2008年11月16日日曜日

【書籍】ガラパゴスHAM

日本の携帯TELは「ガラパゴス種」のようだと言う。
競争がない閉鎖世界で独自進化を遂げて来たが、外界を知らない姿は世界に通用しない。そんな意味だそうだ。

まあ、携帯を海外で使うことは滅多にないし電話と言う機能に支障がなければ良いことかもしれない。それに、そもそも電話機の自由な選択権など、有るように見えても日本のユーザーにはないのだ。

CQ Ham radio誌12月号が届いた。昨日のことである。




第一特集は:

「アマチュアのインターネット活用術」

だそうだ。(注:1998年12月号にあらず)





ある意味、面白い。

書店で立ち読みの機会があればご覧になると良い。
いや、もし何ならぜひ購入してやって下さい。





私が思ってどう成る訳でもないが『暗澹たるもの』を感じた。

もし、特集が真の意味でJAの大多数ハムに役立ったのなら、
この島は「ガラパゴスHAM」の生息地に違いない。
こんな特集とは・・・違う意味でも暗澹なのだが。

注:もちろん夫々の記事の裏にある筆者の熱意と努力には敬意を表する。
  ポイントは企画にありそうだがJA-HAMの現実を投影しているのだろうか?

# このBlogのビジターはたぶん絶滅危惧種ではない。ご安心を。(爆)

2008年11月14日金曜日

【測定】ヘテロダイン周波計


LM-21型・米海軍用ヘテロダイン周波計とは
 既に、シャックにはGPS周波数基準器やルビジウム原子周波数標準器が入っています。 いまどき『ヘテロダイン周波計』でもないかもしれません。

 ところが、意外に人気があるらしいので少しだけ紹介してみることにしましょう。

 左の写真は米海軍の『LM-21』と言う、ヘテロダイン周波計です。 この『LM型』は米海軍の標準的な装備品だったようで、長いあいだ継続生産され、マイナーチェンジ版が多数存在しています。 それらの中でLM-21は最後期型らしく性能的にも完成しているようです。

 日本のHAM局には米陸軍用のBC-221(→参考リンク)の方がポピュラーだったようですが、回路を見ると基本的に同じようなものでしょう。 なお、BC-221はMetal/GT管化されましたが、LM型は最後まで使用管はST管のままだったようです。

   心臓部である検波管はLM-21では6A7と言う7極管が使われています。 BC-221の後期型では心臓部は6K8と言う6極・3極複合管になっています。

 ヘテロダイン周波計を使った周波数の測定は未知周波数信号と、内蔵の『校正された発振器』(補間発振器と言う)とをヘテロダイン検波してゼロ・ビートを求めることで行ないます。
 但し補間発振器は2バンドしかないのでその高調波を積極的に利用します。 ちなみに補間発振器はLow Bandが125kHz〜250kHz、High Bandが2.0MHz〜4.0MHzを発振します。 高調波とのビートは当然弱くなります。 しかし、むしろ高調波とのビートの方がゼロビートの幅が狭くなり検出精度が上がるため有利と言えます。 そのように使うのが標準的な用法です。2MHz以下の測定にはLow Bandを使い、2MHz以上の測定ではHigh Bandの方を使います。

 その補間発振器の校正には、内蔵の水晶発振器を用いています。 従ってその水晶発振器の周波数精度と安定度がLM-21全体の測定精度を決めることになります。 金属容器に封入された1000kHzの水晶発振子を使った校正用水晶発振器は、仕様によれば1ppm/℃以内の安定度を持っているようです。(オーブン無しなのだから、なかなか優秀だと思います)

 周波数カウンタ以前の時代においては、「ヘテロダイン周波計」は精密周波数測定の決め手でした。 しかし、いまどきヘテロダイン周波計の使い方を詳述しても仕方がないと思いますから、このへんでやめておきましょう。


LM-21の内部構造
 むしろ、興味があるのは内部や回路の方ではないでしょうか。

 回路図を見ると5球式ですが、そのうち2本は中央に見える『991』と言うネオン管です。 但しこれでも一応『定電圧放電管』なのです。(放電電圧=約60V)。 従って実質は3球構成です。

 上部の横になった真空管が、補間発振器の5極管77です。 これは3ペン式真空管ラジオ(俗に並三ラジオとも言われる)で有名な6C6の前身のような五極管です。 発振回路はカソード・タップ式のハートレー型です。

 その右下が、ヘテロダイン検波を行なう6A7と言う5グリッド管(7極管)です。 もともとスーパーヘテロダイン受信機のコンバータ回路に使う目的で開発された真空管です。 この球で校正に使う1000kHzの水晶発振も行なっています。水晶発振子はATカットで1000kHzにて±10Hzの誤差となっています。(@20℃)

