【実用・水晶発振器・2】(その2:デジタルIC編)
Introduction
I tested a crystal oscillator using digital ICs. This is because many digital devices require a square-wave clock signal suitable for circuit operation. Let me state the conclusion. The best choice is a crystal oscillator circuit using HC-MOS. Be sure to use the unbuffered type. Also, if you want to reduce current consumption in particular, use standard C-MOS—also the unbuffered type. The era of using TTL ICs is already over. By selecting the appropriate oscillator device, you will be able to build efficient digital devices.(2026.07.14 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【デジタルICと水晶発振子】
前回のBlog(←リンク)ではトランジスタ(BJT)や電界効果トランジスタ(FET)といったディスクリート・デバイスを使った水晶発振回路を検討しました。
発振で得た信号の使い道として周波数コンバータ回路や通信機のマスター・オシレータと言ったアナログな用途が主な想定でした。しかし、デジタル回路のクロック・オシレータの用途もあって、そうした回路では矩形波のクロック信号が必要とされます。
初めからデジタル回路用のICを使って発振させると、波形整形といった手間いらずで矩形波が得られるので便利です。 今回は基本波水晶発振器のいちジャンルとしてデジタルICを使った水晶発振回路を扱います。
ところで、デジタルICはかなりの世代交代があって、過去のロジックICとして忘れ去られたものがたくさんあります。 このBlogがめざす「実用情報」としては、既に廃れたICは省略して良いのかも知れません。 しかしここは趣味のサイトでもあるので幾らか古(いにしえ)のデバイスについても紐解くことにして話を進めたいと思います。 古いデジタルICから順に扱って行きます。
◎ 忙しい人のためのまとめ(結論):
デジタルな発振回路にはアンバッファ・タイプのHC-MOSが最も適しています。 また低消費電流を優先するならスタンダードC-MOSを選択します。その場合もアンバッファ・タイプが良いです。すでにTTL-ICの時代ではありません。なお、各回路の具体的な内容は該当セクションの参照を。C-MOSの回路は後半の部分にあります。
☆
私がデジタルICで水晶発振する回路にお目にかかったのはマーカ・オシレータが初めてでした。 マーカ・オシレータそのものが既に死語のようなものですが簡単に言えばアナログな受信機のダイヤル読み取り精度を上げるための目印発生装置です。
このあと具体例があるのでマーカーOSCの詳細は省きますが、デジタルICと水晶発振子が出逢ったような回路でした。
このさき、すぐ使えるような機器の回路例はほとんど登場しませんが、もしデジタルな波形の(矩形波の)水晶発振器が必要になったら思い出してください。 そうは言っても電子工作などされないお方には将来にわたって無縁に違いないとは思うのですが・・・(笑)
【初期のデジタルIC・RTLを使う】
ノイマン型のコンピュータはクロックパルスに同期して処理が進む仕組みです。当然初期の頃からクロック・オシレータは存在したはずです。 想像ですが、初期のころそのオシレータはディスクリートなパーツで作られていたでしょう。
RTL-ICはシリコンのウエファ(薄板)上にトランジスタと抵抗器を同時に作成しそれらを直接配線でつないで作った初期のモノリシック型集積回路です。 もともとミサイルの誘導回路など軍用目的で作られ、その応用としてアポロ月探査計画では司令船や着陸船のガイド用コンピュータとして搭載されていたのは有名な話です。ちなみにクロックは2.048MHzの水晶発振で1/4分周して512kHzで動作していたそうです。
そんな高尚な用途とは違ってHAMのRTL-IC応用はもっぱらシンプルなマーカ・オシレータやエレクトリック・キーヤー(←リンク)でした。(笑)
左図の上段はRTL-ICで作った水晶発振回路です。 このICの時代の標準的なゲートICであるμL914を使っています。 μL914は2入力NORゲートが2つ集積された8ピンのICです。 ゲートあたりトランジスタ2石、抵抗器3本の構成で、それが2つ詰まったシンプルなICです。
下段は昔の雑誌(CQ HAM Radio誌)に掲載されていたマーカ・オシレータを書き直したものです。原著はもう残っていませんので記憶からです。 ご覧のように100kHzを発振する水晶発振回路とそれに続く2段のフリップ・フロップ回路で1/4分周して25kHzを得るようになっています。 これで100kHzおよび、25kHzおきの高調波が得られるので受信機(トランシーバ)のアナログ・ダイヤルが校正できるわけです。 水晶発振の100kHzは当時存在した5MHzや10MHzのJJY(高精度に管理されていた標準電波)とゼロビートをとって校正しました。
【RTL-ICで水晶発振は難しかった】
写真は設計しなおした100kHzの水晶発振回路です。
回路図下段のような回路で作った100kHz水晶発振回路は起動特性に問題があったのです。 たしかにVR11を加減して発振調整してやれば水晶発振してくれました。
しかし発振の確実性がなかったのです。周囲温度が変化すると発振が起動しないことしばしばで実用になりません。 八重洲無線のFT-400S型トランシーバの内蔵用に製作したのですが機内温度が大幅に変動する真空管機にはまったく不向きでした。 ガラエポ基板をエッチングした見かけカッコいいマーカ・オシレータ基板でしたが・・・肝心のとき発振しなくてはねえ!(笑)
出力側から負帰還バイアスが掛かるようにした上段の発振回路なら環境変化に強く良い状態に追従しますので発振の確実性があります。 もう一度作るとしたら100kHzの発振器は上段の回路で作りましょう。 1970年当時、国内にはμL914(米Fairchild社製)の少量の入手先が見つけられず秋葉原の共働電子で東京三洋電機のRTL-IC:LB-1001とLB-1021を入手して作りました。 いまとなってはちょっと苦い思い出です。(笑)
☆
1960年代〜1970年ころでRTL-ICの時代は終わります。 その後、DTL-ICの時代になったのですがHAMの用途としてはエレキーに使われた程度でした。わりとスムースに次代のロジックICであるTTLへと移行しました。DTL-ICの水晶発振器は省略してTTL-ICに進みましょう。
【標準TTL-ICで水晶発振・その1、2】
TTL-ICを使った水晶発振回路は過去の資料に当たると様々な例が見られます。
この事実を裏返して言えば、決め手の回路はなかったと言うことでしょう。その中から再現性の良かった2例を紹介しておきます。
(1)が4回路入りNANDゲート:SN7400Nを使う例です。(2)は6回路入インバータ:SN7404Nを使うものです。 出力側から負帰還バイアスをかけて回路の動作点がアンプの状態(アナログな増幅器の状態)になるようにしています。
その「アンプ」を2段カスケードにして正帰還ループを構成します。そのループ内に水晶発振子を挿入し水晶の直列共振周波数で発振するようにするわけです。
もともとデジタルな動作(スイッチング動作)をするよう考えられたICです。そのためアナログなアンプとして使うと性能が安定しません。(まあ、当たり前ですな・笑)
そのため、外付けの部品定数が適切でないと不安定な動作になることがあって、動作を確実で安定なものにする対策が必要です。 回路図のC4とC14はアンプの周波数特性を加減して(悪くして)異常発振を防ぐためのコンデンサです。
実際に発振波形を観測しながらカット&トライ式に決めねばなりません。 回路への接続箇所や容量値を変えながら旨く行くよう試行する必要がありました。
【1MHz発振器・容易そうで難しい】
そのような訳で、雑誌の記事に書いてある回路だからといって読者が信用して製作しても必ず旨く行くとは限らないのです。
久しぶりに製作しのですがやはり一筋縄では行きません。 測定ツールや積み重ねた経験や知識のおかげでなんとか正常に動作させることができましたが、やはり難しい回路と言えます。
もう一つの問題点はあまり周波数安定度が良くないことです。 そのため周波数カウンタのように周波数精度を要する用途では性能不足を感じるはずです。 温度補償も不可能ではありませんが設備がないと実現は容易でなく、むしろ他の発振回路を選択する方が苦労せずに済むはずです。
実際、周波数カウンタの製作ではゲートICの水晶発振回路はあきらめて、FET+BJTで1MHzの水晶発振回路を作り周波数基準としました。その方がずっと確実で周波数安定度も良好だったのです。1975年ころのことです。
【波形観測してハザード対策が必須】
左の写真はウマくない例とその対策後の状態を示しています。
TTL-ICは高速ですので、正弦波的なゆっくりした立ち上がりの信号が入ると出力がバタついて余分なヒゲがでるのです。 それを抑えるために回路の動作スピードを加減して安定させる必要があるのです。
ただし、相手は半導体回路ですからクリチカルな状態に調整してしまうと、温度など環境条件の変化でまたヒゲが見えてくるといった不具合もあって信頼性の点ではかなり疑問もあるのです。 まあ、今となって過去の製作を振り返ってみれば・・・という後付けのお話ですけれど。(笑)
【標準TTLでもコルピッツ型は容易?】
おなじTTL-ICを使った発振回路でもコルピッツ型を構成する方が有利なようです。
ゲート1段をアナログなアンプとして使います。
この回路では水晶発振子がインダクティブになる周波数で発振します。 TTL-ICに負帰還バイアスをかけたアンプなのは同じですが、一段アンプですからゲイン過剰ではなく動作はだいぶマイルドです。
ただしゲインは大きくないですから周波数に応じて外付けCRの細かな加減が必要です。 一つの回路定数のままでは発振可能な周波数範囲は狭いのですが、表のように選んでやればだいたい旨く行くでしょう。
もはや標準TTL-ICで水晶発振器を作ることはないとは思いますが、もし作るならこれが良さそうです。
【コルピッツで10MHzを発振させる】
写真は10MHzの発振回路例です。
たとえば1MHzといった低い周波数の発振もC1,C2の値を選んでやれば可能です。
しかし思った以上に大きめの容量が必要なので良いコンデンサを選ぶ苦労が発生します。 従ってやや高めの周波数を発振させるのに向いた発振回路だと思います。
だいたい5〜15MHzが適当な範囲でしょう。
【コルッピッツで10MHz】
写真は10MHzの発振波形です。
バイアス抵抗を加減してやるとDuty比を50%付近に持ってくることは可能です。
ただし発振周波数によっても変わりますしC1,C2の値も関係するので結局カット&トライ的になってしまうでしょう。一品料理なら問題ないのですけれど、量産向きではありませんね。(笑)
以上、標準TTL-ICを水晶発振回路に応用する3例を検討してきました。 すでに標準C-MOSでさえ消えようとする現在(2026年)ですから、標準TTLなんてナンセンスでしかありません。まあ、そんな時代もあったんだと言う記憶として書き留めておきました。
☆
標準TTL(N-TTLと略称)の時代は案外長く続いたのですが、デジタル回路の省電力化の要求もあって消費電流が1/5でスピードが同じと言うLS-TTLが登場するや急速に置き換わりました。 続いてLS-TTLを使った水晶発振回路を扱います。
【LS-TTLで水晶発振】
LS-TTLでもコルピッツ型発振回路は可能そうですが、アンプ2段形式の発振回路も良好でしたので紹介しておきます。
LS-TTLは様々なメーカーで製作されました。これには理由があるのですが専門的になりすぎるので省きます。 その結果、デバイスの「アナログ特性」にバラツキが大きくなってしまい、発振回路に使った場合の再現性には課題があったようです。
この例では本家のTI社(Texas Instruments社)のほか、日立と松下電器(現Panasonic)の3種類を使って比較してみました。
日立製がやや有利なようですが、周波数範囲を選んでやればオリジナルのTI社だけでなく他社のセカンドソースもかなり使えそうです。
なおハザード対策のC4は実験した範囲では不要でしたが、参照した資料によっては付加されていることがあります。波形を実測して大丈夫なら省略できそうです。 この回路はN-TTLを使うよりも確実そうな印象を持ちました。
【LS-TTLを使ってみる】
1MHzのHC-49/U型水晶発振子を使って発振回路を製作しています。
ゲートICの入出力間に負帰還抵抗を入れてアナログ動作させている回路で、標準TTL-ICの例と類似ですが、アンプ間の結合が抵抗器でDC的になっています。 この方が動作が安定しているように思いました。
ただしN-TTLで同じことをやっても上手く発振しないことがあって意外に難しいものです。(笑)
【LS-TTLは意外に悪くない】
上記実験回路の出力波形です。
ご覧のように余分なヒゲも出ず、Duty比も50%近くて良好な発振波形と言えるでしょう。
だいたい10MHzくらいまでの周波数で使うのであればまずまずの結果が得られると思って良さそうでした。
もちろん、何度も書いていますがN-TTLやLS-TTLは完全な時代遅れですから好きモノが好奇心から使ってみるといった可能性しかもうなさそうです。 いつの時代にも「趣味人」のようなお方は居られますから何かの機会に資料が役立ってくれたなら幸いです。(笑)
☆
RCA社はTTLのような高速デジタルICでは遅れをとったのでC-MOS 4000シリーズで超低消費電力の用途を目指したのかもしれません。 実際、民生用電子機器の多くは電池電源で動作することから動作電源電圧範囲が狭く消費電流の大きなTTL-ICは不向きでした。 低速ではあってもC-MOSロジックICが活躍することになります。 それは今も続いておりデジタルICを使った水晶発振回路にはC-MOS ICが最も適しています。 以下、C-MOS ICを使った水晶発振回路を詳しく扱います。
【低消費電流・C-MOSクロック発振器】
私がC-MOSを使った水晶発振回路に興味を持ったきっかけは腕時計用の超低消費電流発振回路にお目にかかったときです。
1.5V程度の電圧でμAオーダの電流で確実に発振する回路はなかなか驚異的だと感じたものです。 なお、1〜1.5Vといった低電圧で動作するC-MOSは腕時計用の専用品です。
左図は一般に入手可能な汎用C-MOSゲートを使った水晶発振回路です。 なかなか有用な発振器と言えますが残念ながら1.5Vでは動作しません。 4000シリーズC-MOSの耐圧は18Vであり、MOS-FETの製造プロセスが高い電圧向きになっているからです。 それでもVdd=3Vで動作させれば数μAで確実に発振してくれます。
