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2025年12月20日土曜日

【電子管】Testing the I-F Amp. and Marker OSC : 1AB6 / DK96

I-Fアンプとマーカー発振器を兼ねる工夫:1AB6/DK96(まとめ編)

Introduction
Communication receivers require a calibration function for the readout frequency. I am designing a receiver using vacuum tubes, but I will add the calibration function without increasing the number of tubes. To achieve this, I experimented with a circuit that serves as both a second intermediate frequency amplifier and a marker oscillator. The marker oscillator circuit I tested, using a 200kHz crystal oscillator, worked extremely well. With this, all components for the battery-powered tube receiver have been experimentally verified. I have summarized them in a block diagram.(2025.12.20 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【周波数マーカーは必須の装備】
 電池管を使って受信機を創るプロジェクトです。 コリンズタイプのダブル・スーパ受信機を作ります。この最終回はその「まとめ」です。

 前回のBlog(←リンク)では第2周波数変換を扱いました。 これで主要な構成要素の検討は終わりました。 おおむね実用になりそうな性能が得られるでしょう。

 受信周波数の安定度は第2局発でほとんどが決まります。 周波数の読み取りもその部分で行なうことになります。 ダイヤル面に7000〜7200kHzの200kHz幅を展開する訳ですが、アナログ読取りで行くことになります。 したがって最低限の機能としてバンドエッジを知って校正するためにマーカーオシレータが必須です。 今回のBlogは第2IFアンプとマーカーオシレータを兼用する回路の実験を目的とします。

                   ☆

 半導体技術が進歩した現在、周波数の読み取りはデジタル技術を使えば楽々可能です。せっかく通信型受信機を作るならそうすべきなのかもしれません。しかしここではできるだけ「電池管」(乾電池用の真空管)だけを使って『使い物になりそうな』受信機を目指したいと思っています。 同時にできるだけ少ない球数で実現したいものです。 従って普通の受信機設計ではやらないようなことをやらねばなりません。まさかIFアンプとマーカーオシレータを兼用するなんてねえ・・・。 写真はそんな実験の様子です。(笑)

 まあ、大したお話ではないので興味がわかないとお感じならこの先はパスされてください。すでに年末です。あなたの貴重な時間を大切にされますように。

【低い周波数の水晶発振子】
 例えば1MHzとか10MHzのような高い周波数の水晶発振子で発振させ、それを分周して100kHzや25kHzを得ると言った手は使え(使い)ません。 電池管でもおそらく分周器の製作は不可能ではありませんが、球数ばかり増えてしまって「何のこっちゃ」ってなります。(笑)

 ですから基本周波数が100kHzと言った低い周波数の水晶発振子を使うことになります。
写真は100kHzと200kHzの水晶発振子です。 HC-13/U型の100kHzでも良いのですが、もう少し小型の200kHzで行こうと思います。周波数が倍になってだいたい半分のサイズです。

100kHz:HC-13/Uは不安定】
 大きな水晶発振子に共通と思われますが、HC-13/U型の100kHz水晶には欠点があります。受信機のマーカーオシレータくらいなら使えるのですが、周波数基準用としては不安定です。例えば周波数カウンタのタイムベースには不向きでしょう。温度係数もありますが『姿勢誤差』が問題です。
 具体的には発振子を縦にするのか横にするのか、あるいは寝かせるのかなど姿勢を変えると周波数が変わるのです。 周波数が低いため水晶板そのものが大きくできています。そのため重力の影響を受けわずかに「たわむ」のでしょう。地球上にある限り重力から逃れられず姿勢で周波数が動くわけです。 HC-13/U型水晶発振子は内部の水晶板が片持ち支持構造なので重力の影響を受け易いのでしょう。 個体差もありますが実際に100kHzのHC-13/Uでは数Hzの変化が認められます。(於・7MHzの校正点) 低い周波数でも腕時計に使うような音叉型小型水晶発振子なら大丈夫なのですが・・・。

 200kHzのHC-6/Wでも『姿勢誤差』と無縁ではないのでしょうが顕著にはわかりません。100kHz/HC-13/Uより有利です。

【I-Fアンプとマーカー発振を兼ねる回路】
 5グリッド七極管:1AB6/DK96を使って、I-Fアンプ(中間周波増幅器)とマーカー発振器を兼ねる回路です。 マーカー発振器の周波数は200kHzです。

 フィラメント、第1グリッド、第2グリッドの3つで構成される三極管で水晶発振を行ないます。 これがマーカー発振器になります。 中間周波信号は第3グリッドに加えられ普通に増幅されます。 1AB6/DK96の相互コンダクタンス:gmは専用の五極管:1AJ4/DF96よりもやや小さいのですが、受信機としてはI-Fアンプを2段にすることで十分なゲインが得られます。 なお、第1I-Fアンプ部にこの回路を使うとマーカー発振の漏洩が後続のI-F増幅段に影響します。 従ってこの回路は第2I-Fアンプの部分に使います。

 発振の確実性を得る目的で第2グリッドには概略200kHzに同調したLC共振回路(タンク回路)を置きます。最適な発振状態を得るため、そのLC回路の共振周波数は調整する必要があります。200kHzよりやや高い周波数に合わせます。ここではコイルのコアで共振を加減しています。 発振波形ですが、第1グリッド側はきれいな正弦波状です。ここからマーカー信号を取出し小容量:2pFで結合してRFアンプに導きます。

 水晶発振子は上記で説明どおり200kHz、HC-6/W型です。 LC共振回路(タンク回路)には7mm角の可変インダクタを使いました。(東光:7PLA型) 発振周波数の微調整は第1グリッド側の可変コンデンサ:C2で行ないます。 これでJust 200kHzに合わせられます。 真空管は1AB6/DK96を使いましたが、1R5あるいは1R5-SFで作ることもできます。次項を参考にしてください。

【AN/GRC-9/RT-77のマーカ・I-Fアンプ部】
 ここで試作したマーカ発振を兼ねるI-Fアンプ回路は米陸軍の野戦用無線機:AN/GRC-9/RT-77の受信部を参考にしています。第二次大戦後の朝鮮戦争あたりで多数使われたポピュラーな軍用無線機です。

 AN/GRC-9/RT-77は2〜12MHzをカバーするHF帯の移動用AM/CWモードのトランシーバで、電池管を主体に構成されています。受信部は高1中2のシングル・スーパでI-F周波数は456kHzです。そのダイヤル目盛りの校正用として200kHzのマーカ発振器が付いています。 小型化と省電力を目的に最少限の球数で構成されています。 そのためマーカ発振器とI-Fアンプを兼ねたのでしょう。そうすることでマーカ発振用の真空管が省けます。(トランジスタなんて存在しなかった時代の設計ですから・笑)

 図の回路でモードスイッチをCALのポジションにすると、1R5・第1グリッドのGNDが解除されます。同時に第2グリッドの高周波バイパスが解除されてマーカーが発振開始します。そのマーカ信号をRFアンプのグリッドへ結合して200kHz毎の校正ポイントが得られます。

 参考までにAN/GRC-9/RT-77の送信部は、直熱送信管:2E22がファイナル管で、AMで7W、CWで15Wを得ています。AMは2E22のサプレッサ・グリッド変調という珍しい形式です。送信可能な周波数は受信部と同じで、可変周波発振器:VFOのほか水晶発振(Band毎2ch内蔵)も選べます。なお、外観写真をはじめ詳細な情報はネット上にたくさん存在します。

【発振波形を観察する】
 発振波形を観察してみました。 1AB6/DK96の第1グリッドを測定しています。

 第2グリッド・・・発振三極管のプレート相当・・・にも200kHzの信号が現れますが、プラス側の半サイクルが圧縮された歪み波形になっています。 マーカー回路の趣旨から言えば波形に歪みがあって高調波が豊富な方が望ましいと思います。 しかし実際には波形のきれいな第1グリッド側(写真の観測ポイント)からマーカー信号を取り出しています。

 マーカー信号は受信信号と比較すれば極めて強力です。おそらくRF-Amp.で歪むはずで、高調波がいっぱい出ますからそれで良いのかもしれません。

【マーカーの周波数を合わせる】
 回路図のC2で周波数を200kHzちょうどに合わせられます。

 受信周波数の読取り精度はマーカーの周波数が決めます。 従って良く合っていて安定していなくてはなりません。初期精度を上げるためには周波数調整を行ないます。 少し通電エージングしてから周波数合わせします。

 第1グリッドに周波数カウンタのプローブを当てて測定するとプローブを外したとき誤差を生じます。最も良いのはマーカー発振器の高調波と標準電波・・WWV/WWVHなど・・を別の受信機で受信しながらC2でゼロビートを得る方法でしょう。

 200kHzという低い周波ですから発振周波数は十分安定しています。 ただし、実際の校正周波数である7000kHzや7200kHzでは高調波を利用しますから、35〜36倍で効いてきます。マーカー発振器の周波数安定度はたいへん重要です。 

【消費電流を観察する】
 回路の全電流を実測しています。 B+が50Vのとき約780μA流れました。 これはマーカーが発振した状態における全電流です。

 単なる第2IF-アンプとして動作しているときの消費電流は異なります。 マーカーが発振している状態では第1グリッドで自己整流が起こって負バイアスが発生するからです。 負バイアスのためプレート電流も、第2グリッド電流も抑制されます。

 マーカーの発振を止めて単なるI-Fアンプとして動作させたときの消費電流は935μA前後に増えます。 使用した1AB6/DK96(手持品のNo.1)での電流値であり、球が変わったり発振状態が変化すると電流も違ってきます。もちろん大きく変わるものではありませんが。

【余録:YEWの3201型テスター】
 写真に写っている「3201型回路計」はYEW:横河電機のスタンダードモデルでした。電気工作が趣味の一般的なアマチュアは三和や日置のテスターを買いました。YEWのテスターは計測のプロの持ち物で研究室などで見かけるものです。 JIS規格品ですし、その信頼性が買われたからでしょう。(それだけに高額でした) アナログ好きの私は100kΩ/Vに惹かれてしまい持っておりましたが、あまり使い勝手が良いとは言えず滅多に使っていません。 堅牢そうにできていますが大きくて狭い実験机ではかなり持て余し気味だからです。
 色々試して、いつも使っている三和のFX-110がコンパクトで邪魔にならずスケールも読みやすいように感じます。比較してみても指示精度に違いはありませんでしたから、三和のテスターで十分なのです。 デジタル時代の今さらではありますが日本製のアナログテスターはどれもたいへん良くできています。(もちろん今どき安価なDMMがいちばん実用的ですけれど。読み取り易さを重視するならデジタルの一択です・笑)

