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2012年8月16日木曜日

【書籍】Wireless-mic making book

ワイヤレスマイク製作読本
 8月16日は送り盆の日,懐かしい本の話しでもしようか。初孫と言って可愛がってくれた祖父母が健在だった頃の・・・。

 半年も前になろうか、ネット古書店で昔々読んだ本を見つけた。 懐かしさのあまり入手してみたのであった。

 ワイヤレスマイクを扱う本は幾つも出版されていたがこれが印象深く感じる。 製作を主体にした内容だが、初歩的な理論も載っており電波を出してみたいと言う欲求に様々応える内容だったと思う。 半導体と真空管の混じる過渡期だったので面白かったのかも知れない。

 当たり前のように色々なワイヤレスマイクが載っている。 ただ、今どき何かの役に立つのかと言われれば、それも無いのだが・・・送られて来た懐かしい本の表紙を開いた。(初版:昭和38年/1963年・・私が読んだのは1967年頃と思う)

 【サブミニ管を使った50MHzトランシーバ
 記憶にあったのはこのトランシーバの製作記事であった。

 リード線タイプのサブミニチュア真空管:5672と5676を使っている。 サブミニ管を使う・・・と言う部分に興味を覚えたのかも知れない。 左写真の回路図を見ればわかるが、この種のトランシーバは3A5と言う双三極管を使った物がポピュラーだろう。

 入手のことを考えたら3A5が有利だった。サブミニ管を使ったからと言って一段と小型になった訳でもない。 ただ、通販では3A5もサブミニ管も普通に入手できた時代だった筈だ。 サブミニ管は町の電気屋には売っていなかったし家電品にも使われていなかったから物珍しさはあったと思う。

#他の部品はともかく、遠の昔に廃れた筈のサブミニ管が入手できるのだから今は凄い。

もう一度読んで記事は面白かったが流石に超再生のトランシーバを作る酔狂も感じなかった。hi hi

TRIO TRH-1
 TRIO(=いまのKenwood社)のトランシーバ、TRH-1は愛称:スカイドリームと言って当時は珍しいHF帯(80mと40mバンド)のCWとAMのトランシーバであった。 ワイヤレスマイクと言いつつ、かなり本格的なキットの解説もあった訳だ。(実体配線図付き)

  受信部は標準的な5球スーパーにBFOが付いた程度の代物である。 送信部は6AR5の水晶発振にUY-807の電力増幅が付いた構成であった。 まあ、80mと40mなら実用範囲の構成だと思う。

TRH-1の回路図
 あまりのシンプルさに初心者にさえ馬鹿にされそうな構成ではあるが、今になって思えば意外に実用性があったのかも知れない。 アルミ弁当箱シャシにアルミパネルと言う自作送受信機が全盛の時代にあって、オールインワンで持ち運べるコンパクトさはメーカー製キットならではの物だったろう。何しろ発売は1963年頃なのだから。(回路図がないと寂しいのでコメント付きで追加:2012.08.19)

 混んでいるバンドでは選択度を何とかする必要はあるが、CWならかなりQSOできそうだ。 ファイナルは10Wも出るUY-807だし、けしてワイヤレスマイクの範疇にはなく、立派な送信機なのだから。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 時々ワイヤレスマイクが欲しくなることがある。 身近な音源をラジオに飛ばしたいからだ。 それにはFMステレオが良い。「高度な」ワイヤレスマイクもワンチップで簡単に作れる時代になった。安価な市販品だってある。 そんな時代だからワイヤレスマイクも電子入門者の興味対象ではなくなってしまった。 作ってみたいなどと言い出すのは恐らく「昔のラジオ少年」くらいのものであろう。 スマホで友達と簡単に「交信」できるのだから若者にとって目新しさなど何処にもない。今はワイヤレス時代なのである。(だからヒモ付きのHF-PLCなど既に時代遅れだと言うのに・・・)

 TRH-1のコンセプトは今でも面白そうだ。 5球スーパーのまんまでも良いかも知れないが、受信部は少し強化してLA1600にBFOを付けて・・・もちろん世羅多フィルタも付けてやろうよ。 送信部は真空管かな? やっぱりUY-807・・だろうか? え?VFOも付けてDDSで行けって? 板金が億劫だから何処かに良さそうな中古でも落ちていないかなあ。(爆)


 お盆も過ぎれば8月も後半、読経の後ろの蝉時雨に少年の頃を思い出す。 残した宿題に手を焼いた苦い思い出も蘇るのだが・・・。 こうして大人の夏休みも終わって行く。 この本を手にした頃、何時かは何でも纏めて試してやろうと思ったものだった。 今からでもそれは遅くないと思いたい。 de JA9TTT/1

(おわり)

2012年8月11日土曜日

【回路】CAUTION:Noisy Again !

