【各種PLL用IC:Collection of PLL ICs】
これから何回かPLLをやろうと思います。何か必然性があって始めるわけじゃありません。 あえて言えばデバイス活用と設計法の纏めが目的と言ったところでしょうか。
「何かにとっても役に立つ」などと言うつもりはありません。お暇でもあればお付き合い下さい。 このところ色々やっていて奥が深くてこれは面白いと思ったのでBlogにしました。先は急がないのでぼちぼちやります。 一応みなさんお好きなRF回路です。(笑) まずはイントロ編から。
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のっけから昔話になって恐縮ですが、初めて作った水晶発振器は6CB6と言う真空管を使った変形ピアース型だったように思います。 3.5MHzのFT-243型水晶を使い7MHzを得ていました。それで7MHzの送信機を作りました。
しばらくは真空管を使った発振器の時代が続きましたが、やがてトランジスタを使うようになります。 特に受信系は半導体化したいと思いました。 ただ、当時のゲルマニウム・トランジスタは性能が悪くて苦労した記憶ばかり思い出されます。 そもそもウデも悪かったので苦労したのだと思いますが水晶発振子のアクティビティが低かったのも理由ではないかと思っているのです。hi
オーディオも好きでしたがやがて無線の方向へ傾倒したので以来ずっと発振回路や発振素子は興味の対象でした。 周波数が安定していて任意の周波数が得られる発振器も研究テーマの一つです。 自励発振器は周波数の自由度はあっても良好な周波数安定度を得るのは至難です。 さりとて水晶発振では自由は利かず・・・ではVXOはと言えば今ほど水晶発振子が良くなかったようで意外に難しいものでした。 可変範囲を欲張ったのもマズかったのでしょう。
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PLL:Phase Locked Loop(位相同期ループ発振器)という発振回路を目にしたのは1970年代の初めです。 かなり難しい内容だったのでほとんど理解できなかったと思います。 自動制御の理論もまだ習ってはいませんでした。 それが何をやろうとしているかはおぼろげにわかっても、ではどうしたら実現できるのかと言う部分は謎でしかなかったのです。 モトローラ社が積極的に推進していた印象があって、同社の特殊なPLL用ICを使った回路は試したくても入手困難かつ高価なので手の出せない難物だった記憶があります。(写真はパーツボックスにあったPLL関係IC)
自ら試すことができるようになったのは数年後に輸出用CBトランシーバにPLLの専用ICが使われるようになってからでした。 いまのDDS発振器のように小刻みな周波数を得ることはできませんが、それでもかなり自在に周波数の安定した発振ができるようになりとても嬉しかったものです。 その後、CBブームも去って信越電機商会(*1)にジャンクのPLLユニットが登場します。 それを切っ掛けに興味を持った自作HAMも多かったようでした。 CQ誌に何度も活用記事が登場したのはご存知の通りです。 *1:いまの秋月電子通商
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【7MHz帯のPLL発振器】
発振器は無線通信には欠かせません。 これはアナログ式であろうとデジタル式であろうとも重要さは同じでしょう。 すでにDDSや新世代のPLL式専用チップも登場しており、初めの写真のような従来型のPLL用ICは時代遅れでしょうか。 そろそろ懐かしい技術になりつつあるのかも知れません。
ここでは7MHz帯のPLLを題材としてシンプルなPLL式発振器を試作してみます。 死蔵されつつあるPLL用ICの活用法を纏めておく機会にしたいと思います。 用途によっては従来型PLLの技術を頼った方がうまく行くこともあります。
PLL発振器は周波数が可変できてしかも安定度の高い発振器です。 概略の仕様は:発振周波数範囲=7〜8MHz、周波数ステップ=10kHz・・・とします。 ただし、各10kHzステップの間は連続可変式として自在に設定できるようにしました。 従って7MHzから8MHz(*2)の間を隙間なくカバーでき、水晶発振器なみの周波数安定度を持った発振器になります。 典型的な用途としては7MHz帯のCW送信機やAM送信機のVFOがあるほか受信機の局発回路なども考えられましょう。 *2:正しくは、7.990MHzまでですが、スイッチを増やせば8.000MHz以上も可です。
# 写真は試作した7MHz帯のPLL発振器。 試作はブレッドボードが手軽ですが実用品はコンパクトに製作して良くシールドする必要があります。
他の周波数帯への変更も難しくありません。 ほぼ同じ回路図のままでHF帯の各HAMバンド対応の発振器になります。 ただし、各バンドごと最適化のため回路定数の変更は必要です。 さらに50MHz帯用には電源電圧のアップを要しますがHF帯とほぼ同じように製作できます。 144MHz帯用はHF帯に周波数変換する方式が適当でしょう。 いずれにしても回路定数を最適化するには少しだけ計算が必要です。 しかしその計算は高度なものではありません。 四則演算(加減乗除)ができれば誰にでもできます。 筆算では位取りを間違いやすいので算盤や電卓を使ってください。(笑)
今回(Part 1)は手始めとして事前に設計の済んでいる7MHz帯のPLL式発振器を試作し、出力信号を観測するところまでを扱います。どんなものが作れるのかまずは実際にやってみましょう。 PLL回路を構成する各回路要素の検討と詳しい設計の話しは続編で予定します。 いくらか時代遅れに感じるかも知れませんが、有用性がなくなった訳ではありません。 RF回路の基礎技術の一つとして良く研究しておけばいつか役立つこともあるでしょう。 せっかくここまでお読みいただいたのでしたら、この先もお付き合いください。 PLLに秘伝など必要ありません。誰でも面白いようにロックするPLLが作れます。(笑)
【MC145163P・・高機能なPLL用IC】
MC145163PというICはPLL用のLSIとしてかなり後発でした。 PLL化されたCBトランシーバの輸出が盛んだった当時には存在しませんでした。 しかし後発なので機能は充実しており性能も優秀です。
ここではなるべく簡略にPLL回路を試すことを目標にしています。 高機能なMC145163Pを使って部品数を減らしました。 28ピンの大きなICですが、外付けで必要なものは電圧制御発振器:VCOくらいです。 すっきりしたPLL回路が実現できます。 活用可能な周波数範囲を決める内蔵の「プログラマブル・カウンタ」の上限周波数もVdd=5Vのとき25MHz(標準)と高くなっています。 それ以上の周波数ではプリスケーラを使う必要も出てきますが、必要最小限の分周数で済むためループゲインを消費しないと言ったメリットがあります。 これ一つで色々試せるので便利なPLL用LSIだと思います。
残念ながらMC145163Pはディスコン(Discontinued:廃止品)です。 まだなんとか手に入るようなので幾つか持っていると自作無線機の幅が広がるでしょう。 以前は比較的高価なICでしたが時代遅れになったからでしょうか? いくらか値崩れ気味のようです。
