【買い物ガイド 2016 その1】
【中華ポリバリコン:443AB型】
日本国内ではずいぶん前からバリコンは生産されなくなりました。 いま存在する国産品はごく僅かな市場在庫だけでしょう。 特にポリバリコンは海外製を頼るしか無い状況になっています。(送信機用は細々とした国内生産がある)
写真は「443AB型」と言う中国製のポリバリコンです。良く見て頂くと引き出し端子にメッキ不良による錆が見られるなど、けして良い品質とは言えません。しかし等容量の2連バリコンともなると入手できるものはごく限られています。中波専用のトラッキングレス型バリコンならたくさん見掛けるのに、等容量の2連バリコンは限られてしまいます。きちんと使える部品であれば価値があると言えるでしょう。 なお、ショップにはBE-443AB型と言う品がありますがBEが付かないこれは別物です。
443AB型は最大容量が大きめで、等容量の2連バリコンなので中波帯のラジオは勿論ですが、短波を含む多バンドラジオを作るのにも向いています。 HAM/BCL用としてはHF帯のプリセレクタを製作するのにも良いでしょう。 秋葉原と通販で単価100円くらい(2016年4月現在)で買えるので入手してみました。 (入手先:aitendoの通販←リンク)
シャフトは短いので普通のツマミを付けるには延長シャフトが必要です。専用の延長シャフトも売っていますが、φ6mmのカラーと2.6mmのネジを使えば簡単に延長できます。 取り付けネジも2.6mmのビスですが長すぎるとバリコンを痛めてしまいます。取り付けパネルの厚みなどを考慮し長さには十分気をつけます。
【可変容量特性の測定】
国産のバリコン、例えば往年のミツミ製やアルプスの製品なら安心して使えました。2連バリコンのセクション間の容量誤差は厳密に規定されていたからです。連動誤差を気にする必要などなかったのです。
しかし、中華製パーツの仕様書を鵜呑みにするのは危険です。信じると痛い目に遭うことがあります。ww
443AB型は等容量の2連バリコンと言うことですから回転角と容量の関係、及び2つのセクション間の容量誤差を実測してみることにします。
写真は市販の分度器を細工してポリ・バリコンが取り付けられるようにした治具です。大きめのツマミと指針が付けてあります。 このような治具を用意した上で容量計を使って回転角と容量の関係を実測してみます。回転角度は目見当ですが±0.5度くらいの再現性はありそうです。 もっと正確にやりたいならシャシに固定し大型のバーニア・ダイヤルを付けると良いでしょう。(そこまでやる必要は無いと思いますが・笑)
【443AB型の可変容量特性】
測定結果です。 結論から言うと、セクション間の連動誤差はごく僅かであり、国産品のポリ・バリコンに劣らぬたいへん良い性能でした。
2個について測定しましたが、バラツキもあまりありません。もっと多量に調べると違う結果が出る可能性もありますが、まずは実用になる性能が得られていると考えて良いでしょう。
なお、国産のポリ・バリコンでも開発初期の頃はローターの加工が良くないため、ポリエチレンシートを巻き込んでしまう不良が頻発したそうです。 暫く前になりますが台湾製のポリバリコンでは10回も回転しないうちにそのような不良がほぼ100%で発生してたいへん困ったことがありました。
実際に10回転くらいで壊れることは無さそうですが、このバリコンも回転寿命に関しては十分な評価をしていないので期待した程の寿命はない可能性もあります。 取りあえず容量可変特性については合格ですが耐久性など使いながら評価して行きたいと思います。
国産品の入手が限られて来たので、安価なパーツとして取りあえず使える部品として考えたいと思います。あとは各自ご自身の判断で使ってみて下さい。電気的な性能は悪くありません。 前のBlogで扱った短波ラジオ(←リンク)の製作にも変更なしで使えます。
備考:443AB型はネットショップの説明ではFM用2連を含む4連バリコンのように書いてあります。 実際にはAM用の等容量2連ポリ・バリコンにFM用の4連バリコンが一緒になった6連バリコンでした。
回転軸と反対の面に4つのトリマ・コンデンサが付属しています。この4つのトリマ・コンデンサは、FM用の4連バリコンにそれぞれ並列になっています。内部で接続されているので切り離すことはできません。 トリマ・コンデンサを最小容量にセットした時、FMセクションは2.9〜23pFの可変範囲があります。またトリマ・コンデンサの容量可変範囲は約10pFです。
FMセクションはFMラジオ専用と言うわけではなく、小容量のバリコンとして、セクション単独あるいは複数セクションを並列にして様々に活用することができます。(記述変更:2016.04.28)
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【中華トランジスタ:S9018H型】
表面実装型のトランジスタならまだ幾らでも手に入ります。 しかし、リード線付きのトランジスタは次々に製造中止が告げられています。 汎用品はまだ容易に手に入るのであせって買い溜める必要も無いとは思います。しかしいずれ入手できなくなる時が来るかも知れません。
「発展途上国のトランジスタ」と言うものがあって、写真のトランジスタ:S9018もその一つです。中国製らしいですが安価なので途上国に広く出回っています。 ほかにもS90XXと言う型番のトランジスタが数種類ありますが、国産品で困るわけでもないのであまり食指も動きませんでした。
S9018はそれらのトランジスタの中では最も高周波特性が良いものです。 同等以上の国産品もまだ簡単に手に入るので、あえて使う必要は無いのかも知れません。しかし評価しておけばいつか役立つかも知れません。他の90XX型トランジスタよりも幾らか魅力的です。
S9018は秋葉原のショップや通販で10個100円で手に入る高周波用です。2SC1815のような汎用トランジスタ(はんようトランジスタ:特に用途を定めない雑多な目的に使えるトランジスタのこと)と比べ高周波においては明らかに高性能です。 数MHz以上では2SC1815等の汎用品を無理して使うよりも、S9018を使った方が有利です。もし高周波用トランジスタを持っていないならパーツボックスにストックしておけばいつか役立ちます。
Aliexpressで検索すると1,000個単位で数ドルで売っているのが目に止まります。中華直輸入なら確かに安いのですが、2SC1815のような汎用性はありません。いくら安くても使い切れないほど在庫するのはナンセンスです。100円か200円分も買っておけば十分でしょう。半導体は陳腐化しますし。(笑)
【S9018Hのピン接続】
ピン配置は2SC1815や2SC1923等とは異なっているので十分注意します。足ピンの中央はベースです。コレクタではありません。
足ピンを下に向け型番の捺印面を正面に見た場合、左から右へエミッタ、ベース、コレクタの順です。左の写真も参照して下さい。
S9018はNPN型トランジスタです。カタログ比較では2SC387や2SC1923(どちらも東芝製)などと類似特性だと思えば良いです。2SC1906や2SC1907(どちらも日立製)とも良く似ています。いずれとも足の並びは違いますが十分代替可能でしょう。
写真の右端はS9018とは無関係なのですが、2N5401と言う高耐圧のPNP型のトランジスタです。これは高周波用ではありません。 通販で購入したS9018(aitendo←リンク)に異品として混入していました。流石に中華パーツですね。お店で購入する時には良く確認して下さい。通販品を使う際も同様です。良く型番を見ずに使ってしまうと結果は悲惨です。(爆) 中華トランジスタはほかにイーエレ(←リンク)などでも販売されています。
参考:型番印刷ミスの可能性も考えたのですが、混入品を確認した結果PNPトランジスタでしたから、小袋詰めの際に2N5401が混合してしまったようです。
【SS9018HのfT特性】
SS9018と言うのは米Fairchild社の同等品のようです。ネットでS9018の規格をサーチすると真っ先にヒットします。
