2010年8月22日日曜日

【その他】HAM Fair 2010

【2010年ハムフェア】於:2010年8月21日〜22日
 今年もハムフェアが開催された。 ここ暫く東京は有明:東京ビッグサイトが恒例の開催場所になっている。 そして残暑が厳しいのも例年のことだ。 重そうな無線機やジャン測を抱え、汗だくで「ゆりかもめ」に急ぐハムも昨今は少なめだ。 箱モノの出物が少なくなったこともありそうだが、会場に出店する運送業者の宅配サービスを利用する人が多くなったからだろう。

 昨今は買物よりもお馴染みさんやネットで知り合ったお方とのアイボールが目的のようになっている。 もちろんメーカーの新製品発表も気になるのだが、暫くは現有機器で行こうと決めているので熱心にに見ると言うほどでもなかった。 実際、厳しくなった新無線設備規則に対応した機器はまだこれからと言った感じだろう。 新製品のTS-590は気になったが、他社も含めて来年あたりの方が面白いのではないか?

 初日の傾向を一言で言うのは難しいが印象は次のようなものだ。「やや若返って人出もちょっと多くなったかな?」・・・という感じだ。 失礼ながら、例えば二文字コールのようなOMさんはこの猛暑の時期、お出掛けの無理はされないご年齢なのでは? 昨今は知り合いも含めてSKになられるOMさんも続出なのだ。 代わってBCLラジオブームの世代が隆盛になってきたように感じられた。

 少しずつではあるが、中・高校生の姿も見られるようになってきた。 それもOMのお子さんではなさそうな学生さんも結構いて少しは未来に希望が持てるかもしれない。 HAMと言う趣味も若い人たちに世代交代すべきだと思う。

 買物は目的にあらず。大したものはないが、恒例なので一応以下にメモしておく。(笑)

【ラグ板:Lug terminal strips】
 買物とは言っても、何か作る時に消費してしまうような部品を気付いた範囲で手に入れておく程度である。 もちろん、すぐに必要と言う訳でもないのだが、無いと不便、あったら便利と言うものを買っておいた。もちろん安いからと言って無節操に買い込むと消費しきれないのは目に見えている。

 写真は北海道の通販店「ラジオ少年」のブースに出ていたラグ板だ。 私が作るのは試作的な一品料理なので回路は「ユニバーサル基板」上に組立ててしまう。 しかしAC電源回りなど大きめの部品が付く所はこうしたラグ板に載せるケースも多い。 これは同店でいつでも買えるが送料節約の意味でこの際購入しておいた。なお、写真では7Pラグ板とあるが、アースに接続される端子は数に含めないのがパーツ屋さんの常識だったと思う。従って写真は4Pと6Pのラグ板と言うことになる。

 縦ラグ板(写真)は平ラグ板と共に真空管時代の代表的な配線用部品だ。 真空管で製作する人はもちろん持っているべきだろう。こうした回路図には現れない小物部品も揃えないと製作が捗らない。

【六角スペーサ:Hex Standoff】
 基板をシャシに固定するにはこうした部品が欲しい。 長いビスとネジを切ってないパイプ状のカラーで浮かせる方法もある。

 用途によって使い分けるようにしているが、ガッチリした固定には六角スペーサが良い。 シャシ上面から基板の着脱も容易にできるので便利だ。 これは一袋¥100−だったので2つ買っておいた。

 さっそくネジ類を入れるパーツボックスに追加しておいた。 秋葉原やホームセンタで購入すると、そこそこのお値段である。消耗品扱いで補充しておけば重宝する。

【間接型のTCXO】
 以前のBlogで、秋月のTCXO:KTXO-18Sより少し高級なTCXOとして紹介したモジュールが出ていた。 嵩張らず軽量でお手頃の「来場記念品」が欲しかったので、これを買っておくことにした。

 店頭には二つあったが、既に1つ持っているし他にも欲しい人があるかもしれない。一つで遠慮しておいた。 これが¥1,000−ならお買い得なのだが、自作をしない人には何の意味もないのだろう。

 周波数は6.4MHzである。 1/64で100kHzや1/640で10kHzを得てPLLのリファレンスにするのがお約束の使い方だろうか? 周波数安定度に優れたPLLシンセサイザが作れる。 また、今どきのリグには必要ないが100kHzや25kHzまで分周すれば精度の良いマーカー・オシレータになる。 更には1KHzあるいは1Hzを得てゲート制御信号に使えば測定精度の良い周波数カウンタになる。

