2008年7月12日土曜日

【測定】VTVM 三題

ヒューレット・パッカード:HP-401B
 昨日のBlogではDiode/二極管を話題にしたが、役立たない球(たま=真空管の意)と言う印象を与えてしまったかもしれない。(笑)
実際、一般的な回路では検波ならゲルマニウムやショットキー・ダイオード、電源の整流ならシリコン・ダイオードで事足りてしまう。 従って、二極管が登場するシーンは限定されてしまうことになる。

 測定器は、そのなかでも二極管が活躍できる数少ない場所の一つだろう。 図は、hp 410B型真空管電圧計である。 RF/AC電圧は左の方にある検波プローブを使って測定する。 ここに使ってあるのはEA53と言う、欧州系の専用二極管である。 検波プローブ専用に作られた球なので、構造も特殊であり破損すれば入手に窮することは疑いない。 しかし、非常に小さな入力容量で、しかも高い周波数まで使えるようにするにはこの種の球を使う以外に無かったようだ。
後継のhp 410Cは球石混合のハイブリッド回路になっているが、検波プローブの部分は同じである。 hp 410シリーズは、この種のVTVMとしては最高級の部類に入る。回路を見ればわかるが、定電圧放電管やバラスト・ランプを使い電源電圧変動の影響を受けないようになっている。それだけ大型で高価なのはうなずける。 まあ、今どき有り難がるほどの測定器ではないが用途・目的によっては役立つ可能性もあると思う。

松下通信工業:PV-91A
 国産でもVTVM(Vacuum Tube Volt Meter:真空管電圧計:通称・バルボル=Valve Volt Meterの意)は作られたがこれは松下通信工業製のPV-91Aである。 回路は双三極管(12AU7)で差動増幅を構成したオーソドックスなもの。 AC電圧は6AL5を使って倍電圧検波している。 なお、電源の整流にも6AL5を使っている。この程度の小電流なら電源整流にも使えると言う訳だ。

 面白いと思ったのは中央部下にある同じ6AL5を使った初速電流打消し回路の部分だ。 カソードを加熱すると熱電子が飛び出すが、プレート電圧はゼロであっても飛び出した電子は勢いが付いておりプレートに到達して電流が流れる。 即ち、信号ゼロなのに僅かだが検波電流が流れることになる。 これを同じ球で打ち消す仕組みのようである。 先人の工夫の跡であろう。(笑)
6AL5の特性は、使っているうちに変化して行くので、同じ球を打消しに使えば経年変化にも効果的だと考えたのだろう。 もし6AL5を交換するなら理想を言えば2本とも同時が良いはず。

菊水電子工業:PV-107
 HAMの間では菊水電子のPV-107がポピュラーなVTVMだった。上の松下通信製と類似の回路だが、多少簡略化されている。当然それだけ安価だった。 6AL5の初速電流打消しは、単純に電源電圧を分圧したバイアスを与えているだけだ。 たぶん、松下製のように凝った方法にしなくても十分な性能が得られたのであろう。
 PV-107は本体だけでAC電圧の測定もできたが、高周波電圧測定用には『クリスタル・プローブ』と称するゲルマニウム・ダイオードを使った検波プローブ(オプション)を使うことになる。 温度特性などを考えると検波管の方が良いが、プローブが大型化するし構造も複雑になってしまう。周波数特性を延ばすには特殊な球も必要だ。 廉価に作るために半導体式の検波プローブにしたのであろう。

 その昔、SSB送信機を製作しようと思えば、最低限こうしたVTVMが欲しくなり、菊水のPV-107は欲しいものリストの筆頭だったように思う。 本当はオシロスコープ(シンクロスコープは岩通製オシロスコープの一商品名)が欲しかったのだが、学生アマチュアには手が出なかった。40年も前の話しだ。(笑)