この図は、Fairchild社のSS9018HのfT特性図です。これによればIc=1mAでfT=800MHzくらいです。fTのピークは1GHzを超えており、その時のIc=5〜6mAとなっています。小信号で使い易い特性に作られていると思います。 しかしこの特性はFairchild社のSS9018の特性なので注意を要します。中華製は次の図を見て下さい。
【S9018のfT特性】
安価で手に入る中華製S9018のfT特性は左図ではないでしょうか。図は中華系メーカ(JCST:江蘇長電科技)のS9018カタログからピックアップしたものです。
これによれば、Ic=1mAのとき、fT=400MHz少々と言ったところです。 FairchildのSS9018と比べて半分くらいしかありません。 まあ、それでもfTは高いトランジスタだと言えますが・・・。 fTのピークもIc=20mA近くのようなのでだいぶ特性は違います。
このあたり、SS9018の規格を参照すると実際のS9018では性能不足が起こる可能性もあるので注意しておきたいと思います。
勿論、バラツキもありますし中華製のS9018とは言っても複数の会社が作っている共通品のようですから、中にはFairchildのSS9018と同じような特性のものも存在する可能性はあります。Fairchild社も自身では製造せずにそうした物を調達・販売している筈ですから。(笑)
参考:件のS9018HのfTについて、実測してみた後日談(←リンク)があります。予想と違った意外な結果でした。(2017.7.10)
【S9018HのhFE特性】
S9018は高周波用トランジスタなので、コレクタ電流の最大値は小さめです。 従って、2SC1815のような汎用品と違って何にでも使うようなトランジスタではありません。
コレクタ耐圧:Vceoも低くて18Vが最大です。従ってL負荷の場合は半分のVcc=9V以下で使えば安全です。 また、左図のようにhFEカーブから見てコレクタ電流も20mA程度までの範囲で使う方が良いでしょう。 これはS9018が劣っていると言うよりも、高周波用トランジスタの一般的な特性です。耐圧が低く電流容量も小さいのは高周波特性を良くした結果だと言えます。
【S9018のhFEバラツキについて】
ところで、中華製のS9018は何故か売っているものはhFEの分類がHランクのものばかりです。 S9018Hと言うのはhFEが 97〜146の範囲の選別品なのです。 本当にHランク品か「眉唾もの」なので実物で確認した方が良いでしょう。 たぶん、顧客から「S9018 H 331をくれ」と言う注文ばかりが来るので無条件に「S9018 H 331」と印刷しているのではないかと強く疑われます。331と言うのは本来製造時期を示すロット番号の筈ですから全部が同じ筈はありません。ww
「怪しい」と言っているだけでは想像でしかないので、実際にhFEのバラツキを測定してみました。 その結果、n=44の標本統計になりますが、平均hFE(ave)=102.6、標準偏差S=8.61となりました。サンプル内における最小hFE(min)=94、最大hFE(max)=125でした。 実測では規格範囲より僅かにhFEの小さい物が混じっていましたが、概ね正しく選別がなされているようです。hFEは測定コレクタ電流によっても変わるので多少の違いはその影響も考えられます。
中華S9018は一般的なトランジスタよりもhFEランクの刻みが細かいので、果たしてどうだろうかと思いましたが意外な結果でした。(参考:例えば2SC1815ならYランクはhFE=120〜240と2倍の範囲に取っています)
【S9018Hのお薦めの使い方】
1MHzから150MHzあたりまでの小信号高周波増幅や高周波発振回路に向いています。VHF帯の超再生検波にも良いでしょう。 最近作った中華版PIXIE-Ⅱの水晶発振部にも使われていました。 このBlogの例では、短波ラジオや50MHzのクリコンに最適です。 送信機の用途ではPo=100mW以下のQRPpなら使えそうです。 5個くらいパラにして0.3W程度でしょうか?
【S9018Hを試す】
カタログ比較だけでは検証不十分です。 さっそく50MHzのクリコン(←リンク)で確認してみました。 足の並びが違うので写真のように少々不自然になりましたが注意すれば支障はありません。
写真では高周波増幅に使った例ですが、周波数変換の部分もS9018Hに交換して確認しています。 精密な比較ではありませんが、2SC1923Yや2SC535Cと比べて違いを感じません。 S9018は高周波用トランジスタとしてFBに使えます。 ほか、短波ラジオ(←リンク)でも確認してみましたが、流石に高周波用なので十分満足行く性能が得られています。
455kHzの中間周波増幅用には少々fTが高すぎるのですが、コレクタ・ベース間容量:Cobが小さいことから安定に動作しました。 コンバータ部でも受信バンド上端においてブロッキング発振など見られないので支障無く使えています。
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昔からあったような高周波回路の部品は徐々に姿を消す傾向にあります。ありきたりの電子機器はワンチップIC化されてきたので、昔ながらのRF用パーツはニーズが減って来たのでしょう。 ラジオのような高周波利用の家電品ニーズが無くなった訳ではないでしょうが作るための部品は世代交代しています。 特に国産のRF用パーツは製造中止が続出しています。 少々怪しいと思いながらも、中華パーツの中から良さそうなものを確認しながら使って行く必要が出てきたようです。上手に使えば非常にコストパフォーマンスの良い回路が作れそうです。 de JA9TTT/1
(おわり)fm
ご注意:このBlogはアフェリエイトBlogではありません。特定の商品やショップをお奨めする意図はありません。公開している商品情報やリンクは単なる参考です。お買い物は貴方ご自身の判断と責任でお願いします。
【熊本・大分大地震のお見舞い】
【熊本城:2016年3月15日】
写真は先月の半ばに熊本城を訪れた時のものです。 晴天に恵まれ、素晴らしい姿を見ることができました。 最上階から熊本市街を一望したのも記憶に新しいところです。 熊本訪問の前には湯布院にも立ち寄りました。
それから1ヶ月後の4月14日夜に始まる大地震で熊本県・大分県で甚大な被害が発生し、多数のお方が今なお避難生活を続けて居られます。 お見舞い申し上げるとともにTVから伝わる変わり果てた景色に心を痛めております。 被災者の方々の日常が少しでも早く復旧され、また熊本城もいつか以前のような美しい姿で再建されますこと、心から祈っております。 de JA9TTT/1
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2016年4月22日金曜日
2016年4月7日木曜日
【回路】Crystal Converter Design (2)
【回路:クリスタル・コンバータ:part 2】
【クリコンのかなめ】
シンプルなクリスタル・コンバータを作ってみましょう。 前回(←リンク)の続きです。 シンプルで低消費電流、実用的な性能のクリスタル・コンバータができました。
クリスタル・コンバータ、略して「クリコン」の要(かなめ)と言えばやはり局発(Local-OSC)でしょう。 スーパー・ヘテロダインの原理を使いますから、局発回路が確実な発振をしてくれなくては機能はストップしてしまいます。
クリコンはその名の通り、クリスタル(水晶発振子)を使った発振器を使います。 VHF帯を周波数変換するためには高い周波数の発振器が必要で、周波数安定度の点から「自励発振器」では実現困難なため水晶発振器を使うのが普通です。
まずは、確実な発振が可能か否か実際に部分試作して確かめました。 必要な周波数が高いことから水晶はオーバートーン発振させます。 オーバートーン発振用に作られた水晶発振子を使えば確実ですが手持ちの活用から一般的な水晶発振子をオーバートーンモードで使うことにします。 オーバートーン用ではない水晶発振子でオーバートーン発振させても支障はありませんが保証外になるので販売目的の製品に使うのは旨くありません。しかし、アマチュア的には何ら支障はありません。本来とは想定外の発振をさせるため事前確認しておけば確実です。
