2012年10月28日日曜日

Do Androids Dream of Electric Apple? , part 1

アンドロイドは電気林檎の夢を見るのか?

iPad mini
 7インチが出そろってタブレットPCが賑やかだ。
Book Readerとしてはamazon.comのkindleが数年先行しており、拙Blogでも3年ほど前に扱ったことがあった。(→リンク) ただ、それはあくまでもBook Readerであって、タブレットPCではなかった。

 「つかえる」タブレットPCとしては、AppleのiPadまで待つ必要があったようだ。

 ユーザーインターフェースが洗練され、マルチタッチ式パネルの採用で、指先で簡単に画面のスクロールやズーミングができるなんて、タブレットPCにうってつけの仕組みだ。 それまで誰も本格的に採用していなかったのだからAppleのユーザーインターフェースに対する意気込みを感じる。 そして先日iPad miniが登場し、大き過ぎて高価すぎるタブレットPCもより身近になってきた。 いよいよこれを買おうか?


Nexus 7
  android OSは無償で使える汎用OSとして、googleが開発している。それを採用したタブレットがついにgoogle自身から登場した。本家・本元のandroid Tabletと言う訳だ。

 iPadはAppleのiOSを採用している。しかし、それは自社製のタブレット或は自社のスマホ:iPhone専用である。
 それに対してandroid OSは誰でも使えるので、すでに様々な情報端末に採用されてきた。 そして、今ではタブレットPCに必要な機能が標準的に搭載されている。
満を持して、google自身が作ったのがNexus 7である。 販売はgoogleが行なうが、製造元はASUS TeK Computer Incだという。 なかなか本気そうなスペックである。

まっとうな考えなら、上の iPad miniを買うか、このNexus 7が良いだろう。 他にやっと日本にも登場したamazonのkindle Fire HDも良さそうなのだがBook Reader以外の使い方には制限がありそうだった。 amazon.jpにべったりな使い方なら良さそうなんだが・・汎用タブレットとしてはiPadかNexus 7が良さそうだ。

                ☆ ☆ ☆

中華Pad
 DDSモジュールでもそうだったが、「中華もの」はいま一つ信頼に欠けるところがある。 しかし、非常に安価であって、こうしたタブレットPCの世界でもそれは同じだ。

 OSは無償のandroid OSが採用されている。 少なくともOS費用は不要なのでその分だけ安い筈だ。 それでも、この破格のお値段には興味を感じざるを得ない。

 機能・仕様はNexus 7と比べてほぼ同等かむしろ優れた部分さえもある。 直接比較できるNexus 7の半値以下とあっては「ダメもと」で試して見る価値は大いにありそうだ。 それで、さっそく買ってみた。 他に32GBのmicro SDHCメモリカードも同時購入しておいた。本体に装着して本体8GBにプラス32GBの容量拡張ができる。

momo9
 「中華Pad」と言われるandroid Tabletは非常に沢山の製品が売られている。 比較サイトができている位で素人には選択に困るほどだ。

 その中から、上記のmomo9と言う製品を選んでみた。 情報が多く総合して自身である程度までなら対処可能そうに思えたからだ。 要するにリスクは自身でとる覚悟で安価な「中華もの」に手を出す訳だ。(笑)

 簡単な梱包で届いたのはこんな箱に入ったandroid Tabletだった。 おそらく、7インチタブレット用に標準で売っている箱に詰めているのだろう。 箱にはブランド名も型番も書いてない。

momo9:出してみる
 箱を開ける。
半透明で薄い保護袋に包まれた本体が現れる。 外観形状も他社パクリ品を含めて規格統一なのだろうからハコも標準化できる訳だろう。

 本体には表・裏ともに保護フィルムが貼られた状態で送られてくる。 あまり上等とは言えない保護フィルムだが、取りあえずそのまま使うのに支障はないようだ。 剥がさずに使うことにしよう。 なお安い保護フィルムは貼ったままにすると剥がしたとき糊が移ることがある。

momo9:これで全部
 箱に入っていたもの全部である。

写真で本体下のドキュメントは、簡単な説明書だけが日本語である。 英語の小冊子はandroid Tablet用の汎用品らしい。

ほか、右のケーブル類が入っている。


 
付属の説明書
 小冊子は汎用品らしい。

このバージョン(4.0.3)のアンドロイド・タブレット共通に使える内容になっている。 取りあえず、必要そうなことは書いてあるようだった。

 これの翻訳版はWebに上がっているが、使いながら理解してしまえる程度のざっとした内容だ。

付属品
 付属品はこれだけ付いている。安い割には立派なものだ。

AC100V用5V2Aの充電器・ACアダプタ、USBケーブル、TVに繋ぐHDMIケーブル、OTGケーブル、それにステレオ・イヤフォンである。
 この充電器は軽量なスイッチング.タイプである。PCからUSB経由で充電すると非常に時間が掛かるので実用的でない。

