2015年11月26日木曜日

【測定】Quartz Crystal Test Fixture

【測定:水晶発振子のテスト治具】
テスト治具の回路図
 水晶発振子or水晶振動子のテストには標準のテスト治具があって、ごく一般的に使用されています。 50Ωの入出力インピーダンスを12.5Ωに変換して、その12.5Ωのところに水晶発振子/振動子を装着して測定します。 従って、水晶は12.5+12.5=25(Ω)の負荷インピーダンスで測定されることになります。これはIECの標準測定回路だったはずです。

 図の回路は、E24系列の抵抗器を使って測定治具を実現している一例です。おそらくメーカーでは専用の抵抗器を特注しているに違いありません。しかし手作りで数台作るにはとてもそこまでできないので市販の抵抗器の組み合わせで間に合わせる必要があるのです。

 抵抗器は理想を言えばノンカット型のRF用がベストですが、用途をHF帯(〜30MHz)に限るとすればごく普通の表面実装用のチップ型を使えば十分です。誤差はできたら1%が良いですが5%のものを多数購入して実測のうえ選別するのが現実的でしょう。 あまりパワーは入れないので1608サイズで良いと思います。もちろん2012サイズでも3216サイズでも大丈夫です。あまり小さなチップ抵抗は扱いにくくなります。

部品表
(1)抵抗器:2.2Ω、4.7Ω、12Ω、39Ω、62Ω、120Ω・・・各2本
(2)コネクタ:BNC型、あるいはSMA型・・・2個
(3)プリント基板:FR4材両面生基板・・・適宜寸法(t=1mmなど)
(4)ソケット:HC-49/U型水晶発振子に適合するもの。要耐久性。・・・1個

 本格的にやるなら、プリント基板を起こしてラインインピーダンスを合わせてやれば良いのですが、簡単な回路だから手貼りでパターンを直接描いても良さそうです。 配線は短かめに、なおかつストレー容量が大きくならないように考慮します。 水晶を挿入するソケットが一番の問題かもしれません。あまり安っぽいものを使うと耐久性が無くて困ることになります。なにしろ、数百回、数千回の抜き差しになるかも知れません。

参考:この12.5Ω 測定治具を実際に製作しクリスタル・インピーダンス・メータ(CIメータ)で使用した経緯を纏めた別のBlogがあります。→続編へリンク

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 まったくの自家用メモです。ラダー型クリスタル・フィルタの製作には直接的な関係はありません。治具として製作すべき物と言う訳でもありません。 こうした製作情報はあまりネット上に無いのでメモとして書いておきました。プロはメーカー製の専用治具を購入してしまうので、自作などしないからでしょう。アマチュアでもお金持ちは購入すれば良いことです。 特に製作をお奨めするような内容ではないので、水晶の測定に興味がなければささっと素通りされて下さい。入出力インピーダンスが50ΩのTG付きスペアナやVNA等が前提の治具です。de JA9TTT/1

(おわり)

2015年11月12日木曜日

【部品】8-Pole X-tal Filter Board

8素子クリスタルフィルタ用基板
 【8素子用基板ができた
 8素子クリスタル・フィルタ用プリント基板が完成しました。 何とか6素子の基板と同じサイズになるように纏めてもらいました。 入出力端子も6素子の基板と同じになるようにできたので互換性があります。

 もしもご希望があればですが、必要なお方に3枚ずつ頒布したいと思っていいます。 頒布要領は前回の6素子と同じなので、そちら(←リンク)をご覧頂ければと思います。

 なお。パターン作成上の制限で、水晶振動子を基板に密着して実装すると旨くありません。6素子用基板の時と同じ様に浮かせてハンダ付けします。水晶振動子のケースも必ずGNDに接続しておきます。(参考:水晶振動子を載せるのに、これ(←リンク)を使うと便利そうです)

 【想定回路はこれ】
 8素子クリスタル・フィルタ用基板が想定しているラダー型クリスタル・フィルタの回路は左図のようになっています。

 図は私の製作例です。ただし、これと同じ周波数の水晶振動子を使ったからと言って同じ設計値(部品定数)にはならないのでご注意を! (即ち、ご自身の水晶に合わせた再設計を要します)

(A):設計ソフトで設計したままの状態。
(B):個々の水晶振動子のバラツキを考慮してチューニングした計算結果。
(C):実際に製作するために数値を丸めたもの。
 ・・・だいたい、こんなプロセスで設計を進めて行くことになります。 必要に応じて回路シミュレータなども動員して確認しておけばなお宜しいと思います。