50MHz帯を5MHz帯に周波数変換するため50-5=45MHzの局発が必要です。 45MHzを得るために基本波の周波数が15MHzの水晶発振子を3次オーバートーン発振させるか、同じく9MHzの水晶を5次オーバートーン発振で行くのか比較テストしました。 オーバートーン発振の場合、基本波の周波数をちょうどn倍(nは奇数に限る)した値にはなりません。 整数倍から幾らかずれるのが普通なのです。 その結果、どちらの水晶でも確実な発振は可能でしたが発振した周波数には違いがありました。 15MHzの水晶が約45.035MHzで、9MHzの方が44.993MHzで発振しました。
オーバートーン発振での周波数のずれ具合は同一ロットの水晶では同じような傾向を示します。しかし周波数は同じでもまったく別の水晶では異なった傾向を示すようです。 高い方へずれるのか低い方へずれるのか、実験した範囲で明確な規則性は見いだせませんでした。 ですから15MHzの水晶なら3次オーバートーンで必ず45.000MHzの35kHz上で発振する訳ではありません。9MHzの5次オーバートーンが7kHz低かったのも手持ちの水晶のたまたまの現象でしょう。 ちゃんとしたオーバートーン用水晶では目的のオーバートーン周波数で発振するように周波数調整してあるわけです。
ここでは45.000MHzに近かった9MHzの水晶を使うことにします。 本来の目的外ですからジャスト3倍や5倍の発振周波数にならないのはやむを得ませんが、なるべく目的周波数に近い方を選びました。少しでしたら周波数調整も可能です。
【試作50MHzクリコンの回路図】
試作した50MHz用クリコンの回路図です。 高周波増幅のあと、水晶発振と周波数変換を1つのトランジスタで兼用する自励コンバータを使った2石クリコンです。
デバイス数の削減は優先項目ではありませんが興味のあった回路なので参考にしてみました。 後ほどオリジナルの回路が登場しますが、そのままではなく改良を行なっています。 改良のポイントはバイアス回路で、トランジスタのバラツキに強くすることにあります。 そのため、トランジスタを差し替えても無調整で行けます。(もちろん程度問題ですが・笑)
Q1の高周波増幅(RF-Amp.)はベース接地型です。 エミッタ接地型にしてより高いゲインを得ることも可能ですが中和回路が必要になります。 周波数変換部分にもゲインがあるのでRF-Amp.はベース接地型で行くことにしました。 ベース接地のアンプは入力側と出力側のインピーダンス比でゲインが決まります。 入力はタップダウンしてあり、かなり低く、負荷側はタップ無しなので比較的インピーダンスが高いため十分なゲインがあります。
Q2は周波数変換と局発を兼用する回路で自励式コンバータの一種です。 局発回路としては3次、5次のいずれでもオーバートーン発振できます。 但しこの回路ではそれ以上の高次発振は難しそうでした。 このQ2の回路は周波数変換の機能を兼ねるので発振レベルが大きくなりすぎないようにするのが肝心です。T3の巻き数比やQ2のコレクタ電流で加減します。旨く動作させればゲイン、NFなど他励式コンバータに遜色の無い性能が得られます。局発注入レベルの調整が不要なのも良い点です。 ベースバイアス部分のC6はあった方が良さそうに感じますが、これがあるとブロッキング発振が起こります。なくても感度に影響を感じませんから付けないことにしました。
このクリコンに推奨するトランジスタは2SC1923Yあるいは2SC2668Yです。この2つは外観こそ少し違いますがまったくの同等品です。 50MHzですからfTが高いトランジスタを使います。 ほかに2SC535C、2SC387Aや2SC668EなどfTが500MHz以上のTrがFBでしょう。それぞれ比較テストしましたが性能はどれも類似でした。 何れも数10円のトランジスタですから良い性能のトランジスタを使うと安心できます。 残念ながら汎用品の2SC1815Yでは十分な性能は期待できません。fTが足りないので局発の発振が困難でした。またRF-Amp.に使ってもゲインは低めです。
このクリコンは水晶さえきちんと発振すればあとは特に難しいところはありません。上記のようなトランジスタを使えば問題ない筈ですが、うまく発振しないようなら水晶発振子の問題かも知れません。別の水晶に交換すると簡単に問題が解消する可能性があります。 たとえばaitendoで購入した9MHz(HC-49/US)の水晶では5次オーバートーン発振はできませんでした。3次オーバートーンの方が楽ですから15MHzの水晶を優先しても良いでしょう。
ポピュラーな14.318MHzの水晶発振子(HC-49/U)も旨く3次オーバートーン発振しました。悪くない選択だと思います。この場合7MHz帯に周波数変換されます。 クリコンの全消費電流は約2.4mAと省エネです。(電源電圧は6Vで設計しています)
【50MHzクリコンのコイル製作図】
たった2石のシンプル回路ですが、コイルは4つ必要です。 参考にしたオリジナル記事ではφ8mmのトランジスタ用ボビンに巻き線していました。 これは10Kタイプのボビンが出回る以前の記事だったからでしょう。
一部のコイルについては指定通りφ8mmのボビン(東光のモノコイル同等)でも試作してみました。 しかし巻き線しにくいのですべて10Kボビンに変更しました。 10Kボビンも幾つか種類があって、ここではコア材のμがやや小さい「VHF用」と称するものを使っています。
たまたまですがφ8mmのボビンと同じ巻き数になりました。 10Kボビンに巻いたコイルのQはあまり高くありませんが、実用性能が得られています。 なお、大きめのインダクタンスが必要になることから、5MHzの出力コイル:T4のみμが少し大きいコア材の10Kボビンを使いました。そのような10Kボビンを持っていなければ他と同じボビンに巻けるだけ巻き、同調容量のC9:100pFを大きくしても良いでしょう。 巻き線はすべてφ0.16mmのポリウレタン電線(UEW線)です。
既成のFCZコイル(同等品含む)はタップの位置や2次側の巻き数が適当ではないためそのままでは使えません。 巻き線されていないボビン素材を購入して巻くか、巻かれたコイルを分解して巻き直し改造します。 各コイルはAmidonのトロイダルコア(例:T25-#10など)とトリマコンデンサを使う形式に変更することも可能です。所定のインダクタンスになるように巻き線しタップ位置や2次巻き線の比率が近似になるようにします。
備考:一覧表のように同じインダクタンスでも使用する同調容量が異なるのは、配線によって付加されるストレー容量に違いがあるからです。 プリントパターン化する場合にも実際に合わせて同調容量を加減する必要があるかも知れません。
【ブレッドボードで試作】
50MHzと言うVHF帯になることから、ブレッドボードでの試作に不安を感じました。 配線インダクタンスを減らすためアースラインを複数にしたり列を飛ばすなどストレー容量にも考慮した結果、支障ない成績が得られました。
ブレッドボード起因の動作不安定も見られずHF帯となんら変わりません。 部品配置や配線を良く考えて作ればブレッドボードでも50MHzくらいまで行けることがわかりました。 以前行なったブレッドボードの分布容量や配線インダクタンスの調査が役に立っています。(トラ技:2014年3月号に記事あり)
使う部品にも注意を払っています。コイルはブレッドボード用の変換基板には実装せず、足ピンにメッキ線を足して最短配線になるようにしています。 バイパス・コンデンサは高周波特性の良いセラコンを使うのは当然として、VHF帯の製作であることを意識し各部品の足は必要最短にカットします。 勿体ないからと言って部品の足を長いままにするとアンプが発振したり、逆に発振回路が発振しないなどのトラブルに見舞われるかも知れません。 50MHzは立派な高周波ですから低周波のようなモヤシ配線の手法は通用しません。(笑)
