ページ(テスト中)

2013年6月15日土曜日

【部品】Standard E-series

電子部品の実用知識標準E系列について:

はじめに
 自身の参照を主目的として旧webサイトには部品のE系列のページがあった。 今や殆どの電子部品が採用していてE系列はポピュラーである。 それでも、その値はE12系列にはあったのか、あるいはE24系列だろうか? ・・・と言うように考えてしまうこともある。 基本的に過去記事の再掲載はしない方針なのだが、近ごろ忘れっぽくなって来たので自家用にもう一度作っておくことにした。 従って内容は以前のweb版と同じだ。


任意の値の抵抗器やコンデンサは必要か?:
 トランジスタで増幅回路の設計をしている。 バイアス回路の設計を始めると、例えば123Ωのエミッタ抵抗が欲しいとか、17kΩのベース・ブリーダ抵抗があれば・・・とか。 また発振回路の周波数を決めるコンデンサには238pFが丁度良いのだが・・・と思うことがあるだろう。 しかし、実際に(容易に)手に入る部品は一定のルールに従った飛び飛びの値である。
 なぜ123Ωの抵抗や238pFのコンデンサは無いのだろうか? もちろん無限の種類の抵抗器やコンデンサを用意出来ないからだが、もう一つの大きな理由は電子部品には「誤差」が付き物だからだ。 更に多くの回路では10%や20%の部品誤差があっても正常動作するものだし、そのように設計しておくのが「良い設計」でもある。 従って123Ωや238pFはなくても120Ωや220pFがあれば事足りる。

誤差と刻み:
 誤差を前提とすれば、無闇に細かい刻みは不要で、一定の間隔ごとの数値で良いことがわかる。では、例えば1KΩ〜10KΩの間を1KΩおきの抵抗を用意しておくべきだろうか?
一見わかり易くて便利そうに感じるがこれは不合理だ。 いま誤差10%とすれば10kΩの抵抗は、9kΩから11kΩの範囲にある。 ところが、9kΩの抵抗は8.1kΩから9.9kΩの範囲にあることになる。 誤差のために9kΩの抵抗値と10kΩの抵抗値がオーバーラップしてしまう。 即ち、表示が10kΩの抵抗より、9kΩの抵抗の方が抵抗が高いという困った現象が現実に起こり得るのだ。 9KΩだと電圧が高いから10KΩに交換しよう・・そうしらもっと電圧が高くなってしまった・・と言うようなことが起きれば大混乱だ。 誤差は真値のパーセントで考えるので、等差数列ではうまくないのだ。実際には誤差を考慮した上で、等比数列で用意されている。

E系列とは:
  誤差を考えたときに、隣りの値とオーバーラップすることなく合理的な数値の並びになるように、等比数列で決めたのがE系列と言われるもの。 これは、1を基数とすれば、その次の値を10^(1/E)倍になるように決めるものである。 一般には、E3、E6、E12、E24と呼ばれる等比数列が用いられている。もっとも合理的な方法として、元々は米国で採用されたが、今では日本工業規格JISにも決められている。

参考:旧JISではR-5、R-10、R-20と言ったR系列が使用されていた。意味するところはE系列と同じで、数値は10^(1/R)倍の等比数列になっていた。E系列に変更したのは国際共通化(米国化?)の流れからであろう。12進が基調のE系列よりも10進が基調のR系列の方が日本人には良さそうな気もするのだが・・・。 R系列はコンデンサの耐圧区分などで今でも見かけるようだ。例えば、耐電圧が16V、63V、125V、250V、315V・・・などの種類があるのはR-10系列の名残と思う。

E6系列の具体例:
 10^(1/6)=1.46779926・・・である。また、有効数字は2桁とする。従って、1kΩの次は1.5kΩとなる。1.5kΩの次は、その1.46779926・・倍で、2.2kΩだ。さらに、その次は3.3kΩ、その次は4.7kΩ、その次は6.8kΩ、そして桁が上がって10kΩとなり、15KΩ、22KΩ・・・と言うように繰り返えす。