 今どき双三極管の差動増幅器でもない。 この種の電子電圧計はFET入力のOP-Ampを使うと安定度に優れた高性能なものが簡単に作れてしまう。しかもコードレスにもできる。(以前自作したものが今でもあるが滅多に使っていない) RF電圧測定用の検波プローブもGe-Diでまずまずのものが作れるが、測定値の信頼のためには校正がとても大切だ。 しかし、今では広帯域なオシロスコープがかなり容易に入手できるし、スペアナさえもシャックに入った。 だから、ただRF電圧を読むだけしかできないVTVMなど今更な測定器かもしれない。これも時代であろう。 もちろん欲しいものリストから消えている。(使い道がないし、邪魔だからタダでもいらない・笑)

追記:
継続して「VTVM」や「バルボル」などのキーワードで検索からこのブログに飛んでくる人がたくさんある。恐らく、オークションや中古ショップの出物を物色中に調べているのであろう。
 半世紀も前のノスタルジーを再現したい(体験したい)なら別だが、私なら今どき買わない。お金も時間も無駄だから、やめておくのが賢明だと思っている。高周波測定の経験も永いのでそれなりに熟練しているつもりだが、それでも何を(どんな信号を)計っているのか混乱しやすい測定器だ。測定対象が単純な正弦波なら良いが、教科書のように都合が良いのは現実の測定場面では稀だからである。
 指針の振れをピークに調整したら、スプリアス(不要波)に合わせていたと言うようなケースは簡単に起こる。そのような誤った調整をされたトランシーバ(FTDX-401)の再調整に手を焼いた事があり、VTVMで調整する危うさを感じた。結局、VTVMの使いこなしは簡単そうで素人にはむしろ易しくない。まあ、使えば良くわかることなんだが・・・。何事も経験することは悪いことではないから止めはしないけれど。(2009年2月追記)

2008年6月30日月曜日

【部品】Sweetsはお好き?


甘味な【部品】って何だろう?!

お酒も嗜むが、甘味も良い。
ちかごろ酒はたくさん飲まないから、
旨い酒と肴が良い。

甘味もそうだ。
たくさんは食べないから美味しいものが良い。
職場の帰りにお気に入りのケーキ屋がある。

どっちもウエスト回りが気になるのが難点。
こんど、わざわざ測ってくれるそうだ・・・おせっかいなことに。(汗)


チョコレートもいいね。
日本のチョコは、安くて旨さは世界一だと思う。
お値段をいとわなかれば世界に超美味しい
チョコも結構あるんだが・・・。

@コンビニで200円だと:
#200円で買えるチョコでは世界一だろう。(笑)
#200円で買えるアイスクリームもだ。(笑)

すこし怪しいが@100円だって感心するくらい美味く作ったものがある。
世界にはもっと高くて不味いのはいくらでもある。(欧州某国産チョコ・笑)



でも、やっぱりいちばん甘いのはこれか?(笑)


# 甘くて美味しいが食べ方に工夫がいる。
  SweetなAVRマイコンたち。




# 食べ過ぎてもウエストには溜まらない。 これなら安心。

2008年6月22日日曜日

【写真】紫陽花


紫陽花・アジサイの季節である。

梅雨入りして2週間ほど経つが、ずっと中休みだった。(笑)
夕方から降り出して、今でもかなり降っている。

庭の隅には写真の「ガクアジサイ」が一株植えてある。
普段は目立たぬ存在も、今の季節は元気いっぱいだ。
梅雨空のもとの花が「はつらつ」としている。

本格的に梅雨が戻ってきたようで、豪雨になっている地方もあるようだ。
東北の震災地では二次災害も気になる。梅雨半ば被害がないことを祈る。

鬱陶しい季節もあと半月もすれば終わる。いよいよ夏だ。

夏と言えばハムフェア。読者のお方とお会いできたら楽しいだろうなあ。

2008年6月20日金曜日

【書籍】復刻版回路集


 誠文堂新光社にはず〜っと昔から『子供の科学』、『初歩のラジオ』、『無線と実験』、『電子展望』の各誌でお世話になったものだ。

 無線と実験誌(現・MJ誌)は現存するラジオや電気系の雑誌としては日本最古だろう。 同レベルのオーディオ以外を扱う雑誌としては、『電子展望』も出ていた。紙質が良く、広告が少なくて薄いので好きな雑誌であった。 トラ技とは筆者層がだいぶ違うので独自の記事も多く、しばらく継続購読していた時代もあった。それも既に廃刊になっている。