 【3番目の中華DDSモジュール
 既にお馴染み、中華DDSモジュールである。 最近になって、またもや違うタイプが登場したと言う。 一番右のように、透明なLEDが載ったモジュールだ。

 このモジュールにはNTKと言うブランド名と125MHz、3.3Vと印刷文字のあるクロック発振器が載っている。

 少し前に大阪のJE6LVE/3高橋さんが購入された物が同じような特徴を持ったモジュールだったそうだ。 さらに、このBlog読者のお方が最近になって購入された物がこれだそうで、評価用にお送り頂いたのでお願いして1枚赤色LEDのものと交換して頂いた。 もちろん、詳しい評価のためだ。

 【問題のあるクロック発振器
 実は、このモジュールに搭載のクロック発振器には2つの問題点がある。

写真の様に、まずは書いてある仕様が問題なのだ。
DDS-ICのAD9850を125MHzクロックで使うためには5Vで動作させなくてはならない。3.3Vでは125MHzを保証していないのだ。クロック発振器を無理を承知で5Vで使うことになる。

 逆にAD9850を3.3Vで使うことは支障ないのだが、今度は125MHzクロックでの動作が保証されない。仕様書の保証範囲は3.3Vでは110MHzまでだ。 結局どちらかの定格を無視して使わざるを得ないのだ。 安全サイドは3.3Vで使うことだが、125MHzでも取りあえず動くかもしれないが、暑くなったり寒くなると誤動作するかも知れないので好ましいとは言えまい。

 もう一つの問題点は次の写真である。

 【ノイジーなクロックに戻ってしまった
 残念ながらノイジーなクロック発振器に戻ってしまったようだ。 以前のBlogで評価したときのように-55dBc程度のサイドバンドノイズがあって、基本的に通信機用途には「使えない」のである。

 最近になって、写真と同じ125MHzクロック発振器が搭載されていて、基板上のLEDはクリヤーで青色に点灯するDDSモジュールを入手されたお方はお気の毒だがNG品を掴まされた模様である。

 対処方法は奇麗なクロック発振器に交換することだが、それについては前のBlogに書いた通りだ。 一番のお薦めは100円で買える64MHzクロックへの載せ換えだろう。 DDS出力周波数で見て上限20MHzくらいで済む用途へなら消費電流も少なくなるのでベストだと思う。

備考:頒布中のDDSコントロール用マイコンも64MHz対応するのでその旨お書きを。

               ☆ ☆ ☆

 【180MHzのクロック発振器
 おなじ中華DDSの話題なのであるが、こちらはAD9851を使う方のやや高価なモジュールに関する話しである。

 以前中国からの通販で共同購入したAD9851を使うDDSモジュールには30MHzのクロックオシレータが搭載されていた。(青色基板のモジュール。aitendoの物・・最近は黒い基板らしいが・・と見た所は同じだがAD9851が載っている)

 AD9851にはクロックを6遞倍する機能があって、内部は180MHzで動作できた。 当然発生可能な周波数もアップするから例えば50MHzで使いたい・・・となれば、AD9851が断然有利であろう。

 しかし、30MHzクロックを内部で6逓倍すると、どうもジッター(=周波数あるいは周期の揺らぎ)が大きいのではないかと言う話しもあって、それなら内部逓倍などせずに最初から(奇麗な)180MHzクロックを与えたらどうだろうかと言う提案をしておいた。

ただし面実装型で180MHzのクロック発振器は得難いと思っていた。少なくとも安価には。

 ところが、それがあったのだそうで、違う環境での相互確認のためにサンプルをお送り頂いた。LVE高橋さん、VY-TKS!  お話によればどうやらハズレを掴まされた感じがするとのこと。 それで拙宅でも確認の運びと相成った。

