2020年8月4日火曜日

【Antenna】160m Band Antenna , Fixed

アンテナ:160mバンドアンテナを最終調整
 <abstract>
This article is a continuation of the low band antenna modification. I've been experimenting with this antenna for two months now with a temporary response. As the result was good, I completed the modification. I soldered the extension of the antenna element. As a result, the operation was very stable. It seems that a proper response is still necessary.   (2020.08.04 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

恒久化完了
 160m Band用アンテナを改造する話の続きです。 前のBlog(←リンク)では様子見の意味もあって、仮の対応で1.8MHz帯に出られるようにしました。 仮設の意味は、バンドの拡張分をミノムシ・クリップで挟んだ電線で応急的に対処していたからです。
 さすがにいつ迄もそのままという訳には行きません。 ミノムシ・クリップはやめてきちんとハンダ付けすることにしました。

                   ☆

 拡張された1.8MHz帯に約2ヶ月ほどオンエアしてみました。 なにぶん既に初夏ですからこのバンドは旬ではありません。 それでも物珍しさもあってか意外にオンエア局も多いようでした。 まあ多いとは言ってもメジャーなバンドじゃありませんから、オンエアしている局数は限られます。 昨今ではみんな交信済みになってだいぶ飽和してきた感じです。 FT-8モードの交信がまったく飽和てしまったら今度はCWにオンエアしようと思案しているところです。

 このアンテナ、オンエアしていて国内局相手ならマズマズ飛ぶ感じなので「ミノムシ・クリップで挟んだ電線」から脱却して恒久化することにしました。 今回のBlogは自身の作業メモなので役立つお方はまずないでしょう。 おヒマじゃなければとりあえずスルーしてください。(爆)

 【170m用になる?
 従来の1.9MHz帯は160mバンドと呼ばれてきました。 確かに、1910kHz±2.5kHzの波長は157mくらいですから、まあ160mバンドで良いんでしょう。(笑)

 今回はエレメントを延長して1.8MHz帯のアンテナに改造します。 中心周波数は1837.5kHzで、波長は163mです。そのまま160mでも良いのかもしれませんが、1800kHzでは167mになります。 何となく170mのイメージに近くなってきました。 170mバンドと言うのはここだけの冗談としても、だいぶ低い方へシフトした感じです。(笑)

 ざっと考えて72.5kHzほど共振周波数を下げることになります。 前回の仮設工事では約65cmの被覆電線を追加して1940kHzあたりに共振するようにしたのです。 でも、みの虫クリップで挟んだだけではどうしても不安定さが残るように感じていました。 一応、共振はするようですがアンテナ・チューナの挙動を観察すると何となくぎこちなくて怪しげです。(笑)
 そろそろ潮時と考えて仮設を脱却することにしました。 銅線を用意しハンダ付けするだけの簡単な作業です。  始めてみると仮設とは言え自己融着テープで防水処理しておいたので雨水の侵入もなく初期状態に近い良い状態でした。 しかしミノムシ・クリップでは点接触のようなもので、どうしても不安定ですから今度はがっちりハンダ付けしておきます。

 【小刻みに追い込む
 足りなくて何回も追加するのは面倒ですから長めに追加しました。 追加する電線は古いアンテナの残骸からリサイクルで調達しました。 実測で128cmの電線を2本用意し、端部を5cmほど磨いてハンダ付け部分にします。 従って有効な延長量は123cmとなります。(123cmずつ左右エレメントの両端にそれぞれ追加)

 123cm追加した状態で共振周波数を測定したら1800kHzちょうどでした。 これではだいぶ低すぎますから共振点がバンドの中央付近(=1837.5kHz)に来るようカットして追い込んで行きます。次項のように測定画面で観察しながらカットして行きました。

 初めはやや大胆に15cmとか20cmずつカットします。 だんだん良いところに近付いたら5cmずつ小刻みに調整して行きました。 最終的に、追加した長さが65.5cmになる所まで切り詰めてほぼ目標のところに来ました。 不足を警戒した最初の123cmはだいぶ長すぎたようです。切れ端がたくさんできてしまいました。(笑)

 【最終特性は?
 左は調整を追い込んだところです。 1837kHzでSWR=1.2くらいになっています。 バンドの下端と上端ではSWR>3になりますが、あまりバンドエッジにはオンエアしませんから支障はないでしょう。

 もう暫くのあいだオンエアのメインはFT-8だと思うので良く使うのは1840kHzあたりでしょう。 また、交信の合間にオンエアしているWSPRなら1836.6kHzです。 この先オンエアする予定のCWは1815kHz辺りかと思うのですが、国内局相手がメインになりそうな当局はもう少し上の方に出る方が良いでしょうか?   そんなことを考えながら概ねバンドの中心付近でSWRが一番下がるように調整して終了しました。 なお、この観測は下記のTEST-2のパターンでやりました。(厳しい方になります)

 画面の右の所に1910kHz±2.5kHzの位置を記入しておいたのですが、 流石にSWRが高すぎて使い物にはなりません。 どうしても戻りたくなったら足した分を切断するしかないようです。 延長コイルの逆で、短縮コンデンサを入れるって言う手があったように思うのですが、あらかじめそれなりの構造を考えておかなくてはダメなようです。将来の研究課題にしておきましょう。hi

参考:160mバンドのバンドプラン
1800kHzから1830kHzがCW、1830kHzから1845kHzがCWと狭帯域データ(例:FT-8など)。1845kHzから1875kHzが狭帯域の全電波形式。なお、1907.5kHzから1912.5kHzは従来通りCWと狭帯域データのみ。(2020年8月:JARLサイトによる)

 【全バンドの評価・1
 左は前回のBlogの評価と同じ方法で観測した4バンド逆VアンテナのSWR特性です。

 概ね同じように調整を追い込んだだけですから、160mバンド以外の特性に変化はないようです。 まあ、そうでなくては困るのですが。(笑)  今回は30mバンドの特性も見えるように測定しました。 30mバンドは無短縮ですから帯域幅も広く取れています。 SWRのボトムはややバンドの上の方に外れているようですが、バンド内のSWRは1.5以下なので支障はないでしょう。実際に飛びも悪くありません。コンデイションさえ良ければ南米とかEuと交信できています。

 80mと40mのSWRボトムはやや低すぎる感じもしますが、デジタルモードやCWでのオンエアがメインなのでまあまあでしょうか? SSBに出るならもう少し高い方へ調整すると良さそうです。 ただし40mバンドは200kHzに広がったのでフルカバーするのはそれなりに大変です。 80mバンドも上の方の「飛び地」にオンエアするのは難しいですね。 従って各バンドとも主にオンエアするモードに従い共振点を合わせて妥協するしかありません。

全バンドの評価・2
 上の測定と何が違うのかと言うと、測定系の途中に入っている物が違うのです。 実際の運用では上のような状態になっています。 こちらの方は途中に入っているダミーロードとSWR計を兼ねた機器をパスしているのです。

 どちらかと言えばこの状態の方が実際なのかもしれません。 アンテナ系としては余分な機器がないのでシビアに特性が現れているようです。 個々の周波数の共振特性を見ると綺麗なようですし特性もわかり易いように感じました。 それで160m Bandの調整もこちらで行なってみたわけです。 ただしバンド内に限れば極端な違いはありません。

 きちんとハンダ付けしてエレメントを延長した結果、ATUのチューニングの挙動も安定したように感じます。 アンテナは屋外にある関係で、季節や気象条件などによって微妙に変化が現れるものです。 しかし仮設と比べてその時々の変動は少なくなったように思います。

                   ☆

 私が開局した当時、OMさんから「無線局はアンテナだよ」と言われたものです。 そのころはよくわかっていなかったこともあって「無線局はヤッパリ無線機」だろうと思ったものでした。(笑) しかし、いくら高性能な無線機があってもアンテナがPoorなら性能は活きてきません。 リニヤアンプを付けたところで輻射効率が悪ければせっかくのハイパワーも熱に化けるだけです。 無線局にとってアンテナが大切なことはOMが言われた通りです。 その上で高性能なリグを揃えればベストなんでしょうね。 狭い敷地に何とか工夫して上げたようなアンテナばかりの当局には夢のようなお話なんですけれどネ。(笑)

 仮設の状態でもテストにはなったので十分意味はありました。 しかし何となく不安定さが感じられ気になってきたのです。 ローバンドが本格化する秋まで待っても良いかと思っていたのですが、暑さと蚊の来襲を我慢し作業して良かったと思います。 短縮+折り曲げエレメントなので160m Bandはあまり飛ばないのですが、何とか国内くらいならカバーできそうです。 電波が届いておりましたら是非コールしてください。 なお、アンテナや無線局にまつわる逸話でもあればお気軽にコメントをどうぞ。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2020年7月21日火曜日

【回路】Making an AM-Radio with MC3340P

MC3340Pを使ったAM Radioの試作
 <Abstract>
I built a prototype AM radio using Motorola's IC: MC3340P in the AGC circuit. The purpose of this is to test if the MC3340P electronic attenuator can be used for radio and wireless communication devices.
The MC3340P is a low-frequency device. As a result of my trial, I found out that it can be used for high frequency circuits as well.
 I think it is possible to make a receiver with good AGC characteristics by applying it well.  (2020.07.21  de JA9TTT/1  Takahiro Kato)

