abstract
I'm going to make a simple curved tracer. A curve tracer is a measurement device to easily investigate the characteristics of semiconductors such as transistors or FETs.
It is difficult to make a full-scale curve tracer. However, if the functions are limited and the performance is limited to the required range, it is not too difficult to make it.
I will briefly explain the significance of a curve tracer and investigate your interest. If there is a lot of demand for it, I will explain in detail how to make it. (2020.10.31 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【カーブトレーサって?】
ご存知でしょうか? 測定器の一種なのですが、滅多に使う機会のない測定器でしょう。 一言で言うと、カーブトレーサはトランジスタやFETと言った半導体の特性をビジュアルに表示するための装置です。 シンプルなカーブトレーサ(のオシロスコープ用アダプタ)を試作したので紹介してみたいのですが、そもそも詳しい話にご興味はあるのでしょうか? そこで今回は「調査編」としてどんな測定器なのかザクっとおさらいしてみたいと思います。
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半導体に限りませんが、電子デバイスの電気的な特性を知ることは回路設計を行なう上でとても大切です。例えばトランジスタの場合、ベース電流をパラメータとしたコレクタ電圧とコレクタ電流の関係は基本的なものでしょう。 そうした特性図はメーカーから発表されていますからユーザーはカタログのデータを参照すれば済んでしまいそうです。
ところが、カタログに掲載されているデータ(グラフ)できちんと設計できるか少し疑問もあるのです。例えば、ポピュラーなトランジスタ:2SC1815なら次項のようなグラフがカタログに載っています。 これで小信号増幅回路が適切に設計できるでしょうか?
まあ、たいていの場合、既に設計済みの回路を作りますし、設計者の頭の中には常識的な特性なら入っていますから支障はないのかも知れません。 しかし、自分が知りたいと思った詳細なところがデータシートにはないことも多いのです。
カーブトレーサは馴染みのなさそうな測定器です。どなたにでもお薦めするつもりはありませんが、トランジスタやFETと言った半導体デバイスの特性に興味があるなら簡単なものが一台あっても良いかも知れません。詳細な特性の測定はもちろんですが他にも様々な用途があります。例えば、怪しそうなデバイスの良否判定、特性がよく揃ったマッチド・ペアの選定、コレクタ耐圧やhFEでの選別のほか、購入したデバイスの真贋を見極めると言ったような使い道もあります。本質的に半導体は特性がばらつくため、少々高級な電子回路の製作には必需品とも言えるくらいです。 ま、OP-Amp.やマイコン専門でディスクリート部品(BJTやFET,etc)にご縁がなければ必要はないのかもしれませんが。
毎度難解なBlogをご覧頂くのも大変かもしれません。熱心にご覧いただき感謝です。 しかし私ももうそれほど続けられない齢になりました。大してニーズもなさそうなテーマを深追いするほど老い先永くもありません。 ここは様子を見たいと思っています。 取り敢えず準備は始めていますが、ご要望次第でこの先Part 1以降へと進みます。 RFの測定器ではありません。デバイスの特性にまで興味を持つようなHAMは限られるとは思いますが、何か感ずるものでもあれば熱い(笑)コメントをどうぞ。質問もOKです。コメントなど限られる様でしたらPart 0で終了にしましょう。

【2SC1815Yの静特性】
図は非常にポピュラーなトランジスタ:2SC1815のコレクタ電圧とコレクタ電流の関係を示す特性図です。メーカーのカタログから転載しました。 この特性図を作るのは難しいことではなく、簡単な道具を用意し、あとは根気よく測定しグラフにすれば良いわけです。(実際はそれほど容易ではないです・笑)