                   ☆

【電池管受信機の最終構成】
 今回のマーカー回路を兼ねるI-Fアンプで計画している受信機に必要な全ての要素について実験は済みました。

 まとめの意味でブロック・ダイヤグラムに書き落としてみます。 この図でご覧のように電池管を7球使ったダブルスーパ・ヘテロダイン受信機になりました。 図にありませんが受信選択度を決める帯域フィルタにはメカニカルあるいはセラミック・フィルタを使うつもりです。 もしゲイン不足を感じるようならあきらめてLC回路のIFTで済ますかもしれません。 このあたりはまだ少しだけ検討を要する部分です。

                    ☆

 しばらくお休みしているBlogですが、尻切れのようでいかにも纏まりに欠けます。予定に残っていたマーカー発振器の実験を追加した上で、目標の受信機として「まとめ」を行なうことに致しました。 さして状況も変わっていないので、すぐ製作に進むのは難しいと思っています。 いつか展望がひらけてきたら再始動するという約束でこの「電池管で作る通信型受信機」というテーマを終えましょう。 もちろん新たなテーマによるBlogの再始動もぼちぼち考えておきたいところです。何かできそうなことから始めましょう。 未来に乞うご期待。(笑) 2025年の師走も押し詰まって参りました。皆様にとって2026年(令和八年)が輝ける一年でありますように! ではまたいつかお会いしましょう。 de JA9TTT/1

*何かご質問とかご要望などあったらコメント欄でお願いします。
この下にある「コメント」の文字をクリックすると入力画面が現れます。

→ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。

参考:公開から2週間を過ぎたBlogに頂いたコメントはすぐには反映されません。(SPAM対策のためです) 確認しだい公開いたしますので少々お待ちを。遠慮なくどうぞ。

(おわり)nm


乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→ここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→いまここ

2025年6月11日水曜日

【電子管】Testing the 2nd Converter (Part 2)

第2周波数変換をテストする(2)(追試編)

Introduction
In the Collins-type receiver I designed in my last blog, the second local oscillator determines the frequency stability. I use a self-converter circuit to save power in my design using battery tubes. I use a 1AB6/DK96 battery tube in the converter circuit, but the local oscillator coil is the most important part. The first core material I used with high permeability didn't have good temperature characteristics. So I decided to wind an air core coil. And I test it.(2025.06.11 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【ペンタ・グリッド管の第2コンバータ・追試】
 電池管を使って受信機を創るプロジェクトを進めています。 コリンズタイプのダブル・スーパ受信機を作る話として検討を進めます。

 第2コンバータはLC共振回路を使った自励発振式の局発回路を使っています。 前回のBlog(←リンク)ではフェライト・コア入りのボビンに巻いた局発コイルで試しました。 実用になりそうな性能ではあるものの、周囲温度変化による周波数ドリフトは大きめでした。

 その対策として、ステアタイト製ボビンに巻いた局発コイルを作ってみました。 今回のBlogはそのコイルを試すのが目的です。

                   ☆

 せっかく通信型受信機をつくるなら「まともな真空管」を使ったらどうか・・・というご意見もあるでしょう。 電池管であろうが普通の球だろうが実験・製作の手間はさして違いませんから。 乾電池を電源にする受信機を作るのが目的なら別ですが、結局AC電源で使うことになるのでは普通の球で作る方がマシな物が作れるでしょうね。 ここでは長年ジャンク箱に眠ってきた「電池管を使う」というのが一つの目的になっていますので方針を継続したいと思います。

【第2コンバータの回路設計】
 回路図は前回のBlogの再掲載になりますが、このテストではおもに+B電源(真空管のプレート系電源)の電圧を67.5Vとして動作させた時のデータがまとめてあります。

 これまで手近にある電源の都合で+B=50Vでテストしてきました。 今回は50Vでは本来の性能が発揮し切れないように感じたため、+67.5Vにアップしてみました。 同時に第2グリッド(発振用三極管のプレート相当)の電圧を調整しているドロッパ抵抗を加減してみました。(27kΩ→15kΩへ変更) これによって発振部のgmがアップし、少々発振が弱い局発コイルでも何とかなるようにしています。

 本質的な対策としては、局発コイルのプレート側フィードバック・コイルを巻き直す(多くする)べきです。ここでは巻き直さずに済ませる方向で検討しました。

参考:(電池管の電源事情)電池管を使うラジオ回路の電源電圧はある程度決まっていました。低い方から22.5V、45V、67.5V、90Vがよく使われていました。 これらの電圧は市販されていた積層乾電池の公称電圧に由来しています。 従って、こうした電圧における動作例が真空管の規格表に掲載されていたのです。 特に67.5Vは最もポピュラーで、起電圧が1.5Vの素電池(マンガン電池)を45個積層したBL-M145と言う型番の積層乾電池が有名でした。 クリスタル・イヤフォンで聴くような簡易なラジオの製作記事では22.5V(電池の型番はBL-MV15等)もよく使われていました。 フィラメント用の電源はUM-1やUM-2と言った電圧1.5Vで容量が大きめの単電池を使いました。

【トラッキング・エラーを計算する】
 既にトラッキング回路の設計は済んでいます。 今回テストするコイルもそれに基づいて製作したものです。

 理想状態で計算した結果と現実では幾分か違いが出て当然です。 ただし周波数も低いうえ、許容されるストレー容量も案外大きいことから、計算結果とよく一致するのではないでしょうか?

 計算上どの程度のトラッキングエラーが発生するのか、掴んでおきます。 その結果、たったの250kHzだけカバーする仕様では、トラッキングエラーはせいぜい100Hz程度のようです。 トラッキングの調整をする際にRF同調側を可変範囲の両端ではなく幾らか「内側の周波数」で合わせ込めば重要な周波数付近の誤差をもっと小さくできます。

 なおこの設計ではトラッキングエラーのカーブは2次曲線的になって中心付近で最も誤差が大きくなる特性です。これは可変範囲がかなり狭いからです。だからと言って問題になるほどのエラーではありません。支障なく使えます。 局発側のトラッキング調整(=受信周波数範囲を合わせる)ではコイルは固定でパッディング・コンデンサを加減する方法で行なう予定です。

【第2コンバータの発振波形】
 第1グリッドで発振波形を観測しています。 ただしこの写真は+B=50Vにおける測定例です。

 はじめは+B電源は50Vで検討を進めていました。 確実な発振は得られたのですがやや発振が弱いように感じたのです。 そこで二つの対策が考えられました。

 一つ目はコイルの巻き直しです。プレート側のフィードバックコイルを13回巻きから15回以上にすることです。 もう一つ結合を密にするために同調側との距離を減らすことです。場合によっては同調側のコールドエンドの上に重ねて巻き密着させてしまいます。

 しかしいずれも厄介なので第三の方法として回路定数である程度カバーできないか検討してみました。 それと+B電圧をアップするのも効果があるはずです。

 結局、コイルの作り直しも大変ですから回路電圧のアップと部品定数の変更で何とかしました。 まず+Bを+50Vから+67.5Vへとアップします。 さらに第2グリッドのドロッパ抵抗:R2を小さくしてみるのです。 標準設計ではR2=27kΩですが、これを15kΩや10kΩに減じます。

 そうすると第2グリッド電圧がアップし、流れる電流も増えるのでgmが大きくなって発振も強勢になります。 そうは言ってもむやみに電流を増やすのは考えものです。 電池管は特に最大電流が小さいからです。過剰な陰極電流(Ip+Isgなどの合計)はエミ減(陰極の電子放射能力の減退:エミッション減退)に繋がって球の寿命を縮めます。(あまりにも短命では困りますが、今さら球の長寿命に拘る理由もないんですけれども・笑)

 検討の結果R2=15kΩが概ね適当な値であることがわかりました。もちろんこれは局発コイルの作り方によっても変わります。 上記の回路図はそのような部品定数になっています。 従って、現状で発振振幅は約8.6Vppが得られており、まずまずの動作状態になっています。


【局発周波数のドリフト特性:タイムラプス・ビデオ】
(参考:このビデオは再生しても音はでません)

 静止画ばかり見ていても面白くありません。 試みにタイムラプス・ビデオを撮影しました。 このビデオは20秒ごとに静止画を撮影し繋いで動画にしています。 11時17分頃から回路への通電開始とともに撮影も開始し、12時20分頃までおおよそ1時間少々の間の周波数の変動を捉えてみました。電源投入から1時間の周波数変動ということになります。再生時間は36秒間です。

 肝心の周波数変動ですが、スタートから徐々に周波数が下がって行きますが、途中から上昇に転じるのがわかるでしょうか? その間に300Hzくらい変化しました。 前のコイルは同じようなテストで10kHz弱の変化があったので明らかに改善されていると思います。

 一旦下降して再び戻るのは、周囲温度の変化があったからです。 最初温度上昇があり、その後は換気を行なったので元の周囲温度に戻ったのでしょう。 コイルの温度係数は+ですので、温度上昇でインダクタンスが増えて共振周波数は下がります。 簡単ではないと思いますが、温度係数がややマイナス気味のコンデンサで温度補償すると言う手もありそうですね。

 コイルを裸のままで観測するなんてナンセンスですが、あくまでも比較テストですので正規の測定前の様子見だと思ってください。こんな実験ですが良い結果を得たと思っています。 ステアタイトのボビンに巻いたコイルはやはり安定しています。

 タイムラプスはいまだ試行中なので、次回はもっとわかりやすい時計の指針位置にするとか、撮影を工夫してスタートしてみたいと思います。 今回はちょっとわかりにくいですが、初めてなのでsri。 見てるだけのお客サンも評価作業の雰囲気だけでも味わってください。(笑)

【コイルを固定してしまう】
 高周波ワニスを塗る順番が逆だよって言われそうですね。 経験によればサンハヤトの高周波ワニスのインダクタンスへの影響はほとんど問題になりません。 従って、あとから塗ってもあまり支障はないと思っています。

 巻き直しが発生したとき、ワニスが塗ってあると厄介なため、確認が済んでから塗布することにしたのです。

 防湿効果と巻線の固定の意味からも高周波ワニスの塗布はあった方が良いでしょう。 なお、この高周波ワニスは販売終了になっています。 代替品が線材屋さんなどで小分けされて販売されています。 できれば塗布した方が良いので手に入れておくことをお薦めします。コイル全般に使えます。(こうしたコイルを巻くことは稀になっていますけれど・笑)

 発泡スチロール樹脂をちぎって溶剤に溶かし代用品を作るというアイディアが昔からありました。しかし巻線との密着性があまり良くないので今一つだと思います。むかし作って試したことがあります。

