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2019年9月14日土曜日

【回路】Regenerative Receivers (6)

再生式受信機・その6 クリコン+再生検波式
 【クリコン+再生検波式受信機
 再生式受信機をテーマにした第6回目です。 前回(←リンク)はクリスタル・コンバータ(クリコン)をテストしました。

 今回はクリコンで低い周波数に変換された受信信号を再生検波回路で復調する部分から後を作ります。 再生検波回路で復調された音声信号はそのあと十分に低周波増幅されます。クリコン+再生検波式の受信機になります。 単純な再生式受信機と比べて複雑そうに感じるかも知れませんが、実際はかなりシンプルです。

 毎回同じような写真ですが、これはクリコン+再生検波式で製作した7MHz帯の受信機です。ブレッドボードの試作状態ですが成績しだいで本製作へ進みたいと思っています。
 使用デバイスはDual-Gate MOS-FETが二つと低集積度のICが一つです。アクティブ素子はこの三つだけです。 電源電圧は9Vで設計しました。MOS-FETはあまり低い電源電圧に向かないからです。ただし6Vくらいまで下げてもまずまず聞こえます。 なお、再生式受信機と言いつつ、スーパ・ヘテロダイン式でもありますからクリコン部分の水晶発振が停止してしまうとまったく聞こえなくなります。この点は注意すべきところです。

                   ☆

 SSBも受信できる性能の再生式受信機として低い周波数で再生検波を行なう形式で試作します。セラミック発振子を使ったタイプと比較してみましょう。 QSO(無線交信)に使えそうな「実用的な性能」がとりあえずの目標といったところでしょうか。 SSBが聞こえる性能を目指してはいますがSSBトランシーバのような用途は意図していません。SSBの送信部は簡単ではないからです。また、再生式受信機はトランシーブ操作には向きません。 従ってCWでの交信に実用性があればまずはゴールだと思っています。周波数安定度の観点からSSBが受信可能ならCWにも十分なはずですから。 以下、引き続きシンプルな(しかし実用性能の)受信機がテーマですがもしご興味でもあればご覧ください。
 
 【クリコン+再生検波式受信機・回路図
 3つの部分から構成されています。 シンプルですが受信機に必要な機能は備えています。 以下、アンテナ側から順を追って行きます。

 アンテナから入った信号は可変抵抗器:VRを使った簡易なアッテネータを通ったあと、7MHzの同調回路に加わります。 7MHz帯の入力信号は2ゲートMOS-FETの3SK35GRで周波数変換されます。周波数変換のための局部発振は5.12MHzの水晶発振器です。 7MHzの入力信号は低い周波数へ周波数変換されます。 7MHzのHAM Bandは7.0〜7.2MHzの200kHzあって、1.88〜2.18MHzへと周波数変換されることになります。 第2ゲートのバイアスはVR2で可変できます。変換ゲインが十分得られるポイントにセットします。乾電池を電源にする場合、電源電圧が6V程度に下がっても発振停止しないことも調整の条件です。 一旦セットすれば頻繁な再調整は不要なので固定抵抗に置き換えて支障ありません。ここまでは前回のBlog(←リンク)で検討した部分です。

 周波数変換された信号は検波コイル:T2と小容量で結合されます。 再生検波回路もDual-Gate MOS-FETの3SK35GRを使っています。この再生検波回路はRCA社のアプリケーション・ノートが元になっています。(後述) RCAの資料では3N187というMOS-FETになっていました。(3N187は軍用・工業用で、民生用の40673と同じ特性) 3SK35GRを使いましたが規格を比較して大差はないようです。 回路定数も特に変える必要を感じないため基本的に資料を踏襲しています。
 ハートレー型発振器と等価な再生検波回路です。テストしてみるとスムースな再生調整が可能で感度的にも良好でした。 なお、検波コイルはタップ式ではなく二次コイル式になっています。 このようにすると帰還量の加減が連続的にできるようになります。この工夫はJA1FG梶井OM(故人)が執筆された古いCQ誌の記事を参考にしました。 後ほどコイルの製作方法とともに詳しいデータがあります。 このコイルの構造はこの受信機のキーポイントの一つとも言える重要な部分です。