 TCXOは昨今流行のRb-OSCや高級OCXOに比べれば絶対精度で2〜3桁ほど劣っている。 しかしスイッチオンから数分もすれば約0.1ppm以内の精度に入る。 常時通電しておけない機器にはむしろ向いている基準発振器だ。 消費電力も少ないから電源事情の良くないフィールド用の機器にも適している。

 周波数の「高精度病」も結構だが、周波数基準器は使用環境や電源条件なども考慮して選択しないと不都合な点ばかり目立ってしまう。スイッチオンから最低30分以上も待たされるような無線機やオーディオ機器など私ならご勘弁願いたい。(笑) 一般家庭用ならスイッチオンから短時間で高精度になるTCXOの方がむしろ向いていると思う。 標準電波を使って入念に初期校正しておけば、1年間くらい楽に<1ppmの精度が維持できる。 揺らぎさえ少なければ絶対精度はそれで十分満足できる。

【2SK1575/ Hitachi】
 これはHAMフェアのジャンク品ではない。 会場でアイボールしたYさんに頂戴したものだ。 何でも破格で数個入手されたのだそうで「どなたか試してみませんか?」と言うお誘いに思わず乗ってしまった。(笑) Yさん、良いお土産になりました。どうも有難う。

 Push-Pull回路を意図したRF用のPower MOS-FETである。 高耐圧RFデバイスであって、ドレイン電圧:Vds=80Vで使うのが標準だ。 従って例のMRF255アンプより遥かに良好なIMD特性が期待できる。(まあ、これは当たり前なのだが・笑)

 しかし思うほど甘くはなくて、やって見るとRFデバイスの高電圧動作はなかなか難しいものがある。 特に広帯域アンプの設計でマルチバンドを目指すと安定した動作が大きな課題になる。 失敗すれば即座にPower-FET昇天の憂き目と隣り合わせだ。 低電圧のデバイスよりもずっとデリケートに感じる。 虎の子の石を使った試作では通電の瞬間は心臓が痛む思いだ。 なので精神衛生上は安価なIRF510あたりの方が宜しいのかも。 hi hi

 このデバイスに関しては、いずれ100WクラスのPower MOS-FET Amp.を扱う時に詳しくでも。 あらためて過去の試作品と一緒に紹介してみたいと思っている。

                  −・・・−

 会場では、CQ誌ほか出版社のお方が熱心に取材される姿を目にした。 来月号ではHAMフェアの熱気が誌面を通じて全国のハムにも伝わるだろう。 来年も沢山の来場があればアイボールは盛り上がるに違いない。 アイボールでしばしお話し頂いた皆さん有難う! お会いできなかったお方は来年こそ来場されては如何?

(おわり)

2010年8月15日日曜日

【HAM】micro TO Keyer 2010 part 2

【箱に入れる】
 どんな製作でもそうだが、基板のままでは完成品にあらず。そのままでは何れジャンクの運命だ。 せっかく作ったKeyerなので箱(ケース)に入れた。 これでやっと「真の完成」と言う訳だ。 参考:micto TO keyerの基板部分の製作Part 1は:==> こちら

 実はmicro TO Keyerには実用性の懸念があった。「長短点メモリなし」と言うシンプルさゆえ使い勝手は如何ほどのものだろう。 実際に試してからでないとケースに入れていきなり遊休品と言う運命さえありえる。 そこで基板バラックのままでオペレーションを想定した試運転をしてみた。

 「箱に入れた=マズマズ使えそう」と言うことだ。 ラフなパドル操作ではミスが出易い。長・短点が出たのを聞いてからパドル操作が必要なので高速キーイングではエラーが目立つ。 しかしゆったりした速度で、人間の側が合わせる(訓練する・hi)ことで使えそうだ。 既存のC-MOS Keyer(移動運用向け簡易型)も似たようなものだから何とかなるだろう。

【配線中】
 サブシャシ(なま基板を使用)を設け、その上に回路基板を載せる構造にした。 これはケース下部にたくさんネジが出ないようにする為である。 ケース下部は厚さが4mmほどのアルミ押出材であり十分なネジ山が確保できる。ネジの頭が出ない構造を目指した。

 写真は前後のパネル兼上蓋の部分とサブシャシ間の配線の様子だ。 配線完了のあとサブシャシをケース下部に載せてネジ止めすれば終了だ。 こうしないとケース下部の側壁が干渉して配線しにくい。 他に配線し易い構造の箱もあったのだがデザインは今ひとつだった。 反面、このケースのデザインは悪くないのだが配線がやりにくい構造だ。