 【やっぱり・・・
 写真は、180MHz中心に全体で10MHz幅を観測している様子だ。 高分解能スペアナの守備範囲を越えているので、上限周波数の高い別のスペアナでスペクトラムを観測している。

 上の写真の125MHzクロック発振器とはまた違ったスペクトラムであって、以前評価したことのある「プログラマブル・オシレータ」とそっくりであった。 案外、同じ仕組みのオシレータ回路が面実装パッケージに入っているのかもしれない。

 それにしてもたいへんノイジー・・・と言うよりジッターが酷くて、最初はスペアナが不調なのかと疑ったほどだ。 機器が不調では相互確認にならない。それで念のため校正用CAL信号を観測して正常なのを確認する始末であった。 それでやっと観測結果に自信が持てたと言った案配なのである。(笑)

だめ押しだが・・
 一応,2MHz幅でも観測してみた。 上の写真もそうだが、信号は絶え間なく激しく揺らいでおり、平均化処理をしないと旨くスペウトラムを観測できないほどなのである。(相当酷い状態)

 ひょっとしたらスペクトラム拡散式のオシレータなのじゃないかと疑ったくらいだ。 それにしても中心スペクトラムは大きく存在するからそれもちょっと違う感じなのだ。 要するに,何かデジタル処理機器用のクロックなのであろう。 高速クロックでさえあれば良いような用途に使うモノなのだろう。言うまでもないが通信機の用途には不適である。

 意外に安く売っていたとかで、お互い大いに期待していたのだが残念でしたと言う結末であった。 結局、安価で奇麗なクロック発振器と言うのは得難いのだ。 表示周波数を見ただけでは適否の判断はできないから、良く吟味しないととんでもないモノを使ってしまうことになりそうだ。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 自作の高次オーバートーン発振器も一旦は無用になってしまったと感じていた。 しかし、奇麗で間違いのないクロック発振器は得難いとなれば選択肢の一つとして再浮上しそうだ。 最近になって感じているのだが、奇麗と称する125MHzクロック発振器はあまりにも消費電流が大き過ぎるように思う。 パッケージが触れないようではちょっと発熱が過ぎる。 定格電圧は書いてないがひょっとしたら3.3V用じゃないのかと言う話しさえもあった。試みに3.3Vで動作させると常識的な消費電流に落ち着くようなのだが・・・。

 どうも中華品質に翻弄され気味だが、64MHzのクロック発振器で使えばスペクトラムの心配は無く電気も喰わないので「欲張らないのが」ということらしい。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2012年8月5日日曜日

【HAM】Some Hints for DDS Controller

 【DDSコントローラ:活用のヒント】
 便利そうなものでも使い方が旨く伝わらないと活用されることもないだろう。また説明はあっても具体例が何もなければちょっとイメージしにくい。 自家用作品は自分さえわかっていれば済むのだが少々忘れっぽいので備忘に残しておこう。   

TRIOの3395kHzフィルタ
 TRIOの3395kHzのフィルタと言えば、TS-510に始まって、TS-511、TS-311、TS-520ほかTS-801や50MHzSSBトランシーバ・キットのQS-500など、幅広く使われた。

 写真のYG-3395SはTS-511のものであるが、他にYF-3395Sなどがあった。 6素子もしくは8素子のハーフラティス3または4段の標準的なSSBフィルタである。

 たくさん使われていたので今でもオークションに登場する機会も多い。 『TRIOの音』を築いたフィルタとしてなかなか人気があるようだ。


 【キャリヤ発振基板
 SSBを発生させるには、まずは搬送波(キャリヤ)を発生させる必要がある。 写真左は、TRIOの3395kHzフィルタとともに使われていたキャリヤ発振基板だ。 昔々ジャンクに登場した新品の基板で、おそらくTS-510用であろう。

 USB/LSB/CW用のクリスタルが載っており、さらにCW用ナローのフィルタを追加した時を考えてCW送信用のクリスタルが追加できるようになっている。 合計で4つのクリスタルを搭載し4つの周波を発生する。

 クリスタルフィルタとともに、こうしたキャリヤ発振基板が入手できればフィルタの活用も楽なのだが、何故かフィルタに比べて発振基板やクリスタルは入手しにくいことが多い。 基板ではなくても、せめてUSB/LSBのクリスタルだけでもあれば有難いのだが・・・。

