2024年8月20日火曜日

【電子管】Using the Twin-Triode as the SRPP Audio Amp.

SRPP回路を使ったオーディオアンプ

introduction
I had never built an SRPP circuit with twin triodes before. So I gave it a quick try. I selected three types of twin triodes. It depends on the value of the gain constant μ and the transconductance gm. The measurement results of my prototype SRPP amplifier are listed in the table. The results show that most twin triodes can be used for the purpose of this SRPP amplifier. I have experimented with them and found their characteristics to be good. (2024.08.20 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

双三極管:6CG7
三極管が2ユニット封入された・・・いわゆる双三極管でSRPP型のオーディオ・アンプ回路を試作します。

 写真は6CG7という真空管です。同じ特性の三極管二つが一個のガラス容器に封入・複合された真空管で一般に双三極管と言います。三極管二つの複合管には異なった特性のユニット2つを複合したものがあってそれらは複三極管と言います。わかりきったこと書くなって言われそうですけど真空管に馴染みの薄いお方もご覧ですので・・・。

 双三極管のルーツはGT管時代の6SN7あたりでしょう。メタル管の時代になって脚が8ピンのUSベース(オクタル・ベース)に統一されたのが切っ掛けでしょうね。ガラス封じのGT管はそのローコスト版です。8脚あれば三極管二つで6脚、ヒータの2脚でちょうど8脚になります。全く独立した三極管を2つ同じ真空容器に封入できることになります。作られた理由はやはり省スペースにあるでしょう。
 世の中には三極管を2つ以上使う回路はたくさんありますから省スペースには有難いことで、6SN7以外の双三極管も作られました。 その背景には真空管(電子管)がラジオ以外の分野に進出したこともあるでしょう。(UZ-30MCと言ったUZベース六脚で直熱型の双三極管もあったのですが軍用品で一般人は知らない特殊な球でした)

mt管(ミニチュア管)の時代になって、初めはすべて7ピン管でした。そのためカソードがある傍熱管の場合、どこかの電極を共有しない限り双三極管は作れません。戦前からあった6J6がそうした7ピンmt管の双三極管でした。2つの三極管のカソードを共通のピンにすることで7脚に2つの三極管を収めたわけです。 カソードを直接接地して使うなら支障はないものの、やはり完全に独立していないのは使い勝手の点ではイマイチなように思います。

 足ピンを2本増やした9ピンmtのNoval管が作られ、傍熱型の双三極管がマトモな形で作れるようになります。しかもオクタルより1ピン多いので、その使い方でバラエティが生まれました。 写真の6CG7のように余った1ピンを2つのユニット間のシールド(遮蔽)に割り当てる球ができました。これは高周波や信号レベルが極端に違う用途に使うとき問題だったユニット間の干渉を防ぐためです。 もっぱら低周波やON/OFFと言った直流的な動作の場合、シールドはなくてもマズマズ使えるので、余った1ピンをヒータの中点から引き出す球が作られます。 12AT7、12AU7、12AX7などが典型例です。6.3Vだけでなく12.6Vでも点灯できるのは便利でした。

 高周波系の双三極管ではシールドとして、低周波系の双三極管ではヒータの中点としたものが一般的になりました。双三極管を使う際は余ったピンの扱いに注意すべきでしょう。なお、ピン接続は1番から9番へ順に、P-G-K-H-H-P-G-K-HCTが一般的です。前の方のP-G-Kが第2ユニット、ヒータの後のP-G-Kが第1ユニットです。HCTはヒータの中点です。ただし稀に全く異なる物があるので要注意です。ヒータ中点を9番ピンに引き出さない球の場合、9番ピンは内部遮蔽:インターナル・シールド(IS)あるいは無接続:ノー・コネクション(NC)もありますのでどちらの場合も一応GND電位にしておけば良いでしょう。

                   ☆

 今回もラジオ趣味の人にはテンデ面白くないでしょうね。まあ、我慢してご覧いただく意味はありませんからヒマのない人はこの先はやめておくと宜しいです。以下、そんな程度の中身です。

