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2014年3月10日月曜日

【回路】More Norton Amp.

【モア ノートン・アンプ:その活用事例から】

Quad Norton Amp.
 前のBlogはLM359Nと言う高速ノートン・アンプの話しで寄り道をした。 寄り道ついでにポピュラーな(だった?)普通のノートン・アンプでもうちょっと寄り道をして行こう。 またまたの寄り道なので、具体的な用途・目的は決まっていないが、いつかどこかで使い道があるかもしれない。回路の素性を掴んでおけば持ち駒が増えたのと同じで、何かの時にきっと役立ってくれる。 ここではオーディオ・ピーク・フィルタ(CW用?)を題材としている。 電子回路の手作りに興味も持つ人には面白い話しだろう。お暇なら目を通されてはいかが?

 写真はナショナル・セミコンダクタ社のLM3900Nとモトローラ社のMC3401Pだ。引き出しの長期在庫品である。(笑)ここでの試用ではどちらもまったく同じように使える。LM2900NやMC3301Pでも良い。これらICの中身の話しは前のBlogに書いたので、そちらも参照を。
 LM3900Nは一時期かなりポピュラーなICだったから部品箱に眠っている確率は高そうだ。持っている(いた?)人も多いだろう。あまり着目もされない地味なデバイスゆえ、お店にあればかなり安価だと予想される。持ってなければ一つくらい仕入れておいたら調理法を考える楽しみが増えてくれる。(調べてみたら若松やマルツにて@100円少々で買える。他所でもまだ売ってるだろう)

バンドパス・ノッチ・フィルタ
 唐突にフィルタを作ってみることにする。アクティブ・フィルタと言えばアナログ系ICの代表的なアプリケーションだ。 LM3900系ノートン・アンプの周波数特性はあまり良くないからオーディオ周波数帯が精一杯だと思う。 従ってフィルタと言ってもここでは可聴域・低周波用と言うことになる。

 図の例では4回路入りのノートン・アンプを旨く使ってバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを構成している。Biquad形式のアクティブ・フィルタ回路である。(図はモトローラ社:MC2900/3900/3301/3401のデータシートより引用)

 バンドパス・フィルタの仕様は、中心周波数:f0、選択度(バンド幅):Bw、そして中心周波数に於けるゲイン:G0と言うことになる。 この簡単な単同調式のフィルタひとつでは高級な特性は無理である。しかし設計はごく簡単だ。関数電卓があれば御の字で、指数表示ができた方が便利だが四則演算ができれば普通の電卓でも設計はできる。まあ、どのパソコンにも標準装備の仮想電卓があるだろうからまったく困らない。

 まずは中心周波数:f0を決めよう。続いてフィルタのQすなわち-3dBの帯域幅:Bwを決める。Qの値は:Q=f0/Bwだ。さらに中心周波数におけるゲイン:G0を決めたら計算スタートだ。なお、フィルタにゲインを持たせるのは本質的では無いと思う。せいぜい数倍くらいにしておいた方が設計は容易だ。このあたりはフィルタ作りのノウハウ部分だろうか? また、コンデンサ:Cも事前に決めておいても良いが、周波数計算の式:f0=1/(2πCR)から求めて組み合わせる抵抗器:Rとの兼ね合いで決めるのがよい。抵抗値が数kΩ〜1MΩ程度になるよう決めれば合理的な範囲だ。E系列で得易い抵抗値に丸めると作り易い。

 この例では組み合わせる抵抗器は62kΩで、4020pF±2%のスチコン(スチロール・コンデンサ)があったのでそれを使うことにする。*1 従って計算上の中心周波数は約639Hzになる。 抵抗器には金属皮膜型±1%を使った。(*1:ここでは、なるべくオリジナルに近い数値でテストした)

 CW用ピーク・フィルタとして検討したいなら3,600pFのコンデンサを使うと良い。中心周波数はそれで約700Hzになる。また3,300pFで800Hz弱となる。ピーク・フィルタとは言ってもQ=3くらいの設計が良さそうだ。

参考:図の回路はDCバイアスの掛け方がノートン・アンプ用になっているため、一般的なOPアンプでは正常に動作しないので注意を。もちろんその部分を変更すれば一般化は可能だ。具体的には+In端子に電源電圧の中点電位を与えてバイアスする。

ブレッドボードに製作
 簡単な回路なので、パーツボックスから部品をピックアップして1時間くらいで製作できるだろう。 もちろん、配線接続に使うジャンパー線は各種用意しておきたい。 このあたりの準備がしてあればごく手軽な実験だ。