Type-AはP-chとN-chのMOS-FETのソース電極と電源/GND端子間に100kΩの高抵抗でセルフバイアスを掛け動作電流を絞ることで超低消費電流を実現しています。その代償としてFETのgmが低下するのでゲインが低下してしまい、発振の起動特性がかなり悪くなるのはやむを得ないようです。 それでも確実な発振は可能ですから実用性は十分にあります。 単三乾電池2本で非常に長期間発振させることが可能です。
Type-BはC-MOSインバータ回路を素直にそのまま使う発振回路例です。 ただし、負荷となるコンデンサTC1やC1への充放電電流でロスが出ないよう考えてあり、時計用の32.768kHz水晶発振子も少ない負荷容量を考慮されたものになっているようです。
Type-Aよりもやや消費電流は大きいのですが、発振回路としての汎用性はずっと広くて数100kHzまでの低消費電流な水晶発振回路として実用性があります。セラミック発振子(手持ちの455kHzなどでテスト)でも発振可能でした。なお、発振周波数が高くなると消費電流が増加するのは当然です。
【タイプ・Aの試作例】
Type-Aの試作例と発振波形を示します。
MOS-FETの消費電流をおさえ、コンデンサへの充放電電流を絞っているのですから発振波形は正弦波的になっています。
腕時計のような超低速論理回路用としては支障ない波形なのでしょう。
ただし、このままHC-MOSなどに繋ぐとスルーレート不足で異常動作する可能性があるでしょう。 シュミット回路など挟むとよいです。 まあ、普通はそんな心配のない回路に使うべきなのだと思います。
使用している円筒型の水晶発振子は時計用の汎用品として安価に市販されています。内部は音叉型(おんさ型)の発振子でしょう。けっこう手持ちがあるので欲しいお方があれば差し上げます。 発振周波数の調整は意外に厄介でレシプロカルなユニバーサル・カウンタでないとたいへん時間が掛かると思います。
R2、R3(100kΩ)を150kΩに変更すればさらに消費電流を減らせます、ただし電源投入から安定した発振振幅が得られるまでの「起動時間」はかなり長くなります。 現状のR2=R3=100kΩでも、電源電圧:Vdd=2.7では約6秒必要でした。 150kΩでは20秒近くかかりました。
なお、アンプとして動作させるための負帰還抵抗;R1は15MΩくらいが適当です。 小さくすると消費電流が増え、アンプとしてのゲインも食われるので損です。最低でも10MΩは必要です。 逆に50MΩのように大きくするとハイインピーダンスになり過ぎてノイズの誘導に弱くなります。 これはType-Bでも同様です。
【タイプ・Bの試作例】
こちらはType-Bの試作例と発振波形です。
消費電流が大きい分だけスルーレートが大きく、従って発振波形も矩形波として綺麗になっています。
写真の試作では、C-MOS ICとして三菱電機製のM4007UBPを使っています。 ほかモトローラのMC14007APやRCAのCD4007AEでもテストしましたが概ね同等の結果でした。
まったくの余談ですが、この4007と言うC-MOSは面白いICです。 単独のP-chやN-chのMOS-FETとして使ったり、トランスミッション・ゲート(アナログ・スイッチ)を構成すると言った応用法もあってアイディア次第で様々に活かせるC-MOS ICです。
【タイプ・Bは汎用性がある】
Type-Bの発振回路は汎用性があって、32.768kHz以外の周波数でも使えます。
写真(左)は手元にあったロシア製のガラス管入り100kHz水晶発振子で発振させた例です。
写真(右)金石舎製の59.9kHzと言う大きな水晶発振子で発振させた様子です。
何に使っていた発振子かわかりませんが低い周波数の発振子は一般に大型になります。 左に見える時計用32.768kHzは音叉型に作って小型化しているのです。
ご覧のようにType-Bの発振回路は時計用のほか、数100kHzと言った周波数範囲まで良好に発振しますので低い周波数用の発振回路として有用性があります。 アナログな多重電話回線で使っていたと言う4kHz(!)の基準用水晶発振子でもうまく発振できました。 C1とTC1に温度特性の良いものを使ってやれば発振周波数の安定度もかなり優秀です。周波数安定度はほとんど水晶発振子の性能で決まるようでした。
【4069UBで水晶発振・5MHzまでが良い】
これは同じ4000シリーズの標準C-MOSを使った発振回路ですが、前項と違ってあまり低消費電流には拘らず、その代わりにより広い周波数で発振可能な回路です。
内部が単段のコンプリメンタリ・インバータ回路で構成されているアンバッファ型の標準C-MOS ICである4069UBを使います。
発振回路の形式はコルピッツ型です。 C1とC2の容量値および、位相調整とゲインを加減する抵抗器:R2を選ぶことで広い周波数範囲で水晶発振できます。
実験的には10MHz以上の発振も可能でしたが、高い周波数は次項で紹介するHC-MOSに任せるべきでしょう。 高い周波数になると発振波形がなまってきて正弦波的になり矩形波が目的の発振器としては好ましくありませんでした。
従って標準C-MOS 4069UBを使った発振回路としてはおおよそ5MHzまでと思えば動作は確実です。
【低周波水晶にも向いている】
時計用の32.768kHzでも使える回路です。 上記の4007で作ったType-Bと同等ですから当然でしょう。
32.768kHz専用とするのでしたら、負帰還抵抗:R1は1MΩよりずっと大きくします。 さらにC1(+TC1)とC2を小さく選んでやれば4007の回路と同じように低消費電流化できます。
4007が得られない時の代替向きでしょう。
もちろん、上記回路図のままで汎用の基本波水晶用発振器として5MHzあたりまで十分使えます。矩形波のクロック信号が必要なデジタル回路に最適な水晶発振回路です。
【32.768KHzの発振波形】
32.768kHzの発振は4007に任せるべきなのかもしれませんが、4069UBでも良好な発振波形が得られます。
100kHzや1MHzと言った水晶発振にも向いていますから、比較的低い周波数の矩形波クロック発振器が必要になったら迷わず思い出したいと思います。
通信機への応用としては、例えば455kHzでC-MOSアナログ・スイッチを使った変・復調回路のクロック発振器としても最適です。 消費電流も小さいことから、電源系のデカップリングが容易であり、クロックの回り込み防止にも有利でしょう。
C-MOSですから電源電圧範囲が広くてツェナ・ダイオードいっぱつで安定化したような電源で十分動作します。 デジタル回路専用と考えず幅広く活用したいものです。
☆
標準C-MOS 4000シリーズはあまり高速ではありません。 スピードの速いLS-TTLを置き換える目的でHC-MOSが登場しました。その名の通りハイスピードC-MOSなのですから、より高い周波数の水晶発振が可能なはずです。 以下、HC-MOSを使った水晶発振回路を詳しく扱います。 ごく低い周波数帯なら4000シリーズC-MOSも向いていますが、HC-MOSでも低い周波数は可能ですから一段と汎用性のあるデバイスです。
【HC-MOSを使った水晶発振回路】
初めに書いておきますが、HC-MOSの水晶発振器としてはType-3Aを使うべきで、特に事情がなければType-3Bはお薦めしません。
Type-3AはアンバッファタイプのインバータICを使う標準回路です。 Type-3Bはバッファ付きインバータICを使う特殊な回路例です。
またType-3Aの回路でも、できたら1MHz以上の高い周波数で使うべきです。 「アンプ」としての周波数特性が良すぎるため、低い周波数の発振子を使うとオーバートーン発振する可能性があるのです。
それさえ注意すればデジタルな水晶発振回路として大変良い回路だと思います。あまり失敗もなく水晶発振でき、綺麗な矩形波が得られるからです。
Type-3Bの意義を書いておきます。 比較表に見られるように消費電流が少なく済むと言う特徴があります。 これは内部回路の構成からくるものでトランジスタ・サイズが小さい初段のC-MOS段のみがA級動作するからです。 UBタイプではドライブ能力の関係で大きなサイズのC-MOSがA級動作になる関係で消費電流が大きいのです。 従って、高い周波数の発振器が必要で、なおかつ消費電流を抑えたいならType-3Bに有用性があるでしょう。
しかしながら、バッファタイプのインバータICは内部が3段構成のためゲイン過剰になりやすく異常発振の危険性が付きまといます。 使っていけないわけではありませんが使いこなしは幾らか難しいです。 どうしてもUBタイプHC-MOSが入手できない時には非常手段(?)となりえますが、発振波形の確認を励行するなど注意を払いながら使うことになるでしょう。
【HC-MOS水晶発振・1MHzでテストする】
Type-3Aの実験回路と発振波形です。74HCU04を使い、基本となる1MHzで発振させています。
R2は10kΩ程度が適当でした。より低い周波数ならもっと大きくしても発振します。 発振波形も良好で一般用途の矩形波信号としては十分なものでしょう。
もちろん厳密なDuty比=50%が要求されるなら、2倍もしくは4倍周波数で発振させたあとフリップ・フロップで分周して得る必要があります。
しかし多くの場合、このままでも問題ないでしょう。
【バッファ・タイプは少し難しい】
バッファ・タイプの74HC04を使った際の発振波形です。(Type-3Bの回路)
写真は不適切な発振状態です。 矩形波の後縁部分にバタツキによるヒゲを生じていますが、これではうまくありません。
対策はR12を大きくすることではありません。 C12は10pFではまったくダメで270pFとか330pFへと大きくする必要があります。 R2はむしろあまり大きくしない方が良くて、数kΩ〜数100Ωにとどめるのが異常発振対策には効果的でした。
いずれにしても発振波形の確認は必須で、HCUタイプを使うよりずっと難しさを感じます。 従って特別な事情がない限りバッファタイプは発振回路に使わぬ方が良いでしょう。
【アンバッファ型は30MHzまでイケる】
アンバッファ・タイプ(74HCU04)を使った発振回路の発振波形コレクションです。(Type-3Aの回路で観測)
5〜30MHzまでの発振波形を示しますが、いずれも良好でした。
さすがに30MHzは高速C-MOSとは言えどもかなり高い周波数であり発振波形になまりを感じますが悪いものではないと思います。 広帯域なオシロとプローブを使って観測していますからこれが実際の発振波形なのでしょう。
現実の世界では、絵に描いたような「きっちりした矩形波」が得られるのはせいぜい数MHzまでです。
【74HC4060を水晶発振で使う】
74HC4060を使う人はあまり多くないのかも知れません。発振回路付きの多段分周器は便利なのでよく使っています。 水晶発振の周波数を1/16384まで分周できます。
メーカーのデータシートを参照してそれなりに使ってきましたが、詳しく調べ使い易いように部品定数を標準化したいと思って実験しました。これは自家用の資料です。
データ・シートに明記はないようですが、どうやら発振回路の部分はアンバッファ・タイプのようです。 また、あまりゲイン過剰ではないようです。
そのため抵抗器:R2を大きくする必要はなくて、ナシで支障ない場合も多いようです。 案外ラフな外付け部品定数でも正常に動作しますから使いやすさを感じました。
このICは4000シリーズのスタンダードC-MOS ICが元になっています。 HC-MOSではない、そのオリジナルの4060も5MHz以下でしたら同じように使えそうです。 むしろ32kHzのように低い周波数ならスタンダードC-MOSの4060が向いており、消費電流も少なく済むので経済的でしょう。 あいにく拙宅の在庫はHC-MOSなので標準の4000シリーズはテストできませんでした。(スタンダードC-MOSではCD4060BEやMC14060BPなどがあります)
参考:74HC4060と同じように水晶発振の機能と分周器が集積された専用のC-MOSデバイスが各種登場しています。使い易いのでデジタル回路用のクロック発生器として重宝します。例えばNJU6311があってこのBlogでもテストしています。(該当Blogへ←リンク)
【74HC4060で発振テスト】
74HC4060の10番、11番ピンを使って構成する関係でだいたい写真のような部品レイアウトになるでしょう。
ピン11につながる配線はあまり延ばさぬ方が良く、ピン10の配線でしたら多少引き回しても大丈夫です。
Vddピン(16番)とGND間に最短距離でバイパスコンデンサ:0.1μF(積層セラコンを推奨)を挿入しておくと安定して動作します。 合わせて10μFのOSコンなどパラってやれば完璧です。
【HC4060の中身はアンバッファ型】
1MHzを発振させ、ピン9のモニタ端子で観測した波形です。 1MHzでは周波数も低いことから綺麗な矩形波が得られています。
多段分周器内臓のICですから、そもそもあまり高い周波数を発振させ、多段分周して低い周波数を得ると言った用法は考えにくいでしょう。
30MHzまで発振テストを行ないましたが、だいたい10MHz以下を発振させて使うケースが多いのではないでしょうか。 今回の実験で使い方はおおむね定型化できたと思います。 自家用の資料として役立てるつもりです。
【消費電流は結構小さい】
74HC4060を1MHzの水晶て使った場合の消費電流です。
水晶発振回路と14段の分周回路が1mA以下の電流で動作しますからかなり省電流です。 FETやトランジスタで発振させるだけでも1mAくらい必要ですから、はじめからデジタル回路で分周して使うつもりならこのICを使う方が有利です。
* 他の実験でも消費電流など詳しく調べるよう努めましたが、すでにデータ過剰気味ですから写真などは省きました。
☆
これはこのBlogの公開が遅くなった理由でもあるのですが、デジタルな水晶発振回路について、できるだけ網羅的に扱いたいと思って始めたところ分量がずいぶん大きくなってしまいました。 おそらく初めから読もうとしたら途中で眠くなってしまったかもしれません。 もともとストーリ性は求めていません。参照用の資料を目的としているからです。通しで読んでいただく必要はありません。 ざっと目を通して頂き、どんな内容があるか掴んでおいていただき、もし必要になったら部分的に詳しく参照していただけたらと思っています。 あまり前後と関連付かぬように記述していますので、部分的に読んでもわかって頂けることを期待しています。 それでも一気に全部ご覧になったお方もあったかもしれません。 長々とご覧いただき大変ありがとうございました。
☆
水晶発振器を扱うBlogシリーズとして今回はデジタルな発振回路を扱いました。 次回も水晶発振器が続く予定です。 内容如何ですが公開までに時間を要するかもしれません。基礎的な回路は応用機器を扱うよりもむしろ難しいと言った傾向があります。 時々ご覧になりながらお待ちいただければ幸いです。 ではまた。 de JA9TTT/1
*このBlogに関して何かご質問とかご要望などあったらコメント欄でお願いします。
この下にある「コメント」の文字をクリックすると入力画面が現れます。
→ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。
参考:公開から2週間を過ぎたBlogに頂いたコメントはすぐには反映されません。(SPAM対策のためです) 確認しだい公開いたしますので少々お待ちを。遠慮なくどうぞ。
(つづく)fm
Radio Experimenter's Blog
Something NEW for your eyes !
2026年7月14日火曜日
2026年5月31日日曜日
【回路】Crystal Oscillators (1) , It's practical !
