2017年4月26日水曜日

【回路】RC Phase Shift Oscillator

【回路:RC位相シフト型正弦波発振器】
2石のRC位相シフト型発振器
 簡単に作れる正弦波発振器として、RC位相シフト型発振回路があります。 左の回路は意外に人気があるようで、Web上では良く見掛ける低周波の『正弦波発振器』です。だいたい数10Hzから20kHzのような可聴周波数域の発振に使います。

 左図は「定本:続トランジスタ回路の設計」(CQ出版社)の回路をアレンジしたものです。この本を参考にした回路はネットでも良く見掛けます。理論的な解析は検索で容易に発見できますし教科書にも載っているポピュラーな回路です。「Phase shift oscillator」(←リンク) ここでは実験結果に基づきRC移相シフト型発振器を製作する際の要点などを自家用の資料として纏めます。 トランジスタ2石の回路と、OP-Ampを使った回路の2種類についてテストします。

 『確実に起動でき歪みの少ない低周波の正弦波発振器』を作ることは一つのテーマのようになっているので過去のBlogで何回も扱っています。 低周波の正弦波発振器にあまり興味を覚えないようでしたら退屈で面白くないと思いますので・・・。以下略。

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 まずはトランジスタ2石で作ってみます。発振周波数は1kHzで設計しましょう。 この発振器は1石で作ることもできまが、2石使うことで発振が容易で、発振周波数の誤差が少なく、歪みも小さくできます。同じ2石でも幾つかのバリエーションがありますが、図の回路は最も合理的なものだと思います。 今ではトランジスタは抵抗器:Rやコンデンサ:Cと言ったRC部品並みのお値段なので倹約せずに2石使うと有利です。 但し、図の回路はトランジスタ・アンプ固有の非直線性が現れるので、入念に調整してもあまり低歪みは期待できません。

 バルクハウゼンの発振条件(←リンク)には「振幅条件」と「位相条件」の2つがあります。両方が満たされる周波数で発振します。これは必要条件です。 図の発振回路は3段のRC移相回路を使い、そこで位相が180度が回る(進む)周波数にて発振させようとするものです。RC回路を3段通過する信号はその周波数に於いて1/29に減衰するのでアンプは29倍以上増幅しなくてはなりません。反転型アンプを使うと位相は-180度回わるので、合計の移相は0度となって位相条件も満足されます。(ループを一巡した位相の回りが、0度あるいは360度の整数倍が位相条件です)

 アンプは反転型で利得(ゲイン)が29倍以上あるものを使います。ゲイン過剰だと飽和して歪みますが、29倍ちょうどでは他の何らかの原因によって発振が起こらないことがあります。従って具体的には作ってからQ1のエミッタにある可変抵抗で波形を見ながら丁度良い所に調整します。 RC移相回路は図のようなハイパス型(進み移相型)と後述のOP-Ampを使う例のようなローパス型(遅れ移相型)があります。

 発振周波数は図中の式の通りなのですが、計算と完全には一致しません。アンプの入力インピーダンスは無限大ではない、エミッタ・フォロワの出力インピーダンスはゼロではないなどの誤差要因が存在します。 またRC部品には誤差が付き物です。何らかの調整箇所を設けないとジャスト目的の発振周波数にはなりません。発振周波数は図のように位相シフト回路の一部を加減して調整することができます。この方法は大きく周波数を変えるのには向かないので微調整専用でしょう。

 発振の振幅と歪みには密接な関係があり、Q1のゲインを調整して小さめの振幅で発振させればトランジスタの非直線性から逃れられ(緩和され)ます。 しかし発振条件ギリギリに合わせれば周囲温度や電源変動などの影響を受けやすくなります。電源のON/OFFで発振が再起動しなかったり振幅が不安定になりがちです。従って確実に発振が起動でき、発振振幅も安定する状態に調整します。その結果、歪み率は幾らか悪くなりますがやむを得ません。調整如何ですが、歪み率は悪くても5%以下にはできるでしょう。

参考:波形調整のVR1を調整して、発振振幅が6Vpp(約2.1Vrms)になるよう合わせたとき、歪率は1.8%くらいになりました。発振振幅をもう少し小さくすると歪みも減少しますが、発振の起動がだんだん不安定になってきます。(2018.08.06追記)

 実際に製作して感触を確かめてみました。トランジスタは電流増幅率:hFEの大きなものを使うと発振が容易です。 2SC1815で言えばYよりGRランクの方が良さそうです。hFEが非常に大きなSuper-βトランジスタ:2SC3112、2SC3113も良好でした。内部ダーリントン構造の2SC982でも旨く行きます。 良い性能を得るためにはバイアス調整が大切です。図中に青字で記入されたDC電圧よりも大きく違うようなら、R4を加減して調整します。