【局発波形】
局発の発振波形です。 コイル:T3の2次側、あるいはQ2のベースで、300〜400mV(rms)の発振振幅 になる筈です。 離調させる方法で、振幅を増減してみましたが発振はこのくらいの大きさが最適な値にあるようでした。
T3の調整ですが、オシロスコープまたはRF電圧計を使います。観測ポイントはT3の2次側(回路図の×印の場所)です。 T3の調整コアをボビンの上端の方向へ(反時計方向に)回して行くと発振が停止するポイントがあるはずです。 そこから逆に(時計方向へ)戻し、発振が再開したら更に1/4〜1/3回転ほどコアが入る位置へ回しておきます。
コアを発振の振幅がピークになる位置に調整してしまうと、わずかな条件変化で発振停止する危険があります。上記の調整方法のように、コアを発振のピークから安全方向へわずかに戻しておく訳です。 その後、電源のON/OFFを繰り返してみて確実に発振がスタートすることを確認しておきます。
【調整方法】
他のコイルの調整は簡単です。テストオシレータあるいは標準信号発生器:SSGから 50MHzを与え親受信機で5MHz帯に変換された信号を受信します。 T3は調整済みですから、T1、T2、T4のコアを調整して一番良く聞こえる状態に合わせれば終了です。 信号発生器がなければアンテナを繋いで外来ノイズを頼りに調整しても大丈夫でしょう。
50MHzのHAMバンドは4MHzもバンド幅があるので無調整でフルにカバーするのは無理があります。 バンド全体に渡ってまんべんなくオンエアされているわけでもないので、よく使われている周波数で最高感度になるようにしておけば良いでしょう。 私はSSB局が良く出ている50.25MHzで調整してみました。 その状態でCWバンドの上端あたりからSSB局が主に出ている周波数帯で感度差をあまり感じません。 50.62MHz付近のAM局や51MHz以上のFM局をメインにするなど、使用目的に応じ調整する周波数を決めます。
もしバリコンで同調可変式にするのなら、T2のところのC4:27pFを40pFくらいのバリコンにします。またT4のところにあるC9:100pFを固定コンデンサ50pF+100pFのバリコンにするのが良いでしょう。 C1:33pFはT1の共振がブロードなのでバリコンにするほどでもないようでした。
【受信成績】
2石のクリコンですから過剰な期待はできません。 しかし、まずまずの性能ではないかと思います。 HF帯のトランシーバを親受信機にしてSSGでチェックしたところ、CWモードでは-15dBμくらいのビートが十分確認できました。 そこで18mHの5エレ八木アンテナに繋いでみたらなかなかFBに聞こえます。 15kmほど離れたローカルさんは59+でしたが、遠方の移動運用局もノイズから浮き上がって聞こえてきました。 これから初夏に掛けて Eスポでも出たら賑やかに聞こえるでしょう。
クリコン自身のノイズフロアは拙宅の環境では外来ノイズ以下でした。 従ってS/Nも十分で、ゲインも必要にして十分な大きさが得られているように思います。 休日の昼過ぎ、S9++のローカル局が2局同時にオンエアしていたので強い両局の信号によって起こる混変調の具合を探ってみました。暫くワッチしてみたのですが目立って感じられませんでした。 定性的な評価ですが普段のオンエアで支障のない性能のようです。 回路構成上ゲイン過剰ではないので混変調特性も取りあえず実用範囲なのでしょう。
親受信機の性能が普通以上であればまずまずの性能が得られるようです。 3石の標準的な回路構成のクリコンに遜色のない性能ではないでしょうか。
【2石クリコン】
この2石クリコンが今回の製作のベースです。 引用元はCQ誌1971年1月号の付録だった小冊子「88シンプルトランジスタ回路集」です。 この回路集はすり切れるほど眺めたものでした。 なお、小冊子のこのクリコンは1967年ころのCQ誌掲載記事を転載したものです。CQ誌はすべて処分したので元の記事は何方の執筆だったのかわかりません。(参考:調査の結果は1967年12月号pp133〜4、pp143~4の4ページ:執筆は電通大電子工学科・JA1JJU竹内幸一さん)2019.11.27
記事が出た1967年当時、記事にあったパターンでプリント基板を製作した覚えがあります。残念ながら成功しませんでした。 基板はチューインガム1枚より小さいくらいの細長い形状でとてもコンパクトでした。(参考:60mm X 15mm)そのため固定バイアス回路にするなど省部品の設計になっています。上記小冊子には書いてありませんが、バイパスコンデンサ:C3が500V耐圧になっているのも形状の大きな円盤形セラコンを使ってコイル間のシールド板を兼用させる工夫です。
失敗した原因ですが幾つか考えられます。 まず、水晶発振子が良くなかったのではないかと思います。当時の水晶は性能が悪くて発振しにくいものが多かったようです。それに交換して試せるほどたくさん持っていませんでした。 あるいはコイルの巻き方が良くなかった可能性もあります。但し、GDMは既に持っていたので同調の確認はしていたはずです。 使ったトランジスタの型番は忘れましたが代替品だったので性能不足だった可能性もあります。hFEの違いが出易い回路なので、バイアスが適正ではなかった可能性は大いにあります。
コンパクトで部品数も少なく、簡単そうな製作でしたが見かけほど容易ではなかったのでしょうね。 ずいぶん年月は掛かりましたが、今回の製作でリベンジが果たせました。
【3石標準型クリコン】
これも上記と同じ冊子から引用した回路です。 この回路も同じくCQ誌に掲載された記事が元になっています。 1968年9月号の特集「5群のトランジスタで作るアマチュア機器集」で、JA6AAF/1北国さんの執筆によるものです。
当時、まだゲルトラが幅を利かせていた時代でしたが、登場しつつあった高性能なシリコントランジスタを主体にしてHAM用の機器を製作すると言う先進的な内容でした。 2SC387はfT=900MHzの高性能トランジスタです。(その後改良型の2SC387Aとなり、fT=1,000MHzになった) まだ2SA71や2SA58と言ったドリフト型のゲルトラさえ現役で使われていた時代でしたが、新トランジスタを使うことでローノイズ、ハイゲインが確実に得られることが示されていたのです。 もちろん、今でしたら2SC387は2SC1923や2SC2668など代替品はたくさんあってどれも安価です。
ちなみに、当時2SC387は¥1Kもした物が急に安価になって200円で買えるようになったと記事にあります。でもCQ誌も200円でしたからそんなにお手軽でもなかったのですよね。 なお特集記事の製作回路はどれも20pの小型ラグ板に載せています。 プリント基板を起こさずに済むのでお手軽感がありました。 クリコン回路そのものは非常にオーソドックスな物でトランジスタを使ったクリコンの標準型です。
【J-FETを使った3石クリコン】
このクリコンはJARL「アマチュア無線ハンドブック」(1970年版)に掲載されていたものです。 CQ誌など、どこかの雑誌にオリジナルの記事があるのかも知れません。どなたによる執筆かも記載がありません。
その当時の部品事情を反映しているのでしょう。 使われているJ-FETのMK10-2は登場して間もないころです。 高周波用の2SK19は登場まえか、まだ高価だった可能性があります。 価格や入手性を考慮すると他に選択肢のない時代だったので「FETと言えばMK10」と言うくらい何にでも使いました。
回路はJ-FETを使ったオーソドックスなものです。 帰還容量Crssが大きいことから、中和回路が必要です。 2SK192A(YまたはGR)で代替できるので作ってみるのも面白いでしょう。MK10より幾分性能は良くなり、まずまずの性能が得られるクリコンになるでしょう。 そのほか秋月電子に安価に登場したJ-FETのBF256Bもちゃんと使えるのでお試しあれ。 局発に2SC372を使っていますが、発振周波数が22MHzだからでしょう。ここはもっと高周波特性の良い石を使うと確実です。22MHzの水晶発振子も現在では基本波の物が容易に手に入るのでオーバートーン型よりもそちらを使った方が有利です。
