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2014年1月11日土曜日

【回路】SSB on a Breadboard

【ブレッドボードでSSB】

BBにSSBジェネレータを作ってみる
 あまり高周波向きとは言えないブレッドボードでの製作だが「SSBジェネレータ」を作ってみた。 ブレッドボードとしては少々大掛かりかも知れない。

 写真のここまででSSBジェネレータにはなっているがまだ製作は途中段階だ。 ヘテロダイン・ミキサーを追加して目的の周波数帯に持ち上げる所までを搭載しようと考えている。

 写真、下段の左側には12.8MHzのTCXOが載っている。 その右のTC9122Pで1/160に分周して80kHzを得る。 そのままでは細いパルス状の波形でありDuty比は50%になっていない。続いてその右のTC4013BAPでさらに1/4分周してDuty=50%の20kHzを得ている。TC9122PとTC4013BAPの間にある2SC395Aは5V系→12V系のロジックレベル変換用だ。

 中段には右側にMic-Ampがありその左にバラモジ(次の写真参照)が配置されている。バラモジの左にある大きな金属の箱がSSB用フィルタだ。 下段に戻って、TCXOの左はμPD74HCU04Cで、12.8MHzのバッファ・アンプになっている。 安定度の良い12.8MHzを局発用DDS-ICモジュールに供給するのが目的だ。 写真にはデバイス名を入れておいた。 詳しく見学したいならクリックしてご覧あれ。

 少々特殊な部品を使った関係で、だれでも作れるものではないので回路図は省略させてもらった。それにまだ試作途中なので完全には固まっていない部分もある。まあリクエストでもあれば考えてみましょ。hi

参考:このSSBジェネレータ製作では20kHzと言う特殊な周波数でSSB波を作っている。 短波帯(HF帯)の送信機にはそのままでは不適当である。 HF帯〜50MHz帯に向いた一般的なSSBジェネレータについては別途扱っているので参照を。(リンク→7.8MHzSSBジェネレータ

Balanced Modulator:バラモジ
 SN74HC4066NとLM6361Nを使った高性能バラモジ(平衡変調器)の部分だ。(正しくはその前のTL074CNの部分もバラモジに含む)ずいぶん昔になるがこのバラモジ単独の特性評価をWeb公開したことがあった。

 搬送波(キャリヤ)周波数は20kHzである。搬送波だけでなく、音声信号もバランスして出力には出てこないダブル・バランス形式のバラモジだ。(DBMと云うもの) 今回、非常に低い周波数でSSBを発生させる都合からトランスやコイルを一切含まない形式のDBMを採用している。トランスやコイルがあると厄介な周波数だからだ。

 この20kHzと言うのは何かの間違いではなく、キャリヤ周波数が20kHzの上側測帯波(USB)を発生させるのが目的だ。従って音声の300Hz〜3kHzは20.3〜23.0kHzにUSBとなって現れる。 非常に低い周波数でSSBを作っているが、これは135kHz帯の送信機用だからだ。将来的には475kHzの新HAMバンドにも対応予定だ。

 (電話搬送用フィルタ愛好家の楽屋裏の話しかも知れないが、低い周波数のSSBフィルタをこの機会に消費するのも目的の一つだ。TC9122Pの分周数を変えてやれば16kHzのSSBフィルタも使える設計だ。さらに12kHzフィルタへは12.8MHz→15.36MHzの交換で対応可能だ。 ほか100kHzや128kHzのメカフィルにも対応できるが、今回の目的には周波数関係から旨くない。もちろん異なる用途へなら支障ない。 TC9122Pの分周数を切り替えて400kHzや800kHzのキャリヤ周波数でも試してみた。そう言う実験にブレッドボードはうってつけだ。かなり高い周波数までシビアなバラモジ回路が支障無く動作するので455kHzや500kHzのSSBフィルタも行ける。ここらで裏話は終わり)

 このあと、ヘテロダインして135kHz帯でF1DやG1Bモードでオンエアするのが最終目標である。或はDC入力でキャリヤ周波数でA1Aを得る。(その場合、SSBフィルタはパスする)

 135kHz帯は音声SSB(J3E)のオンエアは認められていないが、SSB送信機と同等な回路構成としてPCからトーン信号を与えてデジタル通信モードでオンエアする。