AM-Radio 機能試作・1
 二つ前のBlog(←リンク)でモトローラ/ONセミ製のMC3340Pと言う電子ボリウムを扱いました。 MC3340Pは低周波用のデバイスですが、周波数特性が伸びていることから、低周波のAGCアンプだけでなくラジオのIFアンプへの応用も示唆されたのです。
 そこで、さっそくMC3340Pを使ったAMラジオを試作しました。 まずは中間周波増幅器(IFアンプ)として思ったように動作するのか、ごく基本的な実験から始めました。 優秀なAGC特性・・・端的に言えば広いAGC範囲と低歪みな特性・・・を持ったIFアンプの製作はなかなか難しいものです。MC3340Pを使うことでそれが可能になるか確かめました。結果はかなりFBなようです。

                   ☆

 シンプルにAMラジオで試してみましょう。もちろん単なるAMラジオを作るのが目的ではないので専用のラジオ用ICチップは使いません。ラジオは作りますが、今回は「ラジオ作り」そのものが目的ではありませんので。
 ここでは電子ボリウム用のMC3340Pがラジオや通信機のAGC回路にうまく使えるのか実際にテストしてみます。 まずはAMラジオで様子を見ますが、より本格的な通信機に使えるかどうかも検討したいと思っています。
 MC3340Pの可能性が確かめられれば良いのでなるべく手間を省いて実験します。便利なICを多用することにしました。実験回路はそのままラジオとして使うことも十分可能ですが、実用品にするならもう少し改良したら良くなる所もありそうです。今回はありきたりのラジオ製作がゴールではありませんのでそのつもりでどうぞ。
 
AM-Radio 3340 Schematic
 さっそく実験回路です。中間周波が455kHzのスーパー・ヘテロダイン形式のAMラジオです。 6石ラジオの途中にMC3340Pを付け加えたような回路でも良いのですが、遊びの意味もあって新規のラインナップで考えました。

 周波数変換(コンバータ)はデュアルゲート・MOS-FET:BF998を使った自励式コンバータです。 DG-MOS-FETをこうしたAMラジオのコンバータ回路に使う例は見ませんでしたが旨く動作してくれるようです。感度もまずまずですからもっと使われても良いのではないでしょうか。

 コンバータに続くIFフィルタは中心周波数が455kHzで帯域幅が15kHzのセラミック・フィルタを使いました。ここでラジオの選択度が決まります。使ったフィルタは選択度が良い(特にスカート特性が良い)ため混信もなく、また十分な帯域幅があってAMラジオながら再生音域も広く取れます。市販のラジオが3kHzくらいまでなのに対して7kHz以上の再生域が得られます。もしアマチュア無線用(AM波対象)なら帯域幅6kHzくらいが適当ですが、AMラジオにはずっと広い方が良いでしょう。混信さえなければ20kHzくらいでも良いのです。(但し夜間は9kHzのビート音の可能性があってノッチなどで対処が必要)

 セラミック・フィルタの次はMC3340Pです。ここにAGCを掛けます。AGC回路はFETを併用する方式にしました。  検波出力が小さめなので、AGCの効きを良くする目的でカットオフ電圧が小さい2SK544Fを使います。通信機なら増幅型AGCも考えるのですが、単なるAMラジオなのでシンプルに済ませました。 MC3340Pの後はLA1221と言う差動アンプ形式のIF-Amp.用ICを2つ使って十分なゲインを得ています。LA1221はCanパッケージのトランジスタのような形をした4ピンのコンパクトなICです。 MC3340Pを含めたIFアンプ全体で50dBくらいのゲインがあります。 検波回路はゲルマニウム・ダイオード:1N34Aを使った標準的なものです。検波した電圧を平滑してAGC電圧としています。

 初めはIFアンプ+検波器だけで実験していました。 セラミック・イヤフォンで聞いていたのですが、使い物になりそうだったので低周波アンプを追加しました。 低周波アンプは定番のLM386タイプです。 LM386にも少々飽きてきたので別のICでも・・・と思ったのですが、あえて凝る意味もないのであっさり定番で済ませました。(笑)

 全体の消費電流はICを多用したため少し大きめです。無信号状態で約27mAでした。上手に作った6石ラジオなら10mA程度で済むのですが、MC3340Pを試すのが目的ですから省エネ方向の追求はしませんでした。各部が安定して動作してくれたらテストには十分だと思います。

 【Converter : BF998
 コンバータには少し前のBlog(←リンク)でテストしたBF998型デュアル・ゲートMOS-FETを使いました。 また、別のBlogではDG-MOS-FETで自励コンバータ形式(←リンク)のクリスタル・コンバータを試したのですがなかなか旨く働いてくれました。 これらの実験結果に基づき、今回は水晶発振ではなく変形ハートレー型のLC発振回路を使った自励式コンバータを構成してみました。これはとても旨く動作しています。

 BF998はヨーロッパ系のDG-MOS-FETですが秋葉原や通販で安価に手に入ります。 国産品で代替するなら3SK35ほかディプレッション型のデュアル・ゲートMOS-FETならほとんどのものが使えます。(例:3SK35、2SK41、3SK45、3SK51、3SK59、3SK65、3SK73など候補はたくさんあります)

 アンテナコイルには、フェライト・バーアンテナを使いました。試作品では長さ120mm、直径10mmのものを使いました。このバーアンテナだけで十分な感度があります。 基本的に外部アンテナは不要でしょう。 外部アンテナは遠距離受信に効果がありますが、このラジオはローカルの放送局を良い音で聴くのが仕様です。

  市販のAMラジオ用局発コイルが使えると面倒がありません。 検討の結果、市販の既製品も支障なく使えましたが、後ほど局発コイルとIFTを手作りするための図面・資料があります。詳しくはそちらで。

 【OSC Level : at BF998 Source
 DG-MOS-FETの第1ゲート部分を使った変形ハートレー型の局部発振回路です。 ゲート部分に入れたダイオード(Si-Di)の整流作用で自動的にバイアスが掛かって発振振幅が安定します。 D1:1N914は重要な役割があるので省略しないでください。1N914の代替には一般的な小信号用シリコン・ダイオードなら大抵のものが使えます。1N4148、1S2076A、1S1588、1SS53、1SS178などなど。

 受信周波数範囲は520〜1620kHzなので、局発の発振周波数は+455kHzの975〜2075kHzです。 その範囲で発振振幅は概ね一定に保たれています。 写真では1Vppですが、もう少し小さめに調整しても良いようでした。 組み立てが済んでからVR1:10kΩで発振レベルあるいは変換ゲインを見て加減します。

(注:写真は未調整の段階で撮影したため上記の周波数範囲をやや外れています。ただし範囲調整後も発振振幅に変化はありませんでした)

 【AMR-3340 : Making Coils
 局発コイルと検波回路部分のIFTの作り方です。 aitendoで売っている「IFTきっと」を使って製作しました。 巻線はφ0.08mmのポリウレタン被覆電線(UEW電線)を用意します。 ここでは最大容量が275pFの等容量2連バリコン(ポリバリコン)を使う前提で局発コイルを設計しました。

 しかし、市販品の局発コイルやIFTも十分使えます。 バーアンテナ・コイルなどと一緒にバリコンも合わせて購入すればコイル製作の手間は掛かりません。 AMラジオ用のコイル類は秋葉原あるいはラジオ部品の通販サイトで購入できます。 もちろん「IFTきっと」を使って自分で巻けば非常に経済的です。手間か費用かの選択と言うことですね。

 なお、一般的に市販されているAMラジオ用のポリバリコンはアンテナ側が約140pF、局発側が約82pFのトラッキングレス型が多いようです。 従って局発コイルもそれにあったものを購入します。局発コイルとしては約360μHくらいのものが良いはずです。(SLV-C01と言う型番の市販品がある)なお、C5:330pFは不要なので除去(取り除き短絡)します。 またバーアンテナの方はインダクタンスが550μHくらいあるものを選ぶことになります。例えばSL-55X(あさひ通信)などが良いでしょう。バーアンテナはフェライトコアが大きなものが高感度です。(一般的には。コア材にもよる)

参考:コロナのクラスタ発生もあり秋葉原には行きにくい状況にありますが、「東京ラジオデパート」のシオヤ無線電機商会あたりに行けばコイルとバリコンが一式揃うはずです。

IF-Filter and IF-Amp
 選択度を決めるIFフィルタには「セラミック・フィルタ」を使いました。 写真・左側に見えるブルーの箱型がIFフィルタです。 京セラ製のKBF-455R15Aを使っています。これは製造中止品のようですから手に入ったもので代替すれば良いでしょう。村田製作所の製品が入手しやすいようです。 使用するフィルタの終端インピーダンスに合わせてR5とR6を変更します。(回路図では1.5kΩ) 一般的に終端インピーダンスは1〜2kΩのものが多いです。手に入ったフィルタのインピーダンスがわからないときは回路図のまま作っても良いでしょう。 このラジオの場合、セラミック・フィルタがないからと言ってIFTで代替すると選択度不足になるのでお勧めできません。

