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2019年6月17日月曜日

【回路】Regenerative Receivers (1)

再生式受信機・その1 イントロ編
 【再生式受信機の時代
 再生式の受信機がHAMのシャックで活躍したのは戦前から終戦直後の時代でしょう。 私が電子工作やHAMの世界に入門したころ、すでに再生式受信機(オートダイン・レシーバ)の時代は終わっていました。 もうHAMの雑誌で再生式受信機を本気で扱う記事なんか見かけなかったですね。

 もちろん、入門者向けの雑誌記事には簡単なのに感度の良いことが書かれていました。 けれど、選択度が悪い、安定度が良くない、操作者によって性能が違ってしまう・・・と言った大きな欠点があって『一度は作って見るもの』だが本命はスーパーヘテロダインだというのが結論でした。 通信型受信機はスーパーヘテロダインが常識であり、しかもCollinsタイプ・ダブルスーパーがベストだという時代だったのです。

 SDR形式の受信機(受信部)の登場で、スーパーヘテロダインの絶対優位も変わろうとしています。 新たな時代も始まっていますが、かつて実用的に使われたこともある「再生式受信機」とはどんな物だったのか振り返ってみたいと思っています。 (参考:超短波帯:VHFで使われる超再生式についてはいずれの機会を予定します)

                   ☆

 第1回はイントロ編の回路図集として再生式受信機の歴史(?)など辿ってみます。 過去のすべてを紹介する訳にも行きませんから「私」が適当と思う幾つかに絞っています。網羅的ではありませんが悪しからず。 レトロな受信機技術に興味が湧かないお方はここでお帰りが宜しいです。

写真はDG-MOS FETで再生検波回路をテストしている様子です。第3回あたりで扱うつもりです。

 【戦前の再生式受信機・その1
 Dr. E,H.アームストロングが正帰還の研究をしていて再生式受信機を発明したのは1912年(大正元年)だそうです。使ったのは真空度の低いソフトバルブだったようです。もちろん三極管です。 いまでもグリッド側の同調回路にプレート回路に入れたフィードバック・コイル(チックラー・コイルとも言う)で正帰還する形式をアームストロング型と言うことがあります。

 しかし3極管を使った再生検波回路には独特の難しさがあったのです。意図しない正帰還が起こってハウリングのような現象が現れます。ゲインを上げようとすると必ずと言って良いほど起こる厄介な現象のためそれが感度の限界にもなっていたのです。 これはフリンジハウルという現象で、半導体を使った再生式受信機でも起こることがあります。

 図は1936年(昭和11年)版のARRL Handbookに掲載された再生式受信機です。この頃になると5極管が発明され、そのお陰で一段と高感度な「再生式受信機」が作れるようになります。

 この回路はいまでも通用する筈です。回路形式はハートレー型です。 この形式のポイントは検波管のプレート負荷の低周波チョークコイル(AFC)でしょう。 数100H(ヘンリー)のインダクタンスを持ち、巻線抵抗が過度に大きくないAFCを使います。 なおかつスクリーングリッド電圧の加減で最大の増幅度が得られる状態を求め、そこで再生が始まるようコイルのタップ位置を加減します。 この辺りが「言うは易く、されど行なうは難し」なところであって、部品配置や構造、さらには製作者のスキルに負う部分大です。 それゆえ誰でも等しく最高感度にはできないのです。  使用球の58や56、あるいは6D6や76も入手は可能です。 1930年代のレトロを体感してみるのも興味深いかも知れませんね。

 【戦前の再生式受信機・その2
 The "Radio" Handbookという1938年(昭和13年)出版の米国書籍に載っていた「GAINER」という名前の再生式受信機の回路です。 Gainerなる単語はその後も様々な所で目にするので「ゲインがいっぱいとれますよ」と言った再生式受信機で高感度を謳う決まり文句のようになっているのでしょう。(笑) 回路図の書き方がクラッシックで判りにくいですがよく見ると理解できます。hi

 回路は上記のARRL-HBと大差ありませんが、ナス管やST管から進歩したG管が入手できるようになっていたのでしょう。 6S7Gと6L5Gと言うG球を使っています。これらの球は6D6と76のベース違いの同等管ですから定番の構成と言えます。  当時のQST誌を見ると、6K7や6J5も登場していたようです。 そうしたメタル管を使った方がスマートかも知れませんね。(G管:グラスエンベロープはST管の同じですが、ベース・ソケットが8脚のUS型になった球です)

 この受信機でも検波管の負荷は低周波チョークで、500Hのものを使っています。 この回路のままでヘッドフォン(高インピーダンス型)が十分鳴るそうです。 家庭用のラジオではラウドスピーカを鳴らす必要がありますが、HAMの用途ではヘッドフォンでも十分だったのでしょうね。 下手にパワーアンプなど追加するとモーターボーティングと言った低周波発振が起こりやすかったと思います。いまのように数10〜数100μFのケミコンなどまだ存在しない時代です。 数μFがやっとのオイルコンでは電源系のデカップリングの効果も限られたでしょう。ヘッドフォンで聴くのが間違いのない所です。

 何れにしても、昭和10年代には再生式受信機の回路はほぼ定番化していたと考えて良いようです。 生きた回路として今でも存在するのですから受信機のシーラカンスですね。(笑)

                 ☆  ☆

戦後の再生式受信機・その1
 そろそろ戦後の話にしましょう。  これは双三極管の6SN7を1本使ったHAMの入門用受信機です。 5極管を使って入念な調整を行ったものには敵いませんが、3極管を使った検波回路は初心者でも性能が出しやすいと言うメリットがあるそうです。 回路形式は「アームストロング型」そのものです。

 1953年(昭和28年)版のJARL Handbookより転載しました。おそらくオリジナルはARRL-HBにあると思います。 そろそろスーパー全盛の時代にあっても入門用には「再生式受信機」が最適と思われていたのです。 まだCW(無線電信)とAM(無線電話)の時代ですから、SSBが復調できる性能は必要ありませんでした。 いまの時代に再生式受信機を作ってみてもAMやCWモードならけっこう実用的です。 そのころお小遣いの少なかった入門HAMには良い教材になったでしょうね。ご近所のHAM(AM局)のラグチューくらいよく聞こえたことでしょう。(参考:昭和28年当時JAではHAMは再開したばかり)

 6SN7はmt管では6CG7が近似管です。あるいは12AU7で代用しても良いと思います。ハイ・インピーダンス型のヘッドフォンを使うのが前提ですが10kΩ:8Ωくらいの小型アウトプット・トランスを介せば近代的なヘッドフォンが使えます。 なるべく密閉式で感度の高いヘッドフォンを使うとよく聞こえます。 電源は外付けにしヒータ回路もDCで点灯してやるとブーンというHUMに悩まされません。

 【戦後の再生式受信機・その2
 図はR.S.G.Bの1961年版 Radio Communication Handbookからの引用です。 この時代、英国でも同じような事情だったようで入門用として再生式受信機が掲載されています。

 検波回路と低周波増幅は上記のJARL-HBの物とさして違いませんが「9D6」というリモートカットオフ特性の5極管で高周波増幅しています。 ここまで高周波増幅のない、いわゆる「0-V-1」形式ばかり紹介してきましたが、やはり高周波増幅を付けて「1-V-1」形式にすべきです。

 CWの受信では検波回路を必ず発振させて使います。 高周波増幅がなければ、その発振勢力がアンテナから輻射されてしまうのです。 真空管を使った検波回路の場合、意外にも強力な発振状態になっていることがあって、近隣のHAM局にビート妨害を与える可能性は否定しきれません。 わずか出力数mWのQRPPerとQSOできる事実を考えれば少々の漏れと言って無視もできないでしょう。 しかし検波回路の前に高周波増幅を設ければ防げるので、推奨されるべきです。

 9D6という球は入手困難でしょうから、米国型の6BD6で代用すれば同じように作れます。 プラグインコイル形式になっていてマルチバンドの受信が可能な設計です。同じ部品は手に入りませんからシングルバンドが作り易いです。

戦後の再生式受信機・その3
 『初歩のアマチュア無線製作読本』という1969年ころの書籍に掲載されていた回路です。 ミニチュア管ですから、真空管こそ新しくなっていますがご覧のように回路そのものは1936年のそれと大した違いはないのです。

 入門用ということで検波回路の負荷は高抵抗に置き換えていますから近代的な球とは言っても性能はちょっと劣るでしょう。 数100Hのチョークコイルは高価ですし、扱いも少々厄介なので抵抗器で代替する方が入門者向きなのです。 それでも結構良く聞こえるのでHAMバンドやBCLバンドを覗くには適当だったんでしょうね。 6AV6の3極部はHigh-μなので12AU7や6SN7よりもゲインがあります。検波部を補う意味もあるのでしょう。

  電源回路の整流管:5M-K9は超入手難なので1N4007のようなシリコン・ダイオードで整流します。 250Vもの電源電圧は必要ないと思うので電源トランスは100V:100Vのアイソレーション・トランスを使うと安上がりです。半波整流でも行ける筈ですがあえて高い電圧を掛けたいなら倍電圧整流します。 6.3Vの方も2球合わせて600mAですから6VのACアダプタでDC点灯できます。スイッチングタイプではない(トランス式の)ACアダプタに限ります。

半導体を使った再生式受信機・その1
 1947年にベル研究所でトランジスタが発明されます。増幅素子としての実用性に気づくや、様々な応用が考えられたそうです。その中にはラジオもありました。 最初はストレート形式のラジオから試みられたのは間違いないでしょう。

 一般に手に入るようになると1〜3石程度の「トランジスタ・ラジオ」の製作が流行りました。スーパ形式を作るにはたくさんトランジスタが必要ですし、周辺部品も発展途上でしたからストレート式ラジオが自作の主流でした。 私も中波BCバンドの再生式2石ラジオを作った事があります。 ただしそれを卒業した頃にはスーパー形式に目覚めていたのであえて再生式の短波受信機など試そうとは思いませんでした。 そのころ作ってみたら意外な発見があったと思うので本気でチャレンジしてみるべきでしたね。hi