                    ☆


【高性能菅でテスト:6AJ8 / ECH81】
 低性能な電池管ばかり相手をしていたら少々疲れてしまいました。電池管ではない高性能な真空管を試してみましょう。これは息抜きの実験です。(笑)

 6AJ8 / ECH81は欧州系のコンバータ管です。FM / AMラジオ用として開発された真空管です。

 米国系の技術が主流になった戦後の日本ではあまり知られていない存在でしょう。 真空管式のAM/FMラジオが作られたごく短い間だけ国内でも使われた球でした。(1960年代始め)

 当時、NHK-FMと東海大の実験局:FM東海しか存在しませんでした。そのため魅力に乏しいFM放送は殆ど注目されず、FM付きラジオも商売にはならなかったようです。一般家庭には普及しませんでした。 FM放送が大衆化したのは'70年代のラジカセ時代になってからです。もちろん真空管ラジオの時代は終わっていました。(参考:FM東海は現在あるエフエム東京の前身にあたります)

 6AJ8は五グリッド管(七極管)と三極管の複合管です。 FM受信のとき、七極管の部分は10.7MHzのFM用中間周波増幅器として動作します。 AM受信では三極管の部分で局発を行ない七極部で周波数変換します。AMの中間周波数は455kHzでした。

 6AJ8は変換コンダクタンスが大きいのでゲインが高く、等価雑音抵抗も低いため良く知られているコンバータ管:6BE6の3倍くらいFBな球です。 ただ、通信機への応用例はほとんど見られず、高性能とわかってはいても使われない球でした。 わたしも使ったことはありませんでした。(「通信型受信機の解説と実際」JA1FG梶井OM(故人)の著書:CQ出版社・初版1966年にわずかな使用例がある)

 その理由は、一般市販のコイルセット(例えばTRIOのSシリーズコイルなど)の局発コイルが使えないためです。 市販品はカソード・タップ付きハートレー型発振回路用の局発コイルですからそのままでは使えません。 既成コイルの改造が必要とあっては手を出す人も稀だったのでしょう。それに球数をいとわない通信機用としては他の形式の周波数変換回路(ミキサー回路)の方が6AJ8/ECH81よりも優れていたからです。

 今回の一連の電池管を使った実験では二次巻線付きの局発コイルが必須だったため自作しました。 その派生で6AJ8/ECH81もテストできた訳です。 いずれ詳細をレポートできたらと思っています。 ざっとした評価ですがなかなか良い球です。  なお、トランスレス・ラジオ用の球としては12AJ7 / HCH81があってヒータ電圧違いの同等管です。

                    ☆

 ステアタイトボビンに巻いた局発コイルが適切か否か調べるために実験しました。 確実な発振が起こってくれて、周波数も安定してくれたらという期待を込めて。

 どうやらそれは目論見通り旨く行ったようです。 電池管の受信機用としてはちょっと大げさですがこのコイルを使ってみましょう。 では。 de JA9TTT/1

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この下にある「コメント」の文字をクリックすると入力画面が現れます。

→ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。

つづく)←リンク fm


乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→いまここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→ここ

2025年5月27日火曜日

【電子管】Testing the 2nd Converter circuit: 1AB6 / DK96

第2周波数変換をテストする(活用編)

Introduction
In the Collins-type receiver I designed in my last blog, the second local oscillator determines the frequency stability. I use a self-converter circuit to save power in my design using battery tubes. I use a 1AB6/DK96 battery tube in the converter circuit, but the local oscillator coil is the most important part. The first core material I used with high permeability didn't have good temperature characteristics. So I decided to wind an air core coil.(2025.05.27 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【ペンタ・グリッド管の第2コンバータ】
 電池管を使って受信機を創るプロジェクトを進めています。 コリンズタイプで受信機を作る方向で検討を続けます。

 前回のBlog(←リンク)では第1コンバータであるクリスタル・コンバータ部をテストしました。今回はそれに続く第2コンバータを検討します。

 写真はテスト途中のものです。まずは局発コイルを巻き、オシレータ・トラッキングの設計を検証しています。必要なカバレッジが得られるか確認しているところです。 もちろんここは周波数安定度を決めますからとても重要な部分です。その検討も行ないました。

 バリコンは予定通りFM3連・AM2連のタイプを使います。カバーする周波数の範囲が250kHzと、ごく狭いことから、容量の小さい方のFM用3連バリコンの部分を使うことにしました。

                    ☆

 詳しくはこれ以降の部分で明らかになりますが一般的にアマチュアが作るコリンズタイプ受信機の後半部分は単なるシングルスーパと等価なものです。要するにシンプルな短波ラジオのようなものですから周波数帯こそ違いますが中波BCバンドのラジオとさしたる違いはないわけです。 周波数カバー範囲は短波帯ではありますが、一般的に2〜3MHzあたりのごく低い方を選ぶので難しい周波数帯でもありません。

 シンプルなラジオ並みの設計ですからあまり興味の対象ではないかも知れませんね。 今回も暇人専用コンテンツです。 もし超お暇なのでしたらお付き合いください。(笑)

【第2コンバータの周波数関係】
 すでに前々回のBlog(←リンク)においてブロック図で検討していますが、もう少し具体的な設計に踏み込んでみます。 第2中間周波は455kHzの設計です。

 まず、受信周波数範囲ですが7MHzのHAMバンドをフルカバーする設計で考えます。 7.000〜7.200MHzのカバーが必要ですが、上下に多少のマージンを設けます。
 従ってカバレッジの設計としては25kHzずつのマージンを設けて6.975〜7.225MHzとしましょう。可変範囲としては7.100MHzを中心に250kHz幅になります。

 なぜもっと広い周波数範囲にしないのかと言う疑問もあるでしょう。例えば7.000〜7.500の500kHz幅にするとか、7.0〜8.0MHzの1MHzでも良いのではと思われるでしょう。

 これはダイヤル機構が関係します。 しっかりしたダイヤル機構が構築できるなら500kHzや1MHzでも良いのです。(要スプリアス検討) ここでは簡略にする必要からなるべく狭く設計したいと思っています。 ダイヤルスピードがSSBやCWのチューニングに適することも大切です。

 具体的には、バリコン付属の減速ギヤ+ボールドライブを考えているのでカバー範囲をあまり広くするとダイヤルがクリチカル過ぎて操作性が低下してしまいます。 まあ選択度も良くないのでAMの受信なら少々クリチカルなダイヤルでも大丈夫なのですが・・・ここではSSB/CWも受信対象ですので。

 バリコンは最初の写真にあるものを使い周波数範囲を決めクリスタルコンバータの局発周波数を5.12MHzとして第2コンバータの具体的な周波数設計を行なってみました。左図で確認してください。

【第2コンバータの回路設計】
  左図は具体的な第2コンバータ回路です。 コンバータ管には1AB6/DK96を使います。

 受持つ周波数範囲は1.855〜2.105MHzと中波のちょっと上ですし、カバー範囲も狭いのでコンバータ管は1AB6/DK96ではなくて1R5(-SF)でも大丈夫でしょう。上記周波数帯を455kHzへ周波数変換します。

 周波数も低いですから引っ張り現象(Pull-in)もほとんど問題にならない筈です。 ただし多少なりとも有利な1AB6/DK96を使います。もし手持ちがあるなら1L6や1U6も適する筈です。1U6は1AB6/DK96同様に25mAフィラメントの省エネ管です。(どちらも1AB6/DK96と互換球ではないので回路変更を要する)

 1stコンバータ・・・クリコン部の出力には強力な局発の成分:5.12MHzがかなり漏れて来ます。 そのため第2コンバータが入力オーバーで飽和しないよう、入力部に2段の同調回路を置きます。

 それ以外はBC帯の自励式コンバータ回路と違いはありません。 この回路もキーポイントは局発回路で、特にコイルにあります。 まずはその試作から始めました。 最初の写真はコア入りのボビンに巻いて試作した局発コイルで局発部分の動作を確認している様子です。

【発振波形で確認】
 最初にコア入りの小型ボビンで試作した局発コイル(OSC Coil)で発振を確認します。

 巻数比が適正か否かの確認が先決でそれは発振々幅の観測からわかります。他にもグリッド抵抗:R1=27kΩを流れるグリッド電流で確認する方法もあります。

 写真のように第1グリッドで見て8Vpp得られていますからマズマズと言えるでしょう。電源電圧が低いためか、やや発振が弱い感じもしますが取り敢えず使えそうです。

 具体的には東光製の「10PA」と言う形式のコイルボビンに巻いています。ツヅミ型の芯コアと外側の調整式ツボ型コアという構造になったものです。
 いずれのコア材も透磁率:μが大きいらしく少ない巻き数で大きなインダクタンスが得られます。そのため作り易いメリットがあります。また一次側巻線と二次側巻線の結合度が高くて発振コイル用には向いています。

 しかしこのコイルは少量の入手が難しいのでこれ以上の詳細は省きます。是非とも欲しいお方には差し上げますので連絡ください。少量なら手持ちがあります。
 類似のコア材としてaitendoの「IFTきっと」があって同じように使えます。(巻き回数は異なる。未製作ですが、1次側:39回、2次側:10回で良いはず)

【発振はするが・・】
 発振周波数を確認しています。2310kHzというのは受信機としての受信周波数で言えば低端にあたる6975kHzになります。(-455+2310+5120=6975(kHz))

 トラッキング回路の設計検証と周波数安定度の様子を見るのが目的です。

 表示周波数の下位桁が文字化けしていますが、カメラのシャッターが開いている間に周波数変動があって数字が多重露光になっているためです。

 1Hz以下の部分ですし、何のシールドもされていないブレッドボード製作ですから常に微小な周波数変動があっても不思議ではないでしょう。 水晶発振ではなくてLC発振ですから。(笑)

 短時間の周波数安定度を見ていて、概ね実用できそうな感触をもちました。 そのため通電のまま暫く放置して変動を観察してみました。

 目的の周波数帯:7.000〜7.200MHzが逃げてしまうほどの周波数変動はありませんでしたが、思ったより大きな変化があるようでした。 電源ONから数時間で10kHzくらいの変化するようです。 通電初期の変動は大きいのですが、すぐに安定してきて変動量が減って行きます。しかしジワジワした変動は残るようです。

 通電したままでエージングが進めばもっと安定してくる可能性もありますが、どうもミュー:μの大きなコア材を使ったコイルは周囲温度の変動に敏感な感じでした。透磁率μの温度係数がかなり大きいのでしょう。 未検討ですがaitendoの「IFTきっと」を使う方が幾らかマシかも知れません。
                   ☆

 周波数カバレッジには問題はないようです。 トラッキング回路の設計・計算は大丈夫として周波数安定度はもう少し何とかしたいと思いました。 コア入りの局発コイルは調整に便利なのですが・・・思いきって空芯コイルを試すことにしました。

