2024年12月1日日曜日

【回路】Audio Filter Design : Supplements

シンプル・低周波フィルタの設計:補足編

Introduction
This blog is a quick guide to electronic equipment using filter circuits.
First, I'll look at how we can protect electronic equipment from external stresses.
Even the best semiconductors, like ICs, can be damaged by unusual currents and electrostatic discharges caused by differences in potential between devices.
It's always important to have protection in place, and of course It don't affect the input and output signals.
The easiest way to do this is to put resistors in the input and output sections.
I'll show you this with some practical circuit examples. I'll also explain other power supply circuits. And I'll also look at some other uses for filter circuits.(2024.12.01 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

フィルタの実用には・・
 Blogの目的は自身の備忘ですから自分でわかっていることを必要以上書く意味はないわけです。 しかし時間の経過とともに忘れて行き何故そうしたのか初めの意図がわからなくなることがあります。 自分で設計した回路を見ても・・・ハテと思い出せないこともあるのです。

 もちろん齢とともに物忘れしやすくなったと言うのもあるでしょう。しかし誰しも半年も過ぎたら細かい記憶が薄れてきても不思議ではありません。そのためになるべく細かくメモを取ってはいるのですが・・・。
 前回のBlog(←リンク)で設計した3D-Audio用のフィルタですが、わかって使えば支障はありません。しかし後からいくらか補足すべきだったことが思い浮かびました。 忘れないよう早めにメモっておくのが今回のBlogの目的と言ったところです。 なお、後ほどシンプルな電源回路が登場しますがこれは読者サービスです(笑)

 写真はフィルタ用のICで、今回の話に直接の関係はありません。 始めの部分に何にも絵がないと寂しいので載せています。 FLT-U2(←リンク)とMF10CCN(←リンク)は扱い済みです。MAX7400はまだBlogで扱ったことがありません。

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 ことし(2024年・令和六年)もついに師走になってしまいました。光陰矢の如し、1年って早いものです。 あれほど酷暑だった今夏も既に過去のこと。  忙しい年末です。こんなBlogを眺めてウロウロしていても進みませんよ。w さっさと年越しの準備でも済ませておヒマができたら改めてお出かけください。冬至も近づき日も短くなってきました。諸事お早めのスタートがです。

ローパス・フィルタ:その1
 ローパス・フィルタの回路図です。

 フィルタとしてしては、前回のBlogで扱ったママです。 基本的にそのままで良いのですが、入力と出力の部分に保護抵抗を付けてあります。 #1と#2と付いている抵抗器がそれです。

 何かの回路の途中に「アクティブ・フィルタ」として挿入するのなら「保護抵抗」は必要ありません。

 3D-システム用のフィルタ装置のように独立した機器として製作し、オーディオ機器の間に入れて使う場合は保護を設けておくべきです。

 #1と付いた抵抗器が入力保護用です。 何もなしにOP-Ampの入力端子を外に引き出しておくと壊れる危険があるのです。 特にRCA型のフォノ端子を使っているとかなり危ないです。この端子は先端のピン部分が最初に接続される構造です。 シールド部分(GND側)が先ならまだ良いのですが・・・。 接続する機器の間で電位差があると繋いだ瞬間にやられる可能性があります。 また静電気のディスチャージも怖いのです。

 #2は出力側の保護抵抗です。 昨今のOP-Amp.は出力を瞬時短絡した程度で壊れることはまずありません。 しかし、機器間の電位差などにより数10mAも流れたら壊れます。 100Ωの抵抗で万全なのかと言われると困りますが何も入れないよりも随分強くなるのは間違いありません。入れてあれば壊れる危険は相当程度回避できるのです。 負荷の状況如何ですがもし可能なら1kΩくらい入れたいところです。

 真空管の時代はこうした心配はありませんでした。 グリッドに繋がっている入力端子を経由して球が破損することなどまずありません。
 しかしOP-Amp.のようなICは内部の構造が極めて微細です。 同じ半導体でもトランジスタなら大丈夫だったアクシデントもICは微細で脆弱ですからちょっとした電流や静電気で破損する危険性は高いのです。 本当はもっと本格的な保護回路を設けたいところなのです。
 しかし煩雑になるのと何がしかオーディオに影響が出ることを嫌って「最低限の保護」にしています。 まずは機器どうしのGND系を接続し、それから信号系の配線を繋ぐことを前提にしたいと思っています。

参考:-18dB/octの回路として(C)と(D)の2種類が載せてあります。 先に低次の-6dB/octを置く方がフィルタとしてのダイナミック・レンジが広くなります。 S/Nの点では(D)の方が幾らか有利という考えもあるので優劣は考え方次第だと思っています。 フィルタ特性は(C)と(D)で同等です。好みで選んでください。 私はどちらかと言えば(C)を選びます。

 これらの回路はいずれもフィルタ回路を±15Vの電源で働かせる例を示しています。

ローパス・フィルタ:その2
 同じくローパス・フィルタの回路図です。

 基本的に一つ前の回路と同じですが、この例では+24V〜30Vの単電源で製作する例を示しています。 電源トランスの事情や他の機器から電源を分けてもらう都合などにより、単電源で動作できたら有難い・・・と言った場合に適しています。

 前の回路でも設けてありますが、信号が入ってすぐの部分にOP-Amp.を使ったバッファ・アンプ(ボルテージ。フォロワ)が入れてあります。 これは必須のアンプです。

 いずれのフィルタ回路も前段回路の出力インピーダンスが低い(ほぼゼロΩ)ことを前提として設計されているからです。 そのため、きちんとした予定通りのフィルタ特性を得るためには前段にバッファ・アンプを設ける必要があります。

 単電源(片電源)で働かせるために電源電圧の半分に相当する直流的なバイアス電圧が掛かるようにしてあります。 アンプの入力部にある220kΩ(2本)がそのバイアス用抵抗器です。 入力インピーダンスは概略110kΩになります。

 電源電圧にはかなり自由度があります。+9V程度の単電源でも働きますが、それだけ扱える信号の大きさは小さくなります。+9Vでは3Vpp程度が上限でしょう。 それさえわかっていれば低い電源電圧でも支障はありません。 上限はOP-Amp.の耐圧で決まり、一般的に電源電圧はトータルで+30Vまでです。それで24Vpp(≒8Vrms)くらいまでの信号が扱えます。 稀に高耐圧が特徴のOP-Amp.もあって、より大きな信号を扱いたいならそれを使うと有利でしょう。

ハイパス・フィルタ:その1
 ハイパス・フィルタの回路図です。

 ±15V電源で作る場合を示しています。 ローパス・フィルタとほとんど同じ部品点数で製作可能です。 設計周波数:Fc=70Hzになっていますが、もちろんこれは一例であって、前回のBlog(←リンク)の設計式に従って他の周波数に変更できます。

 あとは取り立てて言うまでもないのですが、入・出力保護やバッファ・アンプの要件もローパス・フィルタと同じです。

 ハイパス・フィルタの使用例は意外に少なくて、世間ではローパス・フィルタの方が圧倒的に多用されていると思います。 これは回路や増幅素子の非直線性によって発生する高調波を除いて歪みや広帯域のノイズを減らしてS/Nを向上させると言った用途があるからでしょう。 またA/D変換の前にはローパス・フィルタが必須という事情もあります。

 ハイパス・フィルタは意外に理想通りではないことが多いものです。 これは、OP-Amp.で作ると高い周波数の特性がアンプ自身の周波数特性で制限されるためで、意外に低い周波数からゲインが下がってしまいバンドパス・フィルタのようになってしまうことがあります。 なるべく周波数特性の良いOP-Amp.を使う必要があります。 このハイパス・フィルタはSallen-Key形式なので同じOP-Amp.を使った他形式と比べて有利と言えます。

ハイパス・フィルタ:その2
 同じくハイパス・フィルタの回路図です。

 この例では、+24〜30Vの単電源(片電源)で設計しています。 機能的には±電源で設計したものと同等ですが、ご覧のようにだいぶ部品が増えてしまうことがわかるでしょう。 これはいずれもバイアス電圧を与えるためで、単電源で動作させるため止むを得ないのです。 こうした措置は真空管を使ったハイパス・フィルタでも同様にあったことですが、ローパス・フィルタと違ってどうもスッキリしません。

 電源の都合でどうしても単電源で作りたい場合は止むを得ませんが、新規に電源から作る(用意する)なら±電源を作った方がスッキリしますし、たぶん製作もしやすいでしょう。

 入・出力保護に対する考え方はここまでのフィルタと同様です。 独立した機器として製作する場合には設ける必要があります。

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Power Supply Circuits
 Blogの記事では電源部を省略することが多いのですが、せっかくの製作も電源回路(電源部)の例示がないのは残念だと感じるお方もあるようです。

 電源部は出力電圧と電流容量こそ様々ですが回路の共通性があって、毎回新規に設計する必要のない場合が多いものです。 半導体回路の場合はだいたい電源電圧は決まっており、電流容量もパワー・アンプを除けばごく小容量で済みます。 従って製作は難しくありません。

 回路例は±15Vの電源と、+24Vの単電源を作る2つの具体例です。 電流容量はせいぜい100mA程度を考えており小規模の付加装置には十分でしょう。 今ですから特殊な用途を除き、三端子レギュレータを使って安定化電源を作るのがベストです。 その際ですが専用の放熱器は省いても良いのでシャシへ放熱する工夫は是非とも必要です。 まったく放熱なしでは、たったの100mAでも熱的に厳しいことがあります。 レギュレータICを取り付ける際は放熱シートを挟むかシリコーン・グリースを塗布して熱抵抗を下げるように努めます。

 整流用のダイオード・ブリッジは、初めからブリッジ回路になっている専用品があります。 それを使うと便利ですが、なければ100V1Aくらいの規格のダイオードを4本使ってブリッジ回路を組む方法もあります。 例えば1N4002を4本使うとか・・・