【配線完了】
 基板内の配線より、こうした筐体内部の配線の方が厄介である。 お盆なので連続した作業ができなかった。 結局、筐体の加工から配線完了まで三日間も掛かってしまった。 盆行事の合間の細切れな作業だからやむを得ないだろう。 おまけに部材が足りなくなり閉店間際のホームセンタに飛び込んだり・・・。hi

 サブシャシと上蓋の間を配線する構造にしたので配線は比較的容易だった。 配線終了後に下部シャーシに載せ2点ネジ止めで完了した。

 全面塗装されたケースなのでシールド状態に懸念もあるが、回り込みなどあれば後で対策したいと思う。 Low Powerでの運用しかしないのでRFの回り込みもまず問題ないだろう。

【電源およびリレー基板】
 先日作ったKeyer基板の他に、電源部とキーイング・リレー部、及びサイドトーン部を載せた基板を追加した。回路はごくありきたりなのでこの部分の図面は省略する。 なお、電源トランスはケースサイズから内蔵できそうにないのでACアダプタ形式にした。

 電源部はμPC317(LM317Aと同じ)を使って電圧可変型の安定化電源を構成している。 これは、もしKeyer部分に不満があった場合にそこだけ交換してグレードアップできるようにするためだ。 出力電圧は3.2〜5.6Vまで可変できるのでTTL化したKeyer部に載せ換えられる。


 Keying Relayの部分については、次項で触れる。

 キーイング・モニタ用にサイドトーン発振器を内蔵した。この部分は簡略化のために既製品の電子ブザーを使ってみた。 音色を聞いてから購入したかったのだが、秋葉原でも試して買えるお店はなかった。 その中で概略の周波数が書いてあったお店で購入した。

 好みもあるので自分で発振回路を構成した方が良いと思う。 しかし電子ブザーは小型で簡単なのが良い。それ自身が発音体なのでスピーカも不要だ。かなり大きな音がするが、箱の中なので静かな部屋には丁度良い感じ。 やや甲高い耳につく音だが、サイドトーン回路を内蔵しないリグと使う際の非常用なのでこれでも十分だ。 サイドトーンはON/OFFできる。

【内部基板全景】
 手前の黒い頭の丸形デバイスが並ぶのがmicro TO Keyerそのものである。 これについては前のBlogに書いた。

 同じサイズの基板に電源やKeying Relayを載せた。 肝心のKeying Relayだが、オリジナルの製作記事ではリードリレーが使ってあった。

 リードリレーの手持ちもあったが、所詮は接点式なのでチャタリングと接点寿命が気になる。 チャタリング対策には水銀接点リードリレーと言う手もあるが、今はPhoto-MOS Relayが一番だろう。 MOS-FETを使った電子スイッチだからチャタリングはないし接点寿命も心配無用だ。(但し、定格オーバーすると容易に破損する)

 写真奥の基板上にある真白い角形部品がそれである。フォト・カプラの一種だ。ここで使ったHSR312:Fairchild製はOFF時の耐電圧が250V、ON時の許容通過電流は190mAである。 ON抵抗は15Ωほどあるからスイッチと完全な等価ではない。 トランジスタを使ったフォトカプラと違いPhoto-MOS Relayには極性がないのが良い所だ。 トランジスタ時代のリグにも真空管時代のブロッキング・バイアス・キーイングしていたリグにも機械接点式(リレー式)とほぼ同じように使える。

 QRPな真空管式送信機ならカソードキーイングさえ可能そうだ。但しそれは試していない。

【パネル・コントロール】
 パネル面には電源スイッチ、キーイング・スピードつまみ、サイドトーン・モニターのON/OFF、パドル・ジャックを取付けた。

 構造上、配線の引き回しが長くなるので、束線バンドで整理してある。 パイロット・ランプは、電源ONでまずは薄く点灯し、キーイングで明るくブリンクするようにした。 動作確認にもなるし視覚的な効果もあった。

 パドル・ジャックはステレオ・タイプのイヤフォン・ジャックを使っている。これは拙宅の既存キーヤーとの互換性を考えたためである。 一般には大型のステレオ・ジャックの方が望ましいように思う。 パドルがGndに接続されるとDot/Dashが出る回路なので、ジャックのコモンがアースされるタイプでも大丈夫だ。

 サイドトーン・モニタのON/OFFはセンターOFF型のトグルスイッチを使っている。上側に倒すとサイドトーンがオンされ、中立位置でOFF、さらに下側に倒すとキーイング・リレー(Photo-MOS Relay)が連続ONになり送信機のチューニングなど便利が良いようになっている。このあたりはARRL-HBの回路を踏襲した。

