Introduction
This blog is a quick guide to electronic equipment using filter circuits.
First, I'll look at how we can protect electronic equipment from external stresses.
Even the best semiconductors, like ICs, can be damaged by unusual currents and electrostatic discharges caused by differences in potential between devices.
It's always important to have protection in place, and of course It don't affect the input and output signals.
The easiest way to do this is to put resistors in the input and output sections.
I'll show you this with some practical circuit examples. I'll also explain other power supply circuits. And I'll also look at some other uses for filter circuits.(2024.12.01 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【フィルタの実用には・・】
Blogの目的は自身の備忘ですから自分でわかっていることを必要以上書く意味はないわけです。 しかし時間の経過とともに忘れて行き何故そうしたのか初めの意図がわからなくなることがあります。 自分で設計した回路を見ても・・・ハテと思い出せないこともあるのです。
もちろん齢とともに物忘れしやすくなったと言うのもあるでしょう。しかし誰しも半年も過ぎたら細かい記憶が薄れてきても不思議ではありません。そのためになるべく細かくメモを取ってはいるのですが・・・。
前回のBlog(←リンク)で設計した3D-Audio用のフィルタですが、わかって使えば支障はありません。しかし後からいくらか補足すべきだったことが思い浮かびました。 忘れないよう早めにメモっておくのが今回のBlogの目的と言ったところです。 なお、後ほどシンプルな電源回路が登場しますがこれは読者サービスです(笑)
写真はフィルタ用のICで、今回の話に直接の関係はありません。 始めの部分に何にも絵がないと寂しいので載せています。 FLT-U2(←リンク)とMF10CCN(←リンク)は扱い済みです。MAX7400はまだBlogで扱ったことがありません。
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ことし(2024年・令和六年)もついに師走になってしまいました。光陰矢の如し、1年って早いものです。 あれほど酷暑だった今夏も既に過去のこと。
【ローパス・フィルタ:その1】
ローパス・フィルタの回路図です。
フィルタとしてしては、前回のBlogで扱ったママです。 基本的にそのままで良いのですが、入力と出力の部分に保護抵抗を付けてあります。 #1と#2と付いている抵抗器がそれです。
何かの回路の途中に「アクティブ・フィルタ」として挿入するのなら「保護抵抗」は必要ありません。
3D-システム用のフィルタ装置のように独立した機器として製作し、オーディオ機器の間に入れて使う場合は保護を設けておくべきです。
#1と付いた抵抗器が入力保護用です。 何もなしにOP-Ampの入力端子を外に引き出しておくと壊れる危険があるのです。 特にRCA型のフォノ端子を使っているとかなり危ないです。この端子は先端のピン部分が最初に接続される構造です。 シールド部分(GND側)が先ならまだ良いのですが・・・。 接続する機器の間で電位差があると繋いだ瞬間にやられる可能性があります。 また静電気のディスチャージも怖いのです。
#2は出力側の保護抵抗です。 昨今のOP-Amp.は出力を瞬時短絡した程度で壊れることはまずありません。 しかし、機器間の電位差などにより数10mAも流れたら壊れます。 100Ωの抵抗で万全なのかと言われると困りますが何も入れないよりも随分強くなるのは間違いありません。入れてあれば壊れる危険は相当程度回避できるのです。 負荷の状況如何ですがもし可能なら1kΩくらい入れたいところです。