バラモジのアウトプット
 バラモジの出力、すなわちLM6361Nのアウトプット波形である。 マイクアンプに1kHzのシングルトーンを与えている。

 まだフィルタを通っていないので、バラモジの出力はDSBであって19kHzと21kHzのツートーン状波形になっている。 アナログスイッチ:74HC4066Nを使ったDBMであり、矩形波スイッチングしているので写真のような波形になる。 スペクトルを見ると多数の高調波が含まれるが、この後でSSBフィルタを通過するからそれらは除去される。

 このバラモジは非常にダイナミックレンジが広く約8Vppの出力でも3次のIMDは-60dB以下である。また、半分の4Vppにおける3次のIMDは概略-80dB以下の高性能が得られる。 むしろ、後に続くフィルタ内部で起こるIMDの方が問題なくらいだ。

20kHzのSSBフィルタ
 キャリヤ周波数が20kHzで、-3dB通過帯域幅は約3.4kHzと言うSSBフィルタである。少し広めだが音声では使わないのでまったく支障はない。

 本来の使用目的は、電話回線の多重搬送用であった。 かつてアナログ電話の時代には、加入者の音声を多重化し1本のケーブルで多数の通話を伝送していた。 その多重化の過程でSSB(USB)を作っていたフィルタである。

 写真のフィルタは、送話回路用のものでSSBの発生に使うものである。同等に使えるものとして受話回路用もあったがIn/Outインピーダンスの関係で送話回路用の方を使った。 内部はポットコアを使ったQの高いコイルと同じくHigh-Qなスチロール・コンデンサで構成されたLCフィルタである。(特性は次項)

20kHzフィルタの周波数特性
 写真は最適インピーダンスで終端しフィルタ単独で測定した結果だ。 画面は中心周波数が20kHzでスパンは10kHzである。

 このフィルタは20kHzのキャリヤ周波数に対してUSB側の側帯波(サイドバンド)を取り出すためのものだ。 従って、LSB側に相当する画面の左側が良く切れる特性になっている。 通過域に対して、LSB側は-60dB程度なので送信機用としてはまず十分であろう。

 実験では、インピーダンス比の関係で入出力の方向を逆に使っている。 もちろん正しく終端した状態なら信号方向が逆でも特性の違いは見られない。

ツートーン波形
 写真はマイク入力端子から約500Hzと約2kHzのツートーンを与えたときにフィルタの出力に現れる波形を示している。

 バラモジの出力にキャリヤ漏れは感じられなかったが、更にSSBフィルタを通過することによって十分に減衰されるから完全なSSBになっている。

 フィルタの出力で最大2Vppくらい得られるので十分な信号レベルだ。 続くヘテロダイン・ミキサーの前にアンプは必要ないだろう。ミキサーにIC-DBMを使うならアッテネータが必要なくらいだ。

参考:SSB送信機の2トーン試験に用いる低周波信号は1,000Hzと1,575Hzの2波が標準的。 ただし、必要に応じフィルタの周波数特性により変更すべきである。それぞれの高調波が重ならぬように留意のこと。

ヘテロダイン・ミキサーはIC-DBM
 20kHzで発生したSSB信号を135.7〜137.8kHzのハムバンドに周波数変換する必要がある。

 局発はCW(A1A)モードを考慮し115.7〜117.8kHzをDDSによって発生し、20kHzを上側へヘテロダインする。(逆ヘテロダインしてLSBに転換するのも可能。その場合は155.7〜157.8kHzとなる)  何分バンド幅が狭いのでオフバンドしないような配慮は必須である。特に変調を掛ける際にはトーン周波数を考慮しなくてはならない。 取りあえずDDSをコントロールするマイコン側でソフトウエア的な制限を設けてオフバンドを防止している。 CW(A1A)ならともかく、WSPRのような半ばオンエア周波数が決まったデジタルモードならオフバンドの危険はずっと少ない。

 まだ製作過程にある。ブレッドボードにはヘテロダイン・ミキサー部まで載せる予定だ。ミキサーには写真のDBM-IC:MC-1443を使う方向で検討している。 ここは20kHzのバラモジと同じく74HC4066N+LM6361Nでも良いが、コンパクトに組めるIC-DBMで行こうと思っている。
 MC-1443はハイブリッドICで心臓部は典型的なギルバートセル型DBMであり周辺のバイアス回路などが集積されているので外付け部品が少なくて便利なものだ。 ジャンクから採取した特殊なICなので入手は難しい。詳細は省かせてもらう。

