2024年9月3日火曜日

【電子管】Using the Pentode as the Audio Amp. (4)

五極管の低周波アンプ・その4

INTRODUCTION
The 6R-R8 pentode tube is a Japanese-designed vacuum tube that was employed in NTT's telephone relay network. It is believed that the prototype was the Philips E180F pentode. This blog presents a comparison of the two pentodes as audio-frequency amplifiers. It can be concluded that the two tubes have very similar characteristics. Therefore, they can be used in the same way. However, the pin connections are completely different and cannot be swapped. I am going to use the E180F, which I have in abundance, to build an audio amplifier. The 6R-R8 is also excellent, but I am going to use the E180F. (2024.09.03 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

6R-R8届く
五極管でオーディオ・アンプの第2回で「国産の6R-R8を試したい」って書きました。

 良く探したら怪しげな中古球・・・もっともこの球の新品は入手難だったはず・・・を1本だけ持っていたのですが、評価には不十分でした。それで「どなたか・・・」って書いたところさっそくOMさんに送って頂くことができました。 VY-TNX!!

 6R-R8はHigh-gmな五極管で、時々ジャンクで見かけたのですが如何せん使用例のまったく乏しい球でした。 正規品は特定ユーザ向けで高価だったらしくアマチュアの手に入るのは基本的にジャンク球です。入手性は悪く雑誌などの記事にしにくかったのかも知れません。それに似たような目的・用途に使える球なら幾らでもあるわけですから・・・。 真空管の型番ですが、JIS形式ですから6R-R8とRとRの間にーハイフンが入るのが正しいです。

 情報のない部品は使われないと言うセオリー通り使う人は珍しかったのです。 そんな訳でたとえ見かけたとしても積極的に手を出そうとしたことはありませんでした。手元に一本だけ見つかったのもおそらくたまたま何かの偶然で手に入ったのでしょう。(笑)

 情報によれば6R-R8はWestern Electric WE-404Aの同等管のようです。またE180F/6688と電気的な特性は同等とのこと。 どちらが原型の球なのかはわかりませんがいずれも広帯域増幅器を構成するための高性能管です。 6R-R8/WE-404Aは主としてNTTやAT&Tの電話回線網で同軸中継器に使われていました。ピン配置が特殊なのはその用途に特化した結果なのでしょう。
 E180F/6688のピン配置はもう少し一般的な用途を意識しているように感じます。 フレーム・グリッド管は1950年代末にフィリップス社が始めたようなのでE180Fが原型管のようにも思うのですが・・・ 足ピンの違いから6R-R8とE180Fの差し替え評価はできませんが比較してその性能と類似性を確かめてみたいと思います。

                   ☆

 レアで特殊な真空管どうしを比較すると言う話です。そのモノを持っていなければこの先を見たからといって何にも役立たないでしょう。 早々のお帰りがお薦めです。 残暑はまだまだ厳しいですが何か有意義なご趣味にでもあなたの大切なお時間をお使いください。 なかば習慣なのかもしれませんが、こんなBlogを眺めていてもしょうもないですよ。(爆)

6R-R8とE180F/6688のテスト回路
 レアものの真空管とは言っても「ごく普通の真空管」に違いありません。フレーム・グリッド構造でHigh-gmと言う特徴はありますが、それは民生用の球でも使われていた技術です。 従って評価回路も前2回のBlogと違いません。

 ちょっと前にテストしたE180F/6688と同じようにバッファ・アンプには6AU6(三結)を使っています。
 評価の基本は前回(←リンク)と同じですが、今回はプレートの負荷抵抗:Rpを変えて幾つかテストしています。 前回E180Fをテストしたときゲインが予想よりかなり小さいのはプレート電流:Ipが少なすぎてトランス・コンダクタンス:gmが伸びていないのではないかと考えられました。 そこで今回は4倍くらいIpを流した状態のテストを加えました。

 回路は同じですがプレート負荷抵抗:Rp、スクリーングリッド抵抗:Rc2、そしてセルフバイアス用抵抗:Rkを変えながらテストします。 結果は後ほど一覧にまとめてあります。 どのようなRp、Rc2、Rkを使ったのかはそれぞれ一覧表に記入してあります。

バッファはいつもの6AU6で
 6AU6を三極管接続(三結)で使う方法はすでに定番化しました。(笑)

 6R-R8はヒータ電圧が6.3V、電流は300mAです。これは6AU6と同じなので直列にして12.6Vを加え点灯しています。 E180F/6688も同じですので同様にしています。

 なお、6R-R8のピン配置は独特です。 間違っていると正常に動作しませんから手持ち複数の資料からピン配置図を探し出し、資料を相互に比較のうえ間違いはないか十分に確認しておきました。もちろん現品を良く観察するのも確認の念押しになります。

 特にヒータが3番と9番と言うのは異常にさえ感じますが恐らく使用していた機器の部品配置や配線構造に合わせて真空管のピン配置の方を最適化した結果なのでしょう。 汎用品ではなくまったくの「専用管」ですからそう言った特化が可能だったのです。

 差し替えてテストができないのは大きな欠点ですが、まあ仕方がありませんね。 本来用途以外に使う方がイレギュラーな訳なので文句は言えません。 やむなく大幅な配線替えを行なってテストしました。(笑)