 AGC回路に使うMC3340Pの詳細は前のBlog(←リンク)を参照してください。ここでは455kHzの中間周波増幅回路のところに使っていますが考え方は低周波の場合と同じです。 但し、周波数特性を伸ばすためPin.6はオープン状態で使います。
 MC3340Pだけではゲインが足りません。LA1221と言うIFアンプ用のICを2つ使ってさらに2段増幅しました。 LA1221はちょっとしたRF/IFアンプには便利なのですが、かなり旧式なのでおそらく入手は困難です。 IFアンプ部分で40〜60dBのゲインが得られればどんな方法でも良いです。 手に入った部品で代替すれば十分です。トランジスタやFETでも良いですが、いまでしたら高速OP-Amp.の採用も有りでしょう。拙宅ではLM359NもIFアンプの候補でした。

 LA1221はもともとFM受信機用のICです。そのため、あまり大きな信号を扱うとリミッタ特性が現れてうまくありません。しかしこの例のように2段増幅ならリニアに増幅する範囲内でした。従ってAMやSSBのような振幅変調系のIFアンプに使っても支障はありません。同じ回路で試したいお方に差し上げますのでお問い合わせを。
 
 【Detector
 検波回路はゲルマニウム・ダイオード:1N34Aを使ったオーソドックスなものです。  IFTを使わぬ形式も可能ですが普通のトランジスタ・ラジオと同じ回路にしました。検波ダイオードは1N60や1K60も使えます。1SS97などのRF用ショットキ・バリヤ・ダイオード(SBD)でも大丈夫です。 ここで使用したIFTは自作品ですが、市販で見かけるSLV-C04(コアは黒色)が同じように使えます。

 IF信号を検波することで得られる直流(DC)電圧の成分は概ね信号の大きさに比例します。 図の回路では負のDC電圧が得られますのでその電圧を平均化してからAGC制御用のFET:2SK544Fのゲートに与えます。 AMラジオでは常識的な平均値型のAGC回路になっています。 なお、2SK544Fの代替として2SK241GRと2SK439F(ピン配置要注意)がありますが、この用途の場合2SK19GRや2SK192AGRもほぼ同じように使えます。

 【Audio Amp.
 初めの頃はセラミック・イヤフォンで実験していました。 しかし、イヤフォンは鬱陶しいのでスピーカを鳴らすことにしました。 100mWくらいのパワーがあれば実験には十分です。 アンプ回路は何でも良かったのですが、オーソドックスに「386型IC」を使いました。

 回路はメーカーの資料に「ラジオ用」として紹介されているものを参照しました。入力部のLPFや出力部のRFCで高周波の回り込みを防ぐ工夫がされています。

 写真のものはJRC製のNJM386BDですが、一般的なLM386Nでも支障ありません。 BlogではJRC製が頻繁に登場していますが単に手持ち在庫の都合に過ぎません。

 もちろん、他の低周波アンプ用のICでも良いのですが、電源電圧=9Vに適当な物となると意外に選択肢は少ないように思います。 ディスクリートで作っても良いのですが、今回はあえて部品数を増やす意味を感じなかったので定番の「386」で済ませました。 386なら秋葉原や通販で容易に手に入るのも良いところです。

AM-Radio 3340 EVX-2
 以上で全てです。 MC3340PのIF-AGC回路への適性を見極めるのが目的です。 IFアンオ部分だけを作って測定器による評価だけでも良かったのかも知れません。

 しかし、なるべく具体的な応用例があった方が実感が湧きやすいと思ってAMラジオの形に纏めてみました。 試作したラジオが特別に優秀だとは思いませんが、良くAGCが効いているのは実感できました。 感度的にもマズマズなので実用品にすることも十分可能でしょう。 まずはMC3340Pが受信機のIFアンプ回路に旨く使えるかの確認になりました。 AGC特性については下記の参考・3に概略の評価結果を追記しました。

                 ☆  ☆

参考・1このラジオの調整について
このラジオはスーパーヘテロダイン型なので、トラッキング調整が必要です。
◎次のような道具を用意します: 周波数カウンタ、テストオシレータ、DMM、調整用ドライバ、ジェネカバ・受信機(=周波数カウンタの代わり) 、直流安定化電源

☆以下の手順で調整します。
(1)製作の確認:電源を与える前に部品の付け忘れや誤配線がないか入念に確認します。
(2)消費電流の確認:DMMを使います。まず電源電圧を9Vにセットし、電源から流れる電流が測れる状態に配線します。電源を加えたら素早く電流値を読み取ります。回路図に書かれた値と大幅に違う場合(±50%以上)は誤配線やショート、配線もれなどが考えられるので一旦電源を切って再確認します。
(3)IFTの調整:テストオシレータを使います。アンテナ端子から変調をかけた455kHzの信号を与えます。周波数は正確である必要があります。60dBμ以上加える必要があるかもしれませんが、信号が聞こえたらIFT:T3を調整して一番大きな音が聞こえる様にします。最大のところがわかりにくい時はテストオシレータの出力を適宜加減します。
(4)受信範囲の調整:周波数カウンタを使います。Q1:BF998のソース電極:S端子の部分に周波数カウンタを接続します。 (A)バリコンを最大容量の位置(一番低い周波数側)にします。発振周波数が975kHzになるように局発コイル:T2のコアを調整します。 (B)次にバリコンを最小容量の位置(一番高い周波数のところ)にします。発振周波数が2075kHzになるように、半固定コンデンサ:C4を調整します。 上記の(A)と(B)を交互に繰り返します。両端で概ね5kHz以内まで合って来たら最後に(B)を行なって終了します。これで520kHz〜1620kHzが受信できるようになります。 なお、周波数カウンタは測定可能な範囲でなるべく小容量で結合させると精度良く調整できます。 ジェネカバ受信機を使って調整しても良いです。その場合、受信機からのアンテナ線を作ったラジオのコンバータ部:BF998のあたりに近付けます。SSBモードで受信すると発振の存在がわかり易いです。上と同じ手順で(A)975kHzと(B)2075kHzの周波数でビート音が聞こえるよう局発コイルと半固定コンデンサを調整します。
(5) アンテナ回路の調整:テストオシレータを使います。テストオシレータの出力はワンターンコイルでバーアンテナに結合すると良いです。 (C)まず変調した600kHzをアンテナ端子へ加えます。バリコンを回してテスト信号を受信します。その状態でバーアンテナ上の同調コイルをフェライトコア上でスライドさせ一番よく聞こえる位置に仮固定します。テスト信号が強すぎるとわかりにくいのでテストオシレータの出力を適宜加減します。 (D)テストオシレータの周波数を1400kHzにします。バリコンを回しその信号が受信できたら更によく聞こえるようにトリマコンデンサ:C3を調整します。 これら(C)とD)を交互に繰り返します。どちらでもよく聞こえるようになったら最終的に(D)の調整で終了します。 パラフィンなどでバーアンテナの同調コイルを固定して完了です。

# なお、テストオシレータが用意できない場合、(3)のIFT調整は後回しにします。(5)のアンテナ回路の調整は実際にラジオ局を受信しながら行なうこともできます。その場合、低い方は500〜600kHz、高い方は1200〜1500kHzのローカル放送局を2つ選んで調整します。例えば関東の場合はNHK第1(594kHz)とニッポン放送(1242kHz)などが良いでしょう。高い方はRFラジオ・日本(1422kHz)が良いのですが地域によっては受信困難です。 (3)を飛ばしたとき、IFTの調整は受信できるラジオのうち、弱めの局を聴きながらよく聞こえるように合わせておきます。

 このラジオはアンテナコイル(バーアンテナ)への負荷効果が小さいため、アンテナ同調回路における選択度はかなり良好です。同様に感度的にも有利です。これはDG-MOS-FETを使った効果です。 ただし完全な調整を行なわないと本来の感度が得られません。手順に従い入念に調整します。

参考・2Sメータの付け方(簡易版)
 同調点表示器と言ったほうが良いかも知れませんが、簡単にSメータが付けられます。FET:Q2 2SK544FのソースとGND間に入っている抵抗:R10(820Ω)のGND側を切ってGNDとの間にラジケータを挿入します。ラジケータの極性はR10側がプラス、GND側がマイナスです。 ラジケータの内部抵抗がわかればその分だけR10を減らすとなお良いです。 このSメータは逆振れ型で500μA程度のラジケータがよく振れます。 無信号のとき振り切れる場合はラジケータとパラに抵抗を入れて一杯に振れるよう加減します。ごく簡易なものですがメータがあるとラジオもサマになります。(笑)


参考・3:AGC特性(追記:2020.07.25)
測定器を使ったAGC特性の評価結果です。入力として変調信号が400Hzで変調度30%の1000kHz・AM信号で評価してみました。 強さを変えて採った代表的な特性ですが、AGCの有効範囲は約60dB程度でした。 60dB(1000倍)の入力変化で検波出力の変化は12.8dB(約4.4倍)に収まります。6石スーパと比べはるかに優秀です。 なお、IFアンプ自体はさらに大きな入力信号を扱えるのですがコンバータ段が先に飽和しました。しかし大電力放送局の至近でもなければ心配ないでしょう。コンバータ段は感度か大入力特性優先なのかを考えてバイアス調整すると効果的でした。 アンテナがバーアンテナなので測定には「テストループ」を使うべきですが、今回は使用せず簡易評価です。従って絶対感度は求めていません。現状で強弱の違いはありますが関東一円の民放局が受信できます。 これは当たり前ですが、MC3340Pの特性をフルに発揮させるには受信機全体のレベル配分がとても重要です。さらに高性能化するための指針としては、IFアンプのゲインをもう10dB程度アップするかDCアンプを付加して増幅型のAGCにしたいところです。ラジオではなく通信型受信機なら間違いなくそうすべきでしょう。

