結局、実際にVXOを作ってみることにした。セラロックのVXOで必要な周波数範囲を楽々カバーできそうに思えてきたのだ。
(VXO:Variable X-tal Oscillator=可変周波水晶発振器のこと。但しここでは水晶発振子ではなくセラミック発振子を使っている)
結果は上々、十分使えそうなものになった。
C-MOSのInverterを使った発振器で矩形波を得て後段の分周器に直結する目論見だ。 予定通り奇麗な矩形波が得られている。 VXOの要(かなめ)はVXOコイルだが既製品に最適なものはない。自分で巻くか既製コイルを改造するのが普通だ。 ここでは手持ちの中から改造しやすそうな20mHの可変インダクタを使った。大幅に巻き戻して適当なインダクタンスまで減じている。写真中央の赤い巻線のコイルがソレだ。新宿の喫茶店『談話室:滝沢』で『QRP懇親会』をやっていたころ、その席でSさんに頂いたものだったと思う。何年も掛かってやっと日の目を見た。(笑)
ポリバリコンはAM/FMラジオ用4連である。約9kHzの可変にはAM用2連の片セクションで十分だった。容量可変範囲は10〜275pFである。 その必要もないがVXOコイルのインダクタンスをもっと大きくすれば更に広く可変できる。 ただし無闇に広げると下端の周波数でトーンが濁る感じが出てくる。あまり欲張らない設計が無難なようだ。これは水晶発振子を使ったHF帯のVXOでも同じである。
発振段とBuffer段に使った余りのC-MOS Inverter(4つ)は適切に処理しておく。各入力ピンは全てアースし各出力ピンはオープンのままにする。(こんなことは常識だろうけど・・)
最終周波数136kHzの倍の272.000kHzにバリコンを合わせ評価してみた。 水晶発振子に比べ温度特性に劣るセラロックだが、室温で1時間ほど見て数Hzの漂動に留まるようだった。基板を箱に入れれば改善方向だからこれで十分な安定度だ。
セラロックVXOの可変範囲は相当広く取れることがわかったが、実用上必要な範囲に狭めている。 可変範囲の下端を270.000kHzに調整すると上端は279.040kHzになった。 これは分周して135.000〜139.520kHzとなり、HAMバンドの135.700〜137.800kHzが余裕でカバーできる。 むしろオフバンドに気を付けなくてはいけない。
シングルキャリヤのCWでもキーイングで帯域幅を持つ信号になるからバンドエッジから300Hz以上内に入った所でオンエアする。 オンエアの監視用に周波数カウンタを付けると安心できる。これには開発済みのAVRマイコン式カウンタがうってつけだ。精度を維持する為にカウンタの基準発振器にはせめて秋月の200円TCXO(注)くらいを奢ってやりたい。(注:残念ながら200円のTCXOは売り切れたようだ。追記:2010年4月30日=>参照リンク)
このVXO、製作の再現性はどうだろう。VXO回路は第二回で紹介した書籍『発振回路の設計と応用』にあったセラロックを使ったVCOを280kHzに合わせてアレンジしている。回路は本を参照してもらえば良いが、部品構成から見て再現性も悪くない筈だ。
VXOコイルの市販品はないが、AMトランジスタ・ラジオ用の部品が活用できるだろう。 インダクタンス可変型のコイルを使えばVXO範囲の調整に便利だ。 従って一番のポイントは写真のセラロックにあるだろう。 残念ながらネットサーチではCSB280Dの通販は発見できなかった。(CSBLA540Kと言う540kHzのセラロックならDigiKeyにある。4分周で使えるかもしれない。@75円〜)
CSB280Dは何年も前に秋葉原で買ったものだ。 少し前に店頭を覗いたらもう無いようだった。 こんなセラロックは特殊だから普通は置いてない。だから何処かに密かに気付かれずジャンク品が眠っている可能性もあると思う。そうだと良いのだが・・・。
昨今にわかに長波ブームのようになっていて136kHzに着目するHAMも多い。だが、アンテナを含めてHAM局構築の難しさが認識されてくれば急速に冷めてしまいそうだ。 136kHz帯の送・受信機を作るHAMは僅かかも知れない。 自作に役立つセラロックが出回ってくれたら活性化に役立つと思う。 ダイレクト・コンバージョン受信機への活用も見込める。それにVXOの実験は懐かしさが感じられて楽しいものだ。(笑)
新HAMバンド・136kHz帯の送信機用VXOはこれで良しとしよう。ダイレクト・コンバージョン(DC)受信機にも良さそうだ。2,200mバンドの実験用発振器としても役立つだろう。
定説通りセラロックVXOは広い周波数可変範囲があることがわかった。3〜5%の可変など容易いと言うことだ。 例えば455kHzのセラロックなら難なく20kHzを越えるVXOができる。従ってCSB455E/CRB455Eで作った世羅多フィルタにマッチしたBFOが同じセラロックで作れる訳だ。 そのBFOはC-MOS Inverterで発振させるのも良いが、矩形波の必要はないからFETやBJTで作れば良い。
発振器である以上、周波数安定度も気になるが、元々のセラロック発振器なみでVXO化による変化は感じられない。要するにVXO化しても水晶発振のように違いが表面化しないわけだ。セラロックは水晶に劣るが低い周波数のものは変動の絶対値も小さいから問題になるほどでない。
注:官報やJARLのバンドプランなどを見ると『135kHz帯』となっているが、世界的には『136kHz帯』と称する例が多いようだ。(136kHz帯のIARU標準バンドプランがwikipediaにある) なお、役所に逆らうつもりはないが、ここでは一応136kHz帯としている。このHAMバンドの指定周波数は「136.75kHz」である。
.。o○オーディオアンプ、トランジスタアンプはもちろん真空管アンプでさえ、136KHz帯でゲインがあるものが出来ますから送信機アイディアスケッチは妄想が膨らみますね。とりあえずワイヤレスマイク程度のものを作ってあれこれ実験してみたいと思っています。
返信削除加藤さん,こんばんは.しばらくROMばっかりで申し訳ありませんでした(^^;
返信削除136kHz帯用VXOの実験,興味深く見ておりました.