【リア・パネル】
 キーイング・アウトプットのジャックは2つがパラになっている。これは片方にハンドキーあるいはバグキーを装着しておくためだ。 もちろん、出力端子はシャシから(絶縁されて)フローティングしており、マイナス接地でもプラス接地でも任意の電位の所に接続できる。

 例えばFTDX-401やTS-510のような旧式トランシーバではブロッキング・バイアス・キーイングになっていた。 リグのシャシ側に対しキーイング端子はマイナス数10Vの負電圧になっている。そのために、昔作ったKeyerでは高耐圧PNP-Trを使ったレベルシフト型のキーイング・トランジスタを付加していた。
 一方、比較的新しいリグではシャシに対して5〜12V程度の正の低い電圧をキーイングすれば良いようになっている。 これらの何れに対しても無難に対応する為にはメカ接点のリレーが最も簡単だが、現在ではPhoto-MOS Relayの採用がベストである。

 電源入力端子は標準的なDCジャックを使っている。但し、内部にブリッジ・ダイオードが入っており無極性になっている。 平滑コンデンサも入っているからACを加えても大丈夫だ。 だいたい7〜12V程度のDCアダプタが良い。所用電流は約100mAである。


micro TO Keyer Testing Movie
 ケースに入れてテスト中の様子である。 今回はサイドトーン・モニタの音が聞こえるのでどの様な感じかわかり易いと思う。 普通にキーイングできるのでマズマズ実用になりそうだ。

 出来たばかりなので簡単なテストでの感触である。 Speedツマミの位置は10時くらいが良い所だ。 12時の位置まで早めると指が追いつかずエラーするので少々訓練を要する感じだ。 もっとも、あまり早く送ると受信の耳が追いつかない。hi hi 「平和」に9時くらいのポジションでの〜んびりオンエアするのが良さそうである。

 没個性的かも知れないが、長・短点比が3:1の奇麗な符号が送れる。 クセのない教科書通りのモールス符号は受信し易いが、あまり遅くすると短点が中点のように感じて旨くない。  ゆっくり送る為には長・短点を延ばし単純にスピードを落とすのではだめで、符号の間合いを長く取るようにする方がCW初心者にも取り易く優しいオペレーションのようだ。

20世紀に置き忘れて来た懐かしいICを使った製作だったが実用になるものが出来たようだ。

21世紀にマッチした、マイコン式エレキーは:=>こちらから。

(おわり)

2010年8月9日月曜日

【測定】Repair a Volt Ohm Meter

FX-110 Volt Ohm Multi-meter
 写真は三和のFX-110と言うテスタ(回路計)だ。 テスタは、英語ではボルト・オーム・(マルチ)メータと言うのだそうだ。(VOMと略記されることが多い)

 これは暫く前のBlogで扱ったが、JARL支部大会のジャンク市で見つけたものだった。 実際に使うつもりだったので入手直後に一通りのチェックはしておいたのだが、何故か一つのレンジだけ確認の漏れがあって、而もそこが故障していた。

 先日使っていてその不具合が発覚した。 幾つかのレンジでは精度も見ておいたのだが、代表的なところをざっと見ただけなので見落としたのかも知れない。よく使う測定レンジであり実用にするには不便だからそのままと言う訳にも行かず、さっそく修理することにした。

Ω×10レンジ
 不具合のあったのは写真の「Ω×10レンジ」である。×1kレンジのような状態になっていた。 たまたま数100Ωの抵抗をチェックしていたのだが、ショートに近い「ゼロΩ」付近を示すのでビックリした。すぐに調べたらテスタの方が故障(破損)していた。

 経験のある人ならすぐに想像できると思うが、たぶん「Ω×10レンジ」のままでAC100Vでも測ってしまったのだろう。抵抗のレンジで電圧を測ってしまいテスタを壊すケースは良くあるので経験者も多い筈だ。自身、別のテスタでやってしまいメーカーから部品をもらって修理したことがあった。

 古い設計のテスタはメーター保護が完全ではなかったので心臓部の「メーター」そのものを焼いてしまうことも多かった。そうなると万事休すである。 しかし、多くの経験が活かされた後世のテスタではアクシデントに際してメーターそのものはほぼ確実に保護されるようになっている。 このテスタの場合もメーターユニットは完璧に保護されたが、レンジ感度を決める抵抗器が壊れてしまったに違いない。