【実用・水晶発振器・1】(その1:基本波編)
Introduction
I have constructed crystal oscillator circuits using inexpensive quartz crystals readily available on the surplus market. I have produced clock generators suitable for digital circuits that oscillate reliably, as well as oscillators suitable for analogue circuits that produce clean oscillation waveforms with low phase noise. I have made effective use of bipolar junction transistors (BJTs) and field-effect transistors (FETs).(2026.05.31 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【水晶発振子・振動子】
水晶と聞くとなんだか魅力的に感じてしまいます。子供のころ理科室に輝いていた鉱物標本が記憶に刻まれているからでしょうか?
電子部品の「水晶発振子」に特別な感情を覚えるのもそのせいかも知れません。 未だに宝石を使った高価な電子部品というイメージがあって出物(ジャンク品,etc)に出くわすとついつい手が延びてしまうのも仕方ないのでしょう。(今は100%人工水晶製です)
ところが単なるコレクションが目的ならともかく、電子部品として見ると「水晶発振子」の使い道はずいぶん限られるのです。 本来の目的である発振器に使うのが基本でしょう。 しかし「周波数が安定で動かない」という特徴は最大のメリットでありながら「周波数」が目的に合わなければまったく使い物になりません。ほとんどつぶしの利かない電子部品でもあるのです。(笑)
☆
せっかく手に入れた電子部品ですから幾らかでも活用の機会を作りたいものです。 この先しばらく本来の用途である『発振』に使う方向で実用的な使い方を探りたいと思います。
水晶がお好きだったらお付き合いください。 専門用語の説明はかなり省いており内容も電子回路の初心者向きではないかも知れません。 頑張ってついてきてください。w
【クリスタル・フィルタという手もあるが】
昔は同じ周波数の水晶発振子ばかりいっぱいあっても大して役に立たないと感じたものでした。
しかし水晶発振子の特性に着目して「フィルタ」に応用する手法が知られるようになって活用の道が開かれたのです。 大して役立たずだった大量の水晶が活かせるのですから。(この場合は水晶共振子と呼ぶ方がふさわしいです)
写真は8MHzのHC-49/US型水晶発振子を6つ使ってラダー型クリスタル・フィルタ(SSB用)を試作している様子です。 ラダー型クリスタル・フィルタの設計・製作については既に扱いましたので、興味があったらBlogバックナンバー(←リンク)の参照を。 水晶定数の求め方から始めて詳しく扱っています。
ラダー型クリスタル・フィルタを作ることはジャンクの水晶発振子を消費するには有望な方法です。 選別して揃ったものを選ぶのが良いフィルタを作るコツです。同一の水晶発振子が沢山あることはとても有利です。そう思ってジャンク品を集めたものでした。 同じ水晶発振子がたくさんあるなら発振以外の用途も考えておくべきです。
過去のBlogに試行過程を書いたように、様々な検討を経てノウハウは蓄積できたと思っています。しかし、時間と手間を惜しまず入念に設計・製作した肝心の「フィルタ」も、あんがい使う機会は少ないものです。ですから作り方がわかったらかなり満足してしまいました。 まあ、そんなにたくさん受信機やトランシーバなんて作りませんからねえ。(笑)
済んだことですし、とりあえずフィルタに使う話はここまでにしておきます。
☆
【水晶発振器・真空管で】
水晶発振子と言うくらいですから、発振回路に使うのが本命です。(水晶発振子と振動子は同じ物です)
水晶発振子は周波数が安定した発振器の決め手です。 真空管時代から様々な発振回路が考案されてきました。 水晶発振器の歴史を辿る意味で紹介しておきます。
左図は「無調整型水晶発振器」と言われるものです。ピアース回路とも言います。おもに周波数校正用の基準発振器に使われてきました。 近代的な半導体を使った発振回路も真空管時代の回路がベースになっています。特にFETを使った水晶発振回路は類似性が感じられます。
真空管式送信機に使う水晶発振器は発振出力に「パワー」が必要なので異なった回路が使われます。 そのため近代的な小型の水晶発振子は適当ではありません。
左図・発振回路も発振子としてFT-243型、FT-241型、HC-6/U型のように水晶板が大きくて丈夫な水晶発振子が前提になっています。 もし小型で近代的な水晶発振子で製作するのなら、プレート電圧(B+)は発振可能な範囲でなるべく低く抑えます。発振子を壊さないようにするためです。低いプレート電圧で動作し、High-gmなニュービスタ管などが最適だと思っていますが、いまとなっては真空管で作ることはまず無いのではありませんか?
なお、この図・表が作られた当時は15MHz以上の基本波発振子は珍しかった筈です。たとえば20MHzで試すならまずは15MHzのデータでやってみるのが良いでしょう。
☆
【トランジスタ・1石で発振】
トランジスタを使った水晶発振器として最も簡単で有用な回路をはじめに扱います。
参考:以下はいずれも半導体を使った回路で、電源電圧が低いためコンデンサは耐圧25Vまたは50Vで十分です。電解コンデンサは16V耐圧が使えます。抵抗器は1/4W型です。
左図はトランジスタを一つだけ使った無調整型水晶発振器です。水晶発振子として最初の写真にあるようなHC-18/U,HC-49/U,HC-49/USと言った近代的で小型のものを使います。 基本波だけが対象で、いずれでもよく発振してくれます。(特殊な専用発振子を使わないとオーバートーン発振はしません)
「無調整型」という意味は発振回路にLC同調回路を含まないという意味です。 組み立ててから何も調整せずに所定の発振状態が得られるわけです。 ただし、精密な周波数が必要なら「周波数合わせ」だけは必要です。回路図でTC1あるいはTC11で合わせます。だいたい±0.01%くらいでしたら楽に調整できます。
表・1にあるように、回路図のコンデンサ:C1とC2の容量値を水晶発振子の周波数に合わせて選択します。 実際には同じC1とC2の値のままでも、かなり広い範囲の周波数で発振します。 もちろん確実な発振を最重視するのであれば表のように周波数に合わせた容量値を選ぶ必要があります。 (参考:この設計ではコンデンサのリアクタンスが目的の周波数において、おおよそC1が450Ω、C2は250Ωになるよう選んであります)
また、表・2はコンデンサ:C1を100pF、C2を220pFに固定してしまい、どれくらいの周波数範囲で発振できるか実験した結果です。 後日の自身の参考のために直流的な動作点の情報も記載してありますが特に気にされる必要はありません。
トランジスタとしては高周波用の代表として2SC2668Y(2SC1923Yも同等品)、中華トランジスタのS9018H、そして汎用トランジスタの2SC1815Yでテストしました。
表・2の右端のように広範囲な周波数範囲(Foscの項)で発振することが確認できました。 高周波特性の優れた(fTの高い)トランジスタなら2〜30MHzで同じ部品定数のまま発振できるのです。 2MHz以下では水晶板のカットが特殊になってくる関係からか部品定数を「低周波用」に変更する必要があります。 しかし、それ以上なら30MHzまで幅広く発振できました。(30MHz以上も可能ですが、基本波の水晶発振子はまれになります)
表のようにトランジション周波数:fTがあまり高くない汎用トランジスタ(2SC1815Y)では高い周波数で発振が難しくなるのがわかります。 トランジスタのfTについてはこちら(←リンク)に実測した情報があります。
RF用トランジスタを使えば幅広い周波数範囲で発振できますが、周波数によっては必ずしも最適な状態でなくなるため、発振波形や発振振幅(発振の大きさ)に影響がでます。 できたら周波数ごとにC1とC2の容量値を選ぶべきなのでしょう。 なお、同じ周波数の発振子でも製作メーカーや製造時期などが異なれば発振状態に多少のちがいがあります。
参考:C1とC2を小さくするとオーバートーン発振のモードに移行することがあります。(例えば10pFとか)ただしこの発振状態はかなり不安定です。もしオーバートーン発振が目的なら、それ用に作った回路を使う必要があります。(続編のオーバートーン発振編を参照)
【無調整型水晶発振回路(1)の試作】
さっそく実験してみましょう。写真は10MHz:HC-49/U型水晶発振子で実験している様子です。
トランジスタ:Q1は2SC2668Yです。コンデンサ:C1=100pF、C2=220pFです。このままで幅広い周波数範囲で発振することが確認できました。 高周波特性の良いトランジスタを使うことで、部品定数を固定したままでもかなり広い周波数で発振できます。
2SC1815のような汎用トランジスタもかなり使えますが、やはり高周波用(RF用)を使うと有利です。 中国製のRF用トランジスタ:S9018Hはたいへん安価です。確実な発振器が欲しいなら汎用品で頑張らずに使ってみるのも良いでしょう。(国産トランジスタと足の並びが異なるので注意を!)
水晶発振器とは言えども、部品の値が温度で変化すれば発振周波数も変動します。 上記回路図で赤の★印が付いたコンデンサは特に重要です。 温度変化の少ないC0G特性またはCH特性(NP0:エヌピーゼロ特性とも言う。頭部が黒くペイントされていることが多い)のコンデンサを使います。 すこし難しいですが、C3に温度係数を持たせて温度補償することも可能です。市販の温度補償型水晶発振器:TCXOにはそのようになっている物もあります。
目安として、温度特性の良い部品を使って製作すれば周波数安定度は±10ppm/℃以内が容易に得られます。しかし±1ppm/℃以内の性能を得るには入念な温度補償が必要です。 さらに±0.1ppmとかそれ以上の安定度が必要なら専用の発振子を使い回路全体を恒温槽(オーブン)に入れ常に通電しておく必要があります。(参考:1MHzの±10ppmは±10Hzです)
なお、セラミック・コンデンサには温度特性が極めて悪いものがあって、周波数変動が大きかったり発振の起動に影響が及ぶことがあります。(高誘電率系のセラコン) 電源系統のバイパス・コンデンサとして使うには何の問題もありませんが、発振状態に影響のある箇所には使えません。
【発振器(1)の発振波形】
コレクタ側・出力端子で観測した10MHzの発振波形です。上記の製作例を観測しています。
ご覧のように波形は鋸歯状で「美しく」はありません。 発振周波数によっても波形はかなり変わりますし、波形の大きさ:振幅も変わります。
おもにデジタル回路のクロック発振器などに適するものです。 波形の美しさ(正弦波)にはこだわらず、簡単な回路で確実な発振が目的なのでしたら悪くない水晶発振回路だと思います。 市販されているSPXOと称するモジュールの内部も似たような回路になっているはずです。
信号を受ける側の回路にシュミット・トリガ特性を持ったインバータICやゲートICを使うのが確実なインターフェース方法です。
波形のことはともかくとして、コレクタ側から取り出しているので負荷回路の影響は受けにくいようでした。 電源電圧を変えると発振振幅も変化しますが、かなり広い電源電圧で発振は維持されます。条件にもよりますが、Vcc=1.5Vでも発振します。
☆ ☆
【低位相ノイズな基本波発振回路】
良い波形とフェーズ・ノイズ(位相ノイズ)の少なさを望むなら1石の水晶発振器では難しさがあります。
左図は波形が綺麗でフェーズ・ノイズも少ない基本波の水晶発振回路です。 1石追加するだけで、スプリアスや発振信号の上下に現れるノイズ・サイドバンドも極めて少ない優れた正弦波の発振器が作れます。 また発振振幅がスムースに加減できるのも特徴です。
発振部そのものは既に説明の無調整型水晶発振器(1)とほぼ同じです。 同じようにコンデンサC1、C2を(C11,C12を)発振周波数に合わせて選択する必要があります。(ただし同一容量でもだいぶ広い周波数範囲で発振します) やはり確実な発振の起動のためには周波数ごとに変える方が望ましいのです。
特徴的なのは発振出力の引き出しかたにあります。 もっともきれいな発振電流が流れている水晶発振子の直近から引き出しています。 いわばクリスタル・フィルタを通したような発振電流が得られるため、非常に信号純度が高いわけです。 そのあとバッファ・アンプに導きます。
回路(2)はバイポーラ・トランジスタ(普通のトランジスタ:BJT)をベース接地型のバッファ・アンプとして使った例です。 回路(3)はFETをソース接地型でバッファ・アンプを構成しています。 いずれの回路も綺麗な出力波形が得られるものです。1石の追加はたいへん効果的です。
発振器(2)の回路をご覧になって、高周波回路に造詣のあるお方はC5:1000pFは大きすぎるように感じるかも知れません。C5:1000pFはこのままで〜30MHzまでOKです。 ベース接地型バッファ・アンプの入力インピーダンスは非常に低く、これで大丈夫なのです。
計測用の基準信号として使ったり、発振信号に高純度を必要とする高級な通信機にもうってつけの発振器でしょう。お奨めできます。
【低位相ノイズ発振器(2)を試作】
写真はバイポーラ・トランジスタ:BJTをバッファ・アンプに使った製作例です。
発振周波数は1MHzです。トランジスタには2SC2668Yを2石使いました。 右にある半固定抵抗器で発振振幅(発振の大きさ)を可変できます。
この水晶発振子(1MHz)は少し特殊なようで、回路形式によっては発振しにくさを感じたものです。 上記の回路(2)、回路(3)のいずれでもC1、C2をうまく選んでやれば問題なく発振できました。
もちろん2MHz以上の周波数でも同じようにテストしていますがなかなか良好な発振状態でした。汎用の水晶発振器として活用できます。
【発振器(2)のエミッタ発振波形】
発振回路(2)のエミッタ(TP1)の波形を観測しています。
回路(2)、回路(3)ともに初めの無調整水晶発振回路(1)と基本は同じです。
発振部の電圧を変えることで発振振幅を加減する関係で、電流負帰還型バイアス回路をやめて簡単な固定バイアス形式に変更しています。 ベースバイアス回路部分のインピーダンスを高めることは発振の起動特性の向上にも役立っています。
バイアスの与え方に幾らか違いはあっても、発振回路として大差はないわけで、エミッタを流れる電流は(コレクタ電流も)高調波を含む鋸歯状です。 回路(1)と同じようにあまりきれいな波形ではないことがわかるでしょう。
【発振器(2)バッファ・アンプ出力波形】
こちらのバッファ・アンプを通ったあとの信号はきれいな正弦波です。 もちろんバッファ・アンプで歪んではダメなので、発振振幅の調整は必要です。