 以下の表はよく使われるE系列を示したものだ。一般の電子部品はこの系列に従った値で市販されている。 従って、ありそうな値の250Ωとか、450pFと言った部品は普通は使われていない。 秋葉原では例外的に250pFのコンデンサや500Ωの抵抗器などが、主に「アマチュア相手」に売っている。しかし、それらは旧JISの名残であって、新規設計では下表のようにE系列から選ぶのが合理的だ。 ラジオなど一般電子機器の修理にあたってもE系列から近似の値から選べば十分であり、その方が機器の保守も容易になる。

系列

数         列

E3

1.0

2.2

4.7

E6

1.0

1.5

2.2

3.3

4.7

6.8

E12

1.0

1.2

1.5

1.8

2.2

2.7

3.3

3.9

4.7

5.6

6.8

8.2

E24

1.0

1.1

1.2

1.3

1.5

1.6

1.8

2.0

2.2

2.4

2.7

3.0

3.3

3.6

3.9

4.3

4.7

5.1

5.6

6.2

6.8

7.5

8.2

9.1


E96系列:
 滅多に使うことも無いのだがE96系列を一覧で示す。 これが必要になるのはよほど特殊な回路の筈で、入手性も悪いしコストも割高になる。一覧表にあるからと言って採用するのはあまり得策ではない。 但し同じ回路を大量に製作するような場合であって、もしもE96系列から選ぶことで無調整化が図れる・・・などの大きなメリットがあるなら意味はあるだろう。特注することを前提に採用したらどうだろうか。 なお、誤差はB(±0.1%)あるいは、C(±0.25%)から選択することになる。 もしもF(±1%)でも良いのなら上記のE24から選んで済ませるべきだと思う。 なお、E24系列の次にはE48系列というものあるのだが、E96よりも見ないように思うので省略した。


10.0 10.2 10.5 10.7 11.0 11.3 11.5 11.8 12.1 12.4 12.7 13.0
13.3 13.7 14.0 14.3 14.7 15.0 15.4 15.8 16.2 16.5 16.9 17.4
17.8 18.2 18.7 19.1 19.6 20.0 20.5 21.0 21.5 22.1 22.6 23.2
23.7 24.3 24.9 25.5 26.1 26.7 27.4 28.0 28.7 29.4 30.1 30.9
31.6 32.4 33.2 34.0 34.8 35.7 36.5 37.4 38.3 39.2 40.2 41.2
42.2 43.2 44.2 45.3 46.4 47.5 48.7 49.9 51.1 52.3 53.6 54.9
56.2 57.6 59.0 60.4 61.9 63.4 64.9 66.5 68.1 69.8 71.5 73.2
75.0 76.8 78.7 80.6 82.5 84.5 86.6 88.7 90.9 93.1 95.3 97.6

:100Ω台の場合、100Ω、102Ω、105Ω、107Ω・・・191Ω、196Ωそして200Ωになる。この例のように非常に小刻みな値が選べるが普通の部品店に置いてあることは稀なので『絵に描いた餅』と同じようなものかも。 確か、秋葉原のラジオデパートにはE96の抵抗を扱うお店が有ったように思うが・・・。ほかに、RSコンポーネンツでも各種入手できる(1個単位では買えない)が当然ながら誤差0.1%といった高精度抵抗器なのでかなり割高である。しかし、昔より容易に手に入るのは良い時代と思う。 他にE192と言うのもあるのだが・・・誰が使うのだろう。(笑)