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 意外に使い物になりそうな感触を得ました。 シンプルさが取り柄ですから、さらなる発振振幅の安定性や低歪みを追求するなら他の回路にすべきでしょう。 しかし数%の歪みを許容できるなら良い回路です。それに人が耳で聞くだけの用途ならその程度で十分な性能です。当然ですが弛張発振器よりも遥かにきれいな澄んだ音がします。

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【 OP-Ampを使った位相シフト型発振器
 RC回路を使った正弦波発振器としては、Wien Bridge発振器(←リンク)がポピュラーです。市販の多くの低周波発振器でも使われています。
 しかし、RC位相シフト型で作ることも可能で、左図の回路で歪みが0.01%以下のたいへん奇麗な正弦波が得られます。

 ひと言で言えば上記の回路をOP-Amp化したものです。但しOP-Ampは2石のアンプと比べれば遥かに高性能ですから発振周波数の再現性が良く、直線性も良いので歪みは小さくなります。 テスト回路の発振周波数は同じく1kHzに設計しました。

 OP-Ampは1回路でも作れます。 その場合はダイオード・クリッパ式で振幅安定することが多いようです。 ここでは歪みの増加を嫌って豆電球による「振幅安定回路」を使いました。 その都合でOP-Ampを2回路使いますが安価なOP-Ampなのでコスト・パフォーマンスは悪くありません。これで発振の起動が確実で振幅の安定化と低歪みが両立できます。

 2石の回路では振幅とゲイン(増幅度)が負の関係・・・発振振幅が大きくなると増幅度が下がる特性・・・を利用して発振振幅を保っていました。しかし、その方法では低歪みになりません。要するにアンプの非線形性を利用して発振振幅を保っている訳です。発振振幅はトランジスタの動作状態の影響も受けて変動します。
 ここでは豆電球に加わる電圧と抵抗値の特性を利用して振幅を安定化します。 以前テストしたWien Bridge発振器と同じ豆電球を使っています。 何かの原因で発振振幅が大きくなると、電球に加わる電圧も大きくなります。 その結果、電球の抵抗値が増加してアンプの増幅度が下がります。 逆の場合は電球の抵抗値が減少するので増幅度が上がって振幅が増えるように作用します。電球の働きで発振振幅の変動が抑えられほぼ一定の発振振幅が維持できます。

 このような目的に適した電球が手に入れば製作・調整は容易です。歪み率は難しいこと抜きで0.01%くらいにできます。こうした豆電球は特殊に思えますが、インターネット時代の今となってはそれほどでもありません。見付け方と入手方法については後ほど触れます。

 発振周波数はR1(=39kΩ)で微調整できます。 R1として33kΩの固定抵抗器と10kΩの可変抵抗器を直列にします。 この方法は大幅な周波数可変には向きませんが微調整なら支障ありません。 回路としての発振周波数の再現性は良好なのですが、RCの誤差が影響します。ピッタリ合わせるには調整を要します。

参考:OP-Amp自身の位相回転があって発振周波数に誤差を生じます。但し、1kHzあたりなら影響は大きくありません。

 発振振幅を約7Vrms(=19.8Vpp)に調整すれば歪み率は0.01%あたりになるので、2石発振器の1/100以下です。高調波は-80dB以下ですからHAM局の2トーン発振器にも最適です。 汎用の発振器としても使い易いです。

試作の様子
 OP-AmpにNE5532Pを使います。 振幅安定化に豆電球を使ったので、低い負荷抵抗を十分ドライブできるOP-Ampを選びます。NE5532Pは2回路入りなのでワン・パッケージです。

 5532型はオーディオ用の設計で、負荷ドライブ能力のほか歪みやノイズも良好なのでこの回路に向いています。Signetics社が開発した傑作OP-Ampの一つです。 今では5532型も高くありませんが手持ちがあるなら4558型でも良いでしょう。但し幾らか歪みは大きくなります。なお、OP-Ampを換えても回路定数の変更は不要です。

 部品数が少ないので容易に作れます。 豆電球は端子間抵抗が約200Ωの状態で動作しています。その状態のとき振幅の制御が旨く効くように設計してあります。振幅が大き過ぎるとクリップ歪みが現れます。小さすぎると制御範囲が狭くなって安定性が悪くなります。また、振幅が落ち着くまでの過渡応答時間が長くなります。 従って設計条件の付近に調整すべきです。VR1で発振振幅を6〜8V(rms)にします。4558型OP-Ampの時は5〜7V(rms)が良いです。 なお、OP-Ampによる性能の違いを纏めた一覧表を後ろの方に掲載しています。

 観測・評価や調整にはオシロスコープや歪率計を使いました。 そのような測定器がなくても、発振電圧の調整はマルチメータ:テスター(アナログ、デジタルを問わず)だけで十分可能です。メータの表示は実効値(rms)ですから、その読みが6〜8VになるようVR1を調整すればOKです。 詳細な評価や検討にはそれなりの測定器が必要ですが、評価が済んだ回路はごく一般的な測定器だけで調整できます。手近の道具だけで十分作れるのです。


