2020年9月17日木曜日

【その他】ebay shopping

 ebayでお買い物は?
ebayって?
コロナ禍であまり出掛けられません。 まあ、大して気にしなければ良いんでしょうが、気持ちは若いつもりでも若くはありませんからね。 感染は気になります。 それで、通販を楽しむことになるんですが少し幅を広げたいと思います。

 最近の電子工作は、国内の通販だけでなく中華通販を含めて部品調達の範囲は幅広くなっています。今まで見つけられなかったようなアイテムが簡単に手に入ったり、思いがけずお買い得なことも珍しくありません。 ご存知の通り、信用に関しては国内通販に比べてイマイチな部分もあります。しかし、それなりの注意を払えばなんとかなるものです。

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 最近になってebay(イーベイ)を本格的に使い始めたので様子を書いてみたいと思います。すでに利用中の人も多いとは思いますが、もしまだでしたら如何でしょうか? 少し注意は必要そうですが、難しくはないので少額から試しましょう。 今回はネタに困った挙句なので、興味がなければ早々にお帰りがオススメなり。(笑)


Heath kitでサーチ
 ちょっと乱暴かも知れませんが、ebayはヤフオクと楽天市場を合わせたようなものでしょうか。

 オークションの機能があるので、最高額の入札者でなくては手に入らないものもたくさんあります。 しかし少々高めのお値段にはなるのですが即決価格(Buy it Now)が設定されたものもたくさんあります。 こうした物なら売り切れさえなければ確実に手に入れることも可能です。 頻繁にウオッチして素早く購入すれば良いでしょう。

 写真は「Heath Kit」(ヒースキット)で検索した例です。 Heath kitは世界的に有名ですから非常にたくさんのアイテムが引っ掛かりました。 写真の上2つは入札アイテムですから、ヤフオクと同じように入札が必要です。 ここでは発送先を「日本」の設定にしたので全ての価格は日本円で表示されています。それで端数の付いた金額なのでしょう。 その次の3つ目のアイテムは「Buy it Now」が設定されているので即決で買うこともできます。

 ショップが出品しているようなものでは大半が即決価格になっているようです。電子部品のような一般的なアイテムは多くが即決のようです。もちろん、稀少性があるような「お宝部品」は入札させて高く売ろうという魂胆もあるようなんですが・・・。(笑)  この辺りは既にヤフオクなどご利用なら常識的な範囲でしょうね。 入札でお宝狙いも良いですが、買い物感覚で「即決」狙いでも楽しめるようです。

PayPalは必要?
 今のebayは支払い方法が様々選べるようになりました。 なので、直接クレジット・カード決済で行くことも可能です。 例えばVISAやMASTERなどのクレジット・カードでの直接支払いができます。

 しかし、できたらPayPal(ペイパル)を介したいと思います。(これは好みですが・笑) そうすれば毎回購入するごとにクレジット・カードの番号をインプットする必要はなくなるため幾らかでも安心感がアップするように感じます。 10年以上前にPay Palのアカウント情報が漏れたというようなニュースもあったようですが、今は対策がとられてまずまず安心なように思われます。(注:Pay Palは以前からある送金サービスの一種で楽天のペイペイとは関係ありません)

 どんな風に使うのかというと、購入して支払いに進むと支払い方法について幾つかの選択肢が示されます。その時に「Pay Pal」を選べば良いだけです。何も難しくないです。 なお、Pay Palを利用した支払い(海外送金になる)は支払う側は料金無料です。Pay Palの利用を始めるとオススメのメールなどが頻繁に届くようになって少々煩わしいですが無料なので我慢しましょう。(笑)

 Pay Palで支払うためにはPay Palのアカウントが必要になります。 ebayを始める前にアカウントを取得しておくとお買い物はスムースに進むでしょう。 Pay Palで支払いが可能なようにするには、銀行口座あるいは支払い決済ができるクレジット・カードが必要です。 これだけはあらかじめ準備しておかなくてはなりません。 しかし、すでに通販を楽しんでいるようでしたらカード決済はお馴染みでしょう。 要するに「メールアドレス」とVISAやMASTER、AMEX、JCBなどの「クレジット・カード」があればPay Palのアカウントは簡単に設定できます。審査時間もほとんど掛かりません。

