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2024年1月26日金曜日

【Antenna】Making Magnet Earth ground Plates

磁石アース板の製作】 

abstract
The "Magnet Earth ground Plate" is made of a thin rubber plate magnet and a thin metal plate. It has the effect of improving the radiation efficiency of the mobile radio station's on-board antenna. It can be made from inexpensive materials available at $1- stores. (2024.01.26 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

クルマの貼り薬?
 付けたとき最初に思ったのは「クルマのサロンパスみたい」でした。サロンパスはトクホンって言い換えても良いです。(笑)
 今回はモバイル・ステーションの飛びに良く効く「クルマのサロンパス」の話です。

 まだ正式名称は確定していないかも知れませんがここでは『磁石アース板・Magnet Earth ground Plate』って呼ぶことにします。やはり「クルマのサロンパス」じゃまずいですから。 商品名をつけるとしたら「Mag-GND」とでもしましょうか。w
 構造は単純そのもの。 よく見かける板状のゴム磁石に金属の薄板を貼り付け、その金属板から導線を引き出してあるだけ。 「な〜んだ。そんなものが効くんかい?」と疑われそうですがとても良く効きます。もちろん条件にもよりますが。

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 今回のBlogではその「磁石アース板」の効用をざっと説明したあと、私が試した作り方と評価結果などを纏めます。 そもそもモバイルからオンジエアされないのならこの先を見ても意味がありませんし、作ったところで役立つこともないでしょう。 例によって早々のお帰りがオススメです。お時間を浪費させては申し訳ないですから。

接地型アンテナの構造
 図は模式的に書いた接地型アンテナの構造です。 左側は固定局が架設するときの様子です。 垂直のエレメントと必要に応じてローディング・コイルや容量冠(キャパシティ・ハット)などが付いた構造です。 そうした輻射エレメントの構造も重要ではありますが、こうした接地型アンテナでは「大地アース」がたいへん重要であることはご存知の通りです。

 電波の飛びにはアンテナの打ち上げ角の影響もありますが、輻射効率が何よりも重要だと思っています。 例えば1/4・λ(=波長の1/4)の垂直アンテナの場合、アース抵抗がゼロと考えれば給電点のインピーダンスは約36Ωになります。ただし、現実にはアースの抵抗はゼロでないためもっと高くなるのが普通です。アース抵抗が10Ω(これはかなり優秀なアースと言える)なら給電点のインピーダンスは46Ωになるでしょう。そして輻射効率は36/46≒0.78となります。約22%のパワーは大地を温めることになる訳です。 接地抵抗がとても重要であることがわかります。仮に接地抵抗が30Ω(良くある値)なら輻射効率は55%になるんですから!

 また、今回は触れませんがローディング・コイルのQの値も輻射効率を大きく左右します。詳しいことは短縮アンテナの話のときに致しましょう。

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 さて、車載アンテナの話です。まさか大地アースを引きずって走ることはできませんから、アンテナの接地側はクルマのボディーになる訳です。(図の右側) クルマのボディーは地球ほどのサイズはありませんのでアースとして大して機能しないように感じるかも知れません。 しかし実際にはかなり大きな金属製の物体であって意外に良好なアースとして働きます。(もちろん車体と大地の間の静電容量も効いてきますが。停車してる場所の影響も受けます)

 オンジエアする周波数とも関係しますが輻射エレメントを出た電気力線の終端面積として車のボディーはあんがい大きいと言えます。 経験的な話ですが、アンテナ系の実測からセダンタイプの乗用車で等価的に10Ω前後の接地抵抗を得ました。 さらに大きなボディーの車ならもっと低いアース抵抗として働いてくれるようです。もちろん車のどの場所に接地するかによっても違いはあります。それでも車のボディーが良好なアースになるのは間違いありません。

 ですから、アンテナのアース側をどのように接地するか(接続するのか)によっても輻射効率は大きく変わります。理想はアンテナを車体中央に載せ給電点直近のボディーに太い電線でガッチリ接地することです。 しかし通信が目的の軍用車両ならいざ知らずアンテナ基台の直近で愛車の塗装を剥がして太い電線を直接つなぐなどと言った思い切ったことはなかなか出来ないでしょう。(笑)

