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2014年8月15日金曜日

【回路】Sine wave oscillator : Part 1

【低ひずみ正弦波発振:Part 1】

低ひずみをめざす
低周波発振器の話である。 去年の9月ころ、ウイーン・ブリッジ発振回路(←リンク)というBlogを書いた。 発振回路にはウイーン・ブリッジ型を使い、発振振幅の自動制御には「まめ電球」の加熱による抵抗変化特性を利用した。

うまく発振してくれて、そこそこ良い性能が得られたから振幅の安定に「まめ電球」式もなかなか良いと感じた。 まあ、教科書通りと言うことかもしれない。 ただし、ひずみ率は0.01〜0.02%程度なので昨今のオーディオアンプの性能評価には物足りなかった。 真空管式のパワーアンプの評価用信号源としてならまあまあ使えるレベルと言った感じだろうか。

やはりもう一桁くらい低ひずみの発振回路が欲しい。 ウイーン・ブリッジ回路と電球による振幅制限では限界がありそうなので、別の方法でやってみることにした。 この手の低歪低周波発振回路は色々あってそれぞれポピュラーなのだが、ここでは状態変数型:State-Variable型でやってみた。(参考:Bi-Quad型のフィルタ回路も類似であり、発振回路を構成することが可能だ) バンドパス・フィルタに正帰還を掛ける形式だ。 写真はその試作風景である。 中身の詳しくはPart-2ででもと思うので、とりあえずここまでにしておく。

0.0014%くらい
途中経過だが、ひずみ率は0.0014%くらいが得られるようだ。(上のブレッドボード) 目標性能なので、まずまずと言ったところか。 これ以上改善するには全体的な見直しが必要な感じである。

いや、その前に測定環境を改善しないとだんだん測るのが難しいレベルに来ているのも事実である。 50Hzのハムの誘導やラジオ電波の飛び込みはカットしているのだが、例えばLED電球や電球型蛍光灯などのインバータ機器によるノイズほか、電気的なノイズは身の回りにあふれている。 ガラス入りダイオードをレベル検波に使うと照明の明滅周期でノイズが乗るとか・・笑えないことも起こる。(SBDで起き易い傾向あり)

-100dBあたりのひずみ波を扱うことになる。 発振振幅は数Vpp程度だが、ひずみの成分はマイクロ・ボルトのオーダーなのだから容易に環境ノイズの影響を受ける。 このあたりも考えて評価しないと何をやっているんだか・・・の世界になってしまう。(笑)

                ☆ ☆ ☆

イントロ編ということでサワリだけになってしまった。 諸事が重なってしまい、Blogネタに窮してしまったので先般実験した途中経過の話をちょっとだけ報告しておいた。

最終的には低ひずみ発振回路の製作にあるのだが、実はその回路に使う振幅制御素子の検討から始めている。 低ひずみを狙って今度は「まめ電球」ではなく、電圧可変抵抗素子を使うことにした。 そのような素子は種々あるのだが、FETでやってみようと思い何種類か交換しながら結構たくさんのデータを採取した。

巷ではレトロな2SK30Aを使う例が多いように思う。 古い回路の引用だから仕方ないと言う理由もあろうが、回路は引用していても更に良いFETがあるのなら交換しているはずだ。 いつまでも未来のない製造中止のFETに頼るのも如何なものかと思うし・・・。 使い続けるからには、きっと何かノウハウのような理由(ワケ)があるに違いないと思いつつ専用の測定回路まで作っていろいろFET単体のデータを採ってみた。 そのあたりのこともさらっとやろうかと思うが、どうも浮気タネばかり多くてなかなか進みそうにない。(笑) de JA9TTT/1

つづく)←一応、このつづきのBlogへリンクします。

2014年8月1日金曜日

【測定】TRIO LPF LF-30 : Part 3

【TRIOのLow Pass Filter : LF-30 その3】

改造検討した回路
 トリオ(現Kenwood社)製・30MHzのローパス・フィルタを75Ωから50Ωに改造して活用しようと言う話の最終回である。この話しもそろそそ片付けることにする。(前回:Part2は→こちら

 オリジナル回路の検討と実測した部品定数でシミュレーションを行なった。 最近のリグやアンテナは基本的にインピーダンスは50Ωになっているのでマッチするように改造することにした。 オリジナルのLF-30は昔のHAM局の実情に合わせて75Ωの設計になっていた。なお、昔のHAM局が75Ω系だったのはアンテナがダイポール系が主だったからだ。

