【Tektronix 466 オシロの修理】
かなり古いオシロなので廃棄処分も考えたのであったが、 一応見てからダメそうならと思って始めたら案外簡単に直ってしまった。
Tektronix 466は1970年代後期から1980年代に掛けて製造されたストレージ・オシロスコープである。 今のデジタル・オシロとは違って、CRT(ブラウン管)そのものに波形記憶機能を持たせたものを使っている。(直視形蓄積管と言うもの) もはやそんな特殊な電子管(CRT)が作られることは無いに違いないから、電子計測器の歴史遺産でもあるだろう。しかし、デジタルストレージのようにアンチ・エイリアス/デシメーションフィルタなど入っていないので常にフル帯域でストレージでき、例えば100MHzなら100MHz帯域幅なりの「真の波形」が記録できると言った大きなメリットがあるのだか・・・。
もちろんストレージ機能を使わずに使えばごく普通のオシロスコープである。 通常はそのような使い方をしていて一般的な100MHzのアナログ・オシロスコープと同じように使える。 もともと非常に高額なオシロであったから数は少ないと思う。ヤスモノの単なるアナログ・オシロなら修理などしなかっただろう。
10年くらい前に時間軸が揺らぐと言う不調な中古品を購入して直したものであった。 外観はマズマズだったが雨ざらしになった事があるようで、内部の程度はけして良くはなかったが修理したら意外にも快調そのものであった。 それがちょっと前にまた壊れたのであった。使っていたら少し煙が出てトレースも消えた。 持病の再発だろうか?
【基板がリーク】
基板が炭化しており電流リークしていた。 根本の原因は良くはわからない。 可能性としては、(1)基板の汚染によるトラッキング、(2)ケミコンの電解液漏れなどであろうか。 写真のケミコンは、前の修理でも交換していた。 この部分には元々タンタルコンデンサが使ってあったと思うが、焼損しており交換を行なってあった。
最初に焼損したタンタルコンの熱で基板の炭化が始まっており、それが拡大した可能性もありそうだ。パターン配線間の電位差が大きかった関係で炭化が進行したのかも知れない。 炭化したお陰で隣接のパターン配線との間に無用なパスができてしまい正常動作しなくなってしまった訳だ。 場所は水平軸アンプなので変なバイアスが掛かってトレースが何処かに飛んでしまったのであろう。
炭化部分を削ってなるべく除去し、付近の配線パターンは切断して迂回退避することにした。 写真の緑と白のジャンパー線がそのバイパスである。 これでめでたく正常な動作に戻った。 捨てる筈だったものが直ったのでもう暫く使うことにしよう。 既にメインはデジタルオシロに交代しているのだが、デジタルにはない良さがあるのでアナログも捨て難いものがある。(笑)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ゴールデンウイークの前半はコテやパドルも握らず、キーボードも打たず美術館とか史蹟の見学に出掛けていた。自宅にいる時は主に自室の整理をしていた。 その部屋の片付けの一環でこのオシロも処分しようかと思っていたのだ。 ただ、使っていて故障した際の状況から予想して比較的簡単に修理可能ではないかと思っていた。ざっと見てダメそうならば・・と思い、今日はドライバとコテを手にしてみた。大掛かりな修理に拡大しそうなら早々にやめるつもりで。
最初に疑われたのは電源回路部分である。 前回の修理でも電源の一部が故障していたからだ。 このころ(1970〜80年代)のテクトロのオシロと言えばタンタルコンが壊れるので有名だ。 しかし今度はどうもそうでは無いようであった。 各電源の電圧を当たっても概ね正常そうだし、目視では発見できなそうである。やれやれこれは厄介な修理になりそうだと感じた。 しかし、何となくガラエポ基板がこげる独特の「焦げ臭さ」を感じた。それで嗅覚を働かせて匂いの元を特定しようとしてみた。 そしてその匂いがする付近でほんの一瞬だが赤い光点を見たのである。 それが手掛りになって故障箇所が特定でき、一気に修理が進んだのだ。(赤い光点は微小に基板の『炭』が燃えたのである)