参考:このクリコンの出力周波数は28MHz帯になっています。 HAMバンド専用受信機を親受信機にする場合、28MHzバンドに変換すると2MHzの受信幅が取れるので有利です。 但し、28MHz帯の性能は芳しくない受信機も多かったので、他の例に見られるように14MHzバンドへの変換がベストでしょう。 その代わり500kHz幅しかカバーしませんから、50MHz全体を受信するにはクリコンの局発水晶を切り替える必要があります。 9R59Dのようなジェネカバ・ラジオを使うならやや低めの4〜10MHzあたりに変換するのが適当です。
【J-FETとDi-DBMを使ったクリコン】
時代はずっと下って1977年発売のA5版書籍「アマチュアのV・UHF技術」(CQ出版)に掲載されていた半導体式のクリコンです。JH1GJF住広さんによる製作記事です。 そろそろJAでもショットキー・バリア・ダイオード(SBD)が入手容易になって来た時代で、SBDをリング状にしたDBM形式のミキサが注目されたころでした。
SBDはホットキャリヤ・ダイオードとも呼ばれ、米誌によれば非常に高性能とのことでした。しかしJAでは入手難だったのです。JAのHAMが初めて買えたSBDはNECの1SS16で、高価だった記憶があります。 SBDは強電界に弱いという触れ込みだったのでアルミフォイルに包んで慎重に保管したものでした。(いまのSBDも静電気で破壊し易い)
また、当時米QST誌ではSiliconix社のJ-FETであるU-310あるいはJ-310を使ったGGアンプが盛んに採り上げられており、ローノイズで混変調特性に優れたRFアンプの決め手と言われました。この製作記事ではSiloconix社のE-310というJ-FETが使われています。
E-310はパッケージ違いの「J-310」と思えば良いです。中身のFETチップは同じものですが、いまでは生産されていない形状のパッケージに入ったものです。 足ピンの並びに気をつければJ-310でそのまま代替できます。U-310でも良いでしょう。 或は手持ちがあればSONYの2SK125も使えます。
ミキサーのCM-1はいまでは聞かないVari-L社と言うメーカーのDBMモジュールです。同等品がミニサーキット社やR&K社にありますから支障ありません。 もちろんフェライトコアにトリファイラ巻きしたトランス2個と1SS97などRF用SBDを4本使って自作できます。手作りすれば安上がりで性能も既製品に遜色ありません。
従来型のクリコンではコンテストの時など混変調に悩まされました。それが、かなり解消される性能が得られたのです。 NFも良いのでGWでDXを狙うにも悪くないでしょう。いまでも通用するクリコンです。 ただしクリコン自体の消費電流はずいぶん大きくなりました。乾電池が電源の無線機には不向きだと思っています。
【7360を使った真空管クリコン】
真空管式のクリコンがないと寂しいかも知れません。 このクリコンは上記と同じ「アマチュアのV・UHF技術」に掲載された高性能な真空管式クリコンで、JA1LZK海老原さんによる製作記事です。
ローノイズで混変調特性に優れるビーム偏向管:7360をミキサに使っています。 RFアンプもカラーTVのチューナーを高感度化する目的で開発されたフレームグリッドの高性能管:6HA5です。3極管ですから中和回路は必須ですが低NFで混変調特性も良好です。 そのため、良く聞こえしかも大信号特性に優れた混変調の少ないクリコンになっています。真空管式のクリコンとしてはこれが集大成と言えるかも知れません。
7360をお持ちでしたら試してみるのも良いかも知れません。 ただ、無理に(高額で)手に入れるほどの価値はないと思うのであまり妄想を膨らませぬ方が宜しいです。 RFアンプやミキサに6AK5を使うような古典的クリコンと比べれば明らかに優秀ですけど・・・まあその程度でしょう。 半導体式の方が総じて優秀ですから、物珍しさ以上の価値はないのかも知れませんね。 今の時代、真空管を使うと電源が別系統になってしまうのも厄介です。そんな障害を乗り越えて作るほどのメリットがあるのか少々微妙なところです。w
【ニュービスタを使った真空管クリコン】
同じく、真空管式の高性能なクリコンとしてニュービスタ管を使ったものがあります。 上記の7360にはやや及ばないかも知れませんが、RCA社が混変調特性のデータ付きで盛んにPRしていただけあって、なかなか優秀なようです。
図はARRLの「VHF Handbook」(1965年版)を引用した物です。 この時代のARRL発行のハンドブックではクリコンはニュービスタ管が主流でした。
JAで手に入る部品に置き換えて作り易くした製作記事がCQ誌に掲載されたことがあります。たぶんこの回路を参考にされたのでしょう。JA6HW/JA1RST角居さんの記事でした。しかし球とソケットが特殊なのであまり流行らなかったようです。ニュービスタなんて地方のHAMにはご縁が無かったんです。 もしも「球+ソケット」が必要数手に入るなら試してみたい気もしますが・・・難しいでしょうね。 ただ、ガラス管でない真空管製作は何となく「ハリアイ」が少ないです。 球はオレンジに灯るフィラメントが見えなくてはね。(笑)
☆
世に登場したクリコン回路はまだまだたくさん有ります。 例えばDual-Gate MES-FETを使ったローノイズ・クリコンや、V-MOS FETのVMP-4を使う超弩級クリコンなど紹介したいものは沢山あります。 ただ、すでにクリコンなどなしで長波帯からUHF帯までフルカバーするトランシーバや通信型受信機が目新しくもない時代です。これ以上深入りする意味もないようですから,取りあえずこの辺でやめておきます。 こうしたVHF帯の製作は部品配置や配線こそ重要です。回路図があれば作れる訳ではありませんが、いずれ機会があれば続きでもやりましょう。w
短波のトランジスタラジオ(←リンク)の製作が切っ掛けと言うわけでもありませんが、何となくそれに合わせた製作になりました。 もちろんそのような製作にも向いていますが、わずかな電流で働いてくれますから既存のラジオに付加するような使い方も面白そうです。短波ラジオの製作と合わせて簡単6mAMトランシーバの受信部を作ってみては如何でしょうか。
SHF帯の自作などを除けばHAM用クリコンの製作は既に廃れていますが、クリコンが完全に無くなったわけではありません。 ワンセグチューナをジェネカバ受信機に応用するにはHF帯のアップコンバータが必要です。 和のヘテロダインを使うので周波数関係は逆になりますが基本は同じです。
近ごろは便利な世の中なので、局発には既成の水晶発振モジュールが使えます。ワンセグチューナのSDR応用では100MHzの発振モジュールを使うと便利です。 広帯域高周波増幅はMMICを使えば簡単です。 ミキサにはDi-DBMモジュールでしょうね。 50MHzのLPFと100MHzのHPFくらいは手作りする必要があるかも知れませんが、それほど難しくないでしょう。 既成のモジュールを組み合わせれば回路設計の手間を掛けず手軽に目的のクリコンが作れる時代なのです。
でも、消費電流は数mAでは済みません。 たっぷり電気を喰らうと思いますが、高周波設計の技術なところを省いたツケですから仕方がありません。あきらめて払って下さい。(笑) de JA9TTT/1
(おわり)nm
【クリコンのかなめ】
シンプルなクリスタル・コンバータを作ってみましょう。 前回(←リンク)の続きです。 シンプルで低消費電流、実用的な性能のクリスタル・コンバータができました。
クリスタル・コンバータ、略して「クリコン」の要(かなめ)と言えばやはり局発(Local-OSC)でしょう。 スーパー・ヘテロダインの原理を使いますから、局発回路が確実な発振をしてくれなくては機能はストップしてしまいます。