位相シフト部
 RCによる三段の位相シフト回路です。 1段当たり60度位相が遅れます。 四段や五段の移相回路も考えられますが、複雑さや信号の減衰度を考慮して三段が最もポピュラーなのでしょう。

 コンデンサ:C及び抵抗器:Rの誤差で発振周波数に誤差を生じます。また周波数安定度も影響されます。

 写真ではマイラー・コンデンサ(緑色)を使っています。 低周波回路では一般的ですが温度特性はまあまあの所です。 フィルム系コンデンサならスチロール型やポリカーボネート型が最適です。 ほかにNP0特性のセラコンやマイカコンデンサも良くて、周波数安定度は向上します。間違ってもバイパスコンデンサ用のセラコンを使ってはダメです。発振はしますが・・・まあ、やってみればわかります。 抵抗器もカーボン型ではなく金属皮膜型にします。

発振振幅安定化回路
 豆電球の特性を使って発振振幅を一定に保つ回路です。 ここで使った電球は加わる電圧が2Vの時、約200Ωの抵抗値を示します。 

 電源が投入されたとき、まだ電球は冷えているので抵抗値は50Ωくらいです。 従って、U2の部分のゲインは、G2=620/50=12.4倍です。 U1の部分のゲイン:G1は設計上では約9倍です。 従って起動時には全体でG1×G2=9×12.4=111.6倍くらいのゲインになっています。 発振の持続に必要なゲインの29倍を大きく上回るので発振は容易にスタートします。(注:ゲインは絶対値で考えています)

 発振が始まると電球に加わる電圧は急上昇します。 その結果、電球の抵抗値は200Ω前後に上昇してU2部分のゲインが約3.2倍になって、全体のゲインが29倍付近になるところで安定します。 電球の抵抗値が200Ωになるのは、加わる電圧が約2V(rms)のときです。U2の出力はその約3.2倍となり、発振器としての出力電圧は約7V(rms)になる筈です。

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コラム:電球の入手方法】
 ここで使ったような豆電球も今ではMouserJapanの通販で入手できます。 例えば低周波発振回路によく使われる電球として#327(←リンク)と言う28V/40mAの電球が売られています。ほかにも#1869(←リンク)も使えます。 なおLED化された代用品も売られていますが、光らせるのが目的ではないためここでは使えません。ご注意を。

振幅安定に向いた豆電球の探し方
 手持ちから使えそうな豆電球を探すには12V加えた時の抵抗値に着目します。400〜600Ωになるような電球を見付けます。12V加えたとき20〜30mA流れる豆電球です。そのような豆電球なら2V加えた時200Ω前後の抵抗値を示すでしょう。

 24V用の電球にも適したものがあって、24Vで40mAくらい流れる電球が良さそうです。こうした電球の特性を評価した例がこちら(←リンク)にあります。

 なお、3V程度で点灯させる懐中電灯用の豆球には適したものはありません。 回路中では『2〜3Vの電圧が加わった状態で使う』と書いてあるため、そのような豆電球が良いと思うのかも知れません。 しかし、光らせるのが目的ではないので3V用の豆電球では抵抗値が低すぎるのです。OP-Ampに電流ブースタを追加して無理矢理使う手もない訳ではありませんが、たぶん電気のムダです。(笑)

 どうしても電球を使いたくないのなら回路は複雑化しますが、発振振幅の安定に整流回路+FETを使う方法や、LED+CDSを使う光を介した利得制御方法もあります。 しかし豆電球を使う方法が最もシンプルです。

発振波形】 
 発振波形です。この状態で歪み率は約0.01%です。 オシロスコープでの観測では歪みを見分けることはできません。また、デジタル・オシロにはFFT機能が付いていることも多いのですが、オシロのA/D変換器は8bitかせいぜい10bitなので分解能不足のため正しく評価できません。最近では12bit分解能の高性能デジタルオシロも登場していますが、それでも不足です。0.01%と言う歪み率はそれくらい小さいのです。

 この写真のように、19〜20Vppになるように調整します。それだけで0.01%の歪み率になります。 OP-Ampに4558を使った時はやや小さめの16〜18Vppにします。4558型ではやや歪みが増えて0.015%くらいになるでしょう。

 豆電球の種類が異なる場合は、R6(=620Ω)を加減します。 具体的には電球にDC2Vを加えて電流を測定しその電流値から抵抗値を求めます。(テスタで抵抗値を測ったのではダメです) その計算値の約3倍になるようR6の抵抗値を決めれば良いです。 電球の抵抗値が大きいならR6も大きく、小さい時にはR6を小さくしますが、OP-Ampでドライブできなくなるため限度があります。現状の620Ωあたりが下限です。 従って、なるべくなら抵抗値が大きめの豆電球が良いことになります。 しかしAC100V用のナツメ電球は旨くありませんでした。抵抗値が高いのは良いのですが、加わる電圧が2V(rms)程度ではフィラメントの温度が十分上がらないのです。