 誠文堂の特徴と言うか、CQ出版社と違うのは、回路集をこまめに出すことだろう。 CQ出版にも類似書はあるが、1ページに2回路ずつ掲載するといった形式の回路図が主体のものはなかったように思う。写真は誠文堂の501回路集と、復刻版の401回路集である。

 こうした回路集の価値はどこにあるのか・・・であるが、製作本としては情報が少なすぎるだろう。 ある程度自身で設計できるくらいのベテランなら回路図と簡素な説明でそれを製作できるかもしれない。 しかし初心者にはまったく内容不十分だと思う。 
私はもっぱらアイディアを練るのに使っている。そのままで使える記事はほとんどない。しかし、簡単な回路や説明でも何がしかヒントが得られることはあるものだ。もっとも、この401や501は古過ぎてしまい「先人の足跡を楽しむ」くらいの意味しか無いのだが。(笑)

 ところで、この501回路集と401回路集であるが、持っている人はすぐ気付くだろう。 すこし見ただけで、ミスがたくさん見つかる。 回路図の接続違いはもちろん、回路定数の間違いなどあちこちにある。 また現在は回路手法として廃れたテクノロジーも多いがそれは仕方ないだろう。

 もし参考にするなら『必ずミスがあるもの』と思って回路図と定数を十分に吟味してからが良い。さらに、同じことを実現するにも異なった手法が主流になっているケースも多いから、改めて情報収集した方が良い。何しろ当時の最先端と言っても半世紀も前である。地デジどころか、(アナログの)カラーTVでさえ黎明期だったころのものだ。陳腐化どころの話しはですまない。そうした意味から全般的に見て初心者向きではないようだ。

 どちらの回路集も古すぎてあまり実用的に役立たないが、昔のラジオをレストアする人たちには有用な情報源になるかもしれない。どちらもそんな程度である。 50年も前だからやむを得まい。ラジオ回路の発展史は面白かったが、機器の写真や図があればもっと面白いのだが・・・回路集だから仕方ないだろう。 私は歴史書や古文書を紐解くような面白さを感じた。(笑)

 401回路集に続き、501回路集も何れ復刻されるだろう。 そうしないと出版後50年の著作権切れを良いことに、スキャナで取り込んで『Webオンライン回路集』が作られてしまうのは目に見えている。 自ら復刻してしまえば阻止できるし、あわよくば過去の遺産でもう一稼ぎできる? 考えたものである。(笑)

 401回路集は1970年ころ、出版社に問い合わせたら既に絶版だった。 そのとき501回路集だけあった。 それから40年近くたって、復刻版が登場するとは思いもよらなかった。(笑)

追記:予想通り501回路集も復刻されました。(笑)

2008年6月4日水曜日

【部品】世羅多フィルタの実装例


世羅多フィルタの実装方法
 昔のサイトの記事のイメージが強過ぎたのでしょう。同じような実装方法で考えてしまうようです。 ナマ基板に平付けは測定には有利な構造ですが、実装するには便利ではないでしょう。

 実際は写真のように実装しても問題はなくて、性能もきちんと出るから大丈夫です。 これならあまりスペースもとらないでしょう。 実用向きの実装方法です。


実測特性写真
 上の写真の実測特性はこのようになりました。 ナマ基板への実装ではなくてもこのようになります。 この例では、455kHzではなく、472kHzのVCO用と言うセラロックを使っています。 455kHzより少し周波数が高いのでフィルタの中心周波数も455kHzに近付きます。