参考:Elevamの真空管について:
エレバムは宮田製作所という真空管メーカのブランド名でした。ロシア革命の年、1917年に創業の老舗で東芝・マツダと違わぬ古い球メーカでした。自社ではラジオなどはほとんど作らず、もっぱら球を他社に供給するのが商売だったようです。交換用の需要も多かったのでしょう。マイナーと言うには有名すぎる球メーカだったと思います。雑誌の広告欄には各種真空管の価格表があったのですが一流品のマツダと比べて安価でした。なお、宮田製作所は現在する会社で特殊な放電管など理化学機器向けの電子管を製作しているようです。Elevamの球は古いラジオの補修用に使われて残っていることも多く珍しくもないのですが箱入り新品のmt管はちょっと珍しいかもしれません。同社の球は良くも悪くもない程度のごく平凡なものだったように思います。要するにフツーに使えます。w

SRPPアンプ・テスト回路
 図は今回のテスト回路です。典型的なSRPP型アンプになっています。
 三極管を2つ分使うオーソドックスな2段増幅アンプを真っ先にやるべきだったのですが、興味の赴くままにSRPPアンプを作りました。

 カソード接地型の増幅器をR-C結合で2段繋ぐアンプはあまりにオーソドックスなのでちょっと興味が湧かなかったのです。まあ、そっちはいつテストしてもいいや・・・と言った感じです。 球メーカー発表のR-C結合アンプの資料も多数存在するので後回しにしました。

 SRPPというのは、シャント・レギュレーテッド・プッシュ・プルの略です。上側の三極管がシャントレギュレータのような動作をするのでそう呼ばれるのでしょう。よく似た形のアンプにはミュー(μ)アンプというのがあります。そちらは単なる定電流源負荷のアンプで、出力の引き出し方が異なるので簡単に区別できます。

 このアンプは双三極管を使うと便利な回路です。ある程度のゲインをもたせつつ、出力インピーダンスも低くできるのがメリットです。測定結果はのちほど纏めますが、カソードフォロワと違ってゲインがあるのがメリットです。もっとも三極管を二つ使うのですから・・・

 カソード抵抗、Rk1とRK2は目的によって変更すべきです。この実験のように一定値(1kΩ)では、球によっては必ずしも最適ではない可能性があります。さらに同じ球を使う場合でも、想定される負荷インピーダンスが違えば設計は変わります。 しかし、ある程度おおきなインピーダンスの負荷なら最適設計でなくとも支障はないようでした。 電源利用率もまずまずで、十分大きな出力が得られるので単純な抵抗結合のアンプより有利です。 パワー管のドライブアンプにも適している筈です。実際そうしたアンプの製作例もかなり見掛けます。

 なお、球のヒータとカソード間の耐電圧:HK耐圧に気をつける必要がある回路です。まったく無視しているかのような回路も見かけるのですが・・・。危ないでしょう。

SRPPをテストした真空管
 写真にSRPPアンプをテストした真空管を示します。
 選択の基準は増幅定数:ミュー(μ)の大きさの違いです。トランスコンダクタンス:gmも考慮しています。

 測定の基本として中ミューの6AQ8、同じく中ミューですがHigh-gmな6DJ8、そして低ミューの6FQ7を選びました。
 なお、実際には9AQ8、7DJ8、そして8FQ7/12FQ7と言ったTV用トランスレス管を使っています。もちろんトランス付き回路用の球でもOKです。

 6AQ8は12AT7でも良かったのですが、ほぼ同等なので間に合わせました。また6DJ8はオーディオで使われる例が多くなっているので試してみます。6FQ7は6CG7と同特性の球でユニット間のシールドを省いた廉価版の球です。 GT管の6SN7と全くの同特性ということになります。低ミュー管の代表でしょうね。この目的には12AU7でも良かった筈です。(参考:低ミューの定義はμ≦10を言う場合もあります)

 なるべく新品でテストしていますが、良さそうな中古品も使いました。チューブチェッカの判定では新品に近いので支障は感じませんでした。ただしそれぞれバラツキはあります。
 厳密には多数測定して統計的処理を行なった方が良いのですが、そこまでするのは大変なのでやめました。単なる遊びですからネ。単体測定ですが傾向を見る程度でしたら役立つでしょう。

 今回はポピュラーな12BH7Aと12AX7のテストが抜けてしまいました。こちらは機会をあたらめて行ないたいと思っています。結果はだいたい予想できると思いますが・・・。