『匂い+光』で修理できた訳だ。修理には五感を十分に働かせる大切さを感じた次第。 まあ、また壊れそうなこんな物を修理しても仕方がないのかも知れないけれど・・・。直れば何となく嬉しい。 de JA9TTT/1
(おわり)
加藤さん、こんばんは。
返信削除オシロの話題でつい反応しましたが。
蓄積管ではなく蓄積出来る機器という物ですね。懐かしい気がします。
私はオシロの岩通におりましたが部署の関係でオシロはユーザーの立場でした。
現有のオシロはアナログの100メガですが知人から易く購入しました。
最近は接触不良が何回も起きて手で叩くと言う対処法で何とか使っています。
不良箇所は基板間のコネクターと判明していますが交換する気にもなりません。だましだまし使う です。
では又。
JO1LZX 河内さん、こんばんは。 不安定な空模様が続きますね。
返信削除さっそくのコメント、有難うございます。
> オシロの話題でつい反応しましたが。
残光と完全蓄積の中間のような機能のオシロです。 単発現象の観測には威力を発揮したものですが、デジタルオシロとは違って、プレトリガのような過去に遡ることはできないので使い方が難しかったですね。(昔仕事で使いましたので)
> 手で叩くと言う対処法で何とか使っています。
叩くと治ると言うのは良くある故障ですね。 製造後時間が経過してコネクタやソケットの酸化が進むと起こるのでしょう。完治には部品交換しかないので厄介です。
リグも測定器も年代物はお守りがたいへんですね。(笑)
加藤さん、こんばんは。
返信削除ディジタルオシロとかストレージオシロの良いところは単発現象が適度に観測出来る点でしょうね。
私はアナログオシロでCW信号の一単点を観測するのに花火撮影モードで苦労してやってました。
何か他に良い方法が無いもんかといつも思っています。
では又。
JO1LZX 河内さん、こんばんは。 今日は秋葉原の懇親会で先ほど帰宅しました。
返信削除再度のコメント有難うございます。
> 単発現象が適度に観測出来る点でしょうね。
特にデジタル・ストレージの場合は、特別な工夫なしにトリガが掛かる以前の予兆の部分から捕捉できるのが強みですね。アナログのストレージではなかなか難しいことです。
> 何か他に良い方法が無いもんかといつも思っています。
デジタル・ストレージオシロが最適な用途ですね。ずいぶん安価になっていますので、次期候補に如何でしょうか? 他の方法はむしろ難しそうです。hi hi
加藤さん、こんにちは。
返信削除ご自分で原因箇所を突き止め、修理されたのですね!
凄いです!
症状から、ある程度場所は特定できるとはいえ、基板の炭化場所を開放しての修理はテクトロさんでもおそらくやらないでしょう(笑)
当局の場合は、以前使用していた中古のオシロの垂直飛びがあり、修理しようとは思いましたが、ケース内部ががんじがらめで、開腹できないまま、最終的には処分しました(爆)
連休最終日ですが、今始めてPCを稼動させた所です。半田ごては冷え切ったままで終わりそうです。
JN3XBY 岩永さん、こんにちは。 連休もいよいよ終わりますね。 長かったような、あっという間だったような・・・。
返信削除コメント有難うございます。
> 基板の炭化場所を開放しての修理はテクトロさんでも・・
こんなことはプロはやらないでしょうね。動けばOKと言う素人修理の典型でしょうか。(爆)
> 以前使用していた中古のオシロの垂直飛びがあり・・・
オシロスコープは半導体式でも意外に高い電圧が掛かっていたので故障し易い印象を受けますね。特にアナログ時代のオシロは回路も切換え系統も複雑なので修理は厄介な測定器だと思います。ダメなら廃棄も仕方がない感じです。
> 半田ごては冷え切ったままで終わりそうです。
私もこのオシロの修理に数カ所ハンダ付けしただけの連休でした。hi hi
加藤さん、こんにちは。
返信削除連休は片づけで終わってしまいました。(それにまだ片付けが終わっていない。笑)
オシロの基板自身を修理できるのはすばらしいです。
テクトロというと、筐体の水色の塗装を思い出します。最新の30GHz超のリアルタイムデジタルオシロも同じ水色です。最近はテクトロは少し元気がないようですが、若手の頃に職場でよくテクトロのオシロにお世話になり、オシロはテクトロというイメージがあるので頑張って欲しいです。
