【電子部品:日本の古いトランジスタ】
【日立:HJ22D】
写真の黒い電子部品は、日立製作所がトランジスタの量産を始めた頃のものです。 リード線が短いのは新品ではないからです。 たしか、修理に値しないような古いトランジスタ・ラジオから調達したように思います。昔々のお話しです。
部品箱の電子部品にもそれぞれに物語があると思います。 でもゲルトラはやはり懐かしすぎるでしょうね。 「私の・・」からお声も掛からないだろう・・・と選んだテーマでもないのですが。(笑)
・・・
前が何時だったか思い出せないほど久しぶりにゲルマニウム・トランジスタで6石スーパ(←参考図あり)を作りました。そう言えばもっと古い石もあったなあ・・・と思い出しました。 ブレッドボード製作ですから「取っ替え引っ替え」はお手の物です。 これだけ古いと貴重品かもしれませんが、足が短い中古の石ではたいした価値はないでしょう。早速これで遊んでみることにします。
あとで対照表が出てきますが、後世の2SA12と言うトランジスタのご先祖にあたります。型番が2SAXX形式になったのは1960年4月以降ですから50年はゆうに経過しているでしょう。いや還暦近いかも知れません。 だいぶ足のメッキが酸化していたので少々磨いてやりました。 これ今でも働くんでしょうか?
【HJ22Dに通電する】
いきなり通電されたら石もビックリするかも知れないので、テスター(指針式)のΩレンジで各PN接合の様子を見てからにしました。(注:×1Ωレンジは使ってはいけません。過大電流で壊すこと有り) 長く寝かせた球とちがって寝覚めが悪いなんて言う半導体はないでしょう。 ICBOは大きくなっていませんから気密漏れや汚染は大丈夫そうです。hFEもそこそこあります。
HJ22Dはアロイ型のPNPトランジスタです。アロイ型は「ジャンクション型トランジスタ」としては初期のものでした。不安定なポイント・コンタクト型を卒業しやっと安定した構造になったのです。 ハンダ封止という古典的な組み立て方法でパッケージングされています。 封止のあとで黒く塗装し、手で型番を捺印したような手作り感いっぱいのトランジスタです。
量産された接合型トランジスタとしては最初期のものでしょう。 電流利得=1となるトランジション周波数:fTは僅かに8MHzしかありません。 それでも低周波用ではなくて高周波用のひとつ、中間周波増幅用です。ここで言う中間周波とは455kHzですけれど。
それで、働いたかって? 何の問題もなくちゃんと働きましたよ。 ゲインも新しいトランジスタと違わない感じで。 トランジスタの寿命は半永久なんて今じゃだれも信じませんが、50年以上経ってもこのトランジスタは立派に生きていました。
【日立:2SA12】
なぜか2SA11と言うのは登録がなかったらしいのです? 2S11と言うのが日本電信電話公社専用にあったらしいのでその関係かも知れません。 従って日本のトランジスタ規格表で最初に登場するのは2SA12です。 2SB11も存在しなくて、2SC11と2SD11が存在するのも面白いですね。
2SA12はHJ22Dと同じ電気的特性ですが、形状はまったく違います。 組み立て方法が変わったからです。 ステム(台座)とキャップの部分を電気溶接で組み立てるようになりました。ハンダ付けより生産性が向上し信頼性も向上しました。HJ22Dはやはりかなりの旧式なのです。
こちらはTO-1と言うパッケージ形状です。統一されたトランジスタの形状としては最初の物です。ちなみに、2SC1815はTO-92型パッケージです。 既知かも知れませんが、今も見かけるTO-XX型の「TO」と言うのは、「Transistor outline」・・・即ち「トランジスタの外形」と言う意味そのものです。(参考:半導体技術協会JEDECのTOアーカイブ:TO-archive)
#このちょっとメッキが錆びて来た2SA12も立派に動作しました。
【東芝:2SA53】
2SA12の同等品と言えば東芝の2SA53でしょう。これにも旧型番があって2S53です。 同じようにゲルマニウム時代の6石スーパーでは定番トランジスタでした。
2SA52の自励コンバータのあと2SA53のIFアンプが2段、1N60で検波、そして2SB54の低周波アンプのあとは2SB56ppでパワーアンプと言うラインナップでした。(参考:2SA53の一方を2SA49とするものもあります)
ちなみに日立の方なら、2SA15-2SA12-2SA12-1N34A-2SB75-2SB77ppとなります。
性能は2SA12と違いません。まったく同じように動作します。 中和容量も同じで大丈夫でした。 カタログ性能を見ても殆ど違いがないくらいの互換品です。 もちろん、この2SA53もちゃんと使えました。 写真の2SA53は捺印文字が緑色なので通信工業用のグリーン・シリーズのようです。 確か頂き物だったはず。TKS JL1KRA !