 図はこのBlogで既出ですが、1970年版のJARL-Handbookに掲載されていた再生式受信機です。デバイスはトランジスタですがアームストロング式の再生検波回路です。 これはBCバンド用ではなくてHAMの用途を狙った物でしょう。 再生検波に2SA156、低周波アンプに2SB440を使っています。どちらもゲルマニウム・トランジスタですが性能が安定してきた時代のデバイスですから好成績が期待できます。 手に入り易い代替品として2SA70と2SB77など如何でしょうか。
 トランジスタは意外にハイゲインで、ほんの僅かなコレクタ電流でも良く働きます。実際に類似の回路を作ってみるとかなり聞こえるのがわかります。 ジャンク箱から発掘してきたようなゲルマニウム・トランジスタも楽しいものですが、古臭い再生式受信機ではあっても近代的なシリコン・トランジスタの方が高性能化しやすいように感じました。

半導体を使った再生式受信機・その2
 わずか数年後、1973年版のJARL-Handbookに掲載されていた再生式受信機です。 再生検波にFET(電界効果トランジスタ)が使われています。 低周波増幅もシリコン・トランジスタ(2SC372)になりました。

 こちらもアームストロング型の再生検波回路ですが、入力インピーダンスが高く高周波性能の良い2SK19の方がこの用途には優れていたようです。 ただし、2SK19のように単純な構造のFETは3極管と同じ問題を抱えているようでした。再生がかかり始めて感度が(ゲインが)アップしてくると低周波発振を伴うことがあるのです。これは3極管を使った再生検波の挙動とそっくりなのだそうです。 結合トランスST-20のFET側にある2.2kΩはその発振を止めるのに効果的で、低周波発振が起こらぬ範囲でなるべく高い抵抗値にするのが高感度のコツだそうです。

 2SK19は2SK192A(Y or GR)あるいはBF256Bで代替できます。2SC372は2SC1815Yが代表的な代替品です。 受話器はクリスタル(セラミック)イヤフォンを使う設計です。 本格的なヘッドフォンを使うには低周波アンプを少し増強します。 上手に作るとごくわずかな消費電流で良く聞こえるCW受信機になります。 不要輻射を防ぐ観点から、できれば高周波増幅を前置すべきでしょうね。 同時にアンテナの動揺の影響やボディ・エフェクトが軽減できて扱いやすくなります。  次項のような簡単なRF-Ampでも十分効果的です。

半導体を使った再生式受信機・その3
 複雑な回路が蔓延している反動からでしょうか? 昨今はオートダイン(再生検波)のようにシンプルな受信機がブームのようになっています。 デバイスの進歩もあって既存の回路であっても高性能化が容易になっているのも理由でしょう。 真空管時代には難物だったハイゲインな低周波アンプも半導体ならずっと作り易いのです。

 図は、ARRL発行の1998年秋版:Communications Quarterly誌の再生式受信機特集で紹介されている「High-performance JFET shortwave receive」と称する受信機です。 もう20年も前になる記事ですが今でもよく参照されているようなのでピックアップしました。 基本はアームストロング型の再生検波回路ですが、いくつか工夫されています。 もちろん高周波増幅が前置され不要輻射を防ぐとともに検波に最適な信号レベルに加減できるよう考えられています。

 低周波増幅にはAD745JNというこの記事の当時もっとも低ノイズと言われたOP-Amp.をハイゲインの設計で使い一発で必要なゲインを得ています。 簡易型ながらローパス・フィルタを設けたのも効果的でしょう。しかし回路そのものはオーソドックスですね。 定番回路の域をあまり踏み出る必要もなかったのでしょう。

 J-FETはJ310または2N4416が指定品ですが、2SK192A(Y or GR)でも十分なはずです。 J310と2N4416の特性はかなり違うのにどちらでも良いというのですからRF向きのFETなら何でも良いのでしょう。 また、BF256Bの中身は2N4416と同等だったはずなので同じように使えます。 OP-Amp.は高価なAD745JNを探すまでもなく入手容易なNE5532やNJM5532などで十分でしょう。4558クラスでも良いはずです。 検波回路には再生に伴うノイズの発生があるので後に続く低周波アンプは程々にこだわれば十分です。 それらのOP-Amp.は2回路入りですから片方をアクティブ型のローパスフィルタにするなど高性能化がはかれます。

 この雑誌の特集記事はPDF版がARRLのサイトで入手できたと思います。詳しくご覧になりたいお方はダウンロードされてください。「High-performance JFET shortwave receive」で検索すればすぐ見つけられます。もちろん英文ですけどネ。(笑)

                 ☆ ☆ ☆

 こうして振り返ると回路形式として戦前から完成されていたことがわかります。あとはデバイスの進歩で少しずつ改良されていますが、本質的な部分は変わっていないように感じます。 それぞれ製作すれば先人の足跡を辿って追体験できる面白さがあるでしょう。私はもうちょっと違うアプローチで行こうと思っています。

 これからの時代、通信型受信機の高性能化を指向するならやはりSDRが本命でしょう。 ただしHAMが自作の対象にするのは難しいと感じます。開発のスキルも勿論ですがツールを始め開発するためのハードルが高すぎます。 結局、よくできたキットや完成品を求めた方が正解となってしまうでしょう。 そうなると完全自作で楽しめる実用的受信機はスーパーヘテロダイン型がもう暫く本命であり続けると思うのです。 もちろん私見に過ぎませんが、これは再生式受信機を幾つか試みたいまでも変わりません。

 しかし、再生検波の技術を使えばごくわずかなデバイス数で交信可能な感度を持った受信機が作れることは事実であり、そこに面白さや魅力を感じます。 これはQRPなCW送信機で交信するのと通ずるものがあるからではないでしょうか。 もちろん快適さはには欠けますがミニマムなリグでQSOを試みるというスリリングな体験はシンプルな自作機ならではのものです。 現代は優秀なデバイスがタダのようなお値段であふれているのですから、トランジスタを倹約してもまったく意味などないかも知れません。 でも、たった数球や数石で山ほどたくさん半導体を使ったトランシーバと同じこと(即ちQSO)が出来るのですから痛快ささえ感じますね。(笑)

 単にシンプルな受信機ならワンチップなラジオ用Cも選択肢です。 あえて再生検波式の受信機を試したいと思ったのはもう少し他の理由もあります。 以前からの疑問を試す機会でもあり、そのあたり追い追いお話ししたいと思います。 ではまた。 de JA9TTT/1

☆ 実験の進捗しだいで時々Blogをお休みするかも知れません。

(つづく)fm

2019年6月7日金曜日

【回路】455kHz PLL Oscillator

【455kHzのPLL発振器:BFOまたはキャリヤ発生用に】
 【455kHzのフィルタ発掘
 選択度とAGC特性のよろしくない既成の受信機の改造でもしようかと思って先ずはフィルタから・・・と探し始めました。

 発掘されたのは良さそうなクリスタルフィルタです。どちらも新品ではありませんがSSB用とCW用がありました。 AM用はセラミック・フィルタがあるのでひと通り揃いそうです。 IFアンプはなにで行こうかと考え始めたのですが、その前にSSBやCWの復調に必要なBFOが心配になりました。 453.5kHzや456.5kHzと言った水晶発振子の持ち合わせはないと思ったからです。
 探したら456.5kHz(LSB用)は見つかったのですが、やはりUSB用やCW用はありませんでした。 今どきですからDDS発振器で行けば簡単に解決なのですが、探していてずいぶん昔に455kHz帯の発振器を検討したことを思い出しました。

                   ☆

 今となってはあまり有用とは言えないかもしれませんが、「実験基板」の保管場所から発掘した455kHzのBFO基板を評価しました。 この発振器はもともと455kHzのSSB用あるいはCW用のフィルタを活用するためだった筈です。 古いものでしたが思っていたより好成績だったのでBlogネタにしたようなわけです。 PLL回路を使ったものですがスペクトラムは十分綺麗ですし、マイコン+DDSで行くよりも消費電流が少ないのはメリットだと感じます。

 SSB用のフィルタは手元にあるけれど、BFOやキャリヤ発振器に困っているようでしたら少しは参考になるかも知れません。そんな程度の話です。  DDSモジュールに付き物の制御用マイコンはいらないのでプログラムの開発環境がなくても作れます。 この辺にメリットを感じる人もあるかも知れませんね。 とは言え、相変わらず自家用の備忘Blogですから大した中身はありません。悪しからず。 工夫で解決しようという精神は昔もいまも健在です。(笑)

参考:製作した当時のマイコン開発環境はいまのようにお手軽ではなく、DDSもまだ一般化しない時代だったのでPLLは合理的な実現手段の一つだった筈です。

 【455kHzのPLL-BFO全景
  ICB-93Sと言うサンハヤトのユニバーサル基板に作ってあります。サイズは72mm×95mmです。

この基板だけで453.5kHz及び456.5kHzのほか、CW用として455kHz±800HzのCW用(2種類)の発振出力が得られます。 各周波数は1回路4接点のスイッチで簡単に切り替えます。 50Ωの負荷に10dBm(=10mW、約2Vpp)得られるのでダイオードDBMにも適当でしょう。 ごく普通の水晶発振子を周波数の基準にしていますが、発生周波数が455kHzと低いため周波数安定度はまずまずです。一般的な水晶発振器と同じような性能です。 電源は標準12Vを与えます。 基板内部に8Vの三端子レギュレータがあるので10〜15Vの範囲なら大丈夫。約20mA消費します。

 この発振器の基本はPLL式です。 PLL発振器の設計方法は過去のBlog(←第1回へリンク)に詳しく書きました。 この基板は1992年に作ったものです。 何ぶんにも作った時期が古いので幾らか考え方に異なる所もありますが、その基本は違いません。 後ほど評価結果がありますが十分な性能でした。 いま見ると少し改善したいところもあるのですが、そのままそっくり製作しても使い物になります。