 それぞれビニル袋に入っていたが、出して並べてみた。 OTGケーブルと言うのは、android TabletにUSBメモリを読み込ませるときに利用する。 ケーブルが標準で付いているのは有り難いと思う。 購入したものはUSBマウスが使えるのはもちろん、USBメモリもそのまま読むことができた。

説明書と注意書き
 和文の注意書きは、この商品の性質が説明されている。 簡単に言えば、初期不良には交換に応じるがあとは知らないと言ったところだろうか。

 出荷前に簡単なテストはしているようだが、一般に中華Padの不良率はかなり高いらしい。 本気でマトモなメーカーなみの保証をしていたら商売にはならないだろう。

 ハズレを引いた場合は騒いでもしょうがないので、素直に諦めるのが精神衛生上は宜しいようだ。何せ破格に安いのだからやむを得ない。(笑)

起動させる
 正確に言うと、購入した状態では完全Power OFFの状態になっている。

 本体を横長に持って、右上にあるパワーボタンを長押しすると、起動が始まって暫く起動画面が流れる。 その後、左のような画面が現れる。(最初、時刻は合っていないかも知れない・簡単に直せる)

 これ、重要なことなんだが、こうしたタブレットPCは、使い終わったらレジューム状態(一種の待機状態)にしておくのが普通らしい。 完全にパワーオフしてしまうパソコンとは使い方が違うのだ。 レジューム中の待機電力もわずかで済むようにできている(らしい)。 従って次の起動ではほんの数秒で使用可能な状態に立ち上がる。これはたいへん便利な使い方だ。 OSの起動を待つなんてナンセンスにさえ感じてしまう。

 レジューム状態にするには本体右上のボタンを短く押す。 次の再起動も同じように、右上のボタンを短く押せば良い。

ロック解除
 起動したら、鍵のマークの部分に指先を当てて右にあるロック解除のマークのところまでスライドする。 これでOKだ。

 良く説明を読めば良いものを、最初は何も読まずにやってたらこんなつまらん部分でつまずいた。 ロックが解除できなくて次の画面に進めなかった。(笑)

デスクトップ
 パソコンで言うところの、デスクトップ画面だ。 デスクトップの壁紙は幾つかお仕着せのものがあって、それから選択できるほか、自分の写真も使える。 なので、各人で背景の写真は異なるだろう。これはお仕着せで入っていた物から選んだもの。

 また、デスクトップにおくアイコン・・・正確にはwindowsで言うところのショーカットアイコン、Macで言ばエイリアスに相当する物が並べてある。 これはこのあと出てくるアプリの一覧から常用したい物だけをディスクトップに並べておく。(これは好みで) ここに表示されたアイコンをタップするとすぐ起動できるから便利だ。

アプリ一覧を見に行く
 デスクトップ画面の右上に、6つの四角いドットが見える。

 この部分を指でタップすると、アプリの一覧を表示する画面が現れる。(次の写真)



アプリ一覧・1
 このタブレットは元々中国市場向けなので、最初から入っているアプリは中華アプリだったらしい。

 しかし、輸入したお店の方で日本語化した際に、日本のユーザーで一般的と思われるアプリをインストールしておいてくれる。意味不明な中華アプリも削除済みになっている。

 その状態で手元に届く訳だ。 写真には幾つか自分でインストールした物も含まれているが大半は買った時に入っていた物である。 なかなか良さそうなアプリが入っていた。 おまけにroot化してあり、super user化もしてある。 初心者には危険かも知れないが、それらはいずれ必要なことだ。 この画面でアイコンをタップすれば各アプリが起動する。

アプリ一覧・2
 指先でスルスルッと画面を左スクロールすると続きが見られる。前のアプリ一覧写真でわかるが、google playストアやPlayブックから購入できるように「フルマーケット化」されているので日本で使うのに支障ないよう考慮されている。