振幅の調整はオシロスコープを使うと簡単にできます。スペアナで高調波の状態を見ながら加減しても良いでしょう。 オシロスコープには十分な帯域幅を持った機種が必要です。 例えば10MHzの発振調整なら少なくとも帯域幅50MHz以上のオシロスコープが望ましいです。
発振振幅の調整範囲はかなり広いので、たいていは歪みのない状態へ調整可能なはずです。 どうしても歪む時は発振部の部品定数を加減する必要があります。 しかしそれは稀でしょう。
発振振幅を小さくしぼると発振の起動特性が悪くなることがあります。 どうしても小さく絞りたい時はバッファ・アンプの後で減衰させる方法がもっとも合理的です。
発振信号として高純度を要する用途ばかりでなく、一般的な発振器として気軽に使うのも良さそうです。
【低位相ノイズ発振器(3)を試作】
バッファ・アンプにFETを使った例です。 少しですがBJTのバッファ・アンプよりも部品数を減らすことができます。
写真は20MHzのHC-49/USを発振させている様子です。 Q11:発振部は2SC2668Y、Q12:バッファ・アンプは2SK544Fを使いました。 バッファ・アンプはソースフォロワにすることも可能です。
この例ではソース接地型ですからゲインを持ちます。 したがって、バッファ・アンプが入力オーバーになって歪む可能性もあります。 その場合はC20を追加・加減してきれいな波形になるようにします。
なお、本質的にはC15を周波数に応じて変えるべきです。 しかし多くの場合において220pFに固定しても使えるようでした。 もちろん出力波形を観測して歪みを感じるようでしたら表・3にあるように周波数ごとに変更すべきです。
【発振器(3)FETバッファ・アンプ出力波形】
発振回路(3)の出力波形を観測しています。 バッファ・アンプ(Q12:2SK544F)のドレイン出力波形です。
きれいな発振波形を目的にしているのですから当たり前かもしれませんがなかなか良い正弦波が得られています。 もちろんスペアナで見てもきれいでキャリヤの近傍ノイズも少なくて良好です。
バッファ・アンプにBJTを使うのか、FETを選ぶのかは結局のところ好みのように思います。 少し部品が増えてもよければBJTの方が大きな出力を取り出せる可能性もあって良い点もあります。 まあ用途次第でしょう。
以上、発振部:Q1,Q11に普通のトランジスタ(BJT)を使う回路を3つテストしました。 無調整水晶発振回路ながらも良い発振波形が得られるものもあって悪くない発振器です。
☆ ☆ ☆
ここからは発振回路そのものに電界効果トランジスタ:FETを使う無調整型水晶発振器を検討します。そう言えば回路屋さんはFETのことを「フェット」って呼んでますね。(笑)
【FETを使った無調整水晶発振回路】
左図はFETを使った無調整型水晶発振器です。 実験回路としては2種類あります。
違う回路に見えますが発振回路としての形式は同じです。真空管のピアース回路そのまんまですね。 2種類はソース接地型にするのか、あるいはドレイン接地型にするのかといった違いです。 ただしドレイン接地型では負荷抵抗に相当する部分を高周波チョークコイル:RFCに変えてあります。(回路4Bは高周波的にドレイン接地になっています)
RFCを使う回路(4B)は電源の利用率が良くて発振波形も良好でした。 さらに「発振の容易さ」でも優っています。 もちろん、たとえRFCとは言えどもコイルの類がお好きでないならドレインに抵抗器を置く(4A)の回路が良いでしょう。 逆に、4Aの回路のドレイン負荷抵抗:R2をRFCに置き換えることもできます。よく発振してくれます。
FETを使った発振器にもバッファ・アンプを設けるのは有効です。負荷状態の変動に強くなります。 良好な周波数安定度を望むなら付けておくべきでしょう。
ゲート部分のダイオード:D1,D11は発振振幅を安定させるためのものです。 ただしQ1,Q11に接合型FET(J-FET)を使う場合は必ずしも必要としません。ゲートのPN接合部が外付けダイオードと同等の働きをするためです。 MOS型の2SK241や2SK544にはその作用はないため是非とも追加すべきです。
なくても発振しますが、あれば適度な発振状態に自己バイアスが掛かって自動的に発振振幅が安定してくれます。 ダイオードはシリコンの高速スイッチング用(Si-SW-Di)なら何でも使えます。 さらにゲルマニウム・ダイオード:Ge-Diやショットキー・ダイオード:SBDも使えますが、発振振幅が抑制されすぎる傾向があります。 Si-SW-Diが無難なようでした。
かなりgmが大きなRF用FET・・・J310など・・・を使うとIdssが大きすぎてうまく発振状態の制御ができないことがあります。 発振の起動そのものが困難になることもあります。 その場合はRFC:L11と直列に数10〜数100Ω程度の抵抗を挿入し自己バイアスを掛けてドレイン電流を抑制します。
【発振器(4B)を試作】
無調整型水晶発振器(4B)を試作した様子です。 基本波周波数が20MHzの水晶発振子でテストしています。 FETはJ211です。
RFC:L11としては470μHのマイクロインダクタを使いました。形状の小さなRFCの中には巻線の抵抗値が大きなものがあります。使う前にテスタで抵抗値を測って確認してください。直流で測った抵抗値が10Ω以上あると発振状態に影響が及びます。 ちなみに写真に見える470μHのDC抵抗は約1.2Ωです。
RFCのインダクタンスは2MHz以上では470μHあれば十分です。 5MHz以上なら220μHでも大丈夫です。 逆に低い周波数では大きなインダクタンスが必要になります。 455kHzのセラミック発振子も良く発振する回路ですが、RFCは少なくとも2.2mH以上必要です。
部品数も少なくて発振容易な良い回路と言えます。
参考:このBlogには市販のRFC(高周波チョークコイル)の評価レポート(←リンク)があります。
【発振器(4B)の出力波形】
上記で試作した発振回路(4B)の発振波形を観測しています。 室内が暗かったので画像が荒れて見苦しいですが悪しからず。(笑)
FETはFairchild社製のJ211(前回のBlog参照)を使っています。J211はごくシンプルな構造のFETで、特別なものではありません。
J211は足の並びが2SK19や2SK192Aと同じですから差し替えて簡単に試せます。2026年5月現在、かなり安価に出回っています。 もちろん2SK19や2SK241と言ったポピュラーなFETでも何も問題ありません。それらを持っていればあえてJ211を手に入れる必要は無いでしょう。
FETを使った無調整型発振器は周辺部品が少なくて作りやすいのが特徴です。 発振波形も見ての通りなかなか良好でした。
【発振器(4B)は多彩なFETで発振する】
基本波水晶発振回路(4B)は多彩なFETが使えるのも特徴の一つです。
この写真はFETに2SK44(-D)を使い、20.935MHzの円筒型水晶発振子を発振させている様子です。 とてもうまく発振します。 この2SK44(-D)は黒豆型の古い三洋電機製ですが、東芝製で言えば2SK30A(-Y)と同じような低周波用のFETです。 他にもイサハヤ電子の低周波・低雑音増幅用2SK2881を試したところ、同じようにうまく使えました。
なにも低周波用を使うことを推奨するつもりはなくて、高周波用のFETだけでなく幅広いFETが使えることを示している訳です。 もちろん、FETの性能次第で発振性能も変わります。持っているのであればRF用のFETを使うのが一番間違いないです。 しかし有り合わせのFETが使えるのはメリットだと思います。
ほかに2N7000やBS170と言ったスイッチング用のMOS-FETでも発振します。エンハンスメント・モード特性なのでバイアスの掛け方に工夫(回路変更)を要しました。高周波特性のあまり良くないFETですが〜30MHzまで発振できるので、どうしてもという時には役立つかもしれません。一般的ではないので回路図は省きました。
【多彩な水晶発振子で発振】
FETを使った発振回路(4B)は様々な水晶発振子で発振が可能です。
HC-18/UやHC-49/Uと言った近代的で小型の水晶発振子がお奨めですが、写真のFT-243型のような旧式の水晶発振子でもよく発振します。
もちろん、アクティビティが低下しているような古くて条件の悪い発振子ですからFETはRF用が向いています。 写真の例では2SK19Yを使っています。 私がHAMに入門したころ購入した3530kcの発振子が元気よく発振してくれました。 古い水晶が発振すると何故かあの頃が思い浮かんできました。 なんとなく水晶の不思議な魅力を感じませんか?(笑)
☆
実用・水晶発振器の第1回は無調整型の基本波水晶発振器をテーマに幾つか検討しました。いずれの回路も十分な実用性があります。 目的として「定番の回路」を目指した訳ですから、どれか一つに絞ったら良いのかも知れません。 しかしそれぞれメリットもありますから優劣は一概には決めかねます。 むしろ持ち駒が沢山あった方が回路設計では有利ですから、臨機応変にうまくチョイスするのが良さそうです。
ところで、実験してきた水晶発振器ですが、アマチュアがジャンクの水晶発振子で楽しく遊ぶのは何も問題ありません。 もしも条件が変わって発振しなくなっても自己責任ですし、周波数変動が大きくてもオフバンドしなければ差し支えありません。 躊躇せずに楽しみましょう。 それにこのBlogの回路はそんなに怪しいもんじゃありません。 しかし、あらゆる条件下で確実に起動する発振器は難しいものです。 もしお仕事で心配なら水晶メーカーに相談されるのも良いでしょう。(笑)
たぶん次回も「水晶発振器」が続きます。 ではまた。 de JA9TTT/1
*このBlogをご覧になったご感想、ご質問、ご要望などございましたらコメント欄にお願いします。
この下にある「コメント」の文字をクリックするとコメント入力画面が現れます。
→ご質問・ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。
(つづく)←リンク fm
Introduction
I have constructed crystal oscillator circuits using inexpensive quartz crystals readily available on the surplus market. I have produced clock generators suitable for digital circuits that oscillate reliably, as well as oscillators suitable for analogue circuits that produce clean oscillation waveforms with low phase noise. I have made effective use of bipolar junction transistors (BJTs) and field-effect transistors (FETs).(2026.05.31 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【水晶発振子・振動子】
水晶と聞くとなんだか魅力的に感じてしまいます。子供のころ理科室に輝いていた鉱物標本が記憶に刻まれているからでしょうか?
電子部品の「水晶発振子」に特別な感情を覚えるのもそのせいかも知れません。 未だに宝石を使った高価な電子部品というイメージがあって出物(ジャンク品,etc)に出くわすとついつい手が延びてしまうのも仕方ないのでしょう。(今は100%人工水晶製です)
ところが単なるコレクションが目的ならともかく、電子部品として見ると「水晶発振子」の使い道はずいぶん限られるのです。 本来の目的である発振器に使うのが基本でしょう。 しかし「周波数が安定で動かない」という特徴は最大のメリットでありながら「周波数」が目的に合わなければまったく使い物になりません。ほとんどつぶしの利かない電子部品でもあるのです。(笑)
☆
せっかく手に入れた電子部品ですから幾らかでも活用の機会を作りたいものです。 この先しばらく本来の用途である『発振』に使う方向で実用的な使い方を探りたいと思います。
水晶がお好きだったらお付き合いください。 専門用語の説明はかなり省いており内容も電子回路の初心者向きではないかも知れません。 頑張ってついてきてください。w
【クリスタル・フィルタという手もあるが】
昔は同じ周波数の水晶発振子ばかりいっぱいあっても大して役に立たないと感じたものでした。
しかし水晶発振子の特性に着目して「フィルタ」に応用する手法が知られるようになって活用の道が開かれたのです。 大して役立たずだった大量の水晶が活かせるのですから。(この場合は水晶共振子と呼ぶ方がふさわしいです)
写真は8MHzのHC-49/US型水晶発振子を6つ使ってラダー型クリスタル・フィルタ(SSB用)を試作している様子です。 ラダー型クリスタル・フィルタの設計・製作については既に扱いましたので、興味があったらBlogバックナンバー(←リンク)の参照を。 水晶定数の求め方から始めて詳しく扱っています。
ラダー型クリスタル・フィルタを作ることはジャンクの水晶発振子を消費するには有望な方法です。 選別して揃ったものを選ぶのが良いフィルタを作るコツです。同一の水晶発振子が沢山あることはとても有利です。そう思ってジャンク品を集めたものでした。 同じ水晶発振子がたくさんあるなら発振以外の用途も考えておくべきです。
過去のBlogに試行過程を書いたように、様々な検討を経てノウハウは蓄積できたと思っています。しかし、時間と手間を惜しまず入念に設計・製作した肝心の「フィルタ」も、あんがい使う機会は少ないものです。ですから作り方がわかったらかなり満足してしまいました。 まあ、そんなにたくさん受信機やトランシーバなんて作りませんからねえ。(笑)
済んだことですし、とりあえずフィルタに使う話はここまでにしておきます。
☆
【水晶発振器・真空管で】
水晶発振子と言うくらいですから、発振回路に使うのが本命です。(水晶発振子と振動子は同じ物です)
水晶発振子は周波数が安定した発振器の決め手です。 真空管時代から様々な発振回路が考案されてきました。 水晶発振器の歴史を辿る意味で紹介しておきます。
左図は「無調整型水晶発振器」と言われるものです。ピアース回路とも言います。おもに周波数校正用の基準発振器に使われてきました。 近代的な半導体を使った発振回路も真空管時代の回路がベースになっています。特にFETを使った水晶発振回路は類似性が感じられます。
真空管式送信機に使う水晶発振器は発振出力に「パワー」が必要なので異なった回路が使われます。 そのため近代的な小型の水晶発振子は適当ではありません。
左図・発振回路も発振子としてFT-243型、FT-241型、HC-6/U型のように水晶板が大きくて丈夫な水晶発振子が前提になっています。 もし小型で近代的な水晶発振子で製作するのなら、プレート電圧(B+)は発振可能な範囲でなるべく低く抑えます。発振子を壊さないようにするためです。低いプレート電圧で動作し、High-gmなニュービスタ管などが最適だと思っていますが、いまとなっては真空管で作ることはまず無いのではありませんか?