 磁石アース板はアンテナの接地側に取付けてクルマのボディーとの間を静電的に結合させ良好なボディーアースと同等の効果を実現するためのものです。 ですから既に良好なアースができている車載アンテナには効果はありません。 しかし、そうではないアンテナでしたら「たいへん良く」効きます。 電波の飛びだけでなく、リグにRFが回り込んでマイクが痺れるとか何となく動作が不安定だと言った現象にも効果があります。

 このような考察から、磁石アース板とボディー間の静電容量は大きいほど有利と言えます。 それには面積を増やすか金属薄板とボディーとの間隔を狭くするしかありません。 必要な静電容量は周波数が低いほど大きくなります。HF帯でも1.9MHzや3.5MHzなら0.01μFくらいあったらFBです。50MHzのように高い周波数なら1000pFもあればマズマズでしょう。 この辺りの感覚は回路屋さんがバイパス・コンデンサの大きさ(容量値)を周波数に応じて使い分けるのと同じです。

市販の磁石アース板
 今は便利な時代ですから市販品があります。写真のものはその一例で、商品ですから体裁よく綺麗に作られています。

 ただ、それだけに相応のお値段になっています。これは商品である以上やむを得ませんね。 それでもこうした磁石アース板が車載アンテナの飛びを改善することが体験として感じられるらしく使ってみたらFBだったと言うレポートもかなり見かけました。 逆に効いているのか良くわからないと言うレポートもあって、おそらく既にボディーアースが良く効いていたのではないかと思います。

 ひょっとしたらいかなる場合にも効果的だと勘違いされそうです。 書いたように既に給電点の直近で最短距離という良好なボディー・アースになっているなら効果はありません。 またノンラジアル・タイプと称するアンテナでは理屈上効果は限定的なはずです。ノンラジアル型はV/UHF帯のアンテナに多くて、そうしたものに磁石アース板は必要ないでしょう。

 磁石アース板の効果が期待できるのはHF帯から50MHzあたりまでのHAM Bandに接地型アンテナでオンエアするモバイル局です。しかも給電点の直近で車のボディーに十分なアースができていないならかなり効果的ということになります。 以下は製作例ですが面倒なら市販品を付けてみては如何ですか?? 効果が予想できるなら試す価値があります。

事前に試したいなら
クッキング用アルミ・フォイルをボディーに仮止めし基台アース側に仮配線して試せます。

部材集め
 既に構造の説明でわかるように、ごく単純なものですから部品も限られます。 以下のような材料を集めます。
(1)ゴム磁石の薄板
(2)薄い金属板
(3)引き出し用の導線
(4)接続コネクタ・オス・メス
(5)補助材料:防錆用の塗料、ハンダ、熱収縮チューブなど

 簡単に説明します。(1)のゴム磁石板ですが、おもて面が粘着シートになったものが売られています。そうした物を選べば(2)の薄板をカットしてそのまま貼り付けられるので便利です。もし、そういうものが無ければ両面テープなどで薄い金属板を貼り付けます。写真のように¥100均ショップのセリアで大きさの違う2種類が売られていました。A4サイズの大きなものと、磁力が強いというA4の半分くらいのサイズのものがありました。 どちらも100円です。
 実際に使っているのは強力磁石タイプの方で2枚作って使っています。 A4サイズの方を半分に切って2つ作っても良いでしょう。 2枚に分けるのはクルマに貼る際に大きいままの1枚よりも扱いやすいからです。 なお、強力磁石の方(小さい方)を1枚だけでは静電容量的にやや不足するので2枚作ります。

 (2)の薄い金属板はホームセンタで0.1mm厚の銅板を購入しました。銅製品が高騰している影響かだいぶ高価でした。 電気が良く通る金属板ならなんでも良いのでアルミ板も候補です。ただしハンダ付けが難しいので電線の引き出しが厄介かも知れません。 真鍮の薄板もFBですが、チープに行くならブリキやトタン板でも使えるので各自のフトコロしだいです。(笑) 金属板で手を切らないよう気をつけます。

 (3)の引き出し線は太めで柔軟性のある電線ならなんでも良いでしょう。わたしは不要になった古い同軸ケーブルの網線側を使いました。

 (4)の接続コネクタは着脱式に作る場合に必要です。好みのものを使えば良いでしょう。わたしはカー用品のギボシ端子を使いました。

 (5)補助材料は必要に応じて用意します。 銅板を使った場合、少ししたら10円玉のように錆びるでしょう。それでも機能的には支障ないので表面の塗装は不要かも知れません。

 これでなくてはいけないと言った部材はゴム磁石の薄板くらいのものです。これはほかの¥100均にもたくさん置いてあったので容易に見つけられます。あとの部材は各自の好み次第ですし手持ちがあれば十分活用できると思います。

銅の輝きをいつまでも・笑
 クリヤー・ラッカーが余っていたので使い切るために吹き付けておきました。 こうしておけば銅板が綺麗なまま使えます。

 別にクリヤーでなくても良いのですが、クリヤーラッカーは金属板への密着性が良く剥離しにくいためFBだと思います。 クルマのボディーカラーに塗装するのもFBだと思いますが、一度薄くクリヤーを吹いてから好きな色に塗装するとカラーペイントが剥がれにくくなります。

引き出し線は太く短く
 引き出し線です。 太く短くが理想ですが、あまり短いと扱いにくいので適当な長さが必要です。 アンテナ基台の設置場所によっても違ってきます。 不要になった同軸ケーブルの網線側を剥いて使いました。

 ギボシ端子を片端にハンダ付けしました。 網線には熱収縮チューブを被せておきます。

 磁石アース板の側は直接ハンダ付けします。 表面のラッカー塗料を必要なだけ剥がしてやればハンダが良く乗ってくれます。

磁石アース板が完成
 薄い銅板がやや高価だったので¥3k-くらい掛かりましたが、メーカー製の実売価格もそれくらいです。 ただし1枚ですから追加でもう一枚買えば倍になります。 十分な容量を持った磁石アース板ができましたから自作にメリットがあったと思いました。

 HAMのコダワリ(笑)で銅板にしましたが、アルミとか真鍮板で間に合わせればずっと安く上がります。 安く作っても効果は違わないはずですから各自工夫するとコスパが良くなるでしょう。

静電容量はどれくらいか?
 写真は強力磁石タイプで作った小型版の方をLCRメータで測定している様子です。 マグネットを鉄板に貼り付けて測定しました。

 約800pFありました。 実際に使ってみますと、6m Bandなら1枚でも十分そうです。 7MHz〜14MHzともなると不足するようですから2枚使うことにしました。

 A4サイズの磁石アース板の静電容量は約5,000pFあります。 これは磁力がやや弱い代わりにゴム磁石が薄いため有利なのでしょう。電極間隔が狭くなる訳です。 A4版を半分に切って2,500pFなら1枚でもかなり効くはずです。 ただし磁力はだいぶ弱くなるので付けたままの走行は風圧で剥がれる可能性があります。 半固定局で着脱しながらの運用なら悪くないと思います。


全部貼っても・・
 ある程度以上の静電容量(キャパシタンス)があれば十分なのでたくさん貼っても効果は比例しません。(笑)

 いくつかの実験によれば、7MHzあたりまでなら800pFの磁石アース板を2枚使えば十分なようでした。

 このように3枚目を追加してもわずかな違いしか認められません。 最初の写真のように2枚使えば十分ということになります。 この先のアンテナ実験では強力磁石のアース板(小型の方)を2枚だけ使うことにしました。 電気的な性能から考えると板厚の薄いA4版の方を半切りにしたアース板1枚でも十分かもしれませんが・・・。

                     ☆

 磁石アース板なんて言うつまらん物の製作話は固定局でオンエアするHAMには興味はなかったでしょう。 しかしモバイルからのオンジエアならかなり重要なアイテムです。 

 今回は輻射効率の良いアンテナを実現するために欠かせないアースの対策を考えました。 モバイルからのオンジエアでは他にも考えておくべきテーマがいくつかあります。

例えば:
(1)アンテナ取付:目的に合ったアンテナ基台の設置場所を探し取り付け方法を検討する必要がある。(前回Blog
(2)アンテナ本体:電波の出入り口はアンテナ。輻射効率が良く扱いやすくて振動で壊れない堅牢さも必要になる。
(3)ケーブル引込:アンテナの付いた場所から無線機へどのようにケーブルを引込み接続するのか?
(4)電源供給方法:無線機を動作させるには必ず電源が必要。どう供給するのか? 電池ならどう補給するのか?
(5)無線機の設置:移動中もオンエアするのか、半固定で運用するのか。機器の設置場所や方法も変わってくる。
(6)オンエア環境:快適な移動運用の用意。事前情報、食料、飲料水、冷暖房、虫除け、日除け,etc
  ・・・など。