 右はDDSを使ったキャリヤ発振基板だ。 例のチャネル式DDSコントローラ・マイコンを使っている。 もしキャリヤ発振基板もクリスタルもなければこれを活用することになる。 大きさも似たような物だから大げさにならず組み込みも容易だ。

 【YG-3395Sのキャリヤポイント
 YG-3395Sの公称キャリヤポイント(SSB発生の為のキャリヤ周波数)は、USBが3393.5kHz、LSBが3396.5kHzである。

 しかし、個々のフィルタによって最適周波数はばらついており、実際には個々に加減しないと最適ポイントに持って来れない。 写真はフィルタの実測特性であるが、一般に平坦域からみて-10〜-20dB低下したあたりにキャリヤを置くのが良い。(遮断域に向かうスロープ特性にもよる)

 -20dBの所とすれば、この例ではUSBが3393.6kHzあたりが良く、LSBは公称値の3396.5kHzでも良さそうだ。 実際に、キャリヤポイントの周波数調整はフィルタの公称値にあわせるだけではだめで、個々の機械に搭載されている個々のフィルタ特性に合わせた調整が必要である。

 例えばTS-511の取説のキャリヤ周波数の調整に関する記述では『マーカーを受信しS9になるようDRIVEツマミを調整し、さらにゼロビートのポイントでS2に以下になるよう(周波数数調整の)トリマコンデンサを調整し・・・云々』とある。 とりもなおさず、通過域から-20dB以下の十分に落ちたポイントに合わせるよう指示している訳だ。

 DDS発振器でキャリヤ周波数を発生させるにしても、公称周波数が発生できるだけではダメである。USBなりLSBなり、必ず上下に周波数微調整ができるようしておく必要がある。(これ,たいへん重要なこと)

 【キャリヤ発振に適したDDS式発振器
 図は、SSBジェネレータのキャリヤ発振に特化するためのDDSモジュールとそのコントローラの使い方を示している。(回路図はマウスの左クリックで開いてから右クリックで保存を選び、別途開くと細かく見ることができる。windowsの場合)

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に表示する必要はないのでLCD表示器は要らないだろう。(もちろん、付けられるようにしておいても良い) 従って上の写真のように基板の小型化が可能だ。

 写真の例ではコントローラ・マイコン(ATmega328P)はDDSモジュールの下に配置してコンパクトにまとめた。 ダイオードマトリクスと各モードごとの周波数調整VRは別基板に置くようにしている。 またDDSからの信号は小さいので、フィルタを兼ねた狭帯域アンプで増幅する必要がある。

 図の様にダイオードマトリクスで、USB/LSBあるいはCW用の周波数に切り替えるとともに、それぞれ周波数微調整用の可変抵抗器VRを切り替えている。このように個々に周波数微調整できるようにしておく。 ちょうど、正規の「キャリヤ発振基板」に搭載さえれているトリマコンデンサの役割を持つている。 もちろん取説の説明と同じようなキャリヤ周波数調整ができるわけだ。

                ☆ ☆ ☆


 【TRIOの8830kHzフィルタの例
 中心周波数:8830kHzのクリスタルフィルタはTRIOのTS-820/180/120と言った、PLLを使ったシングルコンバーション形式になった時代のフィルタだ。

 HF帯をシングルコンバージョンでフルにカバーするには3MHz帯では低過ぎる。 そのために8.8MHzを選んだのであろう。 この周波数の近く9MHzには、八重洲無線のFT-200ほかフロンティア・エレクトリックのトランシーバや海外製Rigも多数存在し、シングルコンバージョン形式には適している周波数なのだ。

 写真手前YG-88SWはR-820から、奥のYK-88SはTS-180の物である。 中心周波数は同じであるが、YG-88SWの方が帯域幅はやや広いようだ。

YK-88Sのキャリヤポイント
 緑色のラベルのYK-88Sはやや小型のフィルタである。 特性的にはYG-88SWの方が良好ではないかと思っていた。 しかし、このようになかなか良好な特性であった。

 YK-88Sの公称キャリヤポイント(SSB発生の為のキャリヤ周波数)は、USBが8828.5kHz、LSBが8831.5kHzである。

 しかし、実際の最適キャリヤポイントは写真のようになるだろう。 もちろん、この周波数に対応するチャネルは用意されているので、DDS式キャリヤ発振器で最適対応できる。