 【455kHz PLL-BFO 回路図
 回路の説明です。 基準周波数の発生には2MHzの水晶発振子(HC-49/U)を使っています。発振はFETで2SK241GRを使いましたが、ここ(Q3)は2SK192AGRでも良いです。 2000.1980kHzを発振させたあと、リファレンス・デバイダのTC9122P(U2)で666分周して比較周波数:3.00330033・・・kHzを得ます。 なお、CW用のときは665または667分周します。

 VCO(Q1)は2SK241GRを使ったハートレー型発振回路です。バリキャップ(可変容量ダイオード)は製作当時適当な手持ちがなかったらしく、05AZ33Yと言う33Vのツェナー・ダイオードで代用しています。 実験ノートのメモによると逆バイアス電圧が1Vのとき22pF、7Vのとき13pFの端子間容量とあります。 10pF程度の容量変化があれば455kHz付近で数kHzを可変するには十分ですから使ったものと思います。 今でしたら20pF程度の変化量が得られるバリキャップは容易に手に入ります。それを使うべきでしょう。それくらいの容量変化が得られれば4個使いではなく2個をつきあわせて使えば十分です。

 VCOの出力(Q2)には2SK241GRを使ったバッファアンプを置き、約10dBmの出力を得ています。 2SK241GRは2SK544Fや2SK439F(ピン配置注意)で代替できます。 VCO部分(Q1)は2SK192AGRやBF256Bで代替できますが、バッファアンプ(Q2)はなるべく2SK241GR等が良いです。

 VCOの出力はプログラマブル・デバイダのTC9122P(U3)で151あるいは152分周され位相比較器へ送られます。

 位相比較器はMC14046B(CD4046Bでも同じ)を使っています。比較周波数が約3kHzと低いため、スタンダードC-MOSの位相比較器で十分です。 もちろん74HC4046も使えますが高速C-MOSを使っても性能アップするわけではありません。もし74HC4046を使うなら最大電源電圧が低いので電源を7Vに下げる必要があります。 3kHzステップなので10kHzのPLLよりも設計は難しくなります。 ループ・フィルタはパッシブ型で、デザインが古いのでインピーダンスは高めの設計です。しかし後ほど示すようにスペクトラムを観測した限り支障は感じられませんでした。
 なお、リファレンスのフィードスルー(漏れ)が気になったらしく3段のリファレンス・フィルタが追加してあります。 いまでしたらC-MOS OP-Ampを使ってバッファ機能を持ったリファレンス・フィルタを構成するでしょう。 スペクトラムを観測していて性能が不十分なようなら改造しようと思っていたのですが、支障なかったためそのままにしました。 ただしVCOの調整は多少クリチカルなようです。

 電源は+8Vの3端子レギュレータで安定化しています。 周波数切り替えのためにプログラマブル・デバイダとリファレンス・デバイダの両方の分周数を切り替えます。 簡単なスイッチで済ませるためにダイオードを使ったマトリクス回路が組んであります。 この部分がハード的な「プログラム」の一種と言えないくもありませんね。hi

 回路はわりあい簡単ですので、部品が揃えば短時間で作れます。 ちょっと面倒なのはコイル巻きかも知れません。 コイルについて詳しくはVCOの写真のところにあります。

 【2MHz・基準発振回路】
 2.000MHzちょうどを発振させてしまうと、必要とする453.5kHzや456.5kzの誤差が大きくなりすぎるため、少しオフセットさせます。 具体的には約189Hzほど高く合わせます。 これを666分周して3.00330033・・・kHzを得ます。

 ごく普通の2MHzの水晶発振子は+189Hzくらいの周波数なら簡単に合わせられます。 特注などせず、ごく一般的な市販品の2MHz水晶発振子が使えます。 わざわざ水晶発振子を特注するくらいなら455kHz帯の水晶を頼めば良いわけですからね。既製品で間に合わせるのがミソです。(笑)

 昨今はTC9122Pがやや値上がり気味なので経済性が悪くなっていますが、水晶発振子を4つ特注するよりも安上がりでしょう。 納期を待つ必要もありません。 TC9122Pではなく標準的なHC-MOSのカウンタで構成することもできます。 ICの数は増えますがその方が経済的でしょう。(例えば74HC161を2+3=5個使う)

 お気付きのお方もあると思いますが、ごくわずかな周波数誤差は許容すると言う設計です。計算上、USB用/LSB用ともに約1.7Hzほど誤差を伴います。 しかし一般的な455kHz帯の水晶発振器でも数Hzの変動や誤差は普通に存在しますので性能は同等です。 実際に類似設計した455kHz帯のPLL-BFOで使った受信機ではなんらの支障も感じませんでした。 PLL式の場合、基準発振器を合わせれば全部の周波数が揃うので個々の周波数合わせの面倒がなくてむしろ便利なくらいです。

 完璧主義者ならTCXOとDDSでやるのが良いと思いますが恐らく実用の上で違いはわからないでしょう。 要するに電子回路は実用性能が得られれば十分なわけです。わずかの誤差を許容すれば水晶発振子の特注など不要になります。

VCO回路
 VCO(電圧制御発振器)はハートレー型のLC発振器です。 その同調コンデンサの一部にバリキャップを使い発振周波数を電気的に可変する形式です。 既述のようにバリキャップはツェナー・ダイオードで代用しています。

 発振コイル(L1)は東光の7PLAと言う低い周波数用のコイルボビンを使ったものです。 インダクタンスは500μHあります。 全部で112回巻きでタップはGND側から17回の位置から引き出します。巻線はφ0.05mmのポリウレタン電線です。

 同等のインダクタンスが得られれば良く、一例としてaitendoで売っている「IFTきっと」のような素材で作れます。 500μHを得るための巻き数は異なるのですが、タップ位置を同じ比率のところから取り出せば大丈夫です。 実測しておいた手元のデータによるとaitendoの「IFTきっと」の場合、φ0.08mmの巻線で127回くらい巻くと500μHが得られます。タップの引き出し位置はGND側から19回のところにします。

 VCO回路の出力部分にあるコイル(T1)は同じく東光の7PLAコイルボビンが使ってあり、同調側(FET側)が45回、出力リンクが8回巻いてあります。+10dBmを取り出すために低いインピーダンスに設計してあります。  1500pFで455kHzに同調すれば良いので同調側のインダクタンスは約80μHです。同じくφ0.05mmのポリウレタン電線で巻いてあります。 ここにもaitendoの「IFTきっと」を利用するなら、同調側は53回、出力リンク側は9回で良いでしょう。こちらの巻線はφ0.08mmのポリウレタン電線を使います。

 発振部(Q1)は2SK192AGRやBF256Bでも大丈夫ですが、バッファ・アンプ部(Q2)は2SK241GRや2SK544Fが良いです。 負荷インピーダンスが低いので2SK192AGRやBF256Bであっても発振してしまう可能性は低いのですが、2SK241GRや2SK544Fなら安全です。 もちろん日立ファンのお方は2SK439Fでしょうね。2SK439は足ピンの配列が逆順なので注意します。

【基板の裏面】
 裏側など見ても詰まらないと思います。 大した回路ではないので配線も簡単です。 部品配置が合理的ならあまりジャンパー線も増えません。

リファレンス・フィルタの部分を後から追加したように思うので、多少余裕のない部品配置になっています。 基板にはまだ余白があるのでVCO部分はもう少し場所を確保しておきたいと感じました。

 なるべく小型の部品を使い、リード線が不必要に長くならぬようにハンダ付けします。  特にVCO部分の部品や配線がブラブラすると出力信号のスペクトラムにノイズが乗る可能性があります。 使ったコイルはコアが強く止まっているので振動で緩む可能性は低いと思います。もし可能ならパラフィンなどを塗布して緩み留めを行なうとベストでしょう。 製作後少し経ってから再調整の必要があるかも知れません。接着剤のようなもので完全に固めてしまうのはうまくありません。

スペクトラムの観測・その1
 一例として、LSB用の456.5kHzを10kHzスパンで観測している状況です。 このように細くシャープなスペクトラムが得られます。 以前のBlogのとき見た7MHz PLL発振器のスペクトラムよりも裾野はずっとシャープですが、これには理由があります。

 VCOの可変範囲がずっと狭くなっており、VCOの感度が低くなるように作ってあるからです。さらにロックアップタイムもtL=500mSとかなり遅い応答にしています。頻繁に切り替える必要がないからですが、それでも0.5秒なら普通は支障ないです。 この辺りが3kHzステップのPLLであっても綺麗な出力が得られている理由です。
 そもそも周波数が低いのも有利なのだと思います。 このスペクトラムを見ると良くできた水晶発振器に遜色のない信号が得られていると思います。 写真のノイズフロアはスペアナの測定限界によるものです。

スペクトラムの観測・その2
 今度はUSB用の453.5kHzを発生させて、100kHzスパンで観測しています。 リファレンスのフィードスルー(漏れ)によるスペクトラムの汚れも見られず、非常に綺麗です。

 CW用のスペクトラムは示しませんが、USB/LSBと違いません。  何れにしても、これならSSB/CWの復調用にもSSBの発生用にもまったく問題はないでしょう。 普通に水晶発振子で作ったBFOやキャリヤ発生回路と同等に使えます。DDS発振器と違って折り返しのスプリアスが存在しないのもFBでした。

 少々古くなってきた技術で作った発振器ではありますが目的の用途には十分な性能でした。 あえて作りかえることなく、このまま完成したユニットとして活用しましょう。 作ったことを忘れていましたが旨いものが見つかってよかったです。(笑)

                    ☆

CW用メカフィルも発掘
 探していたら600Hz幅のCW用メカフィルも見つかりました。 こうしたフィルタの中心周波数は概ね455kHzになっています。 CW用のBFOは中心周波数から約800Hz離れた位置に置けば良いでしょう。

 このPLL-BFOではリファレンス・デバイダの分周数とプログラマブル・デバイダの分周数の両方を変えることでCWにちょうど良いBFO周波数を得ています。 実際には455kHz±820Hzくらいになっています。 フィルタそのものの通過帯域幅は500〜600Hzあるので600〜1kHz程度のビート音で聞くことができます。 CW用としてちょうど良いです。