 外付け部品は増えるがMC1496G/Hなどで代替すれば同じようにできる。SN76514NやSN16913Pでも良いのだが、それらは既に太古のデバイスだ。型番を書く意味がなくなっている。 現行品のNJM2594Mを使うかTA7358P/APを工夫する手ならアリかも知れない。うまく低い周波に対応できるトランスが自作できるようならQuad-Diode-DBMでも良い。

                ☆ ☆ ☆

 オモテがいつまでも年賀のままと言う訳にも行かない。予定日より少々前倒で暮れから正月あたりの実験テーマを紹介してみた。 ブレッドボードで「SSBジェネレータが作れます」と言ったところでキャリヤ周波数はたったの20kHzだし、ジェネレータから出たSSBがヘテロダインされる先も135kHz帯なのでは「高周波」じゃなくって、殆ど低周波のようなもの。 だから旨く行って当たり前だろうと影口が聞こえてきそうだ。(笑)

 455kHz帯は言うに及ばず、さらにもっと高い周波数でSSBを作ることもできそうだ。その時には部品レイアウトやアースラインの引き方の工夫、さらにはシールドするなどの細工が必要だと思う。 それでも案外高性能なものまでブレッドボード上に作れると思うので、まずはやって見たら面白い。 あわよくば,ブレッドボードのままでSSBにオンエアだってできてしまいそうだ。 あとからブレッドボード・パターンのユニバーサル基板にそっくり移植すれば少々スペース効率は悪いかも知れないが立派な(恒久的な)作品になる。

                 ☆ ☆

 Blogでブレッドボードを扱ったら、昔のことを思い出したと言うメールを頂いた。学生時代に目にした「部品の足をカットしないモヤシ(カイワレ大根?)配線」を思い出したそうだ。 ここではご覧のように部品の足は必要最低限+α程度に切り詰めている。 ブレッドボードは仮設回路かもしれないが部品のリード線は最適寸法にカットし長いままにしないのが良い結果を得るコツだ。これはRF回路に限らない。「もったいない」などと『モヤシ』を栽培するとかえって旨く行かない。
 パーツのリード線を短く切るのは勿体ないと感じるなら、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れを用意しておこう。 繰り返し使うようにすれば経済的だし再利用の際はリードカットの手間も省けて一石二鳥と言うものだ。 ブレッドボード用にリード線カットした部品はハンダ付け実装にはまだ長過ぎるくらいだ。恒久作品への再活用にも支障はない。

 いまやDSPにより目的周波数で直接SSBが得られる時代だ。つまらんテーマで暇つぶし用コンテンツにはなったと思うが、見ているばかりでなくご自身でも何かやってみて欲しい。 今年はBlogとかサイトを徘徊するばかりの受け身姿勢は返上し積極的に手を動かしては如何か? ブレッドボードならハンダ付けが「へたくそ」でも何とでもなる。 自らも作ることで貴方自身で何かを発見して欲しい。 何にもやらないんじゃこのBlogなんか見に来る意味ぜんぜんなし。『見てるだけ』の人はどこかヨソにでも行って欲しいな!(爆笑) de JA9TTT/1

つづく)←ミキサー部を載せる続編にリンク

6 件のコメント:

  1. こんばんは~

    BBは結構高い周波数まで扱えますから実験には重宝しますね。
    ただ僕はBBで組んでしまうとちゃんとした基板に移し替えるのが面倒になってそのままってことが多いのですが^^;

    20kHzになるとコイルがありませんね。
    この周波数でしたらPCのサウンドカードに入れればソフトでも動かせそうです。

    >『見てるだけ』の人はどこかヨソにでも行って欲しいな!
    ごめんなさい、ごめんなさいm(_ _)m

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  2. JH9JBI/1 やまもと2014年1月11日 20:44

    今日は

    今、二次会の最中です。
    今年もよろしくおねがいします。

    ブレッドボードでBMですか。やっぱりこのくらいの周波数なら漏れも少ないですね。

    周囲のコメントです。
    この低い周波数のフィルタの特性はすごいですね

    「見てるだけ」ではありません。集めるだけです。

    いやぁ作ってみたいなぁ

    だそうです。

    返信削除
  3. JE6LVE/3 高橋さん、こんばんは。 今夜も寒くなってきました。

    早速のコメント有難うございます。
    > BBは結構高い周波数まで扱えます・・・
    高周波はもっとダメな物かと思っていたんですが、意外ですね。 考えて使えば結構高い方まで行けそうです。

    > ソフトでも動かせそうです。
    DSP処理で十分にこなせる周波数なので、いきなり135kHz帯をアウトプットする方法が今風でしょうね。

    高橋さんは奥ゆかしいのであまり表に見せたりしませんが、色々製作されているじゃありませんか。hi hi 最近ハンダ鏝が遠いのでしょうか? 