抵抗器と値の選び方:
 以上のような訳で、E系列から選ぶのが回路屋の常識と言うことになる。 現在市販されている抵抗器はカーボン抵抗では誤差5%(記号はJ)が、金属皮膜抵抗では誤差1%(記号はF)が一般的だ。従ってカーボン抵抗ならE6かE12で、金属皮膜ならE12かE24のいずれでも良いことになる。 またセメント抵抗ではE6が、酸化金属皮膜抵抗ではE12が多い。 いまや主流の表面実装用チップ抵抗器でもE12系列(部分的にはE24系列も可)ならたいてい問題は無い。 使用する抵抗器の品種が決まれば自ずと数値および誤差の範囲も決まってしまう。 それを無視して選択すれば、特注品になってコストや納期の点でたいへん不利だ。(お馬鹿な設計と言うことなのだが、何気にやってしまいそう・笑)
 同様に、E24系列の抵抗値を指定しながら誤差は10%で良いと言うのもナンセンスで、それならE12あたりから近似の値を選ぶのが合理的と言うか常識と言うべきだろうか。

コンデンサの種類と値の選び方:
 コンデンサは抵抗器よりも選べる数値は少ない。 また、どのE系列で用意されているのかはコンデンサの種類による。 例えば電解コンデンサではE6系列が普通だ。 フィルム系のコンデンサもE6が多く、せいぜいE12までだ。 一番品揃えの良いセラミックコンデンサでもE24でカバーされるのは一部の範囲のみである。 従ってなるべくE12系列で済ませ、E6系列で済むように努力すべきだ。 そうすれば入手性は良いし、コストでも有利だ。

即ち、・・0.47、0.68、1.0、1.5、2.2、3.3、4.7、6.8、10、15、22・・と言う数列で選ぶのが良い。

コイルの値と選び方:(参考程度)
 コイルの既製品は選択肢が殆ど無い。自身の用途にピッタリな市販品が存在することは稀かもしれない。 E6系列あるいはE12系列のうち一部の値の「インダクタ」が市販されているのみだ。 製品に使うならコイルメーカー(例えば、こここことかここなど)のカタログを良く調べる必要がある。 秋葉原や日本橋の店頭で手に入る種類はごく少ない。

 同調回路に使うようなコイルはトロイダルコア(サトー電気などで買う)を使って自製するのが手っ取り早い。 ノイズ対策用のインダクタは規格化されているので入手し易い。 但し同調回路に使うのはQuや温度係数の問題もあるのでダメだと思った方が賢明だ。

 SW電源に使うコイルはインダクタンス値だけでなく、動作周波数と扱える電流・電力容量が重要な要素なので既製品はたいへん限られる。SW電源用ICのアプリケーション・マニュアル等を参照し最適な物を特注しないと電源としての変換効率が上がらない。コイルとは言ってもRF用とは別世界である。

 ラジオ作りにフェライト・バーアンテナ・コイルの既製品を欲しがる人も多いが市販ラジオに使ってあるような物は特注品であろう。同じ物は手に入らないと思った方が良い。

 但しフェライト・コア材の市販品は幾らか見かけるので、リッツ線などを自分で巻けば最適な品が手に入る。 同調側巻き数は、使用バリコンの容量に合わせて必要なインダクタンスになるようにする。 タップの位置、あるいはベース側巻線は同調側の10%程度から実験してみればたいてい旨く行くだろう。もちろん、ちゃんとした設計手法はあって使うコア材の種類とフェライト・バーの形状寸法が決まれば具体的な数字で示すこともできる訳だ。

 昔は既成のバーアンテナ各種がラジオ用に、例えばミューラー電機etc.から出ていたのだが・・・。

 左は、たいへん古い雑誌から取ったミューラー電機の広告ページである。(転載不可) もうどこにも売ってはいまい。 上の写真が広告下段にあるミューラー0840TR型。φ8mmで長さ40mmの意味らしい。昔はラジオ製作の定番コイルだった。0840TRの公称インダクタンスは300μH。

 今はアイコー電子のPA-63Rと言うのが入手容易で自作ラジオにはよく使われているようだ。 PA-63Rの公称インダクタンスは360μHとのこと。最大容量:250〜300pF程度のバリコンと一緒に使う。

(脱線も程々にしておこう)