                  ☆  ☆
 
 455kHz帯でフィルタ・タイプのSSBジェネレータを作るには標準値として453.5kHzと456.5kHzの発振器が必要です。 無線機の自作が盛んだった頃なら既製の水晶発振子が売られていたのですが、いまでは特注するしかありません。

 ちょっと考えると、この2つの周波数はちょうど3kHz離れていますから3kHzステップのPLL発振器で作れそうに思えませんか? ところが、どちらの周波数も3kHzの整数倍ではありません。 また1.5kHzの整数倍でもないのです。 従って単純な3kHzステップのPLLでは発生できないのが面倒なところです。 まあ、100HzステップのPLLなら巧く行くのですが、こんどはソレを作るのが難しいです。他にヘテロダイン式という手もありそうですが・・・。

 この例のように、多少の周波数誤差を許容すれば簡単な回路でうまく作れます。 興味が湧いてきたら電卓を片手に計算されてみてください。 当てずっぽうではなく、合理的な設計・計算法があるのですが冗長になるので省きました。たぶん必要とする人は稀でしょう。

 完璧主義者には向きませんが実用主義者には十分な発振器が実現できます。 455kHzのSSBフィルタ用だけでなく、他の周波数のSSBフィルタが対象であっても同様に可能なので応用してみるのも面白いと思います。 国際電気のアマチュア用SSBメカフィルのように中心周波数が個々に少しずつずれているようなケースでもちょっと工夫すれば実現可能です。
 Blogに僅かでも計算の話が登場するとそこで思考ストップしてしまうみたいですが何だか淋しいですね。たまには頭の体操と思って試しては如何。(笑) ではまた。de JA9TTT/1

(終わり)nm+4

2018年12月26日水曜日

【祝】 over a million of visitors

1,000,000ビジターありがとうございます。
先ほど百万を突破しました。
これで何となく肩の荷がおりた気分です。
計数のあやしいカウンタですが1,000,000は区切りと思っています。

長いあいだ熱心にご覧いただきありがとうございます。
ブログはBloggerが続くかぎり維持されます。
あとはぼちぼち行きましょう。

2018.12.26 14:49JST
de JA9TTT/1

2018年12月23日日曜日

【部品】From my parts box , 2019

2019年の部品箱から
  師走ですから重たい製作モノはやめにして軽〜く部品の話で行きましょう。(笑)
2019年はもう目前です。 新年に向けて部品箱からパーツの幾つかを紹介したいと思います。 『新年に向けて』とは言っても新しく登場したという意味ではありません。 最近になって我部品箱のメンバーに加わった部品たちです。 既に使い始めたパーツもありますが、ほとんどは新しい年にじっくり向き合うつもりです。

 どれもポピューラーな部品ではありませんが、もしご存知なら「なーんだ、アレか」って思うでしょう。しかし意外に知られていないと思うのですが? それぞれ特徴的ですが、どれも用途は限定的ですからお薦めするようなものではありません。 パーツボックスの『肥やし』になる可能性も高いのです。 将来、高い値段で売れる可能性もないでしょう。 世間には『こんなパーツもあるんだ!』と思いながら暇つぶしにでもどうぞ。  もちろん、年末の行事がぜんぶ済んで落ち着いてからにして下さいね。 慌ただしい年の瀬にこんなBlogなんか眺めて『ひまそー』にしてると奥さんに叱られますよ。(爆)

                  ☆  ☆  ☆  

その1:2SK4150・高耐圧小型MOS-FET
 電流は必要ないけれど、高い電圧をON/OFFしたいことがあります。 従来は高耐圧なバイポーラ・トランジスタ・・・要するにNPNやPNPの高耐圧トランジスタを使ってきました。 以前からMOS-FETにも高耐圧品はあったのですが、どちらかというとパワーものがほとんどでした。 大電流や大き目の許容損失が必要ならPower MOS-FETも仕方ありませんが、どうしても形状は大きめです。 たいした電流は流さなくて耐圧だけが欲しい時にマッチする小型のデバイスは意外に少なかったように思います。

 2SK4150は既にNIXIE管クロックのBlogと前回の真空管式QRP送信機のBlogで紹介済みでした。 活用の方向も見えていますが2019年も注目しているデバイスです。  それにしても2SKも4000番台になっていたとはネ。hi hi

2SK4150:耐圧が高いのが特徴
 規格ではドレイン・ソース間耐電圧は250Vです。 多少のマージンはあると思いますが、バイポーラ・トランジスタに比べるとMOS-FETの規格値とのマージンは少なめのように感じます。 あまり無理はさせない程度に使いたいものです。
 パッケージが小さいので熱抵抗も大きく、0.75Wの許容損失はあってもあまり電流は流せません。 ドレイン・ソース間電圧が大きい時は控え目の電流で使いたいものです。 ON/OFFスイッチング用なら比較的安全ですが、増幅用に使おうとすればドレイン損失が大きくなるので規格オーバーには常に気を配りたいものです。

 増幅の用途ですが真空管と共存できそうです。 150V程度の電源でドレインに数mA流して使うとかなり大きめの信号が取り出せるでしょう。 帰還容量も小さめなので意外に周波数特性も伸びてくれるのではないでしょうか。 ハイブリッド形式の面白い回路が作れそうです。 本来の用途はスイッチング電源の一次側回路用ではないでしょうか。

参考)2SK4150は秋月電子通商にて10個250円で販売されています。(ここ←リンク)


その2:LND150・ディプレッション型FET
 引き続きFETが登場します。 LND150はSupertexと言うメーカーが開発した高耐圧の小信号用D-MOS FETです。 同社は現在マイクロチップ社の一部門になっているようです。

 ドレイン・ソース間の耐電圧が500Vと非常に高いことが特徴の一つですが、それに加えてディプレッション・モード特性であることに大きな意味があると思っています。多くのMOS-FETはスイッチング用なのでエンハンスメント・モード特性です。LND150のような特性はMOS-FETとしては珍しいのです。(もちろん2SK241や2SK544も忘れてはいけませんが・笑)

 これと言った用途はまだ考えていませんが、アンプに使ってIdssまでの範囲で動作させればバイアス回路は簡単になります。 規格によればIdssは1〜3mAと小さめですが面白い使い方ができそうです。 規格表にはノイズについての記述は見られないのでオーディオのプリアンプのようにローノイズが必要な用途には向かないのかもしれません。 それでも初段は無理でもそれ以降の部分なら使えるでしょう。  面白い回路が作れそうです。 なお、D-MOSはいわゆる『五極管特性』なので12AX7などの『三極管』と音色は異なるかもしれません。 また、FETの伝達特性は二乗特性ですから2次歪は大きめになります。 帰還容量もやや大きめなのでRF増幅には工夫が必要そうです。(2SK241のように内部でカスコード構造にはなっていない)

 メーカーが想定する典型的な用途はインスツルメンテーション・アンプなどの入力保護のようです。 装置外に引き出された配線に不用意な高電圧が加わった時に働く保護素子として使います。

参考)LND150は秋月電子通商にて単価40円、5個200円です。(ここ←リンク)

LND150の規格・概要
 ディプレッション・モードで高耐圧であることが特徴として挙げられます。 その特徴が有効な用途のために作られたのでしょう。

 ディプレッション・モードのFETはゲートをソースに結んで使うと「定電流ダイオード」として動作します。 ドレイン・ソース間の電圧が変化しても、流れる電流はほぼ一定に保たれます。
 差動アンプの定電流源に使うほか、様々な用途が考えられるでしょう。 耐電圧が500Vもあるので真空管回路での応用にも向いていそうです。 Idss=1〜3mAなので、それで足りない時には何本かパラにして使えば良いでしょう。

LND150は保護素子に
 半導体回路は不用意に高電圧が加わると破損しやすいものです。 機器内部の配線は製作する時に注意すれば良いのですが、外に引き出された端子の先では何が起こるかわからないので常に危険です。
 インピーダンスが低ければ静電気など比較的安心かもしれませんが、インスツルメンテーション・アンプのようにハイ・インピーダンスな回路は危険がいっぱいです。 保護抵抗を入れたり、サージ・アブソーバーを入れるなど対策しますが、それだけでは守り切れないことも多いものです。

 LND150は定電流特性を示すことから、図のように保護素子として使い、その定電流値まで許容できるようにアンプ側を設計しておくとかなり安全になります。 耐圧も500VあるのでAC電源などが共存するような環境で間違って配線が触れてしまっても破壊を免れるでしょう。 HAM的な用途は余りなさそうですが、他で代替の効かないなかなか興味深いデバイスなのです。


その3:HCPL-4562・高速リニアフォトカプラ
 HCPL-4562はかなり前から存在していたデバイスです。高価で入手しにくかったためか、あまり目にすることはありませんでした。 本来の用途は広帯域なビデオアンプなどのアイソレーションでしょう。

 一般的なフォトカプラの周波数特性はあまり良いものではありません。 せいぜい1MHzあたりの信号しか扱えないのです。 それに対してHCPL-4562は一桁以上高い約20MHzまでの信号が扱えます。 高速応答する発光ダイオードに高速なフォト・ダイオードとRF用のトランジスタを組み合わせてあるのでしょう。

 写真のものはAliexpressのお店で購入(10個)したものです。 比較的安価でしたが、半分は全く使えませんでした。どうやら表面の印刷と違って中身は異品のようです。 さらに残り5個のうち1個は特性が劣化している不良品です。
 結局、それらしく使えたのは4個だけでした。 怪しい中華なお店で買うよりも、少し高くても間違いのない部品商社から購入すべきだったと思ってます。(RSコンポ、Digi-Key、Mouserなど:少量の購入でも単価250〜350円くらいです)

HCPL-4562の取柄は高速性
 HCPL-4562の仕様の一部です。 もともとhp社の半導体部門で開発されたようです。 しかし同社の半導体部門は身売りされてしまいました。 Avagoと言う会社を経て現在はBroadcom社で生産されている模様です。

 製造メーカーは移っても継続して生産されているのはそれなりの用途が存在するからでしょう。 使用量は少ないのかもしれませんが根強いニーズがあるのでしょう。 HF帯まで信号を通せるフォトカプラなんてそうそうありませんから・・・。  従ってしばらくは安泰ではないでしょうか?