2SC1815は汎用品(はんようひん:特定の用途を決めず幅広く使えるもの)なので、使い方も様々です。例えば、比較的大きな電流を流してスイッチのような動作をさせたいなら、この図は重要な情報になります。 しかし、マイクアンプのような小信号増幅回路の設計にはあまり役立ちません。 そのような増幅回路ではコレクタ電流:Ic=1mAとかせいぜい5mAくらいで使います。 このグラフではそうした小電流の範囲がよくわからないのです。
もし、小電流領域の特性を知りたいなら次項のような測定回路で求めることができます。でも、グラフにするのは大変かも知れませんね。私はあまりやりたくありません。
【静特性の測定回路】
トランジスタの静特性は、一定のベース電流を流した状態でコレクタ電圧を変えながら加えて行き、その加えた電圧ごとに流れるコレクタ電流の大きさを読み取ってグラフにプロットすれば良いわけです。
具体的には、まずはベース電流を設定します。続いて、徐々にコレクタ電圧を上げながらコレクタ電流を読み取って行きましょう。 ベース電流は、例えば10μA、20μA、30μA・・・のように10μAずつ増やして行けば良いでしょう。 ただし何μAずつ増やして行くべきかは、被測定トランジスタの性能(直流増幅率:hFE)に依存します。従って綺麗なブラフにするためには様子を見ながら加減して測定する必要があるでしょう。
私が工学部の学生だったころ、トランジスタ特性を求める学生実験でこうした測定を行なったことがあります。実測してグラフ化すれば確かに勉強にはなりますが非常〜〜に厄介でした。 何しろトランジスタは温度に敏感で特性の変動が大きいため、まごまごしていると温まってしまいどんどん状態が変化してしまうのです。
怪しげな実測データを無理やりグラフ化して実験レポートは提出しましたが、教科書通りにはならず「考察」を書くのに四苦八苦したことを思い出します。(笑)
【シンプル・カーブトレーサで観測】
左は最初の写真のブレッド・ボードに作ったカーブ・トレーサ・アダプタで観測した2SC1815Yの特性です。小電流の範囲で観測してみました。hFEは約145であることも読み取れるでしょう。輝線はほぼ等間隔ですからリニヤリティの良さも直感できます。
最初の写真には写っていませんが、ブレッドボード上の回路の他にオシロスコープを使います。オシロスコープはXYモードにします。XYモードに切り替えて画面に現れる輝線から、横軸(X軸)の目盛りでコレクタ電圧を、縦軸(Y軸)の目盛でコレクタ電流を、それぞれ読み取ります。
カーブトレーサを使えば、こうしたトランジスタやFETの電圧と電流の関係が一発で観測できるのです。便利なことこの上ありませんね。
写真ではベース電流を20μAステップで与えていますが、これはある程度任意の刻みで変えることができます。被測定トランジスタのhFE(直流増幅率)によって見易いように加減が必要だからです。一般的なカーブ・トレーサでは1-2-5の刻みで設定できることが多いようです。例えば、1μA-2μA-5μA-10μA-20μA-50μA-100μA・・・と言った感じです。 また、輝線の表示本数は写真ではゼロを含めて6トレース分ですが、この簡易版でも8トレース分まで増やすことができます。
例えば刻みを20μAにセットしましょう。いま、6トレース分だけ表示させるとします。そうすると、IB=0、20、40、60、80、100μAの6種類のベース電流を流した状態が観測できます。その設定でコレクタ電圧を徐々に上げて行くとコレクタ電圧と電流の関係曲線(トレース)が6本分だけ画面に表示されます。こうして左の写真のようになります。
ブレッド・ボードの試作品ではコレクタ電圧は0から40Vの範囲で加減できますが、必要な最高電圧が得られる電源トランスを用意すればずっと高い電圧まで拡張できるでしょう。 しかし、それに伴い高電圧用の部品が必要になり、保護回路も大掛かりなものが必要になってきます。せいぜい50V程度までが作り易いと思われます。
現状ではコレクタ電流の範囲は100mAまでです。これも拡大は可能ですが、拡大に伴い大電流の配慮が必要なので作るのは大変になって行きます。(できないわけではありません)
従って、手軽な範囲として2SC1815のような小信号トランジスタの観測用に限定すれば非常に作りやすくなります。 ここでは、そのような範囲で作ることを前提にしたいと思っています。具体的にはコレクタ電圧で最大60V、最大コレクタ電流は200mA程度の範囲を考えています。また、hFEがあまりにも小さいトランジスタは対象外にしたいと思います。