アナログ・テスタの内部
 アナログ・テスタにも様々な形式があるので、これが典型例ではない。むしろ特殊な構造の方だろう。
 多くのテスタではレンジ・スイッチがメーター・スケールの下部に陣取っている構造だからだ。 このテスタはレンジ・スイッチがメーターの下側に格納され、コンパクト化を図った珍しい構造である。

 従って開けてもピンと来ない構造だったのだが、よく見ていたら概ねレンジのポジションにそった部品レイアウトになっていた。 写真に判明したレンジ抵抗の配置をざっと書いておく。 もっとも、こんなテスタを修理しようと言う人などまずいないとは思うのだが。

テスタの回路例
 ジャンク市で見つけたテスタは本体だけで何も付属品はなかった。 もちろん取説も付いていないから回路も不明である。 ただしテスタはどれも似たような構造の筈で類似品の回路図があれば十分参考にできる。

 これは、類似の形状をしているテスタ、三和「FX80」の回路図らしい。少し前の世代の上位機種らしく「FX-110」より幾らかレンジ数が多い。 高抵抗測定のために22.5Vの乾電池を内蔵している。 「FX-110」ではその部分が省かれ電池は3Vだけになっている。しかし、あとは良く似た感じだ。

 図のR17〜R22が抵抗測定レンジに関係する部品である。このうちR17〜R19は抵抗値が高いので過電圧で壊れることは少ないだろう。 従って低抵抗のR20〜R22が焼けると予想できる。
 いま「Ω×10」レンジが悪いのはわかっているので、R21に相当する抵抗器が焼損しているに違いない。 Ω×10以外のレンジは正常だから他の抵抗器は問題ないはずだ。
 注:回路図は別機種:FX80のものでFX110とは部品番号や抵抗値は異なっているはずだ。しかし故障箇所の推定には十分役立った。但しどの部品がソレに相当するのか見極めるウデが必要だ。

焼損していた抵抗器
 Ω×10レンジの抵抗器である。カラーコードから本来は501Ω(*1)だったように読めるが、断線して数10MΩ以上になっている。よく見ると中央あたりの塗装が焼けて変色している。 更に別の箇所を見たら細いクラックが走って断線しているようだった。 (*1:このテスタでは「Ω×10レンジ」のLI値を見ると6mAとなっている。従って、乾電池の電圧を3.0Vとすれば、R=3.0/0.006 =500(Ω)となり読み取った値は正しい。メーターに分流する分を考えてR=501Ωなのかも知れないが実際には電池電圧も変動する)

 これは「酸化金属皮膜抵抗器」のように見える。酸金抵抗は過負荷に強いので、間違えて壊し易い部分に向いているだろう。 但し温度係数が大きいので測定器向きではない。普通の金属皮膜抵抗器なのかもしれない。 補修にはそれを使うつもりだ。

 501ΩはE24系列を外れており標準値ではないので数個の抵抗器を組み合わせて合成する必要がある。(501ΩはE96やE192でもないので特注品のようだ) 相手がアナログなテスタなので案外ラフでも大丈夫だが、なるべく精度が維持できるように実測精度を見ながら値を決めよう。

交換完了
 470Ω(±1%)の抵抗器と、max 100Ωの可変抵抗器(VR)を直列にし、200Ω、500Ωなどの数個の高精度抵抗器を実測しながら指針の振れ位置(スケールの指示値)を調整する。 その後VRの値を実測し近似値の固定抵抗器に置き換える。

 そうした方法ではなく501Ωの抵抗器を合成し交換するだけでも大丈夫かも知れない。しかし多少なりとも精度が向上することを期待し、スケールに合わせて調整する方法を採った。 このテスタの場合470Ωの抵抗器に16Ωを足せば良さそうだ。

 よく見ると「Ω×1レンジ」の抵抗器も2本の合成で作ってあるようだ。(50Ω=47+3)このレンジは前のオーナーが修理したのかもしれない。 あるいは、テスタの製造時に現物合わせで調整する部品なのかもしれない。
 何れにしても、今ではアナログ・テスタの精度をずっと上回る測定器が身近にある時代なので、それを頼ればこうした修理も容易に可能である。

精度確認
 表示値が500ΩのL型抵抗器(いま時珍しい?)を「Ω×10レンジ」で測定している。 この抵抗器は4・1/2桁のDVMで実測したら487Ωだった。 指示は良く合っているようだ。 もちろん、スケールに合うよう修理したのだから当然かも知れないが、スケールの他の部分はもちろん他のレンジでもおおよそ同じような精度であった。 アナログなテスタでは良くて3桁、悪くすれば2桁くらいの読取り精度と言うことになる。