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【ゲルトラのラジオで】
All Ge-Trで6石ラジオを試作し日立のラインナップと東芝、日電のそれぞれで試みました。いずれも後期の高性能なゲルトラではなくて、ごく初期の石ばかりを集めたものです。
全部シリコンの近代的な石・・例えば2SC1815,etc・・で作ったものと比べても遜色ない性能が得られました。もちろん各々に最適化はしてありますし、設計利得は同じになるよう計算しています。違いがなくても当然なのですが。
VHF帯ともなると、性能差が歴然としてくるかも知れませんが少なくともHF帯なら違いは感じないでしょう。或はGe-Mesa型でも使えば50MHzくらいゲルトラでも楽勝です。
周囲温度の上昇のように環境が悪くなるとゲルマは不利です。しかし日常の生活環境ならまずまず使えそうな「受信機」が作れます。 ならば作るのかと問われれば・・・答えはやや否定的ではあるのですが・・・。 単に珍しい物を使ったと言うだけではどうも意義が・・・(笑)
【旧型トランジスタの型番対照表】
神戸工業、日立、松下、日電、ソニー、東芝の旧型トランジスタと2SA・・・形式になってからの対照表です。 旧型番は各社が思い思いに命名していた様子がうかがえて面白いです。
非常に古いトランジスタ・ラジオの修理の時にでも資料にして下さい。 そうは言っても代替品の方も手に入らないかも知れませんけれど。(笑)
そんなときはバイアス関係を少し定数変更してやればシリコンのPNPで代替出来ます。機能優先で復活させたいなら工夫してみると良いでしょう。場合により高性能化されることもあります。
標準的な6石スーパの動作として、コンバータ段がIc=500μAくらい、IF初段も500μA、IF2段目が1mA、低周波ドライバ段が1.5mAくらいになるようバイアス抵抗を加減すれば大丈夫。低周波パワーアンプは各々1.5mAくらいで良いでしょう。いずれも無信号時のコレクタ電流値です。(エミッタで測っても概ね同じです)
なお、電気的な特性は同じではあってもHJ22Dと2SA12のように外観形状まで同じと言う訳ではありません。
この表以外に、三菱もTJ○○と言う旧型トランジスタを作っていました。 三洋電機は2SA・・・の時代になってからの生産開始でシャープはトランジスタを作っていません。 他の家電品メーカーは日立やSONYと言った逸早く量産に成功したメーカーからトランジスタを購入してラジオを量産していました。 トランジスタ・ラジオが輸出家電製品の花形だったのは'60年代初めのころです。
☆
デバイスも集めて眺めるだけでは大して面白くないでしょう。 ぜひ何か作って働かせたいものです。 既にラジオは身の回りに溢れていますし、ICとかDSPとか近代的なものが登場しています。 ですから作るのは恒久的な「作品」でなくても良いでしょう。いじって遊べる程度で十分です。 ラジオ用のトランジスタはやっぱりラジオで試すのが一番でしょうか? 50年の歳月を超えたトランジスタから聞こえてくるAMラジオ放送は何となく神秘的に囁くように聞こえました。de JA9TTT/1
(おわり)
こんにちは。
返信削除きょうは久しぶりにいい天気ですね。所要があり、新宿に行くついでに秋葉原でも寄ってこようかと思っています。特に目当てはないのですが。
2SAxxとかホンの少し持っていますが、HJ22とかを拝見するのは初めてです。当時は結構高かったのでしょうね。2SB54、2SB56、2SB75、2SB77、2SD77とかを買った記憶があります。(型番が違っているかも?)