真空管の時代はこうした心配はありませんでした。 グリッドに繋がっている入力端子を経由して球が破損することなどまずありません。
しかしOP-Amp.のようなICは内部の構造が極めて微細です。 同じ半導体でもトランジスタなら大丈夫だったアクシデントもICは微細で脆弱ですからちょっとした電流や静電気で破損する危険性は高いのです。 本当はもっと本格的な保護回路を設けたいところなのです。
しかし煩雑になるのと何がしかオーディオに影響が出ることを嫌って「最低限の保護」にしています。 まずは機器どうしのGND系を接続し、それから信号系の配線を繋ぐことを前提にしたいと思っています。
参考:-18dB/octの回路として(C)と(D)の2種類が載せてあります。 先に低次の-6dB/octを置く方がフィルタとしてのダイナミック・レンジが広くなります。 S/Nの点では(D)の方が幾らか有利という考えもあるので優劣は考え方次第だと思っています。 フィルタ特性は(C)と(D)で同等です。好みで選んでください。 私はどちらかと言えば(C)を選びます。
これらの回路はいずれもフィルタ回路を±15Vの電源で働かせる例を示しています。
【ローパス・フィルタ:その2】
同じくローパス・フィルタの回路図です。
基本的に一つ前の回路と同じですが、この例では+24V〜30Vの単電源で製作する例を示しています。 電源トランスの事情や他の機器から電源を分けてもらう都合などにより、単電源で動作できたら有難い・・・と言った場合に適しています。
前の回路でも設けてありますが、信号が入ってすぐの部分にOP-Amp.を使ったバッファ・アンプ(ボルテージ。フォロワ)が入れてあります。 これは必須のアンプです。
いずれのフィルタ回路も前段回路の出力インピーダンスが低い(ほぼゼロΩ)ことを前提として設計されているからです。 そのため、きちんとした予定通りのフィルタ特性を得るためには前段にバッファ・アンプを設ける必要があります。
単電源(片電源)で働かせるために電源電圧の半分に相当する直流的なバイアス電圧が掛かるようにしてあります。 アンプの入力部にある220kΩ(2本)がそのバイアス用抵抗器です。 入力インピーダンスは概略110kΩになります。
電源電圧にはかなり自由度があります。+9V程度の単電源でも働きますが、それだけ扱える信号の大きさは小さくなります。+9Vでは3Vpp程度が上限でしょう。 それさえわかっていれば低い電源電圧でも支障はありません。 上限はOP-Amp.の耐圧で決まり、一般的に電源電圧はトータルで+30Vまでです。それで24Vpp(≒8Vrms)くらいまでの信号が扱えます。 稀に高耐圧が特徴のOP-Amp.もあって、より大きな信号を扱いたいならそれを使うと有利でしょう。
【ハイパス・フィルタ:その1】
ハイパス・フィルタの回路図です。
±15V電源で作る場合を示しています。 ローパス・フィルタとほとんど同じ部品点数で製作可能です。 設計周波数:Fc=70Hzになっていますが、もちろんこれは一例であって、前回のBlog(←リンク)の設計式に従って他の周波数に変更できます。
あとは取り立てて言うまでもないのですが、入・出力保護やバッファ・アンプの要件もローパス・フィルタと同じです。
ハイパス・フィルタの使用例は意外に少なくて、世間ではローパス・フィルタの方が圧倒的に多用されていると思います。 これは回路や増幅素子の非直線性によって発生する高調波を除いて歪みや広帯域のノイズを減らしてS/Nを向上させると言った用途があるからでしょう。 またA/D変換の前にはローパス・フィルタが必須という事情もあります。
ハイパス・フィルタは意外に理想通りではないことが多いものです。 これは、OP-Amp.で作ると高い周波数の特性がアンプ自身の周波数特性で制限されるためで、意外に低い周波数からゲインが下がってしまいバンドパス・フィルタのようになってしまうことがあります。 なるべく周波数特性の良いOP-Amp.を使う必要があります。 このハイパス・フィルタはSallen-Key形式なので同じOP-Amp.を使った他形式と比べて有利と言えます。
【ハイパス・フィルタ:その2】
同じくハイパス・フィルタの回路図です。
この例では、+24〜30Vの単電源(片電源)で設計しています。 機能的には±電源で設計したものと同等ですが、ご覧のようにだいぶ部品が増えてしまうことがわかるでしょう。 これはいずれもバイアス電圧を与えるためで、単電源で動作させるため止むを得ないのです。 こうした措置は真空管を使ったハイパス・フィルタでも同様にあったことですが、ローパス・フィルタと違ってどうもスッキリしません。