真空管ラジオの修理用部品について:
 以下は古い機器修理の話しだ。 例えば9R4や9R59等を含む古い真空管ラジオは「製造当時の常識」に沿った部品が使われている。 そのためE系列にはない値の部品が使われていることも多い。 真空管ラジオが作られた時代の部品誤差は今よりもずっと大きかった。 従って、修理用には元々使ってあった部品の値から±20%の範囲にある近似値から選べば十分で代替できる。 ±10%以内で選ぶならやり過ぎなくらいだ。例えば、もとが250pFなら220pFで良いし、もとが450Ωなら470Ωを選べば良い。

 但し、スーパー・ヘテロダインのパッディング・コンデンサだけはなるべく近い値の物が良く、例えば430pFが使ってあるなら、100pFと330pFを並列にして430pFを作ると言った配慮をすべきだ。 他の部分のコンデンサはそこまでする必要は無い。

定格電圧と定格電力のこと:
 真空管回路は電圧が高いため、コンデンサの定格電圧と抵抗器のワット数に注意したい。 真空管時代のコンデンサは耐圧250Vが普通だったが、いま売っているものは半導体回路用なので耐圧50V以下が一般的だ。 コンデンサの購入には定格電圧を良く確認しなくてはなるまい。 もちろんカソード回路のバイパス・コンデンサのように加わる電圧が低いことがわかっているなら使って大丈夫だ。 電源系のバイパス・コンデンサと前段プレートと次段グリッド間のカップリングコンデンサには十分な耐電圧が欲しい。

 コンデンサの種類に言及すると際限が無くなるが、ペーパー・コンデンサやMPコンデンサは未使用品でも使うべきではない。今あるものは数10年も経過している超古い在庫品が多いから既に絶縁が低下しておりリーク電流が流れると思うべきだ。 回路が正常に動作しないばかりか真空管を傷める原因にもなるので使わない方が良い。 音が変わると言う人もいるが、リーク電流で次段のバイアスが変わり動作点が狂ってしまったからではないか? フィルム・コンデンサあるいはメタライズ・フィルム・コンデンサのような近代的で絶縁性に優れたものをお薦めする。 マイカ・コンデンサならモールド型はやめてディップド・マイカにするか、NP0型のセラコンを選ぶのが良い。写真は手前が使っちゃいけないペーパー・コンデンサ(=オイル・コンデンサ)、奥の青いのはお薦めのフィルム・コンデンサ。

 部品屋の店頭に並ぶ小さな抵抗器は1/4W型が多い。それらもグリッド・リーク抵抗のような小信号部分には支障無く使える。 しかし加わる電圧が高いと抵抗器で消費される電力は格段に大きくなる。 消費される電力は掛かる電圧の二乗に比例することに注意すべきだ。 例えば1kΩに10Vなら消費電力は0.1Wなので1/4W型の小さな抵抗器で十分だ。 しかし10倍の100Vが加わっているなら消費電力は100倍の10Wである。その場合は余裕をみて20W型以上の大きな抵抗器でないと安心できない。

 昨今のセメント抵抗(中身は巻線抵抗器)や酸化金属皮膜抵抗を使うと部品の小型化ができる。 それらは昔のカーボン抵抗より耐熱特性に優れているからだ。 逆に昔のように大きなカーボン抵抗など市販されていない。 そのため同じW(ワット)数でも交換用部品が非常に小型になっているのに驚くかもしれない。こうした小型化された抵抗器に同じ電力を消費させると表面温度は非常に高くなる。 それでも壊れはしないが、周囲を空けて通風を良くすると言った注意は必要だ。 場合によっては定格電力ではなくて「物理的なサイズ」で選んで、熱放散を良くし高温化を防ぐと言った配慮も必要になる。 