 実測評価していて75Ω用と言う根拠には疑問があることがわかった。 部品定数など総合的に考えると、このフィルタが最適な動作をするインピーダンスは44.2Ωではないかと考えられた。従って75Ωよりもむしろ50Ωの方に適していると言える。 しかし設計遮断周波数が少々高めであって、30MHz用としてはやや最適ではないように見えた。 そこで、実験の意味もあり全般に見直した上で改造することにした。

 改造指針として:(1)遮断周波数は約33MHzくらい。(2)IN/OUTのインピーダンスは50Ωとする。(3)改造はなるべく既存の部品を活かすようにする。(4)最大電力は100W程度あれば良い・・・・とする。 以上の指針で決めたのが上図の上から3番目の回路である。 結局、33pFのコンデンサ(但し耐圧は高いこと)を8個付加するだけの改造で様子を見ることになる。

改造したLF-30
 基本的にコイルはそのままにした。 銅の円盤とテフロンシートで作ってあるコンデンサもそのまま使う。

 従って既存コンデンサの各部分に33pFのセラミックコンデンサを2つずつ追加する方式となる。

 33pFの取付け方としては、極力リード線を短くすべきだ。その言う意味で、写真の方法は最適とは言い難い。 銅円盤のコンデンサのところに極力リード線をつめで最短でハンダつけする方が良い。 33pFとリード線のインダクタンスで共振が現れるからだ。

そのあたり、実際に評価してみて問題がありそうならやり直そうと思う。


特性シミュレーション・1
 改造に先立って特性シミュレーションを行なっている。 これは既出であるが、あらためて掲載した。

赤色のトレースがオリジナルの定数によるもの。実測値に基づいた部品定数になっている。 IN/OUTのインピーダンスは仕様の75Ωである。

グリーンのトレースは、部品定数はオリジナルのままだが、IN/OUTのインピーダンスを44.2Ωにしている。 子細に見てもらうとわかるが、通過域の平坦度がよくなっている。 これは反射による影響がなくなるからで、この形式のフィルタ本来の特性と言える。

青のトレースは仮にC=180pF、IN/OUT=50Ωとして設計したときの特性だ。

紫色のトレースはC=186pFの特性だ。180pFににするには標準的な値のコンデンサでは済まないので実際には実測値+33pF+33pFの約186pFでやってみることにする。 一応、33pFのコンデンサも実測しておき、偏りが生じないようにしておく。

特性シミュレーション・2
 通過帯域の上端付近の特性を拡大表示している。

 オリジナルの状態で最適なIN/OUTになっているグリーンのトレースの通過域が一番平坦な特性になっているのがわかるだろう。

 青色と紫色のトレースは思い切って遮断周波数:fcを下げたため、通過域の凹みがやや大きくなっている。 そのためパワーロスが大きく見えるHAMバンドが発生することになる。 それを嫌ってオリジナルではかなり高めの遮断周波数に作ってあったようだ。 ここでは、少々ロスが増えても良いので検討した図(3)の回路定数で行くことにした。

実測特性・1
 改造後の実測特性である。 部品定数は回路図(3)の値になっている。 見たところまずまずの特性になったようだ。

 通過域にやや凹みが見られるのはシミュレーション通りだが、あまり支障無さそうなのでこれで行こうと思う。 減衰域の切れ味はたいへん良好である。 このあたりは、オリジナルと同じ段数なので、傾斜に変化は見られない。 シールドも悪くないらしく、十分な減衰量が得られていると思う。

実測特性・2
 通過域の詳細を見るために、縦軸の1目盛りを10dB→2dBに変更して表示している。

 通過域の凹みが2dB弱あるのでいま一つかもしれないが、実際の使用ではあまり影響はないだろと考えている。 測定器用のフィルタなら不合格かもしれないが、無線機の外付け高調波抑止用フィルタであるから少々の凸凹は問題ではない。むしろなかなか良好な特性であると言える。(参考:この凸凹は損失の発生と言うよりもインピーダンス変換が行われた結果の電圧変化と捉える方が合理的なようだ)

実測特性・3
 減数域の様子を見るために縦軸の一目盛りを20dBにしている。 また周波数範囲も上限500MHzにアップした。

 33pFのリードインダクタンスとの共振と思われるピークが2箇所見られる。 但し、ピークとは言っても60dB以上減衰しており、支障はなさそうだ。 問題があれば33pFの実装方法を再検討しようと思っていたが、概ね大丈夫そうである。 そもままで行くことにした。