HCPL-4562を使った再生受信機
 図は1998年6月号のQST誌の記事からです。 HCPL-4562を再生式受信機に使っています。

 何もこのフォトカプラを使わなくても再生受信機くらい製作できます。 では何が特徴なのかと言うと、不要輻射を防げるところにあります。 再生式受信機でCWやSSBを受信している時には検波回路は発振状態になっています。
 アンテナからその発振勢力が飛び出さぬように必ず高周波増幅を設けて輻射防止すべきでしょう。 しかしいきなり検波している再生受信機もかなり多いものです。
 図のように光を介した結合でアンテナからの信号を検波回路に導けば発振成分の逆流は考えられないため不要輻射が防げるのです。 なかなか旨い使い方だと思いました。(実際にはストレー容量による結合がわずかに存在する) 他にこの受信機の発展形に『OCR II』というスーパー形式のものがあります。(QST誌・2000年9月号)

# もう少し工夫した使い方もできそうに思うので私なりに考えてみたいと思っています。
 
発振回路でテスト
 良品のように見えても、中身が本当にHCPL-4562なのか不安になったので発振回路を作ってみました。

 8MHzの水晶発振子を使ったコルピッツ型と等価の発振回路です。 ベース側にはバイアス回路を設けず、1次側のLEDに流す電流でトランジスタの動作点を変えています。
  LEDの電流がゼロならトランジスタには電流は流れず、当然発振も起こりません。徐々に LEDの電流を増やしてやるとコレクタ電流が増えてgmが上昇し発振がスタートします。 発振回路としてはオーソドックスなので図面は省きますがこんな実験で真贋を確かめました。 10MHz以上でも発振できたので、どうやら本物のようです。(笑)

 中華通販で購入した部品は今ひとつ信頼がおけないので、届いたらすぐに確認していますが煩わしいですね。hi hi


その4:BDシリーズ集合抵抗器
 アイエイエム電子(株)というメーカーの集合抵抗器です。 これは中華通販ではなく秋葉原の千石電商で購入しました。

 OP-Amp回路では集合抵抗器をうまく活用すると良い性能が得やすいと感じています。 精密な基準電圧の発生回路(←リンク)の試作でもその効果が認められました。

 写真の集合抵抗器は16ピンのパッケージに同じ値の抵抗器が8個集積されたものです。 その8個はすべて端子が独立しており使いやすくなっています。 お店に掲示してあった簡略なスペックによると抵抗値の精度は±2%(G)です。 単独の温度計数は±100ppm/℃となっていました。 これは一般的な金属皮膜抵抗器と同程度です。 色々な抵抗値が売られていましたが、1kΩと10kΩの2種類を買ってきました。

参考)BDシリーズ集合抵抗は千石電商で単価158円でした。(ここ←リンク)

相対精度はかなり優れる
 単に集合抵抗と言うだけなら幾らでも売っています。 また、たっぷりお金を出せば性能が保証されたものが買えます。

 この抵抗器は一つ150円と安価なので『まあ、プルアップ抵抗にでも使えれば・・・』と思って購入しました。 しかし実測してみると左図のようになかなか優秀でした。 抵抗値の相対誤差は0.1%もありません。 従ってこれをうまく使うと整数倍のゲインを持ったアンプが容易に製作できるのです。(OP-Ampを使います)
 相対的な温度特性までは確かめていませんが、たぶん100ppm/℃より悪くなることはないでしょう。 従ってゲインの温度安定性も単純に金属皮膜抵抗器を組み合わせて作ったアンプよりも優れているはずです。

 温度トラッキングを考えると、同一パッケージに入っている抵抗器を使うに限ります。使える抵抗器は8本ですから可能な回路は限られます。 それでも、例えば整数倍のアンプとして、±1倍、2倍、3倍・・・・・9倍、10倍のほかにも色々なゲインのアンプが作れそうです。 整数倍のアンプでゲインの安定度に優れたものを作るのは意外に難しいのでこうした集合抵抗器がうまく使えるなら有難いのです。 あとは温度特性のマッチングが気にはなるのですが・・・。

参考・1)集合抵抗器の活用として、同じ値の抵抗器の組み合わせで「精密でゲインの安定なアンプ」を作る方法について「続OPアンプ回路の設計」岡村迪夫・著(CQ出版社)に詳しく書かれています。本書は絶版なので図書館で閲覧してください。(該当ページ:pp130〜141参照)

参考・2)精度が5%という1kΩの集合抵抗がパーツボックスに見つかったので合わせて測定してみました。 比べてみてIAM電子の集合抵抗はなかなか優秀でした。誤差2%と言うこともあるでしょう。 精度向上のため抵抗値の測定はすべて四端子法で行ないました。

注意)表の数字は単品を実測した結果であってメーカーが保証しているものではありません。  お買い求めのものがこれと違ってもクレームなどされませんようお願いします。


その5:S042P・DBM-IC
 中華通販を使うとDBM-ICのSA612も比較的安価に手に入るようです。 しかし十分な手持ちがあったのでSA612に興味はありませんでした。 安いからと言ってむやみに買い溜めても使い切れませんからね。 それで他に入手しやすい適当なDBM-ICは無いだろうかと思って探したらS042Pが見つかりました。

 S042Pについては、その同等品について調べたBlogがあるので詳しくはそちら(←リンク)を参照してください。

 以前のBlogで扱ったのはソ連製の『K174ΠC1』と言う型番のものです。 写真のものはオリジナルメーカーのSiemens社製です。(たぶん・笑)

参考)中華通販で購入したのですが、印刷が不鮮明だったり足ピンの切断寸法の誤差が大きいと言った半ば不良品(外観不良)が届きました。 電気的な特性は正常だったのですが、購入はお薦めできない結果です。 もっとダメな品物が届く可能性だってあります。

典型的な応用回路?
 S042Pは基本的にギルバート・セル型のDBM-ICですから使い方も他と同様です。 バイアス抵抗が内蔵されているので外付け部品は少なくて済みます。 SN76514NやSN16913Pなどと類似の使い方をすれば良いでしょう。

 S042Pの特徴は自励式のコンバータ回路が構成できる点にあります。 SA612などでも同じことができるのですが、DBM回路のほかに発振回路が内蔵されているので可能なのです。
 しかしS042Pに特別な発振回路は内蔵されていません。 中身はDBM回路だけなのですが回路的な工夫がされています。 DBM回路の一部を発振回路として使うのです。 そのような工夫で自励コンバータが作れますが、左図のように局発コイルの構造はだいぶ複雑になってしまいます。 一度設計してしまえば良いのかも知れませんがあまりメリットはなさそうですね。(笑)

S042Pを試用中
 印刷不鮮明な不良品のようなS042Pが届いたので、中身に問題はないか確かめておきました。 バランスド・モジュレータ回路(バラモジ)として使ってみます。 回路のバランスが崩れているような不良品なら簡単にわかるでしょう。 正常ならDSB波が得られるはずです。

 写真のように綺麗なDSB波が得られています。消費電流や端子電圧などを確認しましたが、問題はなさそうでした。 外観や足ピンの状態に幾分問題はありますが取りあえず使う上では支障はないでしょう。悪くないDBM-ICだと思いますが、他にもDBM-ICはありますからそれほど積極的に使う理由が見当たらないのも事実です。珍しいものがお好きなお方向きでしょう。(笑)

                   ☆

 このS042Pや上述のHCPL-4562ほか一時期は色々な電子部品を矢継ぎ早に中華通販で発注しました。 稀に非常にお買い得な逸品に出会うこともありますが、まったくのニセモノが届くなど信頼感には乏しいと思います。 通常のルートでは手に入らないなら試してみるのも一つの方法かも知れませんが、できたら信頼のおけるお店から買うほうが良いと思っています。 なので、その後は暫く中華通販は控えているところなのです。(笑)



 どれか気にとまったデバイスはあったでしょうか? 電子部品ばかり幾ら集めても何かが出来上がるものではないのですが、ソレがなければ始まらないことも多いものです。 面白そうなアイディアを思いついたら、まずは必要な部材・部品の手配を考えます。 もちろん情報の収集も重要でしょう。

 手持ちがあるか、もし無くても代替手段になり得ないのか購入の前に検討します。 その上でダメそうなら発注になるのですが中華通販はやはり有難い存在です。 価格が安いのは勿論ですが、送料無料や非常に安価なので思いつきの小刻みな発注でも不経済にならないからです。 国内の通販も定形外郵便の積極的な活用で送料をなるべく抑えるようにしてもらえたら有難いのですが・・・。

 中華通販は届くまで数日から1ヶ月以上と様々ですが、平均して10数日くらいでしょうか? たいてい他の部品を集めているうちに届くので納期もあまり気になりません。 あとは品質がもうちょっとマトモになって安心して使えるなら嬉しいです。 現状では届いたらただちに確認しておく必要があります。できたらそんな確認をせずに使いたいものです。

 2018年も残りわずかです。 新しい年も何か面白い実験に取り組みたいと思っています。 回路を考えブレッドボードの部品配置を工夫しながら指先を動かすのは「認知症予防」にもピッタリではないかと思う今日この頃です。(爆) 良いお年をお迎えください。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2018年12月7日金曜日

【HAM】 Two Tube Transmitter on a Breadboard

HAM:ブレッドボードに作った2球送信機

ブレッドボードからオンエア
 ブレッドボードに作った受信機でHAMバンドを聞いてみるというのは何回かやっています。 実用品とは言いませんがもう少し工夫すれば交信に使うこともできそうです。

 しかし、部分的な回路ならともかく、送信機全体をブレッドボード上に作ったことはありませんでした。 たぶん、QRP(小電力)な送信機ならブレッドボード上にすべて作れるでしょう。半導体を使って数Wの送信機なら十分な可能性があります。