自作派HAMの常備品は
 自作や修理好きのHAMのパーツボックス常備品は、抵抗はE12系列で、コンデンサはE6系列で揃えておけば殆どカバーできる。 それでも50種類以上になるので取り出し易いパーツボックスもお忘れなく。 なお、100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩの4種類の抵抗器と、0.001μF、0.01μF、0.1μFのセラミックコンデンサは使用頻度が高いのでそれぞれ100本以上あっても無駄にはならない。 他は10〜30本も常備すれば幅広く自作が楽しめる。(写真が無いと寂しいので貼っておくが参考程度に)

 今では便利なLCRメータ(←参考リンク)も手軽に手に入るから、並列や直列で必要な値を合成することが出来る。アクティブ・フィルタとかAF-PSNのように高い部品精度を要する製作も手持ち部品のやりくりで何とでもなるだろう。 なるべく少ない品揃えで済むような設計も推奨されるべきで、無理の無い範囲で値を丸めて製作してみると言った方法でもまずまずの物が作れる。あまり設計数値に振り回されずに楽しみたいと思っている。de JA9TTT/1

(おわり)

2013年6月1日土曜日

【部品】SMD Clock on a DDS Module

 【新種DDSモジュール
 中華DDSモジュールそのものは私の中では「おわコン」のつもりだ。 むしろどう活用して行くのかにテーマは移っていて、そうした活用法にニーズも移っているように思う。 しかし周回遅れ気味の今ごろ入手を試みるお方もまだあるようなので現在の入手状況に即応した話題も必要そうだ。

 従って、もう飽き飽きと思うが再々のテーマで中華DDSを扱うことにした。 飽きてるお方は以下のお話は全部パスで宜しく。(笑)

                  * * *

 最近になって小型DDSモジュールに「新種」が登場したそうだ。 さっそく現物をご提供を頂いたので評価してみよう。 基板の外形寸法や部品の置き方など、前の小型DDSモジュールと同じようだ。(写真)

 但し、基板レジストは青色で、クロック・オシレータ付近のみならず全体のパターンも違うようにも見える。 前のものを参照して再設計したのだろうか。回路は同じ模様だ。 馬鹿に安過ぎるから実装されているDDS-IC:AD9850はFakeではないかと言う話しもあるが、確証は得られていない。

 見てのように、特徴的なのはDDSチップ:AD9850にクロックを与える125MHz発振器が表面実装型(SMD型)になったことだ。 かねてよりこの中華DDSモジュールのクロック発振器には悩まされて来た。 さて、この表面実装型の125MHzクロック発振器はどんな物なのだろうか?

(注:クロックの脇に立っている2本のピンは観測用に私が付けたもの)

 【表面実装型125MHzクロック
 さっそく実測結果を示そう。 写真の様に比較的奇麗だったCanタイプオシレータよりやや悪い結果であった。 比較して、おおよそ10dBくらいスプリアスレベルは高いようだ。

 スペクトラムの出方から見て内部はPLL式であろう。 しかし、それほど悪い訳ではないので実際に信号を発生させて様子を見て判断することにしたい。 ジッターだらけのあのオシレータよりずっと良いのは間違いないので十分期待できると思う。

 PLLのクロック・フィードスルーらしきがキャリヤから750Hz離れた両側に存在し、レベルは約-66dBcである。 他のスプリアスは更に-10dBくらい低いので問題になるとすればこの両脇の大きなものだろう。 なお、実際にDDSオシレータの出力を数100遞倍したら付随スプリアスが問題になったと言うレポートも見るので、UHFやSHF帯を目指すならDDS+クリスタルPLLでクリーンナップすると言った相応の対処が必須なようだ。

 【15MHzのスペクトラム
 15MHzを発生させ、前の評価と同じ条件で観測した。 写真を比較してもらえたらと思う。

 基本的に、十分良好であった。 右の方に見えるスプリアスは、例によって環境起因によりものだ。 左に小さく見えるのはホンモノのスプリアスのようだが、-80dBcより小さいので、支障になることはまずないだろう。