 電源トランスの電流容量をアップしレギュレータICの放熱を十分行なえば1A程度まで同じ回路で製作できます。 なお、最近は電源トランスを含め電源部品のコストが高騰しています。 ある程度大き目の電流容量が必要なら超ローノイズなスイッチング電源も登場しているのでそれを購入する方が経済的かもしれません。 特に電源トランスが高くなったのには驚かされます。 さりとて中華モノは・・・。(笑)

電源モジュールの写真
 既に廃れていますが昔は写真のような電源モジュールが市販されていました。 これらはいずれもローノイズなシリーズ電源です。 AC100Vを加えれば±15Vと言ったDC電圧が得られる便利なパーツでした。

 上面から見るとハガキ半分くらいのサイズでせいぜい数ワットの容量です。 電源トランスを内蔵しているのでズシリと重いのが特徴です。 小規模なOP-Amp.回路を動作させるには便利だったのですが・・・。

 いまどき望んでも手に入りませんので、何らかの工夫をして既製品のSW電源使うか部品を集めて上記回路図のようなを電源装置を作る(組み込む)ことになります。 電源は簡単に作れそうに思っても意外に面倒な部分でもありますね。 電源の製作が目的なら別ですが、一般に造るハリアイもあまりありません。 モジュールがあったら使いたいという気持ち良くわかります。

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 さて、書き忘れていたこと、回路の保護について、電源の話しなど赴くままにメモっておきました。 これでオシマイなのですが、フィルタ関連の資料を見ていたら面白い実験回路を見つけました。 部品数が意外に多いと感じますが実用的に使えそうな感触が得られたので以下紹介しておくことにします。 「ユニバーサル・フィルタ」と称するものです。

ユニバーサル・フィルタ回路図
 ますは回路図をご覧ください。

 回路の基本は典型的なステート・バリアブル型フィルタ(状態変数型フィルタ)です。

 フィルタのQを可変しやすく工夫したところが面白い部分です。 回路そのものは状態変数型フィルタですね。

 この回路はフィルタとしてローパス、ハイパス、バンドパス、ノッチの4種類のフィルタとして機能します。 同一回路が多様なフィルタとして使えるのが特徴です。 それぞれハイパスとローパス・フィルタは-12dB/octの傾斜です。OP-Amp.の数は多いですが特に傾斜が急峻でキレが良いわけではありません。基本的に-12dB/oct(=-40dB/dec)のフィルタです

 Qを変えると周波数特性の肩部分にできるピークの大きさを変えることができます。 カットオフ周波数:Fcにあまり影響を及ぼすことなくQを可変できるのがメリットです。 なお、先のLPFやHPFの設計で出てきたダンピング係数:ξは、ξ=2/Qの関係があります。

 もう一つの特徴はスイッチの切り替えで簡単に「正弦波の発振器」に変身できることです。 スイッチでフィルタがそく発振器になります。 振幅制限にダイオードの順方向特性を使ってクリップしている関係で超低歪ではありません。 またダイオードの温度係数が現れるため振幅の温度安定度もあまり良くはありません。 しかしAGCのような時定数を持った発振振幅の制御回路を使っていないため超低周波の正弦波発振が可能です。1Hzとか0.1Hz・・・0.01Hzの正弦波も発振できます。 たぶんそれ以下も・・・。

 発振周波数は:f=1/(2・π・C・R)で計算できます。 CはC1とC2の大きさで、RはVR1a,bの大きさ+1kΩです。 VR1a,bはBカーブの2連型を使い周波数の可変に使います。

 ノッチ・フィルタを使うことがなければ4回路入りのOP-Amp.一個で作れます。U2を省略します。 なお、発振回路にしたとき、Qを変えるVR2で発振の大きさ(振幅)を変えられます。 振幅を大きくしすぎると電源電圧による制限で正弦波の頭の部分が潰れます。 オシロで波形を見ながらVR2を加減します。

フィルタの外観写真
 試作の様子です

 4回路入りのOP-Amp.は回路図通りTL074CNを使いました。 2回路入り:U2は手近にあったTL062CPを使いましたが、もちろん回路図通りTL072CPでも大丈夫です。

 振幅制限のダイオードは1S2076Aを使いましたがシリコンの小信号用スイッチング・ダイオードなら何でも大丈夫です。 1S1588、1N4148、1N914、1SS178ほかたくさん代替品があります。

 周波数の高い方はだいたい20kHzくらいが限界です。より高い周波数で使いたい場合は高速OP-Amp.を選びます。 低い方の制限はおおよそコンデンサ:C1とC2の容量値で決まります。 やっていませんが0.01Hzといった正弦波も十分発振可能でしょう。

発振波形:1kHz
 LPF Output端子:OSC2で観測した発振波形です。

 発振の大きさは27Vppでこれ以上では歪みます。 VR1a,bを加減して発振周波数が約1kHzになるよう合わせています。 波形を見る限りかなり綺麗な正弦波ですね。 VR1a,bで発振周波数を変えても発振の大きさはあまり影響を受けません。

 状態変数型フィルタ/発振器の多くは、OP-Amp. U1aの非反転入力端子:Pin 3へ正帰還する回路が多いようです。 上図のように反転入力:Pin 2へ信号を反転してから帰還しても良いわけです。 但し信号が多段のアンプを通る関係であまり高い周波数の発振には向きません。低い方の制限はほとんど無いはずです。 目的によっては使い勝手の良い正弦波発振回路でしょう。

歪み率測定
 せっかくの機会なので歪率を測定してみました。

 発振周波数が約1kHzになるようVR1を合わせます。VR2で振幅が約27Vppになるよう調整しました。 Qの大きさで発振振幅を加減している関係から、なるべくHigh-Qになるよう・・・波形の頭がクリップしない範囲で振幅が大きくなるように調整した方が低歪になるようでした。 その状態で観測した歪率は約0.24%です。

 このBlogには超低歪み発振器(←リンク)があってそれは0.001%と言った値です。 それから比べたらずいぶん大きな歪に感じるかもしれません。 しかし一般に良く見かける正弦波発振器は1〜3%くらいの歪みなら良い方です。 比べて0.24%なら低歪みと言っても良いくらい。 なお、振幅の制御がダイオードによるクリップ式なのでOP-Amp.を変えてもそれほど低歪みは期待できないでしょう。

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 低周波帯のフィルタ繋がりでBlogを追記しました。 フィルタ特性の設計部分は前回のBlogで済んでいますが装置として完成させるには幾らか考慮すべき事柄が残っていました。 少なくとも壊れないための対策は必須なわけです。 気になった部分でもあるためさっそく追記しておくことにしました。

 これはおまけの内容ですがアクティブ・フィルタの関連で資料を当たっていたら面白いフィルタ回路が目にとまりました。 Bi-Quad型と並んで状態変数型フィルタはアナログ回路技術としては十分ポピュラーな存在です。 一つの回路で様々なフィルタ特性が得られることも皆さん良くご存知でしょう。 それを独立した実験用補助装置として製作しおくと意外に役立つように感じます。 多機能なフィルタとして便利ですし、ちょっとした正弦波の発振器が「特殊部品なし、難しい調整なし」で作れますからなかなかオススメです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2024年11月16日土曜日

【回路】Audio Filter Design : Simple

シンプル・低周波フィルタの設計

Introduction
Do you think designing filter circuits is difficult?
There are many different types of filter circuits. Some of the more sophisticated ones can only be designed with sufficient knowledge and mathematical skills.
However, the filter circuits needed for general audio circuits and the radios used by HAMs can be easily designed.
In this blog, I'll show you how it's done with a simple example.(2024.11.16 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

OP-Ampで低周波フィルタを
 「低周波」に限ったとしても、フィルタ回路の世界はあまりにも広いのです。 設計自体は汎用ですが、ここでは一例として3D Audio用のフィルタをお題にして簡単なフィルタ回路を設計しましょう。

 なんでも手っ取り早いことが尊ばれるような昨今では、自らじっくり設計・製作してみたいという人は稀になっているのかもしれません。 もちろん希望にマッチするような既製品やキットの類が容易に手に入るなら何も苦労して設計する必要はないのでしょう。 タイパも含めて経済性も優れている筈です。

 でも、それだけに頼ってしまうと自身が必要とする仕様にマッチした「便利な既製品」が存在しなかったらお手上げです。 極めて高度なフィルタは難しいとしても、シンプルな範囲で設計できるだけでもかなり有利ではないでしょうか? 一般的な回路・・・例えばラジオやオーディオ機器ならそれほど高度なフィルタは必要ないものです。 たいていシンプルなもので済むことがほとんどです。 いきなり数字を出して恐縮ですが、オーディオ回路なら-18dB/octより急峻なフィルタが必用になることはないでしょう。

 さっそく自家用のまとめ情報としてOP-Ampを使った低周波フィルタを設計してみましょう。 少し前のBlog(←リンク)で扱った3D-Audio System用のチャネル・フィルタを例にします。 写真はオーディオ・フィルタによく使われる真空管:12AT7とオーディオ回路に向いたOP-Ampの具体例です。

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 電子機器を回路設計、部品集め、必要に応じて基板設計まで行なって製作する人はもう稀なのかもしれません。 そうした可能性がぜんぜんない人がこの先を眺めても時間の浪費です。 今日という一日を是非とももっと有意義なことにお使いください。 しかしフィルタ回路に興味があったり、たったいま簡単なオーディオ・フィルタが欲しいのでしたら何かヒントが得られるかもしれません。

3D-Audio System用フィルタ
 さっそく回路図です。

 この回路は3D-Systemを構成するために必要なチャネル・フィルタです。 ステレオ・オーディオの左右のチャネルからごく低域の・・・この例では70Hz以下の成分を取り出すためのフィルタです。

 既存のオーディオ・システムに付加することを目的に設計しました。 いま使っている左右のスピーカは再生帯域があまり低い方まで伸びていないとしましょう。 だいたい8〜16cm程度のフルレンジ・スピーカを使っているようなシステムです。

 左右のチャネルの信号は70Hz以上を通すような高域フィルタ(HPF)を通過します。 そのあとはメイン・アンプに導かれて左右のスピーカを鳴らします。
 また左右のチャネルが干渉しないよう混合され、そのあとで70Hz以下の信号のみ通すような低域フィルタ(LPF)を通過します。 その取り出された低域の信号は、低域専用のパワー・アンプへ導かれ、低音再生用のスピーカ、・・・サブウーファを鳴らします。