なお、この図・表が作られた当時は15MHz以上の基本波発振子は珍しかった筈です。たとえば20MHzで試すならまずは15MHzのデータでやってみるのが良いでしょう。
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【トランジスタ・1石で発振】
トランジスタを使った水晶発振器として最も簡単で有用な回路をはじめに扱います。
参考:以下はいずれも半導体を使った回路で、電源電圧が低いためコンデンサは耐圧25Vまたは50Vで十分です。電解コンデンサは16V耐圧が使えます。抵抗器は1/4W型です。
左図はトランジスタを一つだけ使った無調整型水晶発振器です。水晶発振子として最初の写真にあるようなHC-18/U,HC-49/U,HC-49/USと言った近代的で小型のものを使います。 基本波だけが対象で、いずれでもよく発振してくれます。(特殊な専用発振子を使わないとオーバートーン発振はしません)
「無調整型」という意味は発振回路にLC同調回路を含まないという意味です。 組み立ててから何も調整せずに所定の発振状態が得られるわけです。 ただし、精密な周波数が必要なら「周波数合わせ」だけは必要です。回路図でTC1あるいはTC11で合わせます。だいたい±0.01%くらいでしたら楽に調整できます。
表・1にあるように、回路図のコンデンサ:C1とC2の容量値を水晶発振子の周波数に合わせて選択します。 実際には同じC1とC2の値のままでも、かなり広い範囲の周波数で発振します。 もちろん確実な発振を最重視するのであれば表のように周波数に合わせた容量値を選ぶ必要があります。 (参考:この設計ではコンデンサのリアクタンスが目的の周波数において、おおよそC1が450Ω、C2は250Ωになるよう選んであります)
また、表・2はコンデンサ:C1を100pF、C2を220pFに固定してしまい、どれくらいの周波数範囲で発振できるか実験した結果です。 後日の自身の参考のために直流的な動作点の情報も記載してありますが特に気にされる必要はありません。
トランジスタとしては高周波用の代表として2SC2668Y(2SC1923Yも同等品)、中華トランジスタのS9018H、そして汎用トランジスタの2SC1815Yでテストしました。
表・2の右端のように広範囲な周波数範囲(Foscの項)で発振することが確認できました。 高周波特性の優れた(fTの高い)トランジスタなら2〜30MHzで同じ部品定数のまま発振できるのです。 2MHz以下では水晶板のカットが特殊になってくる関係からか部品定数を「低周波用」に変更する必要があります。 しかし、それ以上なら30MHzまで幅広く発振できました。(30MHz以上も可能ですが、基本波の水晶発振子はまれになります)
表のようにトランジション周波数:fTがあまり高くない汎用トランジスタ(2SC1815Y)では高い周波数で発振が難しくなるのがわかります。 トランジスタのfTについてはこちら(←リンク)に実測した情報があります。
RF用トランジスタを使えば幅広い周波数範囲で発振できますが、周波数によっては必ずしも最適な状態でなくなるため、発振波形や発振振幅(発振の大きさ)に影響がでます。 できたら周波数ごとにC1とC2の容量値を選ぶべきなのでしょう。 なお、同じ周波数の発振子でも製作メーカーや製造時期などが異なれば発振状態に多少のちがいがあります。
参考:C1とC2を小さくするとオーバートーン発振のモードに移行することがあります。(例えば10pFとか)ただしこの発振状態はかなり不安定です。もしオーバートーン発振が目的なら、それ用に作った回路を使う必要があります。(続編のオーバートーン発振編を参照)
【無調整型水晶発振回路(1)の試作】
さっそく実験してみましょう。写真は10MHz:HC-49/U型水晶発振子で実験している様子です。
トランジスタ:Q1は2SC2668Yです。コンデンサ:C1=100pF、C2=220pFです。このままで幅広い周波数範囲で発振することが確認できました。 高周波特性の良いトランジスタを使うことで、部品定数を固定したままでもかなり広い周波数で発振できます。
2SC1815のような汎用トランジスタもかなり使えますが、やはり高周波用(RF用)を使うと有利です。 中国製のRF用トランジスタ:S9018Hはたいへん安価です。確実な発振器が欲しいなら汎用品で頑張らずに使ってみるのも良いでしょう。(国産トランジスタと足の並びが異なるので注意を!)
水晶発振器とは言えども、部品の値が温度で変化すれば発振周波数も変動します。 上記回路図で赤の★印が付いたコンデンサは特に重要です。 温度変化の少ないC0G特性またはCH特性(NP0:エヌピーゼロ特性とも言う。頭部が黒くペイントされていることが多い)のコンデンサを使います。 すこし難しいですが、C3に温度係数を持たせて温度補償することも可能です。市販の温度補償型水晶発振器:TCXOにはそのようになっている物もあります。
目安として、温度特性の良い部品を使って製作すれば周波数安定度は±10ppm/℃以内が容易に得られます。しかし±1ppm/℃以内の性能を得るには入念な温度補償が必要です。 さらに±0.1ppmとかそれ以上の安定度が必要なら専用の発振子を使い回路全体を恒温槽(オーブン)に入れ常に通電しておく必要があります。(参考:1MHzの±10ppmは±10Hzです)
なお、セラミック・コンデンサには温度特性が極めて悪いものがあって、周波数変動が大きかったり発振の起動に影響が及ぶことがあります。(高誘電率系のセラコン) 電源系統のバイパス・コンデンサとして使うには何の問題もありませんが、発振状態に影響のある箇所には使えません。
【発振器(1)の発振波形】
コレクタ側・出力端子で観測した10MHzの発振波形です。上記の製作例を観測しています。
ご覧のように波形は鋸歯状で「美しく」はありません。 発振周波数によっても波形はかなり変わりますし、波形の大きさ:振幅も変わります。
おもにデジタル回路のクロック発振器などに適するものです。 波形の美しさ(正弦波)にはこだわらず、簡単な回路で確実な発振が目的なのでしたら悪くない水晶発振回路だと思います。 市販されているSPXOと称するモジュールの内部も似たような回路になっているはずです。
信号を受ける側の回路にシュミット・トリガ特性を持ったインバータICやゲートICを使うのが確実なインターフェース方法です。
波形のことはともかくとして、コレクタ側から取り出しているので負荷回路の影響は受けにくいようでした。 電源電圧を変えると発振振幅も変化しますが、かなり広い電源電圧で発振は維持されます。条件にもよりますが、Vcc=1.5Vでも発振します。
☆ ☆
【低位相ノイズな基本波発振回路】
良い波形とフェーズ・ノイズ(位相ノイズ)の少なさを望むなら1石の水晶発振器では難しさがあります。
左図は波形が綺麗でフェーズ・ノイズも少ない基本波の水晶発振回路です。 1石追加するだけで、スプリアスや発振信号の上下に現れるノイズ・サイドバンドも極めて少ない優れた正弦波の発振器が作れます。 また発振振幅がスムースに加減できるのも特徴です。
発振部そのものは既に説明の無調整型水晶発振器(1)とほぼ同じです。 同じようにコンデンサC1、C2を(C11,C12を)発振周波数に合わせて選択する必要があります。(ただし同一容量でもだいぶ広い周波数範囲で発振します) やはり確実な発振の起動のためには周波数ごとに変える方が望ましいのです。
特徴的なのは発振出力の引き出しかたにあります。 もっともきれいな発振電流が流れている水晶発振子の直近から引き出しています。 いわばクリスタル・フィルタを通したような発振電流が得られるため、非常に信号純度が高いわけです。 そのあとバッファ・アンプに導きます。
回路(2)はバイポーラ・トランジスタ(普通のトランジスタ:BJT)をベース接地型のバッファ・アンプとして使った例です。 回路(3)はFETをソース接地型でバッファ・アンプを構成しています。 いずれの回路も綺麗な出力波形が得られるものです。1石の追加はたいへん効果的です。
発振器(2)の回路をご覧になって、高周波回路に造詣のあるお方はC5:1000pFは大きすぎるように感じるかも知れません。C5:1000pFはこのままで〜30MHzまでOKです。 ベース接地型バッファ・アンプの入力インピーダンスは非常に低く、これで大丈夫なのです。
計測用の基準信号として使ったり、発振信号に高純度を必要とする高級な通信機にもうってつけの発振器でしょう。お奨めできます。
【低位相ノイズ発振器(2)を試作】
写真はバイポーラ・トランジスタ:BJTをバッファ・アンプに使った製作例です。
発振周波数は1MHzです。トランジスタには2SC2668Yを2石使いました。 右にある半固定抵抗器で発振振幅(発振の大きさ)を可変できます。
この水晶発振子(1MHz)は少し特殊なようで、回路形式によっては発振しにくさを感じたものです。 上記の回路(2)、回路(3)のいずれでもC1、C2をうまく選んでやれば問題なく発振できました。
もちろん2MHz以上の周波数でも同じようにテストしていますがなかなか良好な発振状態でした。汎用の水晶発振器として活用できます。
【発振器(2)のエミッタ発振波形】
発振回路(2)のエミッタ(TP1)の波形を観測しています。
回路(2)、回路(3)ともに初めの無調整水晶発振回路(1)と基本は同じです。
発振部の電圧を変えることで発振振幅を加減する関係で、電流負帰還型バイアス回路をやめて簡単な固定バイアス形式に変更しています。 ベースバイアス回路部分のインピーダンスを高めることは発振の起動特性の向上にも役立っています。
バイアスの与え方に幾らか違いはあっても、発振回路として大差はないわけで、エミッタを流れる電流は(コレクタ電流も)高調波を含む鋸歯状です。 回路(1)と同じようにあまりきれいな波形ではないことがわかるでしょう。
【発振器(2)バッファ・アンプ出力波形】
こちらのバッファ・アンプを通ったあとの信号はきれいな正弦波です。 もちろんバッファ・アンプで歪んではダメなので、発振振幅の調整は必要です。
振幅の調整はオシロスコープを使うと簡単にできます。スペアナで高調波の状態を見ながら加減しても良いでしょう。 オシロスコープには十分な帯域幅を持った機種が必要です。 例えば10MHzの発振調整なら少なくとも帯域幅50MHz以上のオシロスコープが望ましいです。
発振振幅の調整範囲はかなり広いので、たいていは歪みのない状態へ調整可能なはずです。 どうしても歪む時は発振部の部品定数を加減する必要があります。 しかしそれは稀でしょう。
発振振幅を小さくしぼると発振の起動特性が悪くなることがあります。 どうしても小さく絞りたい時はバッファ・アンプの後で減衰させる方法がもっとも合理的です。
発振信号として高純度を要する用途ばかりでなく、一般的な発振器として気軽に使うのも良さそうです。
【低位相ノイズ発振器(3)を試作】
バッファ・アンプにFETを使った例です。 少しですがBJTのバッファ・アンプよりも部品数を減らすことができます。
写真は20MHzのHC-49/USを発振させている様子です。 Q11:発振部は2SC2668Y、Q12:バッファ・アンプは2SK544Fを使いました。 バッファ・アンプはソースフォロワにすることも可能です。
この例ではソース接地型ですからゲインを持ちます。 したがって、バッファ・アンプが入力オーバーになって歪む可能性もあります。 その場合はC20を追加・加減してきれいな波形になるようにします。
なお、本質的にはC15を周波数に応じて変えるべきです。 しかし多くの場合において220pFに固定しても使えるようでした。 もちろん出力波形を観測して歪みを感じるようでしたら表・3にあるように周波数ごとに変更すべきです。
【発振器(3)FETバッファ・アンプ出力波形】
発振回路(3)の出力波形を観測しています。 バッファ・アンプ(Q12:2SK544F)のドレイン出力波形です。
きれいな発振波形を目的にしているのですから当たり前かもしれませんがなかなか良い正弦波が得られています。 もちろんスペアナで見てもきれいでキャリヤの近傍ノイズも少なくて良好です。
バッファ・アンプにBJTを使うのか、FETを選ぶのかは結局のところ好みのように思います。 少し部品が増えてもよければBJTの方が大きな出力を取り出せる可能性もあって良い点もあります。 まあ用途次第でしょう。
以上、発振部:Q1,Q11に普通のトランジスタ(BJT)を使う回路を3つテストしました。 無調整水晶発振回路ながらも良い発振波形が得られるものもあって悪くない発振器です。
☆ ☆ ☆
ここからは発振回路そのものに電界効果トランジスタ:FETを使う無調整型水晶発振器を検討します。そう言えば回路屋さんはFETのことを「フェット」って呼んでますね。(笑)
【FETを使った無調整水晶発振回路】
左図はFETを使った無調整型水晶発振器です。 実験回路としては2種類あります。
違う回路に見えますが発振回路としての形式は同じです。真空管のピアース回路そのまんまですね。 2種類はソース接地型にするのか、あるいはドレイン接地型にするのかといった違いです。 ただしドレイン接地型では負荷抵抗に相当する部分を高周波チョークコイル:RFCに変えてあります。(回路4Bは高周波的にドレイン接地になっています)
RFCを使う回路(4B)は電源の利用率が良くて発振波形も良好でした。 さらに「発振の容易さ」でも優っています。 もちろん、たとえRFCとは言えどもコイルの類がお好きでないならドレインに抵抗器を置く(4A)の回路が良いでしょう。 逆に、4Aの回路のドレイン負荷抵抗:R2をRFCに置き換えることもできます。よく発振してくれます。
FETを使った発振器にもバッファ・アンプを設けるのは有効です。負荷状態の変動に強くなります。 良好な周波数安定度を望むなら付けておくべきでしょう。
ゲート部分のダイオード:D1,D11は発振振幅を安定させるためのものです。 ただしQ1,Q11に接合型FET(J-FET)を使う場合は必ずしも必要としません。ゲートのPN接合部が外付けダイオードと同等の働きをするためです。 MOS型の2SK241や2SK544にはその作用はないため是非とも追加すべきです。
なくても発振しますが、あれば適度な発振状態に自己バイアスが掛かって自動的に発振振幅が安定してくれます。 ダイオードはシリコンの高速スイッチング用(Si-SW-Di)なら何でも使えます。 さらにゲルマニウム・ダイオード:Ge-Diやショットキー・ダイオード:SBDも使えますが、発振振幅が抑制されすぎる傾向があります。 Si-SW-Diが無難なようでした。
かなりgmが大きなRF用FET・・・J310など・・・を使うとIdssが大きすぎてうまく発振状態の制御ができないことがあります。 発振の起動そのものが困難になることもあります。 その場合はRFC:L11と直列に数10〜数100Ω程度の抵抗を挿入し自己バイアスを掛けてドレイン電流を抑制します。
【発振器(4B)を試作】
無調整型水晶発振器(4B)を試作した様子です。 基本波周波数が20MHzの水晶発振子でテストしています。 FETはJ211です。
RFC:L11としては470μHのマイクロインダクタを使いました。形状の小さなRFCの中には巻線の抵抗値が大きなものがあります。使う前にテスタで抵抗値を測って確認してください。直流で測った抵抗値が10Ω以上あると発振状態に影響が及びます。 ちなみに写真に見える470μHのDC抵抗は約1.2Ωです。
RFCのインダクタンスは2MHz以上では470μHあれば十分です。 5MHz以上なら220μHでも大丈夫です。 逆に低い周波数では大きなインダクタンスが必要になります。 455kHzのセラミック発振子も良く発振する回路ですが、RFCは少なくとも2.2mH以上必要です。