YG-88SWのキャリヤポイント
 YG-88SWは8830kHzの標準的なフィルタ、YG-88Sよりも少し広めのフィルタのようだ。 特性的には上の写真YK-88Sよりもやや良好ではないかと思っていたが大差はない模様だ。

 やや広めの帯域幅特性のようである。公称キャリヤポイントは不明であるが、おそらくUSBが8828.5kHz、LSBは8831.5kHzのままではないかと思われる。

 もちろん、個々のフィルタに対する最適値はあるはずで、写真の例ではUSBガ8828.4kHz、LSBが8831.45kHzあたりのようである。 同じようにDDS式キャリヤ発振器なら最適対応できる。



キャリヤ発振に適したDDS発振器
 図は、8830kHzのフィルタを使ったSSBジェネレータに適したキャリヤ発振器に適したDDS発振器だ。 専用コントローラ・マイコンを使いそのまま作れば良いよう設計しておいた。

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に表示する必要はないのでLCD表示器は要らないだろう。 従って上の写真のように小型化が可能だ。

 8830kHzだからと言って、特別なことはないがフィルタとアンプ部分はそれに合わせた設計になっている。 FCZコイルと書いてあるが、トロイダルコアに巻いた「自作FCZコイル」も最適だ。

 ダイオードマトリクスで、USB/LSBあるいはCW用の周波数に切り替えるとともに、それぞれ周波数微調整用の可変抵抗器VRを切り替えて、個々に周波数微調整できるようにしてある。 もちろん、最適なキャリヤポイントに追い込むことが可能である。 8830kHzのクリスタルフィルタもオークションほかで良く見かけるからこのDDSオシレータで最適化して十分な活用が可能だろう。

                ☆ ☆ ☆



YAESUの3180kHzフィルタ
 中心周波数:3180kHzのクリスタルフィルタは八重洲無線のFT-101/B/Eのほか、FR-101/FL-101と言った、ダブルコンバーション形式だった時代のフィルタだ。

 FT-101シリーズ(Zは除く)は非常にたくさん生産されたため、本体は既にお釈迦になっていてもIF基板やフィルタだけがジャンクに出回っている。

 写真はFT-101(無印)のIF基板に実装されたXF-30Aの様子である。 このフィルタを使ったSSBジェネレータはやや固い音色のように感じる。 帯域幅は上のYK-88Sと同じような物なので、音色の違いは単なる帯域幅の違いではないようだ。 好みもあるのだろう、こちらの方がお好きな人もいる。

 なお、このフィルタは未だFT-101に組込まれたままなので、特性の実測は行なっていない。特性図は省略させてもらった。



キャリヤ発振に適したDDS発振器
 図は、八重洲の3180kHzのフィルタに対応するためのキャリヤ発振器である。 SSBジェネレータに適した各キャリヤ発振器に適したDDSモジュール+コントローラ回路になっている。

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に表示する必要はないのでLCD表示器は要らないだろう。

 3180kHzだからと言って、特別なことはないがフィルタとアンプ部分はそれに合わせた設計になっている。 TRIOの3395kHzフィルタと近いので類似のアンプやフィルタで良いと思う。 すこし周波数が低いので、もし調整しきれなければ同調コンデンサを追加するなど行なえば良い。

 ダイオードマトリクスで、USB/LSBあるいはCW用の周波数に切り替えるとともに、それぞれ周波数微調整用の可変抵抗器VRを切り替えて、個々に調整できるようにしてある。 公称キャリヤポイントは、USBが3178.5kHz、LSBが3181.5kHzであるが、もちろん個々のフィルタに適した最適なキャリヤポイントに追い込むことができる。

☆☆  回路の初期調整方法を書いておく。(どの周波数の回路も方法は同じ) まずは、LSB、CWあるいはUSBのどれでも良いので所定のチャネルにスイッチをセットする。 そのチャネルの周波数加減用の可変抵抗器(LSB ADJ、CW ADJまたはUSB ADJと言う名称のVR)を中央の位置に合わせる。 正確な中央位置に合わせるには、電源電圧(+5V)を正確に測って、その1/2の電圧がVRから出力されるようにすればベストだ。 電圧測定はなるべく内部抵抗の高い電圧計を使うべきだ。指針式テスタではなくDVMが良い。

