプレッションや逆サイド打消しは40dB程度得られる。調整により改善もできそうだが、VHFの空いたバンドで試すなら無調整でも行けそうに思う。
Specによればキャリヤ周波数は100MHzから、I・Q信号はDC〜10MHzである。 音声信号を扱うには問題ないが、キャリヤに90°位相を付ける回路の下限周波数が気になった。 ある程度マージンがあると思うので、キャリヤ周波数=50MHzで試してみる価値は十分あるだろう。 追加されたミキサーは1.2GHzを扱える。遊ばせてしまっても良いが、旨く使えば50MHzでSSBを発生し1.2GHzでSSBを得ると言ったことが数チップで可能かも知れない。これはなかなか凄い時代だ。(笑)
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Part 1ではアナログな信号を扱う新世代のチップを紹介しておいた。
次回・Part 2では、PLLやVCOと言ったデジタルなチップを扱うことにする。
(Part 2へ続く)==>こちら
おはようございます。ようやく朝晩が涼しくなったと思ったら、また猛暑&熱帯夜がやってきて参ります。
返信削除頒布予定品のご紹介をありがとうございます。V/UHFマンにはヨダレが出そうな部品ばかりで、以前なら現地で無条件に手を出したと思いますが、今回は静観させていただきました。使わないまま死蔵させ、挙げ句に陳腐化させても… というのがその理由です。
こういうときに限って名乗りを上げる人がよくいますが、頒布を受けるからにはぜひ有効活用し、願わくばレポートを出して欲しいものです。
かくいう私はすっかりオーディオ方面に走っています。Hi. なので、再び無線に関心を持ったときに改めて「旬」のデバイスを物色した方がよさそうです。
JG6DFK/1 児玉さん、おはようございます。 今朝も朝から暑いですねえ。。。
返信削除さっそくのコメント有難うございます。
> V/UHFマンにはヨダレが出そう・・・
μPC8104はVHF向きのようですが、μPA101は低い周波数でも使えます。 パッケージも小さいですから、チップ抵抗やコンデンサでコンパクトに組みたいですね。
> 改めて「旬」のデバイスを物色した方が・・・
次世代になると、さらに集積化が進んでRFを含むシステムがワンチップ化されています。 おそらく、この世代のまでのICの方が活用し易いように感じます。 まあ、システム化しても活用は工夫次第なんですけど・・・。(笑)
ご興味があるようでしたらお申し込み下さい。 次回ご紹介のデジタルなチップの方がご興味かも。hi hi
おはようございます。
返信削除9月に入っても酷暑が続いていますが、
朝夕は少しましになりました。
「実験して学ぶ・・」は私も持っていまして興味深く見ていましたが。
直交位相変調器やイメージリジェクションミキサーなどのモバイル通信機器に使われているICはアマチュアに使えればおもしろそうだなあと思うのですが、対応周波数が高い周波数の物が多いことや、入手方法などで最初からあきらめていることが多いです。Hi
ご紹介のICはまだハンダ付け出来るサイズですね。
ぜひ小型VHFSSBTRXを作成されてください。HiHi
JE6LVE/3 高橋さん、こんにちは。 北関東は曇り空なんですが、たいへん蒸し暑いです。 部屋のお掃除をしたら汗だくでした。(笑)
返信削除コメント有難うございます。
> 入手方法などで最初からあきらめている・・・
余剰品は大量にあるはずなのですが,ニースが少ない関係で表に出て来ないのでしょうね。 面実装タイプなのも影響していると思います。 お書きのように低い周波数で使えるとさらに面白いのですがV〜UHF専用が多いですね。
> ぜひ小型VHFSSBTRXを作成されてください。
「情報+ブツ」があれば実際に製作されるお方があるのではないかと思います。hi
あきらめて見過ごしているICも多いのかもしれません。
どうもおはようございます。またエアコンが稼働しだしました。HiHi
返信削除早速の紹介ありがとうございました。
気になるところを。
upc8104のところですが8101との違いはクロックダブラを持っているので入力と同じ周波数のIFを出力できるというところが違います。8101はFFで2分周して90度を作っているので、紹介本は間違っていて50.2MHzの水晶では25.1MHzのSSBが出力です。スペックでは8104は100MHzからとなっていますが、データシートのグラフは50MHzから出ているので使用可能だろうと判断しています。
単なるFFのほうが純度が良いでしょうから、8101が入手できたらとは思いますが、今あるものはしょうがないですHiHi