クリコンはその名の通り、クリスタル(水晶発振子)を使った発振器を使います。 VHF帯を周波数変換するためには高い周波数の発振器が必要で、周波数安定度の点から「自励発振器」では実現困難なため水晶発振器を使うのが普通です。
まずは、確実な発振が可能か否か実際に部分試作して確かめました。 必要な周波数が高いことから水晶はオーバートーン発振させます。 オーバートーン発振用に作られた水晶発振子を使えば確実ですが手持ちの活用から一般的な水晶発振子をオーバートーンモードで使うことにします。 オーバートーン用ではない水晶発振子でオーバートーン発振させても支障はありませんが保証外になるので販売目的の製品に使うのは旨くありません。しかし、アマチュア的には何ら支障はありません。本来とは想定外の発振をさせるため事前確認しておけば確実です。
50MHz帯を5MHz帯に周波数変換するため50-5=45MHzの局発が必要です。 45MHzを得るために基本波の周波数が15MHzの水晶発振子を3次オーバートーン発振させるか、同じく9MHzの水晶を5次オーバートーン発振で行くのか比較テストしました。 オーバートーン発振の場合、基本波の周波数をちょうどn倍(nは奇数に限る)した値にはなりません。 整数倍から幾らかずれるのが普通なのです。 その結果、どちらの水晶でも確実な発振は可能でしたが発振した周波数には違いがありました。 15MHzの水晶が約45.035MHzで、9MHzの方が44.993MHzで発振しました。
オーバートーン発振での周波数のずれ具合は同一ロットの水晶では同じような傾向を示します。しかし周波数は同じでもまったく別の水晶では異なった傾向を示すようです。 高い方へずれるのか低い方へずれるのか、実験した範囲で明確な規則性は見いだせませんでした。 ですから15MHzの水晶なら3次オーバートーンで必ず45.000MHzの35kHz上で発振する訳ではありません。9MHzの5次オーバートーンが7kHz低かったのも手持ちの水晶のたまたまの現象でしょう。 ちゃんとしたオーバートーン用水晶では目的のオーバートーン周波数で発振するように周波数調整してあるわけです。
ここでは45.000MHzに近かった9MHzの水晶を使うことにします。 本来の目的外ですからジャスト3倍や5倍の発振周波数にならないのはやむを得ませんが、なるべく目的周波数に近い方を選びました。少しでしたら周波数調整も可能です。
試作した50MHz用クリコンの回路図です。 高周波増幅のあと、水晶発振と周波数変換を1つのトランジスタで兼用する自励コンバータを使った2石クリコンです。
デバイス数の削減は優先項目ではありませんが興味のあった回路なので参考にしてみました。 後ほどオリジナルの回路が登場しますが、そのままではなく改良を行なっています。 改良のポイントはバイアス回路で、トランジスタのバラツキに強くすることにあります。 そのため、トランジスタを差し替えても無調整で行けます。(もちろん程度問題ですが・笑)
Q1の高周波増幅(RF-Amp.)はベース接地型です。 エミッタ接地型にしてより高いゲインを得ることも可能ですが中和回路が必要になります。 周波数変換部分にもゲインがあるのでRF-Amp.はベース接地型で行くことにしました。 ベース接地のアンプは入力側と出力側のインピーダンス比でゲインが決まります。 入力はタップダウンしてあり、かなり低く、負荷側はタップ無しなので比較的インピーダンスが高いため十分なゲインがあります。
Q2は周波数変換と局発を兼用する回路で自励式コンバータの一種です。 局発回路としては3次、5次のいずれでもオーバートーン発振できます。 但しこの回路ではそれ以上の高次発振は難しそうでした。 このQ2の回路は周波数変換の機能を兼ねるので発振レベルが大きくなりすぎないようにするのが肝心です。T3の巻き数比やQ2のコレクタ電流で加減します。旨く動作させればゲイン、NFなど他励式コンバータに遜色の無い性能が得られます。局発注入レベルの調整が不要なのも良い点です。 ベースバイアス部分のC6はあった方が良さそうに感じますが、これがあるとブロッキング発振が起こります。なくても感度に影響を感じませんから付けないことにしました。
このクリコンに推奨するトランジスタは2SC1923Yあるいは2SC2668Yです。この2つは外観こそ少し違いますがまったくの同等品です。 50MHzですからfTが高いトランジスタを使います。 ほかに2SC535C、2SC387Aや2SC668EなどfTが500MHz以上のTrがFBでしょう。それぞれ比較テストしましたが性能はどれも類似でした。 何れも数10円のトランジスタですから良い性能のトランジスタを使うと安心できます。 残念ながら汎用品の2SC1815Yでは十分な性能は期待できません。fTが足りないので局発の発振が困難でした。またRF-Amp.に使ってもゲインは低めです。
このクリコンは水晶さえきちんと発振すればあとは特に難しいところはありません。上記のようなトランジスタを使えば問題ない筈ですが、うまく発振しないようなら水晶発振子の問題かも知れません。別の水晶に交換すると簡単に問題が解消する可能性があります。 たとえばaitendoで購入した9MHz(HC-49/US)の水晶では5次オーバートーン発振はできませんでした。3次オーバートーンの方が楽ですから15MHzの水晶を優先しても良いでしょう。
ポピュラーな14.318MHzの水晶発振子(HC-49/U)も旨く3次オーバートーン発振しました。悪くない選択だと思います。この場合7MHz帯に周波数変換されます。 クリコンの全消費電流は約2.4mAと省エネです。(電源電圧は6Vで設計しています)
【50MHzクリコンのコイル製作図】
たった2石のシンプル回路ですが、コイルは4つ必要です。 参考にしたオリジナル記事ではφ8mmのトランジスタ用ボビンに巻き線していました。 これは10Kタイプのボビンが出回る以前の記事だったからでしょう。
一部のコイルについては指定通りφ8mmのボビン(東光のモノコイル同等)でも試作してみました。 しかし巻き線しにくいのですべて10Kボビンに変更しました。 10Kボビンも幾つか種類があって、ここではコア材のμがやや小さい「VHF用」と称するものを使っています。
たまたまですがφ8mmのボビンと同じ巻き数になりました。 10Kボビンに巻いたコイルのQはあまり高くありませんが、実用性能が得られています。 なお、大きめのインダクタンスが必要になることから、5MHzの出力コイル:T4のみμが少し大きいコア材の10Kボビンを使いました。そのような10Kボビンを持っていなければ他と同じボビンに巻けるだけ巻き、同調容量のC9:100pFを大きくしても良いでしょう。 巻き線はすべてφ0.16mmのポリウレタン電線(UEW線)です。
既成のFCZコイル(同等品含む)はタップの位置や2次側の巻き数が適当ではないためそのままでは使えません。 巻き線されていないボビン素材を購入して巻くか、巻かれたコイルを分解して巻き直し改造します。 各コイルはAmidonのトロイダルコア(例:T25-#10など)とトリマコンデンサを使う形式に変更することも可能です。所定のインダクタンスになるように巻き線しタップ位置や2次巻き線の比率が近似になるようにします。
備考:一覧表のように同じインダクタンスでも使用する同調容量が異なるのは、配線によって付加されるストレー容量に違いがあるからです。 プリントパターン化する場合にも実際に合わせて同調容量を加減する必要があるかも知れません。
【ブレッドボードで試作】
50MHzと言うVHF帯になることから、ブレッドボードでの試作に不安を感じました。 配線インダクタンスを減らすためアースラインを複数にしたり列を飛ばすなどストレー容量にも考慮した結果、支障ない成績が得られました。
ブレッドボード起因の動作不安定も見られずHF帯となんら変わりません。 部品配置や配線を良く考えて作ればブレッドボードでも50MHzくらいまで行けることがわかりました。 以前行なったブレッドボードの分布容量や配線インダクタンスの調査が役に立っています。(トラ技:2014年3月号に記事あり)