 その状態でDDS出力に周波数カウンタを接続し、スイッチで設定した所定の発振周波数になるようにClock ADJの可変抵抗器(VR2)を調整する。 このようにすれば、良い周波数精度でキャリヤ発生ができる。 なお通電後10分以上経過しクロック発振器の周波数が安定して来てから調整する。 その後はClock ADJ(VR2)には触れないこと。 以後、各モードの周波数微調整はUSB ADJ、CW ADJあるいはLSB ADJのVRで行なうこと。

                ☆ ☆ ☆




455kHzのメカニカルフィルタにも
 中心周波数が455kHzのメカニカルフィルタはフィルタタイプSSB送信機の黎明期にはたいへんポピュラーな存在であった。 CollinsのSラインやKWM-2/Aトランシーバなどに使われたほか、国産機では八重洲無線のFR/FL-100Bライン、FR/FLDX-400ラインでも使われていた。 その後のシンセサイザ時代になってもCollins insideと称してCollinsのメカフィルを内蔵するリグも現存する。

 自作やメーカー製の所謂『高一中二受信機』の選択度改善にも使われたため、いまでも中古品が手に入る。新世代のCollinsメカフィルも入手容易だ。

 写真奥の円筒型と水色のものはCollins製である。 また右の黄色いラベルと、手前のグレーの物は国際電気製である。 他にも455kHz帯のメカフィルは色々あって入手したことのある自作HAMも多いのではないだろうか。 他に多少特性は劣るが、SSB用のセラフィルも村田製作所から出ている。


Collins 526-9939-010の特性
 写真では水色のメカニカルフィルタの特性である。 これはキャリヤ周波数を455kHz丁度としたLSB用に作られたフィルタだ。

 シチズンバンド(CB)のSSBトランシーバ用に作られたらしいが、図の様に遮断特性の対称性は悪くないのでしかるべきキャリヤポイントのクリスタルを用意してやればLSBだけでなく、USBの発生にも支障無く使える。

 その場合USB発生用には451.95kHzが良いようだ。 もちろん、個々のバラツキもあると思うので、フィルタ特性を良く見た上で適した水晶発振子を特注・・・となるのが従来であった。
 

国際電気 MF-455-10GZの特性
 写真では黄色いラベルのメカニカルフィルタである。 これは中心周波数が455kHzの標準的なSSB用メカニカルフィルタである。

 本来の用途はわからないが、一般的な通信機用に作られたものではないだろうか。 通過帯域はやや狭い感じもするが、HF帯のように混んだバンドには適当であろう。

 USB発生用には453.6kHzが良く、LSBには456.35kHzで良いようだ。 もちろん個々のバラツキもあるだろう。



Collins 526-9939-010を使ったSSBジェネレータ
 水色のメカニカルフィルタを使ったSSBジェネレータである。 バラモジは1SS86を4本使ったDBMだ。 DBMのIN/OUTに使ったトロイダルコアはTDK製である。μの高いH-5A材なので少ない巻き数で十分であった。 Amidonの#43材ではもう少し多く巻く方が良い。

 キャリヤは別基板から与える。もちろんDDS式キャリヤ発振器が最適であろう。 CB用と称する安価なメカニカルフィルタを試したくて作ったのであるが、作った当時はキャリヤ発振のクリスタルに困った。 LSB用の455kHzは既製品があったので良いとして、USB用452kHzは既製品が無いのでSSGから与えてテストをしていた。 もちろん今ならDDS式キャリヤ発振器があるからまったく困らない。



455kHzキャリヤ発振に適したDDS発振器
 図は、各種の455kHzフィルタに対応するDDS式キャリヤ発振器である。 SSBジェネレータに適した各キャリヤが発生できるからSSBフィルタの実験が促進されるであろう。もちろんSSBジェネレータ用のみならず、通信型受信機に必須のBFOにも周波数の安定なDDS式のBFOは最も適している。