3.58MHzのセラロックVXOを26分周するというのもありかなと思っていますが,分周の方が面倒です.
#不良在庫化しているTC9122とか9198でやる手はありますけど(笑)
JF3HPN 西島さん、こんばんは。
返信削除さっそくのコメント有難うございます。
> 送信機アイディアスケッチは妄想が膨らみますね。
そうですね。 低周波と同じようなものですから、様々な方法が考えられると思います。 ハードオフで昔のコンポを買って来て・・・とか。(笑)
> とりあえずワイヤレスマイク程度のものを・・・
まずは、微弱電波の範囲で感触を掴んでみるのも良さそうですね。 受信系の検討にも実際に信号があると良さそうです。
この先も続きますので宜しく.
JH5ESM 武藤さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 3.58MHzのセラロックVXOを26分周・・・・
なるほど・・137.675kHzあたりから下へですね! 丁度良さそうな周波数になりますね。 偶数分周なのも良いですね。 セラロックでしたら周波数可変範囲も同じように十分得られるでしょう。 CD4520Bの半分に帰還をかけて13分周器にしたあと、もう半分で2分周すると少ないデバイスで行けそうですが・・・。『13』のデコードが厄介でしょうか。(笑)
> TC9122とか9198でやる手はありますけど・・
固定分周に使うのはちょっと勿体ない感じもしますが、死蔵されるよりも良いかも。部品は使ってこそ価値がありますからね。hi hi
QRPpでも良いので、何とか波を出せたら良いですね。回路が固まって来たら変更申請を出そうと思っております。
20mH可変コイル懐かしいですね。私のところにもまだたくさん眠っていると思います。もともとFCZさんの大掃除ミーティングで袋でもらってきたものだったかと。
返信削除JG1EAD 仙波さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> まだたくさん眠っていると思います。
その節は、お裾分け頂き有難うございました。 20mHものインダクタンスだと、かえって使い道がないものです。このVXOでやっと使うことが出来ました。(笑)
> もともとFCZさんの大掃除ミーティングで・・・
そうでしたか。。。 元々の用途は何だったのでしょうね。 FMのマルチプレックス回路用とか・・・でしょうか??
こんにちは。
返信削除私も455kHzのセラロックのVXOを試していました。
40mHのコイルを巻き戻していますが、写真のにそっくり・・
同じかも・・入手先はさっぱり記憶にありません。
簡単に445kHz以下までに下がるのですが、電源を入れ直すと500~700kHzにジャンプしたりして不安定です。
もう少し実験をするつもりです。
JE1UCI 冨川さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 私も455kHzのセラロックのVXOを試して・・・
冨川さんもでしたか。 受信機のBFO用でしょうか?(笑)
> 40mHのコイルを・・・写真のにそっくり・・
40mHのモノもあるようですね。 この20mHでさえ、髪の毛より細い線が1,000回以上も巻いてあります。40mHは一段と細い線がさらに沢山巻いてありそうですね。
> 電源を入れ直すと500~700kHzにジャンプ・・
回路定数やVXOコイルの関係もありそうですが振動子を交換すると良くなることも・・・。 既にお試しでしょうねえ。旨く行くことをお祈りします。
おはようございます。
返信削除VXOとは関係ない話なのですが、総務省の電波利用ホームページに「135kHz帯を使用するアマチュア局に係る等価等方輻射電力について」 という資料があります。
そのページの別紙をみますと我が家では送信出力は5W以下しか出せないことになりますが、V/UHFならともかく地上高があがるとそんなに効率がよくなるものでしょうか?
http://www.tele.soumu.go.jp/j/material/pdf/135tai.pdf
アンテナエレメントとしてはどんなにがんばっても建物と平行に10mぐらいしか張れないのですが。Hi
.。o○当該ファイルに記載されている事項を抜粋しますと下記のようになります。フォーマットがめちゃくちゃになりますので見にくいでしょうがご勘弁を。これを眺めている限り、当局では、100W程度の送信機出力は許されると読めるのですが?
