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2011年4月3日日曜日

【部品】Thermistor

Thermistor:Disc Type】円盤形サーミスタ
 サーミスタと言えばトランジスタ・ラジオの教科書にも必ず説明が出てくる電子部品だ。 昔からトランジスタ・ラジオのB級Push-Pull低周波出力段の温度補償に使われていたからだろう。

 写真はメーカー不詳だがそうしたラジオ用のものである。ずいぶん前から拙宅のジャンクボックスに眠っていた。 オレンジ色は150mWクラスの出力段用で茶色は500mWクラス用だろうか。

使用目的から、低い電圧のところで比較的大きめの電流を流す必要があるので低抵抗に作ってある。 25℃の抵抗:R25は数10〜数100Ωと言ったところだ。B定数は3000K(ケルビン)程度の物が多い。

 左図は一般に入手可能であった東芝製のサーミスタとその特性一覧である。 主にゲルマニウム・トランジスタを使ったB級プッシュ・プルアンプのアイドリング電流を温度補償するために使用する。 目的から、被温度補償トランジスタとは良く熱結合するよう実装する必要がある。 そのため、細く長いリード線が付いていた。 既に過去の部品であって入手するのは困難だ。(2016.04.06追記)

#ポピュラーなサーミスタ:有名な東芝のD22AはR25=200Ω、B定数=3250K、許容動作電流=5mA、主に2SB56のB級PPアンプ用であった。

6 Transistor Radio】AM 6石ラジオ/6石スーパー
 サーミスタはゲルマニウム・トランジスタを使ったラジオに良く使われていた。低周波出力段の無信号バイアス電流(=アイドリング電流)の安定用に使っている。(R13がサーミスタ)

 図はその一例で、B級プッシュプル出力段のアイドリング電流を温度安定させるために用いる。 温度上昇するとコレクタ電流が急増しさらなる発熱から熱暴走する危険がある。それを抑えるのが目的だ。そのためサーミスタはトランジスタの近傍に置き熱的に結合させるのが良い。(既成品AMラジオの部品を流用しで再設計した。図中の数値は試作後に実測した値を示す)

 サーミスタの抵抗値は温度低下に対して指数関数的に増加するので並列抵抗を入れて効き過ぎないように加減する。そうしないと少しの温度降下でアイドリング電流過大になってしまう。温度上昇する方向では温度補償の効き方が過剰になる傾向にあるが、高い温度での電流減少は安全方向なので良しとしているのであろう。ゲルマニウム・トランジスタはVbeが小さいうえIcbも流れるからクロスオーバー歪みが極端に悪化しないのも幸いしている。

 トランジスタ・ラジオのメーカーによって低周波出力段の無信号バイアス電流の温度補償にお好みがあったようだ。 東芝はおもにサーミスタを使い、日立や松下はバリスタ・ダイオードを使うケースが多い。 この設計では日立の古典的なゲルマニウム・トランジスタを使ったのでバリスタの方が良かったのかもしれない。もちろんサーミスタでも支障はないが。 いずれにしてもバイアス回路はそれぞれ最適設計する必要がある。

 サーミスタは高感度で一般に熱時定数も小さいので温度補償特性は良好である。 一方、バリスタは温度検知感度は低いが減電圧補償にも効果があるので電池が電源のラジオには有利である。バリスタ・ダイオードはなるべく出力トランジスタの近傍に配置し密に熱結合した方が良い。 サーミスタかバリスタか、このあたりどのような性能を重視するかでメーカーの好みが別れたものと思う。(注:ここで言うバリスタはエレキーのPhoto-MOS保護に使ったものとは別もの。過電圧保護用バリスタではなくてバイアス安定用のバリスタ・ダイオードと言うもの)