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に監視する必要はないのでLCD表示器は要らないと思う。

 従来、455kHzのSSBフィルタを使うにあたっては特性にマッチしたキャリヤ用水晶発振子の特注が必須であった。 しかも、最適キャリヤポイントにドンピシャの周波数を発注しないと厄介なことになる。 HF帯の水晶発振回路とは違って、調整用トリマコンデンサを付けても僅かな周波数調整しかできない。 455kHzと周波数の絶対値が低いため、トリマコンデンサで加減できる可変範囲はたいへん狭いのだ。100Hz動かすのでも大変なくらいである。

 DDS式キャリヤ発振器は、どの周波数でも±1.2kHz以上調整できるようになっている。また、VXOやセラロックのような不安定さとは無縁で水晶発振器の安定度そのままだから安心だ。 455kHzのメカフィルだけでなく、暫く前に流行った搬送電話用128kHzメカフィルや、驚異的特性のURG-1の100kHzフィルタなど様々に活用できる。

                  ☆

 周波数一覧のように様々なSSBフィルタにも対応済みだ。 もちろん7.8MHz、9MHz、11.2735MHz、或は10.695MHzと言うようなポピュラーなSSBフィルタに適したキャリヤ周波数を盛り込んだ。いずれも上記使用例と同じようにすれば良いだろう。 なお、どうしても特殊なキャリヤ周波数をと言うご要望にも対応するので相談を。 ←(特注は管理困難なため休止中) 以下にPDFファイル化した一覧表をリンクしておく。興味のある向きはダウンロードして参照を。

参考1:DDSコントローラ・マイコンで可能な周波数一覧表(Ver.1.0.3)は:ここ(←リンク)

参考2:DDSコントローラ・マイコンで可能な周波数一覧表(Ver.6.4.1)は;ここ(←リンク)
注・このバージョンはDDSクロックを64MHzとし、ATmega168とATmega328を共通化したもの。発生周波数は379chとなり、HAM専用化してある。HAMバンドは18 MHz帯まで対応。なお、21MHz及び28MHzは7MHz帯を3又は4遞倍すれば良い。(上記のリンクは更新済み。なお、ATmega168は在庫切れのためすべてATmega328版となります。:2017.12.13)

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 写真と図面で実例を多用したら、長ったらしいBlogになってしまった。 具体的で後々まで参照できそうな内容を心がけた。 手持ちの各種SSBフィルタに活用できたらFBだ。 水晶発振子メーカーの廃業続きでキャリヤ発振用水晶発振子の特注は難しくなってしまった。 中華DDSモジュールとAVRマイコンのお陰で有用な開発ができるのは有難い。

 まもなく、有明のビックサイトで『2012・HAMフェア』が開催される。 例年ジャンクを見ていると、様々なSSBフィルタやフィルタ付き基板ユニットが販売されている。 フィルタがあってもキャリヤ用水晶に困るから変な周波数のフィルタには手を出さぬようにしていた。 しかし、もうその心配はない。 安価な中華DDSの応用で自由自在にキャリヤ発振器が作れる。どんなフィルタでもドンと来いと言った感じだ。(笑) de JA9TTT/1


(おわり)

参考;ここで使ったDDSコントローラ・マイコンは、前のBlog(←リンク)で頒布中。

2012年8月2日木曜日

【HAM】Overhaul a EMOTATOR 1105MX

 【エモテーターのオーバーホール
 写真はかつての江本アンテナ、今の(株)エモテーターのアンテナローテーター:1105MX型である。 只いま当局は秋に向けてアンテナの整備中なのだ。 先日はローカルのYさんと、Sさんにお願いして古いアンテナの撤去から開始した。(YさんとSさんに感謝!) 

 HF帯14MHz〜VHF帯は1200MHzまでのアンテナをリニューアルしている。 その一環としてアンテナローテーターの整備も行なうことにした。 これは降ろして来たばかりの写真である。だいぶ汚いが、これでも少しは掃除してあるのだ。(笑)

 この1105MX型は今から27年も前の1985年に購入した年代物である。 当時、なるべく大きなアンテナが回わせて安価な物を購入した記憶がある。 だからコントローラを含めて全般に簡素なものではあるが、目立った故障も起きず長年タワーの上でアンテナを回し、支え続けてきてくれた。

 コネクタ部分には自己融着テープが入念に巻いてあったので奇麗な状態であって、雨水の浸入はなさそうであった。 テストしてみたら一応回転はするのであるが、流石にグリースの固着など考えられるし、幾らかのダメージもありそうだ。なので、この先の使用には心配がある。新品に交換するかオーバーホールは必要そうであった。