使う部品にも注意を払っています。コイルはブレッドボード用の変換基板には実装せず、足ピンにメッキ線を足して最短配線になるようにしています。 バイパス・コンデンサは高周波特性の良いセラコンを使うのは当然として、VHF帯の製作であることを意識し各部品の足は必要最短にカットします。 勿体ないからと言って部品の足を長いままにするとアンプが発振したり、逆に発振回路が発振しないなどのトラブルに見舞われるかも知れません。 50MHzは立派な高周波ですから低周波のようなモヤシ配線の手法は通用しません。(笑)
【局発波形】
局発の発振波形です。 コイル:T3の2次側、あるいはQ2のベースで、300〜400mV(rms)の発振振幅 になる筈です。 離調させる方法で、振幅を増減してみましたが発振はこのくらいの大きさが最適な値にあるようでした。
T3の調整ですが、オシロスコープまたはRF電圧計を使います。観測ポイントはT3の2次側(回路図の×印の場所)です。 T3の調整コアをボビンの上端の方向へ(反時計方向に)回して行くと発振が停止するポイントがあるはずです。 そこから逆に(時計方向へ)戻し、発振が再開したら更に1/4〜1/3回転ほどコアが入る位置へ回しておきます。
コアを発振の振幅がピークになる位置に調整してしまうと、わずかな条件変化で発振停止する危険があります。上記の調整方法のように、コアを発振のピークから安全方向へわずかに戻しておく訳です。 その後、電源のON/OFFを繰り返してみて確実に発振がスタートすることを確認しておきます。
【調整方法】
他のコイルの調整は簡単です。テストオシレータあるいは標準信号発生器:SSGから 50MHzを与え親受信機で5MHz帯に変換された信号を受信します。 T3は調整済みですから、T1、T2、T4のコアを調整して一番良く聞こえる状態に合わせれば終了です。 信号発生器がなければアンテナを繋いで外来ノイズを頼りに調整しても大丈夫でしょう。
50MHzのHAMバンドは4MHzもバンド幅があるので無調整でフルにカバーするのは無理があります。 バンド全体に渡ってまんべんなくオンエアされているわけでもないので、よく使われている周波数で最高感度になるようにしておけば良いでしょう。 私はSSB局が良く出ている50.25MHzで調整してみました。 その状態でCWバンドの上端あたりからSSB局が主に出ている周波数帯で感度差をあまり感じません。 50.62MHz付近のAM局や51MHz以上のFM局をメインにするなど、使用目的に応じ調整する周波数を決めます。
もしバリコンで同調可変式にするのなら、T2のところのC4:27pFを40pFくらいのバリコンにします。またT4のところにあるC9:100pFを固定コンデンサ50pF+100pFのバリコンにするのが良いでしょう。 C1:33pFはT1の共振がブロードなのでバリコンにするほどでもないようでした。
【受信成績】
2石のクリコンですから過剰な期待はできません。 しかし、まずまずの性能ではないかと思います。 HF帯のトランシーバを親受信機にしてSSGでチェックしたところ、CWモードでは-15dBμくらいのビートが十分確認できました。 そこで18mHの5エレ八木アンテナに繋いでみたらなかなかFBに聞こえます。 15kmほど離れたローカルさんは59+でしたが、遠方の移動運用局もノイズから浮き上がって聞こえてきました。 これから初夏に掛けて Eスポでも出たら賑やかに聞こえるでしょう。
クリコン自身のノイズフロアは拙宅の環境では外来ノイズ以下でした。 従ってS/Nも十分で、ゲインも必要にして十分な大きさが得られているように思います。 休日の昼過ぎ、S9++のローカル局が2局同時にオンエアしていたので強い両局の信号によって起こる混変調の具合を探ってみました。暫くワッチしてみたのですが目立って感じられませんでした。 定性的な評価ですが普段のオンエアで支障のない性能のようです。 回路構成上ゲイン過剰ではないので混変調特性も取りあえず実用範囲なのでしょう。
親受信機の性能が普通以上であればまずまずの性能が得られるようです。 3石の標準的な回路構成のクリコンに遜色のない性能ではないでしょうか。
【精選クリスタルコンバータ回路集】
1960〜70年代になるとVHF帯への興味が高まったので、雑誌には毎月のように様々なクリスタル・コンバータ(クリコン)が登場しました。 最初は真空管式でしたが徐々に半導体化が進みました。 近ごろは「クリコン」はそろそろ死語になりつつあるようです。 そうなる前にちょっと個性的なクリコンをピックアップしておきました。
この2石クリコンが今回の製作のベースです。 引用元はCQ誌1971年1月号の付録だった小冊子「88シンプルトランジスタ回路集」です。 この回路集はすり切れるほど眺めたものでした。 なお、小冊子のこのクリコンは1967年ころのCQ誌掲載記事を転載したものです。
記事が出た1967年当時、記事にあったパターンでプリント基板を製作した覚えがあります。残念ながら成功しませんでした。 基板はチューインガム1枚より小さいくらいの細長い形状でとてもコンパクトでした。(参考:60mm X 15mm)そのため固定バイアス回路にするなど省部品の設計になっています。上記小冊子には書いてありませんが、バイパスコンデンサ:C3が500V耐圧になっているのも形状の大きな円盤形セラコンを使ってコイル間のシールド板を兼用させる工夫です。
失敗した原因ですが幾つか考えられます。 まず、水晶発振子が良くなかったのではないかと思います。当時の水晶は性能が悪くて発振しにくいものが多かったようです。それに交換して試せるほどたくさん持っていませんでした。 あるいはコイルの巻き方が良くなかった可能性もあります。但し、GDMは既に持っていたので同調の確認はしていたはずです。 使ったトランジスタの型番は忘れましたが代替品だったので性能不足だった可能性もあります。hFEの違いが出易い回路なので、バイアスが適正ではなかった可能性は大いにあります。
コンパクトで部品数も少なく、簡単そうな製作でしたが見かけほど容易ではなかったのでしょうね。 ずいぶん年月は掛かりましたが、今回の製作でリベンジが果たせました。
【3石標準型クリコン】
これも上記と同じ冊子から引用した回路です。 この回路も同じくCQ誌に掲載された記事が元になっています。 1968年9月号の特集「5群のトランジスタで作るアマチュア機器集」で、JA6AAF/1北国さんの執筆によるものです。
当時、まだゲルトラが幅を利かせていた時代でしたが、登場しつつあった高性能なシリコントランジスタを主体にしてHAM用の機器を製作すると言う先進的な内容でした。 2SC387はfT=900MHzの高性能トランジスタです。(その後改良型の2SC387Aとなり、fT=1,000MHzになった) まだ2SA71や2SA58と言ったドリフト型のゲルトラさえ現役で使われていた時代でしたが、新トランジスタを使うことでローノイズ、ハイゲインが確実に得られることが示されていたのです。 もちろん、今でしたら2SC387は2SC1923や2SC2668など代替品はたくさんあってどれも安価です。
ちなみに、当時2SC387は¥1Kもした物が急に安価になって200円で買えるようになったと記事にあります。でもCQ誌も200円でしたからそんなにお手軽でもなかったのですよね。 なお特集記事の製作回路はどれも20pの小型ラグ板に載せています。 プリント基板を起こさずに済むのでお手軽感がありました。 クリコン回路そのものは非常にオーソドックスな物でトランジスタを使ったクリコンの標準型です。
【J-FETを使った3石クリコン】
このクリコンはJARL「アマチュア無線ハンドブック」(1970年版)に掲載されていたものです。 CQ誌など、どこかの雑誌にオリジナルの記事があるのかも知れません。どなたによる執筆かも記載がありません。
その当時の部品事情を反映しているのでしょう。 使われているJ-FETのMK10-2は登場して間もないころです。 高周波用の2SK19は登場まえか、まだ高価だった可能性があります。 価格や入手性を考慮すると他に選択肢のない時代だったので「FETと言えばMK10」と言うくらい何にでも使いました。
回路はJ-FETを使ったオーソドックスなものです。 帰還容量Crssが大きいことから、中和回路が必要です。 2SK192A(YまたはGR)で代替できるので作ってみるのも面白いでしょう。MK10より幾分性能は良くなり、まずまずの性能が得られるクリコンになるでしょう。 そのほか秋月電子に安価に登場したJ-FETのBF256Bもちゃんと使えるのでお試しあれ。 局発に2SC372を使っていますが、発振周波数が22MHzだからでしょう。ここはもっと高周波特性の良い石を使うと確実です。22MHzの水晶発振子も現在では基本波の物が容易に手に入るのでオーバートーン型よりもそちらを使った方が有利です。
参考:このクリコンの出力周波数は28MHz帯になっています。 HAMバンド専用受信機を親受信機にする場合、28MHzバンドに変換すると2MHzの受信幅が取れるので有利です。 但し、28MHz帯の性能は芳しくない受信機も多かったので、他の例に見られるように14MHzバンドへの変換がベストでしょう。 その代わり500kHz幅しかカバーしませんから、50MHz全体を受信するにはクリコンの局発水晶を切り替える必要があります。 9R59Dのようなジェネカバ・ラジオを使うならやや低めの4〜10MHzあたりに変換するのが適当です。
【J-FETとDi-DBMを使ったクリコン】
時代はずっと下って1977年発売のA5版書籍「アマチュアのV・UHF技術」(CQ出版)に掲載されていた半導体式のクリコンです。JH1GJF住広さんによる製作記事です。 そろそろJAでもショットキー・バリア・ダイオード(SBD)が入手容易になって来た時代で、SBDをリング状にしたDBM形式のミキサが注目されたころでした。
SBDはホットキャリヤ・ダイオードとも呼ばれ、米誌によれば非常に高性能とのことでした。しかしJAでは入手難だったのです。JAのHAMが初めて買えたSBDはNECの1SS16で、高価だった記憶があります。 SBDは強電界に弱いという触れ込みだったのでアルミフォイルに包んで慎重に保管したものでした。(いまのSBDも静電気で破壊し易い)
また、当時米QST誌ではSiliconix社のJ-FETであるU-310あるいはJ-310を使ったGGアンプが盛んに採り上げられており、ローノイズで混変調特性に優れたRFアンプの決め手と言われました。この製作記事ではSiloconix社のE-310というJ-FETが使われています。
E-310はパッケージ違いの「J-310」と思えば良いです。中身のFETチップは同じものですが、いまでは生産されていない形状のパッケージに入ったものです。 足ピンの並びに気をつければJ-310でそのまま代替できます。U-310でも良いでしょう。 或は手持ちがあればSONYの2SK125も使えます。
ミキサーのCM-1はいまでは聞かないVari-L社と言うメーカーのDBMモジュールです。同等品がミニサーキット社やR&K社にありますから支障ありません。 もちろんフェライトコアにトリファイラ巻きしたトランス2個と1SS97などRF用SBDを4本使って自作できます。手作りすれば安上がりで性能も既製品に遜色ありません。
従来型のクリコンではコンテストの時など混変調に悩まされました。それが、かなり解消される性能が得られたのです。 NFも良いのでGWでDXを狙うにも悪くないでしょう。いまでも通用するクリコンです。 ただしクリコン自体の消費電流はずいぶん大きくなりました。乾電池が電源の無線機には不向きだと思っています。
【7360を使った真空管クリコン】
真空管式のクリコンがないと寂しいかも知れません。 このクリコンは上記と同じ「アマチュアのV・UHF技術」に掲載された高性能な真空管式クリコンで、JA1LZK海老原さんによる製作記事です。
ローノイズで混変調特性に優れるビーム偏向管:7360をミキサに使っています。 RFアンプもカラーTVのチューナーを高感度化する目的で開発されたフレームグリッドの高性能管:6HA5です。3極管ですから中和回路は必須ですが低NFで混変調特性も良好です。 そのため、良く聞こえしかも大信号特性に優れた混変調の少ないクリコンになっています。真空管式のクリコンとしてはこれが集大成と言えるかも知れません。
7360をお持ちでしたら試してみるのも良いかも知れません。 ただ、無理に(高額で)手に入れるほどの価値はないと思うのであまり妄想を膨らませぬ方が宜しいです。 RFアンプやミキサに6AK5を使うような古典的クリコンと比べれば明らかに優秀ですけど・・・まあその程度でしょう。 半導体式の方が総じて優秀ですから、物珍しさ以上の価値はないのかも知れませんね。 今の時代、真空管を使うと電源が別系統になってしまうのも厄介です。そんな障害を乗り越えて作るほどのメリットがあるのか少々微妙なところです。w
【ニュービスタを使った真空管クリコン】
同じく、真空管式の高性能なクリコンとしてニュービスタ管を使ったものがあります。 上記の7360にはやや及ばないかも知れませんが、RCA社が混変調特性のデータ付きで盛んにPRしていただけあって、なかなか優秀なようです。
図はARRLの「VHF Handbook」(1965年版)を引用した物です。 この時代のARRL発行のハンドブックではクリコンはニュービスタ管が主流でした。
JAで手に入る部品に置き換えて作り易くした製作記事がCQ誌に掲載されたことがあります。たぶんこの回路を参考にされたのでしょう。JA6HW/JA1RST角居さんの記事でした。しかし球とソケットが特殊なのであまり流行らなかったようです。ニュービスタなんて地方のHAMにはご縁が無かったんです。 もしも「球+ソケット」が必要数手に入るなら試してみたい気もしますが・・・難しいでしょうね。 ただ、ガラス管でない真空管製作は何となく「ハリアイ」が少ないです。 球はオレンジに灯るフィラメントが見えなくてはね。(笑)
☆
世に登場したクリコン回路はまだまだたくさん有ります。 例えばDual-Gate MES-FETを使ったローノイズ・クリコンや、V-MOS FETのVMP-4を使う超弩級クリコンなど紹介したいものは沢山あります。 ただ、すでにクリコンなどなしで長波帯からUHF帯までフルカバーするトランシーバや通信型受信機が目新しくもない時代です。これ以上深入りする意味もないようですから,取りあえずこの辺でやめておきます。 こうしたVHF帯の製作は部品配置や配線こそ重要です。回路図があれば作れる訳ではありませんが、いずれ機会があれば続きでもやりましょう。w
短波のトランジスタラジオ(←リンク)の製作が切っ掛けと言うわけでもありませんが、何となくそれに合わせた製作になりました。 もちろんそのような製作にも向いていますが、わずかな電流で働いてくれますから既存のラジオに付加するような使い方も面白そうです。短波ラジオの製作と合わせて簡単6mAMトランシーバの受信部を作ってみては如何でしょうか。
SHF帯の自作などを除けばHAM用クリコンの製作は既に廃れていますが、クリコンが完全に無くなったわけではありません。 ワンセグチューナをジェネカバ受信機に応用するにはHF帯のアップコンバータが必要です。 和のヘテロダインを使うので周波数関係は逆になりますが基本は同じです。
近ごろは便利な世の中なので、局発には既成の水晶発振モジュールが使えます。ワンセグチューナのSDR応用では100MHzの発振モジュールを使うと便利です。 広帯域高周波増幅はMMICを使えば簡単です。 ミキサにはDi-DBMモジュールでしょうね。 50MHzのLPFと100MHzのHPFくらいは手作りする必要があるかも知れませんが、それほど難しくないでしょう。 既成のモジュールを組み合わせれば回路設計の手間を掛けず手軽に目的のクリコンが作れる時代なのです。
でも、消費電流は数mAでは済みません。 たっぷり電気を喰らうと思いますが、高周波設計の技術なところを省いたツケですから仕方がありません。あきらめて払って下さい。(笑) de JA9TTT/1
(おわり)nm