電源の都合でどうしても単電源で作りたい場合は止むを得ませんが、新規に電源から作る(用意する)なら±電源を作った方がスッキリしますし、たぶん製作もしやすいでしょう。
入・出力保護に対する考え方はここまでのフィルタと同様です。 独立した機器として製作する場合には設ける必要があります。
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【Power Supply Circuits】
Blogの記事では電源部を省略することが多いのですが、せっかくの製作も電源回路(電源部)の例示がないのは残念だと感じるお方もあるようです。
電源部は出力電圧と電流容量こそ様々ですが回路の共通性があって、毎回新規に設計する必要のない場合が多いものです。 半導体回路の場合はだいたい電源電圧は決まっており、電流容量もパワー・アンプを除けばごく小容量で済みます。 従って製作は難しくありません。
回路例は±15Vの電源と、+24Vの単電源を作る2つの具体例です。 電流容量はせいぜい100mA程度を考えており小規模の付加装置には十分でしょう。 今ですから特殊な用途を除き、三端子レギュレータを使って安定化電源を作るのがベストです。 その際ですが専用の放熱器は省いても良いのでシャシへ放熱する工夫は是非とも必要です。 まったく放熱なしでは、たったの100mAでも熱的に厳しいことがあります。 レギュレータICを取り付ける際は放熱シートを挟むかシリコーン・グリースを塗布して熱抵抗を下げるように努めます。
整流用のダイオード・ブリッジは、初めからブリッジ回路になっている専用品があります。 それを使うと便利ですが、なければ100V1Aくらいの規格のダイオードを4本使ってブリッジ回路を組む方法もあります。 例えば1N4002を4本使うとか・・・
電源トランスの電流容量をアップしレギュレータICの放熱を十分行なえば1A程度まで同じ回路で製作できます。 なお、最近は電源トランスを含め電源部品のコストが高騰しています。 ある程度大き目の電流容量が必要なら超ローノイズなスイッチング電源も登場しているのでそれを購入する方が経済的かもしれません。 特に電源トランスが高くなったのには驚かされます。 さりとて中華モノは・・・。(笑)
【電源モジュールの写真】
既に廃れていますが昔は写真のような電源モジュールが市販されていました。 これらはいずれもローノイズなシリーズ電源です。 AC100Vを加えれば±15Vと言ったDC電圧が得られる便利なパーツでした。
上面から見るとハガキ半分くらいのサイズでせいぜい数ワットの容量です。 電源トランスを内蔵しているのでズシリと重いのが特徴です。 小規模なOP-Amp.回路を動作させるには便利だったのですが・・・。
いまどき望んでも手に入りませんので、何らかの工夫をして既製品のSW電源使うか部品を集めて上記回路図のようなを電源装置を作る(組み込む)ことになります。 電源は簡単に作れそうに思っても意外に面倒な部分でもありますね。 電源の製作が目的なら別ですが、一般に造るハリアイもあまりありません。 モジュールがあったら使いたいという気持ち良くわかります。
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さて、書き忘れていたこと、回路の保護について、電源の話しなど赴くままにメモっておきました。 これでオシマイなのですが、フィルタ関連の資料を見ていたら面白い実験回路を見つけました。 部品数が意外に多いと感じますが実用的に使えそうな感触が得られたので以下紹介しておくことにします。 「ユニバーサル・フィルタ」と称するものです。
【ユニバーサル・フィルタ回路図】
ますは回路図をご覧ください。
回路の基本は典型的なステート・バリアブル型フィルタ(状態変数型フィルタ)です。
フィルタのQを可変しやすく工夫したところが面白い部分です。 回路そのものは状態変数型フィルタですね。
この回路はフィルタとしてローパス、ハイパス、バンドパス、ノッチの4種類のフィルタとして機能します。 同一回路が多様なフィルタとして使えるのが特徴です。 それぞれハイパスとローパス・フィルタは-12dB/octの傾斜です。OP-Amp.の数は多いですが特に傾斜が急峻でキレが良いわけではありません。基本的に-12dB/oct(=-40dB/dec)のフィルタです
Qを変えると周波数特性の肩部分にできるピークの大きさを変えることができます。 カットオフ周波数:Fcにあまり影響を及ぼすことなくQを可変できるのがメリットです。 なお、先のLPFやHPFの設計で出てきたダンピング係数:ξは、ξ=2/Qの関係があります。