ラジオを作るために2SAxxも買ったと思うのですが、型番の記憶がありません。
電球を駆動するために、2SB222を買ったのですが、実は電球を駆動するには非力だったり。外観はちょっと大型で力強いのですが。中学生が大枚をはたいて買いました。ずいぶん大事にしていたのですが、どこかへ行ってしまいました。
ゲルマトランジスターを使った2石?ラジオで驚いたのはベースバイアスの回路が無いのがありました。間違いだと思ったら、Icboを使ってバイアスしてたんですね。ちゃんと動いていました。シリコンに置き換えてしまうと動かないですね。
JK1LSE 本田さん、おはようございます。 今日はよいお天気ですね! この後で掛けます。hi hi
返信削除早速のコメント有り難うございます。
> 特に目当てはないのですが。
定番のお店を回ってくるとFBな物を発見できるかもしれませんよ。hi
> 当時は結構高かったのでしょうね。
1958年の雑誌広告を見たら500円〜1000円くらいでした。大卒初任給は1万4千円だったそうです。
> ラジオを作るために2SAxxも買った・・・
ラジオ雑誌でポピュラーだったのは2SA156(NEC)と2SA101(松下)ではなかったかと思いますが・・・。
> 2SB222を買ったのですが・・・
TO-5パッケージなのでリッパにに見えましたよね。 B222は珍しくケースがベース電極になってました。
> Icboを使ってバイアスしてたんですね。
そうなんです。 なにがしかIcboが流れますから自然にバイアスが掛かって・・・。 シリコンに慣れた目で見たら回路ミスと思いますよね。
ゲルトラのお手持ちがあるようでしたら発掘されてお試しください。hi
加藤さん、こんにちは。
返信削除HJ22Dは当局も初めて見ました。写真を見た時は、今回はXTAL関連かと思ってしまいました(^_^;
使ったことがある二桁TRは2SB54,56、2SC32くらいですね。まだ雑誌の回路図をそのまま作るのが精一杯でした。田舎でしたので、入手するのも難しかったです。
50年も前のことです。
最近では、足つきの半導体を入手するのが難しくなっていますが(笑)
あと50年たったら回路は全てシート状になっていて部品概念がなくなっているかもしれませんね!
JN3XBY/1 岩永さん、こんにちは。 埼玉東部をぐるっと回って帰ってきました。(家内の付き合いです・笑)
返信削除コメント有り難うございます。
> 今回はXTAL関連かと思ってしまいました(^_^;
いわゆる、「飯ごう型」などと言われているパッケージで、旧式な形状です。 似ているのは水晶のパッケージを改造して使ったからでしょうか。hi
> 田舎でしたので、入手するのも難しかったです。
私もそうでしたよ。 初期のシリコントランジスタは高くて手が出なかったです。ゲルトラは100円台でしたが2SC372など出始めは1,000円もしたのでした。やむなくジャンク基板から外して使いました。
> 回路は全てシート状になっていて・・・
回路を自作すると言う概念は無くなっているかもしれませんね。 大昔の「ディスクリート部品」が懐かしいと言ってもてはやされているかも。 子孫の為に買い溜めしときましょうか。球のように値打ちが出るかも知れませんから。(爆)
> 部品概念がなくなっているかもしれませんね!