【マヂック・ハンダ?】
 部材ストックからステアタイト製のボビンを見つけました。直径は1インチ:25.4mmで長さは63mmなので、2・1/2インチのようです。

 すっかり忘却していて出所不明ですが、おそらく自励発振式のLC-VFOを作るつもりでストックしておいたのでしょう。 使わなければいずれ不燃ごみの運命ですから使ってやることにしました。

 ところで「マヂック・ハンダ」って知ってますか? コイル好きでしたらバーアンテナとかコイルの端に巻線を止めるための樹脂が塗ってあったのを覚えているでしょう? いえいえ、コイル全体に塗る高周波ワニスのことではありませんよ。
 見知ってはいたのですが、どんな「物質」でどう「扱う」のかは知りませんでした。 インターネット時代になってから知識が広まり、あるとき材料の入手と使い方の情報がもたらされました。(情報源はJA2EP/JH1FCZ・大久保OMのところだったように思います)

 タイトボビンに空芯コイルを巻くなんて滅多にありませんのでコレを使うこともほとんどありません。この機会に「マヂック・ハンダ」を活用してみましょう。
 棒状の樹脂が販売されていて使い方は簡単です。 ハンダ鏝のような高温のコテ先で溶かして塗布するだけです。(サトー電気で売っていた(いる?)との情報あり)

 ただし専用コテならともかく、ハンダ鏝をそのまま使うとコテ先が傷んでしまいます。 滅多に使うものではないので応急的にハンダ鏝の先にアルミ・フォイルを巻きつけて使いました。 一般的なハンダ鏝のような300℃以上にもなるようでは高すぎるのですが、よく溶けて作業性は悪くありません。 ただし高温のまま放置するとコテ先に残った樹脂がコゲてくるようでした。

【巻数は?】
 マヂック・ハンダはうまく使えて、コイルの巻線固定に使えました。 綺麗に仕上げるにはちょっとコツがいるようですが・・・

 空芯コイルの巻数とインダクタンスの関係は昔から計算式が良く知られています。 長岡氏係数表を使って形状寸法から計算できます。

 経験からかなり高精度で算出が可能なこのとはわかっていますが、可能なら実寸法を求めてから計算する方がより精度よく求められます。 ここでは60回巻いて寸法を求めてから計算してみることにしました。もちろんインダクタンスの実測も行ないます。 巻線にはφ0.4mmのポリウレタン銅線(ウレメット線:UEW線とも言う)を使います。 周波数が低いことから大きめのインダクタンスが必要なので密着巻きで作ります。

 数えながら手巻きしたのですが、最終的には現物の巻線を数えて確認しました。写真に撮って画像拡大して数えると容易です。59回巻きでしたね。(笑) ノギスなど使って巻き幅も実測しておきます。 これらの寸法はコイル設計に使います。 59回巻きのコイルのインダクタンスは実測で約63μHありました。計算値とほぼ一致です。

 参考:寸法形状からインダクタンスを求める方法を左図に示します。 寸法を実測して電卓で計算すればかなり高精度にインダクタンス値が求まります。 空芯のコイルに限ります。コア入りのインダクターには適用できませんのでご注意を!

【コイル設計】
 ステアタイト・ボビンに密着巻きしますのでコイルの内径はボビン径の25.4mmです。

 さて、何回巻いたら目的のインダクタンス・・・この例では52μHが得られるのでしょうか?
 巻線の直径、内径、巻幅などを計算ソフトにインプットすればインダクタンスが計算できます。 これは自作の計算アプリですが、ほかにもWeb上のコイル計算サイトがあるようですから利用すれば簡単に求められます。

 形状の実測から寸法を求めていますのでかなり精度の良いインダクタンス計算ができるでしょう。 計算と実測での比較検証によれば誤差1%くらいの精度があるようでした。なかなかの高精度ですね。 ここでは51回巻けば目的とする52μHのコイルが作れそうです。

【コイルを巻く】
 実測による補正で52〜53回巻きで目的のインダクタンス付近になりました。 1〜2回違いですから計算通りと言えるでしょう。

 現実のコイルには分布容量があって、単純に共振周波数を見つけるだけではそれが分離できません。 従って高精度のコンデンサと合わせて共振点を一箇所だけ求めて計算したところでインダクタンスは正確には得られません。

 正確なインダクタンスを求めるには2〜3つの共振周波数から計算するのが良いでしょう。未知のインダクタンスのほか実際に分布容量も含めて計算で求められます。 磁気コア入りコイルの場合、コアの周波数特性が現れるので精度が落ちます。 しかし空芯コイルなのでコアは空気ですから周波数特性は概ね無視できます。従ってかなり高精度で計算できます。数個の既知の容量値のコンデンサとそれらとによる実測の共振周波数から、未知の分布容量とインダクタンスを連立方程式で計算します。角周波数:ωなど入ってきますが計算そのものは中学生レベルの算数ですね。ww

 ちなみに4種の精密な値のコンデンサを使い、得られた4つの共振周波数から求める方法で計算した結果、このコイルのインダクタンスは52.4μH、分布容量は4.23pFでした。53回巻きでちょうど良かったようです。

 しかしながら実際に回路に入れて使う場合、配線によるインダクタンスや回路自体の分布容量とか真空管の管内容量もあって影響の完全な予想は困難です。コイル単体ではほどほどの所へインダクタンスが収まれば申し分ないはず。 最終的には周波数の微調整で追い込むわけです。 今回はインダクタンスの加減が容易ではないのでパッディング・コンデンサの方で周波数カバレッジを調整します。

 写真のようにフィードバック用コイルも巻いて完成させました。 フィードバックコイルの巻き数は決めかねたのですが、やや多めの13回巻きでやってみます。巻線の間隔は約2mmです。

 このBlogの作成時点では実回路に入れた検証は済んでいません。従ってもし旨くないようでしたら巻き直す可能性があります。 空芯コイルは本来再現性が良くて同じ材料さえあれば作り易い筈なのですが2次巻線があるとなかなか厄介なものですね。

                    ☆

 中波ラジオのコンバータ回路と同じような製作ですが周波数安定度を決めますので重要度の高い部分です。 肝心の局発コイルはコア入りボビンを使うと製作・調整が容易ですが温度係数は大きくなりがちです。 φ1インチのタイト・ボビンで空芯コイルを作るのは少々やりすぎかも知れませんが興味のおもむくままに製作してみました。あとはきちんと発振してくれたら良いのですが・・・もちろん周波数安定度も気になります。 乞うご期待。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1

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乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→いまここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→ここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→ここ

2025年5月13日火曜日

【電子管】Testing the Battery Tube X-tal Converter : 1AB6 / DK96

1AB6 /DK96でクリスタル・コンバータを(活用編)

Introduction
I have made a prototype crystal converter circuit using a 1AB6/DK96 battery tube. This circuit is located at the top of the Collins-type receiver and has a significant impact on the receiver's performance. I made a prototype for design verification. The results obtained were good. When the antenna was connected, it was found that the received signal in the 7 MHz band could be received with good sensitivity. This is a step forward to the production of the receiver.(2025.05.13 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【ペンタ・グリッド管のクリコン】
 いわゆるコリンズ・タイプと称する形式で受信機の検討を進めています。(前回のBlog←リンク参照) コリンズ社が考案者という訳ではないのですが、メカトロニクスの粋を結集し一つの受信システムとしてまとめ上げた功績からそう呼ばれるようになったようです。

 入力信号は水晶発振器を使った局発により周波数変換されます。 その後、可変I-Fの第1中間周波を経たのち再度周波数変換されて固定周波数の第2I-Fに変換されます。 今回のBlogではこの最初の周波数変換、1st コンバータを扱います。

 第1周波数変換は受信機のはじめの方にありますので真っ先にローノイズな性能が求められます。 RFアンプを前置するのは当然ですが、全体のノイズ性能を左右するのでやはりローノイズなコンバータ回路が望まれるのです。 特にHF帯のハイバンド以上では空間ノイズが低下することからローノイズ・コンバータ(ミキサー)は必須です。

 ここでは5グリッド管の自励式コンバータをテストします。 目的は7MHz帯の通信用受信機のコンバータとして必要な性能を備えているか否かを判断するためです。 もちろん最適な動作条件(回路の部品定数)を得るのも目的です。

 常識的に言えば水晶発振の局発を用意し五極管のグリッド注入型ミキサーとするのが良いでしょう。ローノイズでゲインも十分得られるからです。(ただし2球必要です) ここでは球数の削減を目的に5グリッド管(7極管:コンバータ管)で自励式コンバータ回路を試みます。(もちろん局発は水晶発振ですけれど) 5グリッド管を使えば単球で済みますが、これで性能は大丈夫でしょうか?

                    ☆

 ケチケチ設計のコリンズ・タイプ受信機になってしまいそうです。w マトモな設計の受信機を作るつもりならそもそも電池管なんかやめた方が賢明です。普通の球を使って作る方が報われやすいです。電池管はデバイスとしての性能が違い過ぎですね。
 例えば米軍用トランシーバ:RT-66〜68シリーズの基本設計は電池管式です。ただし高周波増幅だけは6AK5を使っています。たぶん電池管の1T4とか1L4では性能不十分なのでしょう。このRTシリーズがHF帯ハイバンドからVHF帯というのも関係ありますけれど。

 すべて電池管で作ると性能は期待できませんが7MHz帯ですから何とかなるんじゃないかと思ってテストしています。 つまらんと思ったらこの先はおやめください。 上っ面をざっと眺めたところで貴方が企んでいる高性能受信機設計にはほとんど役に立たないでしょう。 まあ考え方次第ですが。 私は得るものはあると信じています。(笑)

【七極管クリコン回路】
 「クリコン」とはクリスタル・コンバータの略で、クリスタル・・・水晶発振子のこと・・・を使った発振器を使うコンバータ回路のことです。 真空管としては1AB6/DK96だけでなく1R5-SFで作ることもできます。 1R5(-SF)でも水晶発振で使えば引き込み現象も実用上問題にならないはずです。 実際に水晶発振のテストまでは進めてあります。

 今回は1AB6/DK96で試すことにしました。 1AB6/DK96でも問題なく水晶発振が可能でした。 発振回路はピアースPG相当(無調整回路)で周波数は5.12MHzです。のちに写真がありますがきれいな正弦波(第1グリッド側で観測)で発振しています。

 第4グリッドはB+直結の回路になっていますが、追加の試験によるとドロッパ抵抗(100kΩ)とバイパス・コンデンサ(0.01μFくらい)を挿入しておく方が良いようです。ドロッパ抵抗を挿入すると状態が変わるため各実測値は異なってきます。 回路図のまま作っても支障はないため、図中の数値や以下の評価結果はドロッパ抵抗なしの例で示しました。

 入力の同調回路で昇圧された7MHz帯の受信電波は第3グリッドに加えられ、局発の5.12MHzと混合され差のヘテロダインで1.88〜2.08MHzに周波数変換されます。 なお、今回はコンバータ回路の要素実験なのでRFアンプなしのコンバータ単独でテストします。

 実際の受信機ではコンバータの前に高周波増幅(RFアンプ)を設けます。 またこの第1周波数変換の後ろは、おなじく1AB6/DK96を使った第2周波数変換が続く予定です。

 今回は第1周波数変換単独でテストする都合から、そのままテストできるよう便宜的に低インピーダンスにステップダウンして変換出力を取り出しています。そのため変換利得は犠牲になってしまいます。

 既存のジェネカバ受信機で1.88〜2.08MHzを受信してみることで実際に7MHzのHAMバンドがどのように周波数変換されて聞こえるのか、コンバータ回路としての性能が感覚的にわかるはずです。

 従って製作する受信機とはT2(出力同調回路)の部分が異なります。 受信機では2段の同調回路を重ねた形の可変同調回路を予定します。 その構成なら50Ωにステップダウンはしませんから2つの同調回路の結合損失程度の僅かなロスで済むはずです。 第1周波数変換回路としてはプラスのゲインになるでしょう。

【キーポイントは水晶発振】
 やはりキーポイントは水晶発振にあります。 確実な発振が起こらなければ周波数変換はなされません。 第1グリッド、第2グリッド(プレートに相当)とフィラメント(カソード)の三極によるスタンダードな水晶発振回路を構成します。

 ただし電池管はgmが低いため発振回路の部品定数を最適な状態に選ぶ必要があります。 たいへんポピュラーなラジオ用五極管:6BA6と同じような部品定数では発振してくれないことがあります。

 発振強度はC4(10pF)とC6(27pF)によって加減します。 この定数は比較的強力に発振するように選んであります。 もう少し弱い発振でも大丈夫そうですが強めに発振するよう選びました。もちろん選び方が悪いと発振してくれません。 さらに1R5-SFとではかなり異なりました。

 水晶発振子は5.12MHzですが、これは手持ちの都合です。 幸いスプリアスがバンド内に入ることはありません。 周波数の選び方が悪いとスポットでスプリアスが現れることがあります。
 5.12MHzの水晶発振子は市販品があります。使ったものの形状はHC-49/Uです。他の形状の水晶発振子でも大丈夫ですが発振子によっては回路定数の見直しを要する場合があります。gmが低い電池管はゲインが低いため部品定数選びは幾分シビアというのが大まかな印象です。

【発振波形を見る】
 第1グリッド側で発振波形を観測してみました。

 19Vppあって、かなり大きいように感じるかもしれません。 これくらいで支障はないようです。 むしろ変換コンダクタンス:gcの点から見てこれくらい必要なようでした。 これが小さいとだんだん変換ゲインが低下してきます。

 プローブを当てると対GND間のキャパシタンス:Cが増えたのと等価になります。 C4(10pF)が数pFくらい増えたことになります。 その結果、やや発振振幅は大きくなる(発振が強くなる)方向の影響が出ています。(グリッド電流Ig1を測りながらプローブを当ててみると影響がわかります)

【Philipsのデータシートでは?】
 いくら低性能なコンバータ管とは言っても諦めずにフルに性能を発揮させたいものです。 動作状態確認のためPhilips社の1AB6/DK96のデータシートを参照しましょう。

 横軸には第1グリッドに加えられる局発の電圧がとってあります。 描かれたカーブは変換コンダクタンス、プレート抵抗、第1グリッド電流です。

 このうち、変換コンダクタンスに着目しましょう。 それによると局発の電圧が5Vrmsあたり(=14Vpp程度)でピークになります。それより小さくても大きくても変換コンダクタンスは低下します。 ただし大きい方の変化は緩やかです。

 周波数が固定の水晶発振器ですから最適化はだいぶ容易です。 何か条件が変わって発振振幅が変動しても影響が少ないようにやや大きめの局発が加わるようにします。

 グラフを読むと変換コンダクタンス:gcはだいたい300μ℧くらいになります。 6BE6の変換コンダクタンス:gc≒475μ℧と比べたら小さいのですがこれが電池管コンバータの実力です。 むしろ五十分の1にも満たない陰極(フィラメント or カソード)の加熱電力で300μ℧が得られるとは驚きとも言えます。

【受信してみよう】
 RFアンプなしのコンバータ単体ですが、実験的にそのままアンテナを繋いで受信してみました。

 7,000kHzが1,880kHzに周波数変換されますから、7006.64kHzを受信していることになります。 実際には局発の5120kHzに+250Hzほど誤差があるため、その分だけ高い周波数を受信しています。まあ、わずかですが。

 スペクトラム表示を見てもらうとわかりますが、HAM局の電波が並んで結構良く聞こえます。 すこしノイズっぽい感じもしますが、コンバータ管直結ですからこんなものなのでしょう。 RFアンプをつければ間違いなく実用性能になります。 7MHzは空間ノイズのレベルが高くてNF≧20dBの受信機でも支障ないくらいです。 低性能な電池管で作った自称「通信型受信機」ではあってもまずまずの実力を発揮するでしょう。

 定性的な評価だけでなく定量的なゲイン測定も試みました。 簡易な測定ですが、はじめにSSGで7010kHzで40dBμを与えます。 そのときのIC-756のSメータの読みを精密に記録(記憶)しておきます。 その後、IC-756にSSGから変換された周波数とおなじ1890kHzを直接与えて同じだけSメータが振れるようSSGの出力を加減します。 その読みと先の40dBμとの差からゲインがわかります。 簡易ですがこれである程度の精度でゲインが測定できます。(参考:40dBμ=100μV/EMF:負荷端では50μV)

 各部のインピーダンスが正確に50Ωではないと言った誤差要因はありますが10dBも狂うことはないでしょう。 実測によれば-4dBくらいのゲインになりました。 T2がステップダウントランスなので20dBくらいゲインを低くしている訳です。

                    ☆

 コンバータ管で「周波数変換できるのは当たり前だよ」 確かにそうなのですが、クリコンの製作例が見当たらなければ当たり前のことでも自身で確かめてみるのがこのBlogの方針です。 机上の検討だけでなく要素実験しておけば設計の確実性がアップします。 今回は受信機の感度に関して重要なポイントになりそうな第1周波数変換回路(クリスタル・コンバータ)をテストしておきました。 意外に良い成績だったと思います。 まずまず使い物になる感触が得られました。

 次回もHAM用受信機に向けた回路要素を検討したいと思っています。電池管を活用した通信機の可能性が広げられたらだんだん面白くなってきます。 ではまた。 de JA9TTT/1

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乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
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2025年4月13日日曜日

【電子管】Testing the Battery Tube Product Detector : 1R5-SF

1R5-SFをプロダクト・検波でテスト(活用編)

Introduction
I tried out a product detector circuit with a pentagrid battery tube. The Battery tube 1R5 is the converter tube of the super receivers. The product detector works on the same principle as the converter circuit. It should work well. I used a ceramic resonator for the BFO, which is essential for SSB/CW detection. While the frequency stability is a bit lower than a crystal oscillator, it's still good enough.(2025.04.13 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【ペンタ・グリッド管のプロダクト検波器】
 1960年代のはじめ日本のHAMは未だ戦後の復興期にありました。そのころのお話です。 ハム再開(1952)から間もないころ、米国で新しい電波型式(モード)が登場しました。

 従来のAM波から搬送波と片側の側波帯(サイドバンド)を取り除いた文字通りSSB:シングル・サイド・バンドが登場したのです。当初、AM波でのオンエアでさえ精一杯だったJAのHAM局にはさして相手にされませんでした。しかし米国での動向を見て(聞いて)DXerから徐々に電話モードSSB化の機運が高まって行ったのです。

 高1中2受信機を持つのが当時のHAM局の標準であり開局予備軍の目標でもありました。そうした受信機でもSSB波を聞くことは可能ではありましたが、もともとAMとCWが前提の受信機です。やはり快適ではありません。

 何が問題だったかといえば検波回路です。それらの受信機ではSSBの復調にもCW用の検波器を使うのですが、一般にダイオード(二極管)検波器にBFOを注入しただけと言った単純な回路だったのです。 CW受信を考えるとBFOはあまり強く注入しません。強いCW波が飽和傾向になる特性を利用したかったからです。

 弱いSSB波なら悪くないものの、59+と言った強い局は飽和して歪みます。場合によって音にすらなりません。結局、RF-IFゲインを絞り、CW検波器への入力をわざと小さく絞ってSSB受信する方法にならざるをえませんでした。 しかもCWでは常識的だったAGC/AVCをOFFする受信法もSSB受信の快適さを損ねていました。

 そのため、CQ誌や無線と実験、初歩のラジオと言った雑誌のHAM関連の記事では既存の受信機に付加するSSB検波器の製作記事が頻繁に登場したのです。まずはSSB化の推進は受信にあって「プロダクト検波器」の付加はその入り口と捉えられていたからでしょう。

 写真は5グリッド管:1R5-SFを使ったプロダクト検波器を実験している様子です。当時、1R5-SFで試した人も居られたかもしれませんが、一般的にはポピュラーな6BE6が使われていました。6BE6は標準的な5グリッド・コンバータ管です。

 今回はそれに倣って電池管の5グリッド・コンバータ管である1R5-SFでプロダクト検波を試します。行く行くは電池管で短波帯の受信機を目指しており、SSBやCWの受信機能は必須です。そのための準備としてテストすることにしました。

                   ☆

 物好きでもなければ、いまさら電池管でプロダクト検波でもありますまい。見たからと言って役立つお方はあまりいないでしょう。もっぱら自身の興味とこの先のRX開発準備のためにデータを蓄積しています。 一年で最も素晴らしい季節です。お部屋にこもってネットではもったいない。人生長いようでも短いもの。 こんなBlogを眺めるのはもうやめにして部屋を飛び出し春を満喫しましょう。(笑)

【七極管プロダクト検波回路】
 これから5グリッドの電池菅:1R5-SFでプロダクト検波器を作ります。 5球スーパでもポピュラーな6BE6のような5グリッド管(7極管)を使ったプロダクト検波器は雑誌の記事では定番でした。 ところが、メーカー製の受信機ではあまり見なかったように思うのです。どちらかと言えば自作HAMが付加装置で使う簡易回路のように感じていました。

・参考リンク:プロダクト検波器(←ここ)