 類似の方法にはビード型サーミスタを使う方法があります。但しサーミスタの特性は電球とは逆なので位置を入れ替えます。 豆電球のところを普通の抵抗器に置き換え、R6の部分をサーミスタにします。 なお、トランジスタ・ラジオに使うディスク型サーミスタ(例:D-22Aなど)は使えません。 周囲温度の影響を受けて発振状態が変動する発振器になってしまいます。

発振周波数と歪み
 移相回路は抵抗器:R1〜R3は39kΩ(±1%)で、コンデンサ:C1〜C3は0.01μF(±20%)で設計しました。 計算上の発振周波数は1kHzになるのですが、実測では2%くらい低くなりました。これは主にコンデンサの容量にプラスの誤差があったためです。

 コンデンサの容量を加減するのは容易でないので、抵抗値を調整して周波数を合わせます。 具体的には、R1を33kΩ+10kΩの可変抵抗器に変更します。これで1,000Hzちょうどに調整できます。

 SSB送信機テスト用のツートーン発振器は、1kHzと1.575kHzの2周波数を使うのが標準的です。 1.575kHzの発振器を作るには、R1〜R3を24kΩで設計して微調整します。コンデンサ:C1〜C3は0.01μFのままで良いです。 写真は1,000Hz、7V(rms)の実測状況です。 周波数はVR2によって1,000Hzちょうどに合わせています。 表示の歪み率は出力が6.8V(rms)の状態です。

OP-Amp比較まとめ
 一覧表は各種OP-Ampについて歪み率の実測結果を示しています。 発振周波数は1,000Hzです。 発振振幅は回路図のVR1で幅広く調整できます。

 表は発振振幅を3V(rms)から1V(rms)刻みに大きくしたときの歪み率です。 また、オシロスコープの管面で見て明確な歪みが現れる寸前の出力電圧を最大出力電圧としました。その時の歪み率も参考に記載しています。もちろん、その最大出力電圧で使うものではなくて、実用上は必ず内輪の出力電圧までで使います。 OP-Ampの負荷ドライブ能力と固有の直線性が歪みの違いとなって現れています。

 なお、電球を使った振幅安定化回路は回路固有の限界があって歪みはある値以下にはなりません。これは熱的な「慣性」を時定数として使っているためです。 もし、その時定数が無限大なら電球そのものは歪みの原因にはなりません。しかし、それでは振幅安定化もできません。相反する効果のバランスの上に成り立っているため完璧ではないのです。だから歪みが残留するのです。 それでもOP-Ampを選べば0.01%以下の歪み率が得られます。 それに、0.01%以下の歪み率と言うのはかなり良い数字です。 何がしか対策しなければ、1%以下の歪み率を得るのは簡単ではありません。これは実際に発振器を作ってみれば実感できます。

 確実に0.01%以下の歪みを得たいなら、NE5532P、LM4562NA、NJM4580D、NJM2068DDが良さそうです。その上で、発振振幅を5〜7V(rms)にセットすれば良いでしょう。

 この表は特定の回路、特定の部品を使ったケースに於ける性能比較です。従ってまったく別の回路への適用には慎重さが必要です。

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 超々低歪みとは言えないので少々中途半端かも知れません。 ほぼ同等の歪み:0.01%ならWien Bridge発振器でも可能なので特徴が見いだせない気がします。 ここでは豆電球を使った位相シフト型発振器の振幅安定方法を試してみました。この試みは、なかなか旨く行ったと思います。OP-Ampによる違いも明らかになりました。 OP-Ampと豆電球で作った場合、全般的に見てWien Bridge発振器よりも調整は容易な印象を受けました。 移相シフト回路はブリッジ回路ほどシビアではないからでしょう。そのあたりが特徴と言えそうです。

 振幅安定に豆電球を使った回路はシンプルで調整もいたって容易で、発振の起動も確実です。容易に低歪みが得られますから、歪みの評価手段を持たないときには有利かも知れません。

 悪くない回路なのですが、ネット上でポピュラーな2石の発振回路はトランジスタの選び方によっては発振が旨く起動しないことがありました。簡単そうに見えても意外に手強いこともあるようでした。 OP-Ampを使う方が難しそうに見えますが、発振回路としてはむしろ容易です。配線を間違えなければ一発で0.01〜0.02%くらいの低歪み発振器が作れます。 自身の定番として登録(記憶)しておくことにしました。(笑)

 ところで、この Blogはセカンドバージョンなのです。 OP-Ampを使った部分は完全に入れ替えています。 最初、タカをくくって(今になって思えば性能が悪すぎる)μA741CHを2つで試作してみたのです。一旦はその結果でBlogを纏めました。 しかし結果を振り返えればドライブ能力が低いのは歴然で、3V(rms)で0.1%の歪みがやっとと言う有様でした。 それでも2石の回路から見れば1/10なのですが、いま一つ釈然としません。μA741CHの選択は『失敗』と言えるでしょう。 しかし旨くなければやり直せば良い訳です。 そこで選択肢の多いDualタイプのOP-Ampで再試行したのです。 その結果OP-Ampを選ぶことで大きめの出力が得られ歪みも更に一桁減らすことに成功しました。 もはや部分修正では済まずセカンドバージョンに書き換えることにしたのです。 きちんとした性能を出すには回路と素材の吟味が大切だと言うアナログの基本を再認識した思いです。簡単で程よい性能が得られる「正弦波発振器」として纏めることができました。