 検波で得られた低周波信号は音量調整のVRを通ったあと低周波増幅されます。 今回はスピーカは目的とせず、セラミック(またはクリスタル)・イヤフォンを鳴らすようにしてみました。 従って単純な電圧増幅だけで済むため増幅素子にシンプルなICを使いました。 LA3020は三洋電機の旧式な2段増幅用ICです。 いつごろ買ったか忘れてしまいましたが、通販で買ったバーゲン品の残りです。たぶん入手は困難なので後ほど代替の3石アンプがあります。そちらに換える方がローノイズでFBです。

 低周波増幅された受信信号はセラミック・イヤフォンで音にします。 なお、セラミック・イヤフォンはインピーダンスが高いためトランスによる昇圧ができます。 具体的には山水のST-30を使うと約6dBの感度アップになります。その様子も後ほど示しました。

 以上ですべてです。 スピーカを鳴らす必要がないので低周波のパワー・アンプは不要です。そのため消費電流はだいぶ少なくて5〜6mAで済みました。 006P型乾電池でかなり長く受信できます。

 以下、各部の様子を写真とともに見て行きましょう。

 【クリスタル・コンバータ部
 クリコン部は前回のBlog(←リンク)と基本的に同じです。

 3SK35GRの第1ゲートの部分を使ってコルピッツ型と等価の水晶発振回路を構成しています。 水晶発振子はHC-49/U型で周波数は5.12MHz(基本波)です。 発振が弱すぎると変換ゲインが低下し、強すぎればスプリアス特性が悪化します。ちょうど良い範囲があるので第2ゲートのバイアス電圧で発振状態をコントロールします。 変換すべき信号は第2ゲートに加えられます。 なお、アンテナコイルはスペースの都合で10K型ボビンに巻いたものを使いました。 前回のBlogのようなトロイダルコイルに巻いたものでももちろんOKです。

 ドレイン側は抵抗負荷です。一般的なクリコンでは同調回路を入れて必要信号のみ取り出すようにします。 ここでは次段が再生検波器なので検波コイルの部分に十分な選択度があります。抵抗負荷で支障ありません。 抵抗負荷にするとゲインの点ではやや損ですが、再生式受信機では感度のほとんどが検波回路で決まるため、クリコン部分のゲインはそれほど重要ではありません。7.0〜7.2MHzのHAMバンドは1.88〜2.18MHzに周波数変換されます。SSBのサイドバンド転換はありません。

 【再生検波部
 1.88〜2.18MHzを受信(復調)する再生検波回路です。 再生検波回路にもDual-Gate MOS-FET(2ゲートMOS型電界効果トランジスタ)を使いました。 この回路はJA1FGご自身が実際に製作され、再生検波回路として優れているとして推奨されたものです。(興味があればCQ Hamradio 1977年8月号 pp232〜239を参照)

  オリジナルは次項で説明の米国RCA社の半導体アプリケーションノートに掲載された回路です。 基本的に同じ回路ですが、検波コイルの部分に梶井OM独自の工夫が行なわれています。 再生検波回路はFETのソースを検波コイルのタップに接続するハートレー型発振器と等価なものです。普通の回路ではコイルのタップ位置を変えて最良の検波状態が得られるように加減します。従ってタップ位置の調整はかなり厄介でした。

 JA1FGの回路では検波コイルに別の帰還用巻線を巻いてタップを引き出す代わりとします。 その帰還用巻線の結合度はコアの出し入れで連続的に可変できるようになっています。 その結果、たいへん面倒なタップ位置のカットアンドトライが不要になります。
 やってみますと、実際には帰還用巻線は巻き数の加減が必要でした。多少の試行錯誤は必要です。 しかしある程度良さそうな巻き数が見つかれば後の加減はスムースでした。コイルの巻き数や構造については後ほど詳しい図面があります。

重要:結合度調整用コアの働きについて
結合の加減に使う「コア」の位置によって巻線間の結合度が変わります。結合度が変わることで正帰還の大きさが変わって再生の掛かり方が加減されるわけです。 帰還用巻線と同調コイルの両方にまたがるような位置にコアがあると結合は最も密になります。 ただしコアを動かして結合度を変えると同調コイルのインダクタンスも変わってしまいます。 当然ですが受信周波数範囲も変わります。 その同調コイルのインダクタンス変化は反対側にあるもう一つのコアによって補正できます。 このように結合度の加減は受信周波数範囲の調整とともに行なうことになります。 二つのコアを持ったコイルを調整することになりますが、それほどクリチカルではないので難しくはありませんでした。