                   ☆

 もともとMC3340Pを使ってみるのが目的です。 AMラジオではあまり見たことのないようなデバイスを多用した「変わったラジオ」になりました。 前から研究テーマの一つだったDG-MOS-FETを使った自励式コンバータも実験できました。この自励式コンバータは短波帯でも十分使えそうです。  あえて珍しいようなデバイスを使ってAMラジオを作る意味はないかもしれませんが気分転換にはなりましたね。(笑) MC3340Pを試して受信機のAGC回路への適性があることもわかったのは収穫です。 今回は455kHzでテストしましたが、もう少し高い周波数でもかなり使えそうです。
 さらに使い方を工夫してちょっと高級な受信機でも試用してみたいと思っています。 既に良好なAGC特性を持ったIFアンプとしてはAD603を使ったものをテスト済みです。一方、MC3340Pの特徴はその扱い易さにあります。特に低い周波数のIFアンプには有利でしょう。それ自体は低ゲインですから発振しやすいと言ったトラブルもありませんから。

 AMラジオは何回も作ったので、ありきたりのデバイスで作っても面白くありません。 あまり定番にとらわれず手持ちの部品を積極的に使ってみました。従って実験した回路は必ずしも理想的ではない部分もありますが、少し変わった部品でラジオを作ってみたいなら面白いかも知れません。定番の部品を使ったラジオを卒業したら試してみてはいかがですか? ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2020年7月5日日曜日

【回路】Frequency Counter kit from China

回路:中華カウンタとプリアンプ
<abstract>
I made a kit for a frequency counter. This kit was purchased by mail order from China. It was only $2.9-.
The frequency counter was lacking in input sensitivity as it is. So I will build a pre-amp to increase the sensitivity. I put an amplifier on it and it started counting at an input of about 100mV. This is very practical.  (2020.07.05  de JA9TTT/1  Takahiro Kato)

お手軽カウンタキット
 しばらく前から秋葉原のお店で周波数カウンタのキットが安価に売られるようになりました。PICマイコンを使ったもので、5桁のLED表示になっています。キットをよく見ると中国製のようでした。そこでAliexpressで検索したら写真のようなキットが売られていました。価格はわずかに$2.90-です。どうやら秋葉原の商品と類似品のようです。送料無料なのと相まって、あまりに安いのですがちゃんとしたのが届くんでしょうか?

                   ☆

 HAMの自作にはテスタだけでは不十分です。 何もなかったころの「昔風の製作」を信条とするならともかく、いまなら周波数カウンタは欲しいものの一つでしょう。 ここでは中華通販で買った周波数カウンタとそれに付加するプリアンプを試作してみました。本格的な測定器の代わりとして結構役立ちそうなので紹介することにします。もし周波数カウンタを持っていないなら一つ作ってみては如何ですか?

 既に周波数カウンタを持っていても、この中華カウンタは役立つかも知れません。IF周波数が455kHzの受信機(例:9R59Dとか)はもちろん、それ以外に任意のオフセット値を加減算するカウンタにもなります。VFOとか局発の周波数を読んで送・受信周波数をデジタルで直接読み取る「周波数表示器」としても使えそうです。 機能の詳細については省きますので、設定方法など詳しい使い方はネットにある取扱説明書を参照してください。 プリアンプの付加はそうした「ラジオ・カウンタ」などの用途にも有用です。 以下、もしも興味を覚えたらご覧を。 今回の電子工作はビギナーでも難しくありません。

 【キットが届く
 注文してから約40日ほど掛かって到着しました。安価なキットですし、送料も無料ですから最も安価な輸送手段で発送されたのでしょうか? 台湾からのようですから、ひょっとしたらVia AirではなくてSurfaceだったのでしょうか?

  現在はコロナ禍の影響があって中華通販は滞り気味です。昨秋の購入なので約40日でしたが、いまはもっと掛るかも知れません。気長に待つしかないでしょう。 少し高くてもよければ秋葉原のお店で購入するのが手っ取り早いです。あるいは国際通販に不安があるなら国内の通販も良いかも知れません。Amazonにも売っているようです。 購入場所や時期によって幾らか基板のバージョンに違いが見られるようですが、基本的にどれも同じだと思います。

(備考)中華通販はあまりに安い(約330円)ので、ひょっとしてプログラムの書かれていないPICマイコンでも・・なんて疑いました。しかしこれは余計な心配であり、きちんとプログラムは書いてありますし基板も綺麗なものです。部品の過不足もありませんでした。ただし、組み立て説明書のような資料類は一切付いてきませんから自力でネットから探すことになります。でも、簡単に見つけられました。

 【組み立ては簡単
 部品数も少なくて簡単なキットです。まずは部品の不足がないか確認しましょう。もっとも、もし不足があってもお店にクレームを入れるよりも足りない分を自身で補う方が手っ取り早いです。もちろんLED表示器やPICマイコンのような主要部品の欠品は致命的ですが。

 抵抗器はカラーコードが5本の1%誤差のものが付属していました。5本なのでカラーコード4本の抵抗器に慣れていると戸惑うかも知れません。先頭の3本で有効数字を表します。(注・1) 各部品は浮かせたりせずに写真のように基板にぴったり付けて実装するのをお薦めします。

 この周波数カウンタキットは、クリスタル・テスタを兼ねています。このクリスタル・テスタは水晶発振子を発振させてテストするための機能です。 しかし不良品でもないのに発振できない水晶発振子が多くていま一つのようでした。 もし手持ちに2〜20MHzくらいの水晶発振子があれば装着してみます。 うまく発振してくれれば発振周波数が表示されます。
 周波数カウンタとしての基準は基板上に20MHz水晶発振子が載っています。その周波数調整用のトリマコンデンサも付いています。 正確に周波数がわかっている発振器があれば校正できますが、もしなければとりあえずそのままでも良いでしょう。 いずれ 機会を改めて校正すれば良いです。

 写真は外部の発振器から999.99kHzを水晶発振子の測定端子のところへ与えてみたものです。(1MHz以下の測定では小数点が点滅します) 残念ながらこの方法は感度が悪くて実用性に乏しいことがわかりました。かなり大きめの信号を与えないと計測してくれません。 要するにこの基板単体では周波数カウンタとして感度が悪すぎるのです。 さらに水晶発振子の端子からではなく、その右側のコネクタにある「IN」端子経由で試しても同様でした。(IN端子はもっと感度が悪い。ここは論理信号レベルの矩形波に限るようでした) そこで、外付けのプリアンプが是非とも必要だと思ったわけです。

(注・1)中国製抵抗器の精度:
日本メーカーの抵抗器は非常に優秀で、1%精度の抵抗器の実力は0.5%くらいです。1%を超えることはまずあり得ません。 これに対して中国製は1%精度の物でも数%以上の誤差を持つこともあるようです。中国製はあまりアテにはなりません。 但しこの周波数カウンタ・キットの場合、抵抗器の誤差は±10%でも支障ないので選別などせずに使って大丈夫です。  悲しいことですが、中国製抵抗器の精度が悪いのは半ば常識のようになっています。

 【プリアンプと接続法
 電界効果トランジスタ(FET)と普通の高周波用トランジスタ(BJT)を使った2石の簡単なプリアンプです。 カウンタ基板との接続方法も書いておきました。

 アンプはFETを使って高い入力インピーダンスを実現しています。 これは測定対象の回路にカウンタを接続した際の影響をなるべく小さくするためです。  入力された信号はまずFETで増幅されます。さらにそれに続くトランジスタで十分に増幅されます。その結果、30MHzあたりまで約100mVの入力感度が得られました。100mVの感度があればトランジスタ・ラジオの局発回路のような発振電圧が小さな所の測定もできます。 さらに高感度に・・と言うご希望もあるかも知れませんが、製作は難しくなってしまいます。簡単さも考慮すればこれくらいが適当でしょう。

 入力部のFET:Q1は2SK544Fを使います。代替として2SK241GRあるいは2SK439Fでも良いです。ただし2SK439Fは足の並びが逆順なので注意します。2段目のトランジスタ:Q2は高周波特性の良いトランジスタに限ります。ここでは2SC1424と言うfTが2GHzくらいあるトランジスタを使いました。2SC1424は大して高価なものではありませんが代替として中華トランジスタの「S9018H」(←関連Blogにリンク)が使えます。これなら単価10円くらいです。安くても性能十分です。