 このフィルタは増幅度:ゲインは1倍です。 既存のステレオ・システムのプリアンプとメインアンプの間に入れて使います。 扱うオーディオ信号の大きさは平均値で0.1〜1V(rms)程度を想定しています。

 これよりも小さいとS/N比が悪くなります。 また10V(rms)といった大きな信号は歪むので注意します。 しかし、標準的なオーディオ・システムでしたらそのまま接続できる筈です。

もちろん管球式アンプを使ったオーディオ・システムでも大丈夫です。 もっとも管球式でしたらフィルタも真空管で作る方がそれらしくて良いかも知れませんが・・・

 部品は容易に手に入るものを選んでいます。 OP-Ampは回路図のTL074CNに限らず、オーディオ回路に向いたものでしたら何でも大丈夫です。 最初の写真にあるようなNE5532P、NJM4580、LM833Nなど、いずれも安価で十分な性能を持っています。 もちろん、コダワリのオーディオですからもっとAudio向きのOP-Ampを使うのも良いでしょう。 気休め以上の効果が期待できるかも知れませんので。

 できるだけ経済的に済ませたいなら4558型も思った以上に良好です。 外付け部品を増やせばLM358NやLM324Nも使えなくはありません。しかしこれらチープなOP-Ampはオーディオに於いては何もメリットを感じられませんね。やめておきましょう。

 コンデンサと抵抗器は精度が必要です。 特にコンデンサに課題があって、1%精度といった高精度品を購入するか±10%精度の一般市販品からLCRメータやインピーダンス・ブリッジを使って選別します。 測定器さえ持っていれば(手間はかかりますが)かなり経済的です。(参考:電源のバイパス用コンデンサと入・出力部分の1μFは高精度の必要はありません) 
 抵抗器は1%精度の金属皮膜型が普通に買えますので問題ないでしょう。 できたらカーボン抵抗器はやめるべきです。

参考:(交叉周波数Fcの変更方法)
回路図で下記のコンデンサの大きさを変えると現状の約70Hzの交叉周波数:Fcを変更することができます。交換するコンデンサは以下のものです。必要数は10本です。
C2,C3,C4,C6,C7,C8と、C11(ただし2本並列にする)、C12(ただし2本を直列にして使う)
なお、各抵抗器の値はそのままで大丈夫です。
C=0.033μFではFc=86Hz、C=0.027μFでFc=105Hz、C=0.022μFではFc=130Hzになります。 回路はそのままで、ご自身のスピーカ・システムにマッチするように変更できます。

 電源回路は含んでいませんが簡単に作れます。 プラス・マイナス15Vの電源で電流容量は100mAくらいあれば十分です。 15Vx2で0.5A程度の電源トランスとブリッジ・ダイオード、1000μF/35Vの平滑コンデンサ(2個)、あとは三端子レギュレータ:7815と7915があれば作れます。 実際には100mAも必要としないので既存の機器から分けてもらえるかもしれません。

フィルタ特性と簡略設計法
 上記の例では70Hzで設計しました。 しかし自身のシステムの都合で他の周波数に変更したいこともあるでしょう。
 例えば、私の10cmフルレンジ・スピーカのようにサブ・ウーファには120Hz以下を受け持たせないと旨くないのだ・・・とか、或いはアマ無線での用途でしたらマイクアンプに2.7kHzのLPFをいれたい・・・と言ったような場合です。

 まず、フィルタの特性ですがグラフのようになります。 抵抗器:Rとコンデンサ:Cが各1つの最も簡単なフィルタの場合、-6dB/octの特性になります。
 これは周波数がオクターブ、すなわち2倍になると、出力は-6dB・・・約半分に低下すると言う意味です。 同様に-12dB/octは2倍の周波数で-12dB・・・約1/4に、-18dB/octなら2倍の周波数で約1/8に低下する特性です。

 なお、一般にフィルタの急峻さはXdB/octで表すことが多いのですが、10倍の周波数における減衰量:YdB/decで表す例も見ます。 decというのはDecade(10倍)という意味です。 グラフには両方を書いておきました。

 RとC一つのフィルタを多段に重ねれば急峻なフィルタができそうに思うかも知れません。 しかし、それではうまくないのです。 設計遮断周波数:Fcのところで(-3dB)+(-3B)=-6dBになってしまいます。 Fcは-3dBの周波数を言う訳ですから単純に重ねたら遮断周波数が変わってしまいます。 そのため、-6dB/octのC-Rフィルタを多段に重ねるのではうまくないわけです。(方法がないわけではありませんが、R-Cのみで実現する方法はかなり煩雑です)

 そうした前提で、左図に正しい-12dB/octあるいは、-18dB/octのフィルタを設計する計算式をメモっておきました。 フィルタが必要になったら思い出して使おうと思います。

 ・・・と、サラッと書いておしまいでも良いのですが、設計の勘所を書いておこうと思います。 コンデンサや抵抗器が任意に選べるなら良いのですが、そう都合良くは行きません。 よほどの量産品なら部品を特注で作ることが可能かも知れませんが普通はE系列(←参考リンク)の標準品から選ばなければなりません。 特にコンデンサは自由度が少なくて、なるべくE6やE12系に基づく標準品から選ぶ必要があるのです。

 上記の3D-System用のフィルタは70Hzで設計していますが、厳密には70.0Hzではありません。 部品に誤差がないとして72.87・・・(Hz)になっています。 3Hz弱の誤差がありますが、使う上で支障はないので製作しやすさを優先しています。 コンデンサとして大量に手持ちのある0.039μFを使う前提で、遮断周波数:Fcが70HzになるRの値を求めると58.299kΩになります。 それに近いE12系列には56kΩがあるので、それを選ぶわけです。 もちろん、0.039μFというのは手持ちの都合なので、より一般的な0.033μFで設計しても良いわけです。その場合、Rの値は68kΩが適当です。さらに0.047μFと47kΩの組み合わせというのでもOKです。

 -12dB/octの場合、中途半端な値のコンデンサが必要になるのが問題ですが、-18dB/octのときは心配ありません。 必要なコンデンサの値が0.039μFの2倍の0.078μFと0.039μFの半分の0.0195μFになるので、2本並列で2倍、2本直列で半分の容量が簡単に得られる訳です。 このようにして、できるだけ容易に入手可能なコンデンサや抵抗器で実現できるように設計すると現実的です。

 たとえば、Fc=1kHzのフィルタを作るとしましょう。 計算式は:Fc=1/(2・π・C・R)です。 コンデンサは一般的な0.01μFを選ぶとします。  式を変形しRを計算すると抵抗器:Rとして15,915Ωが求まります。 このばあい、15kΩの抵抗器か16kΩの抵抗器が使えないか検討します。 15kΩを使うとFc≒1061Hzに、16kΩならFc≒995Hzになります。 E24系列の抵抗器が使えればFcの誤差が少ない16kΩがベストですが、15kΩならE12系で済みます。Fcに6%の誤差が出ても構わなければ15kΩで良いことになります。

 エレクトロニクスは実用の科学なので、支障のない範囲で現実的な設計がベストということになります。 選択肢が限定されやすいコンデンサを初めに検討し(選択し)、自由度の大きな抵抗器を求めて実用的な設計に仕上げるのが常識(ノウハウ)と言った感じでしょうか。

 このあと、少しだけフィルタ特性の実現法について追記します。

-6dB/octがR-Cフィルタの基本になる
 上図の(A)の回路です。抵抗器:Rとコンデンサ:Cを一つずつ使う回路がフィルタの基本です。

 なお、図は低域濾波器・ローパスフィルタ:LPFですが、抵抗とコンデンサを入れ替えると高域濾波器・ハイパスフィルタ:HPFになります。

 この回路の動作は直感的によく理解できます。 コンデンサのリアクタンス:Xc=1/(ω・C)です。 なお、周波数をfとすれば、角周波数:ω=2・π・fです。 入力信号の周波数:fが高くなってXc=Rとなる周波数では出力は1/(√2)=0.7071・・・すなわち-3dBとなります。 この周波数がf=Fcです。
 周波数fがFcよりどんどん高くなれば、コンデンサのリアクタンス:Xcも益々小さくなります。 従ってこの回路の出力もどんどん小さくなります。 フィルタとして旨く働くことがわかりました。 このあたりはごく直感的に納得できます。

 R-Cのフィルタは真空管ラジオやアンプの電源平滑回路などに良く使われました。 基本的に-20dB/decですから、Fc=5Hzくらいに選んでも、50Hzのリプルは-20dB・・・すなわち1/10にしかなりません。 Cを10倍にして、Fc=0.5Hzにしても-40dBですから意外に効かないわけです。それに平滑コンデンサ:Cを10倍にするのは大変ですし・・・。 (フィルタは「段数」で効くので、むやみにCを増すよりも、そうするのが効果的。脱線でした・笑)

OP-Ampを使った2次のフィルタ
 上図の(B)のフィルタ回路です。-12dB/octの特性が得られます。 〜30年くらい前までは真空管のカソード・フォロワやトランジスタのエミッタ・フォロワを使って構成していました。いまはOP-Ampを使うのが常識的でしょうか?