部品数も少なくて発振容易な良い回路と言えます。
参考:このBlogには市販のRFC(高周波チョークコイル)の評価レポート(←リンク)があります。
【発振器(4B)の出力波形】
上記で試作した発振回路(4B)の発振波形を観測しています。 室内が暗かったので画像が荒れて見苦しいですが悪しからず。(笑)
FETはFairchild社製のJ211(前回のBlog参照)を使っています。J211はごくシンプルな構造のFETで、特別なものではありません。
J211は足の並びが2SK19や2SK192Aと同じですから差し替えて簡単に試せます。2026年5月現在、かなり安価に出回っています。 もちろん2SK19や2SK241と言ったポピュラーなFETでも何も問題ありません。それらを持っていればあえてJ211を手に入れる必要は無いでしょう。
FETを使った無調整型発振器は周辺部品が少なくて作りやすいのが特徴です。 発振波形も見ての通りなかなか良好でした。
【発振器(4B)は多彩なFETで発振する】
基本波水晶発振回路(4B)は多彩なFETが使えるのも特徴の一つです。
この写真はFETに2SK44(-D)を使い、20.935MHzの円筒型水晶発振子を発振させている様子です。 とてもうまく発振します。 この2SK44(-D)は黒豆型の古い三洋電機製ですが、東芝製で言えば2SK30A(-Y)と同じような低周波用のFETです。 他にもイサハヤ電子の低周波・低雑音増幅用2SK2881を試したところ、同じようにうまく使えました。
なにも低周波用を使うことを推奨するつもりはなくて、高周波用のFETだけでなく幅広いFETが使えることを示している訳です。 もちろん、FETの性能次第で発振性能も変わります。持っているのであればRF用のFETを使うのが一番間違いないです。 しかし有り合わせのFETが使えるのはメリットだと思います。
ほかに2N7000やBS170と言ったスイッチング用のMOS-FETでも発振します。エンハンスメント・モード特性なのでバイアスの掛け方に工夫(回路変更)を要しました。高周波特性のあまり良くないFETですが〜30MHzまで発振できるので、どうしてもという時には役立つかもしれません。一般的ではないので回路図は省きました。
【多彩な水晶発振子で発振】
FETを使った発振回路(4B)は様々な水晶発振子で発振が可能です。
HC-18/UやHC-49/Uと言った近代的で小型の水晶発振子がお奨めですが、写真のFT-243型のような旧式の水晶発振子でもよく発振します。
もちろん、アクティビティが低下しているような古くて条件の悪い発振子ですからFETはRF用が向いています。 写真の例では2SK19Yを使っています。 私がHAMに入門したころ購入した3530kcの発振子が元気よく発振してくれました。 古い水晶が発振すると何故かあの頃が思い浮かんできました。 なんとなく水晶の不思議な魅力を感じませんか?(笑)
☆
実用・水晶発振器の第1回は無調整型の基本波水晶発振器をテーマに幾つか検討しました。いずれの回路も十分な実用性があります。 目的として「定番の回路」を目指した訳ですから、どれか一つに絞ったら良いのかも知れません。 しかしそれぞれメリットもありますから優劣は一概には決めかねます。 むしろ持ち駒が沢山あった方が回路設計では有利ですから、臨機応変にうまくチョイスするのが良さそうです。
ところで、実験してきた水晶発振器ですが、アマチュアがジャンクの水晶発振子で楽しく遊ぶのは何も問題ありません。 もしも条件が変わって発振しなくなっても自己責任ですし、周波数変動が大きくてもオフバンドしなければ差し支えありません。 躊躇せずに楽しみましょう。 それにこのBlogの回路はそんなに怪しいもんじゃありません。 しかし、あらゆる条件下で確実に起動する発振器は難しいものです。 もしお仕事で心配なら水晶メーカーに相談されるのも良いでしょう。(笑)
たぶん次回も「水晶発振器」が続きます。 ではまた。 de JA9TTT/1
*このBlogをご覧になったご感想、ご質問、ご要望などございましたらコメント欄にお願いします。
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→ご質問・ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。
(つづく)←リンク fm
2026年5月2日土曜日
【部品】RF FETs 2026
【高周波用小信号FET:2026年版】
Introduction
This document compiles information on FETs for high-frequency circuits that are readily available in Japan as of 2026. RF FETs have several structural characteristics and have been refined to make them easier to use. I have provided a brief explanation of each. I hope to help readers understand the characteristics of these readily available FETs, utilize them effectively, and enjoy building RF circuits. I have measured the transconductance (gm) of the FETs I have on hand and compiled the results into a table.(2026.5.2 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【FETはキーパーツ】
水晶発振器を検討しています。電界効果トランジスタ(FET)がキーポイントです。
(このBlogに登場するFETs)
2SK19Y,2SK19GR,2SK19BL.2SK41E,2SK49,2SK54B,2SK61,2SK125-5,2SK161,2SK192AY,2SK210Y,2SK211,2SK212D,2SK241Y,2SK241GR,2SK246GR,2SK302Y,2SK315E,2SK439E,2SK439F,2SK518E,2SK544E,2SK544F,2SK606S,2SK607,2SK608,2SK882GR,3SK35,3SK44,BF256B,BF256C,J211,J310,J310G,U310,E310,MMBFJ310 ほとんどが高周波・小信号用のFETです。
【オーバートーン発振器】
電界効果トランジスタ:FETで水晶発振子をオーバートーン発振させています。
永く電子回路と付き合っていると自身の「定番の回路」ができてきます。私は高周波回路(RF回路)に馴染んでいて水晶発振器はその一つです。 昔々は真空管でしたがそんな時代ではなくなっています。半導体が主役です。
(RF:Radio Frequency)
いまでは水晶発振に集積回路:ICを使うことも増えましたが、トランジスタ1石〜2石のシンプルな回路で済ませるのも好みです。 できたら発振周波数に対応する部品定数を決めてしまい、回路の定型化を進めたいと思っています。
発振用のデバイスとしては「ごく普通のトランジスタ」(BJT)のほか、「電界効果トランジスタ」(FET)も選択肢です。写真はRF用MOS-FETの2SK544Fでオーバートーン水晶発振器を試作しています。水晶発振子は12.8MHzのもので7次オーバートンで89.6MHzを得ています。
【オーバートーン発振回路】
左図は上記写真のオーバートーン水晶発振回路です。
図は発振回路の一例であり、FETを使っています。 発振の”モード”は「基本波モード」のほか、基本波の奇数倍の周波数が得られる「オーバートーン・モード」があってどちらでも動作します。 発振の「次数」(=発振周波数)はドレイン側同調回路の共振周波数に依存します。
ありきたりの「基本波モード」では主にBJTを使ってテストしました。 発振周波数によって部品定数を選ぶ必要がありますが概ね定型化できています。 FETを使った回路にもメリットがあります。
☆
実験を始めるにあたり手元の資料で水晶発振回路の実例を調査しました。 メーカー製の機器では入手性や安価という理由から2SC1923(一例)と言ったありきたりの高周波用BJTを使う例が多かったです。 そのため、まずはBJTを使った発振器から始めたのですが、むしろ2SK241(一例)のようなFETを使う回路にメリットを感じました。(左図)
水晶発振器にFETを使うメリットは「外付け部品数の少なさ」が挙げられます。 図のように少ない部品で容易にオーバートーン発振できるのです。(もちろん基本波発振にも使える) このシンプルさはかなりメリットでしょう。 The essence of beauty is simplicity.....
またBJTを使った発振回路よりも「良い発振波形」が得られます。 「良い発振波形」なら高調波などスプリアスが少ないわけです。 BJTでも良い波形は可能なのですが、回路的な工夫や製作後の調整が必要になります。 FETなら無調整でも良い発振波形が得られ易いのです。
【7次オーバートーン波形】
写真はオーバートーン発振の実測波形です。
これはうまく発振している様子です。基本波が12.8MHzの水晶発振子て7次のオーバートーン発振をさせています。
確実な部品・・・特に発振子ですが・・・を使って製作すればうまく発振します。しかし測定器を使った確認はぜひとも行なうべきです。とりわけオーバートーン発振では必須でしょう。具体的に言えば高次発振の場合、次数を間違えると言ったトラブルが起きやすいのです。ただし実験が済んで使う部品と回路が確定すれば回路としての再現性は悪くありません。
この例はアナログなオシロで観測していますがデジオシで大丈夫です。さらに慣れてくればスペアナ(スペクトラム・アナライザ)も良いでしょう。 もちろんTiny SAも役立ちます。ダイオード検波の「RFプローブ付き」の電圧計と併用すればアマチュア向きで便利な実験ツールになります。高周波回路だから高級な測定器が必要なのだという訳ではありません。もちろん良い測定器をお持ちなら活用のチャンスです。
☆
水晶発振回路の詳しいことは次回以降のBlogで予定します。 いったん発振回路の実験は脇に置いて、発振器で重要な高周波用電界効果トランジスタ:RF用FETについて検討します。実験を進める過程でFETの性能差がかなり感じられたためです。
あわせて2026年現在入手可能なもの(RF用FET)を紹介しておきたいと思います。 RF回路に使うFETについては2010年ころ扱いました。(→リンク) しかし年数の経過で入手状況は大きく変わりました。あらためて扱う必要を感じています。 なお3SKタイプの2ゲート型MOS-FETについては既に扱い済みです。少し年月は経過しましたが、あまり状況に変化はないのでそちら(←リンク)を参照してください。
これ以降は高周波回路(RF回路)の製作をされるお方向きです。興味がなければ時間が勿体ないのでお帰りがお奨めです。 自家用の製作情報としてまとめています。とうぜん目的や意図が異なれば意味も変わります。参照される際はご留意ください。
【代表的高周波用FET:2SK19の系譜】
2SK19は高周波用(RF用)として登場した初期のFETです。1960年代末には誕生していました。
このBlogでは頻繁にRF用FETが登場しています。 だいたい定番は決まっています。たとえば接合型FET(J-FET)なら2SK19や2SK192系を使います。
帰還容量:Crssが問題になる用途では、2SK241/439/544系が定番でしょう。
また稀にゲート接地型アンプが必要で、2SK125やJ310を使うことになります。いずれのFETもまだ十分に使い物になる性能があって手持ちがあればRF回路の製作に役立ちます。
しかしこれらのほとんどがディスコン(Discontinued:継続しないということで廃止品種を意味します)になってしまいました。 まだ何とか手に入るものもありますが、価格は上昇傾向ですし、いずれまったく入手できなくなるでしょう。 オークションに登場するかも知れませんが、大した性能でもないFETに高額を支払う意味など感じませんし・・・。
写真の面実装型:2SK210Yですら廃止品種ですから高周波用FETの前途はなかなか厳しいのです。 2SK19がなければ2SK192Aを使って下さいとはもう書けません。かろうじて手に入りそうな2SK210を使う前提で基板設計するか、変換基板に実装して使うことになるでしょう。
【外国製RF用J-FETが登場している】
写真はBF256BとJ211で外国製(フェアチャイルド社)の高周波用(RF用)FETの例です。
2SK19/192Aなき後を引き継ぐように、外国製のRF用FETがパーツショップに登場しています。 BF256Bはしばらく前から売られており、2SK19のように単純な構造のRF用FETを代替できるものです。2SK19で言えばGR相当です。
また最近になって手に入りやすくなってきたJ211も同じように使えます。 なお、「J」と付いていますがP-ChのFETではなくて、N-ChのJ-FET(2SKタイプ)です。
どちらも内部の構造が国産各社のRF用J-FETと少し違うらしく出力容量:Cossが小さいようです。ドレイン側の同調容量をやや大きくする必要があります。実験していて2SK19,etcとちょっと違いを感じました。
これはオーバートーン発振回路のような〜70MHzあたりを扱っている際の違いです。30MHz以下と言ったHF帯ではさしたる違いはありません。従って2SK19/192A,etcの代替として十分役立ちます。 国産各社のFETと足の並びが違うので確認を要します。(写真参照) なお、BF256とJ211はドレインとソースの電極を入れ替えてもまったく同じように動作するという特徴があります。
備考:オーディオのような低周波回路にも使えますが、RF用なのでドレイン耐圧が低くて回路構成上だいぶ不利です。 オーディオ・アンプにはそれ用に作られたJ-FETが無難でしょう。 もちろん無線機のマイクアンプくらいでしたら何の問題もありません。
【RFデバイスの歴史は低帰還容量化の歴史】
左図は低帰還容量デバイスの断面構造です。
小信号用のFETは2SK19のような単純な構造のJ-FETから始まりましがRFアンプではドレイン・ゲート間の帰還容量:Crssが問題になったのです。
低周波では気になりませんが高周波ではCrssが大きいとアンプが自己発振してしまいます。 発振対策が必須で、中和回路で帰還を打ち消したり2石使ってカスコード・アンプにして使うといった面倒がありました。
その対策として帰還容量を減らし高周波で使いやすくしたのが3SK35(一例)と言った2ゲート型MOS-FETです。 ただしこれにも第2ゲートの部分に外付け部品が増えると言った欠点がありました。これら3SKタイプの2ゲート型MOS-FETについては既に扱い済みです。詳しいことはそちら(←リンク)を参照してください。
同じように低帰還容量を目指して登場したのが内部カスケード型J-FETです。こちらは3端子型です。(図右) 国産でこの構造はNEC日本電気の2SK49が始まりのようです。 その後登場した東芝の2SK61でポピュラーなRF用FETになりました。 2SK61はさらにパッケージ小型化の2SK161へと改良され、面実装型の2SK211に引き継がれました。 いずれも内部のチップは同じものです。