 色々な工作をしていて、いつかブレッドボードから波を出してQSO(無線交信)してみたいと思うようになりました。 半導体も候補ですが、しばらく前に紹介したブレッドボード用の真空管ソケット(←リンク)を使って「真空管の送信機」を作ってみましょう。 微弱電波のワイヤレスマイクではなくて、ごく普通にHAMの交信ができるような「ちゃんとした送信機」を目指します。 目標はズバリ「10局と交信すること」にします。 できたらスケジュールQSOではなくて任意の相手局との交信が目標です。

余談:いきなり余談ですが、大昔のHAMの自作送信機に木板の上に組み立てる『まな板セット』と言うのがありましたね。 米国流に言えば『ブレッドボード・セット』なのでしょう。 そちらがたぶん元祖の『ブレッドボード送信機』ですね。 ですから今風のBB送信機もアリでしょう。(笑)

                   ☆

 写真はそうして製作した7MHzのCW送信機です。(CW:無線電信のこと) 水晶発振に電力増幅を付加した2ステージのCOPA形式という本格派(?)です。 キーイングは「カソードキーイング式」にしました。
(COPA=Crystal Oscillator and Power Amplifier.OMさんはコッパ型と呼んでいたとか)

 また、今どきですから縦振れの電鍵専用ではなく、Keyer(エレキー)が使えるようにします。 MOS-FETを使ったキーイング回路を設けました。 これで快適な交信ができます。キーヤーが使えるとごく普通にQSOを楽しめますね。

 気になる出力パワーですが、Po=1.2Wくらいです。 これは電源の都合でプレート電圧が200V弱に抑えられたからです。 250V以上の電圧を掛けてやれば3Wくらい出るでしょう。 しかし、実際にオンエアしてみると1W少々でもずいぶん飛んでくれました。 経験から3Wになっても劇的な変化はないと思うのでそのまま1W少々で行くことにしました。
(注:電源は前のBlogで紹介したDC-DCコンバータではありません)

 小電力とは言えワイヤレスマイクの範囲を外れています。 無免許でのオンエアはできません。 必要に応じて無線設備の変更も提出します。当局は「第5送信機」として製作しました。 4級局は「無線電信」にオンエアできないので、これを機会に3級アマ無線技師に挑戦されてはいかがでしょうか。 こんなシンプルな送信機でも国内局を相手にかなりQSOできます。じっくり取り組めばDXができるかも知れません。 「無線電信」はQRPに有利です。

 真空管のことになるとやたらとウルサイお方がおられます。hi hi いろいろな薀蓄(うんちく)も結構ですが、まずは手を動かしてみませんか? QRPなプロジェクトならシャシ加工などせずブレッドボード上で実現できます。 実際に作った回路を前にしてこそわかる面白さがあります。 手作りの真空管送信機でQSOできたならHAMライフに新たな1ページが加わるでしょう。

 もちろんQRPや真空管にご興味がなければ早々にお帰りが宜しいです。  何を試して結果はどうなったのかと言う自分用の製作メモのようなものです。この先はお勧めしません。どうぞ貴重な時間を無駄にされませんように。

7MHz2球QRP送信機:回路図
 むかし手に入れておいたレア物の真空管と貴重な真空管用のパーツをたくさん投入して入念に作りました。

・・・と言うのではBlogで公開する意味はあまりないように思うのです。 貴重な部品を持っていなければ真似ることさえできません。 自慢話がしたい訳ではなくて、できたら同じように製作と交信を楽しんでいただきたいのです。手作り送信機で2-way交信ができたならとても素晴らしいです。 なるべくありふれたものを使い可能であれば代替手段も考えておきたいものです。 入手容易な部品を使って、できるだけ財布の負担にならないよう頑張ります。(笑)

 まず、真空管ですが、オーディオの趣味と競合しないような球を使います。 彼らは「見てくれ」や「銘柄」にも拘りますが、HAMは「実利」の方に目を向ければ安く上がるわけです。 具体的には水晶発振が3AU6で、終段電力増幅は4M-P12です。 いずれもトランスレス式TV用に作られた真空管です。もちろんTV以外の用途に使っても何の支障もありません。 しかしヒータ電圧が中途半端な真空管は人気がありませんね。 どちらもオーディオ界では猫またぎな球ですから、あれば廉価で手に入ります。 言うまでもありませんが、6.3Vヒータの同等管でもOKです。 3AU6の代わりに6AU6や6BA6を使えば良く、4M-P12の方は6AR5や6AQ5ならそのまま同じ回路でOKです。 ヒータ回路の配線を少しだけ変更してやれば簡単に代替できます。

 まだまだ選択肢はたくさんあって決めるのに困るほどでした。この程度の送信機なら使えそうな素材(真空管)はいくらでもあります。 なお、トランス付き用の球ならあるが、レス用の球は持っていないので同じものを手に入れよう・・・と言うのでは本末転倒です。 お手持ちのトランス付き用の球を使ってやってください。使われるのを待ってますよ。(笑)

 9ピンのmt管にも候補はあるのですが、作りやすさの点から7ピンのmt管を選びました。 これはブレッドボードに作る都合です。 9ピンのソケットと変換基板はそれだけでブレッドボードをかなり占有して作りにくそうでした。 もちろんレイアウトなど旨く工夫すれば9ピンの球も使えると思います。 (参考:現在はピンを片側に引き出すタイプの9pin用変換基板も売られています。それを使うと作りやすくなります)

 水晶発振子は7003kHzのHC-49/U型です。 7003kHzはJAのQRPerがよくオンエアしている周波数です。 この水晶発振子はJL1KRA中島さんに頒布して頂いたものです。 残念ながら、7003kHzの頒布は終了したようです。
 7003kHzは例えば、エヌエスアイアロー電子三田電波などの水晶屋さんに特注する必要があります。 形状の選択が可能なら、HC-6/U型が良く、次善としてはHC-49/Uにします。なるべくなら小型のHC-49/USは避けるべきです。
 海外への特注ではHy-Q International(豪)、QuartSLab(米)、Andy Fleischer(独)などがあります。JAから注文の可否は各自で確認を。
  既製品では「ラジオ少年」に7005kHzほかCWバンド用があります。 7003kHzに拘らなければ良さそうです。 ほかにはAliexpressで検索すると7000kHzが安価に入手できるので試してください。 7000kHzならみなさんお馴染みの「サトー電気」でも売っています。

 7003kHzの水晶がベストですが、もし手に入らなければ7000kHzの水晶発振子で試せます。 トリマ・コンデンサ:C5の調整で7003kHz付近まで調整できると思います。(個体差あり・オフバンド要注意)

 そのほか、送信機らしい部品もありますがキーパーツは後ほど写真入りで扱います。 いずれにしても入手できないような部品は使っていません。 真空管用の部品を持っていなくても球でオンエアするプロジェクトに仲間入りできます。(もし球の入手で行き詰まったなら連絡してください)

参考:プレート電圧250V以上で動作させるときの変更点
(1)発振部(V1):スクリーングリッドのR3:12kΩを33kΩ/3Wに変更。 電源回路のドロッパ抵抗のR13:1kΩを10kΩ/5Wに変更する。
(2)終段電力増幅部:スクリーン・グリッドのR6:10kΩ/3Wに変更する。
(3)コンデンサを電源電圧に見合ったものに交換する。
以上の変更で真空管を安全に使いながらパワーアップ(3〜5Wくらいか?)できます。

# ワット(W)数の大きな抵抗器は『酸化金属皮膜型』を使うと小型化され、配置・配線が容易です。ブレッドボード向きです。 ただし小型な分だけ高温化するので注意します。

真空管選びも楽し!
 未使用・新品の真空管でも良いのですが、ジャンク箱に無造作に投げ込んであったトランスレス式TV用の球を使うことにします。半ば打ち捨てられていたような中古品ばかりです。
 トランスレス式のTVはヒーター回路を直列に接続してちょうど100Vで点灯できるように考えられていました。 そのためヒータ電圧はトランス付き回路用とは異なっています。

 トランス付き回路用の真空管はヒータ電圧が統一してあって6.3Vや12.6Vが標準的です。 トランスレス用ではヒータ電圧ではなく、ヒータ電流を合わせるためにヒータの電圧は3.15Vだったり4.7Vだったり様々です。 そのため、使いにくいことから管球オーディオの世界では敬遠されてしまい人気がありません。 商品価値もないのであまり出回っていないかも知れませんが、もしあれば持て余し気味でしょう。 しかしヒータ電圧/電流以外の性能は同じなので使わないのは勿体ないです。 ご近所の球好きOMさんからお安く譲って貰えるかも。たっぷり薀蓄を聞くはめになるかもしれませんが。(爆)

 発振管に3AU6を使ったのは訳があります。 TV用でよく見かける3CB6の方が水晶発振回路には向いているのですがシールド付きソケットを使うべきです。 ブレッドボード用のソケットでシールドを施すのは少し厄介なので「管内シールド」が付いている球を選びました。 同じように管内ソールド付きの3BA6や3BD6も候補なのですが、3AU6がいちばんたくさん見つかりました。 ほかに3DT6も数本あったのですが元々gmが小さいためイマイチでした。(3DT6も5極管ですがFMの検波管なのでそもそも適当でない)

 シールド筒を付けて使いたいところですが、あとで交換してみたら(6)3CB6や(6)3BZ6でも取り敢えず(シールドなしでも)使えそうでした。 発振管を交換して遊ぶには2番ピンを直接GNDせず、7番ピンと結んでおきます。 サプレッサ・グリッドをカソードに結んでおきます。 そのようにすれば上記に挙げたどの球も差し替えて試せます。

 終段管は4M-P12あるいは5AQ5を使います。 発振管に使った3AU6のヒータ電流は600mAです。 同じく600mAヒータのパワー管を使って電流値を合わせてやればヒーターを直列にして点灯できます。 4M-P12と5AQ5のいずれもヒータ電圧は4.7Vで600mAが規格です。 3AU6は3.15Vで600mAなので直列にして合計で7.85Vを与えます。(電圧は±10%くらいなら支障ありません) わずか2球の送信機です。 電圧可変型の(直流の)安定化電源で点灯すれば変則的なヒータ電圧も問題になりません。