もう一つの特徴はスイッチの切り替えで簡単に「正弦波の発振器」に変身できることです。 スイッチでフィルタがそく発振器になります。 振幅制限にダイオードの順方向特性を使ってクリップしている関係で超低歪ではありません。 またダイオードの温度係数が現れるため振幅の温度安定度もあまり良くはありません。 しかしAGCのような時定数を持った発振振幅の制御回路を使っていないため超低周波の正弦波発振が可能です。1Hzとか0.1Hz・・・0.01Hzの正弦波も発振できます。 たぶんそれ以下も・・・。
発振周波数は:f=1/(2・π・C・R)で計算できます。 CはC1とC2の大きさで、RはVR1a,bの大きさ+1kΩです。 VR1a,bはBカーブの2連型を使い周波数の可変に使います。
ノッチ・フィルタを使うことがなければ4回路入りのOP-Amp.一個で作れます。U2を省略します。 なお、発振回路にしたとき、Qを変えるVR2で発振の大きさ(振幅)を変えられます。 振幅を大きくしすぎると電源電圧による制限で正弦波の頭の部分が潰れます。 オシロで波形を見ながらVR2を加減します。
【フィルタの外観写真】
試作の様子です
4回路入りのOP-Amp.は回路図通りTL074CNを使いました。 2回路入り:U2は手近にあったTL062CPを使いましたが、もちろん回路図通りTL072CPでも大丈夫です。
振幅制限のダイオードは1S2076Aを使いましたがシリコンの小信号用スイッチング・ダイオードなら何でも大丈夫です。 1S1588、1N4148、1N914、1SS178ほかたくさん代替品があります。
周波数の高い方はだいたい20kHzくらいが限界です。より高い周波数で使いたい場合は高速OP-Amp.を選びます。 低い方の制限はおおよそコンデンサ:C1とC2の容量値で決まります。 やっていませんが0.01Hzといった正弦波も十分発振可能でしょう。
【発振波形:1kHz】
LPF Output端子:OSC2で観測した発振波形です。
発振の大きさは27Vppでこれ以上では歪みます。 VR1a,bを加減して発振周波数が約1kHzになるよう合わせています。 波形を見る限りかなり綺麗な正弦波ですね。 VR1a,bで発振周波数を変えても発振の大きさはあまり影響を受けません。
状態変数型フィルタ/発振器の多くは、OP-Amp. U1aの非反転入力端子:Pin 3へ正帰還する回路が多いようです。 上図のように反転入力:Pin 2へ信号を反転してから帰還しても良いわけです。 但し信号が多段のアンプを通る関係であまり高い周波数の発振には向きません。低い方の制限はほとんど無いはずです。 目的によっては使い勝手の良い正弦波発振回路でしょう。
【歪み率測定】
せっかくの機会なので歪率を測定してみました。
発振周波数が約1kHzになるようVR1を合わせます。VR2で振幅が約27Vppになるよう調整しました。 Qの大きさで発振振幅を加減している関係から、なるべくHigh-Qになるよう・・・波形の頭がクリップしない範囲で振幅が大きくなるように調整した方が低歪になるようでした。 その状態で観測した歪率は約0.24%です。
このBlogには超低歪み発振器(←リンク)があってそれは0.001%と言った値です。 それから比べたらずいぶん大きな歪に感じるかもしれません。 しかし一般に良く見かける正弦波発振器は1〜3%くらいの歪みなら良い方です。 比べて0.24%なら低歪みと言っても良いくらい。 なお、振幅の制御がダイオードによるクリップ式なのでOP-Amp.を変えてもそれほど低歪みは期待できないでしょう。
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低周波帯のフィルタ繋がりでBlogを追記しました。 フィルタ特性の設計部分は前回のBlogで済んでいますが装置として完成させるには幾らか考慮すべき事柄が残っていました。 少なくとも壊れないための対策は必須なわけです。 気になった部分でもあるためさっそく追記しておくことにしました。
これはおまけの内容ですがアクティブ・フィルタの関連で資料を当たっていたら面白いフィルタ回路が目にとまりました。 Bi-Quad型と並んで状態変数型フィルタはアナログ回路技術としては十分ポピュラーな存在です。 一つの回路で様々なフィルタ特性が得られることも皆さん良くご存知でしょう。 それを独立した実験用補助装置として製作しおくと意外に役立つように感じます。 多機能なフィルタとして便利ですし、ちょっとした正弦波の発振器が「特殊部品なし、難しい調整なし」で作れますからなかなかオススメです。 ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)nm