この手のものとしてはやはりディスコンですがmaximのmax2452が面白いです。これはne612のI/Q版といえるものでosc/位相回路/2つのdbmが入っていて、osc用の出力もついているので更に少チップ化できそうです。
こういうディスコン品でも会社相手の卸には在庫品としてあるようなのですが個人にはなかなか入手できないのが残念ですね。
JH9JBI/1 山本さん、こんにちは。 拙宅でもエアコンは全開ですよ。 本日フィルタも掃除したので効きが良いです。(笑)
返信削除コメント有難うございます。
> 同じ周波数のIFを出力できるというところが・・・
μPC8101の資料をDLして確認しました。 なるほど、8101の方はLoの半分の周波数でSSBが出て来ますね。hi hi
本文の方に注意書きを追記しましょう。
8104はエッジ検出式のクロック・ダブラだと思うのでどの程度の性能が得られるのか気になりますが、比較しないとわかりませんね。 8104よりも後の世代のチップもクロック・ダブラ内蔵しているので目的に対しては実用的な性能なのでしょう。 SSBに適するのかは別問題かもしれませんが。
> ディスコンですがmaximのmax2452が面白いです。
こちらの方は、PSN-SSBと言うよりイメージリジェクション・ミキサーに使ってみたい感じ。 でも、ディスコんですか。 Maximならサンプル要求も可能でしたので残念ですね。
> 個人にはなかなか入手できないのが残念・・・
RSコンポとか、持っていませんかね。hi
新世代のRF-ICはますます足が速いのかもしれません。
こんばんは ご無沙汰です。
返信削除VCOはもしかしたら VARIL社製のLVCO-2408Tですか
それなら以前たくさん持っていました
周波数が約400~500MHzでほぼリニアに変化するのと FM変調端子が付いているので実験用にはおもしろそうです。
JO3DTY 山本さん、こんばんは。少々ご無沙汰でした。
返信削除コメント有難うございます。
> VARIL社製のLVCO-2408Tですか・・・
写真をご覧になっての通り、それですよ。hi 次回扱います。詳しい情報をお持ちでしたらご提供頂けると有り難いです。
> 実験用にはおもしろそうです。
そのようですね。 これはICではなくてモジュールですが、一緒に扱います。 配布品に含まれていますので。
皆さんに活用してもらいましょう。
詳しい資料はないのですが
返信削除http://www.dty.sakura.ne.jp/pics
に外形図とサンプルで周波数測定をしたデータをアップしておきます。
電源電圧はたしか5vだったように思います。
URL訂正です。
返信削除http://www.dty.sakura.ne.jp/keisoku/pics
JO3DTY 山本さん、おはようございます。
返信削除資料有難うございます。
外形と接続についてはわかっておりましたが、Vtと周波数fの関係がはっきりしたのはFBです。 かなり広い可変範囲があるVCOですね。
資料は説明用に使わせていただきたいと思います。 支障が有るようなら、お書き下さい。
どうもありがとうございます。
JO3DTY 山本さん、はじめまして。供出元の JH9JBI/1 やまもとです。
返信削除f特の資料をありがとうございます。結構、高電圧をかけられるのですね。名前からもともと2.4G帯のVCOと勘違いしており、400MHz程度と判ってからも時代的にもVccが3~5Vで発振するという点からも制御電圧が5V程度までかなと思っていましたので、電圧が掛けられることがわかっただけでもありがたいです。
実際、この周波数で15 MHz/V程度の感度があるわりには周波数のふらつきが少なくて使いやすいと感じました。さすがに温度感受性はある程度あるのでPLLをかませないと実使用には耐えませんが。
こんにちは JH9JBIやまもとさん
返信削除私も最初2.4GHzのVCOかと思って購入したのですが意外と低い周波数でした
制御電圧はこの手の物はたぶん5Vくらいまでと思うのですが
詳しい資料がないので実際にどれくらいまでOKなのかはわからないので10Vまでテストしました。
アンテナをつけて送信機にするのなら周波数を安定化する必要がありますが RFブリッジの信号源とか 簡易スイーパーとかで使用するなら結構リニアリティーがいいのでそのままで使えるのではと思います。
JH9JBI/1 やまもとさん、JO3DTY 山本さん、こんばんは。
返信削除このBlogを切っ掛けに情報交換が出来たようで良かったです。 RF用パーツも、様々なジャンク(余剰品)を見かけますが、モジュールの類いは仕様がはっきりしないので活用できないケースも多いものです。 こうやって、使い方がわかってくると利用価値も広がりますね。FBです。 hi