 ですから本格的に製作した経験はありません。三極管3本の回路やリング・ダイオード検波器が本命と思っていました。

 今回テストしてみたのは5グリッド管のプロダクト検波器は復調ゲインが得られることからです。やや低周波アンプのゲインが少ないことから検波器でゲインが得られれば有利です。 どの程度のゲインが得られ、また最適な入力信号の範囲(大きさ)はどれ位なのか検波器として基本的な性能を掴むことを目的とします。
参考:同じ5グリッド管である1AB6/DK96を使うプロダクト検波器の回路は次回Blog(←リンク)にあります。

 さっそく実験回路ですが、プロダクト検波器にはBFOが必要です。 電池管で作る意味から言えばできるだけ球数は増やしたくないですから自励式で行くことにします。 最適化にやや難しさもありますが検波管の1R5-SF自体でBFO発振まで行なうわけです。
 簡易な付加装置と考えられていたころはコンバータ管の6BE6をLC発振の自励式BFOで使うケースが多かったように思います。その場合、入力信号が強く(大きく)なるとBFOの発振周波数が「引っ張られて変動するのが問題だ」とされていました。1R5(-SF)でも同じ傾向はあるでしょう。

 そのためBFOは初めから水晶発振式にすることにしました。それで引き込み対策は万全になるはず。 やがて実験しているうちセラミック発振子でも十分な性能が得られることが判明します。それで最終的にはセラミック発振子を使うことにしました。 水晶発振子よりも周波数調整がやりやすいことも理由です。(もちろん入手しやすさも大きな魅力です)

 水晶(セラロックですが)発振器としてはピアースPG型(無調整型)に相当します。電池管にセラロックという組み合わせはこれまで見たこともなく回路定数の設定に苦心しましたが結果としてオーソドックスな回路定数に落ち着きました。

 以前、入力信号を中間周波に変換するのがコンバータであり低周波に変換するのがプロダクト検波だと書いたことがありました。 確かにその通りなのですが、1R5(-SF)でプロダクト検波する例など実例がありません。プレート負荷を変えてデータを取る、グリッド抵抗はどうか?・・・ほかにも各部を試行的に追求して決定しています。概ね最適化されたと思っていますが、例えばEp=90Vにすると言った変更の際は見直しが必要かもしれません。

【復調用キャリヤ:BFO】
 SSB/CWの復調にはBFOが必要です。 水晶発振器が最適なのですが455kHz付近の水晶発振子は市販品がありません。 特注という手はありますが納期と費用がかかるでしょう。 写真のようにセラミック発振子を使うことにしました。

 はじめ手持ちに456.5kHzのHC-6/u型水晶発振子があったので、それでテストしていました。

 当たり前ですが周波数安定度も良くBFOとしては最適でしょう。そのまま使っても良かったのですが手元にたくさんあったセラミック発振子(セラロック®︎:CSB455E村田製作所製)でも試してみることにしました。

 少し回路定数を変更する必要はありますが同じように良好な発振が得られています。 さらにセラミック発振子には良い点があって周波数の微調整が容易なのです。使ったセラミック発振子は455kHz用ですがトリマ・コンデンサを抱かせて調整することで±800Hzくらいなら容易に可変できます。

 さらに回路定数も幾分変えてやれば±1.5kHzの可変も可能そうですからSSBフィルタに合わせた復調用キャリヤが得られます。

【BFOの周波数】
 455.000kHzに合わせています。 すこし追い込み不足で4Hz弱の誤差があります。

 この誤差も入念に合わせ込めばゼロに近づけることが可能です。 ただしセラミック発振子には温度係数があって周囲温度の変化で発振周波数が微小に変動します。そのため常に455.000kHzを保つことはできません。 ところが実際に製作し測定していて周波数のふらつきはあまり感じませんでした。 ぞれに少々の変動はあっても実用範囲であれば支障はないのです。 少し検討しておきましょう。

 発振子メーカ:村田製作所の仕様書によると-20〜+80℃の範囲で周波数の変動は±0.3%以内が規格になっています。 同時にグラフの記載があって、おそらく代表的な特性と思われますが、それによると同じ温度範囲で±0.1%くらいが実力値のようです。 これを参考にすると455kHzに対して約9Hz/℃の温度による変化が有りそうなことがわかります。

 この数値だけを見ると高級な受信機ではちょっと課題がありそうです。 しかし実際にテストしていて周波数の不安定さは感じられませんでした。発熱の少ない電池管というもの有利なのでしょう。従って電池管で作る簡易な受信機には合格点です。それにLC発振のBFOと比べたら10倍以上安定していると感じられます。 かなり実用的であることが確認できたのです。 どうしても心配なら水晶発振がベストですがその必要は感じない筈です。

【入出力特性】
 入力信号の大きさと出力に得られる復調電圧の関係です。

 BFOは455.000kHzに合わせてあります。入力信号は455.400kHzですから復調出力は400Hzということになります。

 プロダクト検波器はI-Fアンプの後に置きますので、ある程度大きな入力信号・・・ここではmVオーダから測定を始めました。

 測定を始めて意外だったのは大きな入力電圧まで復調の直線性が保たれることでした。 予想ではせいぜい数10mV程度で飽和してしまい、直線性が失われるだろうと思っていたのです。 実力的に1Vpp、即ち300mV(rms)あたりまで十分直線的ですからずいぶん大きな入力まで使えるわけです。

 高1中2受信機のI-Fアンプ出力は時に10Vにも及ぶことがあって、そのまま加えたら大きすぎるでしょう。 上手な使い方としては1/30〜1/50くらいに絞ってプロダクト検波器へ加えれば良いはずです。 それでもこれは意外な結果でした。 300mVも加えて大丈夫とは・・・。

 ずいぶん前になりますが、ミキサー管の歪みについて検討したことがありました。 ビーム偏向管7360,etcについて評価していたのです。そのとき比較のため6BE6も評価しました。
 2信号を使って評価していたのですが意外にもずいぶん大きな入力までIMD特性は劣化せず、ちょっと誇張して言えば7360と比べて極端な違いはないのではないかと思ったほどです。メーカー製管球式ダブルスーパ受信機で第二ミキサに6BE6を採用する例が多い理由がわかったような次第です。上手に使うとペンタ・グリッド管の歪み特性はなかなか優秀なのです。(ノイジーという欠点はあるのですが・・・)

 もちろんバランス型ではありませんので出力のプレート側で局発やRF入力信号のアイソレーションはありません。ほとんどそのまま出てきます。 しかし受信ミキサやプロダクト検波器なら必要な周波数帯と離れているので支障ありません。 ペンタ・グリッド管のプロダクト検波器は思った以上に良好です。 テストしてみた甲斐がありました。

【出力波形】
 入力として100mVpp(≒35.4mVrms)を加えた時の復調出力波形です。

 BFOは455kHzで入力信号は455.8kHzですから、復調出力は800Hzになります。 このように綺麗な正弦波が得られ、リニヤリティの良さが感じられました。

 同時に復調ゲインは約6.7倍、16.5dBくらい得られることがわかります。(ゲインは復調出力が800Hzのとき) なお、信号のピーク部で輝線がやや太く見えますが、これはBFO(455kHz)のモレが取りきれていないためです。

 LPFを強化すればモレはさらに減らせます。 なにしろBFOの発振振幅は20Vppもあって非常に大きいため完全に除くのも大変なのです。 I-Fアンプ系に漏れないよう十分注意しないとBFOによってAGCが掛かってしまうと言ったトラブルも起こり得るのです。

【復調周波数特性】
 復調出力の周波数特性です。

 BFOは455kHzで、入力信号を455kHzに対して30Hz〜7kHzまで離して周波数特性を測定しました。信号のレベルは100mVppです。

 意外に低い周波数から出力が低下して行きますが、これは回路図のC6とC9が1000pFとやや大きめだからです。 これらを470pFあるいは270pFに交換すれば3kHz程度までフラットにできるので目的次第で選択します。

 一般に男声は低音が豊かであり、この程度の周波数特性でも問題ないです。 必要以上に高音域を伸ばすよりも聴感上のS/Nは有利になります。 好みに応じで変更して構いませんので適宜コンデンサを選びます。

【引込み特性】
 入力信号によってBFOの周波数がどれくらい引き込まれるか(影響を受けるか)実測しました。

 実はほとんど意味のないようなグラフになってしまい、公開すべきか迷ったのですが事実は事実として掲載します。

 測定方法ですが、入力信号として大きさが1Vppというかなり大きめの信号を用意します。信号が大きいほど影響が出やすくて影響度がわかり易いのです。 BFOは周波数カウンタで常に監視しておきます。 その上で、入力信号の周波数をBFOの発振周波数の前後で変えてみて、そのときBFOの発振周波数が影響を受ける度合いを観察します。

 結果として、ほとんど影響を受けないことがわかりました。 精密にいうと0.1Hz以下の引き込み現象は存在するように思います。ただし、発振回路自体の微小な発振周波数変動の影響もあって明確にはわかりません。 入力信号をON/OFFしながらFカウンタを見ていると何となく感覚的にほんの少し引き寄せられるような感じを受けます。しかし復調出力を耳で聞いている程度では、まず判別できないでしょう。 要するに引き込み現象は耳ではまったく感じられないことがわかります。

 実はこれにも伏線があって、以前セラミック発振子を使ったオートダイン式受信機を作ったことがありました。驚いたことに体感できるほどの引き込み現象は存在しなかったのです。 今回の回路も言わば発振器の入力端子に信号を加えているわけでオートダイン検波器と同じような状況です。セラミック発振子を使った発振器は外部信号の影響を受けにくく一定した発振周波数を保つことが良くわかりました。 もちろんこれは水晶発振子でも同じです。 発振子を使うと引き込みを気にせずに使えるプロダクト検波器です。

                   ☆

 以上で1R5-SFを使ったプロダクト検波の評価はおしまいにします。 おもにフィラメント電流が25mAの1R5-SFで実験しましたが、50mAのノーマルな1R5でも違いは感じません。 同じ回路定数で同等の性能が得られると思って良いです。

 電池管の弱点はマイクロフォニック・ノイズです。 1R5はコンバータ管ですから、おそらく低周波で問題になるマイクロフォニック・ノイズは考慮されていないでしょう。そのため、低周波ゲインが存在するプロダクト検波器に使うと問題になるかも知れません。 実際に受信機として纏める際には考慮しておく必要がありそうです。(参考・追記:組み合わせテストを行ないましたが支障ありませんでした)