参考:使用するMOS-FETについて
実験では3SK35GRを使いました。比較のため3SK45B、3SK65、3N201Bなど幾つか交換して確認しています。 再生が始まるバイアス電圧に幾らか違いが見られましたが、それを除けば検波器としての性能に違いは見られません。他のFETでも代替できるでしょう。

 【RCAの再生検波回路例
 JA1FG梶井OMが参照したRCAのアプリケーションとはどんなものなのか興味があったので調べてみました。

 たどり着いたのは左図のような回路と説明です。 Dual-Gate MOS-FETのアナログ的なアプリケーションを全般に扱う記事の一部です。 その中で左図のような短い説明と簡単な回路図だけが該当の箇所でした。 なお、説明文には一部ほかの回路図の説明と取り違えているような記述があるようですね。

 具体的な成績などは何も書いてありませんが、JA1FGの記事によれば真空管を使った再生検波回路と同様の好成績が得られたとあります。 実はこの検波回路は25年くらい前にテストしたことがありました。 負荷抵抗を低周波チョークに替えてゲインを欲張る設計に変更して試しました。 その結果、かなり高感度が得られたのですが同時に低周波発振にも悩まされた記憶があります。 今回はオリジナル通りに抵抗負荷でやってみましたが後続する低周波増幅のゲインをその分だけアップすれば同様の感度が得られます。あえて低周波チョークを使う必要はなかったようですね。

参考:RCAのアプリケーションノートが必要なお方はご連絡を。あまり綺麗ではありませんがPDF版のコピーがあります。なかなか面白いアプリケーションが載っています。

 【検波コイルの製作図
 1.88〜2.18MHzを受信するためのコイルを巻きます。 JA1FGの記事には記述のない周波数ですから自身で仕様を決める必要がありました。 同調コイル側のインダクタンスは40μH(リアクタンスは約500Ω)くらいが適当と考えて製作します。(インダクタンスはもっと大きくても良いのですが巻き数もそれだけ増えます)

 巻き数は同調コイル側が100回です。 帰還用の巻線は20回巻きます。 図のように13K型コイルの巻き枠には12段の巻き溝があります。 下側(足ピンの側)の10段の溝に各段に10回ずつ合計で100回巻きます。 ほかの回路への用途も考えて、途中の50回目にタップを設けてありますが、必ずしも必要としないので省いて良いです。
 巻き方向は統一しておけばどうでも良いのですが、ここではコイルを上側から見て反時計回りになるよう巻いて行きました。 上側に2段の溝が残るはずです。その2段に各段10回ずつ計20回巻きます。  詳しくは図も参照を。巻き始めの位置と巻き方向を違えると再生が起こりません。
 巻線には直径0.16mmのポリウレタン電線(記号:UEW)を使いました。 巻き数が多いので幾らか大変ですが製作は難しくないです。周波数が低いのでたくさん巻くのもやむを得ませんね。hi

 設計の趣旨から、上下に二つのコアがある東光の13K型ボビンが適当です。 現在はRF回路でもコイルレスが進んでいるので入手は難しいかもしれません。 昔からジャンク部品を扱っているようなショップに売れ残っている可能性があります。 ほかに455kHzの真空管用IFTを巻き直す方法でも製作可能でしょう。 必ずしも形状や構造に拘る必要はありませんので、各自工夫して設計の趣旨にあったコイルを巻けば良いと思います。

 【東光 13Kコイルの構造
 写真左が完成状態です。  右はボビンとして活用した10.7MHzのIFTです。これは過去にジャンクで入手しておいたものです。信越電機商会だったかも知れませんが、もちろん今はもう売っていません。

 写真のようにボビンは13mm角のアルミケースに入っています。 下部のツメでシールドケースと固定されていますので、アルミケースの裾を少し持ち上げてやると簡単に外せます。 その後で既に巻かれている巻線をすべて除去してしまいます。 台座の部分に同調用のコンデンサが内蔵されているのでこれも除去します。

 巻き溝には高周波ニスが塗布してあるかもしれません。薄い刃物などで溝をキレイに掃除しておくのがスムースな巻線のコツです。少々手間はかかりますが事前の準備(お掃除)が肝心でした。

 【巻線の様子・途中
 同調コイル側の巻線を完了した状態です。 写真のように下側の10段に各段10回ずつ巻いて合計で100回巻きます。

 巻線はφ0.16mm/UEWですが巻き溝ちょうどくらいの太さです。 もう少し細い方が巻き易いかもしれません。 しかし慎重に行なえば難しくもないです。

 このあと上部2段の溝に帰還用のコイルを巻きます。 帰還用は各段に10回ずつ合計20回です。 巻き方の要領は同調コイル側に同じです。 引出し線を巻き溝サイドの縦溝に沿わせ台座方向へ持ってくると綺麗に作れます。 もし高周波ワニスがあれば塗布しておくと防湿になってFBです。 実験的にはそこまでしなくても良いと思いますが・・・。巻き終わったらシールドケースにもどして完成です。

参考:ジャンク屋を巡ったりローカルの自作好きに尋ねるなど、いろいろ努力しても13Kコイル(または類似品)が手に入らないようならご相談を。少量でしたら対応できます。

 【低周波アンプ部
 同じICが手に入る可能性は低いので書いても無意味かもしれません。 写真は使用した低周波増幅用のICです。 中身はNPNトランジスタ2つと抵抗器5本だけという非常にプリミティブなICです。  おそらく1960年代の末ころ習作のようなICとして製造したものと思われます。

 上記の回路図にあるように内部は2段直結の簡単な低周波アンプです。 ほかのICで代替しても良いですし、スピーカを鳴らせるようLM386Nなどのアンプを使っても良いでしょう。 あえて探して使うようなデバイスではないことを強調しておきたいと思います。 「使う機会がないのも勿体ないから使ってみた」という程度の話ですので・・・。

 LA3020のアンプは、回路図の×印の部分をカットし、コンデンサ:C23(22μF)を点線のように接続するとオープンループとなってフルゲインの状態になります。(ゲイン:約54dB)  コンデンサ:C19は増幅帯域を制限するために標準値よりもかなり大きくしてあります。こうするとノイズカットになり聴感上かなり効果的でした。 集積度の低いICですがこうした低周波回路くらいなら活きる道もありそうです。

参考:LA3020はまだ余ってます。使ってみたいお方に差し上げますので連絡してください。骨董品のICはどんなものか試してみると面白いかも・・・。

 【昇圧トランスとセラミック・イヤフォン
 低周波増幅器(LA3020)の後にセラミック・イヤフォンを直結しても良く聞こえます。

 必ずしもトランスで昇圧する必要はないのですが、消費電流を増やすこともなく2倍の感度にすることができます。 山水のST-30型トランスを入れると音量アップできます。 手持ちがあったらトランスで昇圧を試してください。それだけで感度アップになります。

 セラミック・イヤフォンはインピーダンスが高く、端子間に掛かる「低周波電圧」で音量が決まる特性のためトランスでの昇圧が有効なわけです。 ただし、トランスには周波数特性が付き物ですからHi-Fi用途には向きせん。しかし再生式受信機には悪くないです。

 【代替の3石低周波アンプ・回路図
 LA3020の代替に使う低周波増幅器の例です。ICと同じように2石で設計しても良いのですが1つ足しました。 トランジスタは安価ですから、3石にすると出力インピーダンスが下げられるなど扱い易くなります。 再生式受信機専用というわけではなく、多目的に使える低周波アンプです。

 試作にはBlogで紹介済み(←リンク)の中国製のトランジスタ、C1815GRを使いました。もちろん東芝の2SC1815GRでもOKです。 組み立てたらテスト端子:TP1の電圧を確認します。GND間で測って4.5±0.5Vの範囲にあればそれ以上の調整は不要です。 もし範囲を外れているようならR7:1.1MΩを加減します。  TP1の電圧が4.5Vより高いときはR7を大きくします。4.5Vよりも低いときはR7を小さくしてやります。こうした調整を行なえば2SC1815Yでも大丈夫です。直流増幅率:hFEが200〜400の低周波小信号用トランジスタならほとんどのものが使えます。

 周波数特性はC2:100pFで加減できます。 現状の100pFだと再生式受信機には必要以上に高域が伸びています。-3dBが約25kHzなので伸びすぎでしょう。従って100pFよりもずっと大きくした方が良いです。耳で聞きながら幾つか試します。  逆にC7を33pFくらいにすればHi-Fi用にも使えるほど伸びます。位相補償の意味もあるのでゼロにはしない方が無難です。

 回路図の状態でゲインは約100倍(40dB)になっています。R8(現状36kΩ)を大きくするとゲインをアップできます。R8を取ってしまうとオープンループになり、約1,600倍(64dB)のゲインとなります。これがこのアンプの最大ゲインです。 必要に応じてゲインを加減して使います。

3石低周波アンプ
 上記の3石アンプを試作している様子です。 ICを使うよりも部品は増えますが、回路自体が簡単なので作るのは容易です。  トランジスタがローノイズなので旧式のICて作るよりもずっとローノイズなアンプになりました。

 受信機のほか送信機のマイクアンプ回路のような用途にも活用できます。 なお、600ΩのヘッドフォンをドライブするときはR6:1.5kΩを470Ωくらいまで小さくしトランジスタ:Q3の電流を増やしてやります。 また、8Ωのへッドフォンは直接ドライブできないので1kΩ:8Ωくらいの低周波トランスを介して接続します。

                  ☆

 受信成績を書き忘れていました。(笑) 作ったら何となく満足してしまったからです。 感度的にはセラミック発振子を使った回路と同程度でした。 低周波アンプのゲインをもう少しアップすると良さそうでしたが、LA3020ではオープンループでも54dB程度が限界でした。3石アンプの方がその点でも有利でしょう。 しかしかなり良く聞こえるのでなかなか使えそうな再生式受信機です。 バリコンの回転角に対する周波数の伸び方は単なるLC同調回路ですから素直でした。 セラミック発振子のVXO形式ではバリコンの容量が大きい方で周波数の伸びが縮んでしまうといった欠点があります。 周波数安定度は周波数が低いので良好です。周波数の引っ張り(Pull-in)現象も周波数が低いことが幸いするようで許容範囲にありました。これは目論見通りでした。従ってSSBも良く聞こえます。CW用としても不満はありません。 以上のような感じです。

 作り方しだいで十分に実用になる再生式受信機が作れることがわかりました。 感度、周波数安定度ともにまずまずと言ったところです。 選択度は再生を強めて発振状態で使うCWの受信なら上々です。正帰還でQが高くなって良い選択度になっています。 もちろんシングル・シグナルではないので発振の上下の局が聞こえるのはやむを得ません。 前にも書きましたが、弱い信号は小さな音で、逆に強い信号は大きく聞こえます。 AGC(自動利得調整)がないのでやむを得ませんが、弱い局の受信中に不意に強い局にオンエアされると耐えられない音量になることがあります。 爆音を防ぎ耳を保護する意味からもピーク・リミッタを付加すべきだと感じました。 低周波のバンドパス・フィルタがあれば快適になりますが必須ではないように思います。 低周波増幅器の周波数帯域を制限しておけばそれだけでもかなり効果的でした。

 ブレッドボードを脱却して製作するのはクリコン+再生検波式で行こうと思います。ユニット交換式に作っておけば取り替えて楽しむこともできるかもしれません。製作時に構造を含めて考えておきましょう。 問題は周波数の読み取りにありそうです。なんなら周測計をお供に受信しても面白そうです。

まだ真空管式などやってみたいことは幾つかあるのですが、ずいぶん長くなったのでとりあえずまとめの意味で「おわり」にしておきます。再生式受信機なんてとっくにオワコンかと思ってましたが、なかなか奥深かったですね。 de JA9TTT/1

(再生式受信機のBlogを初回から見る)←リンク

(おわり)fm

10 件のコメント:

  1. 加藤さんこんばんは。
    一連の再生受信機の記事、興味深く拝見させて頂きました。

    昔はFM放送帯やエアバンドを聞くために超再生を多用していましたが、クリコン方式だとフロントエンドとクリコン部分までを交換すればいろいろなバンドに応用が利きますね。
    SI5351AとSA612あたりを組み合わせれば430MHz帯でも受信出来るかも(笑

    ディスコンのパーツを使用することには色々批判もあるかと思いますが、再生受信機では古いパーツの方が似合いますね。Hi

    完成品の公開も楽しみにしています。

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  2. JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、こんばんは。 秋葉に出掛けてましたが思ったよりも涼しくなかったです。(笑)

    早速のコメントありがとうございます。
    > 興味深く拝見させて頂きました。
    どうも有難うございます。 たぶん役立つことはないと思うので暇つぶし程度だったと思います。 真面目に扱ったことは無かったので自身でも意外に面白かったです。hi

    > フロントエンドとクリコン部分までを交換すれば・・・・
    HF帯でもハイバンドになるといきなり再生式受信機は安定度が良くないので実用的とは言えません。クリコンで周波数を落とせばだいぶ使い物になるのかも。

    > ディスコンのパーツを使用することには・・・
    雑誌の記事でそれをやると旨くないですが、単なる個人のBlogですから勘弁してもらえると思ってます。一応、代替手段は用意しているつもりなので「全く同じもの」に拘らなければ大丈夫でしょう。あとは工夫して頂きたいと思ってます。

    > 再生受信機では古いパーツの方が・・・
    古臭い受信機なので、実験していて自然にそんな感じの製作になってしまうのでした。(爆)

    > 完成品の公開も楽しみにしています。
    どこまで作ったら完成品か良くわからないのですが、部品集めを始めています。

    返信削除
  3. 加藤さん、秋葉原懇親会お付き合いありがとうございます。
    16年前作った6U8二本の再生式1V2で末席を汚しましたが、帰宅後、高校生の時「ラットパトロール」で粗大ゴミのテレビから抜いた6U8を見たら「マツダ」というブランドの球でした。ご承知の様にに「マツダ」は東芝の電球、真空管のブランド名でした。名前の由来はペルシャ拝火教の光の神「アスラ・マツダ」で確かフランスの真空管メーカーもMAZDAブランドがあったと思います。「アスラ・マツダ」がインドに渡ると酷い降格人事(神事)に会い、修羅場の由来となる阿修羅になります。同名の自動車メーカの名前の語源だそうです。レトロな部品に相応しい古代ロマンのブランドですね。
    さて、周波数変換式再生受信機は真打登場ですね。まだまだ深堀できるテーマですし、シャンク箱に眠ったレトロ分品を生かす制作にはいい回路方式ですね。コイルの自作も可能だし、簡単で高感度な受信が作れる優れた回路と思います。

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  4. JR1QJO 矢部さん、こんにちは。 昨日はFBなアイボール有難うございます。 久しぶりに皆さんと歓談でき、楽しかったです。

    いつもコメント有難うございます。
    > 16年前作った6U8二本の再生式1V2で・・・
    FBな自作機をご持参いただき、どうも有難うございます。 会場が地階なので電波の入管が悪くちょっと残念でした。 しっかりした外部アンテナでワッチしてみたかったです。 再生のかかり具合はとてもスムースそうでしたので良く聞こえるでしょうね。 2kΩのマグネチックヘッドフォンも良い感じでした。 コンパクトに製作されていたのでびっくりしました。hi

    > 6U8を見たら「マツダ」というブランドの球でした
    東芝はずいぶん遅くまでマツダブランドで電球や真空管を製造していましたね。拙宅にもマツダが転がっていますよ。ただし「カンマツ」はいただけませんが。(爆)

    > 古代ロマンのブランドですね。
    元々はGE社(例のエジソンの会社ですよね)が開発したタングステン・フィラメントで画期的に明るい電球を他社にライセンスした際に「MAZDA LAMP」を名乗るよう要求したんだそうです。お書きのようにMAZDAは光の神だからですよね。 東芝は契約に従って電球をマツダランプで売っていたのでしょうね。真空管は電球より後発ですから知名度の高い「マツダ」の名称を真空管にも冠したようです。 自動車のMAZDAはこの話とは無関係とのことです。hi

    > シャンク箱に眠ったレトロ分品を生かす制作にはいい回路方式ですね。
    回路が簡単で部品数も少ないためアマチュアが実験するにはもってこいのテーマでしょうね。作って試す手作りHAMには恰好のテーマだと思います。

    > 簡単で高感度な受信が作れる優れた回路と思います。
    わずかなデバイスと少ない消費電力で実用的感度が得られる受信機が「手作り」できるのですから再生式受信機は侮れませんね。 デジタルモードへの対応は難しそうですが、CWがメインのQRPerにはFBな受信機だと思います。

    ところで、このところ7MHz以上のバンドはコンディションが悪いのが残念です。

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  5. 13Kコイルは、信越の時代だと思います。いつか使おうと数個はあったはずですが見あたりません。この頃から、コイルは自分で巻くものと信じてます。当時、東光のモノバンドコイルが100円ちょっとだったと思いますが、中学生にはとても高価でした。空芯で巻けばタダなのにと。コア入り、ケース入りの素晴らしさはその後知ることになるのですが、その時は分からず。

    同様にアンテナ(ダイポール)も自作するものと信じています。最近はアパマン用と称して、色々な製品があるのですが、一度自分でワイヤーアンテナを体験するといいのになぁ、と思ってます。そこから、楽しい世界が待ってるのになぁ。製品では飛ばなかったら、それで終わり。所詮、ダイポール以上にはならないけど、共振しているアンテナは馬鹿にできません。(話が逸れてしまいました、スミマセン)

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  6. JK1LSE 本田さん、おはようございます。 先日はFBなアイボールありがとうございました。 今日も晴天で夏のような雲が・・・。暑くなりそうです。w

    いつもコメントありがとうございます。
    > 13Kコイルは、信越の時代だと思います。
    昔買ったものはメモでも残っていないとだんだん出所不明になってしまいます。 10Kコイルで便利さを感じたのでもっと巻けそうな13Kコイルも買っておいたように思います。hi

    > 東光のモノバンドコイルが100円ちょっとだったと・・・
    小遣いが少ない頃でしたので既製品のコイルは高く感じましたねえ! 信越の10Kコイルは100個で1500円だったと思います。自分で巻く手間はありましたが安く上がるのが魅力でした。コイル巻きに興味を持ったきっかけでした。

    > コア入り、ケース入りの素晴らしさは・・・
    特に10Kコアは閉磁構造に近いため、他のコイルとの干渉が少なくてとてもFBでした。巻きミゾの構造なので空芯コイルよりずっと巻き易いし・・。

    > アンテナ(ダイポール)も自作するものと信じています。
    ワイヤー系のアンテナはできたら自作で行こうと思っています。 買ってしまうと手間いらずですが具合が悪くても改善の余地のないものが多いようです。 手軽さ優先なのかもしれませんが、作るための情報も少なくなっているんでしょうか?

    > 共振しているアンテナは馬鹿にできません。
    同じ長さのエレメントでも、ローディングコイルで共振させた状態と、オートチューナで無理に載せた状態では非常に違いますね。 オートチューナを使うにしても共振させた上で利用しないとSWRは低いのに飛ばない・・・となってしまいます。 このあたりが初心者の頃にはなかなかわかりませんでした。hi

    工作や無線・電気の範囲なら話題は何でも結構です。遠慮せずお願いします。(笑)

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  7. 加藤さん、ご無沙汰しております。
    ネットを彷徨っていたらこんな資料を見つけました。
    通信型受信機の疑問に答える
    http://fomalhautpsa.sakura.ne.jp/Radio/radio-gijyutu/comm-radio-QA.pdf
    アマチュア無線界のレジェンドが集まって話している内容ですが、読んで面白かったです。
    梶井OMの1-V-1がどんなものか見てみたい気がします。

    返信削除
  8. JR1KDA 岩崎さん、こんにちは。 このところ急に寒くなりましたねえ。 お変わりありませんか?

