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2015年3月20日金曜日

【部品】Low Cost RFC Set

部品:お手ごろ高周波チョークコイルセットの評価
 【aitendoのRFCセット
 抵抗:Rやコンデンサ:Cはパーツボックスに揃えていても、インダクタ(コイル):Lは揃えていませんでした。 それと言うのも、コイルはRやCよりも一段と理想と離れた部品なので、画一的なシリーズを揃えても役立たないことがあるからです。 要するに、その時々の用途・目的に応じたインダクタが必要と言うことです。

 しかし、ラフな用途と言うのもあるもので、実際には幾つか飛びとびの値で用意してありました。 Eシリーズで用意していなかった理由のもう一つは、コイル類は比較的高価な部品だからでもあります。 何時か使うかも知れないと、多種多様なものを揃えておくのも無駄が多いと言うか、勿体ない気がしていたのでした。

 そうした状況が変わったとも言えませんが例によって中華パーツなら安価に揃えられます。Aliexpressを見ていると直輸入すれば一段と安価なのですが、他のパーツを注文するついでに「RFCセット」が購入しておきました。 形状が統一されたアキシャル・リードタイプで、0.22μH〜470μHの範囲がおおよそE6シリーズ相当で19種類揃えです。各20本ずつ入っていて、合計で380本です。 このマイクロ・インダクタのセットは1,950円ですから1本当たり5円少々と言ったお値段でした。

                ☆ ☆ ☆

 上にも書きましたが、インダクタは電子部品としては理想から遠い(*1)ので、吟味してからでないとどのような用途に使えるのか、あるいは使っては駄目なのかの判断できません。以下では、高周波回路の適性があるのかを中心に評価してみました。 結果は一覧表に纏めてあってそれが全てなのですが、あくまでも自家用データです。 一般のパーツに広く適用できる訳ではなくて特定のショップの特定商品の評価レポートです。 同じものを買った人には幾らか役立つデータかも知れませんが購入を促す意図はありませんのでそのおつもりでお願いします。 もちろん買ってもいない人にとって殆ど意味のないデータなのは言うまでもありません。

*1:インダクタは理想から遠いとは:
 純粋にインダクタンスだけを持った電子部品は存在しません。必ず巻線による抵抗成分が直列に含まれるほか、分布容量と言うキャパシタンス分が並列して入っている部品です。さらに、誘電体(フェライトなど)による磁芯を持つコイルではその誘電体の周波数特性がインダクタンスや損失量の変化となって現れます。一筋縄とは行かない「複雑な部品」です。

 【1/4Wと言うのは外形サイズのことか?
 素人が誤解しそうなラベルが付いています。 もちろん、コイルにも電力容量と言うものがない訳ではありません。 しかし「1/4W」と言うように表示して売る例は見ませんから、多分これは1/4W型の抵抗器と同じサイズと言う意味なのでしょう。(笑)

 こうした高周波チョークコイル:RFCの定格としては、インダクタンス値:Lのほか、直流(DC)抵抗値:DCR、それと電流容量:I(max)で示されるのが普通です。さらに、特にHigh-Qに作られたものにあってはある周波数での無負荷Qの値:Quが規格されていることがあります。 このRFCは単体でインダクタンスと誤差の表示(±10%)があるだけなので他はまったくわかりません。 従って、ある程度自分で調べる必要があるのです。そうでないとどのような範囲まで使って大丈夫なのかわかりません。

 【抵抗器とは地色が違う?
 一見して抵抗器と同じ形であり、しかもインダクタンスはカラーコード表示です。 従って抵抗器と間違い易いのです。 ただ、こうした「マイクロ・インダクタ」の場合は塗装の地色が緑掛かっていることが多いようです。 はっきりとキミドリ色のことさえあります。

 インダクタの塗装について、地色を何にするか規格がある訳でもないと思いますが、このような緑っぽいことが多いのです。(水色っぽいRFCもあったように思いますが) 整理しておくと、ベージュ(薄茶色)がカーボン抵抗、青味を帯びたグレーが金属皮膜抵抗、灰白色が酸化金属皮膜抵抗・・・と言った常識かと思います。まあ、これが絶対ではありませんので個々のケースで判断しないと間違えてしまいます。LCRメータが欲しい理由でもある訳です。