 なお、google play storeには有料・無料あわせて60万種類以上のアプリがあると言う。 多くはandroid携帯用らしいが、かなりのものがタブレットでも使える。 もっとも、Appleと違って審査はゆるゆるだから玉石混淆であり、個人情報を抜くのが目的のようなアプリもあるので要注意だ。無料ゲームの類いやユーティリティ系が危ないそうだ。良く確認してインストールしたい。

 もしも、中国に行った時、現地で購入すると当然のことながら日本語フォントすら入っていないのでまずは日本語化やフルマーケット化など設定替えをしないと使い物にはならない。相応の知識は必要だ。そう言う意味で日本の業者から買う意味はあると思う。それに例のAliexpressでも調べて見たが、中国直接でもそれほど安くはなかった。

 ほか問題があるとすれば、Wi-FiやBluetoothと言った無線関係が日本の技適を取得していないことだ。 これを大っぴらに使うと電波法違反になる・・・と言う訳で、表向き私は有線LANで使うことにしておく。(爆) 2.4GHz帯の標準的な物なので実害はないとは思うのだが・・。

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 タイトルの『Do Androids Dream of Electric Apple?』と言うのは、Philip・K・Dickの有名なSF小説『Do Androids Dream of Electric Sheep?:邦題・アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?』から頂いたものだ。映画「ブレードランナー」の原作と言った方がお馴染みだろうか。 しかし、Blogとストーリーとの関連はまったく無いので悪しからず。 なお、小説ではタイレル社が作った最新アンドロイド(=レプリカント)はNexus 6型である。そしてGoogleが作ったandroid TabletがNexus 7型と言うのは、もちろんそれを意識したネーミングに違いない。

 では、安価なアンドロイド・タブレットはAppleの電気林檎:iPadの夢を見ることができたのだろうか? 続編ではそのあたり、実際に使った感触などを交えたいと思う。

                  ☆

 数年前に米amazon.comのBook Reader『kindle 2』を購入したことがあった。電子書籍は未だ日本進出前ではあったが、PDF化したドキュメントが読める、起動が素早い、長時間バッテリ動作ができる、コンパクトで軽量である・・などの特徴から使い始めた訳だ。(その顛末は→こちら

 そこには早々に日本のamazon.jpがkindleに対応し、正式に日本語化がなされ日本の書籍も買えるだろうと言う期待もあったのだった。 しかし、何年も待たされ、やっと先日になってアナウンスされた。 しかも年月の経過でハードウエア/プラットホームは大きく様変わりしてしまい、実現した時には古い機種のサポートは切り捨てられてしまった。(大きな被害は無いがちょっと残念)

 当時の情報プラットホームすなわちkindle 2の性能は未だ中途半端な物であった。少なくとも日本で使うには満足できない部分があった。モノクロで反応の遅いe-Inkを使った電子ペーパー・ディスプレーだからネットへのアクセスはほとんど実用性が無かった。 最近になって、仕様を見ていたらandroid Tabletならそれを越えられるように感じた。 もちろんAppleのiPadなら間違いないだろう。 しかしお値段のことは別としても排他的なiPad miniの仕様・仕組みには少なからず気になる部分があった。 そこで目的に対して十分そうなら安価な中華タブレットも良かろう、試す価値は十分ありそうだと踏んだのである。 de JA9TTT/1

つづく)←リンク

2012年10月8日月曜日

【部品】Russian Transistor ГТ905А

 【Russian Transistor ГТ905А
 またまたロシア製のトランジスタГТ905А(GT905A)だ。 
前の、GT329B(=1T329B)と同じように、元々はソ連時代のトランジスタではないかと思う。

 ロシア製ゲルトラ(=ゲルマニウム・トランジスタ)の話しをしていて、ではパワー物はどうか?・・と言うことになって調べていたらコレが見つかった。 高周波にも使えたのはまったくの偶然である。

 だいぶ特殊な形状をしていて色あいと良いロシアの雰囲気は十分だ。 これ、最初は低周波専用かと思ったら必ずしもそうでも無いようだ。 規格を見るとfTは60MHzとなっている。 だからHF帯の低い方なら十分行けそうに思えた。

 【概略の規格;コメント付き
 ネットサーチで見つけたГТ905А(GT905A)の概略規格である。 オレンジ色の文字は、私が実測して確認した内容ほか、その規格に関するコメントだ。 ロシア語の規格は見つかるが、良くは読めないので未知な部分の多いトランジスタなのである。
 