 このような結果なので、十分使えるモジュールのようである。 私が見たサンプルは1枚だけだが、他のお方の評価でも同じようだからこのクロックは「当たり」だと思う。

7MHzのスペクトラム
 近傍に目立ったスプリアスは見られない。 ノイズフロア付近に幾つかあるような気配もあるが、環境起因のノイズではないだろうか。

 奇麗であって、良く出来た水晶発振器と肩を並べる性能と言える。 磁気フラックスがRFCに誘導していたり汚れた電源で揺さぶられている水晶発振器などこれに及ばぬケースも多々ある。 これくらいならかなり良い性能だ。

 DACのビット数が有効に効いている10MHzあたりまでの低い周波数帯では全般にスプリアスは少なく、得られる信号は良好である。

広帯域で見る
 いままで信号の近傍ばかり見て来た。 ある程度離れた周波数のスプリアスならフィルタで何とかできると言う目論見があるからだ。 フィルタでは如何ともし難い近傍スプリアスに着目して来た訳だ。

 この観測ではDDSから10MHzを発生させたときに、0〜150MHzまでの周波数域に発生する全スプリアスを見ている。 左端が0Hzで、その右に見える背の高いスペクトルが目的信号の10MHzだ。 その右足下に見える小さな2つはスプリアス信号である。 信号のすぐ右側は2倍高調波の20MHzであってこれはある程度やむを得ない。 24MHzの所に見えるのはDDSの設定を変えても周波数変化しない固定周波数のスプリアスだ。ジャスト24MHzのあたりに出ている。

 画面の右端の方にある大きめの信号は125MHzのクロック漏れだ。 そのすぐ左に存在するのは折り返しスプリアスだ。 この折り返しスプリアスは、125MHzを起点として主信号の周波数とは逆方向に動いて行く。 すなわち、この状態では125-10=115(MHz)になっている。 主信号が20MHzになると105MHzに移って現れる。これは原理的に避け難いスプリアスだ。 従って低域濾波器(LPF)を入れて阻止する。 しかし主信号を上げて行くと、125MHzの半分の位置で主信号と密着してしまう。 その周波数あたりでは簡単なフィルタくらいでは分離できない。 そのため実用上限周波数をクロックの1/3程度と考えて、過度に高級なフィルタを使わずに済ませるようにして実用にする。

                   ☆

 この表面実装型クロックが実装されたDDSモジュールは悪くなかった。 消費電流も少なめで有難い。 こうしたモジュールが継続してくれれば嬉しいのだが、そうは行かないらしい。 この後に入手したらまた前に戻り、しかもクロックもだめだったと言うようなお話しも。 この先も面実装型のクロックが実装さているからと言って安心などできまい。 相変わらず油断ならない中華クオリティである。hi

 大量纏め買いは大損害のリスク有りだ。 必要分を少量買って様子を見る・・と言うのも通用しないのは誠に悩ましいところ。 もしもダメな時はどうするかを心配しながら買うようでは不安で仕方あるまい。 あるいは少し高くとも確認済みが手に入るなら安心だろう。 特にスペクトラムの観測手段を持ち合わせぬなら尚更だ。 もちろんクロック発振器の自作をいとわなければ何でもOKなのだが・・・。

                 ☆ ☆ ☆

 今回、良さそうなクロックが実装されたモジュールで広帯域に観測してみることにした。結果は全般に奇麗なことがわかった。 特に10MHzあたりまでなら、かなり良好であり受信機の局発用にも躊躇いを感じさせないものだ。 しかし20〜30MHzともなると目的信号の上下にずいぶんスプリアスが見え始める。 高い周波数で使うならやはりフィルタは相応の吟味が必要そうだ。 言うまでもないがDDSにはなるべく高い周波数の(もちろん奇麗な)クロックが有利である。AD9850/51よりも新しい世代のDDSチップは有利である。そうした最新チップを実装した中華DDSモジュールの登場を期待しよう。 de JA9TTT/1

(おわり)