 インダクタンス値は有効数字の帯が2桁分で、乗数が1桁分で示されます。そして誤差が1桁分の合計4本のカラーコード表示になっています。 単位はマイクロ・ヘンリー(μH)です。 この例では、黄・紫・茶・銀なのでインダクタンスは47×10^1=47×10=470(μH)で、その誤差±10%となります。

 【実測結果
 19種類のマイクロ・インダクタについて、実測で評価してみました。 高周波回路で使えるか否かをテーマにしているので評価周波数は高めになっています。 なお、評価数:n=1であり、しかも同一規格品の複数評価によればバラツキが大きかったので傾向を見る程度のものと考えています。

 1μHと言った、小さなインダクタンスの場合、主に高い周波数で使われるでしょう。 一方、470μHくらいの大きめのインダクタは低い周波数用として使うことが多いと思います。 実際に使いそうな周波数で評価しておくことにしました。

 ただし、数10μH〜470μHと言った大きめのインダクタンスのものは、内部にフェライトコアが使ってあるのは間違いないようで、そのコアの周波数特性がかなり現れています。 そのため数100kHzとは言え高い周波数で測定するとコア材(フェライト)の周波数特性がもろに現れる特性となります。 そのためインダクタンスの誤差がたいへん大きくなりました。 物理的な大きさから考えて、透磁率:μ(ミュー)の大きなフェライト磁芯を使っているでしょう。 従って、温度特性は良くない筈です。 種類が豊富で便利そうだと思って発振コイルやVXOコイルに使ったなら周波数の温度変動で困るに違いありません。 磁芯が使ってあるようなRFCは同調回路やそれに類する目的には不適当です。

 確認のため1kHzで測定したところ、まずまずの実測値でした。このことから考えて、このマイクロ・インダクタは1kHzで測定した値を規格としているようです。 従って、それ以外の周波数で使おうとするなら改めて評価しないと設計値との誤差が大きくて驚くことになるでしょう。 1μH以下と言った小さなインダクタンスの物はフェライトではなく、アルミナなど非磁性体を巻芯にしているようですから周波数特性はずっと良好でした。


 【リード・インダクタンス
 写真の測定例は0.22μHのインダクタです。 上のように長いリード線の状態で測定すると、0.234μHとなります。 一方、下のように最短のリード線では0.208μHになりました。

 0.22μHと言った、小さなインダクタンスでは「リード・インダクタンス」が効いてきます。 実際に使用する際も、適当な長さに切り詰めるなど気を使って実装しないと誤差が大きくなってしまいます。

 逆に、数100μH程度のインダクタではリードインダクタンスの影響度合いは僅かなので多少長めのリード線で実装しても大丈夫なことが多いでしょう。もちろん、物理的に不安定な状態に実装すると振動で電気的なノイズを誘発する原因になるので注意します。

 こうしたRFCのようにシールドされていなくて、而も磁気回路が閉じていない「開磁型インダクタ」はコイル相互の磁気結合が起こるので要注意です。 密着して複数並べるとコイル相互が磁束で結合します。 隣接させるなら軸方向をそれぞれ90度ずらせ磁束が交わらぬように注意しましょう。 RFCには磁気結合を考えて「閉磁型インダクタ」も市販されているので検討してみると良いです。 とかくインダクタンス部品は扱いが厄介なのです。


巻線抵抗
 極端な低抵抗の抵抗器でもなければ、リード線を含む内部抵抗が気になる電子部品はあまりないでしょう。 しかし、こうしたRFCでは巻線抵抗は大きな問題です。インダクタンスに直列に入ってくるからです。 写真はごく低抵抗を測定する方法として、4端子法で巻線抵抗を測定している様子です。低インダクタンスのRFCでは巻線抵抗は小さいので有効な測定法です。この例では0.079Ωでした。

 インダクタンスが小さなうちは巻線長は短いし比較的太目の巻線が使ってあるので巻線抵抗はあまり気にならないでしょう。 しかしインダクタンスが大きくなると当然巻数を稼がなくてはならず、細い線を沢山巻くことになります。 いくら銅線でも細くて長ければ、その抵抗は無視できなくなってきます。