すみません、先ほどのコメントでコールサイン間違えました。お詫びして訂正します。
返信削除JS1XFN 青木さん、今晩は。 関東は怪しいお天気ですね。先ほどは夕立がありました。
返信削除コメント有難うございます。
> 連休は片づけで終わってしまいました。
私も部屋の片付けがまだ終わっていませんが、休みの方は終わってしまいました。
> オシロの基板自身を修理できるのは・・・
まあ、発見された現象に対処療法で手当てしただけですので大したものではありません。 以前の修理では回路的な追跡で原因究明したのですが今回は嗅覚と視覚の修理でしたね。(笑)
> 筐体の水色の塗装を思い出します。
これも同じ水色の筐体です。 特殊なCRTのため奥行きが非常に長いです。
> 最近はテクトロは少し元気がないようですが・・・
デジタルオシロを構成する部品ユニットが一般化し低価格化したので、誰でも作れる測定器になってしまったのが誤算だっのたでしょうね。 アナログとCRTをやめですべてLCDデジオシに移行したのは先見の明があったと思うのですが・・・。 今のオシロは波形解析装置であって所謂オシロではなくなっていますので測定器の総合力がある会社が有利なのでしょう。
往年のテクトロのオシロは今でも素晴らしいと思います。さすがに寄る年波で良く壊れるため手は掛かかりますけれど。(笑)
おはようございます。
返信削除うちにも直したいものは幾つかあるのですが、それなりに動作していると余計なことをして傷を深めたくない(おっくうともいいますが)のでだましだまし使っています。
それにしても赤熱してしまう状態とは、火災に発展せずに良かったですね。難燃素材だとは思いますが、ブラウン管テレビの発火事故も聴きますから、種火として残って次にとなっていたらと思うとぞっとします。
JH9JBI/1 山本さん、こんばんは。 今日は連休明けですね。これから7月まで3連休はないのでちょっと憂鬱です。hi
返信削除コメント有難うございます。
> だましだまし使っています。
もちろん、拙宅にもだましだましはありますがガマンの限度を超えた物は直すか捨てるになってしまいます。(直すのは億劫ですけどね)
> 火災に発展せずに良かったですね。
大きさ1mmも無い、しかも瞬間的な赤い火ですから火事にはならなかったと思いますが、古い電子機器は確かに危ないと思います。一般に古い電子機器は何がしか危険を抱えていますね。タンタルコンデンサが灰になるまで燃えていた例も見ましたので。
他にも古いリグとかもイッパイありますから、用心したいです。しかも厚いホコリが積もっていると着火し易そうです。hi
こんばんは。
返信削除GoogleリーダーでBlog更新を監視(笑)していたのですが、見落としてました。
リーダーを使っている意味が無いです^^;
テクトロオシロ、修理完了おめでとうございます。
その頃のテクトロ高級オシロは結構専用ICなどが多用されていてそれが壊れたらおしまいだとかききますが、そういう場所ではなくて何よりでした。
プリント基板が焦げるとは結構な電圧、電流が流れているんですね。
かすかな焦げ臭さを感じて修理箇所を発見するとはさすがです。^^
寄る年波には勝てないのでしょうが、古い測定器の電源を入れるときはいつもドキドキしてしまいます。Hi
JE6LVE/3 高橋さん、こんばんは。 リーダーをお使いなんですね。hi hi
返信削除コメント有難うございます。
> 専用ICなどが多用されていてそれが壊れたらおしまい・・
あまり専用IC化は進んでいない時代のようでした。 一部にトランジスタアレーのようなICが使ってある程度です。他は全部ディスクリートですからその気さえあれば修理は十分可能ですね。(面倒ですが)
> かすかな焦げ臭さを感じて修理箇所を発見・・・
今の季節、花粉症で嗅覚が減退しているのにすぐわかったくらいですから、かなり焦げ臭かったのでしょう。(爆)
> いつもドキドキしてしまいます。Hi
このオシロは製造から35年くらい経過してますからマトモに動く方が不思議なくらいです。いつもドキドキものです。(笑)