実測結果・一覧
 6R-R8とE180Fの類似性は十分確認できたと思います。 足ピンの接続はまるで違いますが電気的には良く似ていました。

 完全に同じとは思えませんが良く似た特性です。 従って同じような使い方をすれば良い訳です。 そうなると残念なのはピン配置が全く違うことにあります。 差し替えて音を聞いて見ると言った比較にはまったく向きませんので・・・

 プレート電流を4倍に増やした結果はどうだったでしょうか? プレート負荷抵抗を240kΩから約1/4の62kΩにしました。 もしトランス・コンダクタンスが一定ならゲインは約1/4(=25%くらい)になるはずです。 結果は約80%でした。・・・逆に言えば20%減で済んだ訳です。 
 これはプレート電流:Ipが約4倍になってトランス・コンダクタンス:gmがずっと大きくなったためです。 概略の計算ですがgmは約3倍になっています。 プレート負荷抵抗を高くしてゲインを稼ごうとしても、この球の場合は効果があまりないことがわかります。

 負荷抵抗はあまり小さくせずプレート電流を多く流すようにし、さらに可能なら電源電圧もアップしてプレート電流をある程度以上確保すると言った用法が上手い活用法のようでした。 こうした使い方はプレート回路のインピーダンスを下げる効果もあって周波数特性を伸ばす意味からも好ましいものです。 真空管の特性にマッチしている訳です。 可聴域以上に伸ばしても意味はないのですが、負帰還(NFB)を掛ける際は位相の回りが少ない方が有利です。

 今回のテストでは6R-R8とE180F/6688の比較とともにプレート電流を大きくする効果を確かめることができました。

活躍した真空管
 テストに活躍した真空管です。

 主役は6R-R8とE180F/6688ですが、脇役の6AU6も安定した性能で安心感がありました。

 主役2つの構造の細部を拡大して見ると幾分違いはありますが、よく似ていると感じました。 まあ、同じような特性に作ったのでしょうから似ていて当然でしょうね。
 6R-R8は初期バージョン(末尾が無印)を使った装置でトラブルがあったそうです。 特定の条件で稀にしか発生しないトラブルのため原因究明は難航したそうです。 その結果は真空管:6R-R8の問題であることがわかったそうです。6R-R8Cはその対策品です。

 このテストのようなオーディオ帯での使用ならまったく違いはないでしょう。 ごく稀な事故の対策品なのですから、6R-R8も6R-R8Cも同等に使える筈です。

                   ☆

6R-R8で再生受信機
 そもそもこのBlogはラジオ(但し「ラジオ放送」や「ラジオ受信機」ではなくって無線通信の意味のRadioです・笑)がテーマでした。あなたがどちら派なのかわかりませんがラジオファンを邪険に扱うと後ろから何か飛んできそうです。ここらでちょいラジオねた。(笑)

 6R-R8を使った再生式受信機がモービル・ハム誌にあったので回路を紹介しておきます。 アームストロング型でスクリーン・グリッドから再生を掛ける珍しい形式ですがそれほど難しい回路ではありません。回路図があればあとは一般的な注意を払えば大丈夫です。製作は十分可能でしょう。
 なお回路図のL1〜L3とコイルの説明がずれています。回路図が正しいとして、L1が1回、L2が24回、L3が3回巻きでしょう。MH誌に多い校正モレですね。w 他はザッと見て大丈夫そうですが、この記事には肝心な6R-R8のピン接続図がありません。読者はよ〜くご存知なのか、或いは製作する読者なんていない・・・というのが前提なんでしょうかネ?(笑)

 筆者はJA7RKB十文字OMです。 B+電源はトランスレス形式でシンプルに済ませています。 さらにヒータはDC点灯で初段の球(検波管のほう)を重視して後段の球のヒータ抵抗を平滑回路に兼用する上手い手が使われています。 6R-R8の低周波アンプはハイゲインですからトランス結合にすることなく十分な感度が得られるのではないでしょうか。低周波アンプ部の部品定数はごく標準的なものです。色々いじってみたければBlogのテスト結果から良さげな定数にしてみるのも面白いかも。 イヤフォンはセラミックあるいはクリスタル型をお使ください。

 6R-R8だけでなく、これまで紹介してきたどの五極管でも200倍程度のゲインは楽々得らます。 短波ラジオですから6BA6のようなバリミュー管を使うのも良いでしょう。6BX6とか6CB6のようなTV球も十分イケます。検波管にはむしろ6AU6や6AK5が向いていたようにも思います。 6R-R8なんて持ってなくても作れるので、ちょっと気になった「ラジオファン」はお試しを。 AM/CW/SSBの受信が楽しめるとのこと。詳細な記事はいらないと思いますが、もし必要ならモービル・ハム誌1991年1月号をご覧になってください。

このBlog内の参考リンク;再生式受信機の研究→ここ

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 JA3のOMさんのおかげで懸案だった真空管の比較テストができました。どうもありがとうございました。 なお、6R-R8はピン配置が特殊で少々使いにくい球ですが上手な使用法がわかればジャンク球から蘇るかもしれません。 20世紀の産業遺産でもありますから捨てられしまうのではなくて電子部品として再活用の道が開かれたらFBだと思います。 もっとも価格急騰しても困りますけど。(まあ、ないでしょう・笑) 次回は再び双三極管にスポット・ライトを当てて活用を試みたいと思っています。ではまた。 de JA9TTT/1

(つづく)nm