 出力側から入力側へ正帰還を掛ける形式にするとFcあたりの特性を変えることができます。 図はダンピング係数:ξ=1/(√(C1/C2))として、ξを変えて行った場合の特性変化を示します。(ξ:ギリシャ文字のグザイ)

 ξ=1/(√2)=0.7071に選ぶと遮断周波数:Fcにおいて-3dBとなり、また通過帯域の振幅特性も平坦な特性が得られることがわかります。 これが(B)の-12dB/octのフイルタ特性です。

 この回路の場合、ξが1/(√2)ですから、C1もC2も綺麗な値にはなりません。 ただし、R1=R2=Rを変えてやるとCを選びやすく変形することもできます。C1=2・C2に選んで、Fcに合うようにRの方を計算する訳です。 工夫の甲斐があるのでやってみると面白いです。

 アクティブ素子にOP-Ampを使うと、入力インピーダンスが十分高く、出力インピーダンスが非常に小さく、しかもゲインがほぼ1.0になり、理想に近いため設計値に極めて良く一致する特性が得られます。 思ったフィルタ特性が得られないとすればおそらくRやCの誤差に原因があるでしょう。 再検討しなくてはなりません。

 また、真空管のカソード・フォロワやトランジスタのエミッタ・フォロワを使うと理想通りとは行かず、定数をいじって特性を出すと言った加減が必要になります。 昔は目標の特性を出すためにかなり苦労した筈です。 OP-Ampの有難さがわかります。(理想的と言えるのはOP-Ampのゲインが十分得られる可聴域の低い方と言った低周波域に限ったはなし。 フィルタの設計遮断周波数:Fcが高くなるとOP-Ampの理想的でない所が見えてきます)

3次フィルタで-18dB/oct
 -6dB/octと-12dB/octのフィルタを組み合わせると-18dB/octのフィルタが作れます。

 ただし、単純に(A)と(B)を重ねるとうまくありません。 Fcにおいて-3dBではなく-6dBになってしまうからです。
 単純に重ねただけではダメなのは、-6dB/octを重ねて-12dB/octが旨く作れないのと同じ理屈です。

 一つ前の項の2次アクティブ・フィルタのグラフを見ると、ξ=0.5にすれば遮断周波数における出力は0dBですから(A)の-6dB/octと組み合わせることで旨く行きそうです。

 左図はその様子を示したものです。 ξを0.5に選んだ2次のアクティブ・フィルタとR-Cのパッシブ・フィルタをカスケードにすることで-18dB/octのフィルタが作れます。

 -18dB/octという特性は-60dB/decですからかなり急峻な傾斜を持ったフィルタと言えます。 3Dシステムのみならず、マルチ・ウエー・システムの分波フィルタなど、一般的なオーディオ回路には十分な性能のフィルタと言えるでしょう。 利用範囲の広いフィルタ回路です。

 さらに実際の製作でも-12dB/octよりむしろ作り易いと言えます。 ξ=0.5なら、(C)の回路におけるC2とC3が作り易いからです。 1次のフィルタ:(A)の回路と同じ値のコンデンサの直列や並列で旨く構成できるからです。

 あえて欠点を言うとすれば、部品数が増えること、OP-Ampの段数が多くなってノイズが増える可能性がある・・・と言った所でしょうか? ノイズの問題はあまり低レベルの信号の場所に使わないと言った配慮で解決できるでしょう。 それに最近のOP-Ampなら真空管時代のHumやショットノイズよりずっとマシなはず。

                ー・・・ー

ハイパス・フィルタは?
 ここまで書いて高域フィルタ、ハイパス・フィルタ:HPFの設計を忘れていることに気付きました。w

 (A)の回路はRとCを入れ替えるだけなので良いとして、(B)の回路について詳しく書きます。

 初めにハイパス・フィルタ回路に変換しましょう。 その時に、R1がC1に、R2はC2になるようR→Cに書き換えます。 続いて、元々のC1がR1に、C2はR2になるようC→Rに書き換えてください。 これでハイパス・フィルタ回路になりました。 以下、置き換え済みの左図を見ながら進めます。

 C1=C2=Cとして、Cの値を予め決めます。 ハイパス・フィルタの遮断周波数をFcとします。 以降の設計ではR1の値とR2の値を求めることになります。 それぞれ図中の式で計算できます。 なお、3D-Systemやマルチ・ウエー・システムに使うフィルタではLPFとHPFの交叉周波数、すなわちFcは必ず一致させます。

 ダンピング係数:ξはLPFの時と同じ意味です。 -12dB/octのHPFの場合は、ξ=0.7071で、(C)の-18dB/octで作る時はξ=0.5で計算すればOKです。 特に難しいこともないと思いますので、実際の設計結果(70Hzの設計例)を使って検算すれば確認できます。

                 ☆ ☆

コンデンサを選ぶはなし
 コンデンサの話をはじめるとキリがないかも知れません。 オーディオの場合、単に電気的な性能だけでなく音色と言った人の感性に依る部分もあるからです。

 写真はごく一般的なポリエステル・フィルム・コンデンサで、Dupont社の商品名であるマイラ(Mylar)樹脂のフィルム使っているので、マイラ・コンデンサと呼ばれることも多いようです。

 昔のペーパー(紙)コンデンサに代わって低周波回路で広く使われています。 吸水性が殆どないため、ペーパー・コンデンサで問題になった経年劣化による絶縁低下はほとんどありません。 温度特性が少し良くないと言った欠点はありますが、ごく一般的な低周波回路にはほとんどの場所に支障なく使えます。

 昔ながらの巻回型のほか積層型もあって最大で数μFの容量が得られます。 ただし容量や耐電圧に比例して形状が大型化するのは仕方ありません。 1μF以上と言った大きめの容量が必要なら積層型を選ぶとかなり小型化できます。

 フィルタ用として定評のあるコンデンサにはスチコン(スチロール・コンデンサ)があって、低損失でHigh-Q、低温度係数と言った優れた特性があるのですが、熱に弱く面実装できず、さらに小型化に適さないためほとんど使われなくなりました。 代替としてポリカーボネート・フィルムコンデンサがあって同じく優秀なのですが、ハイコストです。入手性もあまり良いとは言えないので困ります。 RS Compo、Digi-KeyやMouserと言った部品商社から通販で少量の入手も可能ではありますが高額になりがちです。

 もちろん良いコンデンサを使うに越したことはありませんが、マイラ・コンデンサで済ませるのも現実的で悪くないと思っています。 いくらか欠点もありますが、歪みやノイズと言った大切な特性はマズマズなのでオーディオの目的には心配せず使えるでしょう。 マイラ・コンデンサはまとめて安価に入手できることも多いので、LCRメータで容量選別して使うと非常にコスパが良くなります。 まとめ買いなら単価¥10-くらいで手に入ります。

 最近はなんでも面実装で製作するため、面実装になじみの良い積層セラミック・コンデンサを使いたくなるかも知れません。 まず、高誘電率系の積層セラコンはバイパス・コンデンサ以外の場所には使えないと思った方が良いです。 加わる信号の大きさや直流バイアスの大きさによって容量値が大きく変化するものが多いからです。 基本的に信号が通過する部分に使うのはやめた方が良いです。バイパス・コンデンサ専用と考えるべきです。
 しかもセラミックス・コンデンサにはわずかですが圧電特性があってオーディオ信号が加わると「鳴く」ものがあります。 鳴くようなコンデンサは、逆に振動ノイズを拾ったり歪み発生の懸念があるため使ったらダメでしょう。

 高誘電率系と違って温度補償系のセラコンはずっと優秀ですがアマ無線の受信機のような通信機の低周波回路ならともかく、純然たるオーディオ機器の信号系に使うのは好ましくないと思っています。 稀に数pF〜数10pFをOP-Ampの位相補償などの用途に使うこともありますが、なるべく避けたいものです。 小容量のコンデンサならディップド・マイカが良いです。

 コンデンサが適切に使えるようになってやっと一人前の回路屋と言われるくらいなので、使い方は思ったよりも難しいです。まずは使ったらダメそうなコンデンサを覚えておいたらオーディオの製作に不自由はないと思ってます。

                ☆ ☆ ☆

 3Dシステムやマルチ・ウエー・スピーカ・システムに使えるシンプルな設計のフィルタを扱ってみました。 なるべく難しそうな話は避けて、もの創りに役立つような実用設計に絞ってみました。 オーディオとか一般的な低周波回路の用途ならだいたいカバーできると思っています。 計算も難しくはないので、自身の希望にあったフィルタ回路が自在に設計できたらいいなと思っています。

 フィルタにはより高度なものがあって、設計をより一般化するには難解なフィルタ理論に踏み込まざるを得ないのかも知れません。 あらゆるフィルタを・・・となると一冊の専門書でも足りないくらいでしょう。 有難いことにフィルタ設計の良書がネット上にあって無償で入手できます。一段と高度な設計を希望するなら紐解いてみるのも良いと思います。 今回はこれで終わりましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

つづく)←リンクfm

2024年11月1日金曜日

【部品】Operational Amplifiers

【OP-Amp】

The OP-Amp was a great analogue invention !

Who said ?


OP-Amp.はアナログの偉大な発明品

       ・・・って言ったのは誰?

(ちょっと休憩します) de JA9TTT/1

(おわり) nm

2024年10月17日木曜日

【Audio】Repair the Activ sub-woofer :SW-P100 , Part-2

アクティブ・サブ・ウーファ:SW-P100の修理・その2

INTRODUCTION
I received a replacement edge to use for repairing speaker cones. I purchased it from Amazon.com and it took 19 days to arrive from China. The replacement edge was perfect. The size is perfect for the loudspeaker to be repaired. The loudspeaker units were replaced with new cone edges and returned to perfect condition. And the sub-woofer are immediately producing ample bass in my audio system. (2024.10.17 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

中華スピーカ・エッジ
 修理が終わらないとサブ・ウーファは単なる邪魔な木箱です。待望の修理用スピーカ・エッジが到着しました。

 Amazonで注文した時の連絡では到着まで20日掛かるとありました。 実際には19日ですから1日だけ早く着いたことになります。 販売者は中国の会社で、輸送はYanwenと言う運送業者です。 成田で通関後はJPに引き継がれるようです。

 問題もなく届いたのでクレームはありませんが、もう少し配達の早い業者に頼むべきだったと反省しています。 ちょっと安い業者を選んだのが時間がかかった理由でしょうか。

                   ☆

 リサイクル・ショップで購入したジャンクなアクティブ・サブ・ウーファ(アンプ内蔵型・低音域専用スピーカ・システム)を修理しています。 このBlogは前回(←リンク)の続きです。 前回のBlogでは、不具合は内蔵するスピーカ・ユニットのエッジ部分崩壊に原因があり、その交換用パーツを通販し、現品が届くまでに古いエッジを取り除いて修理に備えると言った内容でした。