 やるべきテーマは他にも沢山あるのですが、あまりにも特殊な実験は一般性がありませんし、また要素的すぎる実験では目的不明で面白くもないでしょう。 従ってシンプルでわかり易いテーマが主体になってしまいます。 まあ、これもやむを得ませんね。 今回も作る人は稀だろう思いますが、正弦波発振器を作りたくなったとき思い出してもらえたらと思っています。de JA9TTT/1

# 手持ちの豆電球にゆとりがあるので必要な方に差し上げます。作りたくなったらメールでもどうぞ。

参考:このBlog内には他にも低ひずみな正弦波発振器を扱う記事があります。RC Phase Shift型よりも一段と低い歪みが必要ならそちら(←リンク)も参照してください。

(おわり)nm

2017年4月11日火曜日

【測定】Repair an oscilloscope CO-1303G

【測定器修理:オシロスコープ CO-1303G】
 【TRIO CO-1303Gとは
 おもにSSBでオンエアするアマチュア無線局のオンエアモニタ用として作られたオシロスコープです。AM局にもたいへん有益だった筈ですが、時代は既にSSB全盛になっていました。  CO-1303Gは1970年代半ばに販売された製品で、定価38,500円だったようです。(TRIOは現在のKENWOOD社)

 何がアマチュア無線局向きだったかと言えば、低周波の2トーン発振器を内蔵しており、さらに送信中の電波をピックアップする回路が付いているからです。 オンエアしながら自局電波をモニタするのにはたいへん便利です。

 当時、一般用として販売されていたCO-1303Dと言うオシロスコープに上記の発振器とRFのピックアップを追加したのがCO-1303Gなのです。 その後はデザインを無線機に合わせた「ステーションモニタ」と称する機器も販売されましたが、それらの前身となる測定器でしょう。

 現在では広帯域なオシロスコープがあるのでありがた味はありません。 しかしその当時数MHzが上限のオシロが普通だったので、CRT(←リンク)の偏向板にRFを引き込む「直接軸による観測」が一般的なRF波形の観測方法でした。 当時CRTの偏向板が引き出されたオシロスコープはたくさんありましたが、RFのピックアップ回路を作るのが面倒でした。CO-1303Gはその部分を内蔵しています。

 そろそろSSBが全盛になり観測には2トーン発振器が必須だったので合わせて内蔵したのでしょう。 スペアナのようにIMD特性まではわかりませんが、少なくともアンプが飽和してフラット・トップになっているとか、バイアス不適切でクロスオーバー歪が酷いなど、SSB波の品質は十分判断できました。

 オンエア中のSSB波をビジュアルに監視する目的には今でも有効でしょう。 交信中の相手局に「当局の音はどうですか?」なんて聞くよりも遥かに頼りになります。 お世辞抜きで電波の状態がわかりますからね。

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 ほとんど記憶にありませんが20年以上前に中古品を手に入れたものでしょう。 高級なオシロを常時モニタに使うのは勿体ないですし消費電力も大きすぎます。それに冷却ファンがうるさいです。 CO-1303Gのような簡易なオシロは今どき「オシロとしての使い道」はあまり考えられません。しかしオンエアモニタ用なら十分活躍できそうです。

 購入当時はきちんと使えたと思います。 最近になってシャックの整理中に「発掘」したのですが久しぶりに灯を入れたら不調のようです。 今さら直しても仕方ないとは思ったのですが、半ば興味本位で修理してみました。 結論を言うと、オイルコンの全滅が原因でした。以下はその修理記録です。 たいして役立つとも思えませんが。(笑)

CO-1303Gの回路図
 姉妹機のCO-1303Dの回路図ならネット上で幾つも発見できました。 しかしCO-1303GはHAM用だったので販売台数が少なかったのでしょう。回路図は見付けられませんでした。 幸い手持ちの資料から回路図が見つかったので修理に役立ちました。但し殆どの部分はCO-1303Dと同じでした。

 このオシロは「強制同期式」のオシロスコープです。入力波形を管面に止めて見ることはできるのですが、時間軸(X軸)が校正されないため波形の周期や周波数を読み取ることはできません。それでも波形の良し悪しくらいなら十分良くわかります。 でも「強制同期式」のオシロなんていま一つですよね。(笑)