なお、写真ではNPNトランジスタを測定していますが、PNPトランジスタも可能です。 さらにFET(電界効果トランジスタ)もN-ch、P-chが測定できます。 その他、ダイオードの順方向特性を調べたり、ツェナー・ダイオードのブレークダウン特性を調べるのもいたって容易です。
もちろん機能を欲張ると接続切り替えのスイッチが増え、同時に配線もたくさん必要になります。 それだけ便利にはなりますが製作は大変でしょう。ですから、実用性を損なわぬ範囲であまり使わないような仕様は省略するなど作りやすさを優先し、あまり欲張らないのが現実的だと思っています。
【プロフェッショナルなカーブトレーサ】
写真はメーカー製の代表的なカーブトレーサです。かつてTEKTRONIX 576は名器として市場に君臨していました。半導体の評価や解析に不可欠の装置でしたから、昔の職場ではよく使ったものでした。
小信号用トランジスタからパワートランジスタまで幅広くカバーするため、非常に大掛かりな回路になっています。最高峰を目指すとこのようになるのはわかりますが、アマチュアが手出しできる範囲ではないでしょう。
TEKTRONIX 576はあればデバイスの評価・解析に重宝すると思いますが、巨大で非常に重たい測定器です。またかなり古いため既に故障が頻発している筈です。 安価な中古品は間違いなく何らかのトラブルを抱えているでしょう。メンテが行き届き程度の良いものは非常に高額です。既にメーカーは面倒を見てくれませんから、性能の維持は大変でしょうね。 もちろん、持っていませんし巨大なコレに手を出すつもりもありません。
#それに、このBlogの趣旨は「自分で作ろうよ!」なんですからね。hi
【真空管だって】
写真はほんのお遊び程度のものですが真空管(12AU7)の静特性を観測している様子です。 管面に典型的な三極管のEp-Ip特性が描かれているのが見えるでしょう。
現状ではトランジスタ用に設計してある関係で印加可能な最大プレート電圧が低くて真空管にはあまり適当ではありません。それも含む設計にすれば十分な可能性がありそうです。
このように自身が必要とする程度のカーブトレーサ・アダプタなら大して費用も掛からず作れてしまいます。 割り切れば技術的な困難もあらかた回避できます。 もしそれで何か不足に感じたら拡張・改造も自在です。 この例を拡張して真空管の測定に特化した実用品も作れるでしょう。むしろ真空管にPNPやP-chの物はないので専用の設計にすればシンプルになります。ちょっと感電が怖いですけれど。w
この写真のテストでは管面表示器に遊休品になりつつあったトリオのオシロ:CO−1303Gを使ってみました。以前のBlog(←リンク)でオイルコンを交換して修理したたいへん古いものです。 管面が丸型3インチ(75mm)なので見易いとは言えませんが、こうしたチープなオシロスコープでもXY表示のモードがあれば使うことができます。 古くてあまり使い道のなかったオシロもこうして活きる道もありそうです。 なお、写真のCO-1303Gはごく簡単な改造を行なっています。
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急に思い立って以前から構想の有ったカーブトレーサ・アダプタを実験的に製作してみました。幾つかある構成案から、まずは最もシンプルなタイプを試みました。仮にバージョン1.0 (Ver.1.0)と称しています。 その結果、機能と測定範囲を絞ればあまり難しくなく製作可能なことがわかりました。 基本的なものならブレッドボード上に製作できるのです。 ただし簡略型なので扱いにやや難しさがあると言った欠点もあります。 そのため使い方に多少のコツを要します。
この先、Ver.2.0ではあまり複雑化させずに可能な改良は試みたいとは思っていますが、自身では現状でも結構満足してしまいました。 実験テーマとしては完結したと言っても良いくらいでしょう。
現状は使用経験のないお方には扱いにくそうですから、できたら改良したいところです。しかしまあ、これもご興味次第のこと、自家用ならVer.1.0のこれでもマズマズなんですけれど。 私のニーズにはかなり役立ちそうです。そのまま箱に入れても良いくらいだと思っています。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)←リンク fm