返信削除1.垂直型空中線(モノポールアンテナ、垂直ダイポールアンテナ等)
最大地上高H【m】が以下に掲げる値以下である場合
空中線電力:P0 最大地上高H【m】(※1)
5W 以下 90m
5W 超10W 以下 63m
10W 超20W 以下 45m
20W 超50W 以下 28m
50W 超100W 以下 20m
100W 超200W 以下 14m
○水平成分を持つ空中線(逆L型アンテナ、傘型アンテナ、ループアンテナ等)
(EIRP が1W 以下となる条件)
最大地上高H【m】が以下に掲げる値以下である場合
空中線電力:P0 最大地上高H【m】(※2)
H/2<L≦2Hの場合 2H<Lの場合
5W 以下 63m 45m
5W 超10W 以下 45m 31m
10W超20W 以下 31m 22m
20W超50W 以下 20m 14m
50W超100W以下 14m 10m
100W超200W以下 10m 7m
.。o○訂正いたします。
返信削除下記の部分を読み飛ばしており、ここ数十年高層建築に住んだことがないので、はなから建物の地上高を考えていませんでした。がしかし計算式の前提条件を眺めていますと、それはないですよねえ、と思えるパラメータがありますから、実際に輻射される出力はずっとずっと少ないと思われます。
(ここで、Hには建物等の高さを含む(エレメントの最大地上高が建物等の高さ以下の場合
は、エレメントの最大地上高とする。)。また、給電点から多方向に水平方向成分を持つ場合に
は、Lは最も遠い方向への距離とする。以下同じ。)
JE6LVE 高橋さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 我が家では送信出力は5W以下しか出せないことに・・
高さのある建造物に一端を固定した形式のアンテナを想定した基準なのでしょうね。 確かに、100mもあるビルから長ーいワイヤーを引き下ろしてやればかなり飛びそうです。(笑)
高橋さんが想定されているケースは、地上高はあっても、張れるアンテナの長さは短いと言うことなのですよね。 高い建物+長いアンテナの組み合わせではないので、実際の構造を示してやれば、それで制限される事にはならないと思います。 要は、輻射効率の良いアンテナではないことを示せれば良いと思います。
想定されたアンテナでは、輻射効率1%でさえも無理でしょう。波長2,200mに対して短過ぎますから0.1〜0.2%かも知れません。hi
JF3HPN 西島さん、こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 当局では、100W程度の送信機出力は許される・・
ERP=1Wの指針がないと混乱するので、作った指針だと思うのですが、非常に厳しいと思います。 たぶん、これに従ったアンテナではERP=0.1Wではないかと思われます。特に長さが短い方では顕著な筈です。 拙宅では傾斜型でL=25mくらいのモノポールになると思うのですが波長に比べて0.01λしかないです。ローディングコイルは大きなインダクタンスが必要です。巻き数が多くなるので、Qも大きく出来ないし、アースの接地抵抗もそれほど下がらない、カウンターポイズも短か過ぎては効果的でない・・など、効率はどうやっても1%にさえ届かないでしょう。
こんばんは。
返信削除>波長に比べて0.01λしかないです
私も深夜に釣り竿とリールを使って下までワイヤーをのばしたら100mぐらいは何とかなると思ったのですがLが100mになったところで0.04λですから大差ないような気がしますね。^^
送信機で大電力を出すとローディングコイルの耐圧などの問題が出てきそうですし都市部でERPを1W出すのは至難の業ですね
JE6LVE 高橋さん、再度こんばんは。
返信削除コメント有難うございます。
> 100mになったところで0.04λですから・・・・
やはり100m以上あれば有利なのは間違いないと思います。正しくは計算しないといけませんが、数10mではアンテナ自身の輻射インピーダンスZrは0.1Ωもない筈です。 長くなれば多少なりともZrは大きくなるので、他のLoss成分・・・接地抵抗やローディング・コイルの等価高周波抵抗成分などとの比で効いて有利になります。 それらは少なく見ても合計30Ωくらいは有って、かなり頑張っても10Ω以下にはなりませんからね。
アンテナに100W送ったら1Wくらい簡単に電波として輻射されると思っていたら、失望するでしょう。HF帯のセンスは通用しません。0.1 Wでさえ容易ではないと思っています。やはり長いアンテナは絶対に有利です。(笑)