# 写真は基準発振の10.24MHzをVXO化する以前のものです。MC145163Pに内蔵の発振回路で水晶発振させています。後ほど外付け回路でVXO化してMC145163Pに与えるよう変更しました。
# まずはMC145163Pで始めますが、後ほどほかのPLL用ICを使った検討もしておきましょう。(Part 3あたり?)
【MC145163Pの機能】
MC145163Pの内部回路ブロック図です。
基準となる水晶発振器とそれを分周して比較周波数を得るための「リファレンス・カウンタ」が内蔵されています。 リファレンス・カウンタの分周比は1/512、1/1024、1/2048、1/4096から選べます。
発振回路のバイアス用帰還抵抗は内蔵ですが負荷容量(2個)は外付けです。 その負荷容量を可変することにより周波数合わせを行ないます。 外部の発振器から基準周波数を与えることもできます。 一例ですが、10.24MHzの水晶発振子を使い1/1024の分周を選ぶと比較周波数は10kHzとなり、10kHz刻みに発振するPLL式の発振器が作れます。
VCOからの信号を分周する「プログラマブル・カウンタ」は4桁のBCDコードで設定します。分周数はN=3〜9999が設定できます。 無線での用途の場合、あまり小さなNに設定するケースはまれだと思われますが、それでも数1000チャネルの周波数切り替えができる発振器が作れます。 PLL式発振器の出力周波数は比較周波数×分周数です。 いま、比較周波数が10kHzとすれば、分周数:N=700なら発振周波数は700×10=7,000kHz (=7MHz)となります。
ほかに重要な機能として位相比較器が内蔵されています。 残念ながらループフィルタ用のアンプは付いていません。 従ってアクティブタイプのループフィルタを構成したい時には外付けになります。 あまり使われないのかもしれませんが、同社のMC4044タイプのような形式の位相比較器+ループフィルタを構成することもできるようです。 この部分には ロック外れを検知する機能があり万一の誤動作の時に発振を停止させることができます。
左図には簡単な機能説明などを記入してあります。 この資料だけで完全な設計ができる訳ではありませんが下記の回路を試すには十分でしょう。 ネットの検索で詳しいデータシート(和文)が入手できるので、MC145163Pを手に入れたなら機会を見てダウンロードしておくと役立ちます。
さっそく製作実例です。 最初に決めておいた仕様が実現できるような回路になっています。(2018.08.22:Ver.1.0.1に改版・現在の最新版です)
電圧制御発振器:VCO回路はトランジスタやFETを使って構成することもできますが、モトローラ社の専用ICである:MC1648Pを使いました。VCO専用のICを使うことで製作の再現性は向上します。 ただしMC1648Pは入手しにくいかも知れません。 同種の改良版のICがONセミ社で販売されています。 (参考:MC1648Pの代替方法についてはPart 3(←リンク)で詳しく扱っています)
周波数の可変にはバリキャップ:FC-52M(富士通)を使います。 FC-52Mは廃止品なので入手難ですから秋月電子通商で売られている1SV228(秋月で5個150円)などで代替します。 代替すると少し設計が変わりますが、とりあえずそのまま試しても良いでしょう。うまく周波数ロックするはずです。 1SV228は2素子複合型ですが、片側のみ単独で使います。他方は遊ばせておきます。
VCO出力に使ってあるTT1-6(MCL:mini circuits lab.社製)というRFトランスはあまり安い部品ではありません。ここでは試作を手っ取り早く行なうために使いました。 フェライトビーズ:FB-801-#43にφ0.16mmのポリウレタン電線を6回トリファイラ巻きしたものでそっくり代替できます。 2SK544Fは2SK241GRもしくは2SK439F(ピン配置は要注意)で代替できます。この回路には2SK19、2SK192A、BF256BやJ310は適していません。
最初は10.24MHzの基準発振にMC145163Pに内蔵の発振回路を使いました。 しかし、この部分を可変周波型水晶発振器:VXO化するのは少し難しいようです。(できない訳ではありません) そこで動作が確実で実績のある外付けのVXO回路を使うことにしました。 この基準発振器の周波数を変えることによって10kHzステップの間を自在に可変するわけです。 2SC2668YでVXO発振させ2SK544FでバッファしてからMC145163Pに与えます。
このVXO回路は周波数安定度が重要です。しかし周波数の可変範囲はわずか15kHzほど(10.24MHzに対して約0.14%)と狭いためたいへん良好です。 無理にたくさん周波数を引っ張ったVXOとは違い普通の水晶発振器と同等の周波数安定度が得られます。 従って最終的に得られる7MHz帯のPLL発振出力も安定度の高いものになっています。 発振回路の2SC2668Yは2SC1923Yなど高周波小信号用のトランジスタで代替できます。
参考:10.24MHzの水晶発振子はaitendoなどで購入できます。同店で売られている水晶発振子(HC-49/US)はアクティビティにバラツキがあるのでうまく発振できない時は幾つか交換してみます。
MC145163Pの位相比較器から出力されるのはパルス波形です。これを平滑化してVCO回路のバリキャップに加えます。 この平滑回路は「ループフィルタ」と呼ばれるものです。 回路としては簡単なローパスフィルタそのものです。 PLL回路の設計は最終的にはループフィルタの設計に帰結するとも言えるほど重要なものです。 ここでは設計済みですのでこのまま作れば支障なく動作してくれます。 ループフィルタは低インピーダンス型の設計になっています。
ループフィルタとバリキャップとの間には2段のバッファアンプを入れてあります。 このようにするとVCOとの干渉が断てるので有利ですがアンプ自身にもわずかながらノイズがあるためC/Nの点では幾らか不利になります。 しかしそれに勝るメリットがありますから入れておくことにします。
ここではICL7621DCPAというIntersil社(現:Renesas Electronics社)のDual C-MOS OP-Amp.を使いました。 手持ちがあったので使いましたが、ICL7621はだいぶ旧式だと思います。 5Vの単電源で使用できレール・トゥ・レール入出力特性を持った2回路入りOP-Amp.ならたいていの物が使えます。 もし新たに購入するのでしたらLMC6482AIN(秋月で@180円)が推奨品です。