 左の球は76と言う3極管です。この時代の代表的な中ミュー3極管です。 ヘテロダイン検波で得られた低周波の増幅を行ない、ヘッドフォンを鳴らしています。 なお、切換えで約500Hzの低周波発振器として動作し、補間発振器に変調を掛けることができます。この機能は主としてヘテロダイン周波計をRF信号源として用いる時に使います。

 シャシ下の中央やや右に光った頭部が見える円筒が金属容器に密封された1000kHzの校正用水晶発振子です。

 回路構成は『ダイレクトコンバージョン受信機』にたいへん良く似ていますが、入力信号を選り分けるアンテナ同調回路はありません。 また、一般に感度は受信機ほど良くはありません。低周波増幅部のゲインが少ないからです。

LM型周波計の回路図
 左に回路図を示しますが、図面を見るとごく簡単な装置であることがわかるでしょう。(この回路図はLM-18型のものです。ほぼ同等です)

 測定精度を決めるのは回路と言うよりも部品にあります。 容量が安定していて設定の再現性が良く、温度係数が小さい精密なバリコンと、良く防湿処理された安定な空芯コイルを使ったLC発振器(=補間発振器)が回路のキモと言えるでしょう。

 また、同時にそれを駆動するダイヤルメカの精度もたいへん重要です。 もちろん組み立て後のエージングと周波数校正作業がこの測定器に魂を吹き込むことになります。

校正表
 ダイヤルが校正された結果は、このようなCalibration Bookにタイプされています。 もちろん一台ごとに微妙に違う筈で、実測して一つずつ作っていたのでしょう。(実は、このCalibration Bookにも結構タイプミスがあると聞いたことがあります・笑)

 ゼロビートを得た時のダイヤル目盛を読んで、このCalibration Bookから周波数を得るのです。 アナログダイヤルから、5桁を読み取ろうとするのですから、なかなか大変な装置であることがわかると思います。如何でしょうか? (上手に測定すればDIALからもう一桁分読取れる) 今では周波数の測定はごく簡単にできますが、この装置は半世紀以上も前の1951年製なのですから・・・。

                   ☆

 1000kHzの水晶発振にやや経年変化が見られました。 GPS周波数基準器と周波数カウンタを使って1000kHzの再校正を行なってから、Calibratio Bookと『既知信号』(GPS周波数基準器を元に発生。±0.001ppmくらい)を比較して精度を調べてみました。

 長波から15MHzあたりまで調べましたが、良く精度が維持されていました。 仕様書の規格による測定精度は、100ppm(2MHz以下は200ppm)とあります。 100ppmの精度と言うのは、1MHzで100Hz、10MHzで1kHzの誤差です。 いま考えるといささか甘いとも感じられますが、アナログな手段でここまでの精度を出すことができたとは素晴らしいと思います。 同時に57年後の今でも十分その機能と精度が維持できていることは驚きでもありました。

さて、今時の機械は50年後にこれだけの機能を保っことができるでしょうか?

本機はJO1LZX河内さんに頂いたものです。貴重な体験ができました。VY-TNX!

(おわり)」2017.03.18一部改訂

(Boggerの仕様変更に対応済み。2017.03.18)

2008年11月8日土曜日

【部品】GaAs-MES-FET(再)

3SK121とSGM2006M
 webで標記のFETを扱ったのは、2001年だったからずいぶん前のことになる。その時でさえ、既に写真の3SK121は廃品種だった。(笑)

 なお、写真のSGM2006M(記号:F-/SONY)と3SK121(記号:UG/東芝)、さらには下記3SK129(松下/パナソニック)は、ほぼ同等のデバイスである。

 或は3SK113(日立/ルネッサス・・形状及び接続は写真の3SK121と同じ)や3SK240(記号:UN/東芝・・形状及び接続は写真のSGM2006Mと同じ)も同類のGaAs-MES-FETであるが、何れも生産中止になっている。
 負荷インピーダンスRL=500Ω位にとった動作では、ソース抵抗Rsの加減でドレイン電流Id=約10mAになるよう調整してやれば最適動作点となる。 その状態で各デバイスによる性能差は殆ど感じないはず。なお、動作点の調整もせずに比較しても無意味である。正しく使えば何れも優れてLow Noiseである。もちろんゲインも十分得られる。

 高周波増幅回路も、以前はディスクリートで組んでいたが、今はむしろ特殊なくらいで、MMICと称するLNA(Low Noise Amp.)が主流のようだ。 昔のMMICはノイズの点で芳しくなかったが、今では十分Low-Noiseだから下手にバラ部品で作るよりも有利であろう。 しかしアマチュア無線には、そうしたICは向かないことが多いので、今もこうしたデバイスの出番がある。