 スチコンはリード線が細くて何となく頼りない。そのうえ図体も大きいので、ICのピンの所に直接持って行くと収まりが悪くなる。 リード線を短めにして近傍に実装してからジャンパー線でICまで持って行く。 こうすると構造上安定する感じだ。 アナログ回路は外付けCR部品が多くなる。 ブレッドボードの面積を食うのでゆとりを持ったサイズのボードを使うとやり易い。 余白には入出力端子も引き出しておく。

波形観測・1
 まずは最適なバイアスポイントになっているか動作点を確かめる意味から波形観測から始めてみた。 もちろん信号を入れずにテスタで各部をあたり所定にバイアスされていることは事前に確認している。 なお、電源電圧12Vのとき回路電流は約7mAだった。(無信号・無負荷状態にて)

 低周波発振器から中心周波数に相当する約638Hzを与えている。(638Hzで信号がピークになったので)下段が入力で上段がバンドパス・フィルタの出力波形だ。軽負荷なら最大で8Vppくらいまで取り出せる。 LM3900Nの出力段はドライブ能力があまり大きくないので、重い負荷では振幅を抑える必要がある。

 ゲインは0dB即ち,1倍の設計なので入力とほぼ同じ振幅になっている。但し位相は反転している。 取り出す箇所が反転アンプの後だからだ。 きれいなサインウエーブを入力すると当然のように出力にもサインウエーブが現れる。

波形観測・2
 上記と同じ周波数の信号を与えている。 但し、今度はサインウエーブではなく矩形波を与えてみた。 そして波形の上段がバンドパス・フィルタの出力だ。

 このようにバンドパス・フィルタの出力ではきれいなサインウエーブになっている。 矩形波には基本波の他に奇数次の高調波が含まれている。 フィルタによってそれらが減衰されたため、基本波成分だけが大きく残った結果だ。 それほどQの高くないフィルタでも高調波除去の効果は大きい。

波形観測・3
 今度はノッチ・フィルタの出力を観測してみよう。 ノッチ・フィルタとはある特定の周波数成分だけを除去するフィルタだ。 この例ではバンドパス・フィルタと同じ638Hzの付近が除去される。

 上段の波形がノッチ・フィルタの出力だ。 上段と下段ではオシロスコープのレンジが異なるので上の波形で漏れが大きいように感じるかもしれない。 実際には入力の2%以下の振幅になっている。 無調整なのでこの程度の減衰量なのはやむを得ないだろう。 回路図のAmp4、Pin11に接続された330kΩのうち入力側の2つの何れかを微調整することでノッチの深さ、即ち除去量の改善ができる。

波形観測・4
 矩形波を与えてノッチ・フィルタの出力を観測してみた。 上段の波形がフィルタの出力だ。 基本波成分が除去された図のような波形が観測される。

 こうした機能を使って、ノッチ・フィルタは歪み率測定に用いられることがある。 その為には基本波の除去率が問題になるので入念な調整が必要である。
 
バンドパス・フィルタの周波数特性
 周波数特性を測定してみた。 フィルタ・アナリシスモードをONして観測している。 それによれば、実測による中心周波数は636.7Hzであった。(設計の計算値は638.6Hzなので誤差は-0.30%) またフィルタQは5.31である。(同じく計算値では5.32なので誤差は-0.19%) 部品精度を考えれば、おおむね設計通りと言ったところだろうか。設計の再現性はなかなか良好だ。

 こうした単峰特性のフィルタはCWフィルタ用には少々使いにくいと思う。 もちろんお好みにもよるが・・・。 ピークが鋭過ぎてすぐに相手局の信号が逃げてしまう感じだ。 ある程度の通過帯域域を持ちながら、帯域外の減衰傾斜はもっと急峻なフィルタが欲しくなるだろう。 なおQが5程度なら過渡応答の影響はあまり大きくはない。比較的素直な応答を示す。

ノッチ・フィルタの周波数特性
 ノッチ(谷)の部分の減衰が不十分なのは抵抗器に誤差があるからだ。 先に書いたように、調整で追い込むことが可能である。 本格的なノッチフィルタとして使うならチューニングが必要そうである。

 このフィルタはAC結合なので、ごく低周波の部分ではダラ下がりの周波数特性になる。 またアンプの周波数特性が効いて来るのでオーデイオ帯以上でもダラ下がりの周波数特性になって行く。 単同調回路なので位相はフィルタの中心周波数で大きく回るがあとはだらだらと変化して行く。

参考:測定はしなかったがAmp3の出力(Pin9)はローパス・フィルタ特性になっている。設計次第ではあるが、ユニバーサルなフィルタ・ブロックとして有用な回路だ。

まとめ
 ノートンアンプを使い、Biquad形式でバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを作ってみた。

 この程度のフィルタならMFB形式のフィルタ回路でOPアンプ一つでも可能な範囲にある。 だからバンドパス・フィルタだけで3回路も使うのは何となく勿体なく感じてしまう。 但し、中心周波数やフィルタのQは比較的単純な計算で設定できるし、再現性もよいフィルタ形式として認知されている。一段とHigh-Qなフィルタの実現ではたいへん有利な回路形式だ。 OPアンプの数を厭わないならとても良い回路だと思う。 Biquad Filterはノートン・アンプ専用の回路ではないから小変更することで普通のOPアンプでも同じように実現できる。

 ブレッドボードで試作したが「フィルタ・ブロック」として有用性が感じられるので例の「ブレッドボード・パターン」のユニバーサル基板に移植して恒久化しておこうと思っている。f0を決めるコンデンサとQを決める抵抗器はソケット式にしておいたら良いだろう。

                  −・・・−

 ノートン・アンプを使うと単電源で動作する回路が作り易い。これはなかなかメリットだ。 またLM3900(MC3401)の出力段はA級増幅になっているのでクロスオーバー歪みなど発生しないから安心だ。 マイクアンプのような小レベルの所から使える汎用増幅ICとして重宝だ。トランジスタ代わりに「ちょっとアンプを」と言うのに具合が良い。 簡単な論理回路やタイミング回路にも向いているので、トランシーバの送受コントロールとかVOX回路など構成するのも良い。意外と守備範囲は広いICだ。

                  ☆ ☆ ☆

 実験していてノートン・アンプが登場したころを思い浮かべた。雑誌には新種のOPアンプとして(大々的に?)紹介されたと思う。 ただ、いま思うとそれは間違いだったようだ。 事実、ナショセミ社のデータシートにはOPアンプと大書きされてはいない。 大々的にノートン「OPアンプ」と書いているのはモトローラの方だ。これには大いに惑わされた訳だ。

 ちょっと見るとOPアンプちっくに動作はするが+入力端子はどちらかと言えばバイアスポイント設定用の端子である。(・・と考えるとわかり易い) バイアスポイントを設定してしまえば、アンプとしては単なる反転型負帰還アンプでしかない。 ノートン・アンプは非反転アンプではあまり使わないのだ。(使いにくいから) ノートン・アンプをOPアンプ的に使う回路例はそれほど多くない。

 昔々、何となく使い難いと感じたのはそうした見極めができなかったからだろう。ノートン・アンプをOPアンプの仲間だと思っているならいつまでも惑わされ続けたに違いない。これまで少々曖昧な理解だったノートン・アンプもこれでだいぶスッキリした。 扱うのはこれが最後と思うが、わかって使えば意外に便利なアンプICである。ちょっと古臭いけれど持ち駒の一つになってくれたようだ。de JA9TTT/1

(おわり)

参考リンク)←136kHz送信機エキサイタ部の纏めにリンク

6 件のコメント:

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

加藤さん、おはようございます。
そろそろ3月半ばなのに寒いですね^^;

OPampのBiQuadフィルターの回路と見比べながら拝見しましたが、回路的には記事中に書かれている+In端子の扱いが異なるだけなのですね。
僕にはまだOPampとの違いが良く理解できていないようです^^;

どこかでOPアンプの仲間だと思っている殻なのでしょうね。Hi

昔、リグにCWフィルターを装着していなかった時にOPアンプのBPFを作って使ってましたがハイバンドでは結構使えた記憶があります。

HPのオシロ画面のハードコピーは何を使って取られているのですか?

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE/3 高橋さん、おはようございます。 今朝も風が冷たいですねえ。 こちらとっても快晴です。

早速のコメント有難うございます。
> +In端子の扱いが異なるだけなのですね。
そうですね。 ノートン・アンプの場合は、+Inに電流を流すことで-Inの電流とバランスさせて出力回路の直流的な動作点を決めています。 一般のOPアンプではいずれも電圧で与えますのでそこが違いますね。

> ハイバンドでは結構使えた記憶があります。
無闇にHigh-Qな設計にしなければ、結構使えると思います。 やはり混んだバンドだともう少しマシなフィルタが欲しいでしょう。

> ハードコピーは何を使って取られているの・・・
ボタン一発で画面をJPEGもしくはTIFF形式で保存する機能があります。古い機種なのでメデイアは3"FDですけれど。(笑)

JG6DFK さんのコメント...