【7MHz PLLのスペクトラム・1】
各部の説明の前にこの発振器で得られた信号のスペクトラムを観測しておきます。 まずは、信号の上下5kHzずつ、全体で10kHzの範囲で観測してみます。 信号の付近をかなり拡大して見た状態です。
よくできた水晶発振器と比べると、一見してPLL式の発振器であることがわかります。 十分シャープなスペクトラムが得られてはいますが、どうしても裾野を引く特性になります。 この例では+1kHz離れたところで-67dBですからなかなか良好です。 これはC/N値でいうと-78dBc/Hzくらいですが、キャリヤから1kHzのポイントであることに注目してください。10kHz離れるとさらに20dBくらい下がります。
実際この信号をCWモードの受信機で聞いてみても綺麗なシングルトーンとして聞こえます。 ダメなPLLだとスペアナで見るまでもなく、受信機で聞いただけであたかもブザーのような濁った音色になるので簡単にわかります。
位相比較器のデッドゾーンからできるだけ逃れるためループフィルタおよび周りの回路を低インピーダンスに設計しています。 裾野の部分も滑らかに落ちていますのでループフィルタ部分の設計に問題のないことがわかります。
【7MHz PLLのスペクトラム・2】
信号の上下50kHzずつ、全体で100kHzの幅で観測しています。 測定系のノイズフロアはこの状態で信号のピークから見て-80dBくらいです。 特にスプリアスも見られずたいへん綺麗です。
ループフィルタの設計が良くないとリファレンスの漏れが発生します。リファレンス・フィードスルーという現象です。 このPLLではリファレンスは10kHzですから、そのような場合には主信号の上下に10kHzおきのスプリアスが見られるようになります。 まったく見られませんのでうまくいっている証拠です。 漏れ出るリファレンス成分を減衰させるようなフィルタが追加してあるのも効果的なのでしょう。
【7MHz PLLのスペクトラム・3】
さらに拡大して信号の上下500kHz、全体では1MHzの幅で観測してみました。 このくらいの周波数スパンで観測すると出来の良くないDDS発振器などではそろそろスプリアスが引っ掛かるようになります。
このPLLの場合、信号のごく近傍はともかくこの範囲に発生するスプリアスの要因はないためとても綺麗でした。 DDS発振器のスプリアスを嫌ってPLLと組み合わせて信号をクリーニングすると言った回路手法も高級な機器では見られます。こうした特性を狙ってのことなのでしょう。 そのような意味で従来型のPLLも捨てがたいものがあると思います。目的によっては非常に有効な回路です。
【7MHz PLLのスプリアス】
VCOに使ったMC1648Pの出力は基本的に矩形波です。 ただし、発振振幅を制御するAGCの効き方を調整すると正弦波に近づけることができます。ベストポイントは個々に調整が必要で、上記回路図のR11:4.3kΩで加減します。 この例では少し発振振幅を欲張ったためか2〜5次の高調波が多めに見えています。
VCOの後は広帯域な増幅器で、まだ何のフィルタも入れていないので高調波が多いのはやむを得ません。 CW送信機に使う場合、何段かC級増幅したあと良く切れるローパスフィルタを入れます。 その部分で十分に除去できるのでこの段階では少々高調波があっても支障はありません。 受信機の局発に使う場合はスプリアスを十分落とす方が良いのでπ型2段くらいのLPFを付加しておきます。
10.24MHzの漏れがいくらか見えますが、VCOの後の広帯域アンプ(2SK544F)への直接飛び込みのようでした。測定プローブへの結合もあるようです。 実用する際にはリファレンスの部分を独立させてシールドしておくと良さそうです。 そうすれば漏れはほとんど感じられなくなります。
【MC1648Pを使ったVCO】
VCOに使ったMC1648Pはもはや古典的なICです。 しかしLC発振回路の周波数をバリキャップで可変する形式のVCOが確実に作れるためなかなか重宝です。
良いICなのですがあまり使われなかったように思います。 それほど使われなかった理由は2つあると思っています。 一つはコストです。 大して高機能でもないのにMC1648Pはだいぶ高価なICでした。 これを使わなくてもVCOは作れます。 そうなると使用量が増えないのでコストも下がらなかったものと思います。 もう一つは発振出力のC/Nが良くないと言われています。 すでに見てきたような発振スペクトラムが得られますから、必ずしも劣っているとは思いません。 しかしトランジスタやFETで「上手に」作ったVCOならもう少し良いC/Nが期待できるでしょう。
MC1648Pは発振振幅を抑えることによりバリキャップでの自己整流が発生しないよう考えられています。それだけ使い易くできている訳です。 しかし発振振幅を抑えた副作用でLCタンク回路の蓄積エネルギーが小さくなってしまいC/Nの点で不利になったようです。
幾らか欠点はありますが一定の性能が保証されたVCOが確実に作れるというメリットは大きいので使ってみました。 すでにディスコンのデバイスですが表面実装型の改良型が登場しています。 性能も向上しているのでプロフェッショナルな用途にはそちらを使うべきでしょう。
#のちほど入手容易なパーツを使ってMC1648Pの代替回路を試みます。(Part 3にて)
【ループフィルタとバッファ・アンプ】
ループフィルタの部分は位相比較器(フェーズ・ディテクタ:Phase Detector : PDと略)と不可分の回路です。
しかしここではPDはMC145163Pに内蔵されていますから独立した部品としては存在しません。 位相比較器:PDの特性もPLLの性能に大きく影響するのでとても重要です。
幸いMC145163PのPDはなかなか優秀なようでした。 他のPDと比較しても何ら遜色のない・・むしろ優秀なくらいの性能です。 MC145163Pは後発のPLL用ICですから設計が新しくて内部のC-MOSが高速だからでしょう。
ループフィルタは一種のローパスフィルタです。 あるいは平滑回路とも言えるものです。 位相比較器からの出力はパルス幅が2つの入力信号の位相差に比例したパルス波形として得られます。 それを平均化して得られた直流的な電位(電圧)を電圧制御発振器:VCO回路・・・具体的にはバリキャップ・・・に加えて周波数(位相)を制御します。
可変容量ダイオード:Vari-Capを使ったVCO回路では自身の発振電圧がダイオードそのものにも加わっています。 バリキャップ(元もとは商品名でした)とは言っても、本質はシリコンダイオードそのものです。順方向電圧を超える発振電圧が端子間に加われば整流されて電流が流れます。 この電流がループフィルタの部分に流れ込むと制御電圧の変動をまねき、それを間欠的に補正するような動作が始まります。 この動作はPLLの信号純度を損なうため注意すべきす。
ではどうすべきか? この回路例のようにバリキャップとループフィルタの間にOP-Amp.を使ったバッファアンプを置くことで影響をなくすことができます。 こうしたバッファアンプは原理上は必要ないものですが、性能を改善する効果があります。 発振にMC1648Pを使いましたのでバッファアンプは必ずしも必要なさそうです。しかし実際には制御電圧が小さくなってくると影響が現れはじめます。 さらに別の形式のVCOを試すことも考えて付けておきました。
電源電圧は+5Vだけですから、バッファアンプには片電源だけでも動作する形式のOP-Amp.を使います。 また電源電圧はわずか5Vと小さいので出力電圧が電源電圧の範囲いっぱいに振れる入出力が「レール・トゥ・レール型」のOP-Amp.を選びます。 条件に合うOP-Amp.は各種発売されていて選択に困るほどですができるだけローノイズな製品を選びたいものです。 容量性の負荷で発振しにくいOP-Amp.と言うのも条件です。 ICL7621DCPAはそう言う意味ではかなり旧式でしょう。しかし写真の程度のスペクトラムは得られますから実用上の支障はなさそうでした。 もちろん新しいタイプのC-MOS OP-Amp.ならなお良いでしょう。
参考:このバッファアンプは、後に説明のある 「リファレンス・フィルタ」としての働きも持っています。 リファレンス・フィルタは比較周波数成分の漏れがVCOに及ぶのを軽減させるためのものです。
【10.24MHz:VXO式リファレンス発振器】
PLLを使えば周波数が水晶発振器なみに安定している発振出力が得られます。 しかし10kHzステップでは物足りません。
例えば7MHz帯のCW送信機に使いたいと思っても7000kHzちょうどではオフバンドになるので使えません。 使える周波数は7010kHzと7020kHzの2波しかないのです。(注:2015年のバンド利用プランの改訂でCW局は一応7045kHzまで出られるようになったが、それでも4波である)
では1kHzステップで設計したら解決だろうと言う声も聞こえてきます。 しかし実際にやってみますと1kHzステップで満足できる品位の信号を得るにはなかなか高度な技術を要します。 1kHzおきにロックさせるのは難しくありませんが、綺麗な信号を得るのは簡単ではないのです。 容易に製作可能なPLLはやはり10kHzステップくらいが無難なところでした。かなり頑張っても5kHzステップまでが間違いないところです。
そこで、10kHzステップを埋められるよう10kHzの間を自在に可変できるようにします。 いくつか手法はありますが、いちばん簡単な手としてリファレンス(基準)信号を可変してやります。 「基準」を動かすなんて野蛮だと言われそうですが、10.240MHzをVXOすればそれに伴ってPLLで得られる信号の方も動いてくれます。
7MHz帯で10kHz動けば良いので、10/7000=0.0014285・・・の割合だけ動かせばOKです。 これは10.240MHzにおいて約14.6kHzということになります。 なお、お気付きのように8MHzでは、10/8000=0.00125なので10.24MHzにて12.8kHzだけ動かせば10kHzの可変幅が得られます。 発振周波数が7MHzのときと8MHzとでは必要な可変量が変わってしまいますがこのような方法で行なう限りやむを得ません。 7MHzで設計しておき、使用する上では8MHzの時には可変できる周波数範囲が幾らか広くなることをわかっていれば支障ないと思います。
7MHzのHAM Bandに限って言えばバンドの上下で200kHzの違いですから、可変幅の違いは300Hz以下に収まります。 さらにCWバンドに限れば差はもっと少ないのでダイヤル板に目盛を記入してしまっても支障はないくらいでしょう。 なお、7000kHzちょうどにセットしてVXOするとバンドの下の方へオフバンドしてしまいます。 必ず7010kHzの設定からVXOするようにします。それで7010kHzから下の方へ10kHzだけ・・・即ち7000kHzまで自在に可変できます。(MC145163PはN=701に設定します)
VXO回路は発振に高周波用トランジスタ:2SC2668Yを使いました。 周波数可変範囲を少しでも広く取りたい時にはFETを使った方がやや有利なようです。 しかし、ここではVXOとは言っても0.14%ほどの可変範囲しか必要としません。 普通のトランジスタを使った回路でもまったく支障ありません。FETよりもgmが大きいので発振は容易です。 周波数安定度を見ましたが普通の水晶発振器・・・要するにVXO回路ではない発振回路と違いません。 この周波数安定度はPLLにもそのまま反映されますので7MHz帯の出力も十分安定した周波数が得られます。
VXO回路といえばいわゆる「VXOコイル」が議論になります。 ここでは18μHのマイクロインダクタが適当でした。このインダクタンスは水晶発振子によって最適値が異なります。 20μH前後で可変できるようなインダクタを使うと製作後の調整が容易です。 既製品ではFCZコイルの07S1.9が使えそうです。 しかし約20μHの可変インダクタはコア入りのボビンに巻けば簡単に自作できます。 無理にFCZコイルを探すまでもないでしょう。
VXO回路に使うバリコンは最大容量が30〜50pFくらいの物が良いです。 エアーバリコンが好ましいのですがポリバリコンでも一応使えます。 調整はバリコンの可変範囲いっぱいで10kHzが可変できるようにすれば良い訳です。 必要以上に広く可変する意味はありませんが、狭すぎると発生できない周波数ができてしまいます。 VXOコイルとバリコンに並列のトリマコンデンサで可変範囲を加減します。 バリコンがほぼ抜けた位置で10.240MHzを発振し最大容量にしたときそこから15kHzほど周波数が下がるように合わせます。(7MHz帯で出力周波数をみて10kHzの可変幅になるようにしても同じです)
【リファレンス発振器のスペクトラム】
リファレンスのスペクトラムが綺麗でなければPLLの出力信号もそれなりになってしまいます。