 規格を見るとわかるが、この種のアナログ・テスタの精度はあまり良いものではない。特に「抵抗測定レンジ」は注意が必要だ。 見ての通りリニヤなスケール目盛ではなく左端で詰まった目盛になっている。 これは被測定抵抗器に一定電圧を加え、そのとき流れる電流を測定すると言う原理なのでやむを得ないのだ。即ち、I=V/Rなので1/Rに比例する目盛になる訳だ。 更に抵抗測定の精度は目盛の長さの±3%と言うような規格になっている。 従って、同じ測定レンジ内でも目盛が詰まっているスケールの左端付近では右側で読むより桁違いに大きな誤差が許容されることになる。このような訳で、なるべくスケールの右側で読めるよう測定レンジを選択するのが高精度測定のコツだ。

 こうした指針式のアナログ・テスタを使う人も少なくなった。デジタル・テスタの方が安いと言う事情もあろう。 昔の調査によるとテスタの使用目的は導通チェックと抵抗の測定が一番多かったそうである。 そうなると抵抗測定で目盛が読みにくく、精度も良くないアナログ・テスタが敬遠されてしまうのは無理もない。 既にアナログ・テスタの抵抗測定レンジの扱い方を知らず、スケールの読み方が良くわからない人も多いそうだ。

☆「測定レンジを変えたら、テストリードの先端を短絡し、ゼロΩ調整をしてから測定する」・・・と言うのは既に電気屋の常識ではないのだ。

                 ☆ ☆ ☆

 上記のテスタ回路図を見ての通りアナログ・テスタは受動部品(パッシブ・デバイス)で構成されている。 従って活きてる回路の途中を測定してもデジタル・テスタのように被測定回路にノイズを注入してしまう恐れはない。

 25kΩ/V程度の高感度テスタなら動作中の回路に与える影響も思いのほか僅かだ。いまはインピーダンスが低い半導体回路が中心だから十分使い物になる。

 ACVレンジの整流器がゲルマニウム・ダイオードになっているテスタなら交流電圧測定の周波数特性も良好だ。オーディオ帯くらいは十分カバーできる。(亜酸化銅やセレンのものは1kHzくらいまで)

 時代に逆行するようだが、アバウトで済む用途にはアナログ・テスタを便利に使っている。電圧や電流について、変化の傾向を見るにはアナログ・テスタが最適だ。ラジオやオーディオでは測定ポイントの電圧が最大あるいは最小になるように調整で追い込むと言ったシーンは多いものだ。

 アナログなテスタは使用者も少ないし、わざわざ修理までしようと思う人は稀だろう。従って例によってこれは単なる日記である。 先日使っていて不具合を発見しその修理経過を纏めておいた。
(おわり)

2010年8月1日日曜日

【HAM】micro TO keyer 2010 part 1

micro TO Keyer

スローフードとかスローライフと言った「Slow」が静かなブームになっている。今宵は少々スローでノスタルジックなロジックICを使ったキーヤーを紹介する。 とかく慌ただしい昨今、あくせくせずLow Bandでゆったり・ゆっくりの気持ちでオンエアは如何だろうか? hi

 micro TO KeyerはIC化されたKeyer(エレキー)としては最初期のものだ。K3CUWによって1967年8月号のQST誌(ARRLの機関誌)で紹介された。 写真は1972年版のARRLハンドブックに転載された製作記事である。半導体化されたキーヤーとして優れていたので以降数年間に渡ってARRL-Handbookにも掲載された。 登場したばかりのデジタルICは当初かなり高額であったが量産による効果で数年後には手軽に作れるキーヤーになった。

 エレクトリック・キーヤーの半導体化はJAでも古くからテーマになっており、既に1960年代のCQ誌にディスクリートで構成された高級なキーヤーが紹介されていた。このmicro TO Keyerも1971年ころのCQ誌上で紹介されたことがある。但し日本に於いてはRTL-ICの入手性は良くなかったからこのキーヤーはポピュラーにはなれなかった。

 自身、JA-CQ誌の記事は見た記憶もあるが、当時はSSBが殆どでCWで出るのは稀だった。必要性も感じなかったから縦振れ電鍵を愛用していた。 後になってエレキーの良さを実感することになるが、クセのあるハンドキーイングも個性的と思っていたのかも。(笑)


the TO Keyer
 microがある以上、マイクロではないキーヤーがあるはずだ。 図は、W9TO / Jim B Ricks ( in a Silent key : October 20,2001)によって開発されたオリジナルTO Keyerの回路だ。 W9TOのキーヤーは優れた設計だったので回路デザインと愛称の「TO Keyer」がハリクラフターズ社(米国通信機器メーカー)に買い取られていた。同社によってHA-1型として製品化され、愛称「the TO Keyer」としてかなり永く販売されていた。