 以上、TRIOの古いローパス・フィルタ:LF-30の解析と50Ω化改造の経緯である。 外装が汚くなっているので、塗り直しを行なってやり新しいラベルでも貼ってやれば完璧だろう。 オリジナルの仕様を見ると75Ω用なので何となく気持ち悪かったのであるが、改造して特性の確認も済んだので、これで気持ちよく使えるようになった。

                ☆ ☆ ☆


フィルタの特性評価と実際の使われ方
 ここでは改造したフィルタを題材にして、LPFが実際に使われる際の特性について考察してみる。

 このLF-30の仕様書はPart 1に掲載してある。他社のLPFも恐らく同じだと思うが、仕様書に掲載されている周波数特性図は言わば『まやかし』なのである。 ウソではないのだが、測定方法と現実の使われ方の間には大きな違いがあるからだ。

 カタログの周波数特性は、この図の(A)のような方法で採取している。 上の写真も同様で、信号源インピ−ダンスが50Ωの発振器と、入力インピーダンスが50Ωのレベル測定系の途中にフィルタを挿入して実測している訳だ。 もちろん、測定方法やその測定結果に誤りがある訳ではない。 問題はLPFが実際に使われる状態とは異なる測定方法なのが原因である。

 上図(B)のように、アンテナ系が、如何なる周波数で見ても50Ωである・・・と言うようなことは殆どあり得ない。 もし本当にそうなら、どこで送信しようとVSWR=1である。 良くできたダミーロードならいざ知らず、そんなアンテナなどあるまい。 アンテナの設計周波数で、尚かつ良く調整されていればそこは50Ωかもしれないが、それ以外の周波数では50Ωなどと言うことはあり得ないのである。

 このように考えると、いくら50Ωの測定系で良い特性が得られたとしても、それを外れるインピーダンスのところでは、思っている周波数特性とはずいぶん違うのではないかと言う疑問が生じて当然だ。 フィルタが効いたり効かなかったりするのはそれが原因ではないだろうかと・・・。

高い負荷インピーダンスのケース
 アンテナ系を負荷にした実測でやるのもある程度可能だが、バンド外の電波輻射は旨くないし、個別ケースの話しにしかならないので、ここはシミュレーションで行くことにする。負荷を変えて傾向から判断するのが目的だ。

 ここでは30MHz以下の通過帯域の特性は無視する。高調波の減衰を見るのが目的だからだ。 まずはアンテナ系のインピーダンスが50Ωよりも高い時の特性である。 100Ω、1kΩ、10kΩそして100kΩとした場合の減衰特性である。 アンテナ系が数kΩになることは十分考えられるが100kΩ以上になるケースは考えにくいのでインピーダンスが高い方へ外れた場合の特性がこれで予測できた訳だ。

 もちろん、良くおわかりのお方ならアンテナ系が「純抵抗」になるなど「有りえん!」と怒るに違いない。 もちろんそう思って容量性(C性)や誘導性(L性)を付加したシミュレーションもやってみた。 たしかに、フィルタ内部の最終部分にあるコイルやコンデンサとの共振が見られるようになって、この図のような奇麗な遮断特性ではなくなる。 しかし、わずかなピークが通過帯域のやや上側に現れる程度であって、その部分を除けば図の特性と大差は無いのである。 従ってこの図で代表させてもらった。

 要するに、この形式のLPFは負荷側のインピーダンスが高い方へ大きく外れても十分良く効く特性を持っていると言うことである。 50Ω系で測定した結果その物と完全に同じではないが高調波抑止に十分な効果があることは実証できたと思う。

低い負荷インピーダンスのケース
 上記と同様に、今度はアンテナ系のインピーダンスが低くなった場合のシミュレーションを行なってみた。

 インピーダンスは25Ω、10Ω、1Ω、0.1Ωである。 この場合も通過域の特性は無視する。 0.1Ωと言うのは負荷がほぼショートのような状態になった想定である。 高周波系であるから、完全なショート状態と言うのはまず有り得ず、むしろ完全なショート状態の実現には技術を要する。 従って、これでおおよむね低い方へミスマッチした状態におけるフィルタ特性の評価になっているだろう。

 もちろん、C性やL性の負荷も想定したシミュレーションも行なったが、結果はグラフで示した純抵抗負荷の場合と類似であって、低い方はこのシミュレーションで十分推定は可能であった。