おはようございます。復興が進んでるようには見えませんが、かの大震災からもう3年も経つのですね。早いものです。やっと暖かくなりそうですが、花粉の飛散で大変なことになりそうです。

これまで、ノートンアンプ=単電源オペアンプくらいにしか考えていませんでしたが、改めて等価回路を見ると「似て非なるもの」ですね。入力側の「定電流源マーク」には大きな意味があったようです(笑)。

TI社のセレクションガイドを見ると、LM2900/3900はノートン「オペ」アンプとして紹介されていますが、LM359は取り上げられていませんでした。ただ、LM359もSOICパッケージのみ細々と生産が継続しているようです。

ノートンアンプは差動入力アンプより低雑音にできそうですが、特に基本の反転増幅器では信号源と直列に入る抵抗から発生する熱雑音が影響するので、ローインピーダンス回路でないとその特徴は生かせないでしょう。

外部にPNP or Pchの差動増幅回路を外付けすれば普通のオペアンプと同じになりますが、そんなことをするくらいなら最初からそのような構成のオペアンプを選択する方が合理的だと思います(笑)。

アナログ回路技術なんてとうの昔に枯れているので、新旧デバイスの違いは主にプロセス(主にMOS化)・低電圧化・形状の小型化でしょう。何十年も前からあるオペアンプの多くは今も現行品ですし、それ以外の品種も旧品種の特性を改善したものが大半です。

一時期オーディオメーカーが大々的に宣伝していた「電流帰還アンプ」も、実は真空管回路で当たり前に使われていた技術です。

参考までに、古いIE8では画像が不鮮明に表示されます。最新版はわかりません。FirefoxではOKです。

さて、これから1608チップ部品と格闘です。あまり小型化しすぎるのも困りものです(苦笑)。

TTT/hiro さんのコメント...

JG6DFK/1 児玉さん、こんばんは。 今日は暖かくなりましたね。 この調子で暖かくなると良いのですが・・・。花粉は願い下げですが、今の季節もう諦めています。

コメント有難うございます。
> 「似て非なるもの」ですね。
回路記号は似ていますが、中身の違いは大き過ぎますよね。(笑)

> オペアンプの多くは今も現行品ですし・・・
そうなんです。 741なんて1968年生まれだそうですから45年以上前の製品ですが現行品ですからね。マイコンの始祖・i8008より数年まえですから。全体にアナログ部品は寿命が長いです。シーラカンスみたい。(笑)

> 古いIE8では画像が不鮮明に表示・・・
気付いておりました。 Blogger(=google)が勝手に画像ファイルをいじって色がおかしくなるので Jpegをやめてpng形式にしてみました。  それは良かったのですが、副作用がありますね。 今回そのままで行きますが、次回以降は考えたいと思います。(googleも困った仕様ですね)他のブラウザはどうなんでしょう。

> 1608チップ部品と格闘です。
このあたりが手で扱うには限度かと思っていましたが、1005くらいは何のことも無いと言う人も居られます。若い人は頑張るようですよ。児玉さんも頑張って。(笑)

Kenji Rikitake さんのコメント...

ノートンアンプ,最初にオペアンプを知ったころ(1976年ごろ)に流行っていた記憶があります.LM3900Nはなつかしい名前ですね.残念ながら自分では使ったことはありません.中点電位電源を仮想アースにして,両電源のオペアンプを使ってばかりいます.

音楽シンセサイザだとLPFの減衰特性が12dB/octか24dB/octかで違いがかなり出てくる(機種が特定できる)ので,こだわって使っている人達は多そうです.

73 de Kenji JJ1BDX(/3)

TTT/hiro さんのコメント...

JJ1BDX/3 力武さん、こんばんは。 出掛けていて先ほど帰宅したところです。

コメント有難うございます。
> 流行っていた記憶があります.
一時期、なんにでもNorton Ampを使うのが流行った時期がありました。 その当時は安価な素材で重宝だったのでしょうね。

> 中点電位電源を仮想アースにして・・・
その方がわかり易いし、扱いやすいと思いますね。

> 12dB/octか24dB/octかで違いが・・・
これはかなり違いますね。 位相の回り具合も違いますから。

 マルチアンプ式のスピーカシステムではチャネルデバイダを使いますが、切れで選ぶか、音色で選ぶか・・・と言うような減衰傾斜の論議もよく目にしたものでした。遠い昔の話です。(笑)