 ちなみに、今ある殆どのオシロスコープは「起動掃引式(トリガ・スイープ式)」のオシロスコープです。これは時間軸(X軸)が校正され、観測波形の時間周期や周波数を読み取ることが可能になるからです。 その昔、国産オシロのメジャーメーカーであった岩崎通信機は自社の「起動掃引式オシロスコープ」を「シンクロ・スコープ」と称していました。 そのため日本国内においては「シンクロ」の名が一般化していました。 ベテラン・エンジニアが「シンクロで波形を見ろ!」とか言ってましたね。 いまではオシロスコープと言えばすべて「起動掃引式」が常識です。 これはデジタル・オシロでも同様です。 オシロのことを「シンクロ」って言うのは年寄りだけでしょう。

 肝心の故障原因ですが、図の赤で囲ったコンデンサが劣化していました。 オイルコンが4つと電解コンデンサが一つです。 このオシロではオイルコンは図の電源回路部分に4つあるだけです。 従って、オイルコンは全滅と言う訳です。 ネット上にも同様の修理を試みる例が散見されますが、いずれもオイルコンの劣化(絶縁低下)によるものです。

 以前から喚起していますが、オイルコンは年数の経過で必ずと言って良いほど劣化するため使ってはいけない電子部品と言えます。 特殊なものを除けば、すでに生産されておらず、いま売られているのは怪しそうな長期在庫品だけです。そうしたオイルコンはすでに劣化済みか時間の問題です。

 話しは変わりますが、CO-1303Gの特徴は青矢印で示した部分です。図右上のRFピックアップ回路と、図下方のツートーン発振器です。 ツートーン発振器は低周波でありながら、LC共振回路を使った珍しい回路が使われています。GDMのようなコルピッツ型LC発振回路になっています。RF屋さんが設計されたんでしょうかね。(笑) CR回路よりもQが高いため簡単な割に発振波形は良いようです。 発振周波数は概略で1kHzと1.575kHzです。これはSSB送信機テスト用の標準的な周波数です。

 オシロスコープとしてのメイン回路はCO-1303Dとまったく同じで、プリント基板もそっくり流用しています。 垂直軸は入力にFET(2SK30-O)を使ったハイ・インピーダンスな差動形式の広帯域アンプで全段DC結合になっています。 また、水平軸(時間軸)はトランジスタを2石使ったノコギリ波発振器で作っています。 垂直軸アンプの最終段から信号を引き出してノコギリ波発振器に加えることで入力信号に同期が掛かるようになっています。たいへん旨く同期が掛かるので波形観測は容易です。 CRT(いわゆるブラウン管)は直径3インチ(75mm)でフラット管面の丸形です。75ARB31と言う静電偏向型のCRTが使われています。 安価なCRTなのでしょう。内面目盛りではないためスケールは少々読みにくいです。

 十分な輝度を得るためにCRTは1kV以上の高電圧が必要です。電源トランスの500V巻線を高圧整流用ダイオード2本で両波倍電圧整流しています。 偏向板へ直線性の良い十分な偏向電圧を与えるためにY軸の広帯域アンプ、及びX軸の掃引回路の出力部には約200Vの電源電圧を与えています。 このように半導体を使った測定器でありながら、かなりの高電圧を扱うため修理に当たっては感電に十分な注意が必要です。

警告:機器の修理は事故や怪我のリスクを伴います。自身の判断で十分気をつけて行なって下さい。修理の相談はご遠慮を。

 【音がして、やがて輝度低下
 故障確認中の様子です。 電源投入直後は輝線も見えて正常そうなのですが、やがてほとんど光らなくなるのです。

 直後の輝線が見えている状態でも、間欠的に「チッ」と言う放電のような音が聞こえます。やがてその放電音はしなくなりますが、輝線も消失するのです。

 このような症状から考えて、まちがいなく高圧電源部に放電現象などの不具合があるのだろうと当たりをつけました。 このオシロの高圧電源回路はごく単純な回路になっています。 従って部品数も限られるため全部を当たっても数は知れたものです。 放電音がしていたのはC124あるいはC125の0.1μFで耐圧1,000Vのオイルコンデンサらしいことを突き止めました。写真は故障箇所を分離するためにテストをしている様子です。一旦CRTを外さないと電源部分にアクセスできません。

C124とC125
 写真上方に見える2つの灰色の筒型が倍電圧整流回路に入っている0.1μF 1,000Vのオイルコンです。トランスの巻線電圧は500Vですから、 耐圧1,000Vなら十分な耐圧があります。

 しかし、オイルコンデンサは高耐圧品とは言っても劣化は免れず、年月が過ぎれば絶縁は低下します。 このオシロも製造されて40年くらい経過した筈ですから劣化してもやむを得ないでしょう。20年くらい前には使えていたのですから良く持った方かも知れません。

 少々耐圧不足なのですが、定格以上の実力(?)を見込んで実験的に630V耐圧のフィルム・コンデンサ(青色)に交換して様子を見ている様子です。(安全を見込めば750V以上の耐圧が必要) 直りそうでしたので、この部分のコンデンサを交換することにしました。 しかし修理に使えるような1kV耐圧のコンデンサは手持ちにありませんのでどうしましょうか・・・・