写真は10.24MHzのスペクトラムを10kHzのスパンで観測したものです。 ご覧のように非常に綺麗です。
あまり言いたくないのですが上の方で見たPLLで得た7MHzの信号と比較してみてください。 おなじ10kHzスパンの観測と比較すれば一目瞭然でしょう。 水晶発振のこれはスペクトラムが細く裾野の部分もスッキリしています。 それだけ付随するノイズや揺らぎが少ないことを示しているわけです。 水晶発振ならこの程度の信号が普通に得られるのですから、やはり真に綺麗な信号が欲しければこれに勝るものはありません。
なんだかPLL式発振器の限界が暴露されたような感じになってしまいました。 入念に作ったPLLでも得られる信号は水晶発振には幾らか劣ります。 しかし十分な実用性がありますのでそれほど悲観的になる必要はないと思います。 かつて全盛だったPLL式の発振器を使っていたトランシーバ・・・例えばTS-820やFT-901の局発だって同じようなものだった筈です。 いずれも当時の名機です。 お使いだったお方はそれで支障を感じたことも無かったでしょう。 ここで作ったPLLくらいの性能が得られていればオンエアしていて他局の迷惑にもなりません。 実際にモニタしてみても綺麗なトーンが実現できています。 理想どおりではなくとも電子回路は実用的な性能が得られれば良い訳です。 電波法で規定されている信号近傍のスプリアス基準にもまったく抵触しません。(高調波対策はオーバーオールで行ないます)
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まずは7MHz帯のPLL式発振器を作ってみました。 これ自体で7MHz帯のCW送信機のエキサイタとして使えます。 2〜3ステージの増幅段を追加すれば実用的なパワーを持った送信機が完成できます。 終段に変調をかければAM送信機にもなりえます。 スタンバイの制御はMC1648Pの電源部で行ないます。 VXO部分は受信中も動作させたままにすれば良好な周波数安定度が維持できるでしょう。 発振周波数の切り替えは7MHz帯のCWバンドに限ればわずか3chですから簡単なスイッチで済みます。 VXO部分は10kHzをカバーすれば良いのでバリコンにツマミを直付したようなダイヤルでも十分行けます。なるべく180°近く展開し、大きめのつまみを付ければ操作しやすくなります。
今となってはマイコンでDDS ICや新世代PLL ICを制御した方がスマートかもしれませんが、こうした方法でも実用的な発振器は作れます。周波数安定度も良好です。 実用的なものが作れるのですからこうした部品を眠らせておいたら勿体ないでしょう。 将来価値が出る可能性はありませんから今のうちに活用するのが良さそうです。 プログラムなんかいっさい書かなくても使えるところがいちばん有難いところかも知れませんね。(笑)
評価手段の進歩で以前は不可能だったような解析が可能になったのも今頃になってPLL回路を始めた切っ掛けです。 昔は評価もそこそこでロックさえすれば良いと言った感じで使いました。 あまり酷いものは五感でわかったので実害は無かったと思っています。 しかしデバイスや回路を吟味して、もう少し定量的に突っ込んだ検討ができたら楽しいでしょう。
PLL回路に使えるICの手持ちがあれば自作プロジェクトに動員するのも面白いでしょう。パーツボックスに眠らせておいては可哀想です。 PLL用のLSI:MC145163PやVCO用のIC:MC1648Pは既にポピュラーな存在ではないかもしれません。 そんな時は最初の写真にあるように他のPLL用ICでも類似の設計はできます。 次回以降でそのあたりも交えて話を進めたいと思っています。 ではまた。 de JA9TTT/1
関連情報:7MHz PLL Oscillator関連のリンク
(1)イントロ編:(Part 1:いま見ているここです)
(2)PLLの機能分析編:(Part 2:こちら←リンク)
(3)PLLに向いたVCOの研究編:(Part 3:こちら←リンク)
(4)ループフィルタの設計編(最終回):(Part 4:こちら←リンク)
(つづく)←リンク nm
加藤さん、こんにちは。
返信削除世間はお盆休みに入ったようで高速道路もあちこちで渋滞しているようですね。
僕も休みですがあまりに暑いので引き籠もっていますw
MC145163Pを使ったPLLは懐かしいですね。
何回か作成しましたがICだけだと10kHzステップになるのでFM用ばかりでした。
マイコンを使わずに周波数が設定できるのと大した測定器がなくてもあまりトラブル無く動作してくれる便利なICでした。
VCO用のIC MC1648Pがあるのは初めて知りました、使っている製作記事もほとんど無かった気がします。
DDSが主流になる前のメーカー機では100Hzステップを実現するためにPLLを二段にしたり、D/Aを使ってVXOをマイコンでコントロールしたりしていたのを思い出します。
JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、こんにちは。 台風が去ってまた暑くなって来ました。 関東の高速道も大渋滞が発生しています。 下の道に降りてくる車も多くて一般道も混んでますよ。 引きこもり大正解かも。w
返信削除早速のコメントどうもありがとうございます。
> MC145163Pを使ったPLLは懐かしいですね。
MC145163PでPLLなんて懐かしいばかりで、アナクロニズムかも知れませんよね。(笑)
> あまりトラブル無く動作してくれる便利なICでした。
私は使ったことがなかったのですが、高機能で便利なPLL用のICですね。 せっかくのICが持ち腐れでは勿体無いので何か活用の道は開けないものかと思っています。
> MC1648Pがあるのは初めて知りました・・・
けっこう有名なICだと思うのですが、高価だったので実際に使っているのを見たことはなかったですね。 モトローラの資料には頻繁に登場するんですが・・・。 まだ手に入りますけど、代替回路の方が安くて美味しいようでした。hi hi
> PLLを二段にしたり、D/Aを使ってVXOをマイコンで・・・
そう言う時代もありましたね。 細かいステップを得るために非常に苦労していたのが思い出されます。 そうした苦労をもう一度やる意味はないと思いますが、PLLでもけっこう色々なことができると思っています。 あらためて見直しているところです。
こんにちは。台風が去ってからまた暑くなりました。午後に入ってから曇り気味ですが、まだ雨は降りだしていません。
返信削除PLLとはずいぶん高度なテーマが登場しましたね(笑)。私が新入社員だった頃の課題でもありました。
秋月のPLLユニットは私も買いました。確か2社あって、私が買ったのはアルプス電気製でした。主要デバイスはTC5080/5081/5082でしたが、もう1社の方は主要デバイスが違ったと思います。その後、プログラマブルディバイダがTC5080からTC9122や9198に置き換わったものがしばらく幅を利かせていたように思います。
MC145163は2007年のハムフェア自作品コンテストに出品した430MHz FMトランシーバで使いました。いわゆる「ミキサー・ループ・シンセサイザ」でしたが、送受信シフトを考慮して200MHz帯で350KHzシフト(VCO出力を2てい倍するので、最終的には400MHz帯・700kHz)するVXOを作ったら、QRHがひどすぎてお話になりませんでした(爆)。
自作品コンテストという性格上、特殊な部品を使わず、かつマイコン嫌いな人でも手が出せるように、という縛りを設けたのでこんな回路になりましたが、今なら何があろうともこんなアホな設計は絶対にしません(笑)。
MC145163は電源電圧を目一杯まで上げると、実力では少なくとも80MHzくらいの信号が分周できたように思います。そのため、かつては良からぬ目的に応用したこともありましたが、以下略(笑)。なかなか優秀だと思いますが、ハードロジックでの使用が前提なだけに、もう時代遅れなのでしょう。
TC5081はアクティブ型ループフィルタの使用が前提だったように思います。
バリキャップの自己整流を回避するには2個直列にする手もあると思いますが、容量が半分になってしまうので、常に有効な選択肢ではないかもしれません。AMラジオ用の大容量バリキャップがすっかり姿を消してしまったので、特にローフレでは厳しいかもしれません。
DDSが登場する以前、通信機メーカー各社はPLLで高分解能を得るのに苦労したようです。一番簡単な方法でしょうが、トリオのTR-9300も同様に10kHz未満をVXOで補完しています。
アイコムのデスクトップ機あたりでは目が回るようなマルチループPLLを実装していたようです。VXOでは誤差が大きく、完璧主義のOMさんに文句を言われるから!?(爆)。
その頃に比べたら、ずいぶん便利な時代になったものです。マイコンが使えれば(笑)。基本構成や動作を学習するという点では、今でも単機能デバイスを組み合わせて構成する意味はあると思いますが、近頃はとにかく結果さえ出ればいいと考える人が増えてきたようなので、あまり関心は持たれないのでしょう。
いずれにせよ、こういうお遊びができるのは今のうちかもしれません。この先、「ブラックボックス化」は一層進むでしょうから。
JG6DFK/1 児玉さん、こんにちは。 北関東も少し雲が出て来ました。 相変わらず暑いですけれど・・。
返信削除いつもコメントありがとうございます。
> PLLとはずいぶん高度なテーマが・・・
まあ、それ単体で機能が完成されているDDSチップを使うよりは幾らか高度かも知れませんね。 PLLのICも定型的に使うなら特に難しくもないです。 理論的な探求ではなく実用範囲を扱います。
> もう1社の方は主要デバイスが違ったと・・・
私が買ったものは沖電気のMSM5807というPLLのICが使ってありました。 まだ手付かずで何処かに有るのではなかろうかと・・・完全な死蔵品になってます。(笑)
> TC5080からTC9122や9198に置き換わった・・・
TC5080はCBトランシーバ用でしたから活用範囲が狭かったです。TC9122は使いやすかったのですが「最低動作周波数」があるのには驚きました。 内部がダイナミック構造になっていたようです。D-RAMみたいな感じ。hi hi
> QRHがひどすぎてお話になりませんでした(爆)。
VXOでもいっぱい逓倍したら周波数変動が目立ったでしょうね。hi
> 特殊な部品を使わず、かつマイコン嫌いな人でも手が出せる・・・・
マイコンを使った作品は審査で一律に減点でもあるのではないかと疑われるほどです。 まあ、作品の中身がブラックボックスでは追試も困難なのでマイコンなしが良いのもわかります。今時それでは進歩もないのではないかと・・・。 なかなか難しいものです。hi hi
> TC5081はアクティブ型ループフィルタの使用が前提・・・
その方が有利だからという判断でしょうね。 MC145163Pはそうではないようです。 あまり考えずにアクティブ型に変更すると制御信号が反転してしまいます。(笑)
> 2個直列にする手もあると思いますが・・・
これ常套手段ですが、それでも逆バイアスが小さくて発振振幅が大きいと自己整流は起こります。 お書きのように容量半減ですし・・・。 発振振幅を抑えた方が有利になります。
> 特にローフレでは厳しいかもしれません。
中華モノと思われるAM用バリキャップを購入してみました。 性能的は悪くなさそうです。他にも探せばありそうでした。 AM用で有名なのは東芝の1SV149ですがもはや入手困難でしょうね。
> マルチループPLLを実装していたようです。
DDSが使えるようになるまでは非常に苦労していたのがわかりますね。 コリンズの651-S1Aという受信機がありますが巧妙なPLLで100Hzステップを実現していました。 それ以下の補間はVCXOだったと思います。補間というよりクラリファイアといった感じですね。
> VXOでは誤差が大きく、完璧主義のOMさんに・・・
可変範囲の上端と下端ではVXOの効き方が変わってしまうのでどうしても誤差が・・・。事情がわかっていれば仕方がないと諦めるのでしょうが、そうじゃないとクレームの対象に。w
> 単機能デバイスを組み合わせて構成する意味はあると思います・・・
幾らか中身がわかっていないと完全なブラックボックスではお手上げです。何かあったらデバイスメーカに泣きつく以外にすべがなくなってしまうんですよね。
専用デバイスではできないモノは汎用部品の組み合わせで実現するしかありません。それなりの苦労はありますが回路の動きがわかると面白いです。 結果が欲しいだけの人には向きませんけどね。hi hi
加藤さん、
返信削除PLLは60年代では魔法の技術ですね。70年代に立川の「杉原総会」で売られたRT662やPRC25という軍用機がPLLを使って正確な周波数で送受信えきるのは流石技術の最先端の軍用機と思いました。翻ってアマチュアはまだ水晶制御でチャンネルを増やす為に高価な水晶セットを購入しなくてはなりません。IC2Nかと思いますがアマチュアでPLLが普及するとラジオセンターでトランシバー用水晶セットが二束三文で売られ、自作のVXO用にと買い漁った記憶があります。