使う上での注意はサブストレート・ゲート(図を参照)がソース電極に結ばれている点です。ソース接地型のRFアンプには最適ですが、ソース・フォロワやゲート接地アンプ(GGアンプ)に使うと良い性能が得られないことがあります。使えないわけではありませんが、それぞれの回路に適したデバイスに置き換えた方が有利です。
【内部カスケード構造のJ-FET】
写真は内部でカスケード接続になっているJ-FETの一例です。 2SK212-Dは2026年5月のいま現在、入手容易なものです。(台湾製のようです)
2SK61や2SK161はだいぶ前からディスコンなので入手先は限られます。一時期流行ったのですが流通在庫がわずかに残るのみでしょう。 写真の2SK212-Dは同じ構造のカスケード型構造のJ-FETです。最近になって入手しやすくなっています。 この構造のJ-FETはディスコンがほとんどなので同じく流通在庫品なのかもしれません。将来性には懸念があると思います。(流通在庫:お店や問屋さんの在庫品、一種の不良在庫・笑)
2SK241系のRF用MOS-FETが入手しにくいので代替として検討してみました。 手に入るものはIdssが小さな-Dランク品なので少々gmが低いのが弱点です。しかし少ないドレイン電流の割に良い性能でした。 100MHzあたりまでのRF増幅用として満足に働きます。〜60MHzくらいまでのオーバートーン水晶発振にも十分使えます。 もちろん中和回路など不要で2SK241の代用として多くの回路で同じように使えます。 2026年5月現在、性能からみて安価で有り難い存在のJ-FETです。 未評価ですが2SK212と類似特性の2SK315(-E,-F)が中華通販で見つかります。
写真にありませんが松下・Panasonicの2SK606-Sも内部カスケード構造のJ-FETです。 手持ちはIdssランク-Sなので潜在的なgmも大きくて〜100MHzのオーバートーン発振回路に適当でした。RFアンプでも高ゲインが期待できます。一時期ディスカウントされていたときに入手したものです。活用例は見ませんが持っているなら使って損のないJ-FETです。(ディスコン品です)同社2SK607は小パッケージ型、2SK608が面実装型。
【内部カスケード構造のRF用MOS-FETs】
写真は内部でカスケード接続になっているRF用MOS-FETです。 2ゲート型MOS-FETの改良から生まれたものです。
上で紹介した内部カスケード型のJ-FETと同じ時期に生産されていたのでMOS型の方が決定的に有利という訳ではないのでしょう。
しかし、正方向のゲート電圧が許容できるなど使いやすさの点ではMOS型の方が有利なように感じます。 また同じようなIdssではMOS型の方がgmが大きいのがわかります。従ってオーバートーン発振ではJ-FETよりも有利でした。
欠点は1/fノイズ(エフぶんのいちノイズ:ピンク・ノイズとも言う)が大きいことにあります。 1/fノイズは特に低周波で大きくなるので低周波アンプやVCOでは要注意です。これらの用途には単純な構造のJ-FETあるいはカスケード構造のJ-FETがローノイズなので良い選択です。(2SK241は1/fノイズの発生源用デバイスとして使われるくらいですので・・・)
これまでのところ国産品のみが流通しています。リード線タイプでは写真の3種類がポピュラーです。 2SK241や2SK439は既に姿を消し、2SK544だけが2026年の現在でも入手できます。ほとんど同じように使えますから取りあえず支障を感じません。
【2SK241互換のSMD型FETs】
表面実装型(SMD型)で2SK241と互換のFET。
世の中の電子機器は小型化と生産の効率化を追求しています。そのため表面実装で組み立てられるようになりました。 リード線付き部品のニーズが無くなれば廃止されるのは運命でしょう。前項で扱った2SK241,etcはいずれも廃止対象です。
それに代わって内部の半導体チップはまったく同じで表面実装型が登場しています。 2SK302と2SK882はいずれも2SK241の面実装型です。 2SK302はTO-236型パッケージなのでやや大きくてピンピッチも1.9mmと扱いやすいのですが、より小型の2SK882に移行しているようです。
いずれもそのままリード線付きのように扱うのは難しいので、基板設計して面実装型として使うか、あるいは写真・中央の囲みのように変換基板に実装する必要があります。
パッケージが小さいため規格的には最大ドレイン損失が小さくなっています。しかし小信号増幅回路で使いますのであまり支障はないでしょう。
ドレイン電流をたくさん流すと言った使い方をするならドレイン側のランド・パターンを広くとって放熱を改善すると言った対策が有効です。 リード線のない(短い)面実装型(SMD型)デバイスは高周波的にかなり有利です。 同じ回路ても面実装化で性能の向上が期待できます。 変換基板に実装したチップはリード線付きと同じように扱えます。
【GGアンプ用FETs】
写真はゲート接地型RFアンプ用に作られたFETです。 High-gmに作ってあり、入力インピーダンスがライン・インピーダンス:75Ωや50Ωに整合しやすいよう作られています。Idssが大きいのも特徴です。
携帯電話だけでなく、無線機器もフルIC化が進んだため、ディスクリート部品(個別部品)でRFアンプを作るケースも減っているはずです。従っていずれディスコン化するかも知れませんが、写真のようなゲート接地型RFアンプ用のJ-FETが作られていました。
50MHz〜430MHzと言ったV・UHF帯のRFアンプ用に最適です。Idssが大きいことから内部抵抗が低くて、電流容量も大きいのでスイッチングタイプのミキサ回路にも好んで使われるデバイスです。
オリジナルはシリコニックス社のU-310/E-310/J-310で、2SK125は同じ用途を狙って開発されたSONY製です。NECの2SK518はAMラジオ用となっていますが、同じような目的に使えるはずです。(2SK125、2SK518はディスコン品)
高性能な受信機用としてRFアンプやミキサ回路の用途もあるので有用なデバイスですがリード線タイプはディスコンになったようです。 面実装型のMMBFJ310(SOT-23パッケージ)でしたら入手は容易です。基板設計派はこちらを使うのが良いでしょう。
☆
水晶発振回路を実験していたのであってFETの比較・評価は目的ではありませんでした。しかし用いるFETによって発振性能はずいぶん違うのです。そこで手元にあった各種のFETについて実際に評価・比較することにしました。
以下はRFアンプでの直接比較ではありませんが、測定結果はRFでの性能と相関性が見られます。 従って測定容易な低周波でのテストではありますがFETの活用に当たって有益な手掛かりが得られています。 メーカーのデータ・シートでも1kHzでの評価値はよく見られます。
【gm測定回路】
左図は小信号用FETのトランスコンダクタンス:gmの測定回路です。
負荷抵抗を100Ωと低くとってストレー容量によって周波数特性が劣化しないよう考えられています。 メーカーの規格表に載っているgmも類似の回路で測定しているはずです。
測定周波数は1kHzです。またドレイン電流はIdssで測定しています。そのためFETによる違いだけでなく、同型番のFETでもIdssランクによる違いが明確にわかります。 なるべく小さな信号(入力で100mVpp)にて測定し、波形ひずみが影響しないよう注意しました。
低周波アンプとしてのゲインを測定し、ゲインから計算でgmを求めています。 負荷抵抗の大きさが100Ωと小さいため、アンプとしてのゲインは約0.3倍〜1倍少々しかありません。信号を大きくする目的のアンプ回路ではなく、gm測定のための回路です。
【gm測定結果】
左表は各種のFETについてgmの実測値をまとめたものです。(gm:昔は相互コンダクタンスと言ってました)
gmの単位はS:ジーメンスで昔の単位で言えば℧:モー/mhoと同じです。gm=ΔId/ΔVg なお1mS(1ミリ・ジーメンス)=1000μ℧ですから、真空管と比べてどのFETもかなりHigh-gmなことがわかります。 真空管では難しかったような高次オーバートーン水晶発振がFETを使うと易々と可能な理由でもありましょう。(笑)
表はパーツボックスから出てきたものを順に測定して並べただけですから、順番は意味を持ちません。
単純な構造の古くからあるようなFETはあまりgmは大きくないことがわかります。 対して、内部カスケード型MOS-FETはどれもgmが大きいのです。 オーバートーン水晶発振では高次になるほどアンプとしてのゲインが必要になることから、実験で感じた通りMOS構造のカスケード型FETが有利なことが実証できました。
内部カスケード型J-FETでは最も新しいタイプと考えられる2SK606(-S)が優れていて、これは実際に使っていても実感できました。 同じ内部構造の2SK212(-D)はIdssが小さいのでgmも小さくて高次のオーバートーン水晶発振は苦手です。 おなじオーバートーンでも3次なら可能なので、高い周波数が必要なら基本波の周波数が高い水晶発振子を使うと発振容易です。 これはgmが小さめの単純な構造のJ-FET・・・2SK19や2SK192Aにも当てはまります。
発振回路の消費電流を抑えつつ、高い周波数のオーバートーン水晶発振をさせるには小さめのIdssでgmの大きなFETを選ぶのが適当でした。 また、なるべく低次のオーバートーン発振で済ませる方が容易であり実用上は5次までが無難です。 事前にテストして水晶発振子を選んでやれば7次までが実用上間違いなさそうでした。
いずれにしてもFETを使う水晶発振回路は100MHzまでの発振が適当で、100MHz以上ではfTの極めて高い超高周波用のBJTを使った高次オーバートーン水晶発振回路を選択する必要があります。 それ以下の周波数なら周辺部品の数が少なく済むFETを使うメリットは大です。 発振波形も良好です。
☆
年初の頃からゆっくりしたペースで水晶発振回路の定番を探っています。 今回はその一環として発振用デバイスとしてのFETについて検討してみました。 この先の水晶発振回路の検討に反映させるつもりです。
内部カスケード型のFETはJ-FET型、MOS型のいずれも帰還容量が小さいうえ、ハイゲインですからRF用として使いやすいデバイスです。 発振回路だけでなく一般の高周波増幅器(RFアンプ)への適性も大です。 従来からHF帯で何気なく無造作に使ってきた回路&部品ですが悪くない選択だったことがわかりました。
また、消費電流を厭わない用途なら、専用デバイスを活かしたゲート接地型増幅器(GGアンプ)も優れています。
さて、RF-FET 2026年版はいかがだったでしょうか? 何れにしてもFET,etcを適材適所に使ってこの先もRF回路を楽しみましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1
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(おわり)fm
Introduction
This document compiles information on FETs for high-frequency circuits that are readily available in Japan as of 2026. RF FETs have several structural characteristics and have been refined to make them easier to use. I have provided a brief explanation of each. I hope to help readers understand the characteristics of these readily available FETs, utilize them effectively, and enjoy building RF circuits. I have measured the transconductance (gm) of the FETs I have on hand and compiled the results into a table.(2026.5.2 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【FETはキーパーツ】
水晶発振器を検討しています。電界効果トランジスタ(FET)がキーポイントです。
(このBlogに登場するFETs)
2SK19Y,2SK19GR,2SK19BL.2SK41E,2SK49,2SK54B,2SK61,2SK125-5,2SK161,2SK192AY,2SK210Y,2SK211,2SK212D,2SK241Y,2SK241GR,2SK246GR,2SK302Y,2SK315E,2SK439E,2SK439F,2SK518E,2SK544E,2SK544F,2SK606S,2SK607,2SK608,2SK882GR,3SK35,3SK44,BF256B,BF256C,J211,J310,J310G,U310,E310,MMBFJ310 ほとんどが高周波・小信号用のFETです。
【オーバートーン発振器】
電界効果トランジスタ:FETで水晶発振子をオーバートーン発振させています。
永く電子回路と付き合っていると自身の「定番の回路」ができてきます。私は高周波回路(RF回路)に馴染んでいて水晶発振器はその一つです。 昔々は真空管でしたがそんな時代ではなくなっています。半導体が主役です。
(RF:Radio Frequency)
いまでは水晶発振に集積回路:ICを使うことも増えましたが、トランジスタ1石〜2石のシンプルな回路で済ませるのも好みです。 できたら発振周波数に対応する部品定数を決めてしまい、回路の定型化を進めたいと思っています。
発振用のデバイスとしては「ごく普通のトランジスタ」(BJT)のほか、「電界効果トランジスタ」(FET)も選択肢です。写真はRF用MOS-FETの2SK544Fでオーバートーン水晶発振器を試作しています。水晶発振子は12.8MHzのもので7次オーバートンで89.6MHzを得ています。
【オーバートーン発振回路】
左図は上記写真のオーバートーン水晶発振回路です。
図は発振回路の一例であり、FETを使っています。 発振の”モード”は「基本波モード」のほか、基本波の奇数倍の周波数が得られる「オーバートーン・モード」があってどちらでも動作します。 発振の「次数」(=発振周波数)はドレイン側同調回路の共振周波数に依存します。
ありきたりの「基本波モード」では主にBJTを使ってテストしました。 発振周波数によって部品定数を選ぶ必要がありますが概ね定型化できています。 FETを使った回路にもメリットがあります。
☆
実験を始めるにあたり手元の資料で水晶発振回路の実例を調査しました。 メーカー製の機器では入手性や安価という理由から2SC1923(一例)と言ったありきたりの高周波用BJTを使う例が多かったです。 そのため、まずはBJTを使った発振器から始めたのですが、むしろ2SK241(一例)のようなFETを使う回路にメリットを感じました。(左図)
水晶発振器にFETを使うメリットは「外付け部品数の少なさ」が挙げられます。 図のように少ない部品で容易にオーバートーン発振できるのです。(もちろん基本波発振にも使える) このシンプルさはかなりメリットでしょう。 The essence of beauty is simplicity.....