実践でフィルタに
 図上設計のままでは絵に描いた餅です。 図をいくら眺めていても現物のフィルタにはならないので実際の製作に進まなくてはなりません。(写真は製作中の様子)

 クリスタル・フィルタは水晶振動子の実測値に基づいた設計を行なっています。 特にこのタイプのラダー型クリスタル・フィルタの場合、各振動子のバラツキに応じて個々のチューニングを行ないます。従って所定の順番・位置に取付けなくてはならず、もし付ける場所を間違えると悲惨です。 振動子にはわかり易いように予め番号を振っておき、基板への実装も十分確認しながら行ないましょう。
 コンデンサも実測しておき、場所を間違えないように組み立てることが重要です。 基板の方もシルク印刷付きなのでかなりわかり易くなっています。(言うまでもないと思いますが、シルク印刷のある面に部品を実装するようにします)

                 ☆ ☆ ☆

  Dishalの論文に基づく(簡易)設計プログラムのお陰で、高度のクリスタル・フィルタ設計がとても容易になりました。 もはや旧来のCohn minimum loss型には戻れないでしょう。 それだけ優秀なクリスタル・フィルタが設計・製作できるからです。 ちょうど製作の助けとして8素子用専用基板があったらFBだと思っていたら再びJR2FKN/1 鶴田さんから基板設計の話しが来ました。 「6素子と同じサイズの基板に」と言う無理っぽいお願いにも工夫で対応して頂きました。組立は窮屈かもしれませんがその分コンパクトに纏まっていて完成後は使い易い筈です。 沢山は作らなかったのですが、自家用には十分すぎる枚数です。 前回とおなじくらい頒布可能なので、ご希望があればメールでお問い合わせを。お一人様あたりフィルタ3つ分ずつ頒布します。 回路パターンは上記の「想定回路」の通りになっています。

 新しいラダー型フィルタの設計・製作を扱って以来、ずいぶん沢山のお方が製作を試みたと聞いています。 旨く行った例も多いようですが、どうも思い通りにならなかったと言うお話しも漏れ聞いています。 「Dshalのプログラム」(注1)を使い、Mesh Tuneも指示通りにきちんとやったのだがどうしてなんでしょう?・・・と言う声も聞こえます。 このあたり、やはり実践をふまえた作業手順を細かく伝えないと不十分なのではないかと感じています。 それに、プログラムは予め想定に従った定型の設計なので必ずしも再現性が良くないことも確認しています。入念にやったからと言って旨くないこともあるのでしょう。 良くできた設計プログラムだとは言え、そんなものなのです。 ツール(道具)は使い様と言ったところでしょうか。いずれそんな話題も扱わなくてはならないようですね。 de JA9TTT/1

つづく)←リンク

コラム・Dishalのプログラム:(注1)
「Dshalのプログラム」と言う認識がそもそもずれているのかもしれません。 Dishalはラダー型フィルタの合理的(現実的)な設計方法に関する論文の執筆者です。 その論文に基づき条件を端折って簡易型の計算・設計プログラムに纏めたのがDJ6EVで、さらにそれを英語化したのがG3JIRでした。ですから「Dishalの論文に基づく(簡易)設計プログラム」と呼ぶのが適切であり、そもそもDishal氏は設計プログラムには一切関係していないのです。
 この簡易設計プログラムは一見完璧そうに見えますが、必ずしも思い通りに行かないのは条件を端折っているせいでしょう。もちろん、厳密な設計パラメータをインプットするよう、ユーザに求めたなら使いこなせるのはごく限られた人だけになってしまったでしょう。ですら簡易型に旨く纏めた意義は十分あると思います。思い通りの結果にないからと言って価値がない訳ではありません。言うまでもないでしょうが、その設計プログラムが「簡易型」なのはDishal氏に責任がある訳ではありません。
 Dishalの論文は種々のフィルタ形式について適用できるため「Dishalフィルタの音」などと言う表現も正しくありません。その設計法を使って、どんな形式のフィルタを設計したのかによります。例えばButterworthとChebyshevの違いは有りえますが、どちらもDishalの設計法で製作できます。ですから「Dishalのフィルタ」とくくってしまうのは正しくありません。 せっかく高度なフィルタの設計に興味を持ったのですから正しい認識を持ちたいものだと思ってます。