 回路はごくシンプルなものです。キーポイントはQ2に周波数特性の良いトランジスタを使うことにあります。「ピーキング」と言った広帯域アンプの周波数特性を伸ばす手は使いませんでした。再現性が必ずしも良くないため測定器を持っていないと調整や確認が難しいからです。 しかし、この回路ならバイアス調整のみ行なえばOKです。図の*1の抵抗器:R5を加減して、トランジスタ:Q2のコレクタとGND間の電圧が2.4〜2.6Vくらいになるよう調整します。測定は普通のテスタなら何でも可です。電圧が低すぎるなら抵抗値を大きくします。高すぎるなら逆にします。 同じ種類のトランジスタを使ったとしても調整は必ず行ないます。入力端子をGNDへ短絡し無信号の状態でやります。この調整は入力感度に影響するので必須です。

参考:合理的な調整方法
100kΩの可変抵抗器(ボリウム)を用意します。可変抵抗器は半固定型でも良いです。R5を取り除き仮に可変抵抗を配線します。電源を加え、Q2のコレクタとGND(電源マイナス側)との間の電圧を測定します。その電圧が約2.5Vになるよう可変抵抗器を調整します。そのまま可変抵抗器を取り外し、DMM(アナログ・テスタも可)で可変抵抗器の抵抗値を読み取ります。 その抵抗値になるべく近い抵抗器を標準品から選んでR5とします。交換したらQ2のコレクタ電圧をもう一度測定して確認します。2.4から2.6Vの範囲にあればOKです。やや低すぎるなら抵抗値を大きくし、高すぎるなら小さくします。あまり厳密である必要はありません。抵抗はE12系列から選べば十分でしょう。

注意:ハイパワーな送信機の出力や真空管発振器のように発振電圧がたいへん大きな回路をそのまま測定すると入力部のFETを壊します。結合コンデンサを極力小さくするとか「ワンターン・ループ」のような測定プローブを作って弱く結合して測定します。送信機のアンテナ端子を直結で測定するなどもってのほか。あんがい良く知った風のOMサンがやらかしてますのでご注意を。(笑)  アンプの入力部分にダイオード(2つ)を使った保護回路を追加するのも良いでしょう。ただし保護回路は万能ではないので測定の注意は同様です。

 【プリアンプを試作
 恒久的に使うならユニバーサル基板にハンダ付けで組み立てるべきでしょう。 専用のプリント基板を起こしても良いのですが、何台も作るわけではないので・・・。 とりあえず回路の動作確認のためにブレッド・ボード(BB)に組み立てました。

 部品数もわずかですから簡単にテストできます。 組み立ての注意は「なるべく部品の足を短く」です。 高周波回路ですからリード線が必要以上に長いとうまく動作しません。 配線を短くコンパクトに組み立てると高性能化できます。 写真はあまり上手な例とは言えませんのでユニバーサル基板に組み立てる際はもっとコンパクトに作りたいと思います。

 【カウンタ基板小改造
 一箇所だけ基板側の改造が必要ですが、魔改造ではありませんから誰でも簡単にできます。 基板端面の水晶発振子の測定端子の上側にある「102」と書いてあるコンデンサを取り除きます。それだけです。(笑)

  もしクリスタル・テスタの機能も残しておきたい場合は、コンデンサを外した場所にピンソケットのような物をハンダつけしておくと良いでしょう。(写真) ソケットにコンデンサを戻せばクリスタル・テスタになります。 周波数カウンタとして使う時はコンデンサを抜いておけば良いわけです。 ここでは1列型のピンソケットをカットしてコンデンサがあった場所にハンダ付けしました。 センターのピンが邪魔なのでカットしておきます。 写真はそのソケットに「102」のコンデンサを戻した状態です。外付けのプリアンプを付加して周波数カウンタとして使うときには「102」を抜き去ります。

テスト-1・455kHz入力
 この周波数カウンタはなかなかよくできています。5桁の表示器をうまく利用するためにオートレンジになっています。

 この例では約455kHzを測定している様子です。写真のように999.99kHzまでは10Hzの分解能で測定できます。 また、99.999kHzまでは2Hzの分解能です。(1Hzではありませんでした。まあ、支障はないですけれど) このように、有効桁数が活かせるようにレンジが自動で切り替わり、それに連れて小数点の位置も変化しますから読み取る際には良く確認します。 なお、表示値がkHz単位になるときには小数点がブリンク(点滅)します。MHz単位のときはブリンクしません。

テスト-2・30MHz入力
 参照した説明書によると50MHzまでカウントするそうです。 詳しい確認はしませんでしたが、それくらいまで可能なようでした。 ただし周波数の上昇と共に感度は悪くなります。プリアンプのゲインが下がってくるのもその原因です。

 それでも周波数特性の良いトランジスタを使ったおかげで、30MHzも100mV(rms)以下の入力で十分カウントできるようです。 もしQ2に2SC1815のような汎用トランジスタを使うと高い周波数でがっくり感度が落ちてしまいます。高周波用トランジスタの効果が実感できます。
 30MHzあたりまで100mVの感度があれば、ほとんどのトランジスタ回路の発振周波数が測定できます。自作した発振器の周波数を調整すると言った用途には十分活用できるでしょう。

 10MHz以上の測定では最小分解能は1kHzになります。 やや物足りないところですが、これはやむを得ないところでしょう。 レンジがホールドできればオーバーレンジさせて下の桁を読むと言ったこともできるのですが、オートレンジしかないのでそれもできません。 330円のカウンタに多くを望むのは酷でしょうか。hi

                   ☆

 何でこのキットを作ったのかという話です。 しばらく前なのですが「短波ラジオの製作」を記事にしたいと言うようなお話がありました。でもそのお話はお断りしました。 たしか初心者向けの内容をご希望されたように思います。そうなると調整に使う「道具」が問題でした。 まさかシンプルな「短波ラジオ」を作るのに周波数カウンタや信号発生器(テストオシレータなど)を一式買ってくれとは言えませんからね。「短波ラジオ」は中波のラジオのようには行かないのです。

 幾らか工夫は必要ですが、満足に働く周波数カウンタが300円少々で手に入れば道は開けるかも知れません。加えてシンプルな発振器でも自作しその周波数が正確に読めれば信号発生器の代用品も得られます。道具さえ揃えば「短波ラジオ」の調整がちゃんとできるようになるでしょう。このキットにそれを期待しました。作ったあとラジオの周波数表示器としても使えますから。(ラジオのノイズ源になることがあって、良くシールドするとか使い方の工夫が必要になることもあります)

 こんなチープな測定器でも使いこなせば効果絶大です。逆にいくら高級な機器も有効に使わなければシャックのお飾りでしょうね。所有するだけでは価値は生まれません。手元の道具は有効に使いたいものです。これは自戒を込めて。(笑)

 何でも売ってる時代です。昔に比べれば、様々な測定器が安価に手に入る良い時代です。しかし入門向けの製作なのに測定器が何台も必要では製作意欲もそがれます。手作り+安価な市販品を道具として旨く活用し「ラジオ作り」が長く楽しめる趣味になって欲しいと思っています。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2020年6月21日日曜日

【回路】Audio AGC Amp.

MC3340Pを使った低周波AGCアンプ
 <Abstract>
I made an Audio-frequency AGC amplifier with MC3340P, an IC for electronic volume control made by Motorola. Even if the input signal changed by 60dB, the change in output was limited to only 6dB.
It would be suitable for a direct conversion receiver (DC-RX) or an Audio frequency amplifier for an Autodyne receiver. And it can also be used as a compression amplifier to increase the average power of the SSB transmitter.
 I bought MC3340Ps from China Mail Order, I received were all used, but everything worked fine. (2020.06.21  de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

MC3340Pを購入
 MC3340Pはモトローラ/ONセミ製の電子ボリウム用ICです。電子ボリウムというのは電気的に入力信号の大きさを加減することができる電子部品です。 これを使うと大きさを加減したいオーディオ信号などの配線を長く引き回すことなく、遠隔から、あるいは他の回路の出力のような電気的な手段で制御することができます。 なんでもリモコンで制御する時代なので、様々なICメーカーから同種のICが登場しています。 MC3340Pはシンプルで使いやすそうなので購入してみました。

                   ☆

 電子ボリウムは普通のボリウム代わりに使うこともできますが、それだけでは面白くありません。 ここで使った電子ボリウムは扱える信号のダイナミックレンジが広く、ゲインの制御範囲も広いことから低周波のAGCアンプの用途に適当そうです。 多くのダイレクトコンバージョン式受信機(DC-RX)やオートダイン受信機にはAGC(自動利得調整器)が付いていません。そのため、受信中の信号の近くで強力なローカル局がオンエアを始めると爆音状態になります。あるいはブロックされて無音になってしまうこともあります。手動でボリウムを加減すれが良いのですが、AGCアンプを付ければもっと扱いやすいでしょう。 低周波のAGCアンプは色々難しいことも多いのですが、制御回路の時定数など適当に選べばうまく使える可能性があります。 ここでは基礎実験として、MC3340Pを使った低周波のAGCアンプを試作してみました。 自家用の実験資料ですが、もしも暇を持て余しているようなら眺めてみてください。

 【中古品に違いない
 たまたまネットを散策していたらMC3340Pを使ったAGCアンプの記事が目にとまりました。 どんなICなのか調べたところ、外付け部品が少なくて使いやすそうなICでした。 他にも幾つか活用法が思い浮かんだのでさっそく購入してみました。