                  ☆ ☆

 ところで、JAにおけるSSBのその後の普及ですが少なくとも1970年までにはHF帯のすべてがSSB化されました。 もはやごく少数の愛好家がAM(全搬送波・両側帯波)でオンエアするだけになったのです。 同時にメーカ製SSBトランシーバが隆盛になり自作機が主体の時代も完全に終わったと言えるでしょう。 講習会生まれのHAMが大挙して出現し彼ら・彼女らが新たな顧客になったわけです。(6mはもう少しAMの時代が続きました)

【1D8-GTアンプに固定バイアスを】
 これは前回のテーマですが、1D8-GTの低周波アンプを改造しました。

 出力用五極管のバイアス電圧を乾電池で与えるようにしました。 改造前は+B電源の負極側に抵抗器を入れ、電圧降下でバイアス電圧を得る形式でした。

 写真で黒い扁平な容器がバッテリーボックスです。CR2032型リチウムマンガン電池が2個直列になって入っています。実測で6.2Vの起電圧があってグリッド抵抗:470kΩを通して1D8-GTの五極管部・第1グリッドへ加えられています。少し高いように感じますが起電圧まかせなので自由度がありません。 なおバイアスは負電圧ですから電池のプラス極側をGNDに接続しグリッド抵抗側が負極になります。 パワー・アンプはA級増幅器でありグリッド電流はほとんどゼロです。マイナス6Vも掛かっていれば初速電子流によるグリッド電流も完全に遮断されてしまいます。 従って電池の消耗は自己放電程度でしょう。リチウムマンガン電池は自己放電が少ないですからかなり長期間使えるはずです。

 この改造によって+B電源の電流値によってバイアス電圧が影響を受けることがなくなります。+B電源の負極側はそのままGNDへ接続されます。電源利用率も1割近く改善され各段の動作に有利に働きますし結果として電池の持ちも良くなります。 欠点はバイアス電圧に自由度がないことです。幸い1D8-GTの五極管部はだいたい-5〜-6Vのバイアス電圧で良いため十分使い物になりそうです。 なお、使用した中華モノの電池ボックスは作りがちゃちでイマイチでした。もう少し信頼できるような製品はないものでしょうか?(笑)

                    ☆

 コンバータ管から始めて低周波アンプまで一通りの電池管を評価しました。 中波帯(BCバンド)のラジオ作りが目的でしたらそれでお仕舞いですが、目標はHAMが使える受信機です。 HAMバンドで必須となるSSB/CW検波器に絞ってペンタ・グリッド管を使ったプロダクト検波器を追試しました。たいへん有望な結果が得られたと思います。 簡易な受信機だけでなく本格的な「通信型受信機」に使っても支障のない性能が得られています。

 残念ですが1R5(-SF)は電池管なので一般性に欠けています。いまさら電池管の時代じゃありません。 まあ6BE6だってすでに真空管の時代でもないのですが、同じような評価をしておけば有益な設計情報が得られるかも知れません。 もしも機会があったら手がけてみたいと思います。 次回もHAM用受信機に向けた付加機能を検討したいと思っています。電池管の活用が通信機の範囲へと広げられたらだんだん面白くなります。 ではまた。 de JA9TTT/1

*何かご質問とかご要望などあったらコメント欄でお願いします。
→私で可能な範囲で対応いたします。

つづく)←リンクfm

乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→いまここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→ここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→ここ

2024年12月1日日曜日

【回路】Audio Filter Design : Supplements

シンプル・低周波フィルタの設計:補足編

Introduction
This blog is a quick guide to electronic equipment using filter circuits.
First, I'll look at how we can protect electronic equipment from external stresses.
Even the best semiconductors, like ICs, can be damaged by unusual currents and electrostatic discharges caused by differences in potential between devices.
It's always important to have protection in place, and of course It don't affect the input and output signals.
The easiest way to do this is to put resistors in the input and output sections.
I'll show you this with some practical circuit examples. I'll also explain other power supply circuits. And I'll also look at some other uses for filter circuits.(2024.12.01 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

フィルタの実用には・・
 Blogの目的の第一は自身の備忘ですから忘れぬくらい良くわかってることを必要以上書く意味はないのです。 しかし時間の経過とともに忘れて行き何故そうしたのか初めの意図がわからなくなることがあります。 自分で設計した回路を眺めながら・・・ハテと思い出せないこともある訳なのです。w

 もちろん齢とともに物忘れが加速中と言うのもあるでしょう。しかし誰しも半年も過ぎたら細かい記憶が薄れてきて不思議ではありません。そのためになるべく細かくメモを取ってはいるのですが・・・。
 前回のBlog(←リンク)で設計した3D-Audio用のフィルタですが、わかって使えば支障はありません。しかし後からいくらか補足すべきだったことが思い浮かびました。 忘れないよう早めにメモっておくのが今回のBlogの目的と言ったところです。 なお、後ほどシンプルな電源回路が登場しますがこれは自分用と言うよりも読者サービスです(笑)

 写真はフィルタ用のICで、今回の話に直接の関係はありません。 始めの部分に何にも絵がないと寂しいので載せています。 FLT-U2(←リンク)とMF10CCN(←リンク)は扱い済みです。MAX7400はまだBlogで扱ったことがありません。

                   ☆

 ことし(2024年・令和六年)もついに師走になってしまいました。光陰矢の如し、1年って早いものです。 あれほど酷暑だった今夏も既に過去のこと。  忙しい年末です。こんなBlogを眺めてウロウロしていても進みませんよ。w さっさと年越しの準備でも済ませておヒマができたら改めてお出かけください。冬至も近づき日も短くなってきました。諸事お早めのスタートがです。

ローパス・フィルタ:その1
 ローパス・フィルタの回路図です。

 フィルタとしてしては、前回のBlogで扱ったママです。 基本的にそのままで良いのですが、入力と出力の部分に保護抵抗を付けてあります。 #1と#2と付いている抵抗器がそれです。

 何かの回路の途中に「アクティブ・フィルタ」として挿入するのなら「保護抵抗」は必要ありません。

 3D-システム用のフィルタ装置のように独立した機器として製作し、オーディオ機器の間に入れて使う場合は保護を設けておくべきです。

 #1と付いた抵抗器が入力保護用です。 何もなしにOP-Ampの入力端子を外に引き出しておくと壊れる危険があるのです。 特にRCA型のフォノ端子を使っているとかなり危ないです。この端子は先端のピン部分が最初に接続される構造です。 シールド部分(GND側)が先ならまだ良いのですが・・・。 接続する機器の間で電位差があると繋いだ瞬間にやられる可能性があります。 また静電気のディスチャージも怖いのです。

 #2は出力側の保護抵抗です。 昨今のOP-Amp.は出力を瞬時短絡した程度で壊れることはまずありません。 しかし、機器間の電位差などにより数10mAも流れたら壊れます。 100Ωの抵抗で万全なのかと言われると困りますが何も入れないよりも随分強くなるのは間違いありません。入れてあれば壊れる危険は相当程度回避できるのです。 負荷の状況如何ですがもし可能なら1kΩくらい入れたいところです。

 真空管の時代はこうした心配はありませんでした。 グリッドに繋がっている入力端子を経由して球が破損することなどまず考えられません。
 しかしOP-Amp.のようなICは内部の構造が極めて微細です。 同じ半導体でもトランジスタなら大丈夫だったアクシデントもICは微細で脆弱ですからちょっとした電流や静電気で破損する危険性は高いのです。 本当はもっと本格的な保護回路を設けたいところなのです。
 しかし煩雑になるのと何がしかオーディオに影響が出ることを嫌って「最低限の保護」にしています。 まずは機器どうしのGND系を接続し、それから信号系の配線を繋ぐことを前提にしたいと思っています。

参考:-18dB/octの回路として(C)と(D)の2種類が載せてあります。 先に低次の-6dB/octを置く方がフィルタとしてのダイナミック・レンジが広くなります。 S/Nの点では(D)の方が幾らか有利という考えもあるので優劣は考え方次第だと思っています。 フィルタ特性は(C)と(D)で同等です。好みで選んでください。 私はどちらかと言えば(C)を選びます。

 これらの回路はいずれもフィルタ回路を±15Vの電源で働かせる例を示しています。

ローパス・フィルタ:その2
 同じくローパス・フィルタの回路図です。

 基本的に一つ前の回路と同じですが、この例では+24V〜30Vの単電源で製作する例を示しています。 電源トランスの事情や他の機器から電源を分けてもらう都合などにより、単電源で動作できたら有難い・・・と言った場合に適しています。

 前の回路でも設けてありますが、信号が入ってすぐの部分にOP-Amp.を使ったバッファ・アンプ(ボルテージ・フォロワ)が入れてあります。 これは必須のアンプです。

 いずれのフィルタ回路も前段回路の出力インピーダンスが低い(ほぼゼロΩ)ことを前提として設計されているからです。 そのため、きちんとした予定通りのフィルタ特性を得るためには前段にバッファ・アンプを設ける必要があります。

 単電源(片電源)で働かせるために電源電圧の半分に相当する直流的なバイアス電圧が掛かるようにしてあります。 アンプの入力部にある220kΩ(2本)がそのバイアス用抵抗器です。 入力インピーダンスは概略110kΩになります。

 電源電圧にはかなり自由度があります。+9V程度の単電源でも働きますが、それだけ扱える信号の大きさは小さくなります。+9Vでは3Vpp程度が上限でしょう。 それさえわかっていれば低い電源電圧でも支障はありません。 上限はOP-Amp.の耐圧で決まり、一般的に電源電圧はトータルで+30Vまでです。それで24Vpp(≒8Vrms)くらいまでの信号が扱えます。 稀に高耐圧が特徴のOP-Amp.もあって、より大きな信号を扱いたいならそれを使うと有利でしょう。

ハイパス・フィルタ:その1
 ハイパス・フィルタの回路図です。

 ±15V電源で作る場合を示しています。 ローパス・フィルタとほとんど同じ部品点数で製作可能です。 設計周波数:Fc=70Hzになっていますが、もちろんこれは一例であって、前回のBlog(←リンク)の設計式に従って他の周波数に変更できます。

 あとは取り立てて言うまでもないのですが、入・出力保護やバッファ・アンプの要件もローパス・フィルタと同じです。

 ハイパス・フィルタの使用例は意外に少なくて、世間ではローパス・フィルタの方が圧倒的に多用されていると思います。 これは回路や増幅素子の非直線性によって発生する高調波を除いて歪みや広帯域のノイズを減らしてS/Nを向上させると言った用途があるからでしょう。 またA/D変換の前にはローパス・フィルタが必須という事情もあります。

 ハイパス・フィルタは意外に理想通りではないことが多いものです。 これは、OP-Amp.で作ると高い周波数の特性がアンプ自身の周波数特性で制限されるためで、意外に低い周波数からゲインが下がってしまいバンドパス・フィルタのようになってしまうことがあります。 なるべく周波数特性の良いOP-Amp.を使う必要があります。 このハイパス・フィルタはSallen-Key形式なので同じOP-Amp.を使った他形式と比べて有利と言えます。