 Vcboは75V、Vceでも60Vくらいある。 またピークコレクタ電流は7Aもある。(連続定格ではIc(max)=3A) 要するに一般的に言えばゲルマのパワトラそのものである。 AFパワーアンプにPush-Pullで使うと10Wくらいは行けそうに思う。

 ただ、fTの項目を見て驚いた。60MHzもあるのだ。これで例の「ゲルマ色の波」がもっとハイパワーで行けそうに思えたのだった。

 【実測評価試験
 手元に届いたので、実測評価することにした。

 いくらパワートランジスタとは言っても、何も放熱しないと測定中に熱暴走してしまう。ゲルマTrは高温が嫌いだ。 大きめのヒートシンクに熱伝導シートを貼付けて、その上に仮固定して測定することにする。(ネジ止めはめんどう・笑)

 ГТ905Аの金属フランジ部分はコレクタになっていて、そこを直接放熱してやるとかなり効率よく冷やせた。 測定中にに大きめの電流を流すこともあったが、安全な範囲の温度上昇にとどめることができた。 実際に使うときも、この程度のヒートシンクは必要そうだ。 なお、ヒートシンクのサイズは80×40×25(mm)である。

ГТ905Аの静特性
 実際に使いそうな範囲のコレクタ電流:Icとコレクタ電圧:Vceで測定してみた。 hFEは50程度のようだ。  Vbe逆耐電圧を測って見ると1Vもない位だった。 ベース拡散に濃度勾配を持たせて加速電界を作っている証拠だろう。 だからfTが高いのだ。 コレクタが底面のフランジに接続と言うこともあり、構造はメサ系ではないだろうか。 hFEのリニヤリティは良好である。

 パワートランジスタではあるが、RF用としては未知数なので、限度いっぱいまで使うのは冒険だろう。 手始めに電源電圧:Vcc=12Vで、コレクタ電流:Ic=300mA程度で使ってみたらどうだろうか? 入力:Pi=3.6Wと言う訳だ。 確かゲルトラのASOはシリコンに比べてだいぶ小さかったと思うので控え目の動作が間違いないところだ。

 そして出力パワー:Po=3W程度を目指すには、コレクタ飽和電圧:Vce(sat)=2V程度見込みIc=500mAくらい流す必要があるだろう。 まだまだ安全な範囲にあると思うので、実用的なQRP送信機にも成り得る。 但し、200pFもあるCoをどうするのか・・・と言う課題はある。 実測してみて220pF(at Vcb=12V)くらいあるのがわかった。 同様にCiもかなり大きいのでドライバ段もだいぶ苦しそうだ。

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 このトランジスタ、高速スイッチングが主な用途なのだろう。 使いにくさから見てRFのパワー用には今一歩かも知れない。 しかし国産の市販ゲルトラでW(ワット)オーダーのRFパワーが出せるものは見なかった。だから使いにくくても貴重な存在と言える。 こうした仕様のトランジスタは西側世界では早々に熱的に有利なシリコン製に移行してしまったからだ。なのでJAのゲルトラでは存在しないジャンルの石なのである。

 すぐに作るアテはなくても、構想を練るのは楽しいものだ。 前よりももっと強力な「ゲルマ色の波」が出せたら楽しい。 オールゲルマに拘ると難易度は数段アップしてしまうかもしれないがそれが面白いのだろう。 ただ、シリコンにしか無いようなデバイスもあるからオールゲルマの設計はかなり苦しいのですよね。 例えば、ツェナーDiやFETなんてゲルマにゃありませんから。

 土曜日(2012年9月6日)の秋葉原QRP懇親会では、このГТ905Аを含めすべてロシア製のゲルトラを使ったトランシーバを拝見する機会があった。JH9JBI/1山本さんの力作だ。 ГТ905Аの特性から苦労されたようだが、たいへんうまく纏められていて感心した。VFO式で自作ギヤダイヤル付きの7MHz CW機である。 周波数は安定でキーイングでもチャープは感じられない。素晴らしい出来映えだった。 さて、私も頑張らなくては。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

参考追記:このГТ906Аの本来の用途・目的だが(白黒)TV用の水平出力トランジスタだったようだ。 そのため、低周波増幅用よりも高速動作できるようになっているのだ。 それでも水平発振周波数(ソ連の方式では15.625kHz)は可聴周波数の上限程度なので入・出力容量が大きくてもあまり支障はなかったのだ。(2012.11.22)