 特定のオーディオ・ジャンクを修理すると言った話です。 その関連で、ずいぶん昔に流行った「3Dオーディオ・システム」について少しだけ触れています。 既にこうした情報は失われている可能性もあります。完全に忘れ去られる前に触れておくことにしました。 前回をご覧になって、もしも暇があって興味が続くようならばこの先もご覧ください。

エッジを当ててみる
 注文前に寸法図で確認してありますのでピッタリなはずです。異品が届かぬ限り間違いはないとは思います。

 接着を始める前に現品に当ててみて確認しておきましょう。 写真のようにあつらえたように(?)ぴったりです。 要するに、こうしたスピーカは標準化が進んでいるのでしょう。 各部のパーツが規格化されて流通しているわけです。 どこかの製造ラインを流れているようなφ130mmのスピーカ用の部材を手に入れたと言うわけです。

 材質はゴム系のようで成形品です。 たいへん柔軟にできています。 おそらく寸法的には元々使ってあったエッジと同一でしょう。 しかし材質は異なっているように思います。このゴム系の素材でできたエッジもそれほどの寿命はないかも知れません。 いずれ劣化するでしょう。しかし5年も使えたらもう十分でしょうね。

 もう一つ、スピーカのエッジには音響的に重要な役割があります。 その柔らかさや質量のほか、厚みやロールの形状などスピーカの特性に少なからず影響を与えます。 エッジで出る音の特性が変わるわけです。 そのためスピーカ・メーカでは材質や形状を最適化してスピーカ・ユニットとして完成させている筈です。

 従って海のモノとも山のモノともわからんような中華エッジを貼ったスピーカがオリジナル通りに復活できるか否かには幾許かの疑問もあるわけです。

 しかし、音色云々の話はひとまず置いて、まずは異音を発するような「駄目スピーカ」からの脱却を目指したいと思います。 それと大量生産されている汎用の部品は平凡ながらも悪くない無難なものであろうと想像されます。使ってみましょう。

ボンド・Gクリヤーで接着
 接着剤にはボンド・Gクリヤーと言うゴム系を使います。これはエッジの材質から選びました。

 エッジの素材によっては接着剤に含まれる溶剤によって影響を受ける場合があります。 またスピーカ・コーンも溶剤に弱いことがあります。 このスピーカは紙コーンですからゴム系で問題ありません。

 接着剤選びでもう一つ重要なことは、こうしたスピーカのように振動を伴うものへの接着では硬化後もある程度の柔軟性を保つ接着剤を使うことが必須です。 カチカチに硬化するするような接着剤を使うとどこかの部分に応力が集中し、いずれ亀裂が入って破損するでしょう。 ゴム系の接着剤はずっと柔軟性を保つので適しています。

 ここでは透明なタイプを使いましたが、昔からあった淡黄色のゴム系接着剤でも構いません。 どうせ見えない部分になりますから機能が同等なら透明タイプでなくても支障ありません。 手持ちがあれば同じように活用できます。

 接着に関しては前回のBlog(←リンク)にコメントを頂きました。 ゴム系接着剤をペイント薄め液で希釈して刷毛塗りすると良いとのこと。 薄め液を塗れば失敗してもやり直せるそうで、作業の安心感にも繋がりますね。
詳しくは前回Blogのコメント欄を参照ください。(VY-TNX! JA2HVW 水島OM)

コーン紙部分は両面塗り
 コーン紙の部分は接着剤の力だけで保持されます。 従って十分な強度をもった良好な接着状態が望まれます。 写真は接着剤の塗布状態を示します。従ってエッジ部は裏側の接着面を見せるように撮影しています。

 コーン紙側とエッジ側の両方の接着面にボンドを塗布します。 その上で規定の時間だけ待ち、ベトつかない程度になってからエッジとコーン紙を合わせるようにします。できるだけ最良の接着が得られるようにします。 詳細は接着剤の説明書の参照を!

 コーン紙の部分はダンパーに吊られているだけなのでフリーに前後します。従ってあまり強く押し込むと破損しますのでエッジとコーン紙を接着するときは注意深く行ないます。コーン紙の裏側に指が入る部分では表裏から指で挟んで圧迫して十分な接着強度が出るようにしました。

 エッジをコーン紙に貼ってしまうと自由が効かなくなります。そのためフレームとガスケットに挟んで接着する外側は方法を変えました。両面に塗って半乾きを待つといった方法は困難だからです。 フレーム側とガスケット側の両方へ、やや多めに接着剤を流し込みます。 接着する位置を確認したらあとは動かぬようしっかり固定して乾くまで待つことにしました。

 だいたいこんな感じでエッジを接着します。文章で書くと難しそうに感じるかも知れませんが、意外に容易にできるので心配するような作業ではありませんでした。

重石を載せて一晩放置
 接着剤が塗布できたらガスケットを載せて位置に問題ないか確認します。引っかかりがないかボイスコイルの動きも確認しておきます。

 確認の上、問題なさそうでしたら口径よりやや大きめの鉄板などを載せ、その上から重石を掛けておきます。ガスケット部分の接着が目的です。 拙宅で重そうな物体といえば電源トランスでしたので、それを重石に使いました。写真の電源トランスは5kgほどの重さがあります。2〜3kgも掛ければ十分でしょう。

 冬季なら24時間くらい置く方が良いでしょう。 いまはまだ暖かいのでだいたい一晩も置けば十分な強度の接着が期待できます。 部屋の隅の邪魔にならない場所に放置して待ちました。

                   ☆

 接着剤が良く乾くまで、ちょっと「3Dシステム」へいざないます。

3Dシステムの交叉周波数
 そもそも3Dシステムとはどう言ったものでしょうか? 詳しいお方には釈迦に説法でしょうが、ごく簡単におさらいします。

 一般にステレオ再生では左右にスピーカを置きます。 集音時に左右のマイクで集めた左右の音がレコード盤やCDに収められています。それを取り出し増幅して左右のスピーカから再び音として空間に放出することで立体的な音場が再現できます。

 これはステレオ再生の基本ですが、いつでも理想通りの再生機器が得られるとは限りません。 特にスピーカは低音域まで十分に再生しようとすれば大きな口径のスピーカ・ユニットとそれに見合った容積を持った箱(スピーカ・ボックス、エンクロージャ)が必要です。 これは当然巨大化を意味しますのでオーディオ・マニアならともかく一般家庭では受け入れがたいでしょう。

 人の聴感に着目すると、ごく低域の音は方向感があまりなくなることがわかっています。 そこで、左右の音の低音域だけを一つに纏めてしまい中央もしくは適当な位置に置いた低音域専用のスピーカで再生します。それでも音の立体感(ステレオ感)を阻害せず、しかも豊かな低音までの再生が可能になるわけです。

 これが3Dシステムと言われるもので左右に置くスピーカは100Hz以上といった中音域以上を受け持てば良いためずいぶん小型の物で済みます。ごく低音域を受け持つスピーカはそれに特化したものを一つだけ置けば済みます。 しかもあまり方向感が生じないため、おおよそ前方にでも置けば良いのです。例えばTVのような映像機器の裏側に見えぬように置いても支障ありません。AV向きとも言えます。

 このように3Dシステムは経済性と配置の自由があって有利なシステムですが使いこなしがやや難しいことから徐々に忘れられていったようです。 それと本格的なマニアには音域をフルにカバーするような大型スピーカ・システムを左右に並べる方が見ばえの点でも好まれたのでしょう。 もちろんメーカーもできたら大きなスピーカを2つ買ってもらいたいですからね。 それで'70〜'80年代のオーディオ・ブームを待たずに廃れてしまいました。(一部では根強い支持が続いたのも確かですが・・・)

 左図は、3Dシステムにおいて低域のクロスオーバー周波数を幾つに採ったら良いのか、探るための実験レポートです。実験によればだいたい150Hz以下が無難で、もし100Hz以下ならステレオ再生における楽器の定位にはほとんど影響がないことを示しています。 私のシステムが70Hzに決めたのもこのような理由からです。 実際、まずまずの成績だと思っています。

3Dシステムの構成方法
 このBlogは技術系を志向しています(?)ので、3Dシステムの構成方法をブロック図で示しておきます。

 図・左はすでにスピーカ・システムが構成されているところへ3Dシステムを追加する方法です。 左右のスピーカの手前にL-Cを使った分波器(フィルタ)を置きます。 ごく低域のエネルギーを消費するためのダミー抵抗が設けられているのが興味深いですね。(吸収用のダミー抵抗がないと反射が起こります)

 分波用のフィルタはL-RとC-Rの組み合わせフィルタですから-6dB/octになるはずですが、実際にはかなりQが低いため試聴の上でカット&トライを要するでしょう。スピーカのインピーダンスも純抵抗ではなく周波数とともに大きく変化します。従って使ってあるスピーカ次第なので試聴を繰り返しチューニングを要するかも知れません。
 左右を合成して得られた信号から低域濾波器(LPF)で低音域を取り出し、別途設けたパワー・アンプで増幅してウーファ(低音用スピーカ)を鳴らします。

 図・右は本格的な(理想的な)構成方法です。 プリ・アンプの出力といった信号レベルが小さい場所で分波を行ないます。 左右のオーディオ信号は干渉しないよう混合され、その後で低域濾波器(LPF)でウーファ用チャネルの信号として出力されます。

 そのあとは3台のパワー・アンプで増幅したのちそれぞれスピーカを駆動します。もちろん中・高音域を受け持つ左右のスピーカは小型のものでも十分ですし、一般に中・高音域を担当するアンプは数W〜10Wと言った小パワーで済むはずです。ただし低音域は別でゆとりを持った十分なパワーが出せるパワー・アンプが欲しいでしょう。(電気音響工学による)

3D用簡易型チャネル・デバイダ
 トランジスタやOP-Amp.を使ったチャネル・デバイダはよく見かけます。 ここでは真空管を使ったシンプルな回路例を紹介しておきます。 プリ・アンプとパワー・アンプの間に入れて使います。

 双三極管を2本だけ使った簡易型です。 従って性能はほどほどだと思いますが、左右のスピーカがあまり低音域まで伸びていなければ十分使い物になるでしょう。10cmくらいのフルレンジ・スピーカを使ったシステムには良さそうです。 簡単な割に良い成績が得られそうに思います。

 真空管はできればμ(ミュー)が大きく、内部抵抗:rpが小さな12AT7が良いです。6AQ8も同様に適しています。 初めから管球式パワー・アンプに組み込んでしまい低音域の出力のみ取り出せるようにしておくのも面白いと思います。

本格的な-18dB/oct型3D用デバイダ
 上記よりも本格的な3D用チャネル・デバイダです。クロスオーバー周波数は≒70Hzで、傾斜は-18dB/octの設計です。 真空管を使った本格的な3D用分波器はあまり見掛けないので設計してみました。

 電源は200Vで30mAも得られれば十分です。HUMを防ぐためには十分な平滑が必要です。ごく低域を再生しますのでハム音はもろにわかりますので。hi なお、12AT7が向いていますがHK耐圧の関係もあって、その場合B+は150Vにとどめるべきです。

 確認のため要素実験を行なって最終的な部品定数を決定したいところです。OP-Amp.(ボルテージ・フォロワ)を使えば計算通りになるのですが、カーソド・フォロワではそうも行きません。ゲインは厳密には1倍ではないし、出力インピーダンスも結構大きいからです。部品定数で交叉特性を加減します。 いまのところ管球式の3D用デバイダには手が回りません。とりあえず回路設計した段階でストップです。

 カソード・フォロワの性能から12AT7が適していて、12AU7でも可能ですが遮断特性が変わるでしょう。 12AX7は内部抵抗がだいぶ高いのが気になりますが、まずまずかもしれません。あれば差し換えて試せます。 クロスオーバ特性の調整は*1の付いたパーツで行ないます。
 このままで概ね良い筈ですが参考にされるのでしたら各部ごとに製作・実験しながら完成されますようお薦めします。

 0.022μFを多用する設計です。精度を要するので高精度品を求めるか選別して使います。 ポリカーボネート・フィルム型などフィルム系のコンデンサを使います。マイラ・フィルム型でも大丈夫です、各抵抗器は金属皮膜抵抗器(誤差±1%)にします。

 サブ・ウーファ修理と3Dシステムの話が、なんだか双三極管でチャネル・デバイダを作る話になってしまいました。(笑)

                   ☆


接着完了・ユニットを戻します
 一晩待って接着が安定したのでエンクロージャに戻しましょう。

 いきなり箱に付けてしまってから問題があると厄介なので、スピーカ単体(裸の状態)でテストしました。 テストには別に用意したPAF-303という小型オーディオ・アンプと418A型・低周波発振器を使いました。

 周波数をスイープ(高い方から低い方へゆっくり変えて行く)しながら、コーン紙の動きを確認します。パワー・アンプから、やや大きめの出力を与えます。コーンを観察すると共に、どこかにボイスコイルが当たったり擦れて異音が出ていないか耳と目を使って確認しておきました。

 最初、接着時の偏位が残ったようで、一瞬ですが異音が出て驚きました。 すぐ安定してきたのでしばらくエージングを行なって組み込み前の確認は無事に終了です。 スピーカ・ユニット単体では音響的な負荷が掛かっていないのでエッジ部に負担なのと、連続的な正弦波はボイスコイルを焼く恐れがあるのでほどほどにしておきます。(それにうるさいです)

 各スピーカ・ユニットは四隅のネジを均等に締めて固定します。 このスピーカ・ユニットはフレームが弱い感じがするため適度の締め付けでやめておかないと変形しそう。 締め付け不足だとビビるので頃合いが難しいのですが、まあ適当に加減しながら締めておけば大丈夫でしょう。 バカちからでやるとフレームが変形しちゃいます。w

 各ユニットを取り付けたら、配線を繋ぎます。スピーカ・ユニットには極性があるので注意します。 スピーカ・ユニットの端子に赤いマークのある方が+(プラス)で、ここでは黄色の配線(アンプの出力側)を接続します。黒色の配線(アンプ出力のGND側)をもう一方のマイナス側の端子に配線して終了です。

 JISによるとプラス端子に+の電圧を与えるとコーン紙が前方に飛び出るよう極性が決めてあるそうです。 間違えると音が打ち消されたり定位がおかしくなるので要注意です。

現用のBGM用オーディオ・システム
 写真・右がメイン・スピーカ:YAMAHA NS-05です。 これは以前のBlog(←リンク)でドーム型トゥイータを交換したものです。詳しくはリンク先で。

 規格によれば下限は60Hzですが、実際には100Hzあたりを境に低域に向かってダラ下りです。 このあたりがサブ・ウーファで補いたかった部分です。

 左側にAVアンプ:Pioneer VSA-55(下段)が写っています。 iTunesのようなデジタル音源はUSB-Audio用D/Aコンバータでアンプに入力しています。 HDD-BDレコーダの出力はHDMIなのでAudio信号を取り出す市販ユニットを使います。 最近のAVアンプならUSBやHDMIの直接入力ができますが、旧式のVSA-55ではアナログへの変換が必要なのです。 ワイヤレス・リモコンで操作できる便利さからAVアンプにすっかり頼ってます(笑)
 VSA-55はDOLBYプロロジック・サラウンドなどの機能もありますがOFFして2chのプリ・メインアンプとしています。サラウンド機能もソースによっては効果的です。

参考:中央は高千穂神社(宮崎)の御幣。

AVアンプ:VSA-55と接続
 3D用の分波器がサブ・ウーファ:SW-P100に内蔵されています。一般的にはメインのスピーカ・システムへの配線を介して接続します。

 ここではAVアンプにサブ・ウーファ用の出力があるのでそれを使ってみました。 写真で上の方にあるSub-Woofer OutとあるRCA端子(蓋がしてある)に接続して信号を引き出します。この出力は既に左右のチャネルが混合されたものです。

 SW-P100のローレベル入力には左右の2つがありますが、サブ・ウーファ用出力はどちらへ加えても同じでした。内部で左右が混合されているのでしょう。

 調べたところ他社のサブ・ウーファでもほとんど同じようで、既存のシステムに容易に追加できるよう考えられているようです。 従って、3D用のチャネル・デバイダを要するのは、すべて自作で3Dシステムを構築したような場合に限られるように思います。

 これからサブ・ウーファを検討されるなら、あまり心配なくほとんどのシステムに追加できそうです。 いくらかオーディオの知識があれば、低音域まで良く伸びたHi-Fi音響を満喫できるのではないでしょうか。

予定の場所に設置して試聴
 配線チェックしたあと裏蓋を仮止めして動作テストしました。 サブ・ウーファだけあって20Hzと言ったごく低域までそれなりの音圧が得られます。 「聞こえる」というより「感じる」と言った方が適切でしょうか。

 大丈夫そうなので完全に裏蓋を閉め発振器を使ったスイープ・テストをしました。 周波数を変えつつ大音量で出力すると部屋のあちこちで「共鳴現象」がみられます。 特に床へ直置きすると音が振動として伝わってあらぬ場所でビビります。

 そのため、発泡ウレタン樹脂(写真で白いもの)の上に載せて使うのが良さそうでした。 SW-P100にはもともとクッションが付属していたようですからそれを介した置き方が良いのでしょう。 暫くエージングして修理は完了としました。

                   ☆

 様々な音楽や映像を再生してサブ・ウーファの効果を確かめてみました。 同時に、最適なレベルになるよう調整しました。 効かせ過ぎでドロドロした音になっても困るので控えめが良いです。この辺りの加減は微妙です。 ある程度わかってやらないと難しく感じるのでそれが廃れた理由の一つなのかも知れません。 たぶん効かせ過ぎて不自然にしてしまったのでしょう。

 実際に音楽や音源によって大きな違いがあってソース次第という結論にもなりそうですが、サブ・ウーファは自身が思ったよりも控えめに効かせる方が音楽再生には適するようです。 それでもOFFすると、何というか・・・無味乾燥になって何か物足りなさを感じます。 SW-P100は小径のスピーカ・ユニットゆえか過渡特性が良くて歯切れの良い軽快な低音です。 TEACはこの形式のサブ・ウーファはやめたようですが、悪くない設計だと感じました。

 BGMのみならず音楽番組や映画の視聴には欠かせません。 20〜70Hzといったごく限られた音域をカバーするに過ぎません。 しかし音場再現への影響はずいぶん大きいようです。考えてみると20〜70Hzは帯域幅では50Hzに過ぎませんが、オクターブで言えば2オクターブ(2音階分)近くあって影響は大なのでしょう。 ウッドベースやピアノの低音域がカバーできるようになりましたからねえ・・・

 ごく低域用のスピーカ・ユニットにも「音色の違い」というものはある筈です。しかし修理品に不満は感じませんでした。 エッジへの制振剤(ビスコロイド等)の塗布はフルレンジ・スピーカ・ユニットなら検討すべきです。中音域でのエッジ部の逆振動の抑制が目的です。このユニットはウーファ専門ですから必要ないです。むしろエッジが柔軟なのでロングストロークが活きるように思います。

 正体のわからない中華スピーカ・エッジを使った修理ですがなかなか旨く行ったようです。コスパは抜群です。 そして私のBGMシステムにこのサブ・ウーファの導入はかなり効果的だったと言うレポートで締めくくりとしましょう。

                   ☆

 前々から感じていた「低音不足」を何とかしたいと思ってリサイクル・ショップのジャンクなサブ・ウーファに手を出しました。
 総額¥2,000ーくらいでかなり満足できる「低音」が手に入ったことになります。 もちろん厄介な作業代や技術料はタダとしてですけれど。(爆)

 オーディオの遊びとしてもなかなか楽しかったです。 配置してみてサイズ的にもとりあえず許容できる範囲なので良かったです。 進行中の真空管を使ったオーディオでもこのサブ・ウーファは活かせるでしょう。

 中・高音域の再生だけならEL-34三結シングル・アンプでも十分すぎるくらいです。 あるいはEL-84や6V6クラスでも十分かもしれません。 OPTも比較的小型のもので間に合うでしょう。 シングル・アンプは低音域が厳しいのですが、中域から上の高い方は良好です。 静かに楽しむBGM専門ならより小型のパワー管活用にも向いているはず。

 サブ・ウーファも管球アンプで・・・となるとちょっと大掛かりですが、EL-34(三結)ppくらいで如何でしょうか。  低域20Hzあたりまで低歪みで十分なハイパワーが得られる「良質なPP用アウトプット・トランス」が欲しくなります。3Dシステムには一つあればいいんですけど・・・どこかに余ってませんか? 将来対応のために気長に待っています。(笑)

ラストに古いオーディオ誌から一節(一説?)
+1ウーファー(3D)方式ほど、現在使っているステレオ装置に加えて、変わり映えのする、効果ある広帯域再生方式は少ないと思う

 さて、次回は何にしましょうか? また球でしょかね? お楽しみに。
 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2024年10月3日木曜日

【Audio】Repair the Activ sub-woofer :SW-P100 , Part-1

アクティブ・サブ・ウーファ:SW-P100の修理・その1

INTRODUCTION
I believe my audio system lacks bass. So I bought a used sub-woofer at a recycle store. However, the sub-woofer was not in good condition. The built-in speaker unit had a broken edge on the speaker cone, which was causing a strange noise and rendering it unusable. The theme of this Blog is to try to replace the broken edge part. (2024.10.03 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

TEAC SW-P100
 写真はTEAC製のアクティブ・サブ・ウーファ:SW-P100です。1990年代の製品のようです。近所のリサイクルショップで¥1.1k-の値札が貼られていました。

 見たところはマズマズだったのですが、残念なことに「問題あり」の故障品でした。 流石に¥1.1k-で完動品を望む方が無理かもしれませんけれど・・・。
 今月のBlogはSW-P100の復活と3Dオーディオ・システムがテーマです。今回はそのパート・1です。

                   ー・・・ー

低音が足りないのだ!
 BGM用と割り切って使っているAudio Systemですが、実はちょっと「低音」が物足りないのです。ええ、何故かはわかっています。

 メインのスピーカはYAMAHA NS-05という小型スピーカ・システムです。NS-05はよくできたスピーカ・システムで、強い個性は感じないものの、その再生音は自然ですしボーカルが前に出てくる感じがあって結構気に入っているのです。しかし小型なためどうしても低域が物足りないと感じてきました。
 やはりφ120mmのウーファ(低域側ユニット)とバスレフ構造では低域再生に限界があって然るべきでしょう。

 十分な低域再生には大きなスピーカ・ユニットを使った大型スピーカ・システムが必要なことはわかっています。しかし狭いシャック(無線室)に無理やり間借りしているようなBGM用オーディオ・システムでは望むべくもありません。少々低音が物足りないのは承知で我慢していたと言ってよいでしょう。

 その一つの解決策としてサブ・ウーファを追加した3Dシステムの導入があります。 前々から構想していたのですが、追加のサブ・ウーファ(極低域用スピーカ)は意外に大型で邪魔くさい存在に見えたのです。 何回かリサイクル・ショップで見かけたのですがそれを部屋に持ち込むことは考えにくい大きさと形状でした。 ただ、もう少しセッティングし易い合理的なサブ・ウーファもあったように思うので、よい出物でもあったら・・・と思っていたのです。

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 このBlogではリサイクル・ショップで見つけたジャンクな「アクティブ・サブ・ウーファ」を使えるように整備するのがテーマです。また今ではすっかり忘れ去られた感のある「3Dオーディオ・システム」についても触れたいと思っています。
 立派なお部屋と大型の音響再生シルテムをお持ちのお方にはまったく関係のないテーマです。 費用を掛けず手軽に遊ぶためリサイクル・ショップや中華通販を利用しています。 何かの役に立つほどの内容はありませんから、時間のないお方がご覧になるのはお薦めいたしません。貧乏人が暇つぶしにジャンク品で楽しんだと言った内容です。

SW-P100とは
 全体の外観は最初の写真のようなものです。

 幅165mm、高さ500mm、そして奥行き412.5mmです。見ての通り縦長・幅狭な形状で奥行きは結構あります。重量も見た感じよりもあって12kgです。元の定価は¥40k-のようでした。

 もちろん極低域再生のためのユニットですから、軽量・小型では製品として実現は困難でしょう。私が思うに「サブ・ウーファのくせに意外に小型だなぁ」という印象でした。

 「低域再生=大型化」の図式がわかってない一般の人に買ってもらう為には「性能を犠牲にせずに小型化」も重要な開発テーマだったでしょう。 1990年代ともなるとずいぶん前にオーディオ・ブームは去っていました。 そのかわり大型TVをメインとしたAV機器が家庭に浸透しはじめた時期です。そんなAVシステムに付加する目的で開発された製品ではないでしょうか。

 どんな場所で使われていたのかはわかりませんが、上部に製品のPR用と思われるシールが貼ってありました。 それもあってリサイクル・ショップで目に止まったのでした。 縦長で幅狭な形状ゆえ私が考えている設置場所にマッチするように思えました。

 お値段は手頃ですが「音がビビる」という注意書きが貼ってありました。 要するに完動品ではなくて「ジャンク」の扱いでしょう。 陳列棚から引っ張り出して全体をざっと観察したら、見た様子では単純な構造であり万一使ってある内部のスピーカ・ユニットがNGでも代替品で補修も可能そうに思えました。作りがしっかりしているので最悪ハコ代でもと思ったのです。

 写真は正面下部にある操作部とサランネットに覆われた音道の出口です。 このSW-P100は低域フィルタ(LPF)とパワー・アンプを内臓しています。 そのためアンプの電源スイッチがあって、さらにメインのスピーカと音量を合わせるためのボリウムが付いています。 なお、音の出口は写真のサランネットの部分だけなので設置は容易そうです。もちろん極低音では「箱全体が鳴る」と言うのもあるでしょう。(ごく低音域では方向感が殆どなくなるため設置場所にはかなりの自由度があります)

 背面の写真は省きますが幾つかの切り替えスイッチがあります。一つはクロスオーバー周波数のスイッチで、このウーファの再生上限周波数:fc=140Hzあるいは70Hzに切り替えが可能です。
 ごく小型のスピーカ・システムあるいは一般的なTV受像機などでは低域再生の限界は高くて、140Hzくらいに選ばないと中抜けになるのでしょう。 私のシステムの公称低域カットオフは60Hzですから70Hzで旨く繋がるでしょう。 他に位相切り替えスイッチが付いていて、これは設置時に確認する必要があって重要な機能です。

 サブ・ウーファは現用のシステムに追加する形で導入するものです。接続方法として、プリ・アンプから左右の信号をもらうLow-Level入力と、パワー・アンプとスピーカの間に入れ、そこから低音域をピックアップする方法が選べます。 私の場合、AVアンプ:Pioneer VSA-55にローレベルのSub Woofer Outputがあるのでそこへ接続するつもりです。

 SW-P100は専用のパワー・アンプ(max60W)を内臓しています。 のちほど資料を示しますがSANYOのハイブリッド型パワー・アンプICを使った2電源式のOCL型アンプが使われています。従って必要十分な低音域まで周波数特性は伸びています。

130mmウーファが二つ
 SW-P100は直径φ130mmのコーン型スピーカユニット2個を内蔵します。スピーカは2個並列で十分大入力に耐えられるようになっています。 内蔵パワー・アンプも本当に50Wくらいなら出そうですから!

 また2個並列なのはφ130mmでは低域用スピーカとしてコーン紙の面積が不足するためで、並列で2倍の面積と等価になるよう考えてあるのでしょう。さらにロング・ストローク型スピーカになっており面積不足を振幅の方で補う設計のようです。要するに小径のユニットでも設計次第で低域は伸びます。

 箱の音響的な構造はバスレフ型でありスピーカのフロント側にあるダクト(音道)を強力にドライブします。公称の低域カットオフ周波数は35Hzであり、ダクトはそれに合わせてごく低い周波数で共振させ、周波数特性を低域へ伸ばしているはずです。

 あとで写真がありますが、この130mmウーファは専用設計でしょう。高音域カットの目的で硬質発泡ウレタンの音響的な高域フィルタが付いていました。 極低音域以外を再生する必要はないので箱内部の定在波もそれほど問題にはならないようです。吸音材(粗毛フェルト)は片面に少量貼ってあるだけでした。 写真下方に見えるバスレフのダクトはかなり長く丈夫な厚手の紙筒(紙管)でできています。

 パワー・アンプは電源トランスと一緒に背面の蓋に取り付けられています。 アンプ部で変な共振が起こらぬよう配線はよく固定してあるようです。 修理後の話になりますが、発振器で低域をスイープすると何かがすこし振動してビビる感じがあるので、さらに徹底した固定とデッドニングが必要かもしれません。(実用上は支障を感じませんが)

動電型スピーカの構造図
 このあと、スピーカ・ユニットを修理する話になります。

 動電型スピーカ(PM型ダイナミック・スピーカ)の構造と各部の名称がわからないと話が見えないでしょう。 断面図と各部の名称を示しておきました。 よくご存知の貴方のようなお方は見る必要はありません。

 昔のオーディオ・マニアは、こうしたスピーカ・ユニットを購入し、厚手のベニヤ板などを加工して箱(エンクロージャ、スピーカ・ボックス)を作り、スピーカ・システムを自作したものです。 なお「スピーカ・システム」とは、低音域用スピーカ・ユニットのウーファ、中音域用のスコーカ、高音域用のツゥイータと分波用フィルタ・ネットワークを「エンクロージャ:箱」に内蔵したものを言います。

 図のような「スピーカ・ユニット」も多数売られていました。 パイオニアやオンキョーと言ったオーディオ・メーカーはもともとスピーカ・ユニットのメーカーだったように記憶します。
 今でもフォステクスのようなスピーカ・ユニット専業もありますが、昔は様々なメーカーがユニットを供給していたのです。 三菱電機や松下電器のような大メーカーのスピーカ・ユニットにも銘品があったのを思い出します。

 ちかごろスピーカ・ユニットからオーディオ・システムを構築するような本格マニアはめっきり見かけなくなりましたね。

エッジがボロボロだ!
 念のため、箱を開ける前に音出しをしてみたのです。 お店の言うことはウソじゃなくってホントに音がビビりました。まったく使い物になりませんね。 大音量の雑音発生機。w

 スピーカ・ユニットを交換するにも、とりあえず元のユニットは外す必要があります。

 外して観察したのがこの写真です。 一つ上の説明図で言うところの「エッジ」がボロボロに崩壊していました。 試しに裸のユニットのまま別のパワー・アンプでドライブしてみたら、ボイスコイルの動きは正常なようです。

 異音(ビビリ音)の原因は中途半端に残ったエッジ部分のためコーンが不均等で異常な振動になるからのようです。要するにエッジの崩壊がビビリ音発生の原因であってエッジ貼替えさえしてやれば修理可能そうに思えました。

 いまは便利な時代です。さっそくネットで調べてみました。 結論を言うと、1990年代〜2000年代の始めころ製造されたスピーカ・システムには、スピーカ・ユニットのエッジ部分が劣化・崩壊しているものが多数・・・むしろ無事なものは少数・・・であり、ユニット交換またはエッジの貼替えがスピーカ修理の定番になっているようです。

 ユニット交換はけっこう費用がかかります。従ってジャンクの再生にはエッジの貼替えが経済的でマッチするでしょう。 しかし20年くらい前に調べた時にはそうそう都合の良い「修理用スピーカ・エッジ」など売られてはいませんでした。 鹿皮は高級な方法で、ほかにセーム革や布などを加工して代用品にする修理が殆どだった記憶があります。

 ところが、例のYoutubeを見ていたら、中華製のスピーカ・エッジが売られていて、それを使って修理するのだそうです。 そんなに都合の良い代替エッジがあるのか半信半疑でしたがAmazonを見て納得でした。各種サイズが安価に売っているんです。(!) この件はあとでもう少し詳しい話があります。

古いエッジの除去から
 貼り替えるにしても、劣化した古いエッジを取り除かねばなりません。 まずは準備として古いエッジの除去と清掃から始めることにしました。

 スピーカによって劣化の仕方には違いがあると思います。このスピーカの場合、劣化した古いエッジは本当にボロボロで触ったら簡単に崩れるグズグズの状態です。コーン紙(振動板)に残る部分には、おそらくゴム系と思われる接着剤が残っており、写真のようにピンセットで摘むと容易に剥がすことができました。

 多少コーン紙も剥がれてきますが、その部分は貼り替えるエッジで補われるでしょう。おそらく支障はないはず。 丁寧に剥がして接着に備えます。この部分のお掃除は思ったよりも簡単にできました。

 写真でコーン紙の中央に貼ってあるグレーの発泡ウレタン(意外に硬い)は、機械的な音響フィルタだと思います。 コーン紙から高音域の輻射は必要ないのでカットするように作ってあるのでしょうね。 妙な中〜高音域のレスポンスがあると、分割振動や高調波による異音を発する可能性が生じます。 従ってスピーカ・ユニット側で対策しておく方が有利と思われます。スピーカ屋の常識なのかも知れませんが、このあたりに老舗の音響機器メーカ:TEACの製品らしさが感じられました。

ガスケットを剥がす
 コーン紙とは反対側のエッジ部分はガスケットとフレームに挟まれて接着されています。 貼り替えるためにはその部分に残っている古いエッジを取り除かねばなりません。

 ガスケットにはスピーカを取り付けたとき箱内側と外側とを隙間なく密閉する役割があります。結構重要な部分であり、隙間があると音響特性に影響が及びます。
 ガスケットは紙を円筒状に巻いたものを輪切りにして作っているようです。 厚紙をプレスで抜いて作っていると思ってました。 もしその方法だと真ん中の部分が無駄になり合理的ではありませんね。厚紙で作った円筒の輪切りが合理的ですよね。剥がしていて妙に納得しました。w

 ガスケットはフレームの取り付け穴の部分(写真参照)から剥がして行くと容易でした。再利用しますから、なるべく元の円形を変形させぬよう丁寧に剥がして行きます。

 ガスケット側あるいはフレーム側に古いエッジが残りますので、カッター・ナイフやスクレイパーのような道具で残ったエッジと古い接着剤をなるべく丁寧に除去しておきます。

一つ30分くらい?
 丁寧にと言いつつも少々雑な作業になってしまいました。 一つ目のお掃除には40分くらい掛かりました。

 要領がわかってきた二つ目はもっと早くて20〜25分くらいでしょうか。 フレーム側の接着剤除去が少々雑になりましたが、新しく接着するときの妨げにならなければ支障ありません。 それに見えなくなってしまう部分です。 気分の問題もありますがほどほどに済ませることにしました。

 残っていた古いエッジの風化度合いは相当のものでしたね。 殆ど粉状に崩れてしまいます。 確かに30年も前の製品ですから致し方ないとは思いますが、スピーカのエッジ部分がこれほど経年で劣化するとは思ってもいませんでした。 環境にもよるでしょうが、ネットの情報なども総合すると年数が経ったらどうやらダメになるのが普通らしいです。

 新しいエッジの貼付けは大変だろうと思っていたのですが、後から考えたら、むしろ大変だったのは古いエッジのお掃除の方でした。(笑)

Amazonで交換用エッジを発注
 Amazon.co.jp以外でも売られているようです。 どうせ中国から発送されるので、Aliexpressで探しても良いのかもしれません。 ここではAmazonで買いました。

 写真のように交換用のエッジの寸法が詳しく載っていました。これなら自分が必要としているパーツがどれなのか簡単にわかります。 おそらく80〜200mmくらいのスピーカ・ユニットは大変ポピュラーなので、こうしたスピーカ用の部材を専業で供給する会社があるのでしょう。日本でも昔はこういう工場がたくさんあったのだろうと思います。しかし一般人がエッジ部分を必要な少量だけ購入することなどできなかったでしょうね。

 いまは電子機器の製造が中国を含む海外へ移転し、彼らの商魂のたくましさか、売れるものならパーツでもなんでも供給すると言う姿勢のおかげで簡単に手に入るわけです。 これはなかなか有り難いですね。 スピーカの例で言えば、こうした部品のお陰で修理して蘇るスピーカ・システムもたくさんあることでしょう。

 古いエッジの撤去と接着剤の除去も行ない、清掃を済ませておきました。 あとは交換用のエッジが届くのを待つばかりです。

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内蔵パワー・アンプの話
 公称60Wのパワー・アンプは旧・三洋電機製のハイブリッドIC:STK4036Xが使われています。

 図はICの仕様書からコピーしたものです。 同社のハイブリッドICはシリコン単体で作られたモノリシックICとは異なったもので、ディスクリート構成の回路と同等のものです。 従って歪み特性など非常に優れた性能が得られており、音響的にも優れていることから多くのメーカー製オーディオ機器で使われています。

 ディスクリート回路と同じように各トランジスタは個々の回路部分に最適な特性のものが選べますから回路構成上とても有利です。 各抵抗器は厚膜印刷されたのちトリミングされており製品の均質性を保っています。 従って、ディスクリートなアンプ回路を礼賛されるようなお方にもお勧めできると思っています。 なんでそんなに詳しいのかって? それは、・・・

 モノリシックIC全盛の現在ではありますが、こうしたハイブリッドICはそれを超えた価値があると思っています。

 SW-P100の回路をリバースエンジニアリングした訳ではありませんが、概ね推奨回路と同じような回路で使っているようです。 安全性を考えてDCアンプにはなっていませんが、OCL回路で十分低域まで周波数特性は伸びています。 サブ・ウーファの駆動用としては十分な性能のアンプでしょう。

アンプ内蔵は有利だ
 内蔵アンプと電源トランスです。 パワー・アンプ用のハイブリッドICは右側放熱用アルミ板に付いています。 スピーカ・ユニットまでの配線が非常に短いためパワーアンプ内蔵のスピーカはとても有利です。 アンプの低い内部抵抗と相まってボイス・コイルの制動がよく効くため締まった感じの音になります。

 アンプ基板にはクロスオーバー・フィルタも載っています。 趣旨から言えば、フィルタ出力をメインのアンプ系に戻すのが本来でしょう。 しかし実用上はその必要は感じませんでした。 これは私が使っているスピーカ・システムは低域まであまり周波数特性が伸びていないためです。
 また交叉周波数を70Hzと低い方に選んでいる為でしょう。 従って、AVアンプからのサブ・ウーファの駆動用出力信号をこのサブ・ウーファ・システムのローレベル入力に接続すれば済むことになります。

 もしも本格的な管球マニアで球のパワー・アンプをサブ・ウーファにも使いたいのでしたら、こうした内蔵アンプはパスしてしまい良質の・・・尚且つ十分なパワーを持った・・・管球式のモノラル・パワーアンプを使うのも良いでしょう。 やはり一味違うシステムになるように思います。 たぶん、それは叶わぬ望みであって、狭いシャックのBGMシステムには恐らく適用外です。(笑)

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 ところで、交換用スピーカ・エッジですが発注してから納期に驚きました。 まあ、海外からですから3週間くらいなら驚くほどでもないのかも知れませんが・・・。約20日との納期連絡がありました。 実際にもほぼその納期で到着しました。もっと早い配達の業者もあるようなので選ぶときには確認しておくと良いです。

・・・と言うことで、交換用エッジが届くまでしばし作業はペンディングになります。

 オーディオではあっても真空管の話はどこかへ行ってしまいました。 たまたま別件で訪れたリサイクル・ショップで最悪「箱代」と思って購入したサブ・ウーファをお題に致しました。 大して役に立つことは書いてありませんので暇つぶし程度の雑談だったと思います。 怪しいモノに手を出すと厄介なことになると言う教訓もありますが、様々な情報や物流の発達で昔では考えられなかったような遊び方もできる面白い時代になっていると感じた次第です。 次回は続きのスピーカ修理と音出し編です。 ではまた。 de JA9TTT/1 

つづく)←リンクnm