ハードウエアは数種の標準モジュールになっていて、あとはシミュレータとか使い機能はソフトウエア的に実現するようになっているかも知れませんね。プログラムも自然言語で対話形式で記述されるとか・・・。 その頃まで生きていたいものですが無理ですね。(残念)
加藤さん、こんにちは。
返信削除部屋の移動に伴う作業に追われてます^^;
さすがにクリスタルのような形状のトランジスタは見た記憶がありません。Hi
2SA12は小中学生の頃に多用した2SA100や101、2SB56などの見慣れた外観ですね。^^
しかし「TO」が「Transistor outline」の略だったとは初めて知りました。
というより何の略なのか考えたことも無かったです。^^;
JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、こんばんは。 ずいぶん日が長くなりましたねえ。 今日はFBなお天気でしたよ。 お部屋の片付けお疲れさまです。 一気に大変でしたね。
返信削除コメント有り難うございます。
> クリスタルのような形状のトランジスタは見た・・・
日立だけでなく、NECやSONYも類似形状のTrを作っていましたが、やがて丸缶型に移行しました。 お生まれになる遥かに前の形ですから見たことがないのも・・・。(笑)
> 2SA12は・・・見慣れた外観ですね。^^
2石のレフレックスとか、ラジオ雑誌で見なれた形状でした。 シリコンでも最初は同じ形でしたがコストが掛かるのでプラスチック・モールドになりました。 ゲルトラが高かったのはパッケージが高いのも理由だったんでしょうね。hi hi
ナショナル・松下はミニ試験管のようなガラス容器に入ったトランジスタを作っていたのを思い出しました。hi hi
> 「Transistor outline」の略だったとは・・・
社会人になった頃、とても物知りな先輩エンジニアのAさんに教えてもらったんですよ。 私も何の略かなんて考えもしなかったのでした。(笑)
最初の頃は金属でもガラスでもないプラスチックパッケージのトランジスタには不安を覚えたものでした。(笑)
加藤さん、こんばんは。こういう昔のネタは大好きです。
返信削除私が電子工作の世界に入ったときは、既にシリコントランジスタの2SC372が幅を利かせていた時代でしたが、まだ真空管やゲルマニウムトランジスタも現役だったと思います。当時の「ラジオの製作」の製作記事でも真空管やゲルマニウムトランジスタがよく使われていました。シリコントランジスタがまだそれほど安価ではなかった(ゲルマニウムトランジスタの方がやや安価だった)という事情もあったかと思います。
当時我が家にあった2バンドのトランジスタラジオに使われていたトランジスタが、2SA60-2SA49-2SA53-1N60-2SB54-2SB54-2SB56×2の東芝のラインナップだったのを今でも覚えています。
6年ぐらい前のことですが、チェリーの8石スーパーラジオのキットを利用して、極性を逆にしてトランジスタをリード線に錆がきているハズシ物のゲルマニウムトランジスタに交換して組み立てたところ、特にバイアスを調整しなくても普通に動作したので妙に感心しました。このときのトランジスタは2SA15×2-2SA12-2SA12-1N60-2SB75-2SB75-2SB77×2でした。
確か1990年頃、岩手県のハムの集いか何かのとき手に入れたのですが、ソニーの2T64とか2T65とかが我が家にあります。何かに使ってやりたいと思っていますが、何に使ったら良いのかアイデアが出てきません。
JR2WZQ 河野さん、こんばんは。 こちらではお久しぶりです。hi
返信削除コメント有り難うございます。
> まだ真空管やゲルマニウムトランジスタも現役・・・
1960年代の終わりから70年代の中頃までは混在していた時期でした。 ゲルトラもまだかなり残っていたし、Audioや無線では真空管も現役でしたね。 家電品も古い設計のまま継続生産が残っていましたからゲルトラのニーズもあったようです。
> 特にバイアスを調整しなくても普通に動作した・・
乾電池式のラジオでは、電圧低下を考えたバイアス回路になっているものが多くて、SiでもGeでもそこそこ動作する条件になるようです。 そのままGeに換えると消費電流が多くなっている可能性があるので電池が勿体ないので調整する方が良いでしょう。hi
> ソニーの2T64とか2T65とかが・・・
2SD64と65相当ですが、PNPで言えば2SB54とB56あるいは、2SB75とB77のようなラジオの低周波アンプ用トランジスタです。そのような用途に使えると思いますが、もし未使用品でしたら足は切らずにソケットに刺して試しましょう。(笑)