またBJTを使った発振回路よりも「良い発振波形」が得られます。 「良い発振波形」なら高調波などスプリアスが少ないわけです。 BJTでも良い波形は可能なのですが、回路的な工夫や製作後の調整が必要になります。 FETなら無調整でも良い発振波形が得られ易いのです。
【7次オーバートーン波形】
写真はオーバートーン発振の実測波形です。
これはうまく発振している様子です。基本波が12.8MHzの水晶発振子て7次のオーバートーン発振をさせています。
確実な部品・・・特に発振子ですが・・・を使って製作すればうまく発振します。しかし測定器を使った確認はぜひとも行なうべきです。とりわけオーバートーン発振では必須でしょう。具体的に言えば高次発振の場合、次数を間違えると言ったトラブルが起きやすいのです。ただし実験が済んで使う部品と回路が確定すれば回路としての再現性は悪くありません。
この例はアナログなオシロで観測していますがデジオシで大丈夫です。さらに慣れてくればスペアナ(スペクトラム・アナライザ)も良いでしょう。 もちろんTiny SAも役立ちます。ダイオード検波の「RFプローブ付き」の電圧計と併用すればアマチュア向きで便利な実験ツールになります。高周波回路だから高級な測定器が必要なのだという訳ではありません。もちろん良い測定器をお持ちなら活用のチャンスです。
☆
水晶発振回路の詳しいことは次回以降のBlogで予定します。 いったん発振回路の実験は脇に置いて、発振器で重要な高周波用電界効果トランジスタ:RF用FETについて検討します。実験を進める過程でFETの性能差がかなり感じられたためです。
あわせて2026年現在入手可能なもの(RF用FET)を紹介しておきたいと思います。 RF回路に使うFETについては2010年ころ扱いました。(→リンク) しかし年数の経過で入手状況は大きく変わりました。あらためて扱う必要を感じています。 なお3SKタイプの2ゲート型MOS-FETについては既に扱い済みです。少し年月は経過しましたが、あまり状況に変化はないのでそちら(←リンク)を参照してください。
これ以降は高周波回路(RF回路)の製作をされるお方向きです。興味がなければ時間が勿体ないのでお帰りがお奨めです。 自家用の製作情報としてまとめています。とうぜん目的や意図が異なれば意味も変わります。参照される際はご留意ください。
【代表的高周波用FET:2SK19の系譜】
2SK19は高周波用(RF用)として登場した初期のFETです。1960年代末には誕生していました。
このBlogでは頻繁にRF用FETが登場しています。 だいたい定番は決まっています。たとえば接合型FET(J-FET)なら2SK19や2SK192系を使います。
帰還容量:Crssが問題になる用途では、2SK241/439/544系が定番でしょう。
また稀にゲート接地型アンプが必要で、2SK125やJ310を使うことになります。いずれのFETもまだ十分に使い物になる性能があって手持ちがあればRF回路の製作に役立ちます。
しかしこれらのほとんどがディスコン(Discontinued:継続しないということで廃止品種を意味します)になってしまいました。 まだ何とか手に入るものもありますが、価格は上昇傾向ですし、いずれまったく入手できなくなるでしょう。 オークションに登場するかも知れませんが、大した性能でもないFETに高額を支払う意味など感じませんし・・・。
写真の面実装型:2SK210Yですら廃止品種ですから高周波用FETの前途はなかなか厳しいのです。 2SK19がなければ2SK192Aを使って下さいとはもう書けません。かろうじて手に入りそうな2SK210を使う前提で基板設計するか、変換基板に実装して使うことになるでしょう。
【外国製RF用J-FETが登場している】
写真はBF256BとJ211で外国製(フェアチャイルド社)の高周波用(RF用)FETの例です。
2SK19/192Aなき後を引き継ぐように、外国製のRF用FETがパーツショップに登場しています。 BF256Bはしばらく前から売られており、2SK19のように単純な構造のRF用FETを代替できるものです。2SK19で言えばGR相当です。
また最近になって手に入りやすくなってきたJ211も同じように使えます。 なお、「J」と付いていますがP-ChのFETではなくて、N-ChのJ-FET(2SKタイプ)です。
どちらも内部の構造が国産各社のRF用J-FETと少し違うらしく出力容量:Cossが小さいようです。ドレイン側の同調容量をやや大きくする必要があります。実験していて2SK19,etcとちょっと違いを感じました。
これはオーバートーン発振回路のような〜70MHzあたりを扱っている際の違いです。30MHz以下と言ったHF帯ではさしたる違いはありません。従って2SK19/192A,etcの代替として十分役立ちます。 国産各社のFETと足の並びが違うので確認を要します。(写真参照) なお、BF256とJ211はドレインとソースの電極を入れ替えてもまったく同じように動作するという特徴があります。
備考:オーディオのような低周波回路にも使えますが、RF用なのでドレイン耐圧が低くて回路構成上だいぶ不利です。 オーディオ・アンプにはそれ用に作られたJ-FETが無難でしょう。 もちろん無線機のマイクアンプくらいでしたら何の問題もありません。
【RFデバイスの歴史は低帰還容量化の歴史】
左図は低帰還容量デバイスの断面構造です。
小信号用のFETは2SK19のような単純な構造のJ-FETから始まりましがRFアンプではドレイン・ゲート間の帰還容量:Crssが問題になったのです。
低周波では気になりませんが高周波ではCrssが大きいとアンプが自己発振してしまいます。 発振対策が必須で、中和回路で帰還を打ち消したり2石使ってカスコード・アンプにして使うといった面倒がありました。
その対策として帰還容量を減らし高周波で使いやすくしたのが3SK35(一例)と言った2ゲート型MOS-FETです。 ただしこれにも第2ゲートの部分に外付け部品が増えると言った欠点がありました。これら3SKタイプの2ゲート型MOS-FETについては既に扱い済みです。詳しいことはそちら(←リンク)を参照してください。
同じように低帰還容量を目指して登場したのが内部カスケード型J-FETです。こちらは3端子型です。(図右) 国産でこの構造はNEC日本電気の2SK49が始まりのようです。 その後登場した東芝の2SK61でポピュラーなRF用FETになりました。 2SK61はさらにパッケージ小型化の2SK161へと改良され、面実装型の2SK211に引き継がれました。 いずれも内部のチップは同じものです。
使う上での注意はサブストレート・ゲート(図を参照)がソース電極に結ばれている点です。ソース接地型のRFアンプには最適ですが、ソース・フォロワやゲート接地アンプ(GGアンプ)に使うと良い性能が得られないことがあります。使えないわけではありませんが、それぞれの回路に適したデバイスに置き換えた方が有利です。
【内部カスケード構造のJ-FET】
写真は内部でカスケード接続になっているJ-FETの一例です。 2SK212-Dは2026年5月のいま現在、入手容易なものです。(台湾製のようです)
2SK61や2SK161はだいぶ前からディスコンなので入手先は限られます。一時期流行ったのですが流通在庫がわずかに残るのみでしょう。 写真の2SK212-Dは同じ構造のカスケード型構造のJ-FETです。最近になって入手しやすくなっています。 この構造のJ-FETはディスコンがほとんどなので同じく流通在庫品なのかもしれません。将来性には懸念があると思います。(流通在庫:お店や問屋さんの在庫品、一種の不良在庫・笑)
2SK241系のRF用MOS-FETが入手しにくいので代替として検討してみました。 手に入るものはIdssが小さな-Dランク品なので少々gmが低いのが弱点です。しかし少ないドレイン電流の割に良い性能でした。 100MHzあたりまでのRF増幅用として満足に働きます。〜60MHzくらいまでのオーバートーン水晶発振にも十分使えます。 もちろん中和回路など不要で2SK241の代用として多くの回路で同じように使えます。 2026年5月現在、性能からみて安価で有り難い存在のJ-FETです。 未評価ですが2SK212と類似特性の2SK315(-E,-F)が中華通販で見つかります。
写真にありませんが松下・Panasonicの2SK606-Sも内部カスケード構造のJ-FETです。 手持ちはIdssランク-Sなので潜在的なgmも大きくて〜100MHzのオーバートーン発振回路に適当でした。RFアンプでも高ゲインが期待できます。一時期ディスカウントされていたときに入手したものです。活用例は見ませんが持っているなら使って損のないJ-FETです。(ディスコン品です)同社2SK607は小パッケージ型、2SK608が面実装型。
【内部カスケード構造のRF用MOS-FETs】
写真は内部でカスケード接続になっているRF用MOS-FETです。 2ゲート型MOS-FETの改良から生まれたものです。
上で紹介した内部カスケード型のJ-FETと同じ時期に生産されていたのでMOS型の方が決定的に有利という訳ではないのでしょう。
しかし、正方向のゲート電圧が許容できるなど使いやすさの点ではMOS型の方が有利なように感じます。 また同じようなIdssではMOS型の方がgmが大きいのがわかります。従ってオーバートーン発振ではJ-FETよりも有利でした。
欠点は1/fノイズ(エフぶんのいちノイズ:ピンク・ノイズとも言う)が大きいことにあります。 1/fノイズは特に低周波で大きくなるので低周波アンプやVCOでは要注意です。これらの用途には単純な構造のJ-FETあるいはカスケード構造のJ-FETがローノイズなので良い選択です。(2SK241は1/fノイズの発生源用デバイスとして使われるくらいですので・・・)
これまでのところ国産品のみが流通しています。リード線タイプでは写真の3種類がポピュラーです。 2SK241や2SK439は既に姿を消し、2SK544だけが2026年の現在でも入手できます。ほとんど同じように使えますから取りあえず支障を感じません。
【2SK241互換のSMD型FETs】
表面実装型(SMD型)で2SK241と互換のFET。
世の中の電子機器は小型化と生産の効率化を追求しています。そのため表面実装で組み立てられるようになりました。 リード線付き部品のニーズが無くなれば廃止されるのは運命でしょう。前項で扱った2SK241,etcはいずれも廃止対象です。
それに代わって内部の半導体チップはまったく同じで表面実装型が登場しています。 2SK302と2SK882はいずれも2SK241の面実装型です。 2SK302はTO-236型パッケージなのでやや大きくてピンピッチも1.9mmと扱いやすいのですが、より小型の2SK882に移行しているようです。
いずれもそのままリード線付きのように扱うのは難しいので、基板設計して面実装型として使うか、あるいは写真・中央の囲みのように変換基板に実装する必要があります。
パッケージが小さいため規格的には最大ドレイン損失が小さくなっています。しかし小信号増幅回路で使いますのであまり支障はないでしょう。
ドレイン電流をたくさん流すと言った使い方をするならドレイン側のランド・パターンを広くとって放熱を改善すると言った対策が有効です。 リード線のない(短い)面実装型(SMD型)デバイスは高周波的にかなり有利です。 同じ回路ても面実装化で性能の向上が期待できます。 変換基板に実装したチップはリード線付きと同じように扱えます。
【GGアンプ用FETs】
写真はゲート接地型RFアンプ用に作られたFETです。 High-gmに作ってあり、入力インピーダンスがライン・インピーダンス:75Ωや50Ωに整合しやすいよう作られています。Idssが大きいのも特徴です。
携帯電話だけでなく、無線機器もフルIC化が進んだため、ディスクリート部品(個別部品)でRFアンプを作るケースも減っているはずです。従っていずれディスコン化するかも知れませんが、写真のようなゲート接地型RFアンプ用のJ-FETが作られていました。
50MHz〜430MHzと言ったV・UHF帯のRFアンプ用に最適です。Idssが大きいことから内部抵抗が低くて、電流容量も大きいのでスイッチングタイプのミキサ回路にも好んで使われるデバイスです。
オリジナルはシリコニックス社のU-310/E-310/J-310で、2SK125は同じ用途を狙って開発されたSONY製です。NECの2SK518はAMラジオ用となっていますが、同じような目的に使えるはずです。(2SK125、2SK518はディスコン品)
高性能な受信機用としてRFアンプやミキサ回路の用途もあるので有用なデバイスですがリード線タイプはディスコンになったようです。 面実装型のMMBFJ310(SOT-23パッケージ)でしたら入手は容易です。基板設計派はこちらを使うのが良いでしょう。
☆
水晶発振回路を実験していたのであってFETの比較・評価は目的ではありませんでした。しかし用いるFETによって発振性能はずいぶん違うのです。そこで手元にあった各種のFETについて実際に評価・比較することにしました。
以下はRFアンプでの直接比較ではありませんが、測定結果はRFでの性能と相関性が見られます。 従って測定容易な低周波でのテストではありますがFETの活用に当たって有益な手掛かりが得られています。 メーカーのデータ・シートでも1kHzでの評価値はよく見られます。
【gm測定回路】
左図は小信号用FETのトランスコンダクタンス:gmの測定回路です。
負荷抵抗を100Ωと低くとってストレー容量によって周波数特性が劣化しないよう考えられています。 メーカーの規格表に載っているgmも類似の回路で測定しているはずです。
測定周波数は1kHzです。またドレイン電流はIdssで測定しています。そのためFETによる違いだけでなく、同型番のFETでもIdssランクによる違いが明確にわかります。 なるべく小さな信号(入力で100mVpp)にて測定し、波形ひずみが影響しないよう注意しました。
低周波アンプとしてのゲインを測定し、ゲインから計算でgmを求めています。 負荷抵抗の大きさが100Ωと小さいため、アンプとしてのゲインは約0.3倍〜1倍少々しかありません。信号を大きくする目的のアンプ回路ではなく、gm測定のための回路です。
【gm測定結果】
左表は各種のFETについてgmの実測値をまとめたものです。(gm:昔は相互コンダクタンスと言ってました)
gmの単位はS:ジーメンスで昔の単位で言えば℧:モー/mhoと同じです。gm=ΔId/ΔVg なお1mS(1ミリ・ジーメンス)=1000μ℧ですから、真空管と比べてどのFETもかなりHigh-gmなことがわかります。 真空管では難しかったような高次オーバートーン水晶発振がFETを使うと易々と可能な理由でもありましょう。(笑)
表はパーツボックスから出てきたものを順に測定して並べただけですから、順番は意味を持ちません。
単純な構造の古くからあるようなFETはあまりgmは大きくないことがわかります。 対して、内部カスケード型MOS-FETはどれもgmが大きいのです。 オーバートーン水晶発振では高次になるほどアンプとしてのゲインが必要になることから、実験で感じた通りMOS構造のカスケード型FETが有利なことが実証できました。
内部カスケード型J-FETでは最も新しいタイプと考えられる2SK606(-S)が優れていて、これは実際に使っていても実感できました。 同じ内部構造の2SK212(-D)はIdssが小さいのでgmも小さくて高次のオーバートーン水晶発振は苦手です。 おなじオーバートーンでも3次なら可能なので、高い周波数が必要なら基本波の周波数が高い水晶発振子を使うと発振容易です。 これはgmが小さめの単純な構造のJ-FET・・・2SK19や2SK192Aにも当てはまります。
発振回路の消費電流を抑えつつ、高い周波数のオーバートーン水晶発振をさせるには小さめのIdssでgmの大きなFETを選ぶのが適当でした。 また、なるべく低次のオーバートーン発振で済ませる方が容易であり実用上は5次までが無難です。 事前にテストして水晶発振子を選んでやれば7次までが実用上間違いなさそうでした。
いずれにしてもFETを使う水晶発振回路は100MHzまでの発振が適当で、100MHz以上ではfTの極めて高い超高周波用のBJTを使った高次オーバートーン水晶発振回路を選択する必要があります。 それ以下の周波数なら周辺部品の数が少なく済むFETを使うメリットは大です。 発振波形も良好です。
☆
年初の頃からゆっくりしたペースで水晶発振回路の定番を探っています。 今回はその一環として発振用デバイスとしてのFETについて検討してみました。 この先の水晶発振回路の検討に反映させるつもりです。
内部カスケード型のFETはJ-FET型、MOS型のいずれも帰還容量が小さいうえ、ハイゲインですからRF用として使いやすいデバイスです。 発振回路だけでなく一般の高周波増幅器(RFアンプ)への適性も大です。 従来からHF帯で何気なく無造作に使ってきた回路&部品ですが悪くない選択だったことがわかりました。
また、消費電流を厭わない用途なら、専用デバイスを活かしたゲート接地型増幅器(GGアンプ)も優れています。
さて、RF-FET 2026年版はいかがだったでしょうか? 何れにしてもFET,etcを適材適所に使ってこの先もRF回路を楽しみましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1
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