#シリコン・トランジスタの時代になるとバリスタ・ダイオードを使うケースが多くなった。

Thermistor:Sensor Type】センサー用サーミスタ
 サーミスタは温度センサとしても良くも用いられる。 温度センサには「白金測温抵抗体」や「熱電対(ねつでんつい)」がよく使われる。 サーミスタはこれらよりもやや精度で劣るものの温度感度が良い(=出力電圧が大きい)ので簡単な回路で扱い易い特徴がある。

 写真の物は25℃の抵抗が10kΩのサーミスタである。秋葉原の国際ラジオから通販(残念ながら同社は2014年5月末に廃業した)で購入した。製造メーカーはSEMITEC・石塚電子である。(103AT-2型:R25=10kΩ、B定数=3435K)

 温度センサとしては数kΩ以上のものが適している。 やや大きめの電圧を加えても自己発熱が少なく、温度に対する電圧感度を高くできるからだ。 抵抗値は温度に対し指数関数的に低下するから、室温でこの程度の抵抗値がないと高い温度では低くなり過ぎてしまう。もちろん室温付近で使うのが目的ならもう少し低い数kΩのサーミスタで良い。

温度は26℃くらい?
 ファンヒーターから温風が来る場所で測定したので10kΩよりもやや低かった。26〜27℃くらいだろうか? (テスタは抵抗×100Ωレンジ)

 これは常温から100℃あたりで使うのに丁度良いサーミスタだ。 いま目的とするのは80℃で、1.6kΩくらいの抵抗値になるからだ。なお、サーミスタの温度と抵抗値の計算はここ(←リンク)などを利用すると便利。

 温度センサとしての用途の他に各種電子回路の温度補償用にも良いだろう。 但し上の例のようなB級プッシュプル出力段にはあまり適当ではない。(抵抗が高過ぎてうまく使えない)

OCXOのヒータ・コントロール
 オーブン制御型水晶発振器:OCXOの自作は難しくない。 水晶発振回路は一般的なもので良く、オーブンを設けサーミスタで温度検出して加熱用ヒータを制御してやれば良い。 これはそうしたヒータ・コントロール回路の一例だ。(注:回路及び部品定数は変更される可能性あり)

 センサは上記の10kΩサーミスタを使いヒータにはPNPトランジスタそのものの発熱を使っている。 従ってヒートシンクとトランジスタの熱結合を良くする意味から、コレクタ・フィンを直接GNDできるPNPトランジスタを発熱体に用いた。 サーミスタ部分の電圧をモニタすれば制御状態を監視することができる。温度モニタになるわけだ。モニタ用にバッファ・アンプも付けておいた。 基準電圧の側を外部から操作できるようにしておけば温度可変型のオーブンにもできる。 回路はオーソドックスだが、このあたりが私の工夫の部分だ。

 銅板のような熱伝導の良い金属板に(1)発振回路の水晶振動子、(2)PNPトランジスタQ1、(3)サーミスタをそれぞれ旨く熱結合するよう実装する。 もちろん熱放散してしまわぬよう熱的に浮かせる『熱絶縁』に努め周囲は断熱材で覆う。

 さらには水晶振動子と発振回路をもう一回り囲って同じように温度安定化してやればベストであろう。すなわちダブルオーブン型だ。 その場合はPNPトランジスタで発熱させるのではなく、マンガニン線などのヒータ線を巻いて「囲み」を加熱するようにする。 温度は内側より多少低い程度に設定するのが良いはず。

#言うまでもないが、ここで使う水晶振動子はOCXO用として80℃を指定したものを使う。

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 やや珍し系のデバイスとしてサーミスタを扱ってみた。 温度センサは各種あるがサーミスタは高感度なので簡単な回路構成で温度制御しやすい特徴がある。高級なOP-Ampなど高価な部品を使わなくても高性能が実現できる。 但し長期間連続して高温度の環境で使うのならより安定性に優れるガラス封止型のサーミスタの方が安心かもしれない。しかし実験的にはこのサーミスタが十分使える。 de JA9TTT/1

(おわり)