【トランジスタのfT】
【トランジスタのfT測定】
トランジスタのfT値はそのトランジスタの高周波特性を示す重要な指標の一つです。
使ってみればわかりますが、大雑把に言ってfTの1/8の周波数までと思えばゲインは十分得られます。1/4までならまあまあ何とか、と言った所でしょうか。fTの半分まで使うのは良い石が無かった昔々のお話です。
fTについてエミッタ電流:Ieとの関係を調べてみました。なお、Ieはコレクタ電流:Icと同じと考えても良いでしょう。ベース電流:Ibの分だけ誤差が出ますが数%以下です。
トランジション周波数:fTは各トランジスタ固有の一定した値のように思いがちです。例えば2SC1815なら最小80MHzと書かれています。 しかし同じトランジスタであっても動作電流によって大きく変化します。 従ってその使い方によって高周波特性も大きく違ってきます。
【測定したトランジスタ】
2SA70、2SA101、2SA495Y(旧型)、2SC372Y(旧型)、2SC1815Y、2SC1855(フォワードAGC用)、2SC2668Y(2SC1923Y同等)、S9018H(中華石)
測定した中から代表的なものをグラフにしました。旧型と言うのはいわゆる「袴(はかま)」付きシルクハット型パッケージです。
【測定条件など】
コレクタ・エミッタ間電圧:VCE=10V(DC)です。 測定周波数は仮測定して適宜選択します。グラフ中に記載してあります。 エミッタ電流を変化させながらfTを測定します。 空調の効いた25℃の環境で測定しました。 測定の再現性はかなり良好ですが、fTの絶対値はカタログ等の比較によれば±20%くらいの精度のようです。 もともとトランジスタのfTは個々にバラつくので実用上十分な測定精度だと思います。 研究のため、一部は規格をオーバーする条件で測定しています。
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2SC372Yの代替は2SC1815Yが定番ですが、HF帯では意図した性能が得られないことがありました。特に小さい電流で使うと芳しくありません。 グラフを見ると2SC372Yの方がRF向き(高周波向き)だったようです。
中華トランジスタ:S9018Hは、以前の予想(←リンク)とは違いました。実測してみたら使い易い所にfTのピークが来ています。これは好都合な結果でした。
2SA70と2SA101は高周波用のゲルマニウム・トランジスタです。高周波用とは言ってもせいぜいこの程度でした。周波数特性が良くなかったゲルマの石で四苦八苦した当時が思い出されますね。
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トランジスタの高周波性能はfTだけでは決まりません。Cob や rbb' が小さいことも重要です。 しかし多くの場合fTの高いトランジスタが有利なのは間違いないでしょう。 目的に合ったトランジスタを選び最適な動作条件で使うことがRF回路成功の秘訣と言えるでしょう。 トランジスタのfTなんて規格表に載っているデバイスの基本的な項目です。どちらかと言えば地味なテーマでしょう。しかしこうして実際に求めてみると色々なことが見えてくるものです。 ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)nm