 国内のパーツショップでは見つけられなかったので例によって中華通販を利用します。 安価で売られていたのは良かったのですが、届いたものはすべて中古品のようです。 写真のようにハンダ付けの痕跡が残っていたり、足ピンがカットされていました。 安いので仕方がないとも言えますが、わざわざプリント基板から剥がして清掃するという手間をかけて割りに合うのでしょうかね? ちなみに10個で2ドル弱でした。幸い、簡単にチェックしたら全部支障なく使えそうでした。 こうした中古部品を販売目的の製品に使うのはどうかと思いますが、アマチュアが実験して遊ぶには何ら問題ないでしょう。

 【MC3340Pの特性
 MC3340Pの基本的な特性です。 2番ピンとGND間の抵抗値を変えると、右のグラフのようにゲインをコントロールできます。 ゲインをコントロールするのにボリウム(可変抵抗器)を使ったのでは、何だか意味がないなあ・・・と思われるかもしれません。

 しかし、このボリウム(図ではRc)には加減したい信号は流れていません。 配線を長く引き伸ばしてもブーンと言うハム(HUM)音の誘導はありません。 また、このRcは機械的なボリウムでなくてもよく、例えばFETのドレインとソース間の等価的な「抵抗」であっても構いません。  ボリウムをFETに置き換えてやり、FETの内部抵抗(ドレイン・ソース間抵抗)を電気的に制御してやればゲインが電圧によって制御されるようなアンプになるでしょう。

(参考)FETを使わずに、まず出力電圧を整流・平滑しOP-Ampで増幅した上で、その電圧によってMC3340Pのゲインを制御すると言った方法もあります。

【低周波AGCアンプの回路図】(Ver1.0.1)
 低周波AGCアンプの実験回路です。 ネットの探査で見つけた回路を真似ていますが、FETのコントロール部分を見直しています。ここがこの回路のキーポイントです。  オリジナルのままだと、信号の大きさによっては猛烈なハンチング(一種の発振現象)を伴うようでした。それでは旨くありません。

 こうしたAGCアンプは自動制御の一種なので、制御ループの時定数が適当でないと旨く動作しません。 使用するFETの伝達特性とも関係するので、Q1:2SK19Yを変更するなら時定数の見直しが必要です。 2SK19Yは廃品種ですが、同等品の2SK192AYがまったく同じ様に使えます。 MC3340Pの後段のアンプは40dBくらいのゲインが得られればなんでも良いでしょう。ここでは旧式なμA741Cを使っています。 単純な低周波アンプですから他のOP-Ampでも支障はありません。

 後ほど入出力特性のグラフがありますが、入力が60dB(1000倍)変化しても出力は約6dB(約2倍)しか変化しません。 ただし、自動制御ですから入力信号の大きさ変化に対して必ず過渡的な応答があります。 概ね受信機に良さそうな時定数に選んでありますが、実際の受信機に組み込んでから必要に応じて*1の部分を加減すると最適化できます。  現状では案外早く応答し、ややゆっくり戻る特性になっています。

 【AGCアンプを試作
 ブレッドボードに試作してみました。 ダイオード:D1とD2との結合コンデンサ、C5:0.33μFは漏れ電流のないものが必要です。 ここではマイラ・コンデンサを使ったのですが、巨大なのでイマイチでした。 良質な電解コンデンサか、タンタル・コンデンサに置き換えると良いでしょう。

 整流回路のダイオードはゲルマニウムの1N34Aを使いましたが、よく見かける1N60や1K60でも同じです。ゲルマ・ダイオードが手持ちに無ければシリコンの小信号用を使って試すのも良いです。多少出力電圧の大きさは変わりますが、同じようなAGC特性が得られるはずです。

 利得制御ループの時定数コンデンサ、C3:4.7μFはタンタル・コンデンサあるいは低リークな良質の電解コンデンサにします。 極性はGNDに接続される側が+(プラス)なので間違えないように配線します。  このコンデンサと直列の抵抗器、R2:100Ωは位相補償(遅れ補償)用の抵抗器です。 もし制御系がハンチングを起こすようなら幾らか加減してみます。小幅な加減で済むはずです。

 【入出力特性の測定
 測定器を見せても仕方がないのですが、電子電圧計(ミリバルとも称する)を使って入力と出力の関係を観測しました。

 測定に使う信号源は歪みの少ない1kHzの発振器を使いました。 入力信号の大きさを適宜変えながら出力の変化を観測します。

 MC3340Pは思ったよりもローノイズでした。 また入力は0.5V(rms) あたりまで加えられます。 従って十分に広いダイナミックレンジがあるので、入力信号の大きさが広範に変化するようなHAMバンド用の受信機にも適しているでしょう。

 【波形確認
 入力に10mV(rms)を与えた時の出力波形です。 OP-Amp. U2の出力で観測しています。

 このようにまずまず綺麗な波形が得られています。 入力電圧が0.5V(rms)を超えるあたりまでこのような波形が得られます。 こうした電子ボリウムをHi-Fiの用途にも使いたくなります。 写真のように見た感じ綺麗な正弦波で測定すると1〜3%程度の歪み率です。まずまず良好と言えます。 HAM用の受信機やAMラジオくらいならまったく支障はないのですが、純然たるHi-Fiの用途にはもう一歩歪み特性が良くないのが残念なところです。

 もちろんHAMバンドの、そもそもノイジーで歪んだ受信音なら十分すぎる性能なので受信機への採用に何も問題はありません。 むしろAGCアンプの付加でDC-RXも扱いやすくなれば本格的な受信機の地位が得られるやも知れません。(笑)

AGC特性は
 AGCアンプはグラフのような特性になりました。 入力の信号が1mV(rms)くらいからAGCが効きはじめます。 その後は1Vあたりまで綺麗に制御されるのがわかります。入力信号の60dB(1000倍)の変化を約6dB(約2倍)に圧縮できます。 どうやらMC3340Pのゲイン制御特性をうまく活かすことができたようです。

 DC受信機あるいはオートダイン受信機に使う場合、このアンプの前に20〜30dB(10〜50倍)程度のゲインを持ったローノイズなプリアンプを置くと良いでしょう。 例えば、2SC1815GRを1〜2石で作ったプリアンプなど適当です。 この低周波AGCアンプを出たところに受信音量を加減する(従来型の)音量調整用ボリウムを置き、さらにスピーカあるいはヘッドフォンを鳴らす簡単なアンプを付けてラインナップ完成です。 音量調節のボリウムをあまり頻繁に加減することなく受信可能な使い易い受信機が期待できそうです。

                   ☆

 MC3340Pはもともと低周波のボリウム・コントロールを目的に開発されたICです。 今回の実験のような目的には最適でしょう。 他に、送信機用のマイクコンプレッサのような用途もあります。 さらに、データシートを見ますと意外に周波数特性が伸びていました。 流石にHF帯は無理そうですが、おおよそ2MHzあたりまでフラットに伸びています。その上の方はだら下がりの周波数特性です。 したがって、AMラジオのような455kHzのIF-Ampに使い、広いAGC特性持たせると言った用途も十分考えられるでしょう。 むしろ、こちらの方向に興味を覚えたような感じです。 いずれ機会を見つけてIF-Ampへの活用も検討したいと思います。 では、また。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2020年6月6日土曜日

【回路】MECL Design notes (2)

ECL ICを使ったRF-PSNの製作
 <Abstract>
I use the ECL of a fast logic IC to make the 90° phase shifter needed to generate a PSN type SSB. It didn't work properly at first because it was built on the breadboard. Even though it was a logic IC, it was accompanied by an oscillation phenomenon.
The cause was unexpectedly simple, ECL-IC is an internal structure like an analog IC.    It's like a series of amplifiers, so it's prone to instability.    Put a bypass capacitor near the power supply and GND pins. It works stably if I even do it. (2020.06.06  de JA9TTT/1 Takahiro Kato )

MECL X-tal OSC 2
 まずは前回のBlog(←リンク)の続きです。使用したブレッドボード(BB)が適切でなかったため、配線が未整理でした。 改めて別のパターンのBB上にMECLを使った水晶発振器を組み立てました。 ピン配置の関係から、使うアンプを変更して部品配置を最適化しています。 ちょっとした修正で写真のようにスッキリしました。 後ほど変更後の回路図も掲載しておきました。

                   ☆

 モトローラ製のECL-IC、MECLを使ってPSNタイプのSSBジェネレータに使うRF-PSNを作ってみましょう。 MECLは既に廃れたロジック・ファミリです。 入手性は良くありませんので、お勧めはできませんが雑誌記事にもたびたび登場するので一度は試したいと 思っていました。 中華通販など使うことで必要なデバイスが手に入ったので実験を始めました。 例のコロナ禍によって部品到着が遅れたため実際にPSN-SSBエキサイタを使ったテストは間に合いませんでした。 まずはMECLを使ったRF-PSNを安定に動作させるまでを扱います。いつも通り、これは自家用の備忘録です。 かなりお暇なお方のみこの先にお進みを。 忙しいお方はこんなBlogを眺めるのはやめにして、今日という2度と来ない日をもっと有意義なことに費やしてください。

 【OSC Frequency
 発振周波数は3.6864MHzにしました。 既に扱ったPSNタイプSSBエキサイタ(←リンク)のキャリヤ周波数は930kHzでした。

 一番良いのはその4倍の3.720MHzですが、そう都合の良い水晶発振子は手持ちにはありません。 似寄りの周波数として、3.6864MHzのHC-49/USがあったのでそれを使いました。 今回は周波数調整用のトリマコンデンサもきちんと入れたので、写真のようにほぼジャストの周波数に調整することができます。

 しばらく通電して周波数変動の様子を見たのですが、30分間で2〜3Hzの変動でした。まずまず安定な発振周波数が得られるようです。 今となってはECL-ICそのものが特殊ですから、積極的に発振用に使うことも無いとは思いますが十分安定な発振器が作れることがわかりました。 周波数特性が良いことから数10MHz以上のオーバートーン発振も可能なので作ってみるのも面白そうです。 今回の目的には必要ないのでやめておいきますが、覚えておいて何かニーズがあったら実験しましょう。

 【MECL X-tal OSC 2 / Schematic
 前回の実験(←リンク)と基本的に同じなので、回路そのものは変わっていません。 ただし、BB上の部品配置が少しでも合理的になるよう、3回路入っている内部のアンプ・ブロックの使い方を変更しています。

 また、受端側の都合から出力回路を変更しました。2系統に分配しますが、どちらも終端インピーダンスが50Ωになるよう設計されています。 こちら側もそれに合わせた回路にしてあります。 今回は長い配線を引く必要がなかったので必ずしも50Ωで終端する必要もなさそうでしたが、少しでも良い波形でクロックが伝送できるよう万全を期すことにしました。 もっとも、組み立てがBBなのですからそもそも・・・なのですが。(笑)

 なお、R9:510Ωはこの発振部を単独でテストするときには必要です。 テストのあと90°移相器部へクロックを供給する際は除去します。 これは移相器の側に50Ωに終端するための抵抗器が付いているからです。

 使用しているMC10116Pはラインレシーバ用のICで、MECL10KファミリのECL-ICです。 いくらか詳しいことは前回のBlogに書きました。必要に応じて遡ってご覧を。



MECL RF-PSN / HJ No.45
 本題であるECL-ICを使ったRF-PSNの話です。 ECLを使った回路というと、左図のような回路が定番化しているようです。 過去の雑誌記事について調べてみたのですが、基本的に同じ回路でした。

 調査しても掴めなかったため、これは想像なのですが、おそらく外誌の記事にオリジナルがあるものと思われます。もし、何かオリジナル記事の情報でもあればお知らせください。

 この回路は外部の発振器をクロック源として使う前提になっています。 10dBmの入力があれば良いらしく、3dBのアッテネータを挟んでインターフェースしています。  インターフェース部分のMC10107は右の方にある±90°の位相切り替えに使う電子的なスイッチの余りを便宜的に使ったものであり、必ずしもこれをここに使う必要はないはずです。 ですから、今回のように水晶発振器をECL-ICで作れば直接フリップ・フロップをドライブできます。

 後ほど原理図を示しますが、回路はジョンソンカウンタを使った単純なものです。 ただし、それだけでは厳密に位相が揃わないため、出力パルスのエッジを揃える目的で出力部分にもD-FF/MC10131を追加してあります。 このようにすれば、ジョンソンカウンタだけで構成した90°位相器よりも高精度の実現が可能です。

 シンプルで良く考えられた回路だと感じます。ここではこの回路を踏襲して実験したいと思います。とりあえず、クロックの供給部分を除けば大きく変更する必要性は思い当たりません。 単純明快な回路なのですから、あえて変える意味はありませんね。

 【MECL Logic Symbols
 非常に基本的なことですが、MECLを扱うにあたってまず始めに馴染みのない論理記号が目にとまりました。

 論理記号の入出力端子には、何やら矢印のようなものが書かれています。 これは左図によって明らかになるのですが、黒い矢印が付いた端子は正論理、白抜きの矢印なら負論理という意味なのです。 ECL以外では見たことがないので戸惑いました。 しかしMECLの世界では常識なのでしょう。w  なお、多くのMECLデバイスは、2つ出力端子があって非反転の他に反転出力が付いています。これは差動回路の両コレクタから出力を取り出せば簡単に可能だからでしょう。

 また、論理レベルもTTLやC-MOSに馴染んだ者から見たら異常にさえ感じます。 これは、Vcc端子(+電源の端子)をGNDしていて、マイナスの電圧をVEE端子に与えて使っているからに他なりません。 正論理で言えば、論理「1」の電圧レベルは-0.9Vで論理「0」の電圧レベルは-1.7Vなのです。 確かに-0.9Vの方が-1.7Vよりも高いのですが、絶対値は0.9の方が小さいのでなんとなく混乱しそうになります。 これもECLの独特の世界なのでしょう。論理設計では「0」と「1」で考えて普通は電圧そのものを気にしなくても良いのかもしれません。もちろん正論理なのか負論理なのかは始めに決めて(考えて)おきます。

 なお、+電源:Vccの方をGNDにして動作させるのは理由があります。 ECLの回路構成では+電源側の電圧変動に弱いのです。ノイズが乗りやすいという意味でしょう。 そのためベタなGNDパターンを作って電位的に最も安定しているであろうそのGNDの部分を+電源の端子に接続して使う方が有利なのです。 必然的に電源のマイナス側の端子をICのVEE端子(一般に8番ピン)に配線して使うことになります。 もちろんECL-ICを数個しか使わないのなら、VEE端子をGNDして使っても大丈夫です。そんな時は+Vcc側の十分なバイパスを心がけノイズ混入に気を付ければ良いでしょう。

 ほとんどのECL-ICは出力回路が抵抗負荷のエミッタ・フォロワになっているのでワイヤード・オア接続が可能です。ECLの論理回路はOR/NORゲート回路を主体に使って設計するもののようです。TTLのようにNANDが基本なのとは勝手が違いますね。まあ、ド・モルガンの法則を適用すれば相互に入れ替え可能なので支障はないのですが・・。 入力インピーダンスは高くベース電流も少ないためファンアウトはたくさん取れます。入力端子の多くは-VEE間にプルダウン抵抗器が入っており、抵抗値は一般に50kΩのようです。 殆どのECL-ICは温度補償されたバイアス電源を内蔵しており、論理振幅はわずかに約0.8Vでそのバイアス電圧:VBBを前後して振れます。

 だいたいこう言ったところがECL-ICを使う上での常識的な話のようです。 使ってみると他にも「常識」があったのですが、それはまた後ほどにでも。

2bit Johnson Counter
 2ビットのジョンソン・カウンタのタイムチャートです。 図のようにD型フリップ・フロップを接続して共通のクロックを与えます。
 1段目のQ出力:QAと2段目のQ出力:QBはちょうど入力クロックの1周期分の遅れが現れ、これが出力の全周期に対して90°に相当する位相差になるのです。

  この位相差はクロックの周期が一定なら不変なはずで、 QAとQBの出力を使えば正確な90°の位相差を持った信号が得られるのです。 ただし、周波数は1/4になるので、必要周波数の4倍の周波数を持ったクロック信号を与える必要があります。 この回路の特徴を使ったのがデジタルなRF-PSN回路ということになります。

MECL RF-PSN Schematic
 クロック発生部を除いたデジタルなRF-PSN回路です。 実際の配線に便利なように、詳細な回路図にしておきました。

 論理「0」に保つべき端子は、すべて-VEEに接続するように書いてありますが、実際にはオープンにしたままでも動作はするようです。  それでも、きちんと処理した方が望ましいと考えて、実際にも-VEEラインへ繋いであります。入力端子のインピーダンスは高めなので、そうする方が安心でしょう。

 なお、この回路図にその例は1箇所しかありませんが、入力端子に論理「1」を与えたい時には注意が必要です。TTLやC-MOSのように電源の+Vccラインへ直結してはいけないのです。 そのまま直結しても動作するケースは多いようですが、確実な動作は保証されません。 論理「1」には必ず-0.9Vくらい「GNDレベル(=+Vcc端子電圧)よりも下がった電圧」を与えねばなりません。 この図で位相の切り替えスイッチの部分にダイオードが一つ入っているのはその電圧降下を得るためです。 電圧降下は-0.7Vでも大丈夫で、簡単にやるにはダイオードの順方向電圧分だけ落としてやります。 もし余ったゲートなどがあれば、その出力端子のうち論理「1」になっている所を利用するのも良い方法です。

 各フリップ・フロップに与えるクロック回路は:MC10131Lの9ピン直近で50Ωに終端しています。 これは少しでも綺麗な(確実な)矩形波で駆動するためです。可能であればクロック発生部との間は同軸ケーブルもしくは、ライン・インピーダンスが50Ωになるように設計したストリップラインで接続すべきでしょう。 基板化する際には考慮にあたいします。

MECL RF-PSN EX-View 1
 上記の回路図をブレッド・ボード(BB)にまとめました。 なるべく最短配線になるよう考えていますが、所詮はブレッド・ボードですから必ずしも理想的とは言えません。でも、まずまず綺麗に仕上がりました。hi hi

 電源ラインの各所にバイパスコンデンサを入れてあります。 またベースボード(底板)もGNDラインに接続して高速パルス回路が確実に動作するよう考えてあります。 それにクロック周波数はわずか3.6864MHzですし、一般的なRF回路ならこれでもう十分安定に動作するはずです。 が、しかし・・・。

