2020年5月23日土曜日

【回路】MECL Design notes (1)

ECL-ICの使い方ノート(1)

 <abstract>
Are you familiar with the logic IC family called MECL?  MECL is the nickname of Motorola's ECL-IC family. It is characterized by high speed and low noise generation. I will use MECLs a few times on this Blog. The first time I make a crystal oscillator using a MC10116P. This oscillator will be used as a clock oscillator in next experiment.   (2020.05.23   de JA9TTT/1  Takahiro Kato)

MECL ICs
 モトローラ社のECL-ICファミリはMECL(メクル)の愛称で呼ばれています。高速ロジックICといえばECLが唯一だった時代もありましたが、今ではすっかり廃れてしまったようです。 ごくわずかに「プリスケーラ」の用途に残っているくらいでしょう。
 アマチュア無線の製作でECLを使うとすれば、周波数カウンタの前に付加して測定上限周波数を拡張するためのプリスケーラくらいです。 そうしたプリスケーラ用ECLは他のロジックICとインターフェースが容易なようにできています。

 ECL-ICを使ったRF信号の90度位相器を目的に部品集めを始めました。PSN式SSBジェネレータの続きと言う訳でもないのですが、前から気になっていたので試すことにしました。 MECLは既に廃れたロジック・ファミリですから中華通販が頼りです。古臭くて人気のないICですからフェイクの心配などないでしょう。 あとは希望の型番が手に入るか否かです。 さっそく実験に必要なチップは見つかりました。 しかし新型コロナの影響は深刻です。注文した頃には中華通販は大幅な配達遅延が発生していました。予定した品がまだ届きません。 まずは先に届いた部品で可能な実験から始めることにしました。 初回はMECLを使った水晶発振器を作ってみます。 うまく行けばこの先の実験で信号源に使いたいと思います。

                   ☆

 新しい高速ロジック・ファミリが登場しています。いまどきECLでもないかと思ったのですが、興味半分で扱ってみます。 プリスケーラのような専用のECL-ICに馴染みはあっても、汎用のECLファミリーをちゃんと扱うのは初めてでした。 まずは初めて見るような回路記号の理解や異常にさえ感じる電源の与え方などを飲み込むのがスタートポイントでした。 もっぱら自身の興味だけで始めています。 ECLを使った90度位相器や、古臭いロジック・ファミリに興味がなければ、この先は面白くないでしょう。早々にお帰りください。

 【BBの接地極を変更
 ECL-ICの常識については次回あたりで詳しく扱いたいと思います。 なぜプラス接地で使うのかと言った話は取り敢えず省きますが、まずは実験への対応をしておきました。

 ブレッドボードで高周波や高速ロジックを扱うには、金属製ベースボード(基台)の処理が必要です。購入したままではどこにも接続されず電気的に浮いた状態です。 そのままでは旨くないので、必ず回路のGND側に接続しておきます。 こうした処理は高周波や高速パルス回路だけでなく、ノイズを非常に嫌うオーディオアンプ等の実験でも必須でしょう。

 現代ではNPNトランジスタを使うことが多いですから、ほとんどの回路は電源端子のマイナス側が接地された「プラス電源」で設計されています。従ってベースボードは電源のマイナス側に接続します。(写真で言えば黒のターミナル) しかしECLはプラス側を接地して使うのが標準です。C-MOSやTTLに馴染んだ者にとって、ECLの電源はマイナス5.2Vという異常さです。(笑) この対応のため、写真のようにベースボードは電源のプラス端子(赤色)に接続しておきました。これが実験の手始めです。

ピン列矯正器
 これは写真のMC10116Pに限った話ではありませんが、購入したままのICはピン列の間隔が広すぎます。

 色々なピン列矯正器が市販されていますが、写真のものを使いました。 このような道具を使うとブレッドボードへの挿入がスムースに行なえます。

 道具がなければ金属板の上で押さえつけて少し曲げてやればOKです。 そうして済ませることも多いのですが、流石に道具を使うと確実ですね。

 【MECL Crystal Oscillator
 こんなことを書くと混乱するかもしれませんが、ここで使ったMC10116Pは純然たるECLロジック回路のICではありません。 ゲート回路やフリップ・フロップ回路のような論理回路を司るICではないという意味です。 ラインレシーバのICでどちらかと言えば、アナログICに近い存在です。 もちろんMECL10KファミリのICではあるのですが。

 ECLはエミッタ結合ロジック(Emitter Coupled Logic)の意味ですが、もともと差動増幅のリニアICのような回路構造になっています。(だからバイアス端子:VBBなんて言うものが必要なんですが・笑) MC10116Pのようなラインレシーバはそのアナログ的な性格が強く、主に信号伝送回路のインターフェースに使うものです。 内部は増幅作用を持った差動増幅器が基本的な構造ですから、水晶発振子を正帰還ループに入れてやれば発振器になります。 図のようにU1aの出力端子:Pin 3から+入力端子:Pin 5の間に水晶発振子を接続します。 水晶発振子に直列あるいは並列にトリマ・コンデンサを入れれば発振周波数の微調整もできます。

 Pin 2の反転出力端子の波形は概ね矩形波になっていますが、さらに波形を良くする目的で、U1bでシュミット回路を構成しています。Pin 6からPin 9へ正帰還を掛けて波形を整えます。 U1cはバッファ・アンプです。出力はこのバッファ・アンプから取り出します。 出力は2つあって、一つは反転出力になっています。 ツイステッド・ペアのような平衡ラインで信号を送るときにはこのコンプリメンタリな出力を使います。

 510Ωの抵抗器がやたら目立ちますが、これはIC内部の出力部分のトランジスタがエミッタ・フォロワになっており、しかもエミッタ端子(出力端子)とマイナス電源端子:VEE間に入れる抵抗器が外付けになっているためです。 この回路例のように単独のIC内で信号の授受が完結する場合、外付け抵抗は面倒でしかありません。しかし他の回路部分へ信号を伝送する際には受端側に外付け抵抗器を置けば終端抵抗として機能し良い波形の伝送ができます。このあたりはECLの使い方の基本的なところのようです。

 MC10116P自身の消費電流は、標準17mA、最大21mAです。ECLは消費電力が大きいと言われますがその割にこの消費電流は大きくないように感じます。しかし、実際にはたくさんある外付け抵抗の510Ωに流す分が追加されて全体の消費電流はかなり大きくなります。 もし周波数特性が悪くなってもよければ510Ωをもっと大きくしても動作はするようですが、標準はやはり510Ωなのです。(非常古い初期のECLの頃は500Ωでした。その後、E系列の近似値である510Ωが標準になったようです)

 発振は容易にスタートしました。 5MHz、8MHz、10MHzなど発振子を交換してテストしましたがどれでも旨く発振しました。 回路を工夫するとオーバートーン発振も可能です。

YAESU YC-500の入力アンプ
 これは参考です。 左はMC10116のアナログ的なアプリケーションを示す一例です。 八重洲無線の周波数カウンタ、YC-500のインプット・アンプ部分です。

 J-FETのソース・フォロワのあと、MC10116を使ったアンプとシュミット回路を使った波形整形回路になっています。 左端のPNPトランジスタはTTLまたはC-MOSとインターフェースするためのレベル変換回路です。

 MC10116の高速広帯域な特性を生かしたインプット・アンプになっており十分増幅することでHF帯で高感度が得られるようになっています。 この回路ではECLはたった一つだけなので他のICと共通になるよう+5Vの単一電源で済ませ電源系がシンプルになるよう工夫しています。 周波数カウンタの入力アンプとしてなかなかFBですが消費電流の多さをいとわなければ・・・ですね。
 YC-500の詳しいことはメーカーのサイトにある取扱説明書を参照してください。  MC10116のアナログ的な応用例として紹介してみました。 MC10116はこうしたアンプに使えるのですから、水晶発振器にも使える訳です。

 【BBで試作
 水晶発振回路を試作しました。 実は使ったブレッドボードがあまり適当ではなかったようです。

 最近購入したこれはGNDとVCCラインが中央部分にしかないので、高速パルス回路としての合理的な部品配置ができませんでした。 そのため、無用な配線の引き回しが多くなってしまい、きれいな波形を得るのが困難でした。 部品配置も最適にできません。

 とりあえず水晶発振器の実験にはなったのですが、追加のECL回路を組み立てるのは適当ではないと思います。 改めて別のパターンのブレッドボードで作り直すつもりです。 これはあまり良くない見本でしょうね。(笑)

 【出力波形
 オシロスコープにプローブを付けて観測しています。しかし、プローブのアースリードが長いまま観測するとこのようにオーバーシュートやリンギングが出てしまいます。

 正しい観測は、プローブの先端に専用の接触チップを取り付け、アース側の接続が極力短くなるようにして観測します。 そうしたことはわかっているのですが、ついつい面倒なのでいつものように観測するとこのようになる訳です。(笑)

 ECLの論理振幅は0.8Vくらいで約-1.3Vを中心に振れる矩形波です。 他のロジックICでは、おおよそ電源電圧いっぱい近くまで振れるのに対し、ECLはたいへん小さな論理振幅のように感じます。電源電圧5.2Vでたったの0.8Vなのですからね。 電圧ノイズマージンが気になるところですが、平衡伝送で信号を送り、ラインインピーダンスも低くできることからおそらくこれで十分な論理振幅なのでしょう。
 基本的に非飽和なA級アンプのような動作をしています。トランジスタが飽和やカットオフを繰り返すスイッチング的な動作とは異なり電源ラインへ漏れるノイズは少ないのでしょう。 簡単に言うとエミッタ側定電流源の電流を切り替えているだけの動作ですから、電源電流の変動は少ないのです。

Pin 5の波形観測
 U1aのPin 5を観測してみます。 ここはアンプの入力端子に相当します。 バイアス電源である、VBB端子から1kΩを通してバイアスが掛かっています。

 U1aの出力端子:Pin 3は矩形波出力ですが、水晶発振子を通った基本波の成分だけが現れるでしょう。 従って正弦波状の波形が見られるはずです。

Pin 5の波形
 Pin 5の波形はこのように正弦波になります。 プローブへ矩形波の誘導があるためか、少しギザギザしていますが、注意深く測定すればもっと綺麗な正弦波が観測できるはず。

 バイアス電圧:VBBは実測で約-1.35Vなのでそこを中心に振れる正弦波が観測されました。 入力端子で約1.2Vppという大きさの振幅なので、ラインレシーバ:U1aで十分に増幅され矩形波になって出力に現れます。 Pin 2の出力はPin 3の出力が反転しただけのものです。 水晶へ行く側と分離することで干渉が少ないようにして発振状態に影響が及ばぬよう考えられた回路になっています。

                   ☆

 MECLを使った水晶発振器を作ってみました。 波形観測の手抜きをしたので少々汚い観測波形になってしまいましたが、確実な発振が可能であることは確かめられました。 また、この先のECL回路のテストに必要な論理振幅のクロック源が得られることもわかりました。
 PSNタイプのSSBジェネレータ/エキサイタにあった、アナログな移相器に代わるデジタルな位相器を試すのが当面の目的です。 次回は高速フリップ・フロップを駆動して90度位相差の2信号を得る実験をやってみたいと思っています。 それまでに不足している部品が届いてくれたら良いのですが。さて、どうなりますか。 de JA9TTT/1

つづく)←リンクnm

2020年5月7日木曜日

【Antenna】Low Band Antenna Modification.

ローバンド用アンテナを改造す
 <Abstract>
The low-band antenna I'm using needs to be modified. This is because Japan's Amateur Radio Band (HAM Band) has been changed. The 160m band of the Top Band has been extended to the lower frequencies.
First, I add about 2 feet of test leads to both ends. Then I look at the transfer of the resonant frequency. I modified the antenna according to the results of that test.
The performance of the modified it was quite good and I was able to go on the air immediately.  (2020.05.07  de JA9TTT/1  Takahiro Kato)

既設アンテナの160m Band対応
 160m Bandはアンテナがでかいです。市街地に住む私にとって長年の課題でした。まずはじめ設地型の変形バーチカルを建設しました。バーチカル・アンテナならあまり敷地面積を必要としないからです。給電点の根元でマッチング回路を切替えて160mと80mバンドの2バンドに出られるようにしました。切り替えはシャックからリモートでした。
 いまのQTHに移ってタワーを建てた際、Low BandはSloperにしました。これも敷地面積の関係です。周辺に店舗や住宅が少ないうちは飛びも聞こえもまずまずでした。やがて新しい幹線道路が開通しコンビニもでき店舗が増えると接地型に近いSloper Antennaはノイズレベルが急上昇です。やむなく平衡型の逆V型に変更したのが現用アンテナの前身です。 トラップタイプのやや短縮型なのでバンド幅は無短縮なアンテナほど取れませんが160m Bandはたった5kHzがカバーできればOKでした。

 先日のBlog(←リンク)のように、4月21日からローバンドが拡張されました。従来はDXerの専用のようになっていた1810〜1825kHzでしたが、75kHz幅に拡張されたことからこちらにオンエアできたら面白そうです。 まずは様子を見る目的でアンテナの共振周波数を変更する簡単なテストから始めました。 結果は国内局が相手ならまずまず使えそうです。

                   ☆

 160m Bandなんてアンテナが無理だから自分には無縁だよ・・・という声も聞こえます。 もちろん、このバンドの標準的なDXerが建てるであろうフルサイズのDPや逆Vアンテナともなると架設可能な局は限られるでしょう。当局もまったく無理です。 しかしDXはダメでも近くの局を相手にぼちぼち楽しむ程度のアンテナなら意外に可能性があると思うのです。 特にJT-65なりFT8のようなデジタルモードならばアンテナの帯域幅が狭くても支障はありません。特定周波数の3kHzくらいの幅にオンエアしているからです。短縮ホイップのような超短縮アンテナでも目的周波数にきちんとチューンすればかなり使えます。もしLow Bandにも興味がわいてきたら一度試されるのも悪くないと思います。製作過程を含めて思いのほか楽しめるに違いありません。

 ここでは応急措置として既設の4バンド逆Vアンテナ(←リンク)の先に「ヒゲ」を追加して共振周波数を下げてみます。 もともとが狭小な庭先にジグザグに折り曲げて何とか架設したアンテナです。 DXingははなから目的としませんが国内局相手にそこそこ飛んでくれたら嬉しいと言った感じでしょうか。 自身の限られた環境から何とか可能な方法を探って悪あがきしてみました・・・とでも申しましょうか。とても自慢になるようなお話ではありません。 しかし何でもそうだと思いますが、やってみないとわからないことって多いものです。 以下、お時間でもあればリラックしてご覧を。(笑)

参考:写真は4バンド逆Vアンテナの160m用折り曲げエレメント部分です。(改造前)

 【初期状態のSWR特性
 4バンド逆Vアンテナを改造する訳ですが、まずはその前に現状の共振状態を確認しておきます。

 ネットワークアナライザに方向性結合器を付加し、リターンロスを測定します。リターンロスのまま読んでも良いのですが、一般的なHAMにもわかり易いようSWRに変換して画面表示させました。 SWRが5以上の部分は何を意味しているのか怪しいので参照しません。 だいたいSWR<3のあたりまでを参考にします。 画面は左端が1MHz、右端が10MHzで横軸はLog目盛になっています。縦軸は上記のようにSWR表示でひと目盛は「1」間隔です。一番下の赤いラインがSWR=1です。なお、測定は50Ωを基準のインピーダンスとしています。

 4バンドの逆Vアンテナですから当然ですが、160m Band、80m Band、 40m Band、30m Bandの4箇所に共振点がみられます。 160m Bandのところにマーカーを当てると1884kHzあたりにSWRのミニマムがあるようです。建設直後の調整時よりやや下がった印象もありますが、その時とは測定方法も異なるので「まあこんなものか」と思います。(笑)

 実測の共振点は1910kHzよりやや低いのですが、ハムバンドの1800〜1875kHzには入っていません。 できたら共振点がバンドの中心付近にくるよう調整したいと思います。 あるいは最近になってFT8にオンエアを始めたこともあり、このバンドのFT8のオンジエア周波数である1840kHzを狙ってみるのも良さそうです。 それで、どれくらいエレメントを延長したら良いのでしょうか?

 無短縮のDPアンテナあるいは逆Vアンテナなら必要な延長量は計算から見当をつけることができます。 1884kHzの波長をλ1とすれば、λ1≒158.24mで、さらに1840kHzの波長をλ2とすると、λ2≒163.04mです。ざっくり考えて、延長すべき片エレメントの長さがはλ1とλ2の差の4分の1あたりでしょう。λ2-λ1=4.8(m)ですから、両端それぞれに約1.2mくらいずつ延長する必要がありそうです。
 ただしここで改造予定のアンテナは短縮型です。そのため先端エレメントの効き方はずっと大きいので、追加の「ヒゲ」はもうちょっと短くても良いはずです。

 【テスト・リードを足してみる
 計算である程度様子はわかりました。 わずかな周波数の移動なのに意外に長めの「ヒゲ」を足す必要がありそうです。 アンテナが周囲の影響を受けるのは当然ですから見当をつけたらあとは実験して確かめるのが一番でしょう。

 さっそくエレメントの先端をサンドペーパーで良く磨き、ミノムシクリップ付きのテスト用リード線をぶら下げてみました。アンテナの両端に同じ長さのテストリードを付けますが、これは言うまでもないでしょうね。 何ともいい加減なやり方ですが、これで共振周波数の移動くらいならわかるはずです。

 このアンテナはメンテナンスの便を考えて両端部分が滑車で上下できるようになっています。 一旦下げてテストリードをくわえたら元も戻しておきます。 こうした短縮アンテは架設環境の変化にデリケートですから最終的に架設する状態で確認しなくてはなりません。

 【足した効果は?
 アンテナ・エレメントの両端に同じ長さのテストリードを追加して共振周波数の移動を観測しました。

 測定方法は上述と全く同じです。 書き忘れましたが、測定ポイントはシャックに引き込んだ同軸ケーブルの先端です。
 要するにリグが接続される部分ということになります。これは従来から行なっている通り、現実に即した測定をしたいからです。 アンテナの研究が目的なら給電点で観測すべきでしょうね。

 さっそく共振周波数を確認しましょう。マーカーを当てて見ると1840.8kHzにSWRのミニマムが来ています。 狙ったように目標の周波数ですが、たまたまの偶然です。(笑)

 SWR=1にならないのは、共振点でもインピーダンスが50Ωになっていないからです。 このアンテナは短縮型でかなり鋭角の逆V型ですから、50Ωよりも低くなっているはずです。 SWR≒1.5ですから、Z0=34Ωくらいなのでしょうね。(まあ、横着をせずにインピーダンス測定モードで観測したら一目瞭然なんですけどね・笑)  オンエアする際はアンテナチューナを使います。 これくらいなら十分カバー範囲ですから支障ありません。 だいたいわかったので黄色いテストリードから脱却するため追加の「ヒゲ」を製作することにしました。単なる電線を用意するだけなので「製作」と呼べるほどのものではないですけど。

 【テスト・リードは約55cm長
 足したテストリードの長さは約55cmでした。 もう少し長さが必要かと思ったのですが意外に短めで済みそうです。

 使ったのは両端がミノムシ・クリップのテストリードです。 末端部にミノムシ・クリップが付いているため微妙に静電容量が大きくなっている筈です。 端部の大きな導体は効くからです。 たぶん、55cmちょうどのリード線を足したのでは、共振点はやや高めの周波数になるでしょう。

 調整しろなども考えて、65cmの長さの「ヒゲ」を用意することにしました。 両端に足しますから2本作ります。

 今回はニューバンドの様子を見るのが主目的です。 あまり面白みを感じなければ昔ながらの1910kHz±2.5kHzへ戻ることを考えています。 「ヒゲ」は片端にミノムシ・クリップをつけたものにしました。 「ヒゲ」があまり目立っても困るので、元のエレメントと同化するよう黒い被覆の単線ワイヤを使います。(例によって被覆線ではなく裸の銅線の方が望ましいのですが・・・)

 【65cmのリード線を追加
 さっそく足してみます。 あくまでも仮設の延長ですからミノムシ・クリップでくわえているだけです。 ハンダ付けはしていません。

 流石にそれだけでは耐候性は皆無です。 自己融着テープを巻いて簡易に防水対策しておきます。  ただしサンドペーパーで磨いてある、相手側の導線もやがて酸化してくるでしょう。 いずれ接触不良が発生するであろうことは目に見えています。

# 恒久的にオンエアすると決めたらいずれ圧着かハンダ付けをしたいと思います。 まずは様子見の仮設ですね。

 【リード線追加後のSWR特性
  肝心の160m Bandですが、65cmの「ヒゲ」を足しただけで、1840.7kHzに共振しました。

 両端ミノムシ・クリップのテストリードより10cmほど長くしましたが、ちょうど良かったようです。 リード線の太さも違いますし、使った電線の被覆の種類や厚みも違うのでこれくらいの違いは生じるのでしょう。 防水のテーピングも施し、所定の架設高までアップしてあります。 引き上げ用ロープの末端をきちんと固定し直すと言う追加の作業は必要でしたが、エレメントの加減はまったく不要でした。

 これで終了なので他のバンドの共振状態も合わせて確認しておきました。
(1)160m Band=1840kHz
(2)80m Band=3508kHz
(3)40m Band=7012kHz
(4)30m Band=(観測対象外)