「信越電気」のCB用PLLユニットは今でもジャンク箱に眠っています。夢の技術が「ジャンク価格」で入手できるとなれば飛つかないわけがありません。その前にMC4044.MC1648PでVHFのPLLを実験していたので部品点数がTCシリーズのICで格段に下がります。しかし真打はMC145163ですね。「ADO電子」の6mFM機のキットを作りましたが、やっと60年代の軍用機に追いついたなと実感しました。ただPLLのフィルタの設計に難がありサムホイールスイッチを動かす度に「ボヨーン」という間抜けなFM弾性音がします。
レファレンス発振をVXO化してSSBにも対応する刻みにする技術は仙波さんが発表したトランシーバーやK2などの名機にも使われていますね。尤も、RT662は1Kc刻みだったのが改良版のRT834ではやはりVXOで補完していますね。最後に八重洲の「軍用」トランシーバーFT−70GCも70年代のPLLでゼネカバを実現して、日本のメーカーがアメリカの60年代の軍用機の技術に追いついた、私としてはエポックメーキングな機械です。
JR1QJO 矢部さん、こんにちは。 週明けは蒸し暑くて不安定な空模様です。 雷雨が来そうなので今夜は事前の対策が必要かも・・。
返信削除いつもコメントありがとうございます。
> 流石技術の最先端の軍用機と思いました。
何でもそうですが、通信関係の技術は軍事からですね。 大戦中は水晶発振子を量産して安定な通信を確保していましたが、その後はPLLとか周波数シンセになって・・・。今では信号処理もフルデジタルです。 音声ではなくデータ通信がトレンドでしょうね。
> トランシバー用水晶セットが二束三文で売られ・・・
中途半端な周波数の水晶も多かったのですが工夫すると色々「使える」周波数の石があって考える楽しみがありました。投げ売りなので安いのも有り難かったです。
> 夢の技術が「ジャンク価格」で入手できると・・・
あのPLLユニットは長い間@500円で売られていたと思います。 今では産業廃棄物として処分される運命かも知れませんが、当時は捨ててはもったいないと思って信越電気に持ち込んだのでしょう。 お陰でアマチュアには有難い贈り物でした。
> しかし真打はMC145163ですね。
使って感じますが良いICです。 PLLは時代遅れだなんて死蔵しては勿体無いと思います。 上手に使ってやりたいです。
> FT−70GCも70年代のPLLでゼネカバを実現して・・・
そうでした! DDSではなくてPLLになっています。 たぶん、それ以降の無線機はDDS+PLLの構成になって行ったと思います。 いまではフルデジタル式も登場しているんですからアマチュア機もすいぶん進歩したものです。 性能もよろしいようで・・。(笑)
もうしばらくPLLの話題が続きますので思い出されつつご覧ください。
J9TTT/1 加藤さん、こんにちは。
返信削除ご無沙汰いたしております。今日も暑いですね!
此方へきて、早、一月半が過ぎました。
引っ越し、片付け(殆どできていませんが)、新業務とバタバタしているうちに、加藤さんのBLOGの方はどんどん先に進んでいて2つ見逃していました。
3つが、このPLLでした。
MC145163はポピュラーなICですが、実は当局は保有してなく使ったこともありません。
マイコンを使用しなくてもBCD設定で周波数が決められるのでアマチュア的にはオールインワン(VCOは必要ですが)で自作には使いやすいICだと思ってはいたのですが、機会がありませんでした。
最初に使ったのは、確かアイテック研究所のPL-1000(2000だったかな?!)を単体で入手して2mのFMTRXでした。(これもパラレル入力制御で同じようなものですが)
信越のCBモジュールは当局も両方持っていて、何故か引っ越し荷物の整理中で机の上に出ています。改めて見てみると東芝IC使用のものはXTALが3個載っていてTX用とRX用の信号を作っているようです。
OKIのMSM5807のものは、XTAL10.24MHzのみなので、マイコン制御で両方の信号を切り替えて作り出しているのかもしれません。(BLOCK図もないもので)
コイルも8個に対して、4個ですから大幅原低できているのだと思います。
VCOがかなめにの一つですが、当局もMC1648は知りませんでした。
これの類があれば製作は楽になりますね!(一定レベルの性能は確保できます)
XTALの発振性能とそれを基準にしたPLLの発振性能の差は参考になります。
PLLフィルタの設計でもだいぶ違ってくるのでしょうね?!
FMチューナーでオーディオS/Nを90dB上確保するのに、フィルタの検討ばかりしていたのを思い出しました。
モデュレーションアナライザで比較したらどのくらい違うのだろうと思ってしまいます。
最近は中華製DDSやSi5351など苦労しなくて小型で安価なものが多くありますが、これらも性能を確保しようと思えば、今回ご紹介のICなどを使って抑えどころを経験しておかないとダメなような気がします。
既に、技術の進化は激しく、FPGAで何でも作ってしまう時代になってしまっていますが。
当局は、これには全く追随できていません(笑)
JA6IRK/3 ex.JN3XBY 岩永
JN3XBY JA6IRK/3 岩永さん、こんばんは。 また猛暑が戻ってきました。お盆の法要でお寺に出かけていたのですが暑くって・・・僧侶の読経と蝉の声に眠気を誘われました。(笑)
返信削除いつもコメントありがとうございます。
> 引っ越し、片付け(殆どできていませんが)・・・
引っ越しは大変ですよね。 私も何回も引っ越したので、元のようになるには半年以上掛かった記憶があります。 焦らずぼちぼち整理されて下さい。
> ポピュラーなICですが、実は当局は保有してなく・・・
私はかなり後になってから入手しました。 そろそろディスコンで手に入らなくなりそうという話だったと思うのですが・・・。高価だったのでたくさんは買えませんでした。(笑)
> OKIのMSM5807のものは、XTAL10.24MHzのみなので、マイコン制御で・・・
そんなに高級じゃなかったと思います。hi hi マイコンは使っていませんよ。 あとで回路図を見つけておきますね。どこかに有ったはず。 工夫して水晶1個で済ませたのでしょう。
> 当局もMC1648は知りませんでした。 これの類があれば製作は楽になりますね!