 【オイル漏れ発見
 いちばん怪しそうだったC125を撤去してみたら、べっとりとオイルが漏れていました。

 絶縁が低下して漏れ電流がかなり流れたのでしょう。だいぶ発熱したらしく、膨張してオイルを噴いたようでした。

 幸い、漏れたのは絶縁性のオイルですから腐食の心配はありません。良く拭き取っておけば大丈夫です。 なお、古い電気製品ではPCB含有のオイルコンが使われていることがあります。 このCO-1303Gが作られたころには使用禁止になっていましたからPCB入りではないでしょう。

 【セラコンで補修
 近所に売っているお店はないし適当な高圧部品も手持ちにはありません。

 あちこち探していて見つかったセラコンを使ってC124とC125を交換しました。 0.1μF/500Vがあったのでシリーズ・パラで0.1μF/1kVを合成しました。 AC500Vの整流ですから十分な耐圧マージンがあるでしょう。

 手前の方に0.1μFで2kV耐圧と1.6kV耐圧のオイルコンが見えます。 これらも怪しいとは思ったのですが、とりあえず使えそうに思えたのでそのままで行くことにしました。もちろん交換用の部品があるなら無条件で取り替えるのですが、すぐには思いつきません。

が、しかし・・・・

オイルコンは全滅
 2つだけの交換では済みませんでした。 暫く通電していたら再び輝度の低下が発生です。 残っていたオイルコンも絶縁劣化で電流がリークしており、特に0.1μF・2kVの方が酷かったようで発熱で触れぬほどの高温度になっていました。物理的な破裂さえありそうなたいへん危険な状態です。

 1kV耐圧のコンデンサでさえ手持ちがないので困ったのですが、630V耐圧の0.068μF(フィルム・コンデンサ)ならたくさんあったのでこれを使いシリーズ・パラで合成することにしました。 安くない部品を12個も使うのはなんですが、まあ使わずに死蔵している方が勿体ないですから。w

 耐圧は1.9kVくらいになるのでまずまずですが容量は約0.045μFなので半減です。しかし負荷電流も少なそうですから何とかなるでしょう。 どうしてもダメなら正規の容量が手に入るまでの応急処置としましょう。 ちょっと心配でしたが様子を見た範囲では十分行けそうでした。

 【1.4kVを確認
 部品交換したら電圧くらいは確認しておきたいものです。 しかし一般的なテスタでは1,000V以上は測れないことが多いと思います。 正常であれば間違いなく1,000V以上の電圧になっているので、1,000Vレンジしかなければスケールアウトしてしまいます。

 デジタル・マルチメータなら1.99kVまで測定できる可能性もありますが、1kV以上は許容していないことが殆どなので耐圧オーバーで壊してしまうリスクを伴います。仕様を良く確認してから測定する方が良いです。

 ここでは5kVレンジがある米軍用テスタ:USM-223で測定しました。ご覧のような目盛りですから細かくは読めませんが、約1,400Vであることがわかりました。 USM-223はごく普通のメーター式テスタです。電子電圧計(VTVM)ではありません。内部抵抗は20kΩ/Vですから5kVレンジは100MΩの内部抵抗になります。十分大きいため、テスタを当てたことで起こる電圧降下による誤差は僅かでしょう。

 500Vの2倍電圧整流ですから整流後の電圧はその約2.8倍になっていれば正常です。従って、約1,400Vなら合格ですね。(注:対シャシ電圧ではマイナス1,400Vです。CRTの電源回路は負の高電圧になっています) なお、取扱説明書には約-1,300Vと書いてありました。

 半分くらいしか電圧が出ないときは、高圧整流用ダイオードの故障が疑われます。HVT-22Z-3と言うダイオードが使われていますが入手困難でしょう。 秋月電子通商で売っている「ESJA57-04」(←リンク)と言うダイオードで代替できます。できたらD107とD108の2つとも交換します。 参考ですが、こうした高電圧用ダイオードは順方向電圧が高いため一般的なテスタのダイオードチェックでは良否判定できません。簡易的には電流計と可変電源を使って調べます。

 【電解コンデンサも怪しいが
 オイルコンよりマシだと思っていますが、電解コンデンサも怪しくなっています。

 200V電源の平滑に使ってある47μF250Vのケミコンでゴム封止部分に液漏れの跡が見つかりました。念のため交換しました。外して確認したらリーク電流は大丈夫そうでしたが液漏れした痕跡のあるコンデンサは信用できません。

 横型(チューブラ型)の手持ちがなかったので、縦型を寝かせて使っています。 振動の多い環境や頻繁な持ち運びには不適当な実装方法ですが、シャックで使うなら支障ないでしょう。面倒ですけれどホットメルト接着剤で止めてしまえば一段と安心でしょうね。