 このインダクタの例で言えば、470μHの直流的な抵抗値:DCRは約10Ωもあります。 従って少し大きめの電流を流すと電圧降下が生じます。 その電圧降下分の損失は熱になるので発熱で燃えてしまうことさえあります。コイルの黒焼きができるのです。(笑) コイルには流せる電流の上限があることも忘れてはいけませんね。

                ☆ ☆ ☆ ☆

 買ってはみたものの、どうも素性がわからないので使う気になれませんでした。使うのは良く調べてからと思っていました。 しかし、そのままにしておくと何時までたっても使わない部品になってしまいそうです。Blogネタも纏まっていなかったので、評価してみることにしたのです。

 結論から言えば、ごく普通のマイクロ・インダクタでした。 従って、簡単なRF阻止用のチョークコイルとして使うのには何ら支障は無さそうです。 これはこの部品の存在目的からして当たり前でしょう。 サイズが小さいので心配したDC抵抗も思ったよりも小さ目です。 数mAしか流さない普通の用途なら電圧降下は気にしなくても良いでしょう。開磁型ではありますが磁芯がごく小さいので磁気飽和の可能性は考えておくべきでしょう。

 当然ながらフェライト磁芯が使ってあるものの周波数特性はあまり良くありませんでした。 HF帯で共振回路やLPFとかHPFと言った用途に使えなくもありませんが良く検討しないと希望する性能が得られず悩むことになるでしょう。 これは、このRFCに限らず先人が言っている通り「RFCを共振に使うのは旨くない」ということの実証でもあります。de JA9TTT/1

(おわり)

注意:お買い物は自己責任でお願いします。ショップの対応ほか商品についての責任は持てませんのであなた自身の判断でお願いします。価格は2015年3月現在のものです。

10 件のコメント:

  1. 加藤さん、おはようございます。

    aitendoにこのようなセットがあったのですね。
    検索すると通販も行っているようですが、
    最近は商品数が増えすぎて見つけるのに苦労します。Hi

    RFCも100μとか470μとか定番の値はストックしていまし、必要なときはトロイダルコアに巻いたりしていますが、1セット持っておけば重宝しそうですね。

    本家のAliexpressには24種類10本ずつのセットで$11 Free shippingというのもありました。

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  2. JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、おはようございます。 今朝は暖かですが、もやが掛かって見通しが悪くなっています。

    早速のコメント有り難うございます。
    > 商品数が増えすぎて見つけるのに苦労・・・
    一応、ジャンル分けされているみたいですがこちらの予想とは違う分類になっていることもあって見つけられないことがありますね。リピート買いのような、商品コードがわかる場合はそれで検索すると良いようです。

    > 1セット持っておけば重宝しそうですね。
    そう思って買ってあったのですが、小さいし何となく不安なのでまだ一つも使ってませんです。(笑)

    > 24種類10本ずつのセットで$11 Free shipping・・
    そちらも良さそうですが、あらためて評価が必要になるでしょうねえ・・・。 まあ、気にせずに使えば良いのかもしれませんけど。hi hi

    整理・収納のためパーツボックスを買ってこようと思っています。L専用の箱は既にあるんですがうまく整理できてません。ww

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  3. こんばんは,aitendoには面白いセットがありますね,知りませんでした.
    とても奇遇なのですが,私は今,Xtalのチェック用に発信回路を作っていて,丁度RFCを秋月で何種類か入手してきたところでした.秋月では同一品種10本で100円だったので,aitendoの倍ですね.

    今度秋葉原に行ったら,aitendoに寄って入手してみます.

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  4. 7M4EZB 山内さん、こんばんは。

    コメント有り難うございます。
    > 丁度RFCを秋月で何種類か入手してきた・・・
    そうでしたか。 hi 秋月にも売っているのは知っておりましたが、購入したことはありませんでした。

    製作中の発振器、旨く行きますように。

    > aitendoに寄って入手してみます
    やや誤差が大きい感じもしますが、ごく普通に使えます。パーツボックスに入れておくと重宝しそうですね。

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  5. TTT 加藤さん、こんにちは。
    aitendoのインダクタの評価ありがとうございます。
    実は、当局もいくつかの値をすでに仕入れていました。安いですからね!
    あまり使うものではないのですが、いざという時何も無いと、これも困りますので(笑)
    今回、評価いただきましたので安心して使えます。