    いつもコメント有難うございます。
    > こんな資料を見つけました。
    面白い資料に遭遇されましたね。(笑) 実は、だいぶ前に私も読んでおります。1953年当時のHAMやBCLの状況が感じられる面白い資料だと思いました。 メーカーのお方はスーパ用のパーツを売るのに懸命だったでしょうから「1-V-1が優秀」・・・というOMのお話はあまり面白くなかったのかも知れませんね。(爆)

    > 梶井OMの1-V-1がどんなものか見てみたい気がします。
    確か、非常に古いCQ誌に紹介記事があったようですね。 そこに写真とレイアウト図があったようですが、それ以上はわかりません。 JARLの資料室で探せば情報があるかも(?) 私が持っている資料にもそれらしい簡単な構造図が載っています。 回路はどれも平凡なので、あとは構造なのでしょうね。

    実際に(半導体で)再生式の受信機を作ってみますと、だいたい高1中2RXくらいの受信成績はありそうに感じます。少なくともCWでしたらかなりの実用性があると思います。 ご紹介の資料の時代(昭和28年)はまだSSBのない時代でした。DXといえばCWが常識でしたから記事のような梶井OMのお話だったでしょう。 扱いの容易さとか、SSBが安定して確実に受信できるか・・・と言った条件を満たすには結局のところスーパ・ヘテロダインに軍配が上がったというのがその後の歴史だと思っています。 まあ、皆さん様々なご意見をお持ちでしょうけれど。(笑)

    FBな資料のご紹介有難うございました。

    返信削除
  9. 再生式受信機はテスターぐらいしか持っていない、自作初心者でも作れて、実用的な感度も取れる受信機だと思います。
    先の記事でも高1中2を作りながらシャックにテスト・オシレータもないという記述がありました。スーパーヘテロダイン受信機を作るならそれなりに測定機は必要だと思います。
    今は K2、QCX のように搭載しているマイコンで測定機機能を作り込み、それで自身の測定もできるようになって、自作に対する測定機の壁も下がって良い時代になったと思います。
    当時は梶井OMが言うように再生式受信機で高周波になれてスーパーヘテロダインにステップアップするのがブートストラップ的に受信機を作れて良かったのだろうと思います。
    前にバーニアダイアルを近所のOMさんから貰ったので、それを使って再生式受信機を作りたいという妄想はあるのですが、ずっと妄想のままできています。そのうち何とかしたいです。

    返信削除
  10. JR1KDA 岩崎さん、おはよう御座います。 今朝はあいにくの雨です。

    再度のコメントありがとうございます。
    > テスターぐらいしか持っていない、自作初心者でも作れ・・・
    部品数も少ないし、(その当時は)特殊な部品も必要なかったので初心者には作りやすかったです。科学教材社からキットも出ていたので入門向きの受信機でした。

    > 高1中2を作りながらシャックにテスト・オシレータもないという・・・
    測定器の問題は常にありましたね。 受信機に費用をかければ他にお金は回りません。 せめてディップメータを買うしかありませんでした。 これは今でも同じではないでしょうか。 Rigに対する要求が高度化した結果、無線機の自作のために高級な道具がたくさん必要になっています。それが良いことだとは思っていません。(ほとんどの人にとっては縁がないものですし、もし揃えても無駄な投資になるんでしょうから・・・)

    > 自作に対する測定機の壁も下がって良い時代になったと思います。
    キット自身で測定器の問題を自己解決できるように設計しておくというのは今後の方向なのでしょうね。マイコンのメモリにゆとりがあってチップの機能も高度化してきたのでかなり可能なのではないかと思います。あとは工夫でしょうね。

    > ブートストラップ的に受信機を作れて良かったのだろうと思います。
    今のHAMは最初から高度な性能のメーカー機をお持ちなので、自作品にも高度な性能・機能を求めがちです。しかし、いきなり高度なものは作れる筈もないでしょうから、よくできたキットをお求めになるのが自作っぽいHAM活動と言えるでしょうね。 まともなキットは動いて当たり前なので実験的な要素が多い純粋の自作とは別物だとは思いますけれど。(笑)

    > それを使って再生式受信機を作りたいという妄想はあるのですが・・・
    部品数も僅かですから、その気になれば割合簡単に自作できると思います。 作ってこそわかる何かがあるので面白いですよ。 まずは真空管で作るのか、半導体にするのか決めてから部品集めでも始めてはいかがでしょう? 再生式受信機を製作する程度の真空管なら手持ちがあります。必要なら差し上げますので遠慮なく言ってください。死蔵するよりもマシですので。(笑)

    再生式受信機はウイークエンドに製作を楽しむにはちょうど良い規模だと思います。ぜひお楽しみになってください。

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