 真空管の論理回路は難解だが、短点発生用の自走マルチバイブレータ(V1a,b)と長点用の双安定マルチ(V2a,b=Flip Flop)を使ったタイミング制御方式である。 ON-OFF回路用(デジタル回路用)の真空管を使い信頼性を上げ、電源電圧変動の影響をうけぬように定電圧放電管を2本使うなど安定動作に気を配っている。キーイングも高速でチャタリングのない水銀接点リレーを使うと言う完璧さだ。長短点とスペースの比が一定かつ安定している美しい符号の送出を追求した結果であろうか。たかがキーヤーがこれだけの回路になった訳だ。

 一瞬これを作るか中古のレストアでもと言う考えがよぎったが(馬鹿だねえ、まったく・笑)流石にやめておいた。今でも使えるとは思うがエコではないし、ここまで行くと古過ぎてノスタルジーを感じられない。(笑)


micro TO Keyer
 こちらがmicroな方である。PNP+NPNをUJT的に使ったクロック・ジェネレータとJK Flip-Flopを2回路使って長短比とスペースの関係を実現している。micro TO Keyerと称し、考え方は踏襲しているが上記TO Keyerの動作そのものを半導体で模した訳ではない。

 クロックをFlip-Flopで分周し短点とスペースの関係を1:1にすることで無調整化している。さらに短点パルスを次のFlip-Flopで分周し、1回遅れの短点と合成して(ORをとって)1:3の長点を得ている。のちのエレキーの基本となる回路だ。なおRTL-ICは負論理デバイスなので一見解り難い。

 今のエレキーから思えばシンプルこの上ない。 使用デバイスは現在ではとても珍しくなったRTL-ICだ。当時の米国HAMにはポピュラーで通販で容易に入手できたようだ。総額$25-以下で製作できるとある。

 これを見た当時、micro TO Keyerなら簡単そうだと思った。しかし新しもん好きな私はTTL-ICを使い長短点メモリ付きのスクイズ・キーヤーを作った。もう2世代くらい後のエレキーと言う訳だ。 十分満足できるキーヤーだったので、あえて旧式なmicro TO Keyerに戻ることなど考えられなかった。

micro TO Keyerを作る
 写真はFairchild社製のRTL-IC(8本足のもの)と同じ形をしたトランジスタである。RTL-ICはジャンクの整理で出て来たもの。 低速なRTL-ICなど利用価値もないから捨ててしまおうかと思ったのだが懐かしいmicro TO Keyerを思い出した次第。

 このICはデジタルICでありながら、Dual In-lineに入っておらず8本足の丸形パッケージだ。 ステム(台座)にICチップを載せ配線のあと、黒い樹脂を滴下して封じている。ポッティングと言うパッケージング方法だ。CanパッケージよりLow Costだったのだろう。同社のトランジスタで量産に使っていた方法をICにも応用したものだ。

 写真のRTL-ICはジャンクの基板から調達したもので、取り外して何かに使おうと思っているうちに陳腐化したものだ。 登場したころの輝きはすっかり褪せてしまったICだが、部品は回路に使ってこそ活きるものだから最後の活躍の場を作ってやりたい。

μL914のカタログ
 今は良い時代である。45年前のデータシートが手に入った。 これは2入力のNOR/NANDゲート、μL914のデータシートである。(おそらく1965年の初版)

 下方の左側がその内部回路である。NPNトランジスタ4個、抵抗器6個が集積されただけの簡単な回路だ。 Resistor Transistor Logicと言う名称の所以がわかろうと言うものだ。  この通りディスクリートで作っても同じように動作する。 数個使う程度ではIC化の有り難味をあまり感じない集積規模だが、最初期のICとはこんなものだった。



μL923のカタログ
 micro TO Keyerの心臓部は何と言ってもこのICなのではないかと思う。 JK Flip-FlopのIC化はメリットが大きかった部分だ。 図中段右の真理値表のような動作が可能なので、エレキーのようなシーケンス回路を実現するにはうってつけのデバイスである。

 当時調べたら上記のμL914よりもずっと高価だったが具体的に幾らだったかすっかり忘れてしまった。 何分40年も前のことなのでご容赦を。(笑)