3SK129
 ガリウムだとか砒素と言うと有害物質ではないかと言うことで拒否反応を示すかもしれない。 しかし、まさかFETを食べる訳ではないし、パッケージに入っていれば、たとえ舐めても危険はない。 ただ、数mgの微量とはいえ廃棄する時には一般ゴミと分けるくらいの気遣いはあった方が良いのかもしれない。

 写真は3SK129で今年(2008年)の6月頃JE6LVE高橋さんに頂いたものだ。(VY-TNX!) 6月18日のBlogでも紹介した。これは上の写真の3SK121と同等に使えるもので、パナソニック製である。見ての通りピン配置も同じである。
 既に廃品種の筈だがオークションで良く見かけるようだ。不良在庫化していたものが廃棄処分されて流出しているのかもしれない。 このように平面的なパッケージなのだが「表面実装用」ではない。 昨今は何でも面実装で製造するからそれに向かない部品は使い道がなくなったのだろう。性能は悪くないし、手ハンダするにはむしろ使い易いから積極的に活用したい。

参考;GaAs-FETを使ったクリコンのDBM部
 以前,GaAs-MES-FETを扱ったwebページで紹介していた50MHz帯のクリスタル・コンバータDBM部である。ミキサのSBDもガラスパッケージ品は無くなるばかりなので、もうこうした感じでDBMを作ることもなくなるのだろう。

 部品を集めてRFトランスを巻くのも良いが、1個の完成品モジュールになったDBMは手軽だし、安価になっているから経済性も悪くない。 写真のDiは1SS86(日立/ルネッサス:既に廃品種)で、トランスはおなじみのFB-801-#43だ。

 昨今の部品事情を見ると自作の余地がだんだん奪われるようで寂しい気もする。しかし、ディスクリート部品が完全に消えるとは考え難い。ICアプリに留まると廃品種になれば完全にお手上げだから、個別部品でも回路設計ができるようにしておきたいものだ。

追記:2009年9月>
 SONYのSGM2006Mは永らく秋葉原・秋月電子通商で10個200円と言う廉価で入手できたが、ついに底をついたらしい。面実装用パッケージで手付けには使い難かったが安価なRFデバイスとしては良い性能だっただけに惜しまれる。これからは少し高価で扱い難いがHEMTなども積極的に活用すべきようだ。拙宅の在庫も徐々にそちらにシフトしている。 de JA9TTT/1

(おわり)

2008年11月3日月曜日

【回路】ラダー型フィルタ(再)


ラダー型フィルタのページ:

あれから2年以上が経ってしまいました。「あれ」とは雑誌の連載です。雑誌社のコピーサービスを受けると言う手もありますが、今や参照するにも支障があるのだそうなのでサイトに再掲載することにしました。(サイト閉鎖に伴い公開終了)
もちろん、サイトの方は記事そのものではありません。雑誌の元になった実験です。 従って、連載にあったインピーダンス・マッチング法やトランスの製作、そのほかフィルタのテスト法とか測定治具製作の情報はWebにはありませんでした。もしそれらの情報が必要でしたらお手数でも雑誌を見て下さい。

CQ HAM Radio誌の2006年1〜6月号に連載された記事には、水晶の選び方から始まり、フィルタの構成方法、インピーダンスマッチングと使い方に至るまで一般の製作に必要な情報は網羅されていると思います。普通の図書館では雑誌は一定期間で廃棄しているそうです。既にバックナンバーはなくなっているかも知れません。その場合、出版社のコピーサービスを利用する方法があります。あるいはJR山手線・大塚駅の近くに移転したJARL資料室にもCQ HAM Radio誌のバックナンバーは全て揃っているでしょう。各種資料は廉価にコピーができたと思います。(2015.01.12内容更新)

上の写真は14.318MHz:HC-49/Uを使ったSSB用ラダー型クリスタル・フィルタの一例です。このクリスタルは「一山いくら」で、米国のDan's small partsから購入したものでした。 Danは輸送コストが掛かって海外発送するのは合わなかったようです。 いまは海外(JA)からは買えません。(たぶん、個人商店だから交渉次第で売ってくれるとは思う・笑)