 4M-P12という球はことに人気がありません。 N社の真空管ハンドブックには歪みが多いのでハイファイ(Hi-Fi)には向かないと書いてあるそうです。 無線電信(CW)の終段電力増幅はそもそもC級増幅なので歪みなんか気にしません。 単一のキャリヤ信号の増幅ですからSSB波の増幅のようにIMDを意識する必要はありません。 あとは高調波対策をしっかり行なえば心配無用です。

 いずれもお払い箱になったTV出身の「抜き球」ですから、一応チェックしてから使います。 何だか真空管選びだけで半日くらい遊べました。(笑)

足ピン曲がりを直す
 「抜き球」は足ピンが曲がっていることが多いものです。 ひどく曲がったピンはある程度なおしてから、真空管試験機に付属の「ピンストレートナー:ピン矯正器」で曲がりを取ってやります。 そうしないと真空管ソケットを痛めてしまいます。

 写真は4M-P12を挿入して矯正する様子です。 矯正してやるとソケットにスムーズに刺すことがきます。 真っすぐそうに見えても意外に曲がっているので、直してから刺すとすんなり行きます。

TV-7/Uでチェック!
 3AU6はヒータ電圧のみ3Vの位置にして、あとは6AU6と同じ条件でテストできます。

 しかし、4M-P12はJIS名称が付いた純粋に国産の球ですから米国製の真空管試験機に付属のテストデータ一覧表には載っていません。
  そこで、4M-P12の規格を比較すると6AR5と類似であることがわかります。 足ピンの接続も同じです。 もともと6AR5の廉価版といった位置付けなのでしょう。 バイアス電圧も同じ条件なので、あとはヒータ電圧のみ5Vの位置にして6AR5の設定でテストすれば合否判定できます。(JIS名称の球とTV-7/Uに関してはAJR林さんのサイトに詳しいです)

 そのようにして3AU6を4本、4MP-12を4本、5AQ5を3本ほど測定したのですが、ややgmが落ちた3AU6が1本見つかっただけで他はいずれも十分な性能が残っていました。実際にはgm落ちの3AU6も使えました。 たぶんその辺に落ちていたような中古の球も十分使えます。 結果的に真空管試験機なんか持ち出す必要はまったくなかったようです。 ゲッター(頭部の黒光りした部分:真空を維持するためのもの)が空気漏れで白くなっていなければ使えるでしょう。

こんな感じにできました
 製作途中の写真は撮り忘れました。 一気に完成状態です。 実際の製作行程では、まずは水晶発振回路から製作し単独でテストしました。 その後、終段回路を組み立てたのですが出力部分のタンク回路(LC共振回路)のところは2種類試しています。

 単純な並列共振回路のコイルに結合リンクを巻いた形式(写真のもの)と本格的な送信機で多く見かけるπマッチ回路の2種類です。 いずれも負荷Q=12の設計で、比較してみると違いはなさそうでした。 そのため、部品数が少なくて済む写真のような「並列共振+リンクコイル」のタンク回路形式にまとめました。

 トロイダルコアは一次側と二次側リンク巻線の結合がかなり密なので、概ね巻き数比(の二乗)でインピーダンス変換されると考えて良いようです。 昔のような空芯コイルにリンクでは結合が疎なので単純な巻き数比ではインピーダンス変換されません。 そのため最適なポイントを求めるためにリンクの巻き数だけでなく、位置を変えて結合状態を変えてみるなどの調整を要しました。 その点、トロイダルコアを使うと有利です。

 ブレッドボードに作るのは大変そうに見える真空管回路ですが意外に簡単です。 こうした送信機の部品数はわずかです。 真空管回路はインピーダンスが高いので幾らか注意は必要です。 必要以上に配線を引き回さず、最短距離でバイパスコンデンサを付けるなどすれば自己発振など起こさず安定に動作します。

 なお、このブレッドボードの底板(=黒い金属板)は回路のGND側と接続してあります。 底板を浮かせたままだと発振など不安定な現象に悩まされるでしょう。 高周波回路で使うためには必ずGNDしておきます。 底板のないブレッドボードは高周波回路には向かないので、適当な金属板を付けると良いです。

 本格的(?)な真空管回路なので200V以上の電圧を扱います。 ブレッドボードにその程度の耐圧はありますので心配はいりません。 しかしうっかり触たらシビれる電圧なので感電には注意を。 発熱が多くなりそうな抵抗器は予めリード線を長めにしておきブレッドボードの表面より5〜10mmくらい浮かせます。 使用するコンデンサは耐圧に注意します。 ヒーター回路のバイパス用は50V耐圧で十分ですが、プレート回路やスクリーン・グリッド回路のバイパスコンデンサは耐圧が必要です。 ここでは0.0047μFで500V耐圧の円盤型セラミックコンデンサを多用しました。これは0.01μFでも良いです。 B+の電圧は200Vですから250V耐圧のコンデンサでも良いでしょう。 結合回路や同調回路など高周波電圧が掛かる部分にはディップド・マイカ(シルバード・マイカ)コンデンサを使用しています。

以下、各部分を詳しく見て行きます。

水晶発振段
 5極管の3AU6を使ったピアースPG型水晶発振回路です。 この発振回路では、水晶発振子に大きめの並列容量を入れてやらないと高めの周波数で発振するようです。 並列容量なしだと7003kHzの水晶で7010kHzあたりで発振しました。 並列に15〜20pF入れてちょうど7003kHzになりました。

 使った水晶発振子に固有の現象かと思ったのですが、他の周波数の水晶片でも高めに発振します。 そのため、並列容量を加減すれば7000kHzの水晶発振子を使って7003kHzを得ることができます。 7003kHzは特注しなくてはなりませんが、7000kHzの水晶発振子なら規格品が手に入ります。 しかし気分的には7003kHzの水晶を使いたいですね。hi  回路的に G-K間の容量不足かと思ったので試したのですが、そう言う訳でもないようです。水晶発振子と並列に容量を入れるのが効果的でした。

 無調整型の発振回路なので1.9〜14MHzあたりまで支障なく発振します。(基本波の水晶発振子を使う) 従って、終段電力増幅回路の同調回路(タンク回路)をバンドごとに用意してやれば、マルチバンドの送信機にできます。

# シンプルな送信機には水晶発振式がピッタリです。 しかし水晶の入手性は悪くなってきました。 また周波数が固定されては不便なので本格的にオンエアするならVFOが欲しくなります。 半導体とのハイブリッドになりますが、PLLやDDSで作るとFBです。 このあたりはまた機会でもあればやりましょう。
【コラム】7003kHzという周波数:(QRP Wikiも参照を)
一般的に言えば7003kHzはDX用の周波数です。バンドがオープンしていないときならQRPで国内QSOも悪くないと思いますが、開けてきたら遠慮しておく方が良いでしょう。 DXerは微弱な波に耳を集中していてQRPでも邪魔になります。 なお、米国では7040kHzがQRPの周波数のようですが、JAでは使われていません。 Novice局用に7110kHzと言うのもあるそうです。
終段電力増幅とタンク回路
 5極管の4M-P12を使った電力増幅部です。 真空管を使った終段電力増幅回路では決まってエアーバリコンが使われています。 もちろん、それが理想なのですが大きくてブレッドボードには馴染まないことと、今となっては入手性も良くありません。

 そのため、カップリング・コンデンサで直流分をカットした上で、並列共振回路と結合する回路形式にしてマイカ・トリマコンデンサで間に合わせています。

 マイカ・トリマコンデンサの耐電圧は実力的に250V以上あって、QRP送信機ならまず心配なしに使えます。 構造上、接触不良が起こらず電流容量も十分ありQも高いので送信機に向いています。 エアーバリコンと違い今でも比較的安価に入手できます。 マイカ・トリマを使ったのでコンパクトなタンク回路が作れました。 写真のマイカ・トリマの最大容量は70pFです。 少し容量が足りなかったので47pFのマイカ・コンデンサを並列に抱かせています。 もし最大容量が100pFのマイカ・トリマがあれば並列容量は要りません。  もっと容量の大きなトリマしか無ければコンデンサを直列にして調整し易いように加減すればよいです。

 プレート負荷インピーダンスは約4kΩで、負荷QはQL=12で設計しています。 それなりに高調波は減衰しますが、オンエアにあたっては7MHz用LPFをアンテナとの間に入れます。スプリアス輻射の規制は厳しくなっているので必ずLPFを付けて使います。

送受切替はリレーで
送受信の切り替えはリレー式です。 2回路のトランスファー接点型(C接点型)を使います。 1回路でアンテナ回路の切り替えを行ない、もう1回路で受信機のスタンバイ・コントロールを行ないます。

 小型のリレーなら大抵のものが使えます。 ヒーター電源を使っているので、駆動巻線の電圧が8〜9Vくらいの物が適します。 5Vのリレーが多く出回っているようなので約3V分を直列抵抗で落として使うと良いです。 ここでは12V用が取りあえず使えたのですが、明らかに電圧不足です。(笑)

半導体を使ったキーイング回路
 これはCW送信機なのでとりあえず関係ありませんが、AMの送信機では変調をどうするかと言うのが問題になります。 変調器の製作もなかなか大変だからです。 その点、電信の送信機は楽ですが今度はキーイングをどうするのかと言う課題があります。

 QRPな送信機ですから大げさな方法は考えたくありません。 理想的にはブロッキング・バイアス・キーイングですが別にマイナス電圧の電源が必要です。 予めマイナス電圧が得られる電源があれば好都合なのですが、無ければわざわざ作るのも面倒です。 従っていちばん簡単なのは終段管のカソードキーイングになります。

 カソードキーングは終段管のカソードを電鍵で断続するだけなのでシンプルです。 しかしキーをアップしている状態ではGND間に高い電圧が発生しています。 そのため一般的なキーヤー(エレキー)では耐圧オーバーの可能性があります。 そこで耐圧の高いPower MOS-FETを介してキーイングするようにしました。 最初の写真では大きなMOS-FETが写っています。 間に合わせに使ったまででかなりオーバースペックでした。 QRPな送信機ですからドレイン・ソース間耐圧さえあればこの写真のように小さなMOS-FETが使えます。小型ですが耐圧のある2SK4150に置き換えました。

 前段のMOS-FET(Q1)には2SK422を使いましたが、手持ち都合なので入手が容易な2N7000に置き換えられます。 ただし2SK422と足の並びは異なるので規格表で確認して使ってください。 面倒なら2つとも2SK4150に統一しても良いでしょう。 なお、同じMOS-FETでも2SK241及びその同等品は代替に使えません。

 写真に見える黒い円盤状のZNRという部品は「サージ・アブソーバ」です。 FETの保護素子として入れてあります。 ブレークダウン電圧が200〜300Vの物を使ってください。 なくても動作しますが、入れておくと安心です。 普通に手に入る部品です。

 カソード・キーイングではあっても電子的なON/OFFですからスパークの発生はないため接点が原因のキークリックは生じません。 しかも一般的なキーヤー(エレキー)が使えるのでQSOも快適です。 バグキーや縦振れ電鍵でもOKです。

 このカソード・キーイング回路は大きめのMOS-FETを使ってやればパワフルな送信機にも使えます。 807や6146がファイナルの送信機にも適当です。 懐かしいTX-88A型送信機などに組み込むと扱いやすくなるでしょう。 +9V前後で10mAくらいのプラス電源を与えれば良いので簡単に組み込めます。 +9Vはヒータ用のAC6.3Vを整流して簡単に作れます。

小さなMOS-FETでもOK
 手持ちがなかったのでちょっとオーバーだとは思ったのですが、初めは2SK1248(新電元)と言う500V耐圧で10Aの電流容量をもったPower MOS-FETを使っていました。(写真手前)

 その後、調べていたら秋月電子で2SK4150と言うTO-92パッケージ(2SC1815と同じ形状)で耐圧の高いMOS-FETが見つかりました。 このFETはON/OFFスイッチとして動作します。  キーがアップされた状態では電流は流れず、ドレイン損失はほぼゼロです。 キーダウンすると導通して10Ω以下の抵抗を示します。キーイングする電流は35mAくらいなので、FETの発熱は高々12mWくらいです。 電流容量も0.4Aあって十分です。 従ってかなり小さなサイズですがまったく熱くもならず安全にキーイングできます。

 4M-P12や5AQ5のようなQRPなパワー管のキーイングには2SK4150で十分ですが807や6146のようにやや大きめの真空管には2SK1248のような大きなMOS-FETの方が安心感があります。 送信管のサイズによってキーイング・トランジスタ(MOS-FET)を選らびます。 類似のPower MOS-FETなら何でも大丈夫です。

#参考:2SK4150TZ-Eは10個¥250ーで秋月電子にあります。

コイルがキーパーツ
 真空管式の送信機と言うとステアタイトのボビンに巻いた大きな空芯コイルやエアーダックス・コイルが定番かもしれません。もちろんハイパワーなら相応の部品が必要です。

 しかし、ここで作るような数Wの送信機には大げさでしょう。 空芯コイルを使っても良いのですが、どうしても大型化します。さらにリンクの結合度調整など厄介になってしまいます。 たぶんブレッドボード向きではないでしょう。 ここではタンクコイルにAmidonのトロイダルコアを使いました。

 パワーが小さいのでT68サイズで十分使いものになります。コア材は#2(赤)です。 写真の左のように巻きます。 1次側はφ0.5mmのフォルマール線(PEW線)を28回巻きました。 2次側リンクコイルはテフロン被覆の単芯線(太さはAWG #32程度)を3回巻きます。 リンクの巻き位置はラフで大丈夫なので適当に1次側の中心付近に巻けば良いです。 作りっぱなしの無調整でかまいません。

 写真の中央付近にあるPSと書いてあるのは「パラ止め」で終段管のプレート回路に入れるものです。 これは100Ω 1/4Wの抵抗器の上にφ0.4mm程度の電線を6回巻きして自作したものです。 市販品はないので抵抗器の上に巻いて自作してください。 芯になる100Ωはソリッド抵抗が最適ですが無ければカーボン抵抗でも良いです。

 右上にあるのは2.2mHの高周波チョークコイル(RFC)で、ここでは透明なビニルチューブに入っているレトロなタイプを使いました。 しかし右側の青色のものでもまったく問題ありません。 QRPな送信機ですからせいぜい50mAくらいしか流れないので電流容量も問題になりません。 送信機のRFCと言うと分割巻きの空芯型をイメージする人も多いかもしれませんが今となっては入手しにくいし高価なのでお薦めしません。 QRP送信機には写真のようなもので十分です。 7MHzの送信機には470μHでも良いです。

 真空管式の送信機と言うと何か特別なコイルやRFCが必要になると思うかもしれません。 確かに50年前の製作記事を見たら今では見かけない部品が使ってあります。 しかし、それらの部品はその当時の標準品だったから使っていたのであって、今なら別の部品で間に合わせて支障ないです。 あまり「昔の真空管製作」にとらわれ過ぎずに身近な部品に置き換えて製作すると楽に作れます。

πマッチの実験とトリマ・コンデンサ
 写真左はT106-#6に巻いたタンクコイルです。 これはπマッチの実験に使ったものです。 πマッチ形式の方が効率が良くなるかもしれないと思ったので実験しました。 そのため少し大きなサイズを使い、コア材の損失が#2よりやや小さな#6材のコアで試しました。

 結果から言えば同調回路+リンク形式のタンク回路と効率ほか違いは見られませんでした。 終段管のドライブ条件が同じでプレート電圧も同じならタンク回路の違いで大きな差は出ないのでしょう。

 アンテナのインピーダンスが変化するような時はπマッチの方が幾らか有利です。多少の変化はあってもマッチングできるからです。 しかし昨今のアンテナは半導体が終段のリグに合わせて概略50Ωになっています。 従って負荷インピーダンスは概ね決まっていますのでそれに合わせたタンク回路を作れば十分です。 πマッチ形式でなくても十分行けることになります。 同調回路+リンク形式ならπマッチよりバリコンが一つ少なく済むのでリンク形式でまとめることにしました。 (必要に応じて外付けのアンテナチューナを使うのもお薦めです)

 写真の右側はマイカ・トリマ・コンデンサの加工方法です。 そのままではブレッドボードに載りません。 右端のようなピンヘッダを端子にハンダ付けして中央にあるような形状に加工しておきます。 これでブレッドボードにうまく搭載できます。

ネオン管を細工する
 タンク回路の同調指示用としてネオン管を付けました。 このネオン管は端子の片端のみタンク回路に接続します。 他端は遊ばせておきます。

 ハイパワーな送信機ならタンクコイルのホットエンドは強電界になるので片端を触るだけでも点灯するのですがQRPな送信機ではうまく点灯しないことがあるようです。 写真のようにネオン管の周囲にGNDからの電線を数回からげてやればうまく点灯してくれます。 ちゃんと波が出ているか視覚的にわかった方が楽しいのでネオン管はFBです。 タンクコイルのホットエンドに触れただけでは点灯しないようなら写真の様に細工します。

参考)「小型ネオン球」はサトー電気などで販売されています。(単価100円くらい)

チューニングにも
 送信が始まり、タンク回路がきちんと同調しているとこのように綺麗に点灯します。
  キーイングで明滅しますから電波が出ているのがビジュアルにわかって効果的でした。

 固定した周波数の送信機ですし、固定シャックでしたらアンテナも決まっています。 終段管のグリッド電流やプレート電流は製作後の調整時に確認しておけば大丈夫です。 もちろんそれぞれ電流計を付けて常時監視すればベストですがQRPな本機には少々オーバーに感じます。 プレート電流は50〜100mA程度の豆電球を直列に入れて監視する方法もあるのでメーターよりも簡便な方法として使ってみるのも面白いでしょう。 このあたりは各局のお好みで。

                   ☆

VVVでテスト電波】(ムービー)
ダミーロードを負荷にして受信機でモニターしながらキーイングしている様子です。 幾らかチャープするようです。 都合で受信機を完全にミュートせずにオンエアしたかったので水晶発振段込みでキーイングするようにしました。 発振段はキーイングせず送信中は動作させたままにすればチャープは殆どわからならなくなります。 キーイングモニタを別途用意するなどの方法で対応すると良さそうですね。(:再生すると音が出ます)


ミニパワーなので期待はしていなかったのですが、コンディションに助けられたのかCQを出したら続けて数局からコールを頂きました。微弱な電波を拾っていただき有難うございました。 QSLカードは既にe-QSLで発行済みで紙のQSLカードもJARLビューローへ送ってあります。いずれお手元に届くでしょう。(普段はe-QSL専門。紙QSL発行は特例です)

                   ☆

 初めて作った送信機は6CB6で変形ピアース型水晶発振させて終段の12BY7Aをドライブする形式でした。水晶発振子はFT-243型でした。 もちろんアルミの箱型シャシに組み上げたものです。 まだ電信の免許はなかったので変調機を付けてAMでテスト電波を出しました。 しかし飛びませんでしたねえ・・・。 パワーは5Wも出ていなかったと思います。QRPなAMの波はアンテナがかなり良くないと飛ばないみたいでした。(笑)

 もし、同じ送信機でCWにオンエアしていたなら違った印象を持ったかも知れません。 数Wもあれば国内くらいは十分行けるはずなのです。 そこそこ実用的だったでしょう。今さらながら電信の面白さを感じますね。

目標の10局交信はあっという間に達成できました。 少年のころとは違ってアンテナを含めて設備は良くなっています。 それでもQRPな1W少々ですから大したパワーではありません。 こんなもので楽しめるのですから面白いですね。 お相手いただいた各局の皆さんどうも有難うございました。 中には0.5Wや1WというQRPerも居られたようです。  目標達成ということで、ブレッドボードは元の更地に戻りました。第5送信機もバトンタッチです。 久しぶりに濃〜い真空管の話でした。 同じような構想を温めているHAMも多いと思います。 ブレッドボードを使うことで製作のハードルはずいぶん下がります。こんな方法でもオンエアできるので新たな目標としてチャレンジしてみてはいかが? ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm