2026年5月31日日曜日

【回路】Practical Crystal Oscillators (1)

実用・水晶発振器・1(その1:基本波編)

Introduction
I have constructed crystal oscillator circuits using inexpensive quartz crystals readily available on the surplus market. I have produced clock generators suitable for digital circuits that oscillate reliably, as well as oscillators suitable for analogue circuits that produce clean oscillation waveforms with low phase noise. I have made effective use of bipolar junction transistors (BJTs) and field-effect transistors (FETs).(2026.05.31 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【水晶発振子・振動子】
 水晶と聞くとなんだか魅力的に感じてしまいます。子供のころ理科室に輝いていた鉱物標本が記憶に刻まれているからでしょうか?

 電子部品の「水晶発振子」に特別な感情を覚えるのもそのせいかも知れません。 未だに宝石を使った高価な電子部品というイメージがあって出物(ジャンク品,etc)に出くわすとついつい手が延びてしまうのも仕方ないのでしょう。(今は100%人工水晶製です)

 ところが単なるコレクションが目的ならともかく、電子部品として見ると「水晶発振子」の使い道はずいぶん限られるのです。 本来の目的である発振器に使うのが基本でしょう。 しかし「周波数が安定で動かない」という特徴は最大のメリットでありながら「周波数」が目的に合わなければまったく使い物になりません。ほとんどつぶしの効かない電子部品でもあるのです。(笑)

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 せっかく手に入れた電子部品ですから幾らかでも活用の機会を作りたいものです。 この先しばらく本来の用途である『発振』に使う方向で実用的な使い方を探りたいと思います。
 水晶がお好きだったらお付き合いください。 専門用語の説明はかなり省いており内容も電子回路の初心者向きではないかも知れません。 頑張ってついてきてください。w

【クリスタル・フィルタという手もあるが】
 昔は同じ周波数の水晶発振子ばかりいっぱいあっても大して役に立たないと感じたものでした。

 しかし水晶発振子の特性に着目して「フィルタ」に応用する手法が知られるようになって活用の道が開かれたのです。 大して役立たずだった大量の水晶が活かせるのですから。(この場合は水晶振動子と呼ぶ方がふさわしいです)

 写真は8MHzのHC-49/US型水晶発振子を6つ使ってラダー型クリスタル・フィルタ(SSB用)を試作している様子です。 ラダー型クリスタル・フィルタの設計・製作については既に扱いましたので、興味があったらBlogバックナンバー(←リンク)の参照を。 水晶定数の求め方から始めて詳しく扱っています。

 ラダー型クリスタル・フィルタを作ることはジャンクの水晶発振子を消費するには有望な方法です。 選別して揃ったものを選ぶのが良いフィルタを作るコツです。同一の水晶発振子が沢山あることはとても有利です。そう思ってジャンク品を集めたものでした。 同じ水晶発振子がたくさんあるなら発振以外の用途も考えておくべきです。

 過去のBlogに試行過程を書いたように、様々な検討を経てノウハウは蓄積できたと思っています。しかし、時間と手間を惜しまず入念に設計・製作した肝心の「フィルタ」も、あんがい使う機会は少ないものです。ですから作り方がわかったらかなり満足してしまいました。 まあ、そんなにたくさん受信機やトランシーバなんて作りませんからねえ。(笑)

 済んだことですし、とりあえずフィルタに使う話はここまでにしておきます。

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【水晶発振器・真空管で】
 水晶発振子と言うくらいですから、発振回路に使うのが本命です。(水晶発振子と振動子は同じ物です)

 水晶発振子は周波数が安定した発振器の決め手です。 真空管時代から様々な発振回路が考案されてきました。

 左図は「無調整型水晶発振器」と言われるものです。ピアース回路とも言います。おもに周波数校正用の基準発振器に使われてきました。 近代的な半導体を使った発振回路も真空管時代の回路がベースになっています。特にFETを使った水晶発振回路は類似性が感じられます。

 真空管式送信機に使う水晶発振器は発振出力に「パワー」が必要なので異なった回路が使われます。 そのため近代的な小型の水晶発振子は適当ではありません。

 左図・発振回路も発振子としてFT-243型、FT-241型、HC-6/U型のように水晶板が大きくて丈夫な水晶発振子が前提になっています。 もし小型で近代的な水晶発振子で製作するのなら、プレート電圧(B+)は発振可能な範囲でなるべく低く抑えます。発振子を壊さないようにするためです。低いプレート電圧で動作し、High-gmなニュービスタ管などが最適だと思っていますが、真空管で作ることはまず無いのでこれくらいにしましょう。

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【トランジスタ・1石で発振】
 トランジスタを使った水晶発振器として最も簡単で有用な回路をはじめに扱います。

 参考:以下はいずれも半導体を使った回路で、電源電圧が低いためコンデンサは耐圧25Vまたは50Vで十分です。電解コンデンサは16V耐圧が使えます。抵抗器は1/4W型です。

 左図はトランジスタを一つだけ使った無調整型水晶発振器です。水晶発振子として最初の写真にあるようなHC-18/U,HC-49/U,HC-49/USと言った近代的で小型のものを使います。 基本波だけが対象で、いずれでもよく発振してくれます。(特殊な専用発振子を使わないとオーバートーン発振はしません)

 「無調整型」という意味は発振回路にLC同調回路を含まないという意味です。 組み立ててから何も調整せずに所定の発振状態が得られるわけです。 ただし、精密な周波数が必要なら「周波数合わせ」だけは必要です。回路図でTC1あるいはTC11で合わせます。だいたい±0.01%くらいでしたら楽に調整できます。

 表・1にあるように、回路図のコンデンサ:C1とC2の容量値を水晶発振子の周波数に合わせて選択します。 実際には同じC1とC2の値のままでも、かなり広い範囲の周波数で発振します。 もちろん確実な発振を望むのであれば表のように周波数に合わせた容量値を選ぶ必要があります。 (参考:この設計ではコンデンサのリアクタンスが目的の周波数において、おおよそC1が450Ω、C2は250Ωになるよう選んであります)

 また、表・2はコンデンサ:C1を100pF、C2を220pFに固定してしまい、どれくらいの周波数範囲で発振できるか実験した結果です。 後日の自身の参考のために直流的な動作点の情報も記載してありますが特に気にされる必要はありません。
 トランジスタとしては高周波用の代表として2SC2668Y(2SC1923Yも同等品)、中華トランジスタのS9018H、そして汎用トランジスタの2SC1815Yで試しました。

 表・2の右端のように広範囲な周波数範囲(Foscの項)で発振することが確認できました。 高周波特性の優れた(fTの高い)トランジスタなら2〜30MHzで同じ部品定数のまま発振できるのです。 2MHz以下では水晶板のカットが特殊になってくる関係からか部品定数を「低周波用」に変更する必要があります。 しかし、それ以上なら30MHzまで幅広く発振できました。(30MHz以上も可能ですが、基本波の水晶発振子はまれになります)
 表のようにトランジション周波数:fTがあまり高くない汎用トランジスタ(2SC1815Y)では高い周波数で苦しくなるのがわかります。 トランジスタのfTについてはこちら(←リンク)に実測した情報があります。

 RF用トランジスタを使えば幅広い周波数範囲で発振できますが、周波数によっては最適状態でなくなるため、発振波形や発振振幅(発振の大きさ)に影響がでます。 できたら周波数ごとにC1とC2の容量値を選ぶべきなのでしょう。 もちろん同じ周波数でも使う水晶発振子によって違いがあります。

参考:C1とC2を小さくするとオーバートーン発振のモードに飛ぶことがあります。(例えば10pFとか)ただしこの発振状態はかなり不安定です。もしオーバートーン発振が目的なら、それ用に作った回路を使う必要があります。(続編のオーバートーン発振編を参照)

【無調整型水晶発振回路(1)の試作】
 さっそく実験してみましょう。写真は10MHz:HC-49/U型水晶発振子で実験している様子です。

 トランジスタ:Q1は2SC2668Yです。コンデンサ:C1=100pF、C2=220pFです。このままで幅広い周波数範囲で発振することが確認できました。 高周波特性の良いトランジスタを使うことで、部品定数を固定したままでもかなり広い周波数で発振できます。

 2SC1815のような汎用トランジスタもかなり使えますが、やはり高周波用(RF用)を使うと有利です。 中国製のRF用トランジスタ:S9018Hはたいへん安価です。確実な発振器が欲しいなら汎用品で頑張らずに使ってみるのも良いでしょう。(国産トランジスタと足の並びが異なるので注意を!)

 水晶発振器とは言えども、部品の値が温度で変化すれば発振周波数も変動します。 上記回路図で赤の印が付いたコンデンサは特に重要です。 温度変化の少ないC0G特性またはCH特性(NP0:エヌピーゼロ特性とも言う。頭部が黒くペイントされていることが多い)のコンデンサを使います。 すこし難しいですが、C3に温度係数を持たせて温度補償することも可能です。市販の温度補償型水晶発振器:TCXOにはそのようになっている物もあります。

 なお、セラミック・コンデンサには温度特性が極めて悪いものがあって、周波数変動が大きかったり発振の起動に影響が及ぶことがあります。(高誘電率系のセラコン) 電源系のバイパス・コンデンサとしては支障ありませんが、発振状態に影響のある箇所には使えません。

【発振器(1)の発振波形】
 コレクタ側・出力端子で観測した10MHzの発振波形です。上記の製作例を観測しています。

 ご覧のように波形は鋸歯状で「美しく」はありません。 発振周波数によっても波形はかなり変わりますし、波形の大きさ:振幅も変わります。

 おもにデジタル回路のクロック発振器などに適するものです。 波形の美しさ(正弦波)にはこだわらず、簡単な回路で確実な発振が目的なのでしたら悪くない水晶発振回路だと思います。 市販されているSPXOと称するモジュールの内部も似たような回路になっているはずです。

 信号を受ける側の回路にシュミット・トリガ特性を持ったインバータICやゲートICを使うのが確実なインターフェース方法です。

 波形のことはともかくとして、コレクタ側から取り出しているので負荷回路の影響は受けにくいようでした。 電源電圧を変えると発振振幅も変化しますが、かなり広い電源電圧で発振は維持されます。条件にもよりますが、Vcc=1.5Vでも発振します。

【低位相ノイズな基本波発振回路】
 良い波形とフェーズ・ノイズ(位相ノイズ)の少なさを望むなら1石の水晶発振器では難しさがあります。

 左図は波形が綺麗でフェーズ・ノイズも少ない基本波の水晶発振回路です。 1石追加するだけで、スプリアスや発振信号の上下に現れるノイズ・サイドバンドも極めて少ない優れた正弦波の発振器が作れます。 また発振振幅がスムースに加減できるのも特徴です。

 発振部そのものは既に説明の無調整型水晶発振器(1)とほぼ同じです。 同じようにコンデンサC1、C2を(C11,C12を)発振周波数に合わせて選択する必要があります。(ただし同一容量でもだいぶ広い周波数範囲で発振します) やはり確実な発振の起動のためには周波数ごとに変える方が望ましいのです。

 特徴的なのは発振出力の引き出しかたにあります。 もっともきれいな発振電流が流れている水晶発振子の直近から引き出しています。 いわばクリスタル・フィルタを通したような発振電流が得られるため、非常に信号純度が高いわけです。 そのあとバッファ・アンプに導きます。

 回路(2)はバイポーラ・トランジスタ(普通のトランジスタ:BJT)をベース接地型のバッファ・アンプとして使った例です。 回路(3)はFETをソース接地型でバッファ・アンプを構成しています。 いずれの回路も綺麗な出力波形が得られるものです。1石の追加はたいへん効果的です。

 発振器(2)の回路をご覧になって、高周波回路に造詣のあるお方はC5:1000pFは大きすぎるように感じるかも知れません。C5:1000pFはこのままで〜30MHzまでOKです。 ベース接地型バッファ・アンプの入力インピーダンスは非常に低く、これで大丈夫なのです。

 計測用の基準信号として使ったり、発振信号に高純度を必要とする高級な通信機にもうってつけの発振器でしょう。お奨めできます。

【低位相ノイズ発振器(2)を試作】
 写真はバイポーラ・トランジスタ:BJTをバッファ・アンプに使った製作例です。

 発振周波数は1MHzです。トランジスタには2SC2668Yを2石使いました。 右にある半固定抵抗器で発振振幅(発振の大きさ)を可変できます。
 この水晶発振子(1MHz)は少し特殊なようで、回路形式によっては発振しにくさを感じたものです。 上記の回路(2)、回路(3)のいずれでもC1、C2をうまく選んでやれば問題なく発振できました。

 もちろん2MHz以上の周波数でも同じようにテストしていますがなかなか良好な発振状態でした。汎用の水晶発振器として活用できます。

【発振器(2)のエミッタ発振波形】
 発振回路(2)のエミッタ(TP1)の波形を観測しています。

 回路(2)、回路(3)ともに初めの無調整水晶発振回路(1)と基本は同じです。
 発振部の電圧を変えることで発振振幅を加減する関係で、電流負帰還型バイアス回路をやめて簡単な固定バイアス形式に変更しています。 ベースバイアス回路部分のインピーダンスを高めることは発振の起動特性の向上にも役立っています。

 従って回路に大差はないわけで、エミッタを流れる電流は(コレクタ電流も)高調波を含む鋸歯状です。 あまりきれいな波形ではないことがわかるでしょう。

【発振器(2)バッファ・アンプ出力波形】
 こちらのバッファ・アンプを通ったあとの信号はきれいな正弦波です。 もちろんバッファ・アンプで歪んではダメなので、発振振幅の調整は必要です。

 振幅の調整はオシロスコープを使うと簡単にできます。スペアナで高調波の状態を見ながら加減しても良いでしょう。 オシロスコープには十分な帯域幅を持った機種が必要です。 例えば10MHzの発振調整なら少なくとも帯域幅50MHz以上のオシロスコープが望ましいです。

 発振振幅の調整範囲はかなり広いので、たいていは歪みのない状態へ調整可能なはずです。 どうしても歪む時は発振部の部品定数を加減する必要があります。 しかしそれは稀でしょう。

 発振振幅を小さくしぼると発振の起動特性が悪くなることがあります。 どうしても小さく絞りたい時はバッファ・アンプの後で減衰させる方法をとってください。

 発振信号として高純度を要する用途ばかりでなく、一般的な発振器として気軽に使うのも良さそうです。

【低位相ノイズ発振器(3)を試作】
 バッファ・アンプにFETを使った例です。 少しですがBJTのバッファ・アンプよりも部品数を減らすことができます。

 写真は20MHzのHC-49/USを発振させている様子です。 Q11:発振部は2SC2668Y、Q12:バッファ・アンプは2SK544Fを使いました。 バッファ・アンプはソースフォロワにすることも可能です。

 この例ではソース接地型ですからゲインを持ちます。 したがって、バッファ・アンプが入力オーバーになって歪む可能性もあります。 その場合はC20を追加・加減してきれいな波形になるようにします。

 なお、本質的にはC15を周波数に応じて変えるべきです。 しかし多くの場合において220pFに固定しても使えるようでした。 もちろん出力波形を観測して歪みを感じるようでしたら表・3にあるように周波数ごとに変更すべきです。

【発振器(3)FETバッファ・アンプ出力波形】
 発振回路(3)の出力波形を観測しています。 バッファ・アンプ(Q12:2SK544F)のドレイン出力波形です。

 きれいな発振波形を目的にしているのですから当たり前かもしれませんがなかなか良い正弦波が得られています。 もちろんスペアナで見てもきれいでキャリヤの近傍ノイズも少なくて良好です。

 バッファ・アンプにBJTを使うのか、FETを選ぶのかは結局のところ好みのように思います。 少し部品が増えてもよければBJTの方が大きな出力を取り出せる可能性もあって良い点もあります。 まあ用途次第でしょう。
 以上、発振部:Q1,Q11に普通のトランジスタ(BJT)を使う回路を3つテストしました。 無調整水晶発振回路ながらも良い発振波形が得られるものもあって悪くない発振器です。

                   ☆

 ここからは発振回路そのものに電界効果トランジスタ:FETを使う無調整型水晶発振器を検討します。そう言えば回路屋さんはFETのことを「フェット」って呼んでますね。(笑)

【FETを使った無調整水晶発振回路】
 左図はFETを使った無調整型水晶発振器です。 実験回路としては2種類あります。

 違う回路に見えますが発振回路としての形式は同じです。真空管のピアース回路そのまんまですね。 2種類はソース接地型にするのか、あるいはドレイン接地型にするのかといった違いです。 ただしドレイン接地型では負荷抵抗に相当する部分を高周波チョークコイル:RFCに変えてあります。(回路4Bは高周波的にドレイン接地になっています)

 RFCを使う回路(4B)は電源の利用率が良くて発振波形も良好でした。 さらに「発振の容易さ」でも優っています。 もちろん、たとえRFCとは言えどもコイルの類がお好きでないならドレインに抵抗器を置く(4A)の回路が良いでしょう。 逆に、4Aの回路のドレイン負荷抵抗:R2をRFCに置き換えることもできます。よく発振してくれます。

 FETを使った発振器にもバッファ・アンプを設けるのは有効です。負荷状態の変動に強くなります。 良好な周波数安定度を望むなら付けておくべきでしょう。

 ゲート部分のダイオード:D1,D11は発振振幅を安定させるためのものです。 ただしQ1,Q11に接合型FET(J-FET)を使う場合は必ずしも必要としません。ゲートのPN接合部が外付けダイオードと同等の働きをするためです。 MOS型の2SK241や2SK544にはその作用はないため是非とも追加すべきです。
 なくても発振しますが、あれば適度な発振状態に自己バイアスが掛かって自動的に発振振幅が安定してくれます。 ダイオードはシリコンの高速スイッチング用(Si-SW-Di)なら何でも使えます。 さらにゲルマニウム・ダイオード:Ge-Diやショットキー・ダイオード:SBDも使えますが、発振振幅が抑制されすぎる傾向があります。 Si-SW-Diが無難なようでした。

 かなりgmが大きなRF用FET・・・J310など・・・を使うとIdssが大きすぎてうまく発振状態の制御ができないことがあります。 発振の起動そのものが困難になることもあります。 その場合はRFC:L11と直列に数10〜数100Ω程度の抵抗を挿入し自己バイアスを掛けてドレイン電流を抑制します。

【発振器(4B)を試作】
 無調整型水晶発振器(4B)を試作した様子です。 基本波周波数が20MHzの水晶発振子でテストしています。

 RFC:L11としては470μHのマイクロインダクタを使いました。形状の小さなRFCの中には巻線の抵抗値が大きなものがあります。使う前にテスタで抵抗値を測って確認してください。直流で測った抵抗値が10Ω以上あると発振状態に影響が及びます。

 RFCのインダクタンスは2MHz以上では470μHあれば十分です。 5MHz以上なら270μHでも大丈夫です。 逆に低い周波数では大きなインダクタンスが必要になります。 455kHzのセラミック発振子も良く発振する回路ですが、RFCは少なくとも2.2mH以上必要です。

 部品数も少なくて発振容易な良い回路と言えます。

【発振器(4B)の出力波形】
 上記で試作した発振回路(4B)の発振波形を観測しています。 室内が暗かったので画像が荒れて見苦しいですが悪しからず。(笑)

 FETはFairchild社製のJ211(前回のBlog参照)を使っています。J211はごくシンプルな構造のFETで、特別なものではありません。
 J211は足の並びが2SK19や2SK192Aと同じですから差し替えて簡単に試せます。2026年5月現在、かなり安価に出回っています。 もちろん2SK19や2SK241と言ったポピュラーなFETでも何も問題ありません。それらを持っていればあえてJ211を手に入れる必要は無いでしょう。

 FETを使った無調整型発振器は周辺部品が少なくて作りやすいのが特徴です。 発振波形も見ての通りなかなか良好でした。

【発振器(4B)多様なFETで発振】
 基本波水晶発振回路(4B)は多彩なFETが使えるのも特徴の一つです。

 この写真はFETに2SK44(-D)を使い、20.935MHzの円筒型水晶発振子を発振させている様子です。 とてもうまく発振します。 この2SK44(-D)は黒豆型の古い三洋電機製ですが、東芝製で言えば2SK30A(-Y)と同じような低周波用のFETです。 他にもイサハヤ電子の低周波・低雑音増幅用2SK2881を試したところ、同じようにうまく使えました。

 なにも低周波用を使うことを推奨するつもりはなくて、高周波用のFETだけでなく幅広いFETが使えることを示している訳です。 もちろん、FETの性能次第で発振性能も変わります。持っているのであればRF用のFETを使うのが一番間違いないです。 しかし有り合わせのFETが使えるのはメリットだと思います。

 ほかに2N7000やBS170と言ったスイッチング用のMOS-FETでも発振します。エンハンスメント・モード特性なのでバイアスの掛け方に工夫(回路変更)を要しました。高周波特性のあまり良くないFETですが〜30MHzまで発振できるので、どうしてもという時には役立つかもしれません。一般的ではないので回路図は省きました。

【多彩な水晶発振子で発振】
 FETを使った発振回路(4B)は様々な水晶発振子で発振が可能です。

 HC-18/UやHC-49/Uと言った近代的で小型の水晶発振子がお奨めですが、写真のFT-243型のような旧式の水晶発振子でもよく発振します。

 もちろん、アクティビティが低下しているような古くて条件の悪い発振子ですからFETはRF用が向いています。 写真の例では2SK19Yを使っています。 私がHAMに入門したころ購入した3530kcの発振子が元気よく発振してくれました。 古い水晶が発振すると何故かあの頃が思い浮かんできました。 なんとなく水晶の不思議な魅力を感じませんか?(笑)

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 実用・水晶発振器の第1回は無調整型の基本波水晶発振器をテーマに幾つか検討しました。いずれの回路も十分な実用性があります。 目的として「定番の回路」を目指した訳ですから、どれか一つに絞ったら良いのかも知れません。 しかしそれぞれメリットもありますから優劣は一概には決めかねます。 むしろ持ち駒が沢山あった方が回路設計では有利ですから、臨機応変にうまくチョイスするのが良さそうです。

 ところで、実験してきた水晶発振器ですが、アマチュアがジャンクの水晶発振子で楽しく遊ぶのは何も問題ありません。 もしも条件が変わって発振しなくなっても自己責任ですし、周波数変動が大きくてもオフバンドしなければ差し支えありません。 躊躇せずに楽しみましょう。 それにこのBlogの回路はそんなに怪しいもんじゃありません。 しかし、あらゆる条件下で確実に起動する発振器は難しいものです。 もしお仕事で心配なら水晶メーカーに相談されるのも良いでしょう。(笑)

たぶん次回も「水晶発振器」が続きます。 ではまた。 de JA9TTT/1

*このBlogをご覧になったご感想、ご質問、ご要望などございましたらコメント欄にお願いします。
この下にある「コメント」の文字をクリックするとコメント入力画面が現れます。

→ご質問・ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。

(つづく)←リンク fm

2026年5月2日土曜日

【部品】RF FETs 2026

高周波用小信号FET:2026年版

Introduction
This document compiles information on FETs for high-frequency circuits that are readily available in Japan as of 2026. RF FETs have several structural characteristics and have been refined to make them easier to use. I have provided a brief explanation of each. I hope to help readers understand the characteristics of these readily available FETs, utilize them effectively, and enjoy building RF circuits. I have measured the transconductance (gm) of the FETs I have on hand and compiled the results into a table.(2026.5.2 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【FETはキーパーツ】
 水晶発振器を検討しています。電界効果トランジスタ(FET)がキーポイントです。
(このBlogに登場するFETs)
2SK19Y,2SK19GR,2SK19BL.2SK41E,2SK49,2SK54B,2SK61,2SK125-5,2SK161,2SK192AY,2SK210Y,2SK211,2SK212D,2SK241Y,2SK241GR,2SK246GR,2SK302Y,2SK315E,2SK439E,2SK439F,2SK518E,2SK544E,2SK544F,2SK606S,2SK607,2SK608,2SK882GR,3SK35,3SK44,BF256B,BF256C,J211,J310,J310G,U310,E310,MMBFJ310 ほとんどが高周波・小信号用のFETです。

オーバートーン発振器
 電界効果トランジスタ:FETで水晶発振子をオーバートーン発振させています。

 永く電子回路と付き合っていると自身の「定番の回路」ができてきます。私は高周波回路(RF回路)に馴染んでいて水晶発振器はその一つです。 昔々は真空管でしたがそんな時代ではなくなっています。半導体が主役です。
 (RF:Radio Frequency)

 いまでは水晶発振に集積回路:ICを使うことも増えましたが、トランジスタ1石〜2石のシンプルな回路で済ませるのも好みです。 できたら発振周波数に対応する部品定数を決めてしまい、回路の定型化を進めたいと思っています。

 発振用のデバイスとしては「ごく普通のトランジスタ」(BJT)のほか、「電界効果トランジスタ」(FET)も選択肢です。写真はRF用MOS-FETの2SK544Fでオーバートーン水晶発振器を試作しています。水晶発振子は12.8MHzのもので7次オーバートンで89.6MHzを得ています。

オーバートーン発振回路
 左図は上記写真のオーバートーン水晶発振回路です。

 図は発振回路の一例であり、FETを使っています。 発振の”モード”は「基本波モード」のほか、基本波の奇数倍の周波数が得られる「オーバートーン・モード」があってどちらでも動作します。 発振の「次数」(=発振周波数)はドレイン側同調回路の共振周波数に依存します。

 ありきたりの「基本波モード」では主にBJTを使ってテストしました。 発振周波数によって部品定数を選ぶ必要がありますが概ね定型化できています。 FETを使った回路にもメリットがあります。

                  ☆

 実験を始めるにあたり手元の資料で水晶発振回路の実例を調査しました。 メーカー製の機器では入手性や安価という理由から2SC1923(一例)と言ったありきたりの高周波用BJTを使う例が多かったです。 そのため、まずはBJTを使った発振器から始めたのですが、むしろ2SK241(一例)のようなFETを使う回路にメリットを感じました。(左図)

 水晶発振器にFETを使うメリットは「外付け部品数の少なさ」が挙げられます。 図のように少ない部品で容易にオーバートーン発振できるのです。(もちろん基本波発振にも使える) このシンプルさはかなりメリットでしょう。 The essence of beauty is simplicity.....

 またBJTを使った発振回路よりも「良い発振波形」が得られます。 「良い発振波形」なら高調波などスプリアスが少ないわけです。 BJTでも良い波形は可能なのですが、回路的な工夫や製作後の調整が必要になります。 FETなら無調整でも良い発振波形が得られ易いのです。

7次オーバートーン波形
写真はオーバートーン発振の実測波形です。

 これはうまく発振している様子です。基本波が12.8MHzの水晶発振子て7次のオーバートーン発振をさせています。

 確実な部品・・・特に発振子ですが・・・を使って製作すればうまく発振します。しかし測定器を使った確認はぜひとも行なうべきです。とりわけオーバートーン発振では必須でしょう。具体的に言えば高次発振の場合、次数を間違えると言ったトラブルが起きやすいのです。ただし実験が済んで使う部品と回路が確定すれば回路としての再現性は悪くありません。

 この例はアナログなオシロで観測していますがデジオシで大丈夫です。さらに慣れてくればスペアナ(スペクトラム・アナライザ)も良いでしょう。 もちろんTiny SAも役立ちます。ダイオード検波の「RFプローブ付き」の電圧計と併用すればアマチュア向きで便利な実験ツールになります。高周波回路だから高級な測定器が必要なのだという訳ではありません。もちろん良い測定器をお持ちなら活用のチャンスです。

                   ☆

 水晶発振回路の詳しいことは次回以降のBlogで予定します。 いったん発振回路の実験は脇に置いて、発振器で重要な高周波用電界効果トランジスタ:RF用FETについて検討します。実験を進める過程でFETの性能差がかなり感じられたためです。

 あわせて2026年現在入手可能なもの(RF用FET)を紹介しておきたいと思います。 RF回路に使うFETについては2010年ころ扱いました。(→リンク) しかし年数の経過で入手状況は大きく変わりました。あらためて扱う必要を感じています。 なお3SKタイプの2ゲート型MOS-FETについては既に扱い済みです。少し年月は経過しましたが、あまり状況に変化はないのでそちら(←リンク)を参照してください。

 これ以降は高周波回路(RF回路)の製作をされるお方向きです。興味がなければ時間が勿体ないのでお帰りがお奨めです。  自家用の製作情報としてまとめています。とうぜん目的や意図が異なれば意味も変わります。参照される際はご留意ください。

代表的高周波用FET:2SK19の系譜
 2SK19は高周波用(RF用)として登場した初期のFETです。1960年代末には誕生していました。

 このBlogでは頻繁にRF用FETが登場しています。 だいたい定番は決まっています。たとえば接合型FET(J-FET)なら2SK19や2SK192系を使います。
 帰還容量:Crssが問題になる用途では、2SK241/439/544系が定番でしょう。
 また稀にゲート接地型アンプが必要で、2SK125やJ310を使うことになります。いずれのFETもまだ十分に使い物になる性能があって手持ちがあればRF回路の製作に役立ちます。

 しかしこれらのほとんどがディスコン(Discontinued:継続しないということで廃止品種を意味します)になってしまいました。 まだ何とか手に入るものもありますが、価格は上昇傾向ですし、いずれまったく入手できなくなるでしょう。 オークションに登場するかも知れませんが、大した性能でもないFETに高額を支払う意味など感じませんし・・・。

 写真の面実装型:2SK210Yですら廃止品種ですから高周波用FETの前途はなかなか厳しいのです。 2SK19がなければ2SK192Aを使って下さいとはもう書けません。かろうじて手に入りそうな2SK210を使う前提で基板設計するか、変換基板に実装して使うことになるでしょう。

外国製RF用J-FETが登場している
 写真はBF256BとJ211で外国製(フェアチャイルド社)の高周波用(RF用)FETの例です。

 2SK19/192Aなき後を引き継ぐように、外国製のRF用FETがパーツショップに登場しています。 BF256Bはしばらく前から売られており、2SK19のように単純な構造のRF用FETを代替できるものです。2SK19で言えばGR相当です。
 また最近になって手に入りやすくなってきたJ211も同じように使えます。 なお、「J」と付いていますがP-ChのFETではなくて、N-ChのJ-FET(2SKタイプ)です。
 どちらも内部の構造が国産各社のRF用J-FETと少し違うらしく出力容量:Cossが小さいようです。ドレイン側の同調容量をやや大きくする必要があります。実験していて2SK19,etcとちょっと違いを感じました。

 これはオーバートーン発振回路のような〜70MHzあたりを扱っている際の違いです。30MHz以下と言ったHF帯ではさしたる違いはありません。従って2SK19/192A,etcの代替として十分役立ちます。 国産各社のFETと足の並びが違うので確認を要します。(写真参照) なお、BF256とJ211はドレインとソースの電極を入れ替えてもまったく同じように動作するという特徴があります。

備考:オーディオのような低周波回路にも使えますが、RF用なのでドレイン耐圧が低くて回路構成上だいぶ不利です。 オーディオ・アンプにはそれ用に作られたJ-FETが無難でしょう。 もちろん無線機のマイクアンプくらいでしたら何の問題もありません。

RFデバイスの歴史は低帰還容量化の歴史
 左図は低帰還容量デバイスの断面構造です。

 小信号用のFETは2SK19のような単純な構造のJ-FETから始まりましがRFアンプではドレイン・ゲート間の帰還容量:Crssが問題になったのです。
 低周波では気になりませんが高周波ではCrssが大きいとアンプが自己発振してしまいます。 発振対策が必須で、中和回路で帰還を打ち消したり2石使ってカスコード・アンプにして使うといった面倒がありました。

 その対策として帰還容量を減らし高周波で使いやすくしたのが3SK35(一例)と言った2ゲート型MOS-FETです。 ただしこれにも第2ゲートの部分に外付け部品が増えると言った欠点がありました。これら3SKタイプの2ゲート型MOS-FETについては既に扱い済みです。詳しいことはそちら(←リンク)を参照してください。

 同じように低帰還容量を目指して登場したのが内部カスケード型J-FETです。こちらは3端子型です。(図右) 国産でこの構造はNEC日本電気の2SK49が始まりのようです。 その後登場した東芝の2SK61でポピュラーなRF用FETになりました。 2SK61はさらにパッケージ小型化の2SK161へと改良され、面実装型の2SK211に引き継がれました。 いずれも内部のチップは同じものです。

 使う上での注意はサブストレート・ゲート(図を参照)がソース電極に結ばれている点です。ソース接地型のRFアンプには最適ですが、ソース・フォロワやゲート接地アンプ(GGアンプ)に使うと良い性能が得られないことがあります。使えないわけではありませんが、それぞれの回路に適したデバイスに置き換えた方が有利です。

内部カスケード構造のJ-FET
 写真は内部でカスケード接続になっているJ-FETの一例です。 2SK212-Dは2026年5月のいま現在、入手容易なものです。(台湾製のようです)

 2SK61や2SK161はだいぶ前からディスコンなので入手先は限られます。一時期流行ったのですが流通在庫がわずかに残るのみでしょう。 写真の2SK212-Dは同じ構造のカスケード型構造のJ-FETです。最近になって入手しやすくなっています。 この構造のJ-FETはディスコンがほとんどなので同じく流通在庫品なのかもしれません。将来性には懸念があると思います。(流通在庫:お店や問屋さんの在庫品、一種の不良在庫・笑)

 2SK241系のRF用MOS-FETが入手しにくいので代替として検討してみました。 手に入るものはIdssが小さな-Dランク品なので少々gmが低いのが弱点です。しかし少ないドレイン電流の割に良い性能でした。 100MHzあたりまでのRF増幅用として満足に働きます。〜60MHzくらいまでのオーバートーン水晶発振にも十分使えます。 もちろん中和回路など不要で2SK241の代用として多くの回路で同じように使えます。 2026年5月現在、性能からみて安価で有り難い存在のJ-FETです。 未評価ですが2SK212と類似特性の2SK315(-E,-F)が中華通販で見つかります。

 写真にありませんが松下・Panasonicの2SK606-Sも内部カスケード構造のJ-FETです。 手持ちはIdssランク-Sなので潜在的なgmも大きくて〜100MHzのオーバートーン発振回路に適当でした。RFアンプでも高ゲインが期待できます。一時期ディスカウントされていたときに入手したものです。活用例は見ませんが持っているなら使って損のないJ-FETです。(ディスコン品です)同社2SK607は小パッケージ型、2SK608が面実装型。

内部カスケード構造のRF用MOS-FETs
 写真は内部でカスケード接続になっているRF用MOS-FETです。 2ゲート型MOS-FETの改良から生まれたものです。

 上で紹介した内部カスケード型のJ-FETと同じ時期に生産されていたのでMOS型の方が決定的に有利という訳ではないのでしょう。
 しかし、正方向のゲート電圧が許容できるなど使いやすさの点ではMOS型の方が有利なように感じます。 また同じようなIdssではMOS型の方がgmが大きいのがわかります。従ってオーバートーン発振ではJ-FETよりも有利でした。

 欠点は1/fノイズ(エフぶんのいちノイズ:ピンク・ノイズとも言う)が大きいことにあります。 1/fノイズは特に低周波で大きくなるので低周波アンプやVCOでは要注意です。これらの用途には単純な構造のJ-FETあるいはカスケード構造のJ-FETがローノイズなので良い選択です。(2SK241は1/fノイズの発生源用デバイスとして使われるくらいですので・・・)

 これまでのところ国産品のみが流通しています。リード線タイプでは写真の3種類がポピュラーです。 2SK241や2SK439は既に姿を消し、2SK544だけが2026年の現在でも入手できます。ほとんど同じように使えますから取りあえず支障を感じません。

2SK241互換のSMD型FETs
 表面実装型(SMD型)で2SK241と互換のFET。

 世の中の電子機器は小型化と生産の効率化を追求しています。そのため表面実装で組み立てられるようになりました。 リード線付き部品のニーズが無くなれば廃止されるのは運命でしょう。前項で扱った2SK241,etcはいずれも廃止対象です。

 それに代わって内部の半導体チップはまったく同じで表面実装型が登場しています。 2SK302と2SK882はいずれも2SK241の面実装型です。 2SK302はTO-236型パッケージなのでやや大きくてピンピッチも1.9mmと扱いやすいのですが、より小型の2SK882に移行しているようです。

 いずれもそのままリード線付きのように扱うのは難しいので、基板設計して面実装型として使うか、あるいは写真・中央の囲みのように変換基板に実装する必要があります。
 パッケージが小さいため規格的には最大ドレイン損失が小さくなっています。しかし小信号増幅回路で使いますのであまり支障はないでしょう。

 ドレイン電流をたくさん流すと言った使い方をするならドレイン側のランド・パターンを広くとって放熱を改善すると言った対策が有効です。 リード線のない(短い)面実装型(SMD型)デバイスは高周波的にかなり有利です。 同じ回路ても面実装化で性能の向上が期待できます。 変換基板に実装したチップはリード線付きと同じように扱えます。

GGアンプ用FETs
 写真はゲート接地型RFアンプ用に作られたFETです。 High-gmに作ってあり、入力インピーダンスがライン・インピーダンス:75Ωや50Ωに整合しやすいよう作られています。Idssが大きいのも特徴です。

 携帯電話だけでなく、無線機器もフルIC化が進んだため、ディスクリート部品(個別部品)でRFアンプを作るケースも減っているはずです。従っていずれディスコン化するかも知れませんが、写真のようなゲート接地型RFアンプ用のJ-FETが作られていました。

 50MHz〜430MHzと言ったV・UHF帯のRFアンプ用に最適です。Idssが大きいことから内部抵抗が低くて、電流容量も大きいのでスイッチングタイプのミキサ回路にも好んで使われるデバイスです。

 オリジナルはシリコニックス社のU-310/E-310/J-310で、2SK125は同じ用途を狙って開発されたSONY製です。NECの2SK518はAMラジオ用となっていますが、同じような目的に使えるはずです。(2SK125、2SK518はディスコン品)

 高性能な受信機用としてRFアンプやミキサ回路の用途もあるので有用なデバイスですがリード線タイプはディスコンになったようです。 面実装型のMMBFJ310(SOT-23パッケージ)でしたら入手は容易です。基板設計派はこちらを使うのが良いでしょう。

                   ☆

 水晶発振回路を実験していたのであってFETの比較・評価は目的ではありませんでした。しかし用いるFETによって発振性能はずいぶん違うのです。そこで手元にあった各種のFETについて実際に評価・比較することにしました。
 以下はRFアンプでの直接比較ではありませんが、測定結果はRFでの性能と相関性が見られます。 従って測定容易な低周波でのテストではありますがFETの活用に当たって有益な手掛かりが得られています。 メーカーのデータ・シートでも1kHzでの評価値はよく見られます。

gm測定回路
 左図は小信号用FETのトランスコンダクタンス:gmの測定回路です。

 負荷抵抗を100Ωと低くとってストレー容量によって周波数特性が劣化しないよう考えられています。 メーカーの規格表に載っているgmも類似の回路で測定しているはずです。

 測定周波数は1kHzです。またドレイン電流はIdssで測定しています。そのためFETによる違いだけでなく、同型番のFETでもIdssランクによる違いが明確にわかります。 なるべく小さな信号(入力で100mVpp)にて測定し、波形ひずみが影響しないよう注意しました。

 低周波アンプとしてのゲインを測定し、ゲインから計算でgmを求めています。 負荷抵抗の大きさが100Ωと小さいため、アンプとしてのゲインは約0.3倍〜1倍少々しかありません。信号を大きくする目的のアンプ回路ではなく、gm測定のための回路です。

gm測定結果
 左表は各種のFETについてgmの実測値をまとめたものです。(gm:昔は相互コンダクタンスと言ってました)
 gmの単位はS:ジーメンスで昔の単位で言えば℧:モー/mhoと同じです。gm=ΔId/ΔVg  なお1mS(1ミリ・ジーメンス)=1000μ℧ですから、真空管と比べてどのFETもかなりHigh-gmなことがわかります。 真空管では難しかったような高次オーバートーン水晶発振がFETを使うと易々と可能な理由でもありましょう。(笑)

 表はパーツボックスから出てきたものを順に測定して並べただけですから、順番は意味を持ちません。

 単純な構造の古くからあるようなFETはあまりgmは大きくないことがわかります。 対して、内部カスケード型MOS-FETはどれもgmが大きいのです。 オーバートーン水晶発振では高次になるほどアンプとしてのゲインが必要になることから、実験で感じた通りMOS構造のカスケード型FETが有利なことが実証できました。

 内部カスケード型J-FETでは最も新しいタイプと考えられる2SK606(-S)が優れていて、これは実際に使っていても実感できました。 同じ内部構造の2SK212(-D)はIdssが小さいのでgmも小さくて高次のオーバートーン水晶発振は苦手です。 おなじオーバートーンでも3次なら可能なので、高い周波数が必要なら基本波の周波数が高い水晶発振子を使うと発振容易です。 これはgmが小さめの単純な構造のJ-FET・・・2SK19や2SK192Aにも当てはまります。

 発振回路の消費電流を抑えつつ、高い周波数のオーバートーン水晶発振をさせるには小さめのIdssでgmの大きなFETを選ぶのが適当でした。 また、なるべく低次のオーバートーン発振で済ませる方が容易であり実用上は5次までが無難です。 事前にテストして水晶発振子を選んでやれば7次までが実用上間違いなさそうでした。

 いずれにしてもFETを使う水晶発振回路は100MHzまでの発振が適当で、100MHz以上ではfTの極めて高い超高周波用のBJTを使った高次オーバートーン水晶発振回路を選択する必要があります。 それ以下の周波数なら周辺部品の数が少なく済むFETを使うメリットは大です。 発振波形も良好です。

                    ☆

 年初の頃からゆっくりしたペースで水晶発振回路の定番を探っています。 今回はその一環として発振用デバイスとしてのFETについて検討してみました。 この先の水晶発振回路の検討に反映させるつもりです。
 内部カスケード型のFETはJ-FET型、MOS型のいずれも帰還容量が小さいうえ、ハイゲインですからRF用として使いやすいデバイスです。 発振回路だけでなく一般の高周波増幅器(RFアンプ)への適性も大です。 従来からHF帯で何気なく無造作に使ってきた回路&部品ですが悪くない選択だったことがわかりました。
 また、消費電流を厭わない用途なら、専用デバイスを活かしたゲート接地型増幅器(GGアンプ)も優れています。

 さて、RF-FET 2026年版はいかがだったでしょうか? 何れにしてもFET,etcを適材適所に使ってこの先もRF回路を楽しみましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

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(おわり)fm

2025年12月20日土曜日

【電子管】Testing the I-F Amp. and Marker OSC : 1AB6 / DK96

I-Fアンプとマーカー発振器を兼ねる工夫:1AB6/DK96(まとめ編)

Introduction
Communication receivers require a calibration function for the readout frequency. I am designing a receiver using vacuum tubes, but I will add the calibration function without increasing the number of tubes. To achieve this, I experimented with a circuit that serves as both a second intermediate frequency amplifier and a marker oscillator. The marker oscillator circuit I tested, using a 200kHz crystal oscillator, worked extremely well. With this, all components for the battery-powered tube receiver have been experimentally verified. I have summarized them in a block diagram.(2025.12.20 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【周波数マーカーは必須の装備】
 電池管を使って受信機を創るプロジェクトです。 コリンズタイプのダブル・スーパ受信機を作ります。この最終回はその「まとめ」です。

 前回のBlog(←リンク)では第2周波数変換を扱いました。 これで主要な構成要素の検討は終わりました。 おおむね実用になりそうな性能が得られるでしょう。

 受信周波数の安定度は第2局発でほとんどが決まります。 周波数の読み取りもその部分で行なうことになります。 ダイヤル面に7000〜7200kHzの200kHz幅を展開する訳ですが、アナログ読取りで行くことになります。 したがって最低限の機能としてバンドエッジを知って校正するためにマーカーオシレータが必須です。 今回のBlogは第2IFアンプとマーカーオシレータを兼用する回路の実験を目的とします。

                   ☆

 半導体技術が進歩した現在、周波数の読み取りはデジタル技術を使えば楽々可能です。せっかく通信型受信機を作るならそうすべきなのかもしれません。しかしここではできるだけ「電池管」(乾電池用の真空管)だけを使って『使い物になりそうな』受信機を目指したいと思っています。 同時にできるだけ少ない球数で実現したいものです。 従って普通の受信機設計ではやらないようなことをやらねばなりません。まさかIFアンプとマーカーオシレータを兼用するなんてねえ・・・。 写真はそんな実験の様子です。(笑)

 まあ、大したお話ではないので興味がわかないとお感じならこの先はパスされてください。すでに年末です。あなたの貴重な時間を大切にされますように。

【低い周波数の水晶発振子】
 例えば1MHzとか10MHzのような高い周波数の水晶発振子で発振させ、それを分周して100kHzや25kHzを得ると言った手は使え(使い)ません。 電池管でもおそらく分周器の製作は不可能ではありませんが、球数ばかり増えてしまって「何のこっちゃ」ってなります。(笑)

 ですから基本周波数が100kHzと言った低い周波数の水晶発振子を使うことになります。
写真は100kHzと200kHzの水晶発振子です。 HC-13/U型の100kHzでも良いのですが、もう少し小型の200kHzで行こうと思います。周波数が倍になってだいたい半分のサイズです。

100kHz:HC-13/Uは不安定】
 大きな水晶発振子に共通と思われますが、HC-13/U型の100kHz水晶には欠点があります。受信機のマーカーオシレータくらいなら使えるのですが、周波数基準用としては不安定です。例えば周波数カウンタのタイムベースには不向きでしょう。温度係数もありますが『姿勢誤差』が問題です。
 具体的には発振子を縦にするのか横にするのか、あるいは寝かせるのかなど姿勢を変えると周波数が変わるのです。 周波数が低いため水晶板そのものが大きくできています。そのため重力の影響を受けわずかに「たわむ」のでしょう。地球上にある限り重力から逃れられず姿勢で周波数が動くわけです。 HC-13/U型水晶発振子は内部の水晶板が片持ち支持構造なので重力の影響を受け易いのでしょう。 個体差もありますが実際に100kHzのHC-13/Uでは数Hzの変化が認められます。(於・7MHzの校正点) 低い周波数でも腕時計に使うような音叉型小型水晶発振子なら大丈夫なのですが・・・。

 200kHzのHC-6/Wでも『姿勢誤差』と無縁ではないのでしょうが顕著にはわかりません。100kHz/HC-13/Uより有利です。

【I-Fアンプとマーカー発振を兼ねる回路】
 5グリッド七極管:1AB6/DK96を使って、I-Fアンプ(中間周波増幅器)とマーカー発振器を兼ねる回路です。 マーカー発振器の周波数は200kHzです。

 フィラメント、第1グリッド、第2グリッドの3つで構成される三極管で水晶発振を行ないます。 これがマーカー発振器になります。 中間周波信号は第3グリッドに加えられ普通に増幅されます。 1AB6/DK96の相互コンダクタンス:gmは専用の五極管:1AJ4/DF96よりもやや小さいのですが、受信機としてはI-Fアンプを2段にすることで十分なゲインが得られます。 なお、第1I-Fアンプ部にこの回路を使うとマーカー発振の漏洩が後続のI-F増幅段に影響します。 従ってこの回路は第2I-Fアンプの部分に使います。

 発振の確実性を得る目的で第2グリッドには概略200kHzに同調したLC共振回路(タンク回路)を置きます。最適な発振状態を得るため、そのLC回路の共振周波数は調整する必要があります。200kHzよりやや高い周波数に合わせます。ここではコイルのコアで共振を加減しています。 発振波形ですが、第1グリッド側はきれいな正弦波状です。ここからマーカー信号を取出し小容量:2pFで結合してRFアンプに導きます。

 水晶発振子は上記で説明どおり200kHz、HC-6/W型です。 LC共振回路(タンク回路)には7mm角の可変インダクタを使いました。(東光:7PLA型) 発振周波数の微調整は第1グリッド側の可変コンデンサ:C2で行ないます。 これでJust 200kHzに合わせられます。 真空管は1AB6/DK96を使いましたが、1R5あるいは1R5-SFで作ることもできます。次項を参考にしてください。

【AN/GRC-9/RT-77のマーカ・I-Fアンプ部】
 ここで試作したマーカ発振を兼ねるI-Fアンプ回路は米陸軍の野戦用無線機:AN/GRC-9/RT-77の受信部を参考にしています。第二次大戦後の朝鮮戦争あたりで多数使われたポピュラーな軍用無線機です。

 AN/GRC-9/RT-77は2〜12MHzをカバーするHF帯の移動用AM/CWモードのトランシーバで、電池管を主体に構成されています。受信部は高1中2のシングル・スーパでI-F周波数は456kHzです。そのダイヤル目盛りの校正用として200kHzのマーカ発振器が付いています。 小型化と省電力を目的に最少限の球数で構成されています。 そのためマーカ発振器とI-Fアンプを兼ねたのでしょう。そうすることでマーカ発振用の真空管が省けます。(トランジスタなんて存在しなかった時代の設計ですから・笑)

 図の回路でモードスイッチをCALのポジションにすると、1R5・第1グリッドのGNDが解除されます。同時に第2グリッドの高周波バイパスが解除されてマーカーが発振開始します。そのマーカ信号をRFアンプのグリッドへ結合して200kHz毎の校正ポイントが得られます。

 参考までにAN/GRC-9/RT-77の送信部は、直熱送信管:2E22がファイナル管で、AMで7W、CWで15Wを得ています。AMは2E22のサプレッサ・グリッド変調という珍しい形式です。送信可能な周波数は受信部と同じで、可変周波発振器:VFOのほか水晶発振(Band毎2ch内蔵)も選べます。なお、外観写真をはじめ詳細な情報はネット上にたくさん存在します。

【発振波形を観察する】
 発振波形を観察してみました。 1AB6/DK96の第1グリッドを測定しています。

 第2グリッド・・・発振三極管のプレート相当・・・にも200kHzの信号が現れますが、プラス側の半サイクルが圧縮された歪み波形になっています。 マーカー回路の趣旨から言えば波形に歪みがあって高調波が豊富な方が望ましいと思います。 しかし実際には波形のきれいな第1グリッド側(写真の観測ポイント)からマーカー信号を取り出しています。

 マーカー信号は受信信号と比較すれば極めて強力です。おそらくRF-Amp.で歪むはずで、高調波がいっぱい出ますからそれで良いのかもしれません。

【マーカーの周波数を合わせる】
 回路図のC2で周波数を200kHzちょうどに合わせられます。

 受信周波数の読取り精度はマーカーの周波数が決めます。 従って良く合っていて安定していなくてはなりません。初期精度を上げるためには周波数調整を行ないます。 少し通電エージングしてから周波数合わせします。

 第1グリッドに周波数カウンタのプローブを当てて測定するとプローブを外したとき誤差を生じます。最も良いのはマーカー発振器の高調波と標準電波・・WWV/WWVHなど・・を別の受信機で受信しながらC2でゼロビートを得る方法でしょう。

 200kHzという低い周波ですから発振周波数は十分安定しています。 ただし、実際の校正周波数である7000kHzや7200kHzでは高調波を利用しますから、35〜36倍で効いてきます。マーカー発振器の周波数安定度はたいへん重要です。 

【消費電流を観察する】
 回路の全電流を実測しています。 B+が50Vのとき約780μA流れました。 これはマーカーが発振した状態における全電流です。

 単なる第2IF-アンプとして動作しているときの消費電流は異なります。 マーカーが発振している状態では第1グリッドで自己整流が起こって負バイアスが発生するからです。 負バイアスのためプレート電流も、第2グリッド電流も抑制されます。

 マーカーの発振を止めて単なるI-Fアンプとして動作させたときの消費電流は935μA前後に増えます。 使用した1AB6/DK96(手持品のNo.1)での電流値であり、球が変わったり発振状態が変化すると電流も違ってきます。もちろん大きく変わるものではありませんが。

【余録:YEWの3201型テスター】
 写真に写っている「3201型回路計」はYEW:横河電機のスタンダードモデルでした。電気工作が趣味の一般的なアマチュアは三和や日置のテスターを買いました。YEWのテスターは計測のプロの持ち物で研究室などで見かけるものです。 JIS規格品ですし、その信頼性が買われたからでしょう。(それだけに高額でした) アナログ好きの私は100kΩ/Vに惹かれてしまい持っておりましたが、あまり使い勝手が良いとは言えず滅多に使っていません。 堅牢そうにできていますが大きくて狭い実験机ではかなり持て余し気味だからです。
 色々試して、いつも使っている三和のFX-110がコンパクトで邪魔にならずスケールも読みやすいように感じます。比較してみても指示精度に違いはありませんでしたから、三和のテスターで十分なのです。 デジタル時代の今さらではありますが日本製のアナログテスターはどれもたいへん良くできています。(もちろん今どき安価なDMMがいちばん実用的ですけれど。読み取り易さを重視するならデジタルの一択です・笑)

                   ☆

【電池管受信機の最終構成】
 今回のマーカー回路を兼ねるI-Fアンプで計画している受信機に必要な全ての要素について実験は済みました。

 まとめの意味でブロック・ダイヤグラムに書き落としてみます。 この図でご覧のように電池管を7球使ったダブルスーパ・ヘテロダイン受信機になりました。 図にありませんが受信選択度を決める帯域フィルタにはメカニカルあるいはセラミック・フィルタを使うつもりです。 もしゲイン不足を感じるようならあきらめてLC回路のIFTで済ますかもしれません。 このあたりはまだ少しだけ検討を要する部分です。

                    ☆

 しばらくお休みしているBlogですが、尻切れのようでいかにも纏まりに欠けます。予定に残っていたマーカー発振器の実験を追加した上で、目標の受信機として「まとめ」を行なうことに致しました。 さして状況も変わっていないので、すぐ製作に進むのは難しいと思っています。 いつか展望がひらけてきたら再始動するという約束でこの「電池管で作る通信型受信機」というテーマを終えましょう。 もちろん新たなテーマによるBlogの再始動もぼちぼち考えておきたいところです。何かできそうなことから始めましょう。 未来に乞うご期待。(笑) 2025年の師走も押し詰まって参りました。皆様にとって2026年(令和八年)が輝ける一年でありますように! ではまたいつかお会いしましょう。 de JA9TTT/1

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参考:公開から2週間を過ぎたBlogに頂いたコメントはすぐには反映されません。(SPAM対策のためです) 確認しだい公開いたしますので少々お待ちを。遠慮なくどうぞ。

(おわり)nm


乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→ここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→いまここ

2025年6月11日水曜日

【電子管】Testing the 2nd Converter (Part 2)

第2周波数変換をテストする(2)(追試編)

Introduction
In the Collins-type receiver I designed in my last blog, the second local oscillator determines the frequency stability. I use a self-converter circuit to save power in my design using battery tubes. I use a 1AB6/DK96 battery tube in the converter circuit, but the local oscillator coil is the most important part. The first core material I used with high permeability didn't have good temperature characteristics. So I decided to wind an air core coil. And I test it.(2025.06.11 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【ペンタ・グリッド管の第2コンバータ・追試】
 電池管を使って受信機を創るプロジェクトを進めています。 コリンズタイプのダブル・スーパ受信機を作る話として検討を進めます。

 第2コンバータはLC共振回路を使った自励発振式の局発回路を使っています。 前回のBlog(←リンク)ではフェライト・コア入りのボビンに巻いた局発コイルで試しました。 実用になりそうな性能ではあるものの、周囲温度変化による周波数ドリフトは大きめでした。

 その対策として、ステアタイト製ボビンに巻いた局発コイルを作ってみました。 今回のBlogはそのコイルを試すのが目的です。

                   ☆

 せっかく通信型受信機をつくるなら「まともな真空管」を使ったらどうか・・・というご意見もあるでしょう。 電池管であろうが普通の球だろうが実験・製作の手間はさして違いませんから。 乾電池を電源にする受信機を作るのが目的なら別ですが、結局AC電源で使うことになるのでは普通の球で作る方がマシな物が作れるでしょうね。 ここでは長年ジャンク箱に眠ってきた「電池管を使う」というのが一つの目的になっていますので方針を継続したいと思います。

【第2コンバータの回路設計】
 回路図は前回のBlogの再掲載になりますが、このテストではおもに+B電源(真空管のプレート系電源)の電圧を67.5Vとして動作させた時のデータがまとめてあります。

 これまで手近にある電源の都合で+B=50Vでテストしてきました。 今回は50Vでは本来の性能が発揮し切れないように感じたため、+67.5Vにアップしてみました。 同時に第2グリッド(発振用三極管のプレート相当)の電圧を調整しているドロッパ抵抗を加減してみました。(27kΩ→15kΩへ変更) これによって発振部のgmがアップし、少々発振が弱い局発コイルでも何とかなるようにしています。

 本質的な対策としては、局発コイルのプレート側フィードバック・コイルを巻き直す(多くする)べきです。ここでは巻き直さずに済ませる方向で検討しました。

参考:(電池管の電源事情)電池管を使うラジオ回路の電源電圧はある程度決まっていました。低い方から22.5V、45V、67.5V、90Vがよく使われていました。 これらの電圧は市販されていた積層乾電池の公称電圧に由来しています。 従って、こうした電圧における動作例が真空管の規格表に掲載されていたのです。 特に67.5Vは最もポピュラーで、起電圧が1.5Vの素電池(マンガン電池)を45個積層したBL-M145と言う型番の積層乾電池が有名でした。 クリスタル・イヤフォンで聴くような簡易なラジオの製作記事では22.5V(電池の型番はBL-MV15等)もよく使われていました。 フィラメント用の電源はUM-1やUM-2と言った電圧1.5Vで容量が大きめの単電池を使いました。

【トラッキング・エラーを計算する】
 既にトラッキング回路の設計は済んでいます。 今回テストするコイルもそれに基づいて製作したものです。

 理想状態で計算した結果と現実では幾分か違いが出て当然です。 ただし周波数も低いうえ、許容されるストレー容量も案外大きいことから、計算結果とよく一致するのではないでしょうか?

 計算上どの程度のトラッキングエラーが発生するのか、掴んでおきます。 その結果、たったの250kHzだけカバーする仕様では、トラッキングエラーはせいぜい100Hz程度のようです。 トラッキングの調整をする際にRF同調側を可変範囲の両端ではなく幾らか「内側の周波数」で合わせ込めば重要な周波数付近の誤差をもっと小さくできます。

 なおこの設計ではトラッキングエラーのカーブは2次曲線的になって中心付近で最も誤差が大きくなる特性です。これは可変範囲がかなり狭いからです。だからと言って問題になるほどのエラーではありません。支障なく使えます。 局発側のトラッキング調整(=受信周波数範囲を合わせる)ではコイルは固定でパッディング・コンデンサを加減する方法で行なう予定です。

【第2コンバータの発振波形】
 第1グリッドで発振波形を観測しています。 ただしこの写真は+B=50Vにおける測定例です。

 はじめは+B電源は50Vで検討を進めていました。 確実な発振は得られたのですがやや発振が弱いように感じたのです。 そこで二つの対策が考えられました。

 一つ目はコイルの巻き直しです。プレート側のフィードバックコイルを13回巻きから15回以上にすることです。 もう一つ結合を密にするために同調側との距離を減らすことです。場合によっては同調側のコールドエンドの上に重ねて巻き密着させてしまいます。

 しかしいずれも厄介なので第三の方法として回路定数である程度カバーできないか検討してみました。 それと+B電圧をアップするのも効果があるはずです。

 結局、コイルの作り直しも大変ですから回路電圧のアップと部品定数の変更で何とかしました。 まず+Bを+50Vから+67.5Vへとアップします。 さらに第2グリッドのドロッパ抵抗:R2を小さくしてみるのです。 標準設計ではR2=27kΩですが、これを15kΩや10kΩに減じます。

 そうすると第2グリッド電圧がアップし、流れる電流も増えるのでgmが大きくなって発振も強勢になります。 そうは言ってもむやみに電流を増やすのは考えものです。 電池管は特に最大電流が小さいからです。過剰な陰極電流(Ip+Isgなどの合計)はエミ減(陰極の電子放射能力の減退:エミッション減退)に繋がって球の寿命を縮めます。(あまりにも短命では困りますが、今さら球の長寿命に拘る理由もないんですけれども・笑)

 検討の結果R2=15kΩが概ね適当な値であることがわかりました。もちろんこれは局発コイルの作り方によっても変わります。 上記の回路図はそのような部品定数になっています。 従って、現状で発振振幅は約8.6Vppが得られており、まずまずの動作状態になっています。


【局発周波数のドリフト特性:タイムラプス・ビデオ】
(参考:このビデオは再生しても音はでません)

 静止画ばかり見ていても面白くありません。 試みにタイムラプス・ビデオを撮影しました。 このビデオは20秒ごとに静止画を撮影し繋いで動画にしています。 11時17分頃から回路への通電開始とともに撮影も開始し、12時20分頃までおおよそ1時間少々の間の周波数の変動を捉えてみました。電源投入から1時間の周波数変動ということになります。再生時間は36秒間です。

 肝心の周波数変動ですが、スタートから徐々に周波数が下がって行きますが、途中から上昇に転じるのがわかるでしょうか? その間に300Hzくらい変化しました。 前のコイルは同じようなテストで10kHz弱の変化があったので明らかに改善されていると思います。

 一旦下降して再び戻るのは、周囲温度の変化があったからです。 最初温度上昇があり、その後は換気を行なったので元の周囲温度に戻ったのでしょう。 コイルの温度係数は+ですので、温度上昇でインダクタンスが増えて共振周波数は下がります。 簡単ではないと思いますが、温度係数がややマイナス気味のコンデンサで温度補償すると言う手もありそうですね。

 コイルを裸のままで観測するなんてナンセンスですが、あくまでも比較テストですので正規の測定前の様子見だと思ってください。こんな実験ですが良い結果を得たと思っています。 ステアタイトのボビンに巻いたコイルはやはり安定しています。

 タイムラプスはいまだ試行中なので、次回はもっとわかりやすい時計の指針位置にするとか、撮影を工夫してスタートしてみたいと思います。 今回はちょっとわかりにくいですが、初めてなのでsri。 見てるだけのお客サンも評価作業の雰囲気だけでも味わってください。(笑)

【コイルを固定してしまう】
 高周波ワニスを塗る順番が逆だよって言われそうですね。 経験によればサンハヤトの高周波ワニスのインダクタンスへの影響はほとんど問題になりません。 従って、あとから塗ってもあまり支障はないと思っています。

 巻き直しが発生したとき、ワニスが塗ってあると厄介なため、確認が済んでから塗布することにしたのです。

 防湿効果と巻線の固定の意味からも高周波ワニスの塗布はあった方が良いでしょう。 なお、この高周波ワニスは販売終了になっています。 代替品が線材屋さんなどで小分けされて販売されています。 できれば塗布した方が良いので手に入れておくことをお薦めします。コイル全般に使えます。(こうしたコイルを巻くことは稀になっていますけれど・笑)

 発泡スチロール樹脂をちぎって溶剤に溶かし代用品を作るというアイディアが昔からありました。しかし巻線との密着性があまり良くないので今一つだと思います。むかし作って試したことがあります。

                    ☆


【高性能菅でテスト:6AJ8 / ECH81】
 低性能な電池管ばかり相手をしていたら少々疲れてしまいました。電池管ではない高性能な真空管を試してみましょう。これは息抜きの実験です。(笑)

 6AJ8 / ECH81は欧州系のコンバータ管です。FM / AMラジオ用として開発された真空管です。

 米国系の技術が主流になった戦後の日本ではあまり知られていない存在でしょう。 真空管式のAM/FMラジオが作られたごく短い間だけ国内でも使われた球でした。(1960年代始め)

 当時、NHK-FMと東海大の実験局:FM東海しか存在しませんでした。そのため魅力に乏しいFM放送は殆ど注目されず、FM付きラジオも商売にはならなかったようです。一般家庭には普及しませんでした。 FM放送が大衆化したのは'70年代のラジカセ時代になってからです。もちろん真空管ラジオの時代は終わっていました。(参考:FM東海は現在あるエフエム東京の前身にあたります)

 6AJ8は五グリッド管(七極管)と三極管の複合管です。 FM受信のとき、七極管の部分は10.7MHzのFM用中間周波増幅器として動作します。 AM受信では三極管の部分で局発を行ない七極部で周波数変換します。AMの中間周波数は455kHzでした。

 6AJ8は変換コンダクタンスが大きいのでゲインが高く、等価雑音抵抗も低いため良く知られているコンバータ管:6BE6の3倍くらいFBな球です。 ただ、通信機への応用例はほとんど見られず、高性能とわかってはいても使われない球でした。 わたしも使ったことはありませんでした。(「通信型受信機の解説と実際」JA1FG梶井OM(故人)の著書:CQ出版社・初版1966年にわずかな使用例がある)

 その理由は、一般市販のコイルセット(例えばTRIOのSシリーズコイルなど)の局発コイルが使えないためです。 市販品はカソード・タップ付きハートレー型発振回路用の局発コイルですからそのままでは使えません。 既成コイルの改造が必要とあっては手を出す人も稀だったのでしょう。それに球数をいとわない通信機用としては他の形式の周波数変換回路(ミキサー回路)の方が6AJ8/ECH81よりも優れていたからです。

 今回の一連の電池管を使った実験では二次巻線付きの局発コイルが必須だったため自作しました。 その派生で6AJ8/ECH81もテストできた訳です。 いずれ詳細をレポートできたらと思っています。 ざっとした評価ですがなかなか良い球です。  なお、トランスレス・ラジオ用の球としては12AJ7 / HCH81があってヒータ電圧違いの同等管です。

                    ☆

 ステアタイトボビンに巻いた局発コイルが適切か否か調べるために実験しました。 確実な発振が起こってくれて、周波数も安定してくれたらという期待を込めて。

 どうやらそれは目論見通り旨く行ったようです。 電池管の受信機用としてはちょっと大げさですがこのコイルを使ってみましょう。 では。 de JA9TTT/1

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つづく)←リンク fm


乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→いまここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→ここ

2025年5月27日火曜日

【電子管】Testing the 2nd Converter circuit: 1AB6 / DK96

第2周波数変換をテストする(活用編)

Introduction
In the Collins-type receiver I designed in my last blog, the second local oscillator determines the frequency stability. I use a self-converter circuit to save power in my design using battery tubes. I use a 1AB6/DK96 battery tube in the converter circuit, but the local oscillator coil is the most important part. The first core material I used with high permeability didn't have good temperature characteristics. So I decided to wind an air core coil.(2025.05.27 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【ペンタ・グリッド管の第2コンバータ】
 電池管を使って受信機を創るプロジェクトを進めています。 コリンズタイプで受信機を作る方向で検討を続けます。

 前回のBlog(←リンク)では第1コンバータであるクリスタル・コンバータ部をテストしました。今回はそれに続く第2コンバータを検討します。

 写真はテスト途中のものです。まずは局発コイルを巻き、オシレータ・トラッキングの設計を検証しています。必要なカバレッジが得られるか確認しているところです。 もちろんここは周波数安定度を決めますからとても重要な部分です。その検討も行ないました。

 バリコンは予定通りFM3連・AM2連のタイプを使います。カバーする周波数の範囲が250kHzと、ごく狭いことから、容量の小さい方のFM用3連バリコンの部分を使うことにしました。

                    ☆

 詳しくはこれ以降の部分で明らかになりますが一般的にアマチュアが作るコリンズタイプ受信機の後半部分は単なるシングルスーパと等価なものです。要するにシンプルな短波ラジオのようなものですから周波数帯こそ違いますが中波BCバンドのラジオとさしたる違いはないわけです。 周波数カバー範囲は短波帯ではありますが、一般的に2〜3MHzあたりのごく低い方を選ぶので難しい周波数帯でもありません。

 シンプルなラジオ並みの設計ですからあまり興味の対象ではないかも知れませんね。 今回も暇人専用コンテンツです。 もし超お暇なのでしたらお付き合いください。(笑)

【第2コンバータの周波数関係】
 すでに前々回のBlog(←リンク)においてブロック図で検討していますが、もう少し具体的な設計に踏み込んでみます。 第2中間周波は455kHzの設計です。

 まず、受信周波数範囲ですが7MHzのHAMバンドをフルカバーする設計で考えます。 7.000〜7.200MHzのカバーが必要ですが、上下に多少のマージンを設けます。
 従ってカバレッジの設計としては25kHzずつのマージンを設けて6.975〜7.225MHzとしましょう。可変範囲としては7.100MHzを中心に250kHz幅になります。

 なぜもっと広い周波数範囲にしないのかと言う疑問もあるでしょう。例えば7.000〜7.500の500kHz幅にするとか、7.0〜8.0MHzの1MHzでも良いのではと思われるでしょう。

 これはダイヤル機構が関係します。 しっかりしたダイヤル機構が構築できるなら500kHzや1MHzでも良いのです。(要スプリアス検討) ここでは簡略にする必要からなるべく狭く設計したいと思っています。 ダイヤルスピードがSSBやCWのチューニングに適することも大切です。

 具体的には、バリコン付属の減速ギヤ+ボールドライブを考えているのでカバー範囲をあまり広くするとダイヤルがクリチカル過ぎて操作性が低下してしまいます。 まあ選択度も良くないのでAMの受信なら少々クリチカルなダイヤルでも大丈夫なのですが・・・ここではSSB/CWも受信対象ですので。

 バリコンは最初の写真にあるものを使い周波数範囲を決めクリスタルコンバータの局発周波数を5.12MHzとして第2コンバータの具体的な周波数設計を行なってみました。左図で確認してください。

【第2コンバータの回路設計】
  左図は具体的な第2コンバータ回路です。 コンバータ管には1AB6/DK96を使います。

 受持つ周波数範囲は1.855〜2.105MHzと中波のちょっと上ですし、カバー範囲も狭いのでコンバータ管は1AB6/DK96ではなくて1R5(-SF)でも大丈夫でしょう。上記周波数帯を455kHzへ周波数変換します。

 周波数も低いですから引っ張り現象(Pull-in)もほとんど問題にならない筈です。 ただし多少なりとも有利な1AB6/DK96を使います。もし手持ちがあるなら1L6や1U6も適する筈です。1U6は1AB6/DK96同様に25mAフィラメントの省エネ管です。(どちらも1AB6/DK96と互換球ではないので回路変更を要する)

 1stコンバータ・・・クリコン部の出力には強力な局発の成分:5.12MHzがかなり漏れて来ます。 そのため第2コンバータが入力オーバーで飽和しないよう、入力部に2段の同調回路を置きます。

 それ以外はBC帯の自励式コンバータ回路と違いはありません。 この回路もキーポイントは局発回路で、特にコイルにあります。 まずはその試作から始めました。 最初の写真はコア入りのボビンに巻いて試作した局発コイルで局発部分の動作を確認している様子です。

【発振波形で確認】
 最初にコア入りの小型ボビンで試作した局発コイル(OSC Coil)で発振を確認します。

 巻数比が適正か否かの確認が先決でそれは発振々幅の観測からわかります。他にもグリッド抵抗:R1=27kΩを流れるグリッド電流で確認する方法もあります。

 写真のように第1グリッドで見て8Vpp得られていますからマズマズと言えるでしょう。電源電圧が低いためか、やや発振が弱い感じもしますが取り敢えず使えそうです。

 具体的には東光製の「10PA」と言う形式のコイルボビンに巻いています。ツヅミ型の芯コアと外側の調整式ツボ型コアという構造になったものです。
 いずれのコア材も透磁率:μが大きいらしく少ない巻き数で大きなインダクタンスが得られます。そのため作り易いメリットがあります。また一次側巻線と二次側巻線の結合度が高くて発振コイル用には向いています。

 しかしこのコイルは少量の入手が難しいのでこれ以上の詳細は省きます。是非とも欲しいお方には差し上げますので連絡ください。少量なら手持ちがあります。
 類似のコア材としてaitendoの「IFTきっと」があって同じように使えます。(巻き回数は異なる。未製作ですが、1次側:39回、2次側:10回で良いはず)

【発振はするが・・】
 発振周波数を確認しています。2310kHzというのは受信機としての受信周波数で言えば低端にあたる6975kHzになります。(-455+2310+5120=6975(kHz))

 トラッキング回路の設計検証と周波数安定度の様子を見るのが目的です。

 表示周波数の下位桁が文字化けしていますが、カメラのシャッターが開いている間に周波数変動があって数字が多重露光になっているためです。

 1Hz以下の部分ですし、何のシールドもされていないブレッドボード製作ですから常に微小な周波数変動があっても不思議ではないでしょう。 水晶発振ではなくてLC発振ですから。(笑)

 短時間の周波数安定度を見ていて、概ね実用できそうな感触をもちました。 そのため通電のまま暫く放置して変動を観察してみました。

 目的の周波数帯:7.000〜7.200MHzが逃げてしまうほどの周波数変動はありませんでしたが、思ったより大きな変化があるようでした。 電源ONから数時間で10kHzくらいの変化するようです。 通電初期の変動は大きいのですが、すぐに安定してきて変動量が減って行きます。しかしジワジワした変動は残るようです。

 通電したままでエージングが進めばもっと安定してくる可能性もありますが、どうもミュー:μの大きなコア材を使ったコイルは周囲温度の変動に敏感な感じでした。透磁率μの温度係数がかなり大きいのでしょう。 未検討ですがaitendoの「IFTきっと」を使う方が幾らかマシかも知れません。
                   ☆

 周波数カバレッジには問題はないようです。 トラッキング回路の設計・計算は大丈夫として周波数安定度はもう少し何とかしたいと思いました。 コア入りの局発コイルは調整に便利なのですが・・・思いきって空芯コイルを試すことにしました。

【マヂック・ハンダ?】
 部材ストックからステアタイト製のボビンを見つけました。直径は1インチ:25.4mmで長さは63mmなので、2・1/2インチのようです。

 すっかり忘却していて出所不明ですが、おそらく自励発振式のLC-VFOを作るつもりでストックしておいたのでしょう。 使わなければいずれ不燃ごみの運命ですから使ってやることにしました。

 ところで「マヂック・ハンダ」って知ってますか? コイル好きでしたらバーアンテナとかコイルの端に巻線を止めるための樹脂が塗ってあったのを覚えているでしょう? いえいえ、コイル全体に塗る高周波ワニスのことではありませんよ。
 見知ってはいたのですが、どんな「物質」でどう「扱う」のかは知りませんでした。 インターネット時代になってから知識が広まり、あるとき材料の入手と使い方の情報がもたらされました。(情報源はJA2EP/JH1FCZ・大久保OMのところだったように思います)

 タイトボビンに空芯コイルを巻くなんて滅多にありませんのでコレを使うこともほとんどありません。この機会に「マヂック・ハンダ」を活用してみましょう。
 棒状の樹脂が販売されていて使い方は簡単です。 ハンダ鏝のような高温のコテ先で溶かして塗布するだけです。(サトー電気で売っていた(いる?)との情報あり)

 ただし専用コテならともかく、ハンダ鏝をそのまま使うとコテ先が傷んでしまいます。 滅多に使うものではないので応急的にハンダ鏝の先にアルミ・フォイルを巻きつけて使いました。 一般的なハンダ鏝のような300℃以上にもなるようでは高すぎるのですが、よく溶けて作業性は悪くありません。 ただし高温のまま放置するとコテ先に残った樹脂がコゲてくるようでした。

【巻数は?】
 マヂック・ハンダはうまく使えて、コイルの巻線固定に使えました。 綺麗に仕上げるにはちょっとコツがいるようですが・・・

 空芯コイルの巻数とインダクタンスの関係は昔から計算式が良く知られています。 長岡氏係数表を使って形状寸法から計算できます。

 経験からかなり高精度で算出が可能なこのとはわかっていますが、可能なら実寸法を求めてから計算する方がより精度よく求められます。 ここでは60回巻いて寸法を求めてから計算してみることにしました。もちろんインダクタンスの実測も行ないます。 巻線にはφ0.4mmのポリウレタン銅線(ウレメット線:UEW線とも言う)を使います。 周波数が低いことから大きめのインダクタンスが必要なので密着巻きで作ります。

 数えながら手巻きしたのですが、最終的には現物の巻線を数えて確認しました。写真に撮って画像拡大して数えると容易です。59回巻きでしたね。(笑) ノギスなど使って巻き幅も実測しておきます。 これらの寸法はコイル設計に使います。 59回巻きのコイルのインダクタンスは実測で約63μHありました。計算値とほぼ一致です。

 参考:寸法形状からインダクタンスを求める方法を左図に示します。 寸法を実測して電卓で計算すればかなり高精度にインダクタンス値が求まります。 空芯のコイルに限ります。コア入りのインダクターには適用できませんのでご注意を!

【コイル設計】
 ステアタイト・ボビンに密着巻きしますのでコイルの内径はボビン径の25.4mmです。

 さて、何回巻いたら目的のインダクタンス・・・この例では52μHが得られるのでしょうか?
 巻線の直径、内径、巻幅などを計算ソフトにインプットすればインダクタンスが計算できます。 これは自作の計算アプリですが、ほかにもWeb上のコイル計算サイトがあるようですから利用すれば簡単に求められます。

 形状の実測から寸法を求めていますのでかなり精度の良いインダクタンス計算ができるでしょう。 計算と実測での比較検証によれば誤差1%くらいの精度があるようでした。なかなかの高精度ですね。 ここでは51回巻けば目的とする52μHのコイルが作れそうです。

【コイルを巻く】
 実測による補正で52〜53回巻きで目的のインダクタンス付近になりました。 1〜2回違いですから計算通りと言えるでしょう。

 現実のコイルには分布容量があって、単純に共振周波数を見つけるだけではそれが分離できません。 従って高精度のコンデンサと合わせて共振点を一箇所だけ求めて計算したところでインダクタンスは正確には得られません。

 正確なインダクタンスを求めるには2〜3つの共振周波数から計算するのが良いでしょう。未知のインダクタンスのほか実際に分布容量も含めて計算で求められます。 磁気コア入りコイルの場合、コアの周波数特性が現れるので精度が落ちます。 しかし空芯コイルなのでコアは空気ですから周波数特性は概ね無視できます。従ってかなり高精度で計算できます。数個の既知の容量値のコンデンサとそれらとによる実測の共振周波数から、未知の分布容量とインダクタンスを連立方程式で計算します。角周波数:ωなど入ってきますが計算そのものは中学生レベルの算数ですね。ww

 ちなみに4種の精密な値のコンデンサを使い、得られた4つの共振周波数から求める方法で計算した結果、このコイルのインダクタンスは52.4μH、分布容量は4.23pFでした。53回巻きでちょうど良かったようです。

 しかしながら実際に回路に入れて使う場合、配線によるインダクタンスや回路自体の分布容量とか真空管の管内容量もあって影響の完全な予想は困難です。コイル単体ではほどほどの所へインダクタンスが収まれば申し分ないはず。 最終的には周波数の微調整で追い込むわけです。 今回はインダクタンスの加減が容易ではないのでパッディング・コンデンサの方で周波数カバレッジを調整します。

 写真のようにフィードバック用コイルも巻いて完成させました。 フィードバックコイルの巻き数は決めかねたのですが、やや多めの13回巻きでやってみます。巻線の間隔は約2mmです。

 このBlogの作成時点では実回路に入れた検証は済んでいません。従ってもし旨くないようでしたら巻き直す可能性があります。 空芯コイルは本来再現性が良くて同じ材料さえあれば作り易い筈なのですが2次巻線があるとなかなか厄介なものですね。

                    ☆

 中波ラジオのコンバータ回路と同じような製作ですが周波数安定度を決めますので重要度の高い部分です。 肝心の局発コイルはコア入りボビンを使うと製作・調整が容易ですが温度係数は大きくなりがちです。 φ1インチのタイト・ボビンで空芯コイルを作るのは少々やりすぎかも知れませんが興味のおもむくままに製作してみました。あとはきちんと発振してくれたら良いのですが・・・もちろん周波数安定度も気になります。 乞うご期待。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1

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乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
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第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
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