ハイパス・フィルタ:その2
 同じくハイパス・フィルタの回路図です。

 この例では、+24〜30Vの単電源(片電源)で設計しています。 機能的には±電源で設計したものと同等ですが、ご覧のようにだいぶ部品が増えてしまうことがわかるでしょう。 これはいずれもバイアス電圧を与えるためで、単電源で動作させるため止むを得ないのです。 こうした措置は真空管を使ったハイパス・フィルタでも同様にあったことですが、ローパス・フィルタと違ってどうもスッキリしません。

 電源の都合でどうしても単電源で作りたい場合は止むを得ませんが、新規に電源から作る(用意する)なら±電源を作った方がスッキリしますし、たぶん製作もしやすいでしょう。

 入・出力保護に対する考え方はここまでのフィルタと同様です。 独立した機器として製作する場合には設ける必要があります。

                   ☆


Power Supply:電源回路
 Blogの記事では電源部を省略することが多いのですが、せっかくの製作も電源回路(電源部)の例示がないのは残念だと感じるお方もあるそうです。

 電源部は出力電圧と電流容量こそ様々ですが回路の共通性があって、毎回新規に設計する必要のない場合が多いものです。 半導体回路の場合はだいたい電源電圧は決まっており、電流容量もパワー・アンプを除けばごく小容量で済みます。 従って製作は難しくありません。

 回路例は±15Vの電源と、+24Vの単電源を作る2つの具体例です。 取り出せる電流の大きさはだいたい100mA程度を考えていて小規模の付加装置には十分でしょう。 今ですから特殊な用途を除き、三端子レギュレータを使って安定化電源を作るのがベストです。 その際ですが専用の放熱器は省いても良いのでシャシへ放熱する工夫は是非とも必要です。(放熱器を付ければなお良い) まったく放熱なしでは、たったの100mAでも熱的に厳しいことがあります。 レギュレータICを取り付ける際は放熱シートを挟むかシリコーン・グリースを塗布して熱抵抗を下げるように努めます。

 整流用のダイオード・ブリッジは、初めからブリッジ回路になっている専用品があります。 それを使うと便利ですが、手持ちがあれば逆耐電圧:100V以上、平均定格電流:1A以上の規格を持ったダイオードを4本使ってブリッジ回路を組む方法もあります。 例えば1N4007を4本使うとか・・・

 電源トランスの電流容量をアップしレギュレータICの放熱を十分行なえば1A程度まで同じ回路で製作できます。合わせて整流用ダイオードの放熱もお忘れなく。 なお、最近は電源トランスを含め電源部品のコストが高騰しています。 ある程度大き目の電流容量が必要なら超ローノイズなスイッチング電源も登場しているのでそれを購入する方が経済的かもしれません。 特に電源トランスが高くなったのには驚かされます。 さりとて中華モノは・・・。(笑)

電源モジュールの写真
 既に廃れていますが昔は写真のような電源モジュールが市販されていました。 これらはいずれもローノイズなシリーズ電源です。 AC100Vを加えれば±15Vと言ったDC電圧が得られる便利なパーツでした。

 上面から見るとハガキ半分くらいのサイズでせいぜい数ワットの容量です。 電源トランスを内蔵しているのでズシリと重いのが特徴です。 小規模なOP-Amp.回路を動作させるには便利だったのですが・・・。

 いまどき望んでも手に入りませんので、何らかの工夫をして既製品のSW電源使うか部品を集めて上記回路図のようなを電源装置を作る(組み込む)ことになります。 電源は簡単に作れそうに思っても意外に面倒な部分でもありますね。 電源の製作が目的なら別ですが、一般に造るハリアイもあまりありません。 モジュールがあったら使いたいという気持ち良くわかります。

                   ☆

 さて、書き忘れていたこと、回路の保護について、電源の話しなど赴くままにメモっておきました。 これでオシマイなのですが、フィルタ関連の資料を見ていたら面白い実験回路を見つけました。 部品数が意外に多いと感じますが実用的に使えそうな感触が得られたので以下紹介しておくことにします。 「ユニバーサル・フィルタ」と称するものです。

ユニバーサル・フィルタ回路図
 ますは回路図をご覧ください。

 回路の基本は典型的なステート・バリアブル型フィルタ(状態変数型フィルタ)です。

 フィルタのQを可変しやすく工夫したところが面白い部分です。 回路そのものは状態変数型フィルタですね。

 この回路はフィルタとしてローパス、ハイパス、バンドパス、ノッチの4種類のフィルタとして機能します。 同一回路が多様なフィルタとして使えるのが特徴です。 それぞれハイパスとローパス・フィルタは-12dB/octの傾斜です。OP-Amp.の数は多いですが特に傾斜が急峻でキレが良いわけではありません。基本的に-12dB/oct(=-40dB/dec)のフィルタです

 Qを変えると周波数特性の肩部分にできるピークの大きさを変えることができます。 もちろんバンドパス・フィルタのQも可変できるわけです。 カットオフ周波数:Fcにあまり影響を及ぼすことなくQを可変できるのがメリットです。 なお、先のLPFやHPFの設計で出てきたダンピング係数:ξは、ξ=2/Qの関係があります。 もちろんξ=0.7071に設定すれば-12dB/octの分波フィルタとして使うことができます。

 もう一つの特徴はスイッチの切り替えで簡単に「正弦波の発振器」に変身できることです。 スイッチひとつでフィルタがそく発振器になるのです。 振幅制限にダイオードの順方向特性を使ってクリップしている関係で超低歪みではありません。 またダイオードの温度特性が現れるため振幅の温度安定度もあまり良くはありません。 しかしAGCのような時定数を持った発振振幅の制御回路を使っていないので超低周波の正弦波発振が可能です。1Hzとか0.1Hz・・・0.01Hzの正弦波も発振できます。 たぶんそれ以下も・・・。

 発振周波数は:fo=1/(2・π・C・R)で計算できます。 CはC1とC2の大きさで、RはVR1a,bの大きさ+1kΩです。 VR1a,bはBカーブの2連型を使い周波数の可変に使います。 回路図の定数:C1=C2=0.01μFとし、VR1としては100kΩ(2連型)を使った場合、計算上では:fo=約158Hz〜約15.9kHzの周波数範囲を可変できます。実際にもそれに近い可変範囲が得られるでしょう。(フィルタとしての遮断周波数:Fcも同じ計算です)

 ノッチ・フィルタを使うことがなければ4回路入りのOP-Amp.一個で作れます。U2を省略します。 なお、発振回路にしたとき、Qを変えるVR2で発振の大きさ(振幅)を変えられます。 振幅を大きくしすぎると電源電圧による制限で正弦波の頭の部分が潰れます。 オシロで波形を見ながらVR2を加減します。

フィルタの外観写真
 試作の様子です

 4回路入りのOP-Amp.は回路図通りTL074CNを使いました。 2回路入り:U2は手近にあったTL062CPを使いましたが、もちろん回路図通りTL072CPでも大丈夫です。 良いOP-Amp.を使うことに異論はありませんので、どんどん使うべきですが、まずは手持ちで試してみて必要に応じグレードアップするのも良いでしょう。

 振幅制限のダイオードは1S2076Aを使いましたがシリコンの小信号用スイッチング・ダイオードなら何でも大丈夫です。 1S1588、1N4148、1N914、1SS53などのほか、最近になって流通している1SS178等たくさん代替品があります。

 周波数の高い方はだいたい20kHzくらいが限界です。より高い周波数で使いたい場合は高速OP-Amp.を選びます。 低い方の制限はおおよそコンデンサ:C1とC2の容量値で決まります。 やっていませんが0.01Hzといった正弦波も十分発振可能でしょう。
 C1=C2=10μFのフィルムコンデンサを選び、R1a=R1b=1.6MΩに選ぶとfo≒0.01Hzになります。 どんな用途があるのか私にはわかりませんけれども・・・。

発振波形:1kHz
 LPF Output端子:OSC2で観測した発振波形です。

 発振の大きさは27Vppでこれ以上では歪みます。 VR1a,bを加減して発振周波数が約1kHzになるよう合わせています。 波形を見る限りかなり綺麗な正弦波ですね。 VR1a,bで発振周波数を変えても発振の大きさはあまり影響を受けません。

 状態変数型フィルタを応用する発振器の多くは、OP-Amp. U1aの非反転入力端子:Pin 3へ正帰還する方法を使うことが多いようです。 上図のように一旦信号を反転してから反転入力:Pin 2の方へ帰還しても良いわけです。 但し信号が多段のアンプを通る関係であまり高い周波数の発振には向きません。低い方の制限はほとんど無いはずです。 目的によっては使い勝手の良い正弦波発振回路でしょう。

歪み率測定
 せっかくの機会なので歪率を測定してみました。

 発振周波数が約1kHzになるようVR1を合わせます。VR2で振幅が約27Vppになるよう調整しました。 Qの大きさで発振振幅を加減している関係から、なるべくHigh-Qになるよう・・・波形の頭がクリップしない範囲で振幅が大きくなるように調整した方が低歪になるようでした。 その状態で観測した歪率は約0.24%です。

 このBlogには超低歪み発振器(←リンク)があってそれは0.001%と言った値です。 それから比べたらずいぶん大きな歪に感じるかもしれません。 しかし一般に良く見かけるような「正弦波発振器」は1〜3%の歪み率なら良い方です。 比べて0.24%なら低歪みと言っても構わないくらいです。 なお、振幅の制御がダイオードによるクリップ式なのでOP-Amp.を換えてもそれほど低歪みは期待できないでしょう。 もし超低歪みを目指すなら別の形式の回路を検討すべきです。

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 低周波帯のフィルタ繋がりでBlogを追記しました。 フィルタ特性の設計部分は前回のBlogで済んでいますが装置として完成させるには幾らか考慮すべき事柄が残っていました。 少なくとも壊れないための対策は必須なわけです。 気になった部分でもあるためさっそく追記しておくことにしました。

 これはおまけの内容ですがアクティブ・フィルタの関連で資料を当たっていたら面白いフィルタ回路が目にとまりました。 Bi-Quad型と並んで状態変数型フィルタはアナログ回路技術としては十分ポピュラーな存在です。 一つの回路で様々なフィルタ特性が得られることも皆さん良くご存知でしょう。 それを独立した実験用補助装置として製作しおくと意外に役立つように感じます。 多機能なフィルタとして便利ですし、ちょっとした正弦波の発振器が「特殊部品なし、難しい調整なし」で作れますからなかなかオススメです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm