【Chinese DDS Modules】
中国製の600円DDSモジュールである。既に以前のBlogで紹介済みのものだ。もうこの話題は終わった筈だったのだが・・・。
写真の2つの購入時期は異なっているが同じサプライヤーから購入した同じ製品だ。 しかし、よく見るとちょっと違うことに気付く。 まずはLEDの色が違うことは誰でもすぐわかる。 他にもよく見ると左右のコネクタ部分にあるシルク印刷にも違いが見られる。
印刷マーキングの色が違うので別物と思うかもしれないが、搭載されたDDS-ICはどちらもAD9850BRSである。Lotは違うが同じメーカーの同じICである。 また消費電流ほかによる判定ではどちらもホンモノのICのようだ。 印刷マーキングの違いは単純にサプライヤーが入手したLotが違っただけだろう。
要するに、僅かな違いはあるにしても基本的に同じ物だと思って良さそうだ。 これまで、そう思って左の黄色いLED基板を主に評価して来たのであった。 これは単に先に入手した物で始めたからにすぎない。
左のモジュールが2011年12月末ころ最初に購入した物で,右の方は約1ヶ月ほどあとの2012年1月末ころになって追加で購入した物である。 仮に、黄色のLEDのモジュールをNo.1、赤色のLEDのモジュールをNo.2と呼ぶことにしよう。
【125MHzのクロック発振器】
写真はDDSモジュールに搭載されていた125MHzのクロック発振器だ。 先のBlogによる評価のように、ノイジーで使い物にならないのは次の写真の通りであった。
左が黄色いLEDの基板、即ちNo.1から外した物で、右が赤色のLEDの基板No.2から外したものだ。
どうだろうか? 写真をクリックして拡大して見てもらえたらと思う。 それで、外観で区別はつきますか?? よくよく見ても右のユニットが多少光沢が無く、くすんだ感じに見え文字のマーキング位置が僅かに下方気味のように見える程度だ。 しかしそれとて言われなければわからないだろう。 ロットNo.の様な印刷は裏面にもないし、メーカーもまったく不詳である。 文字のフォントも同じなのだから同じ所で作られた同じ種類のクロック発振器なのだろう。 誰しもそれを疑がわないように思うのだが・・・。
【125MHzクロック発振器の特性】
毎度こんな写真ばかりで恐縮だ。 これは125MHzを中心に、2MHzのスパンで見たスペクトラムである。 改めてNo.1の方を測定してみたが前に見たものと同じようなものだ。(観測した個体は前とは異なる)
125MHzから約150kHz離れたあたりで、-56dBcのノイズ・サイドバンドがある。 けして褒められたような性能ではなく、こんなクロックを元にDDS-ICを使うのは宜しくない。 当然、DDS-ICからのアウトプットにもスプリアスが感じられた。
その対策として別のクロック発振器に載せ換えたり、自作のクロックを製作した訳だ。その辺りの経緯は前のBlogに帰って確認して欲しい。 安価なDDSモジュールと言う諦めもあるが、少し残念な所だった。
【125MHzのクロック発振器・裏】
上の写真の裏側である。そっくりに見えたクロック発振器だが、裏面を見ると少なくとも異なったLotであるらしいことがわかる。
見ての通り、底面の3カ所にある半球状の突起の色が違うのだ。 「だからどうなのだ?」と言われそうだが、見た目もともかく実は大きな違いがあったのである。
左が、No.1のDDSモジュールから、右がNo.2のDDSモジュールからのものだ。 要するに、右のNo.2の方はあとから購入したものなのである。 同じ時期に購入した同一グループ内ではすべて同じ色であった。 即ち先に買った黄色LEDのグループはすべて白色、あとから買った赤色LEDのグループはすべて黒色なのである。 私の持っている物では混じっていることは無かった。
なお、赤色LEDの基板で裏に黒い半球のあるクロック発振器が載っているからと言って、以下の性能が保証できるとは言えないだろう。 私の手持ちで単にそうした共通点が見られたと言うだけの話しだ。 実際に信号を見て確認する以外に確実な方法はないと思う。 慌て者は早とちりしないよう要注意だ。 オークションの出物も出品者のコメントを鵜呑みにせず用心したい。
【No.2のスペクトラム】
上の写真と同じく、125MHzを中心に、2MHzのスパンで観測している。
言われるまでもなく、その違いは一目瞭然だと思うが、如何だろうか?
125MHzの近傍にはノイズ・サイドバンドがあって、少し盛り上がっているが、キャリヤから見て-78dBc程度のものである。
既製品のクロック発振器としては、それほど悪いものではないと言えそうだ。マズマズと言って差し支えない性能だと思う。 「奇麗で素晴らしい」とまでは言えそうにないが、まず使えそうなノイズレベルだと感じられる。
【No.2のキャリヤ近傍スペクトラム】
そうなると、近傍のスペクトラムも気になってくると言うものだ。
写真は125MHzを中心に50kHzのスパンで観測している。 全体にノイズフロアも下がっているが、これはスペアナのRBWを狭くしているからだ。
キャリヤ(125MHz)から約7kHzほど離れた位置に-72dBcのスプリアスが存在する。 それほど大きいとは言えないがやや気になるレベルである。 5th Overtone水晶発振回路で自作した125MHz発振器には見られなかったものだ。
結局、かなり良いとは言ってもこのクロック発振器はやはりPLL式なのであろう。 実際にDDSからの信号を見て良し悪しの判断をする必要がありそうだ。 気になるスプリアスがあるとは言え、実用になる性能が得られるなら使い物にはなるのだから。
【15MHzのスペクトラム】
DDSから出て来た信号を観測している。前回の評価と同じように、15MHzを中心に50kHzスパンで観測してみた。
クロック発振器にあったスプリアスの影響は感じられず、まずまずなスペクトラムと言えよう。 ノイズフロアも十分低いから奇麗な信号と思って良い。
どうやら、No.2のクロック発振器ならDDSのクロックとして使えそうだ。 ただ、本当に大丈夫なのか、幾つかの周波数を発生させて様子を見ることにした。 もしもスプリアスが強く出る周波数のようなものがあるなら注意しなくてはならない。
【7MHzのスペクトラム】
7MHzを中心に50kHzスパンで観測してみた写真である。
左に小さく見えるスプリアスは、測定環境によるものだ。 測っている場所には7MHzのアンテナほか引き込んであるので、どうしても外来信号が大きく見えることがある。
実際に受信機を使い、ビートを掛けてモニタして見たが良くできた水晶発振器と区別がつかない良い「音」に聞こえた。 様々に周波数を変えて行くとスプリアスの発生も見られたが、それはDDSの仕組みによるものであって奇麗なクロックを与えても生じるものである。このクロック発振器固有の問題ではなさそうだった。
【No.3のキャリヤ近傍スペクトラム】
No.3と言うのは間違いではなくて、No.2とおなじLotの、別のクロック発振器、即ちNo.3の測定結果だ。
赤色LED基板に載ったクロック発振器は良好だとわかったが、念のために「別のもの」も評価してみる必要がある。 ひょっとしたら単なる発振器のバラツキなのかも知れない。
-72dBc程度と言うスプリアスレベルは、No.2と同じようなものであったが、キャリヤからみたスプリアスの位置が違うようであった。 こちらは約9kHz離れている。 このように、すこし様子が異なるのはPLLの仕組みによるものではないだろうか。理由の解明にはまだ至っていない。 もちろん、スプリアスレベルに差はないのでDDSから得られる信号も奇麗なものだった。 DDSモジュールを使う上で少々の違いは気にしなくても良さそうである。
再掲載になるが、これは自作クロック発振器のスペクトラムである。
5次オーバートーン発振器で作ったものなので、PLL式のようなキャリヤ近傍のノイズサイドバンドや変なスプリアスは現れない。 明らかに奇麗な信号であって、いまだ自作するメリットは大いにあると感じられる。
ただ、DDSモジュールから得られた信号が実用上支障のないものであるなら、あえて自作する必要は無いのもその通りだ。 もちろん黄色のLEDが付いて来たDDSモジュールの方は奇麗なクロック発振器への交換が必須である。 こうした自作クロックを供給するか、別の奇麗な発振器に載せ換える必要がある状況に違いは無い。
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この話しの発端はBlogに頂いたJE1UCI冨川さんのコメントである。また、別途メールも頂いていた。 曰く、クロック発振器(外観)を見た感じでは有意な差はないが、出てくる信号は私の評価と違って十分奇麗だと言うのである。 まさかと思いつつも、ずっと気になっていた。 近日、冨川さんが購入されたDDSモジュールを持参されると言う話しにもなっていたほどだ。
見かけの違いがないので、おおいに先入観をもって判断していた。基板から外さなければ違いなど無いと思うのが普通だろう。 しかしクロック単体で新旧の比較測定くらいはやってみる必要を感じていたのであった。 3月頃から作業環境改善の為に部屋の整理整頓など大々的に行なっていたのでだいぶ遅くなってしまった。今になってやっと確認することができたのであった。
結論は言うまでもないだろう。貴方が入手したDDSモジュールはどうだったのだろうか? de JA9TTT/1
(つづく)←クロック発振器の話しは一旦終わってDDSモジュールの活用編へリンク。