小信号用のP-ch FETその物が珍しい存在でしょう。 しかもDual Gateともなると、少なくとも手に入る国産品は他にないように思います。トップの番号での登録です。(一応末尾に「A」付きの改良型)
だからと言ってこれが高性能かといえば、まあ「増幅素子」としては並のものでしょう。 もともとスイッチ用に作られたもので、エンハンスメント・モード特性です。ゲート漏れ電流の少なさは特筆モノです。
トランスコンダクタンス:gmは約1mS(=1,000μ℧)でそれほど大きくありません。主にDC的なスイッチングあるいはDC増幅くらいがメーカー想定の守備範囲なのでしょう。 しかし特性データで見る範囲では100MHzくらいまで十分使えそうなのです。使い易いか否かは別問題なんでしょうけれど。
Canパッケージのトランジスタ(FET)は、大半がデスコン(製造中止品)でしょう。 メーカーのサイトでは既にデータシートも公開されていないようでした。
製品への新規採用はあり得ないことでしょうが、保守に必要かもしれません。かろうじて流通在庫は入手可能です。 ピン接続は図の様になっています。
このFETはDual Gateとは言っても、RF用のMOS-FET:例えば3SK35などとは異なっています。 ゲートは2つあることになっていますが、G1が正規のゲートでMOS構造です。このG1は漏れ電流を嫌って保護ダイオードが入っていないので静電気破壊には要注意です。 回路設計上、漏れ電流のない特性が必須ならこれは希有なデバイスと言って良いでしょう。たぶん他に代替品は存在しません。
一方、G2はサブストレートゲートと称するもので副次的に「できてしまう」ものです。図でも「ゲート2」とは書いてなくてサブストレートとだけ書いてあります。 従って3SJとは言っても、2SJのように・・・要するにシングルゲートとして使うのが普通でしょう。G2はソースに接続して使います。 このような構造の特徴からドレイン−ゲート間容量Cdg(1)・・・帰還容量:Crssとも言う・・・は3SK35のようなRF用の2ゲートMOSと違ってかなり大きいのです。G2で遮蔽される構造ではないからです。
これは第2ゲートの特性です。 上に書いたように副次的にできるゲートなので積極的に使うものではありません。 従ってこのような特性図はメーカーのデータブックにも掲載されていなかったと思います。
ある意味で珍しいデータでしょう。 もちろん、G2もゲート電極には違いないのでドレイン電流を制御する特性は持っています。
ある意味で珍しいデータでしょう。 もちろん、G2もゲート電極には違いないのでドレイン電流を制御する特性は持っています。
G2はJ-FET構造であって、写真の様にG1に固定したバイアスを掛けた状態で見ると、ディプレッション・モードのように振る舞います。
非飽和の三極管特性を示すようです。 まあ、だからと言ってオーディオに使うと「何とも言えない音色」になる訳ではないから早とちりせんようお願いします。 Vg2SをパラメータにしたVd-Id特性曲線の間隔を見るとFETらしく「もろに二乗特性」が見られ、リニヤリティが良い訳ではありません。(笑)
流石に主ゲート(G1)と違ってサブストレート・ゲート(G2)のトランス・コンダクタンス:gmが数100μS(=数100μ℧)とかなり小さいのは仕方ないでしょう。それでもG2を使って増幅素子として通用はする筈です。
メーカーのデータブックも手持ちにあったはずなのですが見つかりません。見つかれば参考掲載できるのですが・・・
これはCQ出版社のFET規格表(初版:1973年版)にあった特性図ですが、出版物なので無断転載もできないので読めない程度にしておきました。
このFETを新規に使う人はまずいないと思います。しかし規格表がどうしても必要なら図書館でも当たってもらうのが良いでしょう。 探してみたのですがネット上のデータは不完全なものしか見当たりませんでした。
「なんでこんな石を扱うの?」と質問がありそうです。 特に深い理由はないのですが、そこに石があるから使ってみる・・・と答えたら叱られるだろうか。(笑) de JA9TTT/1
# いずれ0-F-2受信機でも作ってみようと思います。もちろん、Fの部分が3SJ11Aです。
(おわり)
(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)
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