 そこでエモテーターに電話をしたら『古くても』定額でオーバーホールしてくれるとのこと。 費用を聞いたら新しく購入するよりも経済的な感じだし、メーカーのオーバーホールならこの先も安心だろうと思った。 さっそく依頼することにした。 納期は繁忙状態にもよるそうだが、空いていれば1週間程度とのことであった。

オーバーホール完了
 送ってから約1週間、オーバーホールは無事に済んだ。 追加費用は掛かっても交換可能なネジ類はなるべく新しくしてもらうことにした。 やはりこの先また10年以上は使いそうなので、錆などを考えると可能なことはやっておきたい。

 購入した時にユニバーサルカップラーを追加してあったので そのままメンテナンスに出した。 その部分のネジなども含めて交換されてきた。

 エモテーターに到着したころ、すぐに電話があって状態の説明があった。 案の定、グリースなどが固着しており、だいぶ酷い状態だそうである。 それもそのはず、ほんらい数年ごとにオーバーホールすべきなのをずっとさぼって来たのだから、もしも自身で開けたなら『見ない方が良かった・・・』と言う惨状だったに違いない。

 過回転防止用のリミットスイッチも寿命に近い状態になっていたそうである。 内部を清掃しグリースアップして再組み立てしてくれるとのこと。 流石に、自分でやるにしても道具や手間、そして油脂類の手配や洗油の処理なども考えれば面倒なことは明らかだ。 これはあっさりお願いして良かったと感じた次第。 写真の様に奇麗になって戻って来た。 コントローラの箱も天部に少し凹みがあったのだが交換してくれたようである。VY-TNX!

 【交換したネジ類
 Uボルトは勿体ないとかで、交換しないかもしれないと言う話しであったが、やはり交換したようだ。 再利用するにはあまり状態が良くなかったのかもしれない。

 それにしても、細かいネジ類まで色々交換してくれたものだ。 ここまでやってもらったと言うことは、相当奥深くまで分解整備したことになるだろう。

 もちろん、再組み立てのトラブルだって無い訳ではないだろうが、素人のメンテナンスじゃあるまい『おや?ネジが余った・・・』と言うようなこともないだろう。 もちろん安心できる。(笑)

意外に安価なオーバーホール
 定額料金は15,000円だそうである。 そのほか、リミットスイッチと取付け板などが交換されていた。 モーターや減速ギヤなど主要部品がNGだともっと掛かるかもしれない。 他の部分は特に支障はなかった模様だ。 DXerではない当局はあまり酷使していないからグリース固着はともかく、全体の状態は悪くなかったのかもしれない。

 ほか、返送料と代引きで送ってくる関係でその手数料が発生している。 合計で¥21,525-であった。 他にこちらから送った際の送料が¥1,270-ほど掛かっている。

 昨今、ハム用品は大変な売れ行き不振とかで、ショップではローテーターもかなりのディスカウントになっているらしい。 だから思った以上にに安価に買えることもあるようだ。 しかし整備すればリッパに使えるものを捨ててしまうのは勿体ない。メンテナンスして使う方がエコであろう。 それに新品を買うよりもチョッピリお財布に優しいと思う。 27年で無線機は飛躍的に変化したが、ローテーターはそれほど違わないように感じる。 妙な電子回路の入っていないこのローテータの方が信頼性は高いだろう。この先も愛用することにした。

 これで秋口に予定しているアンテナ工事の準備がまた一つ整ったことになる。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ずいぶん前のことになるが、屋根上のルーフタワーでマストベアリングを分解していたことがあった。 間違って、パチンコ球のようなベアリングをこぼしてしまって焦った。

 拾い集めても元々何個あったのかがわからない。 すかざす江本アンテナに電話して、球数を教えてもらった。 足りない分を注文したいと言ったら、頼む前に届いでビックリしたことがあった。コールブックでQTHを調べて送ってくれたのであろう。

 クラブで使っていたかなり旧式のローテータのメンテナンスを依頼したら非常に丁寧な作業をしてもらえた経験もあって、以来ずっとエモテーターの愛用者である。 de JA9TTT/1

(おわり)