 【Bad output wave form
 マトモに動作してくれません。 この写真はまだマシな方で、初めの頃はもっと酷いものでした。 まったく正常に動作してくれず、出力に現れるパルス波を観測すると理屈のようにクロック周波数の1/4とはならずかけ離れていました。ランダムにバラついており、まるでどこかで自己発振でも起こしているかのようです。

 クロックの配線部分で反射が起こって誤動作しているのかと思い、配線の途中にダンピング抵抗を挿入したりターミネーションの条件(終端条件)を変えてみたり・・・。 散々やっても言うことを聞いてくれないのです。まさかECLのデジタル回路ってこんなに難物だとは夢にも思いませんでした。(笑)

                   ☆

Add Bypass Capacitors
 どんなトラブルもそうですが、わかってみたら案外単純なものです。 それにその理屈は後から幾らでも付いてくるものでしょう。

 極意は電源端子:+Vcc1(大半は1番ピン)と-VEE端子 (大半は8番ピン)の間に、最短でバイパス・コンデンサを入れることです。 写真ではグレーの角型の部品がそれで、この例では主にロジック回路でバイパスの目的に使うタンタル・コンデンサが入れてあります。
(多くのECL-ICには電源ピンVccが2つあります。そのうちVcc1の方が効果的です。Vcc2に入れても効果は見られません。これは内部回路から考えても当然でしょう)

 はじめ誤動作の主原因は集積度の高いフリップ・フロップ:MC10131L(ここではより高速なMC10H131Lを使っています)だろうと思ったのですが、それだけでは完全ではありませんでした。 位相の切り替えスイッチに使っている:MC10107Lにも必要でした。 また、このBlogの最初のようにクロック発振器もそれ単独の観測では問題なさそうでしたが、実際には同じようにする必要がありました。回路全体で動作させると時折誤動作が見られたのですが、それがピタリとおさまります。

 だいぶ回り道をして得られた使い方の秘訣なのですが、これさえ行なってやれば他の論理回路ファミリと同じくらい安定に(確実に)動作してくれます。ブレッド・ボードでも。

 【Change to Ceramic Cap.
 ECL-IC個々に入れるバイパス・コンデンサは上の写真のようにそのままタンタル・コンデンサでも良さそうです。 ただしここで使ったコンデンサは少し特殊な物のようでした。

 ごく一般的な積層セラミック・コンデンサでも大丈夫なのか確かめました。 写真のような積層セラコンに交換してみます。

  積層セラコンのほかに円盤型セラコンでも試しましたがいずれでも大丈夫そうです。 なお、容量は0.1μFです。 回路図にはあらためて書き加えませんが、バイパス・コンデンサを必ず直近に入れておきます。

参考:むかしお仕事でECL-ICを使っていたと言う友人によると、各ICごとに10μFと0.1μFのパスコン入れてたそうです。その頃でも4層基板だったとのこと。(追記:20200609)

 【MECL RF-PSN EX-View 2
 まずは安定に動作させることに腐心してしまい、実際にPSN-SSBエキサイタに使って性能確認するまでには至りませんでした。

 ちょっと見たところでは最初の方の写真とあまり違いませんが、個別バイパス・コンデンサの効果は絶大で、たいへん安定して動作してくれるようになりました。 やっと各部の動作を確認できる状態になったのです。

 冷静になって考えてみると、ECL-ICというのは差動増幅器のかたまりのようなものです。 それを多段に渡って接続するのですから、アンプの従続接続のようなものでハイゲインになるのでしょう。しかもかなりの高速・広帯域回路です。 ECLも確実なバイパスがあってこそ正常な動作が期待できるのだと納得しました。

 完全な動作のためにはできたら両面基板を使い、裏面はグランドプレーン(ベタGND)にする必要があるでしょう。 その上で、Vcc端子、特にVcc1端子とVEE端子の間に最短距離でバイパス・コンデンサを配置すべきです。 これは個々のECLチップごとに行なう必要があります。 過去に試してうまく行かなかった経験があるなら、再度見直してチャレンジする意味はあるかもしれませんね。

 【Good output wave form
 相変わらずきちんとしたプローブ・チップを付けていないのでプローブのGNDリード線に起因するリンギングが波形に見られます。

 それは差し引いて、まずは観測波形はマトモそうになりました。 ここまで持ってくるまでにはだいぶ苦労しましたが実際に作ってこそ得られるものがあったと思います。

 気になったので過去の雑誌記事など読み返したのですが、こうしたECL-ICの扱いに関して配慮が見られたのは1例だけでした。(バイパスコンデンサに関する言及はありませんが、配慮は感じられた記事です) あとは単に回路図を掲載しているだけに過ぎません。この辺りは「常識」として片付けているのかもしれませんけれど・・・。 ユニバーサル基板に実配線で作ってはみたものの案外期待外れだったと言うような実験例も多いのかもしれませんね。

 これから試すならECL-ICを使う上での勘所はわかったので成功の確率は高くなったかもしれません。 専用基板を起こすのが理想ですが、片面がGNDメッシュになったユニバーサル基板に作っても良いでしょう。その上で、バイパス・コンデンサに留意します。 PSNタイプSSBエキサイタで実験するにはブレッド・ボードを脱却した方が良さそうです。 ナマ基板にデッドバク・スタイルで製作というのもアリでしょう。(笑)

Output Frequency
 Digital 90°移相器の出力周波数を確認してみました。 もちろん、水晶発振器の1/4になっています。 周波数安定度も良好で、もう不安定な挙動は感じられません。

 作ってみた当初は「これはダメかも」と思いました。 中華通販で購入したMECLですから、そもそも不良品なのかも・・・なんて疑ってもみたのです。 しかし、単にECL-ICの扱いに不慣れだっただけで、きちんと使えば問題などないのです。 中華通販でちゃんとした部品が届いたことの証明にもなりましたね。 ユーザーの不慣れで不良品扱いされたら可愛そうでした。(笑)

                   ☆

 改めて、こうしたデジタルICを使った90°移相器について考えるとなかなか厳しい条件で動作していることがわかります。 例えば、いま必要とするキャリヤ周波数が1MHzだとしましょう。1MHzの1周期は1μ秒です。そして位相の回転は1μSで360°と言うことになります。 求める位相誤差が90°に対して±0.1°だとすれば、許容される時間誤差は1周期の3600分の1ということになります。
 これを実時間で言えば、1μS/3600= 0.0002777・・・(μS)です。 これは≒278pS(ピコ秒)ということですから、スイッチング速度が約2.5nS(ナノ秒)=2,500pSのMECL10KファミリのECLでさえかなり厳しいはずです。 同一パッケージ内に入った2つのフリップ・フロップでさえ、スイッチングのタイミングがどこまで揃うかはわかりません。おそらく数pS〜数10pSの違いはあり得るでしょう。

 上記の考察は1MHzのものです。 いきなり周波数を10倍にしたのでは飛躍し過ぎかもしれません。しかし、実際に数MHzの周波数でPSNタイプのSSBを扱うケースは多いものです。あながち誇張し過ぎとも言えないでしょう。
 そこで、もしキャリヤ周波数が10MHzだったとすれば0.1°の誤差から許されるタイミング誤差はたったの27.8pSということになります。 この27.8pSと言う時間は実感できますでしょうか? 電線中をパルス波が進む距離はたったの6mmほどです。 電気って案外のろいんですね。w(真空中なら8.34mmですが電線やプリントパターン上では約70%の速さに)

 10MHzではたった6mmの配線長の違いが問題になります。 もはや2つのフリップ・フロップのスイッチングタイムがどこまで揃うのかあまりアテにはならないかも知れません。 今更ながらデジタル式の90°移相器は厳しいことがわかります。もっと周波数が高ければ一段と・・・。 逆に1MHzならかなり楽な周波数だったとも言えそうなのです。
 ECL-ICですらこれですから、LS-TTLやHC-MOSではもっと厳しいです。 さらに悪いことにそれらICの出力パルスは前縁のライズタイム:trと後縁のフォールタイム:tfが揃いません。 これはデバイスの内部構造上やむを得ませんがtr/tfに関しても、ECL-ICの方が幾らかマシなようです。

 結局のところ、デジタルなRF-PSNなのになぜか位相誤差が残ってしまい、アナログな手段(姑息な手段?・笑)で微調整して逃げたなどという笑うに笑えない結末も十分あり得ます。HC-MOSで試作した時はまさしくそんな感じで誤魔化してしまいましたね。(笑)

 それくらいでしたら、やや不安定で確実性に欠けるかもしれませんが、すでに実験したようなアナログな・・・L/C/RあるいはR/Cを使った・・・RF-PSNでも十分なのかも知れませんね。調整で追い込めるメリットがありますから。 デジタル式は複雑な回路と大きめの消費電力に見合っていなようにさえ感じてしまいます。 理屈から言えばデジタルなら完璧な90°が得られるはずです。しかし部品のバラツキや有限な配線長が存在する限りなかなか理想通りとはならないのが現実の世界なんです。(笑)

最後は何だか難しい話になってしまいましたが、続きはまたいつか。 de JA9TTT/1

(つづく)fm