 Pay Palのアカウントが用意できたら、さっそくebayのアカウントを作りましょう。こちらもメルアドがあれば簡単に作れます。 なお、その際に購入した物品の発送先となる住所も必要になります。海外からの荷物が確実に届くような住所を(ローマ字表記で)用意しておきましょう。国際的に通用するような住所表記に自信がなければ最寄りの郵便局に相談するのも良いと思います。荷物が迷子にならずに済みます。 ebayのアカウントができたら、さっそくログインすればお買い物が始められます。(先にebayのアカウントを作っておいて、後からからPay Palを設定することもできます。詳しくはネット上のHow toなど参考に。難しくはないです)


基本はクレジット・カード決済
 Pay Palとは言っても結局はVISAなどのカード決済にするのが普通でしょう。  従って、もしなければこうしたクレジット・カードを持つ必要があります。(Pay Palはこうしたクレジット・カードを介さずに直接銀行の預金口座からの支払いも選べるようですが)

 過去に借金が焦げ付いたなどのヤバい経歴がなければ普通はスムースにクレジット・カードが手に入るはずです。ネット経由あるいは銀行の窓口などで申し込みます。詳しくは利用している金融機関のサイトや窓口で「クレジット・カード」を作りたいと言えば説明してくれます。 ただし申し込んでから届くまでに1週間くらい掛かるのが普通です。 なお、こうしたカードは年会費が必要なものがほとんどですが無料のものもあるようです。 今ではクレジット・カードを使うのが内外を問わず通販の基本と言えるのではないでしょうか。まさかとは思いますが、持っていないと時代に乗り遅れかねません。(笑)

買い物を探そう
 何か欲しい物があったらまずは検索するのがオススメです。 ebayに入ったら検索窓に目的物の単語をインプットしてみましょう。 ここは国際的なのですから日本語ではなく英語が良いと思います。
 基本は英語ですが、わかっていれば例えばスペイン語とかドイツ語のような現地語で探すとさらにバラエティに溢れた検索結果が得られます。綴りがあやふやな時はGoogle翻訳などで単語を翻訳してからインプット。 あとは「習うよりも慣れろ」でしょうね。

 何回か覗いて「ウインドウ・ショッピング」を楽しんでいると、閲覧履歴が保存されオススメに表示されるようになります。(写真) 買う気が起きたら購入するも良し、お好みが反映されるようになりますからだんだん使いやすく(?)なります・・・ね。

 まずは高額な品や重量がかさむ物は避けるのが基本でしょう。  送料が示されている場合も多いので、品物の値段と送料を合わせて考えます。 国際通販になる関係でどうしても送料は割高です。私は安価な物しか手を出さないので、品物よりも送料の方が高いと言ったこともしばしばです。w しかし、手軽に外国まで買いにも行けないので割り切るしかないでしょう。hi 中華通販のような送料では済まないのが普通です。(無料とか非常に低額な中華通販の送料の方が異常なんです・笑)

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 ネタ切れだったのでしょうもないテーマになってしまいました。 既にebayとかお使いのお方には今さらだったでしょう。 心理的にアキバも遠くなった感じもあって、通販を楽しむことが多い昨今です。 国内の通販でも様々な物品が手に入りますし大抵のものは間に合ってしまうでしょう。 しかし、ebayのように国際的なショッピングなら非常にバラエティがあります。まさかこんな物がと言うものまであって驚かされることも度々です。割高な送料を払っても価値のある品も数々見つかっています。 様子見に覗いてみるだけでも楽しい(興味深い)ですから、まずはebay(←リンク)へ行ってみてはいかがでしょう? ebayのアカウントはなくても見るだけなら誰でもできます。 ではまた。 de JA9TTT/1


:言うまでもないとは思いますが、ebayやPay Palなどから何かもらっている訳ではありません。また、国際通販はリスクも大きいですから各自のご判断で利用をお願いします。もちろんその結果についてはすべてご自身の責任です。トラブルについて私に泣きつかれても解決にはなりません(笑)

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追記:ebayで試したら
 ウクライナから旧ソ連時代のトランジスタを買ってみました。

 2020年7月26日にebayで購入したところ、28日には発送してもらえました。 ウクライナの通関を通ったのは7月30日だったようです。その後は国際郵便で日本への旅路に就いたようです。

 途中の経路はわかりませんが、9月8日に日本の国際交換局(川崎東郵便局)に到着しました。 直ちに通関手続きが行なわれ、その翌日の8日には自宅へ配達されました。 1ヶ月少々掛かったことになります。 コロナ禍のおり、旧東欧からの航空便はかなり限られた筈です。意外に早く着いたと思うべきでしょう。 おそらくコロナ禍がなければ二週間程度だったのではないかと思うので、今はじっくり待つしかないようです。 このように少々時間は掛かりましたがトラブルも無く購入することができました。まずは実績を追記しておきます。

(おわり)nm

2020年9月2日水曜日

【回路】Using the TBA120U as an SSB detector

回路:TBA120Uと言うICをSSB検波に使う
abstract
TBA120U is for PAL-TV  system, but you can use it for FM radio receivers
First, I used FM IF-Amplifier to check the IC I got. After that, I tried SSB detector, but the crystal oscillator circuit with the IF amplifier part needs to be examined.
After some trial and error, I had good results.  I think the resulting SSB detector has a good performance. (2020.09.02 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

 【TBA120Uを手に入れる
 TBA120Uと言うTV受像機用に作られたICを手に入れました。TV受像機とは言っても現在のようなデジタルTVではなくてアナログ時代のTV用です。欧州系のデバイスですからPAL方式のTV用でしょう。
 TBA120Uは音声信号の増幅・復調用のICです。PAL方式の場合、音声信号は搬送波周波数が5.5MHzのFM変調形式です。従ってデータシートの各項目は5.5MHzのTV用音声信号を前提に示されています。 ただし、NTSC(日米)形式のTVにおける4.5MHzのFM復調やFM放送用受信機の標準的な中間周波である10.7MHzに使うこともできます。
 ここではこのFM波の中間周波増幅(IFアンプ)とFMの復調を目的としたTBA120Uと言うICをSSB波の復調用に使ってみることにします。結果から先に言うとなかなかうまく働いてくれました。通販で容易に手に入るのでHAMが活用するには有望なデバイスだと思います。 TBA120UはアナログTV時代のICですからいずれ消え去るでしょう。しかし今のところ潤沢な在庫が残っているようです。入手は容易です。

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 SSBの復調(検波)といえば今ではSA612AのようなIC-DBMがポピュラーです。古くはこのBlogでも採り上げているMC1496G/HSN16913P、SN76514Nなどの専用IC-DBMがありました。従ってあえて別目的のICを使う意味は少ないのかも知れませんが、実験しておけば回路検討の時の持ち駒として役立つでしょう。
 ここでは中華通販で容易に手に入ったので実験してみました。強くお勧めするようなICとも言い難いのですが、本来目的のFM受信機の中間周波増幅と復調に使っても扱いやすいと感じましたので幾つか部品箱に入れておいたら楽しめそうです。以下、自家用の設計情報を纏めたものです。幾らか興味でも湧いてきたようでしたらご覧ください。もちろん何の製作もされないお方が漫然と眺めてみても意味はありません。

 【TBA120Uの標準的な応用法
 届いたTBA120Uの初期チェックを目的にオーソドックスな・・・本来の典型的な・・・用途であるFMの中間周波増幅回路&復調回路を作ってみました。

 上述のようにPAL形式のTV用ICですが、本来の用途の5.5MHzではなく10.7MHzでテストしました。 このような10.7MHzでの使用例が無い訳ではなくこのICを10.7MHzで使ったFMラジオやFMチューナの製作例は幾つも見かけます。 蛇足ながら、なぜ10.7MHzなのかと言えば、FMラジオを含めFM放送用受信機の標準的な中間周波だからです。従って10.7MHzなら専用のセラミック・フィルタやIFTなど部品が入手しやすいのです。AMラジオを455kHzの中間周波で作るのと同じ理由ですね。

 左図の回路ではFMチューナでの活用を想定し、TBA120Uの前にプリアンプを付けておきました。信号発生器(SSG)を使ったテスト結果から見てTBA120Uの単独ではややゲイン不足のようでした。TBA120Uだけでは少々感度の悪いラジオ又はFMチューナになってしまいます。 そこで20dB程度のアンプを追加してやればまずまずの感度になります。
 更に工夫することでアマチュア無線の狭帯域FM用(NB-FM用)に使うこともできそうでしたが、TBA120Uはその目的に対しては最適ではないでしょう。NB-FM用にはモトローラのMC3357やMC3361のような専用ICの方が向いています。これは参考まで。

  ICの内部回路についてはのちほど触れますが、簡単に言えば8段くらいの差動型IFアンプとクオドラチャ検波形式のFM復調回路を集積したものとなっています。さらに簡単な電子ボリウムの機能が内蔵されています。残念ながらスケルチ機能はありませんので外付けで対応する必要があります。ノイズをミュートするには電子ボリウムの部分をうまく制御すれば良いでしょう。

 FMラジオ/FMチューナを作るのでしたら、このIFアンプの前にFMフロントエンドを置きます。TBA120Uの検波出力は十分大きいのでそのままステレオ・マルチプレックス復調用のICに直結できます。さらに簡単な低周波アンプを付ければ良い性能のFMラジオになります。あるいは簡単なラインアンプを付加すればFMチューナにもできます。

 【10.7MHz FMで試してみる
 基本的な性能確認のため、まずはTBA120Uの部分のみ試作しました。周波数は10.7MHzです。これはTVの音声復調回路を作っても意味がないためで、FMラジオなどへの応用を睨んだテストと言えます。

 このICのデータシートにも載っているようなごく標準的なアプリケーションです。 キーポイントとなるのはFM復調器の所に使う「共振器」です。ここでは既製品の10.7MHz用IFTを使いました。無負荷Qが70程度とやや低めで同調容量が約50pFのIFTです。アキバのジャンク品なので型番や仕様はわかりません。ややHigh-LでLow-Cなため必ずしも最適なコイルではなかったようでした。

 実験した感触からいうと、もう少し同調容量が大きな10.7MHz用IFTを使うか自分で巻線する方が良いでしょう。 なお、IFTと書きましたが、2次側の巻線は不要なので単なるLC共振器で良い訳です。

 必要なコイルは10KボビンやAmidonのトロイダルコアに巻いて自作するのも容易です。その場合、同調容量は100pF程度へ大き目にする方がよいです。これはTBA120Uに内蔵された位相器のCが結構大きく効いてくるからです。あらかじめ同調容量を大きめにしておくことで丁度よくなります。

 標準的なFM放送は最大周波数偏移が±75kHzと大きいため、復調回路用コイルのQが大きすぎるとピークで歪むことがあります。 その場合、Qダンプするなどの対策を行ないます。但し復調感度は幾らか犠牲になります。 具体的には同調回路と並列に抵抗器を入れれば良いでしょう。この部分は復調感度と歪み率の兼ね合いがポイントです。

 【綺麗に復調できる
 搬送波周波数10.7MHzで、変調周波数1kHz、デビエーションが±50kHzの信号を与えたときの復調信号です。

 十分大きくて、きれいな正弦波が得られました。FM用のICなのですから、復調波形は歪が小さいのは当たり前とも言えそうですね。 TBA120UはTVの音声復調用のICですがHi-FiなFMラジオ/FMチューナ用としても十分通用する性能でしょう。

 FMのクオドラチャ検波はあまりHi-Fiには向かないという話を読んだこともあります。しかし実際にテストしてみるとけして悪くはありません。むしろ調整が容易なので調整不十分なFM復調回路よりも良い性能が得られ易いように感じます。 いずれHi-FiなFMラジオでも作ってみたいですね。 なお、FMラジオに不可欠なAFC回路に必要なバリキャップ用のチューニング電圧も容易に取り出せます。

TBA120Uの入手と留意点
 TBA120はかなり長い歴史を持ったチップのようです。そのため同じ「TBA120」でも様々なバージョンが存在します。上記のようなFMのIFアンプや復調にはもちろんですが、このあと紹介するSSB検波器にも大抵のバージョンが使えます。 但しTBA120Tだけは想定された回路以外への活用は難しいでしょう。手に入れない方が良いです。 現状ではTBA120Uが中華通販で販売量も多く無難な選択です。
 どれも14pinのパッケージで機能は同等ですし基本的なピン配置も類似です。しかし様々な改良バージョンでは追加機能の部分が独特のピン配置になっています。手に入ったもので代替する際には必ず該当品の資料にあたる必要があります。
 ここでは中華通販で手に入れましたが、eBayにもたくさんの出品があります。単価も一つ数十円から1,000円超まで様々です。販売者の信用状況や送料なども考えつつ良さそうなものを選びます。 参考までに私が購入したものは5個セットで$2.97-でした。送料が$0.53-なので合計で$3.50-(約400円くらい)でした。ちょっと実験してみる素材として手軽なのは有難いです。 ここで手に入ったTBA120UはPhilips製でした。




 【TBA120/Aを使ったDSB変調器
 左図はこれからテストするSSB復調回路のヒントになった回路です。 これは復調器ではなくTBA120/Aを使ったバランスド・モジュレータ回路(バラモジ回路)です。 自作HAMのみなさんがお好きなIC-DBMであるSA612Aのような機能を持っています。 ここではこの回路を参考にSSBの復調に使うプロダクト検波器として使ってみたいと思います。

 なお、ここで手に入れたTBA120Uですが左図のTAB120/Aとは内部回路に少し違いがあります。そのためバランスド・モジュレータにはあまり適していないようでした。もちろん復調回路の方には問題なく使えます。もしもバラモジとして使いたいようでしたら、TBA120UではなくTBA120あるいはTBA120Aを手に入れるのが良さそうです。 この図のバラモジ回路はRSGBの機関誌:RadComのテクニカル・トピックスを参照しました。

TBA120Uを使ったSSB復調器
 さっそくTBA120UでSSB復調器を設計してみました。TBA120UはFM波用のIFアンプとその検波器で構成されたICです。当然ですがSSB検波に必要なキャリヤ発振回路は内蔵されていません。

 うまくIFアンプの部分を使って水晶発振させてTBA120U単体でSSB検波器を構成するのがこの回路のミソです。 はじめは上のDSB変調器のような発振回路で試したのですが確実な発振が得られませんでした。 そこで内部等価回路を見直して左図のようにしたところ良い結果が得られました。周波数調整もきちんとできます。なお、IFアンプ部分を発振器に転用せず、外部の発振器からキャリヤを注入する方法も可能です。
 IFアンプ部を発振回路に使うと自動的に検波回路にキャリヤ(搬送波)が注入されるようになります。 そして元々クオドラチャ検波用コイルを接続するための端子のところに復調したいSSB波を加えればうまくSSB波の復調(検波)ができます。

 この図では電子ボリウムの部分をバイパスする使い方になっています。 先ほどのFM IFアンプと同じように活かすことも可能です。 ピン4番とピン5番の直結をやめ、抵抗器とボリウムなどを適宜追加すれば機能を生かすことができます。

 【TBA120Sの内部等価回路
 残念ながらTBA120Uの詳細な等価回路は公表されていません。 電子ボリウムの部分は少し違うようですが、他は同等と思われるTBA120Sの等価回路を参照しました。

 FM用のICをSSB検波に使うと言うと、何となく異常な用法のように思えるかもしれません。 しかし内部の等価回路を見ると案外真っ当な使い方であることがわかります。

 よく見ますとTBA120に内蔵のクオドラチャ検波部はギルバートセル型のIC-DBMそのものです。また全体として平衡な回路になっていて、IFアンプからの信号は下段の差動回路にバランスして加わるようになっています。 従ってこのIFアンプ部分を水晶発振回路に転用するのは意外に理にかなっているとも言えるでしょう。 その様にして使えばSSB検波器として旨く機能します。

 【TBA120UのSSB検波器
 SSB検波器の実験風景です。作ってみるとTBA120Uのピン配置はこうした応用には今ひとつなことがわかります。本来の目的外の応用なのでこれは仕方ありませんね。w

 IFアンプの部分を水晶発振器として使うわけですが、入出力のピンがだいぶ離れていて最適化しにくい感じでした。 まあ、それでも部品配置をやりくりしてまずは安定な水晶発振が可能な状態に持ち込むことに成功しました。 発振周波数の調整もたいへんスムースにできます。

 IFアンプ部はそもそもFM用の多段アンプなのでゲインは十分過ぎるほどありますが、信号の遅延あるいは位相の回転は大きいようです。 そのため、水晶発振が可能な周波数範囲には上限があるようでした。 この例では5.12MHzですが上記回路図と同じ部品定数では8MHzあたりが上限でした。それ以上の周波数で発振させるにはR5:10kΩを2〜3kΩへと減らす必要がありました。

 R5は有り余ったゲインを減らすといった意味もありますので無闇に小さくもできません。 この辺りの限界もあってIFアンプ部分を発振回路に転用できるのはおおよそ15MHzくらいまでではないでしょうか。もしそれ以上の周波数でやりたいのでしたら、別途発振器を用意してIFアンプの入力へ注入する方法で旨く行きます。

 【発振波形は?
 発振回路に使うのは、もともとがFM用のIFアンプですから発振出力の波形はこのようにクリップされた(振幅がリミットされた)発振波形になります。

 SSB復調器に与えるキャリヤ信号としてはこれで何も支障はありません。 ピン6番のテストポイントで観測して150mVppくらいの発振々幅がありました。 これはほぼ決まった振幅にしかなりません。より大きく、あるいはもう少し絞ると言った加減はほとんど不可能でしょう。 しかし150mVppならSSB検波器に対して概ね適当な振幅だと思います。 きちんとした発振さえすれば自動的にこのような振幅になりますから、かえって手間要らずとも言えますね。hi

 【発振周波数は安定
 周波数安定度も確認しておきました。 結論から言うと、一般的な水晶発振器と同等と言えます。 周波数安定度の心配はなさそうでした。

 ここでは5120kHzの水晶発振子を使いましたが、回路図に示した部品定数が適当でした。 8MHzや12.8MHzでも試しましたが、上述のようにR5:10kΩを幾らか減ずるほか、周波数調整用のトリマコンデンサ C9:max50pFやC10:22pFも少し減らす必要がありました。そのようにすればちょうど良い周波数調整範囲が得られます。

 【TBA120U:SSB検波器の入出力特性
 SSBの復調特性を示したグラフです。 回路図のように5120kHzで水晶発振させ、外部の信号発生器から5121kHzを与えて検波回路の入出力特性を測定しました。 周波数差のちょうど1kHzが低周波信号として取り出されるわけです。
 キャリヤ発振に相当する5120kHzの方は先に書いたように発振振幅の加減はできません。そのまま発振させただけの状態です。 この検波器の入力信号に相当するのは5121kHzの方で、これの大きさを変化させて出力の変化を測定します。