 右側の裾野が持ち上がっているのは、わずかに入・出力間の不要な結合があるためでしょう。この程度なら普通は気にならないし、使っていてまったくわかりません。 評価のための測定器を接続した影響かも知れませんね。

 何だかこの写真を見ると、つい最近見た『ラジオ少年』のRB-1/RB-2の周波数特性がダブってしまいました。 でも、横軸を見て見ましょう。 RB-1やRB-2は横軸全体で200kHzだったのですが、この写真はたったの20kHzです。 つまり、1/10なので、選択度で言えば10倍も良い訳です。(帯域外の-100dBまで見ていることにご注目下さい。一般的には-60dBまで見ている例が多い筈です) LCを使ったIFTなど『狹帯域通信機用』と言った所で、所詮勝負にならないのです。(笑)

いつもと違うイメージで実装した世羅多フィルタをご参考にされて下さい。

追記:このBlog記事の前に、通販ショップ「ラジオ少年」のRB-1と新型のRB-2と言う真空管用IFTを詳細に扱ったBlogがあったのでそれを見ている前提で書かれている部分があります。(それらは詳細な内部資料なので一般公開には支障があるためnet上から消去しています。悪しからずご了承下さい)

世羅多フィルタをシミュレーションで解析してみる:→こちらのBlogで。

世羅多フィルタをラジオ用IC:LA1600で使う具体例は:→こちらのBlogで。

参考情報(検索来訪者のために:@2009年2月):
 世羅多フィルタには回路とのインピーダンス・マッチング用のIFTが必要です。 半導体で作った中間周波(IF)増幅回路のインピーダンスは一般に数〜10kΩくらいですが、世羅多フィルタは50〜数100Ωとかなり低い値です。 もしこの違いを無視して直結してしまうとミス・マッチングによるロス(信号減衰)がたいへん目立ってきます。 そのためフィルタ部でのロスがとても大きいように感じてしまうでしょう。 しかし世羅多フィルタ自身の信号通過に伴うロスはたかだか数dBに過ぎません。 20dB近くもあるようなCollinsや国際電気のCW用メカフィルと比べてごく僅かであり、信号損失の点ではずっと優れています。 使い方のマズさによって起こる信号ロスをフィルタその物のロスだと勘違いしないで下さい。(笑)
 インピーダンス・マッチングに既製品のFCZコイルを使うとすれば、10mm角の 10M455が唯一推奨できるものです。(マッチングに関しての考察は上記リンクも参照を) なお、7mm角の7Mタイプ(07M450など)には最適なインピーダンス比のものはありません。もちろん何もせず直結するよりも幾らかマシなので試してみる価値はあるでしょう。 但し10M455を使うよりミス・マッチングによるロスは大きくなるのは仕方ありません。(注:07M450は2次側の巻数が多すぎるため)
 以下蛇足になりますが、FCZコイルの説明書によれば、セラミック・フィルタには7M450が適当と書いてあります。 この場合の対象は村田製作所製など既製品のセラミックフィルタル(インピーダンス1〜2kΩのもの)をさしています。 従って、マッチングトランスにFCZコイルを使うなら世羅多フィルタには10M455の方を選ぶべきなのです。 自分でトランスを巻けばより良いものができる可能性もあります。

注:インピーダンスの不整合についてロスの増加と言う側面で記述しました。しかしミス・マッチングは通過帯域の特性(形状)にも影響が及びます。 CW用のように狭帯域フィルタでは顕著に見えませんが、SSB/AM用の様に帯域幅の広いフィルタでは通過帯域内のリプル(凸凹)や傾斜など特性劣化が無視できません。 通過帯域特性の形状に意味があるフィルタは必ず設計インピーダンスにマッチングして使わねばならりません。これは、フィルタ全般に言えることで、特に世羅多フィルタに限ったことではありません。

(おわり)

(2017.03.27:Blogger仕様変更対策済み)