チープなジャンク・クリスタルですが、こんな素敵な特性のフィルタが作れました。 このフィルタを使って14MHz帯を IFにすると50MHzのシングル・コンバージョン形式のトランシーバ(受信機)には最適でしょう。 周波数的にも14.318MHzは高からず、低からずで50MHzには具合が良いです。SSBジェネレータを作ったらモニタも容易だし・・・。 VFOは36MHz帯になりますが、DDSで行くか、PLLで行くのが今風でしょうか? あるいは簡単なリグにはVXOでも行けるでしょう。 12MHzの水晶をVXOし3逓倍で約35.900〜36.000MHzを得て、50.200〜50.300MHzあたりをカバーするのは容易です。SSBでオンエアには丁度良いはずです。VXOに使う12MHzのクリスタルも既製品がイッパイ売っています。 なお、18MHzの水晶をVXOして、2逓倍と言う手もあります。その方が12MHzの3逓倍よりも断然有利ですが、水晶の入手が多少難しいかもしれません。(もし新規に購入するなら18MHzの基本波水晶を推奨します)

14.318MHzのフィルタはCW用も含めて、拙サイトにリバイバルしておいたので必要なら参照されたい。もちろん、前のように他の周波数のフィルタ記事もある。(公開終了)

注:国産のHC-49/U型14.318MHz水晶でも同じように作れます。 たしか、関西方面に大量にお持ちのお方があったような気がしますよ(笑) 拙宅にも写真の物がたくさんあるのだが、バラのジャンクですからロットがバラバラなので選別が厄介で・・・どうも自家用以外には適さない感じでした。(汗) 

追記:2009年1月「Radio Experimenter's site」を置いていたサーバーを止めてこのBlogに移行しました。それに伴い、ラダー型フィルタ(水晶振動子を使ったもの)及び、世羅多フィルタ(セラミック振動子を使ったもの)を扱ったサイト上の全ページも同時に公開を終えました。もしラダー型クリスタル・フィルター(世羅多フィルターも含む)の実用的な設計・製作・使い方の情報を必要とされるならCQ Hamradio誌2006年1~6月号の連載記事が良いかもしれません。連載はweb上に公開していた断片的な実験内容を整理し、さらに必要な情報を追加して纏めた内容になっていました。大塚のJARL資料室や公立図書館を当たる方法もありますが、CQ出版社のコピーサービスを受ける方法(但し有料)も手っ取り早くて確実だと思います。(記:2009年1月)

追記・2:最近のラダー型クリスタル・フィルタの記事→こちら(Blog内リンク)
新たな手法による設計法の関連記事を網羅したBlog内リンクがあります。ラダー型フィルタの製作前には必読でしょう。(記:2016年2月25日)

(おわり)

2008年11月2日日曜日

【その他】古炉奈で懇親会


毎月第一土曜日は、秋葉原の『古炉奈』(コロナ)でQRP懇親会である。

秋葉原で買い物・・と言っても大した物はないのだが・・があったので今月も参加させてもらった。 常連さんがだいたいのようだが、今日は15人くらいだった。(みなさん有難うございました)

まんべんなく皆さんとお話しするのも難しいが、『古炉奈』の一次会のあと、居酒屋『天狗』の二次会で、席を替えながら色々なお話しを楽しんだ。 無線の話しも少しはあるが、音楽の話しから経済や政治情勢(?)まで、バラエティに富んだ話題が飛び交っていた。 名目はQRP懇親会となっているが、その話題に凝り固まっている訳ではなくて、まあ、秋葉好き、電気好きの『大人の雑談会』と言えば良いだろうか。(笑)

年末12月は新宿に移って忘年会、年始の1月も新年会になるそうだが、それ以外は毎月第一土曜日の16:00〜18:00に秋葉原の『古炉奈』で開催される。遠方からわざわざでは大変だと思うが、東京に出る機会があればスケジュールに入れておくと楽しい時間が過ごせるかも。参加は自由で、QRPクラブ員である必要はないそうだ。私もだいぶ前に退会している。(笑)

ちなみに二次会は18:00〜『天狗』に席を移してアルコール入りとなる。 ちょっと遠いので少々億劫になるが、やっぱりオフ会は楽しいですよ。(笑) (写真は借用品

                   ☆

参考・重要秋葉原QRP懇親会の開催について
2019年現在「秋葉原QRP懇親会」は開催日と場所を移して継続されています。 開催日時は、毎月土曜日の16時から18時となっています。(12月は除く) 場所は、「喫茶室ルノアール」ニュー秋葉原店です。 秋葉原駅の電気街出口を出たら、神田駅方向へ線路沿いに歩くと昭和通りと交わる信号があります。信号を渡り、ニュー秋葉原センタービルの地下1階です。 貸し会議室(個室)が予約してあり、16時の10分前から入室できます。「QRP懇親会の予約で会議室に」と言えば、入れてもらえます。お店の一番奥の方です。  以上、ご参考に。(追記:2019年6月)