2019年8月15日木曜日

【部品】Chinese Transistors

中国製トランジスタの話
 【アキバ名物10円トランジスタ
 秋葉原で手に入る安価なトランジスタの一つに中国製のS9018H(←リンク)があってこれは暫く前に紹介しています。 高周波用としてなかなか優秀なのですでに活用していますが、今回はそれとは違う汎用トランジスタの話です。

 言うまでもないかと思いますが「汎用トランジスタ」と言うのは特定の用途を定めず様々な目的に使える、ある意味で「万能なトランジスタ」のことです。世間で最もたくさん使われている『たいへんポピュラーなトランジスタ』と言えるでしょう。

 半世紀も前の話で恐縮ですが、写真は1967年ころのCQ Hamradio誌(’67年8月号)の特集記事です。 面白い記事ではありますが、今となっては内容そのものはほとんど意味を持たないでしょう。 ジャンクなお買い得トランジスタが秋葉原で売られていて、それらを実際に使ってみたら・・・と言う話です。詳しい中身はやめておきます。何しろ大昔の話ですから。hi ただ、このBlogを書くにあたって、記事が登場したころ興味深く読んだことが思い出されたのでした。

 1960年代といえば、まだまだ真空管も全盛期でした。しかしトランジスタ・ラジオは輸出の花形でしたからトランジスタ自体も珍しい存在ではなくなっていました。 ただし子供の小遣いで気軽に買えるほど安くもなかったのです。(CQ誌が180円で買えた時代)
 それに真空管と違って「使い方が悪いとイッパツでお釈迦になる!」と脅されているとあっては気軽に使える部品ではありませんでした。 だから正規に買えば100円から1,000円もするトランジスタが、わずか10円で買えるならその素性に興味津々だったのです。記事の話をもとに秋葉原を探査したのを思い出します。結局、筆者と同じような美味しい石には遭遇できませんでしたけれど・・・。

                   ☆

 つまらない昔話から始めてしまいましたが、いまでは10円トランジスタなど珍しくもありません。少しまとめて買えば単価10円以下のトランジスタなどゴロゴロしています。 つくづく電子工作を楽しむには有難い時代だと思ってしまいます。 再生式受信機の話も半ばですが、少々夏休みを頂いて「中国製のセカンドソース・トランジスタ」の雑談にしましょう。前回のBlogでちょっとだけ触れた話題です。ヒマつぶしにでもご覧ください。

 【中国製のセカンドソース・トランジスタ
 もうしばらく国産品も十分手に入ると思うのであえて中国製のセカンドソースに手を出す必要はないのかもしれません。 しかし、写真のようなリード線付きトランジスタの国産品は次々に生産終了しています。 なお、「セカンドソース」とは簡単に言ってしまうと他社製の完全な「互換品」のことです。

 写真は左からC1815GR、A1015GR、2N3904、2N3906です。どれも中国製のセカンドソース(互換品)です。2N3904と2N3906はあまり馴染みがないかもしれませんが、米国ではたいへんポピュラーなトランジスタで、日本に於ける2SC1815や2SA1015のような存在です。米QST誌など見ていると良く目にします。

 足つき部品はブレッドボードでの試作だけでなく、ちょっとした回路の手作りには未だなくてはならない存在でしょう。 いつまでホンモノが流通するのかわからない状況になってきたので、中国製のセカンドソースを評価しておくことにしました。 たまたま目にした中華通販で、ものすごく安く売られているのを目にしたからでもあります。hi

ポイントはどれくらい「オリジナル(=ホンモノ)」に近いのか?という一点のみです。 以下「2S」を除いた型番で書いてあるものは中国製セカンドソースの意味です。

◎結論を言ってしまうと:
(1)左のC1815GRとA1015GRは東芝製のオリジナル品によく似ており、ほぼ同等といえます。 2SC1815GRや2SA1015GRで設計された既存の回路にそのまま使ってもなんら支障はなく、得られる特性も違いはないでしょう。  バラツキの少なさではホンモノ以上に優秀でした。

(2)右の2つ、2N3904と2N3906は足ピンの並びこそ左のC1815GRやA1015GRとは違いますが、電気的な特性は非常に良く似ています。 むしろオリジナル(=米国製のホンモノ)の2N3904や2N3906よりも2SC1815や2SA1015に類似しています。 この点はQST誌など米国の雑誌記事の回路を中国製のセカンドソースで代用すると再現性が問題になるかもしれません。少し注意が必要でしょう。 しかし、汎用のNPNやPNPトランジスタとしては優秀ですから幅広く活用できるはずです。

参考:(C1815GRと2N3904の類似性)
 例えば高周波特性に影響のあるトランジション周波数:fTを実際に測定して比較してみました。コレクタ電流:Ic=1mAに於いてC1815GRはfT=113 MHz、2N3904の方は112MHzです。fTのピークはC1815GRが220MHz、2N3904も220MHzで、いずれもIc=15mAのときです。 またPNPトランジスタのA1015GRと2N3906もたいへん良く似た特性でした。 このようなことから、それぞれ同じシリコンのチップを使い足ピンの接続だけを変えたまったく同一特性のトランジスタのように思えます。

入手先:(中国製1円トランジスタの入手は?)
2019年の夏現在、これらのトランジスタは、いずれも100個単位で1ドル以下で手に入ります。購入先はAliexpressで送料無料のショップもあります。 Aliexpressへ入ったら「2SC1815GR」で検索してみます。 円換算で言えばいずれも単価は1円以下なので、これはもう昔のアキバ名物を超えてます。

トランジスタを山ほど使った製作がフトコロ具合を気にせず楽しめます。w

トラ技Jr誌・No.38で
 このC1815GRとA1015GRについて詳しく調べた結果を「トラ技Jr誌:No.38:2019年夏号」に掲載して頂くことができました。  評価が可能な電気的特性について、それぞれオリジナルとの比較で表やグラフで示してあります。 もし詳しい比較結果にご興味があればご覧いただけたら嬉しいです。

 トラ技Jr誌は「トランジスタ技術」誌とは別の小冊子です。おもに電気・電子系の学生さん先生がたを対象に工業高校や大学工学部などへ配布されているとのこと。 以前はトラ技誌の付録だった記憶もあるのですが現在はそうではありません。普通の書店に並ばないのは残念ですがCQ出版社のTech Villageで電子版および印刷版が入手できるそうです。なんだか雑誌のPRのようになっちゃいましたね。hi

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 再生式受信機の試作でも中国製のセカンドソースを試しています。 個性が現われやすい再生検波回路でもホンモノとの違いは感じられませんでした。 なかなか良くできているセカンドソースという印象です。 非常に安価なので、初めは「怪しい部品」を疑ったのですが杞憂にすぎなかったようです。 プロフェッショナルな視点で見たら長期的な寿命など未知数の部分もありますが、少なくとも我々が実験や製作を楽しむのでしたら心配なく使えます。性能も申し分なくバラツキも少ないため再現性の良い製作が期待できます。

 中国製の電子部品というだけで何となく怪しさを感じてしまいそうです。 事実、ネット通販ではニセモノをつかまされたという話もよく聞きます。 しかし、中国製の半導体が本質的に怪しい訳ではないでしょう。もしそうだとすれば巷に溢れている中国製電子機器が軒並み怪しことになります。現実には十分な実用性を持った製品が殆どです。

 ではなぜニセモノに騙されるのでしょうか? 恐らく、探してもどこにも残っていないような「いにしえのデバイス」をたとえ「高額を支払ってでも手に入れたい!」と思う人がいるからでしょう。 形状が似たヤスモノの型番を書き換えて高額で売りつけられれば業者はウハウハです。 素人にはどうせわかりっこないと思えばご希望の品をこしらえてホンモノのように送ってくるわけです。あとはクレームがこなければ丸儲けでしょうね。 私もチャレンジすることがあります。面倒ですが到着次第ただちに真贋を確認し、もしダメならクレームを入れて返金させています。(笑)

 紹介したC1815GRとA1015GRは型番を偽装したものではなく、初めから代替を目的に製造したセカンドソース品でしょう。まともなセカンドソースであるためにはオリジナルと違わぬ性能が要求されます。 うまくそれが実現されたトランジスタだと思いました。 中国製の評価は国産品の終息に備えるという意味もありますが、安くて良いものなら今から使っても損はないはずです。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

6 件のコメント:

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

加藤さん、おはようございます。
折角のお盆なのに西日本は台風で身動き取れません^^;

アキバの10円トランジスタ、当時の相場がわからないのですがトランジスタ自体の価格が高かったでしょうからかなり安かったのでしょうね。

>ニセモノをつかまされたという話も・・
僕も何度かつかまされています^^;

ディスコンになっていて日本国内では入手不可、もしくは非常に高価な半導体は危険ですね。
リニアアンプ等に使用されるパワーFETの類いはほとんど偽物だと言う話を聞きます。
中華パーツは届いたらまず最初に真贋判定が必要ですね(笑

>いずれも100個単位で1ドル以下で・・
2SC1815と2SA1015は十分在庫を持っているのでスルーしていたのですが、100個で送料込み70円ぐらいで買えるので話のネタにポチってしまいましたw
この金額だとトランジスタでコンピューターが作れますねw

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、こんにちは。 先ほどお盆のお花を買いに出かけたら帰りにザーッと降られました。 車から出られないので少し待機してやっと・・・。 時々強雨がきますね。

早速のコメント有難うございます。
> 当時の相場がわからないのですが・・・
子供のお小遣いが1000円/月くらいでしょうか? 2SB型の低周波小信号用が300円くらい、シリコンの・・・例えば2SC32などは1000円以上でしょうね。 ですから10円台の石はかなり安かったです。 他に基板に実装された状態のジャンクもあったので部品取りすれば安あがりでしたが、雑誌記事と同じ石はまずなくて代替の知識もなかったので手が出し難かったです。hi hi

> パワーFETの類いはほとんど偽物だと・・・
RFのパワーモノは中華でもそれなりのお値段ですから利益も大きいのでしょうね。 販売業者がニセ作りに励むのもわかります。 しかし騙されて泣き寝入りじゃ思う壺なので抗議しなくてはいけませんね。 真贋確認はけっこう厄介ですが高価なものほど必須だと思ってます。

> 100個で送料込み70円ぐらいで買える・・・
そうなんですよね。 少し円高傾向なのでますます激安になってきました。(爆)

> トランジスタでコンピューターが・・・
ハンダ付けが大変そうですが・・・。(爆)

C1815GRはスイッチングが遅いのでクロック上げられずのろいコンピュータになりそう。(爆)

JA6IRK@岩永 さんのコメント...

加藤さん、こんにちは。
台風を避けたわけではないのですが、たまたま取っていた切符で昨日のうちに東京へ避難してきました(笑)東京も風が強くなってきましたが!

トラ技jrでのセカンドソースのご紹介ありがとうございました。
だいぶ手持ちが減ってきてたので、紹介されていたショップから送料無料の最大個数を調達させていただきました。
これで、一生次の調達はないかと思います(爆)
中華製は本物か、偽物か疑わしいものかありますが、こうして評価紹介いただければ安心して購入できます。

TTT/hiro さんのコメント...

JA6IRK/1 岩永さん、こんにちは。 今日はお盆の法要に出かけていましたが、途中で雨がザーッと降って来たり、強い風音が聞こえるなど荒れ模様でしたね。 台風はまだ遠いのですが・・。

いつもコメント有難うございます。
> 送料無料の最大個数を調達させていただきました。
私はお試しの100個にしておきましたが、とどいて早々使いきれないと考えてお裾分けしました。 他にもトランジスタはたくさんあるので・・・(笑)

> 安心して購入できます。
良かったです。 「同等品」と称して売っていてもホントに同等なのかはかなり気になりますよね。取りあえず可能な項目はずべて評価しておいたので安心して使っていただけるだろうと思います。 今後、かなり違う特性なのに同等品と称するニセモノが出回らないことを祈りましょう。w

Kenji Rikitake さんのコメント...

最近ディスクリートのトランジスタは使わなくなってますが、ニーズのあるものは秋月なら台湾製のセカンドソースが出てきますね。

しかし足の配置だけ変えて2SC1815のセカンドソースが2N3904の型番で出てきている可能性が高いというのは面白いですねえ。誰が考えたんだろう :)

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Kenji Rikitake, JJ1BDX(/3)

TTT/hiro さんのコメント...

JJ1BDX/3 力武さん、こんばんは。 台風一過で残暑が厳しいです。

いつもコメントありがとうございます。
> ニーズのあるものは秋月なら台湾製のセカンドソースが出てきますね。
定型的な回路とか製作物があるので決まったデバイスのニーズが継続的にあるのでしょう。 特にビギナーは回路図や部品表通りの石を求めますからなおさらです。 夏休みの電子工作もそろそろ追い込みでしょうから秋月も賑わっていそうですね。hi hi

> 誰が考えたんだろう :)
たぶん決まった型番のリクエストがたくさん入るのでしょうね。 日本ではC1815/A1015が定番ですが、米国からの注文は2N3904/3906がほとんどなのかも。 足だけ変えて作るのが合理的という判断なんでしょう。 日本人は几帳面なので完全な互換性を求めますが、米国人は使えればオーライなのではなかろうかと・・・。

センターピンがベースの石が欲しくなったら2N3904/3906をお使いになってください。w