    BBで動くと満足してしまう・・と言うのは良くわかります。 私も同じですので。(爆)

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  4. JH9UJB/1 山本さん、こんばんは。

    コメント有難うございます。
    > 今、二次会の最中です。今年もよろしく・・・
    今夜は新年会でしたね。所用が片づかなくて結局行けませんでした。2月のQRP懇親会でアイボール宜しくお願いします。

    > このくらいの周波数なら漏れも少ないですね。
    流石に数100kHz以下なら低周波とさして違いませんね。(笑)

    > 周囲のコメントです。
    まあ、プロが使うSSBフィルタですので。hi hi 周波数特性は国際規格で決められてました。

    > 「見てるだけ」ではありません。集めるだけです。
    山本さんは集めた物をすぐに試食されて面白い物を製作されていてVY-FBだと思ってます。私も見習わなくては。 同じく集めるのは大好きですからね(笑)

    > いやぁ作ってみたいなぁ
    今年はハンダ遊びもして頂きたいですね。 懇親会で拝見するのが楽しみだなあ!

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  5. こんばんは。新宿で呑んでいた人もいたようですが、私は目下プリント基板CADと格闘中です。

    ここまできれいに組んであると立派な作品ですね。改めて移植し直す必要もなさそうに見えます。

    私なんぞはルーズなので、ブレッドボードで試作するときにはグチャグチャです(苦笑)。そのせいか、以前の懇親会でご披露したブレッドボード版PLLシンセサイザを専用基板に組み直したら、性能的にずいぶん安定しました。定数は多少いじりましたが、それだけの問題ではなさそうです。

    逆に、空中配線ではうまくいっていたものが、プリント基板化した途端に性能が出なくなるということもあります。実際、それでプリント基板を再設計する羽目になりました。

    自分でものを考えない&手を出さない人はこういう失敗をしない代わりにノウハウも身に付かず、結果的にいつまで経っても上達しないのですよねぇ…(苦笑) すぐ人に「回路図をよこせ」などと言う人に限ってその辺を全然わかってない(笑)。

    それにしても、最後の一文はかなり強烈ですねぇ…(爆) もっとも、アクセスログの肥やしにしかならないような観客に来てもらいたくないのはどこのウェブマスターも同じでしょう。

    では、もう一仕事してから寝ます。

    返信削除
  6. JG6DFK/1 児玉さん、こんばんは。 こちらは間もなく就眠です。

    コメント有難うございます。
    > 目下プリント基板CADと格闘中です。
    お−! 頑張ってFBなパターンを引いて下さい。

    > 性能的にずいぶん安定しました。
    このBB版のSSBジェネレータは土台の金属板をアースし忘れていたら旨くなかったですね。 手を近づけると様子が変わる・・。GNDに接続して安定しました。(笑)

    > 基板化した途端に性能が出なくなる・・・
    これもありますね。 GND面が多い多層基板ならいざ知らず、両面基板でGND面があまり取れない設計だと空中配線より始末が悪いことも有ります。そう言う時は諦めが肝心で作り替え。経験者ですので。hi hi

    > 失敗をしない代わりにノウハウも身に付かず・・・
    そうでしょうね。 WebやBlogの記事は旨く行ったことが書いてあります。 それを見てわかったような気になっていると自分でやって見るとこんな筈じゃないと感じるでしょうね。

    > 「回路図をよこせ」などと・・・
    回路図は、接続の約束ごとのごく一部を表現しているに過ぎません。 回路図を掲載するとすかさずダウンロードしてこれで俺のモノだと思うひともいるようですが、現実の世界ではそうは問屋が卸しません。(笑)

    > 最後の一文はかなり強烈ですねぇ…
    いえいえ、ほんのジョークですよ。 少しでも手を動かす人が増えて欲しいだけですから。(爆)

    > もう一仕事してから寝ます。
    がんばって下さい。

    返信削除

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