ダメだったコンデンサ
 写真のコンデンサがダメになっていました。 結局、オイルコンは全滅です。 この製品が製造されたころ安価な高圧コンデンサと言えばオイルコンだったのでしょう。 何十年もの製品寿命は考えていませんから合理的な部品選定だった筈です。

 オイルを含浸した紙を挟んでアルミ箔を巻いた構造です。 構造・材質上、幾らか吸湿性があってそれが絶縁劣化の原因だと思います。 それでも国産品はかなり優秀だったのだそうです。 輸入機器に使ってあるようなオイルコンは日本の梅雨時を超すだけで劣化してしまう物さえあったそうです。 なお、オイルコン(オイル・コンデンサ)はペーパー・コンデンサ:紙コンデンサとも言われます。 またMPコンデンサも同類です。(MPと言うのはメタライズド・ペーパーの略) すべて紙を絶縁材に使ったコンデンサは絶縁性が悪くなる問題を抱えていることになります。

 今となっては「当面は大丈夫」であってもあえてオイルコン使う時代ではないでしょう。耐圧が必要なら高圧用のセラミック・コンデンサやフィルム・コンデンサを使うべきですね。(笑)

 低圧部分のケミコンにも劣化はあるかも知れません。 今のところ大丈夫そうですが、次々に壊れるかも知れません。 基板を点検していたら半導体のリード線が銀メッキの硫化で黒くなっていました。こちらも劣化の心配があります。 内部はホコリの堆積もなく、奇麗でしたが40年前の製品ですからいつどこが壊れても不思議ではありません。

参考:実際には電源部のほかにもう1カ所だけオイルコンが使われています。垂直軸の入力端子にあって、アンプをAC結合に切り替える部分に0.1μF630Vがあります。(部品番号:C1)このオイルコンも劣化が疑われますが、今のところ実害が無いのでそのままです。機会を見てフィルムコンデンサあるいはセラミックコンデンサに交換するつもりです。

 【ツートーン発振器
 修理とは関係ありませんが、CO-1303Gの特徴部分を見ておきましょう。 パネル面から見て右側後方に実装された2トーン発振器の基板です。 緑色の円筒が発振回路のコイルです。

 裏面からマイナスドライバを調整穴に差し込んで、2トーンのバランスと出力レベルが調整できるようになっています。

 SSB送信機(トランシーバ)の健康診断に2トーン発振器は必須です。 オシロスコープをシャックにおくようなHAMなら持っていてしかるべきです。 しかし今なら2トーン発振器はOP-Ampを使って簡単に自作できます。 あえてこうした機器を探す必要はありません。 それにCO-1303Gの発振波形はオシロでの観測用としては十分そうでしたが、スペアナでの観測用には満足できないと思います。 歪率の調整もできないので簡易な観測用と割り切るべきです。

RFピックアップ回路
 電力の大きな送信機から安全にRF信号を引き出すのは意外に難しいものです。 このピックアップ部はCRTの直近に置くことでRF信号を長く配線で引き回さないことを前提にうまく作ってあります。

 (昔の)JARLやARRLのハンドブックなどを見るとM結合で取出す例が載っています。 使い物にはなりますが、あまりスマートな方法ではありませんでした。

 この回路ではC結合で直接ピックアップし、さらに直列容量(結合容量)をスイッチで切り替えることで適切な観測振幅になるよう考えてあります。 HF帯から50MHzあたりで使うのならアンテナ系のSWRにはあまり影響を与えません。

 この部分は自作でも真似できそうですが、ピックアップ部はオシロの近くに置かなくてはなりません。 写真下の部分に見える2つのM型コネクタに送信機とアンテナあるいはダミーロードを繋ぎます。 上の左方にあるRCAジャックは低周波2トーン信号の出力端子です。

                  ☆

 よく考えてあったとしても、普通に設計された電子機器が数10年を経て正常に働くとは考えにくいでしょう。 せいぜい10〜15年くらいが設計寿命だった筈です。 40年も前の機器を使ってみようなどと思う方が酔狂なんです。(笑)

 しかし、電子部品すべてが劣化する訳ではありません。 経年劣化し易い部品さえ交換してやれば意外に機能・性能を取り戻せます。 ただ、そのなおした機器が現代に通用するか否か・・と言う部分が大いに問題でしょうね。既に時代は終わってますから。 結局、直してみるのは面白いけれど実用性はありませんでしたと言うオチになりそうです。古い機械の修理なんて所詮そんなものです。

 このオシロはSSBのオンエア・モニタくらいならそこそこ実用になります。 あるいは、近ごろ流行のAM局の変調度モニタにも最適です。 深い変調でありながら、過変調にならぬよう直接見ながら管理できます。 SSBやAMなんて40年前から変わっていませんから役立つのも当然かも知れませんね。 ジャンク(危険ゴミ)になるハズだったんですから、保管などせずに積極的に使いましょう。ずっと使っていてCRTが焼けて来たところで惜しくもないでしょう。 de JA9TTT/1

(おわり)fm