 トラップコイルより下側の周波数でエレメント長を加減しても、その上のバンドの共振周波数に影響は及ばないことがわかっています。 今回は160m Bnadのエレメント両端に各65cmも追加したのですが、80m Band以上への影響は見られませんでした。 これは従来から思っていた通りです。 30m Bandは未計測ですが、このバンドは無短縮なので帯域幅は十分に広いため測定を省きました。10.1〜10.15MHzでSWR<1.5になっていたと思います。

160m BandのSWRは?
 160mのバンド幅はどれくらいとれそうなのか拡大して詳しく観測してみました。

 バンド下端の1800kHzでSWR=2.7、仮の目標の1840kHzでSWR=1.5、さらにバンド上端の1875kHzでSWR=2.9となりました。

 短縮型のアンテナなので、どうしても帯域幅は狭くなります。 アンテナチューナで整合して使うため、SWR=3までを使用可能な範囲と考えています。 従って、まずは1800〜1875kHzの全体がカバーできそうなことがわかりました。 ただし、範囲外の1910kHzではずいぶんSWRが高くなって実用できそうにないのはやむを得ません。 これは短縮系のアンテナなのでしかたないでしょう。

 無短縮のDPや逆Vアンテナならもうちょっと広い帯域幅が得られると思います。それでも比周波数で考えるとこのバンドの75kHz幅というのはかなり広いです。(離れた5kHzの分も考えたらもっと広い) バンド全体で低いSWRの確保は難しいかもしれませんね。 たった75kHzなのですが、それだけ広いHAMバンドだと言えそうです。 7MHz帯なら300kHz幅くらいに相当しますから。

 【早速テストしてみる
 テストを兼ねてオンエアしてみました。 すでに届出済みで、審査も済んでいたため、FT8でオンエアしてみました。

 画面は解放された翌日の4月22日夜の状況です。 1日前に解放されたばかりですから閑散としていてさぞや「閑古鳥が」と思ったらさにあらず。 ご覧のようにたくさんの局がオンエアやワッチされている状況でした。これはちょっと驚きです。 それと、そもそもあまり遠方まで飛ばない中波の延長のようなバンドです。それでも夜間なら国内がカバーできそうだというのも新鮮です。(画像は日没から間もない日本標準時:18:52にキャプチャ。当地の日没は18:23)

 意外にも160m BandのDXerはたくさんおられて、これまでセパレート周波数での運用を頑張ってこられたのでしょう。 さっそく受信用だった1840kHzのアンテナを送信に転用してオンジエアを始められたのでしょうか。
 ただし、やはり160m BnadのHAM人口は少なめのように感じます。 お呼び頂くに任せてQSOしていたらあっという間にほとんどの局が-B4になりました。常連さんはある程度決まっているのですぐに飽和するのでしょう。これは昔々1910kHz±2.5kHzでCWの運用を始めたときもそうでした。(笑) QSLカードはすべてe-QSL(←リンク)へQSO終了後の即時対応で送ってあります。もし紙のカードをご所望でしたらご連絡下さい。

                    ☆

 こんなアンテナでのオンエアテストは敷地があってアンテナ張り放題のHAM局からみたら笑い話でしょう。  だいぶ打ち上げ角が高いようで、国内局には届いてもDXはダメそうです。聞こえないし飛びませんね。 ハイパワーに巨大アンテナ局がゾロソロのこのバンドでは対抗できませんしDXが稼げるとも思っていません。 ダミーロードよりマシなアンテナなら合格点です。 屋内にこもりがちの昨今、アンテナのチューニング作業はアウトドア気分なので良い息抜きにもなりました。(笑)

 多バンドのアンテナを揃えるのは、何かを製作したとき実験的に欲しいからです。そのような目的ならまずまず使えそうなアンテナができたと思います。 あとはもう少し運用してみてそのまま1800kHz帯に留まるか、1910kHzへ戻るかを考えましょう。 短縮アンテナにローパワーでは大して飛びませんが、か細い電波が聞こえてましたらCallよろしく。  暇なときは伝搬の日変化を見たいと思って1836.6kHzのWSPRにもオンエアしています。さて、Poorなアンテナに5W(WSPRのとき)でどこまで飛ぶのでしょうか? de JA9TTT/1

参考:条件の良い夜間なら何とかKPH(米加州)までWSPRの5Wが届くようです。

(おわり)fm