SRPPアンプの測定結果
 各部の実測電圧や得られたゲインを一覧表に纏めました。 真空管選択と使い方の検討に役立てるつもりです。

 出力電圧(rms)は、入力として1V(rms)を加えた場合の実測値です。従ってそのままゲイン(V/V)倍を表します。 負荷インピーダンスによってゲインが変わるのは内部インピーダンスが存在するためです。 ただし比較的低い値ですから、負荷が軽ければゲインもアップし出力はフルスイングすると思っても良いでしょう。 テスト回路のままでも50kΩ以上の負荷なら十分すぎる性能でした。 回路の趣旨にあった結果が得られていると思います。

 真空管の選択について考えます。 いま、SRPPアンプを採用する目的が低い内部インピーダンスと大きめなゲインであるなら、増幅定数:μ(ミュー)が大きくトランス・コンダクタンス:gmの大きな球がこの回路には向いています。μの大きな球はゲインが大きく、gmが大きいと内部インピーダンスが小さくなります。
 例えば、12AX7のようにμ=100と大きな球はゲインはありますが、gmはあまり大きくないので内部インピーダンスが大きいため負荷インピーダンスも高く選ぶ必要があります。 大きなゲインは要らないがドライブ能力を重視なら電流が流せてgmの大きい5687のような馬力のある球が良いことになります。(5687のピン接続は変則的なので注意!)

 また、プレート電流もある程度流した方がドライブ能力がアップするのは当然です。どんな球を使うか・・・という球の選択も大切ですが、その球をどう活かして使うのか、使用方法も検討すべきです。使い方が悪ければ潜在的な能力はあっても発揮してくれません。

 代表的な真空管3例のデータを示しますが、極端な違いはないのでSRPPは様々な球で構成できると思って良いようです。HAMの世界ではほとんど見ないので、使った経験はなかったのですがだいぶ感触がつかめたと思います。
 蛇足ながらSRPPはパワー管で構成されることもあり、OTLアンプとして使われることがあります。ただし原理は同じでも電圧増幅器とパワー・アンプでは設計法がだいぶ異なります。

SRPPアンプ実験の意味
 SRPP回路についてはオーディオ関係の書籍に詳しい解説があります。現在ではWeb上にもたくさんの解説記事を見かけました。

 たいへん詳しくて理にかなったわかり易い解説も多くて、あらためて勉強させていただけました。

 数式を駆使して解析した結果はまったくその通りなのですが、では実際に作ってみる価値はないのでしょうか? 私はそうは思いませんでした。

 このグラフは12AT7の特性がプレート電流、プレート電圧でどのように変化するかを示しています。中ミュー三極管の典型例として示します。 見ていただくとわかるのですが、決まった「定数」のはずの増幅定数:ミューでさえ、プレート電流で変化します。もちろんトランス・コンダクタンス:gmも然りです。

 真空管の3定数の2つが変わるのですから、もう一つのプレート抵抗:rpも変動します。 要するにどのような動作をさせるかにより現実の回路の様子は結構変わるのです。結果として内部インピーダンスもゲインも変化します。

 各定数の変化を加味したシミュレーションでも行なえば、任意の動作点における諸特性を求めることも可能なはずです。 しかしこんなことは単純ですから実験して傾向を掴んでおけば十分役立ちます。それにいくらシミュレーションしたってアンプは鳴りませんし。 

 そして真空管自体もかなりバラつくのですからいくら精密にやったところで現実と完全に一致することはないのでしょう。 このあたりに「理解するため実地でテストする意義がある」ように感じるのです。それで傾向がつかめたら十分役立つわけです。球の選択とか、その球に電流をどう流すのか・・・とか、etc。 まあ、考え方ですけどね。(笑)

                   ☆

 オーソドックス過ぎると興味を持ちにくいものです。 今回は双三極管をカスケードに接続するSRPPアンプを試してみました。 部品定数を変えながらさらに追求すべきだったと思うのですが、まずは概要を掴めたら良いとして一旦おしまいにしました。 多少ゲインなど変わりますが、様々な球で構成できる便利な回路です。アレがないから作れないとか、きっとあっちの球が良いに違いない・・・などと迷うこともなく、大差ない結果がその辺にあるような球で十分得られそうですね。 わかってやればウワサや怪しげな記事に惑わされることもありません。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1

つづく)←リンクfm

2024年8月4日日曜日

【電子管】Using the Triode - Pentode as the Audio Amp.

三極五極管を使ったオーディオ・アンプ

introduction
I have a lot of Triode-Pentode composite tubes in my junk box. They are all junk tubes from old TV sets. If I can make good use of them, I will be able to build an audio amplifier. I immediately tested them. The test results were very good. The test results are listed in the table below. I will be able to enjoy handmade audio without buying new vacuum tubes. I am a little happy. (2024.08.04 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

三極五極管:6U8A
 三極管と五極管が複合された真空管で試作したオーディオ・アンプ(=低周波増幅器)をテストします。

 写真は6U8Aという真空管です。3極管と5極管が一個のガラス容器(Glass Envelope)に封入・複合された真空管で、一般にこうした球を複合管といいます。複合管には他にも様々なものがあってこれはその一つです。

 複合管が作られた背景はやはり省スペースにあるでしょう。 AMラジオのように3〜5本程度の真空管で作れるなら無理に複合管を多用しなくても支障ありませんでした。それと真空管の信頼性が低かったころ複合管は不経済だったはずです。片ユニットが生きていても、もう片方が死んだら丸々一本交換しなくてはなりませんから。 一般に複合管は安くありませんし。

しかしTV受像機ではモノクロ型でも20本近い真空管が必要です。必要な機能は削れませんから複合管を使って物理的な本数を少しでも減らしたくなるわけです。その結果がこうした複合管です。 生産技術の進歩で真空管自体の信頼性が十分高くなったことも複合管が発展した理由でしょう。

 実は有名な5球スーパにも複合管が使われています。検波・低周波増幅の6AV6がそれです。High-μな3極管と2つの2極管が複合されていました。しかしそれ以上の複合はあまり合理的ではなかったので複合管は使われなかったのでしょう。 それと電気に詳しくない一般の人は真空管の本数を数えて高級品と安物を区別します。機能は同等以上であっても複合管を使って3球にまとめたら安物にされかねなかったのです。だから5球スーパはそのまま5本だったんでしょう。(笑)

 いま試作しているオーディオ・アンプの場合、複合管を使うと有利です。5極管の部分で十分なゲインを稼ぎ、3極管のカソード・フォロワを設ける形式のアンプに使います。 こうした複合管なら1本で構成できるので積極的に使いたくなります。

 オーディオ用としてポピュラーな三極・五極複合管には6AN8があります。過去のアンプ製作記事では定番的な存在でした。またやや遅れて登場した欧州系の6BL8もポピュラーな球です。さまざまなオーディオ・アンプで使われる例を見ます。 しかし残念ながらTVではまず見かけなかったのです。 ですから6AN8や6BL8なんて私のジャンクな球箱にはありませんでした。

 では似たようなTV用の複合管はオーディオへの適性はないのだろうか? なんで使わないの?? ・・・という疑問から検討が始まったような訳です。
 TV用の球をオーディオに使ったらハム・レベルとかマイクロフォニックが気になるかもしれません。 でもはなから諦めず試す価値はあるでしょう。ハムはDC点灯で解決すれば良いし・・・。(腕力式解決法・爆)

                   ☆

 ラジオにしか興味のない人にはてんで面白くないハナシでしょうね。まあ、我慢して見る価値なんてありませんからヒマでも無ければやめておく方が宜しいです。以下、そんな程度の中身でしょう。

テストに使うアンプ回路
 前回までの5極管のテストに使った回路と同じです。ハイゲインな五極管アンプ+三極管のカソード・フォロワの構成です。

 電源電圧:Ebbやプレート負荷抵抗:Rbは同じ値です。さらに5極管のカソード抵抗:Rkは2kΩに固定しています。
 従ってスクリーン・グリッド抵抗:Rc2だけを加減して適当な動作状態を得るようにしました。

 テストに使った真空管の間で意外に違いは無かったので条件を固定してしまってもだいたい良い結果か得られています。
 後ほど結果の一覧表があって、それにまとめておきましたので比較してみてください。

 確かに一部の球はカソード抵抗:Rkも変えて最適化したい気がしました。そうすれば高性能化できそうではありましたが、あんがい一定の回路定数のままでも「何とかなるものだ」というのが感想です。
コラム:6BL8系を使おう
オーディオ・アンプでポピュラーな6AN8はテストしませんでした。一つは持ってないことがありますが、他とピン配置が全く違うのでわざわざ購入して試す意義を感じなかったからです。6AN8と同じピン配置の三極五極複合管は他に殆ど見ないので差し替えたテストには不向きな球です。一説によれば6BL8系より6AN8の方がピン配置的にオーディオ向きという話も聞きます。しかし実際は大差ないようで6BL8系もオーディオに多用されています。互換可能な球種が多い6BL8系(EIA 9AE)を使いましょう。