使ってみると有り難味がわかるICだと思います。 後ほど紹介しますが代替回路ができたのであえて必要はなくなっています。 持っていれば使うのも良いですが、無理に手に入れる必要はないでしょう。
> XTALの発振性能とそれを基準にしたPLLの発振性能の差は参考になります。
やはり水晶発振は抜群ですね。 PLLやDDSは便利ですがどうしても劣るようです。 まあ、実用になる性能が得られれば良いので理想追求でなければ問題はないんですが。hi hi
> 抑えどころを経験しておかないとダメなような気がします。
たかが発振器ですが、やってみますと意外に評価が難しい所があって泣かされます。(笑) シビアなことを言わなければ簡単ですけど、再現性良く評価するのは厄介でした。未だに不満ありです。
> FPGAで何でも作ってしまう時代になってしまっていますが。
そういう時代ですね。 それも面白いとは思いますが、ブラックボックス化は一気に進みますし中身がいじれないものは今一つかも知れません。 程々に近代化したものが面白そうです。(私には身の丈に合った物が良さそうです。無理せずに。hi hi)
自作が捗るように、引っ越しが落ち着いてお仕事も軌道に乗ると良いですね。
加藤様、こんにちは ja8czx/矢北です
返信削除久しぶりの投稿です、タヌキだけはいたしておりました、少し前のトラ技でのラジオ関係の記事、このブログでのデバイス関連のお話等々、興味深く読まさせていただいておりました。
今回はPLLしかもMC145163!
お話の中にありました金石舎やアルプスのユニットはまだ4個ほど死蔵しており、そのうち1個を自作6mSSB機に使用しました。
一工夫必要でしたが、完成ユニットですからループフィルター等の手強い部分はそのまま使えて、当時のアマチュアにとっては重宝できるものでしたね。
まあ、この自作機では、これも自作の5eleHB9CVとの組み合わせで、今は消滅のJD1沖ノ鳥島ペディション局を1発で取れたことくらいでしたが・・・(汗)
その後、MC145163を入手し、CQ出版の「高周波回路の設計・製作」を参考にチャレンジしましたが、バリキャップの手持ちが少なかったことと、フィルターの検討が不十分だった?のかうまくいかず、ほったらかしにしておりました。
そもそも素の発信回路がうまく発信し、それからVCO回路を纏めるなど、地道にやるべきものだったと思っておりました。
今回は、自分にとっては未知のICのご紹介などもあり、興味深く読ませていただいております。
続編、大いに期待しております。
JA8CZX 矢北さん、こんにちは。 北海道はだいぶ涼しそうですが、昨晩からこちらも涼しくなりました。 今日は久しぶりにエアコンなしでも大丈夫です。
返信削除いつもコメントありがとうございます。
> 興味深く読まさせていただいておりました。
いろいろご覧いただいているようでどうも有難うございます。 お気付きのところはコメントなど宜しくお願い致します。
> 当時のアマチュアにとっては重宝できるものでしたね。
あのPLLモジュールはとても巧く纏めてあったので自作には有難い存在でした。インターネットもない時代でしたけど改造して応用する情報がたくさん出回ったのも流行った理由だと思います。 何事もそうですが、いくらFBな物でも使い方がわからないと価値を発揮しません。
> JD1沖ノ鳥島ペディション局を1発で取れた・・・
それは良い記念になりましたね! 自作品が実戦で活躍してくれるのは大変うれしいです。
> うまくいかず、ほったらかしにして・・・
参考にされたのは鈴木憲次さんご執筆の書籍ですね。 たいへん盛り沢山な書籍で面白い内容が詰まっていると思います。 私も持っていますがPLLの専門書ではないため肝心のループフィルタの設計法が省略されてます。 同じ部品でそのままそっくり製作されたなら上手く行くのでしょうが、部品を替えたり周波数の変更を行なうと問題が起こるかも知れませんね。
> 地道にやるべきものだったと・・・
件の書籍では変形クラップ型のVCOが使われていますね。この型のVCOはPLL回路でよく使われるのですが意外に難しいと思います。 必要な周波数帯に合わせた最適化をすると良いのですが、だんだんノウハウ的になってしまいます。あとはループ・フィルタの所ですね。(笑)
> 続編、大いに期待して・・・
PLLの技術を網羅するのはとても無理ですが、アマチュアが作りそうなシンプルなものを目標にやりたいと思っています。 PLLは回路システムなので幅広いんですよね。たいへんです。hi hi
この回路、あらためて眺めてみたら、トリオのTR-1300を思い出しました。開局した時に使った50MHzのトランシーバです。水晶3つと4つを切り替えて3x4=12通りの周波数(15kHzステップ)を作り、その間は別のVXOでカバーするといったものです。さすがにPLLは当時は使ってなかったみたいですが。
返信削除リファレンスをVXOにしてしまうというのは斬新ですね :) 10kHz幅ならうまくいきそうです。
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Kenji Rikitake, JJ1BDX(/3)
JJ1BDX/3 力武さん、こんばんは。 今夜は少しだけ涼しくなりました。
返信削除いつもコメント有難うございます。
> トリオのTR-1300を思い出しました。
VXOでチャネル間を補間する形式でしたっけ。 あまりよく覚えていませんが・・・。
> 3x4=12通りの周波数(15kHzステップ)を作り、その間は別のVXOで・・・
なるほど。 そういう回路構成になっていたんですね。 まだPLLも未発達だったのでしょうね。 ポータブル機ですからLC発振のVFOでは周波数安定度の確保が難しかったのでしょう。
> ・・・斬新ですね :) 10kHz幅ならうまくいきそうです。
斬新というほどではないと思います。 欠点もありますが連続可変の一番簡単な手ですね。うまく動いてくれますし、しばらくFカウンタで観察していたんですが周波数安定度もなかなか良好でした。
まずまず実用になりそうですよ。