                   ☆ ☆ ☆

 移動運用のヒントを一つ。近くに車体があれば良好なアースになります。カウンタ・ポイズを引回す前にボディ・アースを試してみてはいかが? またこれは非常通信に限られると思いますが、路肩のガードレールに貼付けてアース代用とすることも可能です。 製作した磁石アース板も使い方次第で新たな効果を発揮できます。

 昔の話になりますが、3.5MHzのモバイルでオンエアしていたころ、アンテナのアース側は車のボディーに(もちろん見えない所に)直接ハンダ付けしてました。だから磁石アース板なんて不要でした。
 これはアンテナが長大なので牽引フックの先を延長したリア・バンパーのあたりに給電点があったからです。そこから太い網線でボディーへガッチリアースしていたのでした。 あっ、つまんない昔話でしたね。え!kwskやれって?(またいつかね・笑) 次回はアースじゃなくってアンテナの話にしましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

つづくfm

4 件のコメント:

  1. 加藤さん、こんにちは。

    市販のマグネットアースシート、構造の割には良いお値段しますよね^^;

    70年代はまだ鉄バンパーの車が多かったので助手席にFT-101やTS-520をセットしてバンパー基台から2mぐらいあるようなホイップアンテナをなびかせて走っているOMさんもいらっしゃいました。

    当時の書籍を見ますとルーフトップにコネクタ用の穴を開けても査定にはほとんど影響無いので思いきってルーフにコネクターを取りつけましょうという漢らしい記事も載ってます(笑

    最近流行のミニバンや大きなSUVなどは室内も広いしボディも大きいのでアース効果も高そうで移動運用に使うと快適なのでしょうね。

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  2. JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、こんにちは。 北関東は晴天ですが北風が冷たいです。

    さっそくのコメントありがとうございます。
    > 構造の割には良いお値段しますよね^^;
    たくさん売れる物でもないでしょうし手間賃と利益がのってそれなりになるんでしょうね。

    > バンパー基台から2mぐらいあるようなホイップアンテナをなびかせて・・・
    いましたねえ! 私は牽引フックの延長金具に3m超えるホイップ付けてました。hi hi

    > 思いきってルーフにコネクターを取りつけましょうという・・・
    軽自動車に付けた知人がいますが、屋根は鉄板が薄くてペコペコなので大きなアンテナは具合が悪かったそうです。 そのクルマ下取りでどうなったかは聞いてません。(笑)

    > アース効果も高そうで移動運用に使うと快適なのでしょうね。
    大きめのバンなら天井は高いし車中泊もできるくらいなのでオンジエア環境としてもVY-FBでしょう。

    米国では大型バスやキャンパーで本格的な移動運用をするそうですね。電波も良く飛びそうです。

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  3. ごぶさたしてます。アース板はベランダ運用では鉄の網を使うとか、各種工夫がされているようですね。あと手すりへのアース結合に太い網線を使うとか。私は東京に戻ってからの4年間は数本の電線だけで済ませています。ただ、実際にpF単位の容量を測っている話はなかなかないので、さすがは加藤さんだと思いました。2.2m長のダイヤモンドのHF用モービルホイップはベランダで使ってもそれなりには運用できているので、車で運用地を工夫すれば結構飛ぶのではないかと思います。

    73 Kenji Rikitake, JJ1BDX

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  4. JJ1BDX 力武さん、こんばんは。 ご無沙汰しておりました。お元気そうで何よりです。

    コメントありがとうございます。
    > アース板はベランダ運用では鉄の網を使うとか、各種工夫がされている・・・
    アパマンハムがHFにオンジエアするには接地型が向いてます。 その場合みなさんアース側の処理に色々ご工夫があると思います。 アースは直接飛びに影響ありますからねえ・・・

    > 実際にpF単位の容量を測っている話はなかなかない・・・
    たぶん結合容量として効いていると言う認識をお持ちのお方は少ないのかも。 金属板そのものをカウンターポイズの一種と思われているのではないでしょうか。(笑)

    > ベランダで使ってもそれなりには運用できているので、車で運用地を工夫すれば・・・
    実際にかなり飛びますね。 いずれご紹介しますが長さ1.5mの車載ホイップでアルゼンチンやオーストラリアとできます。FT-8で17mとか20mと言ったHFハイバンドですが・・・。 もちろん磁石アース板も使います。

    2024はサンスポット極大期なので楽しめる1年になるでしょう。

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