テストする三極五極管
 真空管の写真を見せたからと言ってあまり意味はないのですが・・・このテストで使った球を集めてみました。これらの真空管は足ピンの接続がどれも同じです。

 いずれもTV用の球です。 ホントはヒータが6.3Vの球を使いたいのですが、手持ちの大半はこうしたトランスレス用の球ばかりなのです。

 ヒータが5V系の球は600mAシリーズのトランスレス用の球でしょう。どれもたいへんポピュラーなのでTVではたくさん使われていたのです。

 TVでの用途も様々ですが、もとはVHFチューナ回路の局発(OSC)と混合(Mixer)用に開発された球だそうです。他の回路に使っても便利なことから徐々に汎用の球になったのです。オーディオに使うのもその転用の一つだった訳ですね。

 9A8という球は、実はヒータ電圧違いの6BL8と同等の球です。 従って6BL8と同じ回路定数で正常に動作するのは当たり前と言えるでしょう。9A8をオーディオ系で使う際の注意はやはりヒータ・ハムだと思います。

 他の球もヒータの面倒さえ見てやれば6BL8や6AN8と同じような使い方で活用できるのではないかと思っています。見た感じも悪くはないですし。(笑)

注:ヒータは5R-HR1のみEh=5.4V・600mA。また9A8と9JW8はEh=9.0V・300mA。他はEh=4.7V・600mAです。

テストの様子
 ブレッド・ボードに組み立ててテストしています。 真空管1本で構成できますからコンパクトに組めます。

 ブレッドボードでの注意ですが、ヒータ電流が大きいので、なるべく変換基板の直近から配線を引き出します。回路のアース系に大きな電流は流さぬようにするのがコツと言えばコツです。(笑)

 複合管は入・出力の配線が交錯する可能性があって、発振はしないまでも周波数特性に影響が及ぶ場合があります。なるべく入力から出力までがストレートに並ぶように工夫すべきでしょう。 交流的にGNDレベルになるバイパス・コンデンサの系統で囲むと言った対策も効果的です。

 ヒータ回路を除けば回路電流は数mA以下です。1/4Wと言った小型の抵抗器で済むのでコンパクトに作っても問題ありません。 電源電圧が高いので注意は必要ですが、半導体回路と同じ感覚でテストして何も問題はありません。 真空管回路も思ったより手軽に遊べますね。

アンプの測定結果
 各部の実測電圧や得られたゲインを一覧表に纏めました。 動作点の検討と調整に役立てるつもりです。

 一部に中古品の真空管を使っているのでバラツキが大きくなっている可能性があります。(それほどではないとは思ってますが・笑)

 どの真空管でも200倍以上のゲインは楽々得られています。やはりトランス・コンダクタンス:gmの大きな球はゲインが大きくなっています。ゲインが欲しい時は6U8や6AN8と言った古い球より新しい6GH8Aのような球を使うと有利です。

 単独の真空管を2本、例えば6AU6と6C4と言った構成で作るのも良いものですが、複合管でも同じような性能が得られますので少ない球数でスッキリ作りたいときには最適でしょう。 回路を検討する際の選択肢の一つとして覚えておこうと思います。
コラム:球の常識:ピン配図の書き方
真空管の足ピン番号は足の側(下側)から見た図を書きます。ピン番号は時計回りに順番に振ります。 上面図を書く集積回路(IC)とは常識が逆なので注意を。 個人の自由ですから球のピン配を上面図で書いても結構ですが常識外れの書き方では他の人には伝わりにくいでしょう。間違いのモトにもなります。

                   ☆

 3極5極複合管には準パワー管の6AW8Aのような球もあってバラエティに富んでいます。 今回はプリアンプやコントロールアンプなどを目的に純粋な小信号増幅器における複合管活用を検討してみました。 TV用に作られた多くの三極五極複合管が工夫次第でオーディオ回路で充分有効に使えそうという感触が得られたと思っています。

 小信号用の複合管には双三極管があることを忘れてはいけません。 次回は各種の双三極管にスポットを当てて活用を試みたいと思っています。ではまた。 de JA9TTT/1

つづく)←リンクnm