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  6. JN3XBY/1 岩永さん、こんにちは。 お彼岸らしく暖かになりましたね。 朝から墓参に出掛けておりました。

    コメント有り難うございます。
    > くつかの値をすでに仕入れていました。
    セットと同じ物が単品でも買えますので、もし足りなくなっても補充に便利だと思っています。

    > いざという時何も無いと、これも困りますので・・
    買ってみて全種類は必要なさそうに感じましたが、幾つか種類が無いと困る部品ですね。

    > 安心して使えます。
    ラフな評価で申し訳ないんですけど、何もわからずに使うよりも安心だと思っています。hi hi

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  7. 加藤さん,今晩は.
    発振器,ちょっと躓きましたが何とか動きました.実は,aitendoで格安で売っている水晶発振子を色々チェックしてから使いたかったもので,発振チェックの回路を作った次第です.
    6.144~12MHzくらいのものは結構正確に動いたのですが,なぜか4.9152MHzだけは3倍近くで発振してしまい,原因がわかっていません.
    なお,不良品は,6.144Mに集中しており,30%くらいが発振しないという状況でした.aitendoの水晶は,周波数によっていろいろなロット?というか種類があるので,たまたま6.144が不良率が高かったのかも知れません.
    うまく動くものはとても安定性が高かったので,良かったのですが.
    RFCは,VXO用に用いましたが,とりあえず周波数可変範囲をざっくりと調べた状況です.
    RFCつながりで,少し脱線してしまいましたが,aitendoの部品はチェックしながら活用すると色々と楽しめそうです.

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  8. 7M4EZB 山内さん、こんばんは。

    再度のコメント有り難うございます。
    > 発振チェックの回路を作った次第です.
    旨く行って良かったですね。 確認してから使えば安心だと思います。 aitendoほか中華系のデバイスは確認してから使いたいですね。

    > 4.9152MHzだけは3倍近くで発振・・・
    部品定数が高い周波数で発振し易くなっているのかもしれませんね。 水晶に原因があることも有り得るでしょう。

    > 30%くらいが発振しないという状況でした.
    出所が明らかではない水晶ですから、これも十分あり得る数字だと思います。 アクティビティが低いのでしょうか。

    > チェックしながら活用すると色々と楽しめそう・・
    そうですね。 チェックする作業も楽しみの一つになってくると思いますよ。 あとはFBに活用されて下さい。

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  9. 加藤さん、こんばんは。

    先日、移転後のアイテンドウデビューしてきました。
    老眼では品定めするには大変な展示方法だと思います。
    ネットで事前に調査してから訪問した方が良いですね。

    高周波チョークコイルセットって有ったんですね。
    昔、VXO回路に凝っていた頃に適当な値の品を買いだめした事が
    ありました。 使い切った記憶が無いのですが見当たりません。
    また、そろえてみようかな。    1/4W型、、、(笑)

    実は今週末も関東出張があります。もう花見が出来るそうですね。

    では、、

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  10. JR8LJS 豊川さん、こんばんは。 一気に冬に逆戻りしてしまいましたね。北風が寒いです。 上越の山々は雪が降ってます。

    コメント有り難うございます。
    > 老眼では品定めするには大変な展示方法だ・・・
    そうなんです。目が良い人でも細かいので大変だと思います。こんど首からヒモで拡大鏡を下げて行こうと思ってます。ww

    > 適当な値の品を買いだめした事がありました。
    私も・・・100μH、220μH、2.2mHとか飛びとびに買ってはあるのですが・・・大きめの縦型が多いです。

    > また、そろえてみようかな。
    このセットくらいの種類があるとかなり便利だと思いますが、同調回路やLPFなどに使うのはちょっとためらいます。 そんなに良いRFCじゃないので、手持ち在庫を整理して足りない所を補えば十だと思いますよ。

    > もう花見が出来るそうですね。
    今日の寒さで足踏み状態だと思いますが、木曜日あたりから急に気温上昇だそうです。週末ならお花見も可能かも。こちらは都内よりも1週間くらい遅い感じです。

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