μL923のカタログ(裏面)
 RTL-ICの説明のようだが、内部はNPNトランジスタ15個と抵抗器17本からなっている。 これをディスクリートで組むのは大変で、このくらいの回路規模になるとIC化のメリットが出てくる。

 こうしたRTL-ICが急速に廃れた原因は欠点が多いからだ。最たるものはクロック速度と消費電力の問題にある。

 各トランジスタのベースに入っている抵抗器は誤動作の原因となる「カレント・ホッギング現象」の防止に不可欠だが、速度アップには有害なものだ。ON時においてはベース・エミッタ間容量とローパス・フィルタを形成することになって立ち上がり速度が上がらないのだ。またOFF時においてはベースに残ったキャリヤを抜き取る邪魔になり遅れが出る。結局クロックは2MHzくらいが上限であった。
 コレクタの負荷が抵抗器と言うのも良くない。 各抵抗値を下げれば多少速度は上がるが消費電流が増えてしまう。 またICの中の抵抗器は面積を必要とするのでたくさん作り込むのはチップが大きくなって損なのである。 抵抗器は発熱する存在だからたくさん集積すれば過熱してしまう。こうした欠点を克服すべくDTL-ICやTTL-ICが開発されて行ったのがデジタルICの歴史だ。

 下段の図は端子の負荷係数を示す図でファンアウト/ファンインの関係を示している。今ではC-MOS化であまり気にしなくなったがTTLを含めバイポーラ・ロジックICでは設計時の確認ポイントであった。

 エレキーくらいなら速度はまったく問題ないからRTL-ICでも立派に動作する。但し、消費電流は大きくて、C-MOSと比べたらそれこそ鯨飲馬食だ。(笑)

micro TO Keyer /2010
 ジャンクの復活とRTL-IC時代を振り返るノスタルジーから製作してみた。
 同じ形状のFairchild製トランジスタを使ったので7個ICがあるように見える。ここまで拘る必要もなかったが折角なので揃えてみた。各トランジスタは2SC1815と2SA1015で十分だが興味のあるお方には差し上げる。(笑)

 左側がクロック・ジェネレータで、引き出し線の先には100kΩのVRが付いている。スピード調整に使うものだ。 右端の下側が出力トランジスタである。ICのうち、赤くペイントされたものがμL923 Flip-Flopである。組立てメーカーが識別のためにペイントしたのであろう。右上にLEDを付けたのが今風な所か? ICは直接ハンダ付けしたので、劣化が心配だったが無事に旨く動作してくれた。低集積度なので思ったよりも信頼性は高いのかも知れない?

 電源回路、サイドトーン・モニター発振器、キーイング・リレーは別基板に搭載する。リレーも当時のようにメカニカルなものではなくPhoto-MOS Relayを使う予定である。 電源電圧は3.6V、消費電流は約80mAであった。(乾電池ではとても持たないなあ・・・)

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 優れたデバイスが氾濫しているから製作記事として意味をなさないBlogだったと思う。今どきのキーヤーはマイコン式(←リンク)が常識だ。(笑) もちろん、どのICもディスコンだが、あえて作ってみたい人には、Transistor Museumと言うサイトでNOSのμL923が手に入る。 2個で$10-だそうだ。 あいにくμL914はないようなのでディスクリートで作っても良いが、中古で良ければ多少余剰があるから差し上げる。
 製作は部品を揃えて2〜3時間だろう。プリント基板化すれば格好良いかも知れない。 検索してみたら同じような製作がK8CUのサイトにもあった。参照したバージョンが違うようで少し回路は異なっている。上記1972 ARRL-HB版は誤動作対策された最終版の回路だ。 K8CUは2007年に作ったようで古いデジタルICにノスタルジー(IC萌え?)を感じる人もあるようだ。hi

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 長単点ともにメモリなし、スクイズ・キーヤーでもない。使いにくいが良く「訓練」すれば実用になると思う。(シンプルな道具を使いこなすには人間の側を合わせる訳だ・笑) ケースに収納し1970年代のリグと組み合わせて楽しんでみたい。 もしもオンエアで符号に余分な(足らない)単点や長点が聞こえたならこのキーヤーの仕業だと思って欲しい(爆)

動画のアップが何とか旨く行ったので、試験的に追加してみた。 micro TO Keyerの動作中動画である。 ピンセットでDotとDash端子をショートしてモニタLEDの点滅(右上)を見ている。 まあ、ほんの参考程度だが。一応動作してる証拠と言うことで。(笑)

基板製作編に続くパート2でケースに入れて完成へ; ==> 続き

(つづく)