                  ☆

 従来、こうしたHAM局のアンテナ系に挿入して使うローパス・フィルタの特性と実際の高調波除去効果には疑問を持ってきた。 アンテナ系があらゆる周波数で50Ω(75Ω)であるなど考えられないから、下手をすれば入れない方がマシのフィルタにさえなっているのではないかと疑いを持ってきた。 しかし、それは杞憂であって効果的に高調波の抑止に役立つていることがわかったのである。

 もちろん、運が悪いこともないとは言えず、高調波がジャスト受信されるインターフェアのケースにあってはハイパワーだとそこでは効果も限定的だろう。-100dB以上の減衰量が有っても駄目かもしれない。 或は基本波により対象機器の内部で自ら高調波を作り出しているようなケースにはまったくの無力である。 何が原因でインターフェアが起こっているのかを見極めないと効果的でない対策に走る可能性も未だ大なのである。

                ☆ ☆ ☆


出力インピーダンスが低く負荷側が高いケース
 以下の考察は、上記以上に様々な議論を呼びそうなケースである。 貴方のお考えをどうこうしようと言うつもりは毛頭なないので、予めそのおつもりでご覧願いたい。

 上記のように、アンテナ系のインピーダンスがフィルタの減衰域で必ずしも(否、必然的に!)50Ωではないとしても十分に効果的であることがわかった。 ところが、それだけではない。

 実のところ無線機の出力インピーダンスは50Ωではないのである。 スペアナやネットアナでは測定系の信号源インピーダンスはすべて50Ωになっている。これは仕様書にも書いてあることだからウソではない。その50Ωの精度まで規定しているのが普通だ。

 では、実際のHAM局ではどうか? まさかIC-XXXやTS-YYY、さらにFT-ZZZの出力インピーダンスは50Ωなどではあるまい。 いや、「50Ωだって書いてあるヨ!」と仰るかもしれない。 たしかに、「Output Impedance : 50〜75Ω」なんて書いてある例も見る。 しかし、それはそのRigが想定している負荷インピーダンス(アンテアナ)が50Ω系なのであって、トランシーバ(送信機)の内部インピーダンス;Rgは50Ωではないはずだ。 もしも本当にそのRigの内部インピーダンスが50Ωだとしたら送信電力をどこかでロスしていることになる。まあ、そんなバカなことはあるまい。
 たぶん、現実には数Ω以下の内部インピーダンスなのである。 特にNFBが掛かった半導体式のパワーアンプなら一段と内部インピーダンスは低い理屈だ。 定電圧源に近い特性になっている。 (注:NFBの掛かっていないビーム管ファイナルの送信機の内部インピーダンスは逆に50Ωよりも高い.誇張的に言えば定電流源に近い特性だ)

 そのような想定で、送信機側の内部インピーダンス;Rgを1Ωとし、また負荷側のインピーダンスが高い方へ外れるケースでシミュレーションしてみた。 このようなケースでもLPFは良く効いてくれると言う結論で良いだろう。(上図)

出力インピーダンスが低く負荷側も低いケース
 同様に、負荷が低い方へ外れたケースもシミュレーションしてみた。

 上の方にも書いたが、純抵抗負荷ではなくC性やL性の負荷ではどうかと言う検討も行なったが、代表してこのグラフを掲載しておく。 要するに、そうしたケースでも良く効く特性であることがわかっている。

 ごく単純なπ型やT型のローパス・フィルタも十分な段数を重ねた構成を採れば高調波の抑止効果は充分得られることがわかった。 これは、IN/OUTが50Ωと言った『理想的な』測定系の話しだけではなく、実際のアンテナ系に挿入してもその効果は十分期待できるわけだ。長年の疑問も解消したのでこれで安心して眠れる。(笑)

                ☆ ☆ ☆

 地デジ化でTV全般がUHF帯に移行してくれたのは非常に有難いことであった。それだけでインターフェアは40dBくらい効果的なはずで、しかもEMC(電磁的な不干渉性)対策がまったく不十分だった古い機器の駆逐にもたいへんな効果があった。

 しかし、高感度な機器も多くなった結果、わずかな高調波でも支障の出るケースもあり、LPFの出番がなくなった訳ではない。 旧型のLPFでも特性を良く吟味し実用になることを確認しておけば有効活用のチャンスもあるだろう。

 アンテナ系の使用周波数外のインピーダンス変化についての認識はあまりされていないように思う。 また理想系で測定した周波数特性で云々しているケースも良く目にするのでずっと気になっていた。 HAMの用途にあっては測定数値の精度を云々するより、十分効果的であるか否かを見ておく方が意味があるだろう。 そのような視点で見直してみたのがこのBlogの締くくりである。de JA9TTT/1

(おわり)