  グラフは横軸に入力信号に相当する5121kHzの大きさをとっています。縦軸は検波器で復調された出力信号・・・すなわち1kHzの大きさを示します。 入力信号:5121kHzは-90dBm/50Ωから徐々に大きくして行きました。 入力信号が小さい部分では少しノイズ(Hum)の誘導があるようでグラフは幾らか直線から外れているように見えます。 しかし全般的に見て良好な直線性が得られているのではないでしょうか?
 SA612ASN16913Pのような専用のIC-DBMで作ったSSB検波器と比べても遜色のない性能のように思います。 やや復調感度は低めですがその分だけ大きめの信号まで歪みなく扱えます。TBA120Uとしては想定外な使い方にはなるのですが、得られた性能から見て実用性は十分にあります。

 【SSB検波器の復調波形
 復調された1kHzの波形です。 -17dBmよりも大きな入力では波形の下側から歪んできます。 そこまでは非常にきれいな復調波形が得られました。

 もともと低歪が特徴のFM用復調回路なのですから回路の動作点が最適化されているのでしょう。 SSB検波器としても十分なダイナミックレンジが得られているのだと思います。

 ピン4番と5番の部分を使うと電子ボリウムの機能が得られます。 ただし絞る方法だけの加減が可能なだけなのであまり意味はなさそうでした。この波形は両ピンの間を直結して電子ボリウムの機能をバイパスした状態で観測したものです。 HAM用の機器にSSB検波器として使うのならそのような使い方で十分なように思います。 もちろん、電子ボリウムのメリットもあるのでその機能を生かした設計もあるとは思いますが・・・。 あとは各自の工夫でしょう。

AMの同期検波の可能性
 TBA120を旨く使うとAMの同期検波器ができるのだそうです。 これは未だ実験していませんが、左図のような構成で行けるようです。

基本的にSSBの復調器と同じですが、キャリヤ発振器は必要ありませんので受信機のIF出力をこの回路へ導くだけで済みます。(但し入力レベルの最適化を行なう必要があります) AMの同期検波は混信の抑制や検波歪みの低減といった効果が期待できるため高性能なBCLラジオには有用な機能でしょう。 いずれ必要が生じた際にでも追試したいと思っています。 通信形態から見て、おそらくHAM用の通信型受信機にはあまり必要のない機能ではないでしょうか。

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 TBA120を使ったSSBの変・復調回路を見かけたのはずいぶん前になります。面白そうだと思ったのですが、デバイスそのものの入手は困難でした。最近になって古い資料を整理していてあらためて目に留まったのす。そこでさっそく中華通販やeBayで確かめてみました。 その結果、ちょっと遊んでみるにはお手軽な価格でたくさん出品されていました。 ただしTBA120には数種類のバージョンが存在しているようでした。そこでもう一度調べ直す必要がありました。現在もっとも流通しているらしいTBA120Uも活用できそうだとわかったところで発注してみました。 海外通販は配達遅延が続出ですが運良く1ヶ月くらいで到着しました。

 本来の目的とは異なる用途に使うため多少の使い難くさはやむを得ないでしょう。それでもまずまず確実に使いこなせそうな回路に纏めることが出来ました。 あえてこうしたICを転用しなくてもSSBの復調には専用のIC-DBMが手に入ります。従って活用の機会は多くないかもしれません。ここでは回路設計のアイディアの一つとして纏めておくことしました。

 TBA120Uはその本来の目的であるFMのIFアンプと復調器に使うと優秀そうでした。FMのIFアンプと復調器を実験していて感じたことです。 FMラジオやチューナがごく少ないデバイスで自作できるかも知れません。 しばらく前から各地でFMの補完放送(90〜95MHz帯)が始まっていますから自作のFMラジオでチャレンジしてみるのも面白いかもしれません。 フロントエンド部分をどうするのかと言った課題はありますが、シンセサイザ発振器もお手軽な時代ですから自作FMラジオも昔よりもずっと作り易くなっています。十分検討にあたいするでしょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm